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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093471
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】操作レバー構造
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/90 20180101AFI20240702BHJP
   B60N 2/22 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N2/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209863
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000151760
【氏名又は名称】株式会社東洋シート
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀 悠希
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BD03
3B087DB07
3B087DE05
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】強度が必要な部分では高い強度を確保し、外観見栄えが必要な部分では高い質感が得られるようにしながら、シートの修理時やメンテナンス時の作業性を向上させる。
【解決手段】操作レバー構造1は、車両用シートが有する回転軸40に固定される被固定部材10と、被固定部材10とは別体とされ、被固定部材10を覆うように形成され、回転軸40の径方向に延びるレバー部21を有する樹脂製の操作レバー部材20とを備えている。被固定部材10は、操作レバー部材20を構成する樹脂材よりも硬質な樹脂材で構成されている。操作レバー部材20と被固定部材10の一方の部材には係止孔12dが設けられ、他方の部材には、係止孔12dに係止する係止爪と、係止孔12dに係止した係止爪を非係止位置に切り替える切替操作部27とが設けられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートに設けられる操作レバー構造であって、
前記自動車用シートが有する回転軸に固定される被固定部材と、
前記被固定部材とは別体とされ、当該被固定部材を覆うように形成され、前記回転軸の径方向に延びるレバー部を有する樹脂製の操作レバー部材とを備え、
前記被固定部材は、前記操作レバー部材を構成する樹脂材よりも硬質な樹脂材で構成され、
前記操作レバー部材と前記被固定部材の一方の部材には、係止孔が設けられ、
前記操作レバー部材と前記被固定部材の他方の部材には、前記係止孔に係止する係止爪と、前記係止孔に係止した前記係止爪を前記係止孔から外れた非係止位置に切り替える切替操作部とが設けられていることを特徴とする操作レバー構造。
【請求項2】
請求項1に記載の操作レバー構造において、
前記被固定部材には、前記回転軸の径方向外方へ向けて突出するとともに前記回転軸の軸方向に延びる突出部が形成され、
前記操作レバー部材には、前記突出部が前記軸方向から挿入される溝部が形成され、
前記突出部における前記回転軸の周方向一方に位置する第1外側面と、前記溝部における前記第1外側面に対応する第1内側面とが互いに接するように配置されることを特徴とする操作レバー構造。
【請求項3】
請求項2に記載の操作レバー構造において、
前記突出部は、突出方向先端に近づくほど前記周方向の寸法が長くなるように形成されていることを特徴とする操作レバー構造。
【請求項4】
請求項3に記載の操作レバー構造において、
前記突出部における前記周方向他方に位置する第2外側面と、前記第1外側面との前記周方向の間隔は、前記突出方向先端に近づくほど離れるように設定され、
前記第2外側面と、前記溝部における前記第2外側面に対応する第2内側面とが互いに接するように配置されることを特徴とする操作レバー構造。
【請求項5】
請求項1に記載の操作レバー構造において、
前記被固定部材における前記径方向外側には、前記軸方向に延びる外側板部が設けられ、
前記外側板部には、前記係止孔が設けられ、
前記操作レバー部材には、前記切替操作部が設けられ、
前記切替操作部は、前記外側板部に対応するように配置された可撓板部によって構成され、
前記可撓板部における前記係止孔に対応する部分には、前記係止爪が設けられていることを特徴とする操作レバー構造。
【請求項6】
請求項5に記載の操作レバー構造において、
前記操作レバー部材には、前記被固定部材の前記軸方向外端を覆う端壁部が設けられ、
前記可撓板部は、前記端壁部よりも前記軸方向外方へ突出するように形成されていることを特徴とする操作レバー構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば自動車用シートのリクライング装置等に使用される操作レバー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示されている自動車用シートには、シートバックをシートクッションに対して傾動させるリクライニング装置が設けられている。リクライニング装置は、車幅方向に延びる回転軸を備えており、この回転軸を回動させることによってシートクッションの角度調整が可能に構成されている。
【0003】
特許文献1では、乗員の操作力を回転軸に伝達するための操作ノブが取り付けられている。操作ノブは、ナイロンエラストマからなる操作ノブ部と、ナイロンからなる操作力伝達部とで構成されており、操作力伝達部がブラケットに対してネジ止めされている。また、操作ノブ部と操作力伝達部とは2色成形によって一体的に製造されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平7-15428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の操作ノブは、操作ノブ部と操作力伝達部とが2色成形されるものなので、両者の材料は相溶性が良好な材料を選択する必要がある。しかしながら、操作ノブ部は、操作ノブの外観を構成する部分なので高い質感が得られる材料で構成したいという要求があり、一方、操作力伝達部は、ブラケットに固定される部分であることから応力が集中し易く、よって高強度の材料で構成したいという要求がある。したがって、2色成形が可能な材料の中から操作ノブ部と操作力伝達部の材料を選択するのが困難な場合がある。
【0006】
また、操作ノブ部は、乗員による操作を容易にするために大きく形成されているため、例えばシートを修理する際には、操作ノブ部が邪魔になり、操作ノブ部を取り外さなければならない場合がある。しかし、特許文献1の操作ノブはブラケットに対してネジ止めされているので、操作ノブを取り外すためにはネジを回転させるための工具が必要になり、作業性が良好であるとは言えなかった。
【0007】
本開示は、かかる点に鑑みたものであり、その目的とするところは、強度が必要な部分では高い強度を確保し、外観見栄えが必要な部分では高い質感が得られるようにしながら、シートの修理時やメンテナンス時の作業性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本開示では、車両用シートに設けられる操作レバー構造を前提とすることができる。操作レバー構造は、前記自動車用シートが有する回転軸に固定される被固定部材と、前記被固定部材とは別体とされ、当該被固定部材を覆うように形成され、前記回転軸の径方向に延びるレバー部を有する樹脂製の操作レバー部材とを備えている。前記被固定部材は、前記操作レバー部材を構成する樹脂材よりも硬質な樹脂材で構成されている。前記操作レバー部材と前記被固定部材の一方の部材には、係止孔が設けられている。前記操作レバー部材と前記被固定部材の他方の部材には、前記係止孔に係止する係止爪と、前記係止孔に係止した前記係止爪を前記係止孔から外れた非係止位置に切り替える切替操作部とが設けられている。
【0009】
この構成によれば、回転軸に固定される被固定部材が操作レバー部材よりも硬質な樹脂材で構成されているので、回転軸に対する被固定部材の固定強度が高まるとともに、応力集中による損傷が抑制される。一方、被固定部材を覆う操作レバー部材は、被固定部材とは別体であることから、例えば軟質で質感の高い樹脂材で構成することが可能になる。
【0010】
また、操作レバー部材のレバー部は回転軸の径方向に延びているので、シートの修理時やメンテナンス時の作業の邪魔になることがある。この場合は、切替操作部を操作して係止爪を係止孔から外れた位置に切り替えることで、操作レバー部材を被固定部材から取り外すことが可能になる。
【0011】
前記被固定部材には、前記回転軸の径方向外方へ向けて突出するとともに前記回転軸の軸方向に延びる突出部が形成されていてもよい。この場合、前記操作レバー部材には、前記突出部が前記軸方向から挿入される溝部を形成することができ、前記突出部における前記回転軸の周方向一方に位置する第1外側面と、前記溝部における前記第1外側面に対応する第1内側面とを互いに接するように配置できる。
【0012】
この構成によれば、被固定部材に操作レバー部材を組み付ける際には、被固定部材の突出部を操作レバー部材の溝部に対して軸方向から挿入すればよいので、組付時の作業性が良好になる。組付後、レバー部に対して回動力が作用した際には、操作レバー部材の溝部の第1内側面を介して被固定部材の突出部の第1外側面に回動力を確実に伝達できる。
【0013】
前記突出部は、突出方向先端に近づくほど前記周方向の寸法が長くなるように形成されていてもよく、この場合、突出部における周方向他方に位置する第2外側面と、前記第1外側面との周方向の間隔を、前記突出方向先端に近づくほど離れるように設定できる。そして、前記第2外側面と、前記溝部における前記第2外側面に対応する第2内側面とが互いに接するように配置されるので、操作レバー部材の回転方向及び軸方向に対して傾斜する2方向のガタツキを抑制できるとともに、これら3つ方向に対する強度を高めることができる。
【0014】
前記被固定部材における前記径方向外側には、前記軸方向に延びる外側板部を設けることができる。この場合、前記外側板部に前記係止孔を設け、前記操作レバー部材に前記切替操作部を設けることができる。前記切替操作部は、前記外側板部に対応するように配置された可撓板部によって構成することもでき、前記可撓板部における前記係止孔に対応する部分に前記係止爪を設けることで、係止爪が係止孔から抜ける方向に可撓板部を撓ませることで、係止爪を非係止位置に簡単に切り替えることができる。
【0015】
可撓板部は操作レバー部材の端壁部よりも軸方向外方へ突出するように形成されていてもよい。これにより、可撓板部を撓ませる操作が容易に行えるようになる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、自動車用シートが有する回転軸に固定される被固定部材を、操作レバー部材を構成する樹脂材よりも硬質な樹脂材で構成したので、強度が必要な部分では高い強度を確保し、外観見栄えが必要な部分では高い質感を得ることができる。操作レバー部材を被固定部材から取り外す際には、工具を用いることなく、切替操作部を操作すればよいので、シートの修理時やメンテナンス時の作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る操作レバー構造を備えた車両用シートの斜視図である。
図2】左側から見た操作レバー構造の分解斜視図である。
図3】右側から見た操作レバー構造の分解斜視図である。
図4】右側から見た操作レバー構造の斜視図である。
図5】操作レバー構造の右側面図である。
図6】カバーを取り外した状態を操作レバー構造の左側面図である。
図7図6におけるVII-VII線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る操作レバー構造1が設けられた車両用シート2を示すものである。車両用シート2は、例えば自動車の車室内に配設されるものであり、運転席であってもよいし、助手席であってもよく、また後部座席であってもよい。この実施形態の説明では、車両前側を単に「前」といい、車両後側を単に「後」というものとする。また、車両左側を単に「左」といい、車両右側を単に「右」というものとする。左右方向は車幅方向に一致している。
【0020】
車両用シート2は、自動車のフロアパネル(図示せず)に取り付けられるシートクッション3と、シートクッション3の後部に対してリクライニング装置4を介して取り付けられたシートバック5とを備えている。シートクッション3は、着座時の乗員の臀部から太腿の裏側を支持する部材である。一方、シートバック5は、着座時の乗員の腰部、背中、肩を支持する部材である。
【0021】
リクライニング装置4は、従来から周知のものであり、シートバック5をシートクッション3に対して前後方向に傾動させ、所望の傾動角度で固定可能な構造を備えている。例えば図2に示すように、リクライニング装置4は、シートクッション3の左側面から左方向に突出する回転軸40を有している。回転軸40は左右方向に延びており、回転軸40を操作レバー構造1によって回転させることにより、リクライニング装置4を操作することが可能になっている。
【0022】
回転軸40の先端側は、複数の凹凸が周方向に交互に形成されたスプライン部41を有している。回転軸40におけるスプライン部41の右側には周方向に連続して延びる環状溝42が形成されている。回転軸40は、例えば金属等の高強度な部材で構成されている。
【0023】
操作レバー構造1は、回転軸40に固定される樹脂製の被固定部材10と、被固定部材10とは別体とされた樹脂製の操作レバー部材20と、カバー30と、固定バネAとを備えている。固定バネAは、被固定部材10を回転軸40に固定するための部材であり、例えば線状のバネ材を屈曲成形してなるものである。すなわち、固定バネAは一対の脚部A1を有しており、一対の脚部A1にはそれぞれ凸部A2が形成されている。各凸部A2は、後述する被固定部材10の円筒部11に形成された2つのスリット11aに挿入される。
【0024】
被固定部材10は、操作レバー部材20を構成する樹脂材よりも硬質な樹脂材で構成された一体成形品である。被固定部材10を構成する樹脂材としては、例えばポリアセタール樹脂(POM)等の高強度な樹脂材を挙げることができる。操作レバー部材20を構成する樹脂材としては、例えばポリプロピレン等のように、被固定部材10よりも軟質で良好な質感を表現できる材料を挙げることができる。良好な質感を再現できる材料とは、例えば細かなシボの形成が可能な材料や、触感が柔らかく感じる材料等を挙げることができる。
【0025】
図3に示すように、被固定部材10は、回転軸40のスプライン部41が挿入される円筒部11と、前方向に突出する前側嵌合部12と、後方向に突出する後側嵌合部13と、上方へ突出する上方突出部14と、下方へ突出する下方突出部15とを備えている。尚、図示しないが、嵌合部が上下方向に突出していてもよいし、突出部が前後方向に突出していてもよい。また、嵌合部の数は1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。また、突出部の数は1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。前側嵌合部12、後側嵌合部13、上方突出部14及び下方突出部15は、円筒部11に一体成形されている。
【0026】
円筒部11の左右方向中央部よりも右寄りの部分には、2つのスリット11aが周方向に互いに間隔をあけて形成されている。スリット11aには、固定バネAの凸部A2(図2に示す)がそれぞれ挿入される。各スリット11aに挿入された凸部A2は、回転軸40の環状溝42に挿入されて環状溝42の内面に係合する。これにより、被固定部材10が回転軸40から抜けなくなる。尚、固定バネAの代わりに、例えば止め輪等を用いて被固定部材10の抜け止めを行ってもよい。
【0027】
図3に示すように、円筒部11は、左右方向に延びており、右端にのみ開口している。スプライン部41は、円筒部11に対して当該円筒部11の右端から挿入されるようになっている。円筒部11の内面は、回転軸40のスプライン部41(図2に示す)の外面に嵌合する凹凸面とされている。よって、円筒部11にスプライン部41が挿入されると、円筒部11の内面の形成された凹凸とスプライン部41の外面に形成された凹凸とが噛み合い、被固定部材10と回転軸40との相対回転が阻止される。また、円筒部11にスプライン部41を挿入すると、回転軸40の軸芯と円筒部11の軸芯とが一致する。よって、回転軸40の軸方向と円筒部11の軸方向とは一致し、また、回転軸40の径方向と円筒部11の径方向とは一致し、また、回転軸40の周方向と円筒部11の周方向とは一致することになる。回転軸40の軸方向は、車両の左右方向と一致している。
【0028】
前側嵌合部12は、円筒部11を基準とした時に当該円筒部11の径方向外方へ向けて突出するとともに円筒部11の軸方向に延びている。前側嵌合部12の上部は、前方へ向けて延びるとともに左右方向に延びる前側上板部12aで構成されている。前側嵌合部12の下部は、前方へ向けて延びるとともに左右方向に延びる前側下板部12bで構成されている。前側上板部12aと前側下板部12bとは上下方向に間隔をあけて配置されるとともに、互いに平行に形成されている。
【0029】
前側嵌合部12の径方向外側は、前側上板部12aの先端(前端)から前側下板部12bの先端(前端)まで延びる第1外側板部12cで構成されている。第1外側板部12cは、被固定部材10における径方向外側に位置付けられるとともに、円筒部11の軸方向に延びている。第1外側板部12cの上下方向の寸法は、前側上板部12aの前後方向の寸法または前側下板部12bの前後方向の寸法よりも長く設定されている。第1外側板部12cの左右方向中央部よりも左寄りの部分には、前側係止孔12dが形成されている。前側係止孔12dは、第1外側板部12cを厚み方向に貫通している。前側係止孔12dの形状は矩形状とされており、前側係止孔12dの上下方向の寸法が前側係止孔12dの左右方向の寸法よりも長く設定されている。
【0030】
後側嵌合部13も、円筒部11を基準とした時に当該円筒部11の径方向外方へ向けて突出するとともに円筒部11の軸方向に延びている。後側嵌合部13の上部は、後方へ向けて延びるとともに左右方向に延びる後側上板部13aで構成されている。後側嵌合部13の下部は、後方へ向けて延びるとともに左右方向に延びる後側下板部13bで構成されている。後側上板部13aと後側下板部13bとは上下方向に間隔をあけて配置されるとともに、互いに平行に形成されている。後側嵌合部13の径方向外側は、後側上板部13aの先端(後端)から後側下板部13bの先端(後端)まで延びる第2外側板部13cで構成されている。第2外側板部13cは、被固定部材10における径方向外側に位置付けられるとともに、円筒部11の軸方向に延びている。第2外側板部13cの上下方向の寸法は、後側上板部13aの前後方向の寸法または後側下板部13bの前後方向の寸法よりも長く設定されている。第2外側板部13cの左右方向中央部よりも左寄りの部分には、前側係止孔12dと同様な後側係止孔13dが形成されている。尚、この実施形態では、前側嵌合部12と後側嵌合部13とが、円筒部11の軸芯を対称の中心とした点対称な形状となっているが、点対称な形状でなくてもよい。
【0031】
上方突出部14は、円筒部11を基準とした時に当該円筒部11の径方向外方へ向けて突出するとともに円筒部11の軸方向に延びている。上方突出部14における回転軸40の周方向一方に位置する側面は上部第1外側面14aとされ、上方突出部14における回転軸40の周方向他方に位置する側面は上部第2外側面14bとされている。上部第1外側面14a及び上部第2外側面14bは、共に軸方向に延びており、上部第1外側面14aと上部第2外側面14bとの間隔は、上方突出部14の突出方向先端に近づくほど離れるように設定されている。つまり、上方突出部14は、突出方向先端に近づくほど回転軸40の周方向の寸法が長くなるように形成されている。
【0032】
上方突出部14の突出方向先端面は、回転軸40の軸芯を中心として円弧状に延びる第1円弧面14cで構成されており、この第1円弧面14cは回転軸40の軸方向に連続して形成されている。第1円弧面14cは、上部第1外側面14aの突出方向先端から上部第2外側面14bの突出方向先端まで延びている。
【0033】
下方突出部15も、円筒部11を基準とした時に当該円筒部11の径方向外方へ向けて突出するとともに円筒部11の軸方向に延びている。下方突出部15における回転軸40の周方向一方に位置する側面は下部第1外側面15aとされ、下方突出部15における回転軸40の周方向他方に位置する側面は下部第2外側面15bとされている。下部第1外側面15a及び下部第2外側面15bは、共に軸方向に延びており、下部第1外側面15aと下部第2外側面15bとの間隔は、下方突出部15の突出方向先端に近づくほど離れるように設定されている。つまり、下方突出部15は、突出方向先端に近づくほど回転軸40の周方向の寸法が長くなるように形成されている。
【0034】
下方突出部15の突出方向先端面は、回転軸40の軸芯を中心として円弧状に延びる第2円弧面15cで構成されており、この第2円弧面15cは回転軸40の軸方向に連続して形成されている。第2円弧面15cは、下部第1外側面15aの突出方向先端から下部第2外側面15bの突出方向先端まで延びている。尚、この実施形態では、上方突出部14と下方突出部15とが、円筒部11の軸芯を対称の中心とした点対称な形状となっているが、点対称な形状でなくてもよい。
【0035】
操作レバー部材20は、被固定部材10を覆うように形成されており、回転軸40の径方向に延びるレバー部21を有している。操作レバー部材20も一体成形品である。この実施形態では、操作レバー部材20が前方へ向けて延びており、操作レバー部材20の上下方向の寸法は、先端(前端)へ行くほど短くなっている。
【0036】
操作レバー部材20は、被固定部材10の外周面を囲むように形成された筒状部20Aを有している。筒状部20Aの右端が開放されており、回転軸40に固定されている被固定部材10を筒状部20Aの右端から当該筒状部20A内に挿入することが可能になっている。すなわち、筒状部20Aの内面の前側部分には被固定部材10の前側嵌合部12が回転軸40の軸方向から挿入される前側溝部22が形成され、また、筒状部20Aの内面の後側部分には被固定部材10の後側嵌合部13が回転軸40の軸方向から挿入される後側溝部23が形成されている。また、筒状部20Aの内面の上側部分には被固定部材10の上方突出部14が回転軸40の軸方向から挿入される上側溝部24が形成され、また、筒状部20Aの内面の下側部分には被固定部材10の下方突出部15が回転軸40の軸方向から挿入される下側溝部25が形成されている。従って、被固定部材10に操作レバー部材20を組み付ける際には、被固定部材10の嵌合部12、13及び突出部14、15を操作レバー部材20の溝部22~25に対して軸方向から挿入すればよいので、組付時の作業性が良好になる。組付後は、レバー部21に対して回動力が作用した際、操作レバー部材20の溝部22~25を介して被固定部材10の突出部14、15に回動力を確実に伝達できる。
【0037】
前側溝部22は回転軸40の軸方向に延びている。前側溝部22の内面における前側上板部12aに対応する面は前側上面22aで構成されており、図4図5に示すように前側上板部12aに沿うように形成され、前側上板部12aと前側上面22aとは互いに接するように配置される。前側溝部22の内面における前側下板部12bに対応する面は前側下面22bで構成されており、前側下板部12bに沿うように形成され、前側下板部12bと前側下面22bとは互いに接するように配置される。
【0038】
後側溝部23も回転軸40の軸方向に延びている。後側溝部23の内面における後側上板部13aに対応する面は後側上面23aで構成されており、後側上板部13aに沿うように形成され、後側上板部13aと後側上面23aとは互いに接するように配置される。後側溝部23の内面における後側下板部13bに対応する面は後側下面23bで構成されており、後側下板部13bに沿うように形成され、後側下板部13bと後側下面23bとは互いに接するように配置される。
【0039】
上側溝部24は回転軸40の軸方向に延びている。上側溝部24は、上部第1内側面24a、上部第2内側面24b及び上側円弧面24cで構成される。すなわち、上側溝部24の内面における上部第1外側面14aに対応する面は上部第1内側面24aで構成されており、上部第1外側面14aに沿うように形成され、上部第1外側面14aと上部第1内側面24aとは互いに接するように配置される。上側溝部24の内面における上部第2外側面14bに対応する面は上部第2内側面24bで構成されており、上部第2外側面14bに沿うように形成され、上部第2外側面14bと上部第2内側面24bとは互いに接するように配置される。上方突出部14の上部第1外側面14aと上部第2外側面14bの間隔が突出方向先端に近づくほど離れているので、上側溝部24の上部第1内側面24aと上部第2内側面24bの間隔は上端に近づくほど離れることになる。上側溝部24の内面における第1円弧面14cに対応する面は、第1円弧面14cに沿って延びる上側円弧面24cで構成されている。
【0040】
下側溝部25は回転軸40の軸方向に延びている。下側溝部25は、下部第1内側面25a、下部第2内側面25b及び下側円弧面25cで構成される。すなわち、下側溝部25の内面における下部第1外側面15aに対応する面は下部第1内側面25aで構成されており、下部第1外側面15aに沿うように形成され、下部第1外側面15aと下部第1内側面25aとは互いに接するように配置される。下側溝部25の内面における下部第2外側面15bに対応する面は下部第2内側面25bで構成されており、下部第2外側面15bに沿うように形成され、下部第2外側面15bと下部第2内側面25bとは互いに接するように配置される。下方突出部15の下部第1外側面15aと下部第2外側面15bの間隔が突出方向先端に近づくほど離れているので、下側溝部25の下部第1内側面25aと下部第2内側面25bの間隔は下端に近づくほど離れることになる。下側溝部25の内面における第2円弧面15cに対応する面は、第2円弧面15cに沿って延びる下側円弧面25cで構成されている。
【0041】
図3に示すように、後側溝部23の内部における後側上面23aと後側下面23bとの間の部分には、第2外側板部13cに対応するように配置された後側可撓板部26が設けられている。後側可撓板部26は、左右方向に延びるとともに上下方向に延びている。後側可撓板部26の基端は当該後側可撓板部26の右端とされ、また、後側可撓板部26の先端は当該後側可撓板部26の左端とされている。
【0042】
後側可撓板部26の基端は筒状部20Aにおける右端近傍の部分と一体化されており、後側可撓板部26の他の部分は筒状部20Aから分離している。これにより、後側可撓板部26の先端に対して前後方向の力を加えると、樹脂が持つ弾性によって後側可撓板部26が前後方向に撓み変形する。
【0043】
後側可撓板部26における後側係止孔13dに対応する部分には、後側係止爪26aが設けられている。図7に示すように、後側係止爪26aは、後側可撓板部26の前面から前方へ向けて突出しており、後側係止孔13dに入るように形成されている。後側係止爪26aが後側係止孔13dに入った状態で、後側係止爪26aが後側係止孔13dの周縁部に係止して抜けないようになっている。後側可撓板部26に対して外部から力が作用していない時には、後側係止爪26aが後側係止孔13dに入った状態となるように、後側可撓板部26の形状が設定されている。後側係止爪26aが後側係止孔13dに入った位置が係止位置である。これにより、操作レバー部材20が被固定部材10から外れなくなる。
【0044】
一方、後側可撓板部26の先端に対して後向きの力を作用させると、後側可撓板部26が後に撓み変形して後側係止孔13dに係止した後側係止爪26aを後側係止孔13dから外れた非係止位置に切り替えることが可能になる。つまり、後側可撓板部26は、係止位置にある後側係止爪26aを非係止位置に切り替えるための切替操作部である。
【0045】
前側溝部22の内部における前側上面22aと前側下面22bとの間の部分には、第1外側板部12cに対応するように配置された前側可撓板部27が設けられている。前側可撓板部27は、後側可撓板部26と同様に、左右方向に延びるとともに上下方向に延びており、前側可撓板部27の基端は当該前側可撓板部27の右端とされ、また、前側可撓板部27の先端は当該前側可撓板部27の左端とされている。
【0046】
前側可撓板部27の基端は筒状部20Aにおける右端近傍の部分と一体化されており、前側可撓板部27の他の部分は筒状部20Aから分離している。これにより、前側可撓板部27の先端に対して前後方向の力を加えると、樹脂が持つ弾性によって前側可撓板部27が前後方向に撓み変形する。
【0047】
前側可撓板部27における前側係止孔12dに対応する部分には、前側係止爪27aが設けられている。前側係止爪27aは、前側可撓板部27の後面から後方へ向けて突出しており、前側係止孔12dに入るように形成されている。前側係止爪27aが前側係止孔12dに入った状態で、前側係止爪27aが前側係止孔12dの周縁部に係止して抜けないようになっている。前側可撓板部27に対して外部から力が作用していない時には、前側係止爪27aが前側係止孔12dに入った状態となるように、前側可撓板部27の形状が設定されている。前側係止爪27aが前側係止孔12dに入った位置が係止位置である。
【0048】
一方、前側可撓板部27の先端に対して前向きの力を作用させると、前側可撓板部27が前に撓み変形して前側係止孔12dに係止した前側係止爪27aを前側係止孔12dから外れた非係止位置に切り替えることが可能になる。つまり、前側可撓板部27は、係止位置にある前側係止爪27aを非係止位置に切り替えるための切替操作部である。
【0049】
図2に示すように、操作レバー部材20には、被固定部材10の軸方向外端を覆う端壁部28が設けられている。端壁部28の前側部分には、前側貫通孔28aが形成されており、図6に示すように、被固定部材10の前側嵌合部12が前側貫通孔28aから左側方に臨むようになっている。前側可撓板部27の先端は、端壁部28の前側貫通孔28aから左側へ突出するように形成されており、これにより、前側可撓板部27の先端が端壁部28よりも軸方向外方へ突出することになるので、前側可撓板部27を撓ませる操作が容易に行える。
【0050】
また、端壁部28の後側部分には、後側貫通孔28bが形成されており、被固定部材10の後側嵌合部13が後側貫通孔28bから左側方に臨むようになっている。後側可撓板部26の先端は、端壁部28の後側貫通孔28bから左側へ突出するように形成されており、これにより、後側可撓板部28の先端が端壁部28よりも軸方向外方へ突出することになるので、後側可撓板部28を撓ませる操作が容易に行える。
【0051】
カバー30は、操作レバー部材20の端壁部28を左から覆うように形成された円板状をなしている。カバー30の周縁部には、操作レバー部材20の左側面に形成された被係合部29に係合する凸部30aが形成されている。カバー30の凸部30aを操作レバー部材20の被係合部29に係合させることにより、カバー30が操作レバー部材20に対して着脱可能に取り付けられる。
【0052】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、リクライニング装置4の回転軸40に固定される被固定部材10が操作レバー部材20よりも硬質な樹脂材で構成されているので、回転軸40に対する被固定部材10の固定強度が高まるとともに、応力集中による損傷が抑制される。一方、被固定部材10を覆う操作レバー部材20は、被固定部材10とは別体であることから、例えば軟質で質感の高い樹脂材で構成することが可能になる。よって、強度が必要な部分では高い強度を確保し、外観見栄えが必要な部分では高い質感を得ることができる。
【0053】
また、操作レバー部材20のレバー部21は回転軸40の径方向に延びているので、シートの修理時やメンテナンス時の作業の邪魔になることがある。レバー部21が邪魔になる場合は、まず、カバー30を操作レバー部材20から取り外す。その後、後側可撓板部26に対して作業者が指で後向きに力を加えて後側可撓板部26を後に撓み変形させると、後側係止爪26aが後側係止孔13dから外れる。同時に、前側可撓板部27に対して指で前向きに力を加えて前側可撓板部27を前に撓み変形させると、前側係止爪27aが前側係止孔12dから外れる。これにより、工具を用いることなく、操作レバー部材20を被固定部材10から取り外すことができる。尚、取り外した操作レバー部材20は再度取り付けることもできる。
【0054】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。例えば、本発明は、リクライニング装置4を操作する場合以外にも、ランバーサポート機構や、シートクッション3の高さ調整機構を操作する際に適用することもできる。また、操作レバー構造1は、シートクッション3の右側面から右方向に突出する回転軸(図示せず)を操作する際に使用することもでき、この場合は上述した構造を左右反対にすればよい。
【0055】
また、上記実施形態では、被固定部材10に係止孔12d、13dを設け、操作レバー部材20に係止爪26a、27aを設けているが、これとは反対に、被固定部材10に係止爪を設け、操作レバー部材20に係止孔を設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上説明したように、本発明に係る操作レバー構造は、例えば自動車用シートのリクライング装置等に利用できる。
【符号の説明】
【0057】
1 操作レバー構造
2 車両用シート
10 被固定部材
12c 第1外側板部
13c 第2外側板部
12d、13d 係止孔
14、15 突出部
14a 第1外側面
14b 第2外側面
20 操作レバー部材
21 レバー部
24a 第1内側面
24b 第2内側面
26a、27a 係止爪
26 後側可撓板部(切替操作部)
27 前側可撓板部(切替操作部)
40 回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7