(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093444
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】鉄道模型車両の照明板
(51)【国際特許分類】
A63H 19/20 20060101AFI20240702BHJP
F21V 7/04 20060101ALI20240702BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240702BHJP
【FI】
A63H19/20
F21V7/04 120
F21Y115:10
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209825
(22)【出願日】2022-12-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】594007630
【氏名又は名称】株式会社関水金属
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 走馬
【テーマコード(参考)】
2C150
【Fターム(参考)】
2C150AA05
2C150CA06
2C150CA08
2C150DA16
2C150DG12
2C150DG13
2C150DG42
2C150DG45
2C150EA03
(57)【要約】
【課題】低コストで製造可能な照明板を提供する。
【解決手段】鉄道模型車両の車体内部における天井側に設けられ、前記車体の前後方向に延在し、第一の車端部に配置された光源から前記車体の前後方向に入射した光を反射させることで、前記車体の内部を照明する照明板。鉛直方向に深さを持ち枕木方向に直線状に配置された少なくとも1つの溝を含む溝部が、前記車体の前後方向に亘って等間隔で複数個配置され、前記溝によって前記入射した光が下方へ反射され、前記複数の溝部のそれぞれに含まれる溝の、前記枕木方向の延長が、前記第一の車端部からの距離に応じて漸増する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道模型車両の車体内部における天井側に設けられ、前記車体の前後方向に延在し、第一の車端部に配置された光源から前記車体の前後方向に入射した光を反射させることで、前記車体の内部を照明する照明板であって、
鉛直方向に深さを持ち枕木方向に直線状に配置された少なくとも1つの溝を含む溝部が、前記車体の前後方向に亘って等間隔で複数個配置され、
前記溝によって前記入射した光が下方へ反射され、
前記複数の溝部のそれぞれに含まれる溝の、前記枕木方向の延長が、前記第一の車端部からの距離に応じて漸増する、
鉄道模型車両の照明板。
【請求項2】
前記複数の溝部のそれぞれは、 1つの溝から構成される第一タイプの溝部と、同一の
直線上に配置された2つの溝から構成される第二タイプの溝部と、を少なくとも含み、
前記第二タイプの溝部の、前記2つの溝同士の間隔が、前記第一の車端部からの距離に応じて漸減し、
前記2つの溝のそれぞれが、前記照明板の二つの長辺にそれぞれ寄せて配置される、
請求項1に記載の、鉄道模型車両の照明板。
【請求項3】
前記複数の溝部のそれぞれに含まれる溝の鉛直方向における深さが、前記第一の車端部からの距離に応じて漸増する、
請求項1または2に記載の、鉄道模型車両の照明板。
【請求項4】
前記複数の溝部のそれぞれに含まれる溝は、前記枕木方向から見た場合に、30度以上45度以下の範囲で鉛直方向に対して傾きを有する第一の面を有している、
請求項1または2に記載の、鉄道模型車両の照明板。
【請求項5】
前記複数の溝部のそれぞれに含まれる溝は、前記枕木方向から見た場合に、鉛直方向に対して傾きを有する第一の面と、前記車体の床面と平行な第二の面と、を有している、
請求項1または2に記載の、鉄道模型車両の照明板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道模型車両に組み込んで使用される照明板に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道模型車両の室内を照明するための室内灯ユニットが知られている。室内灯ユニットは、LED等の光源を含む光源ユニットと、光源から出射した光を導光し、室内の全域を照明する照明板を含んで構成される。照明板は、例えば、車両の進行方向に入射した光を鉛直方向に反射させることで、室内を照明する役割を持っている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光源ユニットは、一般的に、車両の端部に配置され、レールに沿った方向に光を射出させる。しかし、出射した光の光量は、距離とともに減衰するため、照明板によって反射される光の光量も、光源から離れるに従って減少する。すなわち、光源が配置されていない側の車端部において、室内が暗くなってしまうという課題があった。
【0005】
特許文献1に記載の発明では、室内に反射させる光の量を、光源からの距離に基づいて調節することで、室内を照明する光の明るさを均一にさせている。しかし、当該発明では、白色の反射面を印刷によって形成しているため、照明板を一枚ずつ印刷する工程が必要となり、製造コストがかかるという課題があった。
【0006】
本発明は上記の課題を考慮してなされたものであり、低コストで製造可能な照明板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の様態は、鉄道模型車両の車体内部における天井側に設けられ、前記車体の前後方向に延在し、第一の車端部に配置された光源から前記車体の前後方向に入射した光を反射させることで、前記車体の内部を照明する照明板である。
具体的には、鉛直方向に深さを持ち枕木方向に直線状に配置された少なくとも1つの溝を含む溝部が、前記車体の前後方向に亘って等間隔で複数個配置され、前記溝によって前記入射した光が下方へ反射され、前記複数の溝部のそれぞれに含まれる溝の、前記枕木方向の延長が、前記第一の車端部からの距離に応じて漸増することを特徴とする。
【0008】
溝部は、枕木方向に延在する領域であって、枕木方向に直線状に配置された一つ以上の凹状の溝を含む領域である。溝は、鉛直方向に深さを持っており、当該溝の界面に、光源から入射した光が反射することで、室内が照明される。溝は、照明板を成形する際に設けることができる。
また、照明板は、複数の溝部のそれぞれに含まれる溝の、枕木方向の延長が、前記車端部からの距離に応じて漸増するように構成されている。なお、延長とは、一つ以上の溝の長さを合計したもの(総延長)を意味する。
かかる構成によると、光源からの距離が長くなるにつれて、当該光源から入射した光が反射する面の面積が増大するため、光の反射率を増大させることができる。すなわち、光
の減衰を、光の反射率を増大させることで補うことができ、室内を照明する光の光量を確保することが可能になる。
【0009】
なお、複数の溝部のそれぞれは、1つの溝から構成される第一タイプの溝部と、同一の直線上に配置された2つの溝から構成される第二タイプの溝部と、を少なくとも含んでもよい。また、2つの溝のそれぞれを、前記照明板の二つの長辺にそれぞれ寄せて配置してもよい。また、前記第二タイプの溝部の、前記2つの溝同士の間隔を、前記第一の車端部からの距離に応じて漸減させてもよい。
【0010】
第一タイプの溝部が、単一の溝を含んでいるのに対し、第二タイプの溝部においては、枕木方向に溝が二つに分割されている。また、分割された溝が、車幅の両端にそれぞれ寄せられて配置されている。
かかる構成によると、車両の窓に近い位置に反射光を重点的に照射することができる。これにより、車両の外部に到達する光量を多くすることができ、外部から室内を観察した場合に、室内を明るく見せることが可能になる。
【0011】
また、複数の溝部のそれぞれに含まれる溝の鉛直方向における深さを、第一の車端部からの距離に応じて漸増させてもよい。
溝の鉛直方向における深さが増すほど、光の反射率が増大する。よって、枕木方向における溝の延長と、鉛直方向における溝の深さの双方を変えることで、反射率をより大きく変化させることができる。
【0012】
また、複数の溝部のそれぞれに含まれる溝は、前記枕木方向から見た場合に、30度以上45度以下の範囲で鉛直方向に対して傾きを有する第一の面を有していてもよい。
かかる範囲の角度を有する第一の面を設けることで、反射光の分散を防ぐことができ、室内をより明るく照明できるようになる。
【0013】
また、複数の溝部のそれぞれに含まれる溝は、前記枕木方向から見た場合に、鉛直方向に対して傾きを有する第一の面と、前記車体の床面と平行な第二の面と、を有していてもよい。
第一の面によって、水平に入射する光を反射させることができる。さらに、車体の床面と平行な第二の面を設けることで、照明板の内部において乱反射した光を下方に向けることができ、室内に向かう光量を増加させることができる。
【0014】
なお、本発明は、上記構成の少なくとも一部を含む照明板や、上記構成の少なくとも一部を含む照明板の製造方法として特定することができる。また、上記照明板を含む、照明ユニットとして特定することもできる。
上記構造や手段は、技術的な矛盾が生じない限りにおいて、自由に組み合わせて実施することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、低コストで製造可能な照明板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図3】室内灯セットを車両に組み込んだ様子を示す断面図。
【
図5】
図4の点線で示した領域を拡大した図、およびその断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
鉄道模型車両の室内を照明するための照明ユニットは、光源を有するユニットと、光源から出射した光を反射させる反射板を含んで構成される。光源から出射した光は、例えば、透明な部材で形成された反射板に入射し、上面と下面で臨界全反射を繰り返すことで他端に到達する。またこの際、反射板の下面から放射される光によって、室内の全域が照明される。
【0018】
しかし、反射板に入射した光は、距離の二乗に比例して減衰するため、室内を均一に照明することができない。そこで、光源からの距離に比例して、光の反射量を変える照明板が考案されている(特許文献1)。
【0019】
しかし、この方法にも問題がある。すなわち、光の反射量を、白色印刷された領域の大きさを変えることで制御しているため、印刷工程が必要になるという問題である。
照明ユニットは、樹脂等の部材を成形することで製造されるため、製造コストを削減するためには、部材を成形する工程のみで反射板を製造することが好ましい。
【0020】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本発明は実施形態の構成に限定されない。
図1は、本実施形態に係る鉄道模型車両1の構成を説明する斜視図である。本実施形態に係る鉄道模型車両1は、図示したように、台車2、床板3、車体4、および室内灯セット5を含んで構成される。
【0021】
図2は、室内灯セット5の構成を説明する斜視図である。
図2に示したように、室内灯セット5は、照明板10と、光源ユニット6とを含んで構成される。
【0022】
照明板10は、アクリル樹脂等によって形成された透明な部材である。照明板10は、車体の前後方向に延在する帯板状の部材であって、鉄道模型車両1の車内における天井側に取り付けられる。照明板10は、光源ユニット6と結合した状態で、鉄道模型車両1の内部に取り付けられる。
【0023】
図3は、室内灯セット5を鉄道模型車両1に組み込んだ場合における断面図である。
光源ユニット6は、基板上に、光源である白色LED6Lが実装されている。白色LED6Lは、基板6Bに実装され、基板6Bはホルダによって保持されている。
基板6Bには、レールからの給電を受けるための電極(不図示)が接続されている。電極は、車輪を介してレールと電気的に接続されており、これにより、白色LED6Lに電力を供給することができる。
【0024】
図2に示したように、照明板10の端部10Aには、白色LED6Lからの光が入射する面である入光面10Cが形成されている。入光面10Cは、光源ユニット6と結合した状態で、白色LED6Lに相対する位置に設けられている。入光面10Cから入射した光は、照明板10の内部を端部10Bに向かって伝播する。
また、照明板10の左右の側辺には、フランジ10Fと、車体と照明板10とを固定するための係止爪10Pが設けられている。
【0025】
さらに、照明板10の左右には、車両の床板3から突出する係止部材3Aが嵌合する複数のスリット10Hが設けられている。
図2の例では、スリット10Hは左右それぞれ5個ずつ設けられており、X軸方向の任意の位置に係止部材3Aを挿入することができる。
係止部材3AのX軸方向における配置位置は、対象である車両の室内デザインによって異なる。例えば、係止部材3Aは、室内の椅子が存在しない位置に配置される。
このように、X軸方向に長いスリットを設けることで、様々な室内デザインを持つ車両に、共通の照明板10を組み込むことが可能になる。
【0026】
入光面10Cから入射した光は、相対する上面10Uと下面10Dにおける板鏡面で反射を繰り返し、端部10Aから端部10Bに向かって照明板10の内部を伝播する。またこの際、一部の光が下面10Dから出射することで、鉄道模型車両1の室内の全域が照明される。なお、照明板10の上面10U、下面10D、および入光面10Cは、光の反射効率、入射効率、出射効率を向上させるための鏡面仕上げがなされていてもよい。
【0027】
斯様な構成を有する照明板を利用して、鉄道模型車両の車内を照明した場合、光の減衰に起因して、光源からの距離が遠くなるにつれて室内が暗くなってしまうという問題が生じる。すなわち、端部10A側の室内が最も明るく照明され、端部10Bに向かうにつれて室内が暗くなってしまうという問題である。
【0028】
この問題を解決するため、照明板10の上面10Uに反射層を設け、反射する光の量を場所によって変える発明が考案されている。例えば、照明板10の上面10Uに白色塗料を印刷することで、照明板10の内部を伝播する光を下方に向けて乱反射させ、かつ、長手方向において白色の面積を変えることで、反射する光の量を変える(例えば、端部10Bに近いほど、反射する光の量を多くする)ことができる。
【0029】
しかし、この手法を用いた場合、照明板10の製造において、印刷を行う工程が必要となってしまい、コスト増加の一因となる。
本実施形態では、鉛直方向に深さを持つ溝を照明板10に設けることで、この問題を解決する。
【0030】
溝の構成について、
図4および
図5を参照して説明する。
本実施形態では、照明板10における上面10Uに、照明板10の内部を伝播する白色LED6Lからの光を、下方へ向けて反射させるための溝が形成されている。
図4は、照明板10を車両の上方(Y軸方向)から見た上面図である。また、
図5は、照明板10のうち、
図4の点線で示した領域を拡大し、車両の上方(Y軸方向)、および、車両の側面(Z軸方向)から見た図である。なお、
図5では、照明板10が有するフランジやスリット等は図示を省略している。
【0031】
照明板10の上面10Uには、鉛直方向(Y軸方向)に深さを持ち、枕木方向(Z軸方向)に延在する溝が、車体の前後方向(X軸方向)にわたって等間隔で複数個整列して配置されている。枕木方向とは、レールの枕木が延在する方向(図中のZ軸方向)である。
ここでは、枕木方向に延在する、1つまたは2つの溝を含む部位を溝部と称する。溝部は、Z軸方向に直線状に延びた1つまたは2つの溝を含んで構成される。溝部に含まれる溝が2つである場合、当該2つの溝は、枕木方向(Z軸方向)に直列に並んでいる。
図5の例では、溝部501は、溝501Aおよび溝501Bの2つの溝を含む。また、溝部502は、溝502Aの1つの溝を含む。
溝は、照明板10を構成する透明部材と一体で成形される。
また、複数の溝部は、車体の前後方向(X軸方向)にわたって等間隔で配置されている。
【0032】
本実施形態では、複数の溝部のそれぞれに含まれる溝の、枕木方向における延長が、車端部(端部10A)からの距離に応じて漸増するように構成されている。すなわち、紙面の右側から左側へ進むにつれて、Z軸方向における溝の長さが増加する。溝部に含まれる
溝が2つである場合、紙面の右側から左側へ進むにつれて、溝部に含まれる溝の、Z軸方向における合計長が増加する。
【0033】
溝は、鉛直方向に対して傾いた面を有している。照明板10の内部を伝播する光は、この面に入射する際に、その一部が、車体の下方(Y軸方向)に向けて反射する。このとき、反射する光量は、設けられた溝の、枕木方向における長さに比例する。そのため、反射する光量は、端部10Aから端部10Bに向けて漸増することになる。
【0034】
照明板10の内部を伝播する光の光量は、距離の二乗にしたがって減衰するが、複数の溝のそれぞれにおいて反射する光の光量が、端部10Aから端部10Bに向けて増加するため、照明板10の下面10Dから出射する光の光量は、照明板10の全長にわたって略均等なものになる。したがって、車体の内部における照明の光量を全域にわたって均等にすることができる。
【0035】
本実施形態では、溝部の各々は、1つまたは2つの溝を含んで構成される。
図4の符号401で示した範囲では、溝部は、Z軸方向に直列に配置された2つの溝を含んで構成される。端部10Aから端部10Bに向けて、溝のZ軸方向における延長は漸増し、中間において2つの溝は繋がり、1つになる。換言すると、符号401で示した範囲では、2つの溝同士の間隔が、端部10Aからの距離に応じて漸減する。
なお、溝のZ軸方向における延長は、一次関数的に増加するようにしてもよいし、二次関数的、または、指数関数的に増加するようにしてもよい。
符号402で示した範囲では、溝部は、1つの溝を含んで構成される。
【0036】
なお、枕木方向における溝の延長が、車端部からの距離に応じて漸増する形態として、
図7(A)に示したような形態も考えられる。すなわち、溝を車両の中心線(点線で図示)に寄せた位置に配置する形態である。斯様な形態によっても、車体の内部における照明の光量を全域にわたって均等にするという課題が達成できる。
【0037】
しかし、斯様な形態では、端部10Aの近傍において、光が照射される位置が、車両の中心に寄ってしまう。
図7(B)は、符号71および72で示した範囲において、反射光が重点的に照射される領域をハッチングで示した図である。図示したように、符号71で示した範囲では、床面の広範囲に反射光が照射される。一方、符号72で示した範囲では、車両の中央部に寄った位置に反射光が重点的に照射される。そのため、反射光の光量が同じであっても、車両の外部に到達する光量が少なくなってしまい、外部から室内を観察した場合に、室内が暗く見えてしまうことがある。
【0038】
そこで、本実施形態に係る照明板10は、
図7(A)に示した複数の溝のうち、枕木方向における延長が所定値以下である領域(符号73)において、溝をZ軸方向に2つに分割し、2つの溝のそれぞれを、
図4に示したように、照明板の二つの長辺にそれぞれ寄せて配置する。
【0039】
かかる構成によると、符号401で示した範囲において、窓に近い位置に反射光を重点的に照射することができる。これにより、車両の外部に到達する光量を多くすることができ、外部から室内を観察した場合に、室内を明るく見せることが可能になる。さらに、窓に近い位置には、椅子をかたどった部材が存在するため、反射光が椅子に重点的に照射される。これにより、室内をより明るく感じさせる効果を得ることができる。
【0040】
次に、溝の断面構造について説明する。
図6は、本実施形態に係る照明板10を、車両の側面方向(Z軸方向)から見た断面図
である。ここでは、照明板10をハッチングで示し、照明板10に設けられた溝を白色で示している。
【0041】
複数の溝部のそれぞれに含まれる溝は、枕木方向(Z軸方向)から見た場合に、鉛直方向に対して傾きを有する第一の面(符号61)と、車体の床面と平行な第二の面(符号62)を有している。光源から出射した光は、第一の面61に反射し、室内方向へ向きを変える。第一の面61の、鉛直線に対する角度(図中のθ)は30度以上かつ45度以下であることが好ましい。
θの値が小さすぎる、あるいは大きすぎる場合、反射光の向きが鉛直に対して斜めになるため、光が照射される床面上の面積が増え、光量が低下する要因となってしまう。一方、θを30度以上かつ45度以下に設定すると、反射光の向きが鉛直方向に近くなるため、より強い光を室内に照射することが可能になる。
【0042】
さらに、溝は、V字ではなく、車体の床面と平行な面(符号62)を有している。このように、車体の床面と平行な面を設けることで、照明板10の内部において乱反射した光を下方向に向けることができ、室内に向かう光の量を増加させることができる。
【0043】
また、本実施形態における照明板10は、溝の鉛直方向における深さ(符号63)が、端部10Aからの距離に応じて漸増するように構成されている。
本実施形態では、照明板10を、X軸方向に領域601、領域602、領域603の3つの領域に分割し、各領域において、それぞれ異なる深さを与えている。
本例では、例えば、端部10Aに近い領域603においては、溝の深さを0.05mm程度とし、端部10Bに近い領域601においては、溝の深さを0.15mm程度としている。また、その中間の領域602においては、溝の深さを0.1mm程度としている。
【0044】
Z軸方向における溝の延長を変えることで、反射光の強さを変えることができるが、光の減衰量は、距離の二乗に反比例するため、Z軸方向における溝の延長を変えるだけでは、光の減衰を補えない場合がある。そこで、本実施形態では、溝の深さが、端部10Aからの距離に応じて徐々に増えるように照明板10を構成する。溝が深くなると、第一の面61の面積が増えるため、反射光の光量が増える。
よって、「Z軸方向における溝の延長」と「Y軸方向における溝の深さ」の双方が、光源からの距離に応じて漸増するように照明板10を構成することで、反射光の光量を確保し、光量の均一性を保つことが可能になる。
【0045】
なお、
図6の例では、溝の深さを三段階に設定しているが、溝の深さは、さらに多段階に設定してもよい。また、溝の深さは、連続的に増加するようにしてもよい。
【0046】
図8は、本実施形態に係る照明板10の別の形態を示した上面図である。
例示した形態では、照明板10は、端部10A側にある領域81に、複数の溝部をさらに有して構成される。当該溝部には、端部10B側における溝部と同様に、Z軸方向に最大の長さを持つ溝が配置されている。
【0047】
光源ユニット6(白色LED6L)から出射した光は、直進性が高く、照明板10の内部を進むにつれて散乱する。すなわち、白色LED6Lから出射した直後(矢印で図示)においては、両側に設けられた溝に入射する光の量が十分でなく、これに起因して、端部10A側(光源ユニット6の直下)において、室内の明るさが十分に得られない場合がある。そこで、車端部の室内光量を増加させるため、端部10A側において、溝の長さを長く取った溝部を配置してもよい。
【0048】
(変形例)
上記の実施形態はあくまでも一例であって、本開示はその要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施しうる。
例えば、本開示において説明した処理や手段は、技術的な矛盾が生じない限りにおいて、自由に組み合わせて実施することができる。
また、実施形態の説明では、照明板10の長手方向の長さは、当該照明板10が組み込まれる車両のサイズに合致しているものとしたが、照明板10を折り割ることで、対象車両の車体長に合わせて照明板10の長さを調整できるようにしてもよい。この場合、照明板10の下面10Dに、枕木方向に延びる複数の切れ込み(ノッチ)を形成し、任意のノッチの位置で、照明板10を折り割ることができるよう構成してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1・・・車両
2・・・台車
3・・・床板
4・・・車体
5・・・室内灯セット
6・・・光源ユニット
10・・・照明板
【手続補正書】
【提出日】2023-04-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道模型車両の車体内部における天井側に設けられ、前記車体の前後方向に延在し、第一の車端部に配置された光源から前記車体の前後方向に入射した光を反射させることで、前記車体の内部を照明する照明板であって、
鉛直方向に深さを持ち枕木方向に直線状に配置された溝部であって、単一の溝から構成される第一タイプの溝部と、同一の直線上に配置された二つの溝から構成される第二タイプの溝部と、のうちのいずれかが、前記車体の前後方向に亘って等間隔で複数個配置され、
前記溝によって前記入射した光が下方へ反射され、
前記複数の溝部のそれぞれに含まれる溝の、前記枕木方向の延長が、前記第一の車端部からの距離に応じて漸増し、かつ、前記第二タイプの溝部が有する前記二つの溝同士の間隔が、前記第一の車端部からの距離に応じて漸減し、
前記第二タイプの溝部が有する前記二つの溝のそれぞれが、前記照明板の二つの長辺にそれぞれ寄せて配置される、
鉄道模型車両の照明板。
【請求項2】
前記複数の溝部のそれぞれに含まれる溝の鉛直方向における深さが、前記第一の車端部からの距離に応じて漸増する、
請求項1に記載の、鉄道模型車両の照明板。
【請求項3】
前記複数の溝部のそれぞれに含まれる溝は、前記枕木方向から見た場合に、30度以上45度以下の範囲で鉛直方向に対して傾きを有する第一の面を有している、
請求項1または2に記載の、鉄道模型車両の照明板。
【請求項4】
前記複数の溝部のそれぞれに含まれる溝は、前記枕木方向から見た場合に、鉛直方向に対して傾きを有する第一の面と、前記車体の床面と平行な第二の面と、を有している、
請求項1または2に記載の、鉄道模型車両の照明板。