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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093462
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/147 20170101AFI20240702BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240702BHJP
【FI】
B29C64/147
B33Y10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209853
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沖中 耕作
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AC03
4F213AR12
4F213WA25
4F213WA83
4F213WA89
4F213WA92
4F213WB01
4F213WF37
4F213WL02
4F213WL15
4F213WL32
4F213WL42
4F213WL67
4F213WL75
4F213WL87
4F213WL96
(57)【要約】
【課題】積層板群を配置する際の作業性を向上する技術を提供する。
【解決手段】積層体の製造方法は、複数枚の板が積層されている積層中間体を第1シート材に載置する載置工程と、前記積層中間体を覆う第2シート材を、前記第1シート材に重ねて配置するシート配置工程と、前記積層中間体の周りにおいて前記第1シート材と前記第2シート材とを気密に閉塞する閉塞工程と、前記第1シート材と前記第2シート材との間から気体を排出する排気工程と、前記第1シート材と前記第2シート材とに覆われている前記積層中間体を加熱することによって、前記積層中間体から積層体を作製する加熱工程と、を備えていてもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の板が積層されている積層中間体を第1シート材に載置する載置工程と、
前記積層中間体を覆う第2シート材を、前記第1シート材に重ねて配置するシート配置工程と、
前記積層中間体の周りにおいて前記第1シート材と前記第2シート材とを気密に閉塞する閉塞工程と、
前記第1シート材と前記第2シート材との間から気体を排出する排気工程と、
前記第1シート材と前記第2シート材とに覆われている前記積層中間体を加熱することによって、前記積層中間体から積層体を作製する加熱工程と、を備える、積層体の製造方法。
【請求項2】
通気可能な通気性柔軟物体を前記積層中間体の周りに配置する柔軟物体配置工程と、をさらに備え、
前記排気工程は、前記第1シート材と前記第2シート材との間から気体を排出することによって、前記通気性柔軟物体を前記第1シート材と前記第2シート材とによって圧縮する、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項3】
前記載置工程は、前記積層中間体を一対の当て板で挟んだ積層板群を前記第1シート材に載置し、
前記一対の当て板は、全周に亘って、前記中間体の外周よりも外側に突出している、請求項1又は2に記載の積層体の製造方法。
【請求項4】
前記第1シート材と前記第2シート材とは、1枚のシート体で構成されている、請求項1又は2に記載の積層体の製造方法。
【請求項5】
前記排気工程と前記加熱工程とが並行して実行される、請求項1又は2に記載の積層体の製造方法。
【請求項6】
前記第1シート材及び前記第2シート材の少なくとも一方は、0.05mmから0.075mmの厚さを有する、請求項1又は2に記載の積層体の製造方法。
【請求項7】
前記閉塞工程は、前記第1シート材と前記第2シート材とを熱圧着によって閉塞する、請求項1又は2に記載の積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、積層体の製造方法が開示されている。まず、無機ガラス等の板状体をプラスチックフィルムから構成される真空袋内に配置する。次に、真空袋内を真空に排気し、板状体とプラスチックフィルムとを圧着する。これにより、板状体にプラスチックフィルムが積層されている積層体が作製される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62-297136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
真空袋に板状体を配置する工程では、真空袋の開口から板状体を真空袋に挿入しなければならず、作業し難い。複数枚の板が積層されている積層板群を袋に挿入する場合、一枚の板を挿入する場合と比較して厚み及び重さが増加するため、作業性が低下する。
【0005】
本明細書は、積層板群を配置する際の作業性を向上する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書で開示される技術の第1の形態は、積層体の製造方法である。積層体の製造方法は、複数枚の板が積層されている積層中間体を第1シート材に載置する載置工程と、前記積層中間体を覆う第2シート材を、前記第1シート材に重ねて配置するシート配置工程と、前記積層中間体の周りにおいて前記第1シート材と前記第2シート材とを気密に閉塞する閉塞工程と、前記第1シート材と前記第2シート材との間から気体を排出する排気工程と、前記第1シート材と前記第2シート材とに覆われている前記積層中間体を加熱することによって、前記積層中間体から積層体を作製する加熱工程と、を備えていてもよい。
【0007】
この形態では、第1シート材に積層中間体を載置してから、第2シート材で積層中間体を覆う。載置工程では、第2シート材が第1シート材の上方に配置されていない。この形態によると、第2シート材に邪魔されずに、積層中間体を第1シート材の上方から第1シート材に載置することができる。この結果、積層中間体を配置する際の作業性を向上させることができる。
【0008】
第2の形態は、上記の第1形態において、通気可能な通気性柔軟物体を前記積層中間体の周りに配置する柔軟物体配置工程と、をさらに備え、前記排気工程は、前記第1シート材と前記第2シート材との間から気体を排出することによって、前記通気性柔軟物体を前記第1シート材と前記第2シート材とによって圧縮してもよい。
【0009】
積層中間体の周囲において、第1シート材と第2シート材とが直接的に対向する構成では、排気工程において、排気途中で第1シート材と第2シート材と密着することによって、第1シート材と第2シート材との間の空間が分断され、第1シート材と第2シート材との間の気体が排気されずに残ってしまう場合がある。上記の形態によると、通気可能な通気性柔軟物体によって、排気工程において第1シート材と第2シート材とが接触して、第1シート材と第2シート材との間の空間が分断される事態を回避することができる。第1シート材と第2シート材との間の気体は、通気性柔軟物体を通過することができるため、通気性柔軟物体によって第1シート材と第2シート材との間の空間が分断されずに、第1シート材と第2シート材との間の気体を排気することができる。さらに、通気性柔軟物体は、第1シート材と第2シート材との間で圧縮される。このため、第1シート材と第2シート材との間の気体が排気されると、通気性柔軟物体の形状は、第1シート材と第2シート材とによる圧縮方向の力によって変形する。そのため、通気性柔軟物体を配置することによって、積層中間体に圧縮方向の力を負荷することができる。
【0010】
第3の形態は、上記の第1又は第2の形態において、前記載置工程は、前記積層中間体を一対の当て板で挟んだ積層板群を前記第1シート材に載置し、前記一対の当て板は、全周に亘って、前記中間体の外周よりも外側に突出していてもよい。
【0011】
この形態によると、排気工程において前記第1シート材と前記第2シート材との間から気体を排出することによって、第1シート材と第2シート材とから一対の当て板を介して積層中間体に圧縮方向の力を付与することができる。一対の当て板を積層中間体の外側に突出させることによって、中間体の中央部分に比較して周縁部分への圧縮応力が小さくなることを抑制することができる。これにより、積層体の厚みを均一にし得る。
【0012】
第4の形態は、上記の第1から第3の形態のいずれか1つの形態において、前記第1シート材と前記第2シート材とは、1枚のシート体で構成されてもよい。
【0013】
この形態によると、シート配置工程では、1枚のシート体を折り曲げることによって、容易に第2シート材を積層中間体に被せることができる。これにより、作業性が向上する。
【0014】
第5の形態は、上記の第1から第4の形態のいずれか1つの形態において、前記排気工程と前記加熱工程とが並行して実行されてもよい。
【0015】
この形態によると、積層体の製造期間を短縮することができる。
【0016】
第6の形態は、上記の第1から第5の形態のいずれか1つの形態において、前記第1シート材及び前記第2シート材の少なくとも一方は、0.05mmから0.075mmの厚さを有していてもよい。
【0017】
この形態によると、排気工程によって第1シート材と第2シート材との間から気体が排出されると、第1シート材と第2シート材との少なくとも一方を積層板群の形状に沿って積層板群に密着させることができる。これにより、第1シート材と第2シート材とから積層板群への圧縮方向の力が偏って加わることを抑制することができる。
【0018】
第7の形態は、上記の第1から第6の形態のいずれか1つの形態において、前記閉塞工程は、前記第1シート材と前記第2シート材とを熱圧着によって閉塞してもよい。
【0019】
この構成によると、前記第1シート材と前記第2シート材とを容易に気密に閉塞することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】積層体の製造方法を表すフローチャートを示す。
図2】積層板群の作成工程を説明するための斜視図を示す。
図3】積層板群の平面図を示す。
図4図3のIV-IV断面を表す断面図を示す。
図5】載置工程及び柔軟物体配置工程を説明するための斜視図を示す。
図6】閉塞工程を説明するための斜視図を示す。
図7】排気工程及び加熱工程を説明するための斜視図を示す。
図8】取出工程を説明するための斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(積層体の構成)
図1から図8を参照して、積層体の製造方法を説明する。最初に、本実施例の製造方法によって作製される積層体について説明する。積層体は、積層中間体20から作製することができる。図4に示すように、積層中間体20は、基板22と、一対のガラス板26、26と、一対の中間膜24、24と、を備える。積層中間体20は、基板22が中間膜24を介して、一対のガラス板26、26によって挟まれる構造を有する。本実施例では、基板22、一対のガラス板26、26及び一対の中間膜24、24は、いずれも透明の材料で作成されている。積層体は、例えば、ディスプレイ、建築材料、車両等に利用される。
【0022】
基板22は、ポリカーボネート製の平板である。基板22は、例えば1.0mmから10.0mmの厚み(例えば5.0mm)を有する。ガラス板26は、例えば基板22の1/5から1/10の厚み(例えば0.5mm)を有するガラス製の薄板である。中間膜24は、例えばEVA(Ethylen-Vinyl Acetate(エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂)の略)のような熱可塑性合成樹脂である。中間膜24は、ガラス板26の厚みに対して0.1倍から3倍程度の厚みを有する。平面視において、基板22は、全周に亘って、中間膜24及びガラス板26よりも大きい。
【0023】
(積層体の製造方法)
図1示すように、積層体の製造方法では、まず、S12において、積層板群10を作成する作成工程を実行する。作成工程では、基板22の表裏面のそれぞれに中間膜24及びガラス板26を順に配置する。作成工程では、基板22と一対の中間膜24、24と一対のガラス板26、26とは、未だ一体的に接合されていない。積層体の製造方法の各工程が完了すると、基板22と一対の中間膜24、24と一対のガラス板26、26とは、一体的に接合され、積層体が作製される。製造方法の途中において、基板22と一対の中間膜24、24と一対のガラス板26、26との組み合わせは、積層体の製造途中の中間体である積層中間体20である。
【0024】
次いで、図2に示すように、積層中間体20を一対の当て板32、32で挟む。当て板32は、以降の工程において、変形及び変質しにくい材質及び寸法を有する。当て板32は、例えばガラス製の平板である。なお、ガラス板26を保護するために、当て板32とガラス板26との間には、ポリエチレンテレフタラート等で作製される薄膜が配置されていてもよい。
【0025】
図3及び図4で示すように、平面視では、当て板32は、全周に亘って、積層中間体20よりtmmだけ大きい。例えば、tは、4.0から6.0の範囲である。tは、積層中間体20の方向Lの長さに応じて変化してもよい。これにより、積層板群10が作製される。なお、積層板群10において、当て板32と積層中間体20の基板22と中間膜24とガラス板26とが互いにずれないように、積層板群10をバンドで結束することにより、積層板群10を固定してもよい。バンドは、例えば、ポリプロピレン等、強度が高く耐熱性に優れた材料で作製されている。
【0026】
次いで、S14では、載置工程及び柔軟物体配置工程を実行する。図5に示すように、載置工程では、1枚のシート体50を広げ、複数の積層板群10を、互いに隙間を置いて、シート体50上に載置する。シート体50は、例えば、ナイロン等のポリアミド合成樹脂で作製されている。シート体50は、薄膜のフィルム状を有する。シート体50は、例えば、1.0mm以下の厚みである。シート体50は、0.5mmから0.75mmの厚みを有する。シート体50は、0.5mmであってもよい。
【0027】
シート体50は、図5の左右方向の中央の境界線56で区切られる第1シート部分52と第2シート部分54とを有する。複数の積層板群10は、第1シート部分52に載置される。積層板群10は、第2シート部分54には載置されない。なお、1枚のシート体50に載置される積層板群10の個数は特に限定されない。1枚のシート体50に、1個の積層板群10を載置してもよい。
【0028】
柔軟物体配置工程では、複数の積層板群10のそれぞれの周りに、柔軟物体100を配置する。柔軟物体100は、木綿等の綿、即ち、繊維が絡まりあって一塊の状態が維持されている物体である。柔軟物体100は、綿以外に、例えば、気体の通過を許容するナイロン等のポリマ、不織布、クロス等の布、スポンジ、ウール等の毛、紙であってもよい。柔軟物体100は、複数の積層板群10の間及び周囲に敷き詰められている。第1シート部分52複数の積層板群10と柔軟物体100とが配置されている位置は、第1シート部分52の外周の内側に収まっている。
【0029】
次いで、S16では、閉塞工程を実行する。図6に示すように、閉塞工程では、まず、排気用のホース70の先端に取り付けられているノズル72を、第1シート部分52上に配置する。次いで、シート体50を境界線56に沿って折り曲げることによって、第2シート部分54を第1シート部分52に重ねて配置する。これにより、複数の積層板群10は、第2シート部分54に覆われて、第1シート部分52と第2シート部分54とに挟まれる。次いで、図7に示すように、第1シート部分52と第2シート部分54との隙間を気密に閉塞する。なお、図7では、柔軟物体100は図示省略されている。
【0030】
具体的には、第1シート部分52と第2シート部分54とを、シーラ装置によって挟んで、熱圧着させる。シーラ装置は、例えば、一対の加熱部材を有する携帯型装置である。作業者は、シーラ装置の一対の加熱部材で第1シート部分52と第2シート部分54とを挟んで圧力を加えることによって、第1シート部分52と第2シート部分54とを溶着させる。これにより、シール部分60が形成される。シール部分60は、境界線56以外の三辺に沿って形成さされる。境界線56に沿ったシール部分は形成されない。シール部分60及び境界線56の内側では、第1シート部分52と第2シート部分54との間で、複数の積層板群10以外の部分が柔軟物体100によって埋められている。1枚のシート体50を折り曲げて第1シート部分52と第2シート部分54とを形成するために、第1シート部分52と第2シート部分54との境界線56を気密に閉塞せずに済む。作業性が向上する。
【0031】
また、ノズル72は、第1シート部分52と第2シート部分54との隙間の空間から外側に突出している。ノズル72が配置されている個所では、シール部分60は形成されない。ノズル72周辺では、シール部分60の代わりに、第1シート部分52と第2シート部分54とを、テープ62によって、ノズル72の周辺を気密に閉塞する。
【0032】
次いで、S18では、排気工程及び加熱工程が実行される。図7に示すように、ホース70に連結されているポンプ(図示省略)によって、ノズル72からホース70を介して、第1シート部分52と第2シート部分54との隙間の空間の気体(即ち空気)を、第1シート部分52と第2シート部分54との隙間の空間外に排気する。第1シート部分52と第2シート部分54との隙間の空間の気体は、柔軟物体100内を通過して、ノズル72から第1シート部分52と第2シート部分54との隙間の空間外に排気される。これにより、第1シート部分52と第2シート部分54との隙間が小さくなる。柔軟物体100は、第1シート部分52と第2シート部分54とに挟まれて圧縮され、徐々に変形していく(即ち、厚みが小さくなっていく)。
【0033】
柔軟物体100を配置することによって、排気工程の途中で、第1シート部分52と第2シート部分54とが密着してしまうことを防止することができる。これにより、第1シート部分52と第2シート部分54とが密着することによって、第1シート部分52と第2シート部分54との隙間が複数の空間に分断され、第1シート部分52と第2シート部分54との隙間の気体が適切に排気することができない事態を回避することができる。
【0034】
柔軟物体100は、通気孔、通気経路等を有することによって通気可能であって、後の排気工程において、第1シート部分52と第2シート部分54との間の空気が排気されるのに従って、第1シート部分52と第2シート部分54との圧縮によって徐々に変形するような物体であればよい。
【0035】
排気工程によって、第1シート部分52と第2シート部分54との隙間の気体が排気されて、第1シート部分52と第2シート部分54とによって、複数の積層板群10が圧縮力が負荷され、加圧される。柔軟物体100は、第1シート部分52と第2シート部分54とによって圧縮されるため、複数の積層板群10への圧縮力の負荷の妨げにならない。さらに、柔軟物体100は、変形により、一対の当て板32、32と、積層中間体20との囲まれた領域Vに入り込むため、積層中間体20の側面から圧縮力を加えられるとともに、一対の当て板32、32が撓みすぎるのを抑制することができる。
【0036】
また、一対の当て板32、32が積層中間体20の外周よりも外側に突出している。これにより、積層中間体20の周縁部分まで、圧縮方向の力を適切に加えることができる。この結果、積層中間体20において、圧縮方向の力が偏って負荷されることを抑制することができる。仮に、一対の当て板32、32が積層中間体20の外周よりも内側に位置している場合、積層中間体20の周縁に、一対の当て板32を介した力を加えることが不十分となり得る。ただし、シート体50が厚すぎると、一対の当て板32、32に過剰な力が加わり、撓んでしまうことがある。本実施例のシート体50は、薄いフィルム状である。このため、排気工程によって第1シート部分52と第2シート部分54との隙間の気体が排気されると、シート体50は、複数の積層板群10のそれぞれの外周面に沿って積層板群10に密着することができる。なお、シート体50と積層板群10との間には、その一部に柔軟物体100が存在する場合がある。この場合、柔軟物体100がシート体50と積層板群10との間で圧縮されることによって、シート体50は、柔軟物体100を挟んで、積層板群10の外周面に沿って変形される。これにより、一対の当て板32、32の積層中間体20よりも外側に突出している部分が第1シート部分52と第2シート部分54とに加圧されても、一対の当て板32、32に過剰な力が加わりにくいため、一対の当て板32、32が撓むことを抑制することができる。この結果、一対の当て板32、32が撓むことによって積層中間体20が一対の当て板32、32が撓んだ形状に倣った形状に形成されることを抑制することができる。
【0037】
排気工程を実行しながら、複数の積層板群10を加熱するオートクレーブ処理を実行する。これにより、中間膜24を溶融して、基板22とガラス板26とを接着させる。排気工程と加熱工程とを並行して実行することによって、製造期間を短縮することができる。
【0038】
次いで、S20では、取出工程を実行する。図8に示すように、シール部分60よりも内側のカット線80で第1シート部分52と第2シート部分54と切断し、シート体50を開ける。これにより、積層板群10を上方から吊り上げて取り出すことができる。一対の当て板32、32を積層体から取り外すことによって、積層体が作製される。
【0039】
カット線80で切断しても、シート体50が複数の積層板群10を配置することが可能な寸法を有する場合、シート体50を再利用することができる。
【0040】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0041】
(変形例1)第1シート部分52と第2シート部分54とは、切り離され別個のシート体であってもよい。
【0042】
(変形例2)加熱工程は、排気工程の後に実行してもよい。この場合、排気工程後に、ノズル72を第1シート部分52と第2シート部分54との間から抜き取り、ノズル72が挿入されていた箇所について、第1シート部分52と第2シート部分54とを気密に閉塞してもよい。この場合、第1シート部分52と第2シート部分54との閉塞には、テープを用いてもよい。
【0043】
(変形例3)第1シート部分52と第2シート部分54とは、熱圧着以外に、テープ等の異なる手段で気密に閉塞してもよい。
【0044】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0045】
10:積層板群、20:積層中間体、22:基板、24:中間膜、26:ガラス板、32:当て板、50:シート体、52:第1シート部分、54:第2シート部分、56:境界線、60:シール部分、62:テープ、70:ホース、72:ノズル、100:柔軟物体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8