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特開2024-93477プログラム、漏れ検査装置及び漏れ検査方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093477
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】プログラム、漏れ検査装置及び漏れ検査方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/20 20230101AFI20240702BHJP
   G06Q 50/06 20240101ALI20240702BHJP
【FI】
G06Q10/20
G06Q50/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209873
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】521195043
【氏名又は名称】株式会社弘栄ドリームワークス
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】吉田 益実
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC06
5L049CC15
5L050CC06
(57)【要約】
【課題】漏れ検査の記録に要する時間が短く、記録の精度も高い手法を実現する。
【解決手段】コンピュータに、流体の漏れを検査する現場の測定面の三次元マップを取得する機能と、ユーザが指定する測定点を三次元マップ上の対応する地点に紐づける機能と、測定点で測定された振動データを対応する地点に紐づける機能と、を実現させるためのプログラムを提供する。
【選択図】図19
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータに、
流体の漏れを検査する現場の測定面の三次元マップを取得する機能と、
ユーザが指定する測定点を前記三次元マップ上の対応する地点に紐づける機能と、
前記地点に、前記測定点で測定された振動データを紐づける機能と、
を実現させるためのプログラム。
【請求項2】
前記三次元マップに前記測定点を紐づけるための仮想の三次元格子を表示する機能
を更に実現させるための請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記表示する機能は、前記三次元格子を、前記現場を撮像した画像に重ねて表示する、
請求項2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記表示する機能は、前記三次元格子を、作業者に取り付けて使用するデバイスを通じてユーザの視野内に表示する、
請求項2に記載のプログラム。
【請求項5】
前記三次元格子は、区画を規定する枠線だけで表現される、
請求項2に記載のプログラム。
【請求項6】
前記三次元格子は、区画を表す単位形状の集合体として表現される、
請求項2に記載のプログラム。
【請求項7】
前記表示する機能は、前記三次元マップのうちユーザが指定した測定範囲に対応する座標情報に基づいて前記三次元格子を表示する、
請求項2に記載のプログラム。
【請求項8】
前記表示する機能は、ユーザが指定した地点に対応する前記三次元マップの座標情報に基づいて前記三次元格子を表示する、
請求項2に記載のプログラム。
【請求項9】
前記表示する機能は、ユーザにより観察が可能な空間に前記三次元格子を表示する、
請求項2に記載のプログラム。
【請求項10】
前記三次元格子の透過率を可変する機能
を更に実現させるための請求項2に記載のプログラム。
【請求項11】
前記三次元マップが既に存在する現場で測定が開始された場合、当該三次元マップに紐づけて記録されている前記測定点の位置と当該測定点で測定された前記振動データの解析結果を記録データから読み出して表示する機能
を更に実現させるための請求項1に記載のプログラム。
【請求項12】
ユーザが新たに指定した測定点を前記三次元マップに追加する機能
を更に実現させるための請求項11に記載のプログラム。
【請求項13】
流体の漏れを検査する現場の測定面の三次元マップを取得する取得部と、
ユーザが指定する測定点と、当該測定点で測定された振動データを、前記三次元マップ上の対応する地点に紐づける処理部と、
を有する漏れ検査装置。
【請求項14】
流体の漏れを検査する現場の測定面を計測する計測部と、
前記計測部により生成された前記測定面の三次元マップを取得する取得部と、
ユーザが指定する測定点と、当該測定点で測定された振動データを、前記三次元マップ上の対応する地点に紐づける処理部と、
を有する漏れ検査装置。
【請求項15】
コンピュータが実行する漏れ検査方法であって、
流体の漏れを検査する現場の測定面の三次元マップを取得する処理と、
ユーザが指定する測定点を前記三次元マップ上の対応する地点に紐づける処理と、
前記地点に、前記測定点で測定された振動データを紐づける処理と、
を有する漏れ検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プログラム、漏れ検査装置及び漏れ検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
漏水等を検査する現場では、測定点毎に振動データを記録し、漏水等が疑われる箇所を記録に残す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-164613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
漏水等が疑われる箇所の記録にGPS(=Global Positioning System)で測位された位置を紐付けることも可能であるが、民間で利用可能なGPSの距離の精度は約10mと大きい。一方で、現場の写真や地図等に測定点等を手書きで記録する方法は、作業者の負担が大きいだけでなく、ヒューマンエラーによる記録の不備も発生する。
【0005】
本発明は、漏れ検査の記録に要する時間が短く、記録の精度も高い手法の実現を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、コンピュータに、流体の漏れを検査する現場の測定面の三次元マップを取得する機能と、ユーザが指定する測定点を前記三次元マップ上の対応する地点に紐づける機能と、前記地点に、前記測定点で測定された振動データを紐づける機能と、を実現させるためのプログラムである。
請求項2に記載の発明は、前記三次元マップに前記測定点を紐づけるための仮想の三次元格子を表示する機能を更に実現させるための請求項1に記載のプログラムである。
請求項3に記載の発明は、前記表示する機能は、前記三次元格子を、前記現場を撮像した画像に重ねて表示する、請求項2に記載のプログラムである。
請求項4に記載の発明は、前記表示する機能は、前記三次元格子を、作業者に取り付けて使用するデバイスを通じてユーザの視野内に表示する、請求項2に記載のプログラムである。
請求項5に記載の発明は、前記三次元格子は、区画を規定する枠線だけで表現される、請求項2に記載のプログラムである。
請求項6に記載の発明は、前記三次元格子は、区画を表す単位形状の集合体として表現される、請求項2に記載のプログラムである。
請求項7に記載の発明は、前記表示する機能は、前記三次元マップのうちユーザが指定した測定範囲に対応する座標情報に基づいて前記三次元格子を表示する、請求項2に記載のプログラムである。
請求項8に記載の発明は、前記表示する機能は、ユーザが指定した地点に対応する前記三次元マップの座標情報に基づいて前記三次元格子を表示する、請求項2に記載のプログラムである。
請求項9に記載の発明は、前記表示する機能は、ユーザにより観察が可能な空間に前記三次元格子を表示する、請求項2に記載のプログラムである。
請求項10に記載の発明は、前記三次元格子の透過率を可変する機能を更に実現させるための請求項2に記載のプログラムである。
請求項11に記載の発明は、前記三次元マップが既に存在する現場で測定が開始された場合、当該三次元マップに紐づけて記録されている前記測定点の位置と当該測定点で測定された前記振動データの解析結果を記録データから読み出して表示する機能を更に実現させるための請求項1に記載のプログラムである。
請求項12に記載の発明は、ユーザが新たに指定した測定点を前記三次元マップに追加する機能を更に実現させるための請求項11に記載のプログラムである。
請求項13に記載の発明は、流体の漏れを検査する現場の測定面の三次元マップを取得する取得部と、ユーザが指定する測定点と、当該測定点で測定された振動データを、前記三次元マップ上の対応する地点に紐づける処理部と、を有する漏れ検査装置である。
請求項14に記載の発明は、流体の漏れを検査する現場の測定面を計測する計測部と、前記計測部により生成された前記測定面の三次元マップを取得する取得部と、ユーザが指定する測定点と、当該測定点で測定された振動データを、前記三次元マップ上の対応する地点に紐づける処理部と、を有する漏れ検査装置である。
請求項15に記載の発明は、コンピュータが実行する漏れ検査方法であって、流体の漏れを検査する現場の測定面の三次元マップを取得する処理と、ユーザが指定する測定点を前記三次元マップ上の対応する地点に紐づける処理と、前記地点に、前記測定点で測定された振動データを紐づける処理と、を有する漏れ検査方法である。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の発明によれば、漏れ検査の記録に要する時間が短く、記録の精度も高い手法を実現できる。
請求項2記載の発明によれば、測定面内の高低差や測定に使用する三次元スキャナの性能のばらつきにも対応できる。
請求項3記載の発明によれば、仮想の三次元格子を画面上で確認しながら振動データの測定作業を実行できる。
請求項4記載の発明によれば、少ない視線移動で振動データの測定作業を実行できる。
請求項5記載の発明によれば、仮想の三次元格子を表示した状態でも測定面を直接観察することができる。
請求項6記載の発明によれば、測定点と区画の位置関係の確認を容易化できる。
請求項7記載の発明によれば、測定面の起伏や傾斜によらず測定点と区画の位置関係の確認を容易化できる。
請求項8記載の発明によれば、測定点と区画との関係の確認を容易化できる。
請求項9記載の発明によれば、測定点と区画との関係の確認を容易化できる。
請求項10記載の発明によれば、測定点と区画との関係の確認を容易化できる。
請求項11記載の発明によれば、過去の測定時に記録した測定点を今回の測定時に容易に確認できる。
請求項12記載の発明によれば、今回の測定時に指定する測定点を過去の測定時に記録した測定点と一緒に確認できる。
請求項13記載の発明によれば、漏れ検査の記録に要する時間が短く、記録の精度も高い手法を実現できる。
請求項14記載の発明によれば、漏れ検査の記録に要する時間が短く、記録の精度も高い手法を実現できる。
請求項15記載の発明によれば、漏れ検査の記録に要する時間が短く、記録の精度も高い手法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1で使用する漏水検査システムの概念構成例を説明する図である。
図2】実施の形態1で使用する漏水検査システムの接続構成と装置間におけるデータの流れの概要を説明する図である。
図3】実施の形態1で使用する情報端末のハードウェア構成の一例を説明する図である。
図4】実施の形態1で使用する解析サーバのハードウェア構成の一例を説明する図である。
図5】データベースのデータ構造例を示す図である。
図6】測定時に実行される処理動作の一部分を説明するフローチャートである。
図7】測定時に実行される処理動作の残り部分を説明するフローチャートである。
図8】メッシュの範囲の設定画面例を示す図である。(A)は範囲の1辺の長さが100cmに設定された操作画面を示し、(B)は範囲の1辺の長さが200cmに設定された操作画面を示す。
図9】範囲の設定によるメッシュの見え方の違いを説明する図である。(A)は1辺の長さが100cmのメッシュの表示例を示し、(B)は1辺の長さが200cmのメッシュの表示例を示す。
図10】メッシュの厚みの設定画面例を示す図である。(A)は厚みが50mmに設定された操作画面を示し、(B)は厚みが100mmに設定された操作画面を示す。
図11】厚みが異なる三次元メッシュの見え方を説明する模式図である。(A)は厚みが50mmの例であり、(B)は厚みが100mmの例であり、(C)は厚みが150mmの例である。
図12】基準高さの設定例を説明する図である。(A)はユーザが指定した三次元メッシュの配置地点の高さを基準高さとする例であり、(B)は三次元メッシュを配置する範囲内の最下点を基準高さとする例であり、(C)は三次元メッシュを配置する範囲内の最上点を基準高さとする例である。
図13】厚みの設定による三次元メッシュの見え方の違いを説明する図である。(A)は厚みが0mmの平面メッシュの表示例を示し、(B)は厚みが200mmの三次元メッシュの表示例を示す。
図14】三次元メッシュの透過率の設定画面例を示す図である。(A)は透過率が10%に設定された操作画面を示し、(B)は透過率が90%に設定された操作画面を示す。
図15】透過率の設定による三次元メッシュの見え方の違いを説明する図である。(A)は透過率が10%のメッシュの見え方を示し、(B)は透過率が90%のメッシュの見え方を示す。
図16】振動データの測定プログラムが起動された直後の画面遷移を説明する図である。(A)はメニュー画面であり、(B)~(D)は現場情報の入力画面である。
図17】メッシュの生成条件の受け付け画面の遷移を説明する図である。(A)は初期画面であり、(B)~(D)はメッシュの生成条件の入力に用いる操作画面である。
図18】メッシュの配置に関連する画面の遷移を説明する図である。(A)はメッシュを配置する地点の指定例を示す操作画面であり、(B)はメッシュの向きの調整例を示す操作画面であり、(C)はメッシュの配置の確定例を示す操作画面であり、(D)は測定点の受け付けが可能になった状態を示す操作画面である。
図19】測定に関連する画面の遷移を説明する図である。(A)は測定点の指定を説明する操作画面であり、(B)は測定開始の受け付けに使用する操作画面であり、(C)は測定開始が指示された状態を説明する操作画面であり、(D)は測定中の表示を説明する操作画面である。
図20】1か所以上の測定が完了した場合の画面の遷移を説明する図である。(A)は1つ目の測定点について測定が終わった状態を示す操作画面であり、(B)は2つ目の測定点について測定が終わった状態を示す操作画面であり、(C)は測定された振動データの保存の確定に使用する操作画面である。
図21】メッシュの生成条件の受付画面の他の遷移例を説明する図である。(A)は初期画面であり、(B)はメッシュの生成条件の入力に用いる操作画面であり、(C)はメッシュの配置を受け付ける操作画面である。
図22】同一現場で測定された記録がある場合の測定点の指定に用いる操作画面の一例を説明する図である。
図23】測定結果の確認時の処理動作例を説明するフローチャートである。
図24】振動データの再生時における操作画面の遷移例を説明する図である。(A)は取得日時でソートされた振動データの一覧画面であり、(B)は再生画面である。
図25】実施の形態2で使用する漏水検査システムの概念構成例を説明する図である。
図26】実施の形態3で使用する漏水検査システムの概念構成例を説明する図である。
図27】実施の形態4で使用する漏水検査システムの概念構成例を説明する図である。
図28】実施の形態5で使用する漏水検査システムの概念構成例を説明する図である。
図29】測定面に沿って生成される三次元メッシュの例を説明する図である。(A)は測定現場の断面図であり、(B)は三次元メッシュの表示例である。
図30】基準面を設定することが難しい測定現場における平面メッシュの設定例を説明する図である。(A1)は測定現場を作業者の視点から見た図であり、(A2)は配管の奥行方向における位置関係を示し、(B1)は平面メッシュの表示例を示し、(B2)は平面メッシュと配管の奥行方向における位置関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
<実施の形態1>
<システム構成>
図1は、実施の形態1で使用する漏水検査システム1の概念構成例を説明する図である。
【0010】
図1に示す漏水検査システム1は、漏水検査の現場で使用される漏水検査デバイス10と、解析サーバ40と、通信ネットワーク50で構成される。
ここでの通信ネットワーク50は、例えばインターネット、4Gや5G等の移動通信システムである。なお、通信ネットワーク50の一部には、無線LAN(=Local Area Network)や有線LANを含んでもよい。
【0011】
図1に示す漏水検査デバイス10は、測定点の振動を測定する漏水探知機20と、漏水探知機20で測定された振動データの解析結果等を作業者に提示する情報端末30とで構成される。ここでの情報端末30は、現場で使用する漏れ検査装置の一例である。
ここでの測定点には、例えば露出している配管の表面、配管が埋設されている地表面、配管が設けられている構造物の壁面や天井、弁等の設備を想定する。
本実施の形態では、振動データを測定する地点を「測定点」又は「測定箇所」という。本実施の場合、測定点又は測定箇所は、現場の作業者が決定する。
【0012】
本実施の形態における配管には、例えば配水管、給水管、排水管、下水道管を想定する。
水道管、排水管、下水道管には液体が流れる。ここでの液体には、例えば上水、下水、雨水、冷却水がある。
漏水検査デバイス10は、気体が流れる配管からの漏洩検査にも利用が可能である。気体が流れる配管には、ガス管、冷媒管がある。気体には、都市ガスの他、燃料や反応物としてのガス、空気、蒸気等が含まれる。
なお、配管には、各種の化学プラントや工場で扱われる液状の材料や燃料が流れる配管も含まれる。これらの液体や気体は、配管を流れる流体の一例である。
【0013】
漏水探知機20は、測定点の振動を伝達する金属製の感振棒21と、作業者が把持するグリップ22と、感振棒21から伝搬した振動データを電気信号に変換する振動センサ23と、通信ケーブル24と、装置本体25とで構成される。振動センサ23には、例えば骨伝導ピックアップセンサを使用する。
【0014】
なお、グリップ22と感振棒21を取り外した振動センサ23の先端には、アタッチメント21Aの着脱が可能である。アタッチメント21Aは、振動センサ23との取付側とは反対側の面に3つの爪が取り付けられている。3つの爪の先端部分は概略円弧形状であり、地表面に凹凸があっても隙間なく地表面に接触できる。地表面と隙間なく接触することで振動が振動センサ23に伝わり易くなり、測定の安定性が向上される。
【0015】
また、振動センサ23に感振棒21を取り付けることで不要なノイズも検知され易くなるが、アタッチメント21Aを振動センサ23の先端に直接取り付けることで不要なノイズの増幅が抑制され、測定対象である振動成分だけを効率的に振動センサ23に伝達させることが可能になる。
例えば測定面がアスファルトやコンクリートの場合には、振動センサ23の先端にアタッチメント21Aを取り付けて振動を測定する。
【0016】
一方で、バルブや配管に感振棒21を直接押し当てることが可能な場合や地面に穴を開けて地中に埋まっている配管に感振棒21の先端を押し当てて振動を測定する場合には、感振棒21の先端にアタッチメント21Aを取り付けずに振動を測定する。
装置本体25には、例えば充電可能なバッテリが内蔵されており、バッテリからは振動センサ23等の動作に必要な電力が供給される。
【0017】
また、装置本体25には、例えば振動センサ23から電気信号として受信した振動データのゲインを調整するアンプと、増幅後の振動データを情報端末30に送信する通信デバイスが内蔵されている。
本実施の形態の場合、通信デバイスには、USB(=Universal Serial Bus)等のコネクタを使用する。例えば装置本体25と情報端末30は、電源ラインを含むシリアルバスケーブル24Aを通じて電気的に接続される。
【0018】
装置本体25の上端部には、情報端末30に設けられるカメラ35(後述する図3参照)による撮像を妨げないように切り欠き26が設けられている。切り欠き26の位置や大きさは、装置本体25に装着して使用する情報端末30に応じて定める。
この他、装置本体25には、振動データを音としてイヤホンから再生する場合に使用する音量調整用のボリュームボタン、振動センサ23から入力される振動データの信号強度調整用のコントローラ、電源ボタン等も内蔵される。
【0019】
本実施の形態の場合、情報端末30としてスマートフォンを使用する。
この他、情報端末30には、USB無線アダプタやBluetooth(=登録商標)アダプタにより無線接続されるタブレット型のコンピュータ、ノート型のコンピュータ、スマートウォッチやスマートグラス等を使用することも可能である。
【0020】
図1に示す解析サーバ40は、クラウド側に位置し、振動データの解析処理を実行する。もっとも、解析サーバ40は、現場に持ち込んだノート型のコンピュータやデスクトップ型のコンピュータでもよい。
解析サーバ40は、振動データのスペクトルやスペクトラムの波形図等を生成する他、測定点が漏水箇所である可能性をパーセント等の数値で算出する機能を備える。
【0021】
解析サーバ40には、例えば漏水判定用の人工知能が実装されており、漏水の可能性を数値化する。人工知能は、測定点で測定された振動データを教師データとして学習した学習モデルとして実現される。学習に使用する測定点は、漏水が確認された測定点だけでなく、漏水が確認されなかった測定点を含んでもよい。
【0022】
学習モデルに、振動データを入力すると、漏水の可能性がパーセント等の数値で出力される。なお、学習モデルは、配管の材質、測定に使用する器具の種類、管の推定深さ、配管が埋設されている土等の密度、配管の口径、水圧、測定面の状態に応じた振動データを教師データとして学習することが望ましい。
学習アルゴリズムには、例えばニューラルネットワークを使用する。
【0023】
<装置間のデータの流れ>
図2は、実施の形態1で使用する漏水検査システム1の接続構成と装置間におけるデータの流れの概要を説明する図である。
不図示の感振棒21(図1参照)で検知された振動データは、振動センサ23を通じ、装置本体25の本体回路25Aに供給される。本体回路25Aには、振動データを電子的に増幅するアンプが内蔵されている。本実施の形態におけるアンプのゲインは、スイッチ操作により3段階で切り替えが可能である。
1回の測定では、例えば5秒間、振動データが取得される。
【0024】
本体回路25Aには、漏水による振動成分が多く含まれる周波数帯域を選択的に抽出する帯域フィルタも設けられている。帯域フィルタの通過帯域は、例えば概略100Hzから4kHzである。
ただし、帯域フィルタを通過する周波数帯域の振動データには、漏水音以外にも環境音も含まれる。環境音は、測定点に依存する音であり、漏水音の検知ではノイズ成分となる。
【0025】
本体回路25Aで増幅された振動データは、情報端末30に出力される。情報端末30は、取得された振動データに、測定時刻や現場の情報等を付加して解析サーバ40にアップロードする。振動データ等のアップロードは、1回の測定毎に実行される場合もあれば、複数回分をまとめて実行される場合もある。
解析サーバ40は、振動データを解析し、振動データのスペクトルやスペクトラムを生成する。また、本実施の形態で使用する解析サーバ40は、測定点が漏水箇所である可能性も解析する。これらの情報は、解析結果として、解析サーバ40から情報端末30に送信される。
【0026】
情報端末30が解析サーバ40から解析結果を取得するまでには、おおよそ15秒~20秒を要する。もっとも、この時間は、通信環境や解析サーバ40の処理能力によっても異なり得る。なお、解析する振動データの数や解析の内容によっては、より長い時間が必要になることもあれば、より短い時間で済む場合もある。
情報端末30は、解析サーバ40から取得した解析結果をリアルタイムで現場の作業者に表示する。
【0027】
<ハードウェア構成>
<情報端末の構成>
図3は、実施の形態1で使用する情報端末30のハードウェア構成の一例を説明する図である。
図3に示す情報端末30は、装置全体の動作を制御するプロセッサ31と、主記憶装置として用いられるRAM(=Random Access Memory)32と、不揮発性の半導体メモリであるフラッシュメモリ33と、タッチパネル34と、カメラ35と、LiDARスキャナ36と、解析サーバ40(図2参照)等との通信に使用する通信モジュール37とで構成される。この他、不図示の各種のセンサが搭載される。ここでのセンサには、例えば9軸慣性センサ(3軸のジャイロセンサと3軸の加速度センサと3軸の地磁気センサ)がある。
【0028】
本実施の形態の場合、プロセッサ31は、CPU(=Central Processing Unit)やGPU(=Graphics Processing Unit)で構成され、プログラムの実行を通じて各種の機能を実現する。
機能の一つに、現場の地表面等の三次元マップ(以下「地表面マップ」等という。)を取得する機能がある。この機能は、特許請求の範囲における「取得部」に対応する。
別の機能の一つに、測定点の振動データを取得する機能がある。
【0029】
他の機能の一つに、取得した振動データを、解析サーバ40にアップロードする機能がある。
他の機能の一つに、作業者が指定した測定点を地表面マップ上の座標に紐づける機能がある。本実施の形態では、画面操作を通じて測定点を入力するが、画像認識の技術を使用して測定が開始した時点の感振棒21の先端位置を測定点として取得してもよい。
【0030】
他の機能の一つに、振動データを測定点に対応する地表面マップ上の座標に紐づける機能がある。この機能は、特許請求の範囲における「処理部」に対応する。
他の機能の一つに、作業員による測定作業を支援する操作画面を表示する機能がある。
【0031】
測定作業を支援する機能には、操作画面上に、現場の測定面を測定することにより生成された地表面マップ上に、仮想の三次元格子(以下「メッシュ」ともいう)を拡張現実(AR:Augmented Reality)画像として表示するサブ機能が含まれる。メッシュは、測定された振動データを地表面マップに紐づけるための指標として表示される。
この他、測定作業を支援する機能には、操作画面上に、測定点を表す仮想のマークを拡張現実として表示するサブ機能も含まれる。
また、測定作業を支援する機能には、解析結果として取得されたスペクトルやスペクトラムを表示するサブ機能も含まれる。
【0032】
RAM32は、プログラムの実行領域として使用される。
フラッシュメモリ33には、BIOS(=Basic Input Output System)やファームウェアの他、漏水検査用のアプリケーションプログラムや振動データ等が記録される。
本実施の形態の場合、振動データは、解析サーバ40へのアップロードの完了後は削除される。従って、通信不良等により解析サーバ40への振動データのアップロードが完了しない場合、フラッシュメモリ33には、振動データが保管される。
【0033】
タッチパネル34は、ディスプレイと、その表面に配置された静電容量式のタッチセンサとで構成される。
ディスプレイには、例えば液晶ディスプレイや有機EL(=Electro-Luminescence)ディスプレイが使用される。
タッチセンサは、光の透過性の高いデバイスである。このため、タッチセンサは、作業者の視認を妨げることなく、作業者のタップ操作等を検知できる。
【0034】
カメラ35には、例えばCMOS(=Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサが使用される。
LiDAR(=Light Detection And Ranging)スキャナ36は、出力されたレーザー光が対象物で反射されて戻ってくるまでの時間や位相のずれの計測を通じ、対象物までの距離を測定するデバイスである。LiDARスキャナ36は、三次元スキャナともいう。なお、LiDARスキャナ36は、計測部の一例である。
この距離の測定を通じ、対象物の表面形状を表す地表面マップが生成される。
【0035】
通信モジュール37には、例えばUSB(=Universal Serial Bus)、無線LAN、ブルートゥース(登録商標)、4Gや5G等の移動通信システムに準拠するデバイスを使用する。
本実施の形態におけるプロセッサ31と、RAM32と、フラッシュメモリ33は、いわゆるコンピュータを構成する。
【0036】
<解析サーバの構成>
図4は、実施の形態1で使用する解析サーバ40のハードウェア構成の一例を説明する図である。
図4に示す解析サーバ40は、装置全体の動作を制御するプロセッサ41と、主記憶装置として用いられるRAM42と、BIOS等が記録されるROM(Read Only Memory)43と、副記憶装置として用いられるハードディスク装置44と、通信ネットワーク50(図1参照)との通信に用いられる通信モジュール45とで構成される。なお、これらのデバイスは、バス等の信号線46を通じて接続される。
【0037】
なお、解析サーバ40には、ディスプレイの他、キーボードやマウス等のデバイスが接続されてもよい。
また、解析サーバ40は、単一のサーバである必要はなく、役割や機能が異なる複数のサーバの集合体でもよい。
【0038】
プロセッサ41は、CPUやGPUで構成され、プログラムの実行を通じて各種の機能を実現する。
本実施の形態の場合、機能の一部には、情報端末30から受信した振動データを記録する機能、振動データを解析して情報端末30に返信する機能等がある。解析結果は、ハードディスク装置44に記録される。
【0039】
なお、ハードディスク装置44には、漏水検査のためのデータベース400(後述する図5参照)が記録されている。データベース400には、現場からアップロードされる振動データや解析結果等が測定点に紐付けて記録される。
この他、ハードディスク装置44には、オペレーティングシステムや解析用のアプリケーションプログラムも記録される。
もっとも、ハードディスク装置44の代わりに、大容量の半導体メモリ、磁気メモリ(例えば磁気抵抗メモリ)、光メモリチップを使用してもよい。
【0040】
通信モジュール45には、例えば無線LAN、イーサネット(登録商標)、4Gや5G等の移動通信システムに準拠するデバイスが使用される。
本実施の形態におけるプロセッサ41と、RAM42と、ROM43は、いわゆるコンピュータを構成する。
【0041】
<データベースのデータ構造例>
図5は、データベース400のデータ構造例を示す図である。
図5に示すデータ構造は一例であり、表示した項目の代わりに他の項目を含んでもよい。また、図5には表示されていない項目を含んでもよい。また、図5に表示した項目の一部を含まなくてもよい。
【0042】
現場ID401は、漏水検査の現場を特定する情報との紐付けに使用するIDである。ここでのIDは、漏水検査の現場の名称や住所等に紐付けられている。漏水検査の現場の名称や住所等は、別のテーブルに記録される。
測定日402には、測定を行った日付が記録される。図5では、月と日で測定日が特定されているが、データ上の測定日は測定した年や時刻を含めて記録してもよい。
【0043】
全体画像ID403は、現場を撮像した画像との紐付けに使用するIDである。本実施の形態では、測定点の特定に使用する現場周辺に対応する画像や図面等を「全体画像」と呼ぶ。なお、画像は静止画に限らず動画像を含めてもよい。
地表面マップID404は、情報端末30(図1参照)からアップロードされた現場の地表面マップとの紐づけに使用するIDである。なお、地表面マップは、ハードディスク装置44の別領域に記録される。
【0044】
メッシュ生成条件405は、測定範囲の指標として提示されるメッシュの生成条件を規定する情報である。メッシュは、AR画像として現場の作業者に提示される。
本実施の形態の場合、メッシュの生成条件は、「範囲」、「厚み」、「透過率」で規定される。
【0045】
もっとも、メッシュの生成条件は、他の情報を含んでもよい。例えば他の情報として、メッシュの表示に用いる色、メッシュの種類、メッシュの表示の有無を含めてもよい。
メッシュ基準点406は、地表面マップ上でのメッシュの位置関係を特定する座標を与える。メッシュ基準点406は、例えば水平面内におけるメッシュの中心点の座標で規定される。
【0046】
もっとも、地表面マップ上でのメッシュの位置関係の特定が可能であれば、メッシュ基準点406は、水平面内におけるメッシュの中心点である必要はない。
例えばメッシュが三次元格子の場合、三次元格子の最下面の中心点でもよいし、三次元格子の厚み方向の中心点でもよいし、三次元格子の最上面の中心点でもよい。その他、メッシュ基準点406は、概略長方体形状のメッシュの8個の頂点のいずれかの位置でもよい。
【0047】
メッシュ内位置情報407は、測定点に対応するメッシュ内の区画の位置を示す情報である。本実施の形態の場合、メッシュは、水平面内について9行9列の区画で構成される。なお、行方向と列方向の区画の数は任意であり、例えば5個でも10個でもよい。また、行方向の区画の数と列方向の数は異なってもよい。例えば行方向には5個、列方向には10個でもよい。
ここでの区画は、現場を撮像した画像に対応する三次元マップの部分領域をも規定する役割もある。
【0048】
図5の場合、メッシュ内位置情報407は、測定点に対応する区画の座標として与えられる。
例えば図中の「9*9」は、9行目かつ9列目に位置する区画を意味する。因みに、座標の原点は、予め定められている。例えば北を基準方位とする場合に、基準方位側に位置する辺の左隅を座標の原点とする。
測定点座標408は、測定点に対応する地表面マップ上の座標である。
【0049】
測定点ID409は、測定点の管理上のIDである。図5に示すデータベース400の場合、1行目と2行目の測定点は同じである。このことは、同じ測定点について2回の測定が実行されたことを意味する。
測定時刻410には、振動データの測定時刻が記録される。測定時刻410には、例えば情報端末30が振動データを取得した時刻を使用する。
振動データID411は、記憶領域に記録されている振動データを特定するIDである。
【0050】
撮像画像ID412は、測定点に紐付けて現場で撮像された画像を特定するIDである。複数枚の画像が撮像された場合には、複数のIDが記録される。
解析波形ID413は、ハードディスク装置44(図4参照)に記録されている振動データのスペクトルやスペクトラム等を特定するIDである。
スペクトルは、横軸を周波数、縦軸を信号強度(dB)とする特性図である。スペクトラムは、横軸を時間、縦軸を周波数とし、各時刻における周波数毎の信号強度(dB)の違いを色調の違いで表現する特性図である。
【0051】
漏水確率414には、測定点が漏水箇所である可能性の確率を与える数値が記録される。本実施の形態では、漏水箇所の可能性をパーセントで与える。なお、漏水確率414に代えて、又は、一緒に漏水の可能性の分類を記録してもよい。
ここでの解析波形や漏水確率は、いずれも解析結果の一例である。
漏水箇所の設定415には、作業者が漏水箇所として設定したか否かの情報が記録される。
【0052】
<処理動作>
<測定時>
以下では、図6図7を使用して測定時の処理動作例について説明する。
図6は、測定時に実行される処理動作の一部分を説明するフローチャートである。図7は、測定時に実行される処理動作の残り部分を説明するフローチャートである。なお、図中に示す記号のSはステップを意味する。
【0053】
本実施の形態の場合、図6に示す処理は、情報端末30のプロセッサ31(図3参照)によるプログラムの実行を通じて実現される。
最初に測定の現場等の情報の設定を受け付けた情報端末30は、同じ場所で測定した履歴があるか否かを判定する(ステップ1)。場所の一致は、データベース400(図5参照)の現場ID401(図5参照)に紐づけられている現場の名称や住所等との照合により判定する。
【0054】
なお、現場の画像を撮像するタイミングは任意である。従って、現場の画像の撮像は、振動データの測定作業とは別に行い、測定された振動データに紐づけてもよい。また、現場の画像は、LiDARスキャナ36による測位と同時に撮像してもよい。画像の撮像には、情報端末30のカメラ35(図3参照)が使用される。
【0055】
初めて測定する現場の場合、ステップ1で否定結果が得られる。この場合、情報端末30は、LiDARスキャナ36(図3参照)により撮像範囲の地表面マップを生成する(ステップ2)。本実施の形態の場合、地表面マップは、水平面として生成される。水平面の法線は、鉛直方向(重力方向)と平行である。水平面は、測定面の傾斜角や凹凸、構造物や自然物の有無によらず、鉛直方向(重力方向)を基準方向として生成される。
ここでの地表面マップは、前述したように三次元マップの一例である。なお、生成される地表面マップの精度は、LiDARスキャナ36の精度に依存する。
【0056】
因みに、地表面マップは、振動データの測定対象である配管が地面や床面に埋設されている場合であり、配管が天井や壁面に埋設されている場合には、天井面マップや壁面マップ等と呼んでもよい。天井面マップも水平面として生成される。また、壁面マップは垂直面として生成される。垂直面は鉛直方向(重力方向)と平行である。
【0057】
なお、LiDARスキャナ36による測位は地表面マップの生成後も継続される。例えば振動データの測定作業中も継続される。従って、作業者が現場を移動する場合でも、地表面マップとの照合は継続される。このため、移動先で測定点を指定する場合でも、地表面マップに対する測定点の紐づけが可能である。
【0058】
次に、情報端末30は、メッシュの生成条件の記録があるか否かを判定する(ステップ3)。
メッシュの生成条件の記録が存在しない場合、ステップ3で否定結果が得られる。なお、記録が存在しても生成条件を変更する場合や新たに生成条件を指定する指示を受け付けた場合、情報端末30は、ステップ3で否定結果を得る。この場合、情報端末30は、メッシュの生成条件を受け付ける(ステップ4)。なお、メッシュの生成条件の詳細については後述する。
【0059】
一方、メッシュの生成条件の記録が存在する場合、ステップ3で肯定結果が得られる。この場合、情報端末30は、既存の生成条件を読み出す(ステップ5)。
ところで、ステップ1で肯定結果が得られた場合(すなわち、測定の記録が存在する現場の場合)、情報端末30は、既存の地表面マップを読み出す(ステップ6)。なお、測定の都度、地表面マップを生成する場合には、ステップ1及びステップ6の省略が可能である。
【0060】
ステップ4又はステップ5又はステップ6の実行後、情報端末30は、作成された地表面マップと撮像中の地表面とを照合する(ステップ7)。ここでの地表面は、測定面の一例である。前述したように測定面には、天井面や壁面もある。
なお、地表面マップの生成後も、LiDARスキャナ36による地表面までの距離の測定や情報端末30の姿勢の変化の検知は継続される。このため、情報端末30は、作成された地表面マップのどの部分を情報端末30で撮像中かを常に把握している。
【0061】
次に、情報端末30は、メッシュを配置する地点を受け付ける(ステップ8)。例えば情報端末30は、作業者がタップしたタッチパネル34(図3参照)上の位置に対応する地表面マップの座標を、メッシュの配置位置として受け付ける。情報端末30は、作業者が指定した位置を、水平面内におけるメッシュの中心に設定する。
次に、情報端末30は、撮像中の地表面の画像にメッシュを合成して表示する(ステップ9)。メッシュは、例えばステップ8で受け付けた位置が中心となるように表示される。
【0062】
続いて、情報端末30は、メッシュの位置や生成条件が確定したか否かを判定する(ステップ10)。
作業者からメッシュの位置や生成条件の変更の指示を受け付けた場合、ステップ10で否定結果が得られる。この場合、情報端末30は、受け付けた内容にメッシュの表示を変更した後、ステップ10の判定を繰り返す。
作業者からメッシュの位置や生成条件の確定を受け付けた場合、ステップ10で肯定結果が得られる。これにより、メッシュと地表面マップとの位置関係が確定する。
【0063】
次に、情報端末30は、測定点を受け付ける(ステップ11)。例えば情報端末30は、作業者がタップしたタッチパネル34上の位置を測定点として受け付ける。測定点は、例えば感振棒21(図1参照)の先端が位置する地点に設定される。測定点を受け付けると、仮想のマークが作業画面上に合成表示される。
もっとも、測定点として受け付けた位置に感振棒21の先端を位置決めしてもよい。
【0064】
この後、情報端末30は、測定ボタンの操作を検出したか否かを判定する(ステップ12)。測定ボタンの操作が検出されない場合、ステップ12で否定結果が得られる。この場合、情報端末30は、ステップ12の判定を繰り返す。
一方、測定ボタンの操作が検出された場合、ステップ12で肯定結果が得られる。この場合、情報端末30は、振動データを測定点に紐づけて記録する(ステップ13)。
【0065】
次に、情報端末30は、保存ボタンの操作を検出したか否かを判定する(ステップ14)。
保存ボタンの操作が検出されない場合、ステップ14で否定結果が得られる。この場合、情報端末30は、キャンセルボタンの操作を検出したか否かを判定する(ステップ15)。
【0066】
キャンセルボタンの操作が検出されない場合、ステップ15で否定結果が得られる。この場合、情報端末30は、ステップ14に戻る。すなわち、情報端末30は、いずれかの操作が検出されるまで、ステップ14とステップ15の判定を繰り返す。
【0067】
因みに、保存ボタンの操作が検出された場合、ステップ14で肯定結果が得られる。また、キャンセルボタンの操作が検出された場合、ステップ15で肯定結果が得られる。
ステップ14で肯定結果が得られた場合、情報端末30は、振動データを仮保存の状態に設定する(ステップ16)。本実施の形態の場合、振動データの記録には2重確認方式を採用するためである。
【0068】
続いて、情報端末30は、保存の確定ボタンの操作を検出したか否かを判定する(ステップ17)。
保存の確定ボタンの操作が検出された場合、ステップ17で肯定結果が得られる。この場合、情報端末30は、仮保存されている振動データと測定点のデータの保存を確定する(ステップ18)。
【0069】
一方、保存の確定ボタンの操作が検出されない場合、ステップ17で否定結果が得られる。この場合、情報端末30は、別の測定点を受け付けたか否かを判定する(ステップ19)。
別の測定点を受け付けた場合、ステップ19で肯定結果が得られる。この場合、情報端末30は、ステップ12に戻り、新たに指定された測定点について測定ボタンの操作の有無を判定する。
【0070】
一方、別の測定点を受け付けなかった場合、ステップ19で否定結果が得られる。この場合、情報端末30は、キャンセルボタンの操作を検出したか否かを判定する(ステップ20)。
キャンセルボタンの操作が検出されない場合、ステップ20で否定結果が得られる。この場合、情報端末30は、ステップ17に戻る。すなわち、情報端末30は、いずれかの操作が検出されるまで、ステップ17、ステップ19、ステップ20の判定を繰り返す。
【0071】
一方、キャンセルボタンの操作が検出された場合、ステップ20で肯定結果が得られる。
ステップ15で肯定結果が得られた場合、又は、ステップ20で肯定結果が得られた場合、情報端末30は、仮保存されている振動データと測定点を破棄する(ステップ21)。
以上により、測定時の処理動作が終了する。
【0072】
<メッシュの生成条件>
以下では、ステップ5(図6参照)の実行時にタッチパネル34(図3参照)に表示される操作画面例に基づき、メッシュの生成条件について説明する。すなわち、既存のメッシュの生成条件を読み出して作業者に確認を求める操作画面例について説明する。
【0073】
<範囲>
図8は、メッシュの範囲の設定画面例を示す図である。(A)は範囲の1辺の長さが100cmに設定された操作画面300Aを示し、(B)は範囲の1辺の長さが200cmに設定された操作画面300Bを示す。
本実施の形態における「範囲」は、メッシュの水平面内の大きさを規定する。このため、範囲の数値が大きいほどメッシュの面積は大きくなり、数値が小さいほどメッシュの面積は小さくなる。
【0074】
本実施の形態の場合、水平面内におけるメッシュの外形は正方形とする。従って、2辺の長さは同じである。もっとも、水平面内におけるメッシュの外形は長方形でも、多角形でも、円その他の自由形状でもよい。
操作画面300A及び300Bは、メッシュの生成条件の記録が存在する場合(ステップ3で肯定結果が得られる場合)の画面例である。このため、設定欄301には「データを取得できました。記録されている以下のデータをロードします。よろしいですか?」との文が表示されるとともに、「範囲」等の各項目に初めから数値が表示されている。
【0075】
例えば操作画面300Aの「範囲」の欄には「100」、操作画面300Bの「範囲」の欄には「200」が表示されている。
本実施の形態の場合、数値の単位はセンチメートルである。なお、数値の単位としてメートルやミリメートルでもよい。
なお、「OK」ボタン302を作業者がタップすると、表示されている数値の設定が確定する。なお、数値は、変更が可能である。
【0076】
図9は、範囲の設定によるメッシュの見え方の違いを説明する図である。(A)は1辺の長さが100cmのメッシュの表示例を示し、(B)は1辺の長さが200cmのメッシュの表示例を示す。
1辺の長さが200cmのメッシュの方が、1辺の長さが100cmのメッシュよりも大きいことが分かる。
なお、メッシュの外縁に沿って柵を表示してもよい。柵の表示により、メッシュの外縁の確認が容易になる。もっとも、柵の表示は任意である。
【0077】
本実施の形態の場合、メッシュは9行9列の区画で区分されている。このため、1つの区画のサイズも、メッシュの1辺の長さに比例して大きさが変化している。図9の場合、1辺の長さが200cmのメッシュの1区画の方が、1辺の長さが100cmのメッシュの1区画よりも大きいことが分かる。
なお、1つの区画のサイズを固定とし、メッシュの大きさに応じて、メッシュを構成する区画の数が変化してもよい。
メッシュを複数の区画で区分することにより、メッシュ内の位置関係の確認が容易になる。
【0078】
<厚み>
図10は、メッシュの厚みの設定画面例を示す図である。(A)は厚みが50mmに設定された操作画面300Cを示し、(B)は厚みが100mmに設定された操作画面300Dを示す。
操作画面300C及び300Dも、メッシュの生成条件の記録が存在する場合(ステップ3で肯定結果が得られる場合)の画面例である。このため、設定欄301の各項目には既に数値が表示されている。
【0079】
本実施の形態の場合、測定面は地表面であるので、ここでの「厚み」は、鉛直方向の長さに相当する。
厚みが0mmであることは、厚みを有しない平面形状のメッシュを意味する。以下では、このメッシュを平面メッシュという。
厚みが非0mmであることは、鉛直方向に厚みを有する立体形状のメッシュを意味する。以下では、このメッシュを三次元メッシュという。
もっとも、平面メッシュも三次元メッシュも三次元格子の一例である。
【0080】
平面メッシュも三次元メッシュも、AR画像として、現場を撮像した画像内に合成される。
ところで、地表面に起伏(凹凸)や傾斜がある場合、平面メッシュの一部又は全部の高さが地表面よりも下になり、測定範囲の指標としての役割が低下する可能性が生じる。
そこで、本実施の形態の厚みの設定を可能として、現場の地表面の起伏等によらずメッシュの視認を可能にしている。
【0081】
また、メッシュは、地表面マップを基準に表示されるが、スマートフォン等の情報端末30(図1参照)に搭載されるLiDARスキャナ36の測定精度は、産業用のLiDARスキャナに比して低い。
加えて、作業者が使用する情報端末30に搭載されているLiDARスキャナ36(図3参照)の精度にもばらつきが想定される。このため、地表面マップの精度のばらつきを考慮する必要がある。
【0082】
この観点からも、本実施の形態では、メッシュの厚みの調整を可能としている。
ところで、三次元メッシュの場合、各区画が立体形状となる。
三次元メッシュの厚み方向の区画の数が固定の場合、三次元メッシュ全体の厚みに比例して1つ分の区画の厚みも変動する。
一方で、1つ分の区画の厚みが固定の場合、三次元メッシュ全体の厚みに応じて、厚み方向に並ぶ区画の数も変動する。
【0083】
図11は、厚みが異なる三次元メッシュの見え方を説明する模式図である。(A)は厚みが50mmの例であり、(B)は厚みが100mmの例であり、(C)は厚みが150mmの例である。
図11の場合、地表面は傾斜している。なお、地表面の傾斜角は一定である。この場合、三次元メッシュのX軸方向の左端と右端との間で高低差が生じる。
【0084】
図11では、三次元メッシュを配置する範囲内で最も低い高さ(X軸の左端の高さ)を基準高さとし、設定された厚みで三次元メッシュを表示している。
図11(A)の場合(厚みが50mmの場合)、三次元メッシュの上面の高さが地表面より高いのは、X軸方向について概略左半分の部分である。このため、高さが地表面の方が高い概略右半分の部分では三次元メッシュを観察できない。
【0085】
一方、図11(B)の場合(厚みが100mmの場合)、測定範囲の指標である三次元メッシュの上面は、全範囲で地表面よりも高くなる。このため、地表面が最も高い領域でも、三次元メッシュの上面の観察が可能になる。
同様に、図11(C)の場合(厚みが150mmの場合)も、測定範囲の指標である三次元メッシュの上面の全てが地表面よりも高くなる。このため、地表面が最も高い領域でも、三次元メッシュの上面の観察が可能になる。
現実の地表面には、起伏(凹凸)や傾斜の他、構造物が存在することがある。このため、三次元メッシュの生成精度が高くても、厚みの調整は必要である。
【0086】
図12は、基準高さの設定例を説明する図である。(A)はユーザが指定した三次元メッシュの配置地点の高さを基準高さとする例であり、(B)は三次元メッシュを配置する範囲内の最下点を基準高さとする例であり、(C)は三次元メッシュを配置する範囲内の最上点を基準高さとする例である。
【0087】
図12(A)の場合、基準高さは、ユーザが指定した三次元メッシュの配置地点の地表面の高さに一致する。このため、厚みの設定により、ユーザが注目する地点の周囲については三次元メッシュの上面の観察が可能になる可能性が高くなる。
【0088】
図12(B)の場合、基準面の高さは、三次元メッシュを配置する範囲内に含まれる地表面の最下点に一致する。このため、最下点付近の地表面の部分には三次元メッシュが表示されるものの、三次元メッシュの厚みより高い地表面の部分では三次元メッシュの確認には厚みを増やす調整が必要になる。
【0089】
図12(C)の場合、基準面の高さは、三次元メッシュを配置する範囲内に含まれる地表面の最上点に一致する。このため、三次元メッシュの全体が地表面よりも高くなる。結果的に、三次元メッシュの全体の観察が可能である。もっとも、地表面の最下点と三次元メッシュの基準面との乖離が大きくなる。このため、基準面よりも下方についても三次元メッシュの厚みの設定を可能としてもよい。
【0090】
図13は、厚みの設定による三次元メッシュの見え方の違いを説明する図である。(A)は厚みが0mmの平面メッシュの表示例を示し、(B)は厚みが200mmの三次元メッシュの表示例を示す。
図13に示す表示例では、平面メッシュや三次元メッシュを透過して地表面の状態の観察が可能であるが、これは透過率の設定が0%ではないためである。図13の場合、三次元メッシュは、厚み方向に4つの区画に区分されている。
【0091】
また、図13に示す三次元メッシュの場合、三次元メッシュの内部構造は表示されていない。情報が増え過ぎることによる視認性の低下を回避するためである。もっとも、内部構造も透過的に表現してもよい。
なお、図13では、三次元メッシュの厚みが200mmの場合を例示しているが、あくまでも厚みの見え方の説明のためであり、この例の場合、200mmの厚みは過剰である。
【0092】
<透過率>
図14は、三次元メッシュの透過率の設定画面例を示す図である。(A)は透過率が10%に設定された操作画面300Eを示し、(B)は透過率が90%に設定された操作画面300Fを示す。
操作画面300E及び300Fも、メッシュの生成条件の記録が存在する場合(ステップ3で肯定結果が得られる場合)の画面例である。このため、設定欄301の各項目には既に数値が表示されている。
【0093】
図15は、透過率の設定による三次元メッシュの見え方の違いを説明する図である。(A)は透過率が10%のメッシュの見え方を示し、(B)は透過率が90%のメッシュの見え方を示す。
透過率が10%の場合、下地となる地表面の状態がわずかに見える程度であるが、透過率が90%の場合、メッシュの区画を表す格子とともに下地となる地表面がほぼ透過的に見えている。
【0094】
<測定時における操作画面の遷移>
以下では、図16図22を使用して、図6及び図7に例示したフローチャートの進行に伴い情報端末30に表示される操作画面の遷移例について説明する。
【0095】
<初めての測定時>
図16は、振動データの測定プログラムが起動された直後の画面遷移を説明する図である。(A)はメニュー画面310Aであり、(B)~(D)は現場情報の入力画面310B~310Dである。
メニュー画面310Aには、測定の開始を指示する「測定開始」ボタン311が配置されている。メニュー画面310Aでは、「測定開始」ボタン311の選択状態を網掛けにより表している。
【0096】
入力画面310Bは、現場に埋設されている又は露出している配管の素材の入力用である。
入力画面310Bには、素材の選択欄312と、前の画面に「戻る」ことを意味する左向きの矢印が付いたボタン313と、次の画面に「進む」ことを意味する右向きの矢印が付いたボタン314と、測定の中止を意味する「中止」ボタン315が配置されている。
【0097】
入力画面310Bの場合、選択欄312には、鋼管、ポリ管、塩ビ管、その他、わからない5つの選択肢が表示されている。勿論、これらは一例である。
なお、ボタン313が操作されると、画面は、メニュー画面310Aに遷移する。他方、ボタン314が操作されると、画面は、入力画面310Cに遷移する。入力画面310Cへの遷移には、チェックボックスのチェックを必須としてもよい。遷移の条件としてのチェックの要求は、他の入力画面310C及び310Dについても同様である。
【0098】
入力画面310Cは、測定機器の入力用である。
入力画面310Cには、振動データの測定に使用する機器の選択欄316と、前の画面に「戻る」ことを意味する左向きの矢印が付いたボタン313と、次の画面に「進む」ことを意味する右向きの矢印が付いたボタン314と、測定の中止を意味する「中止」ボタン315が配置されている。
【0099】
入力画面310Cの場合、選択欄316には、「感振棒」、「平置き」、「わからない」の3つの選択肢が表示されている。ここでの「平置き」は、振動センサ23(図1参照)を感振棒21(図1参照)から取り外して測定点に直置きすることを意味する。勿論、選択肢の内容は一例である。
なお、ボタン313が操作されると、画面は、1つ前の入力画面310Bに遷移する。他方、ボタン314が操作されると、画面は、入力画面310Dに遷移する。
【0100】
入力画面310Dは、測定深度の入力用である。
入力画面310Dには、深度の選択欄317と、前の画面に「戻る」ことを意味する左向きの矢印が付いたボタン313と、次の画面に「進む」ことを意味する右向きの矢印が付いたボタン314と、測定の中止を意味する「中止」ボタン315が配置されている。
【0101】
入力画面310Dの場合、選択欄317には、20cm、40cm、60cm、80cm、150cm、200cm、250cmの7つの選択肢が表示されている。勿論、これは一例である。また、「わからない」の選択肢を用意してもよい。
なお、ボタン313が操作されると、画面は、1つ前の操作画面310Cに遷移する。
【0102】
因みに、ボタン314が操作されると、情報端末30には、現場の地表面マップの生成を作業者に案内する画面が表示される。本実施の形態では、この画面の表示例を省略している。
作業者は、案内に従い、情報端末30で現場を様々な角度から撮像し(例えば8の字を描くようにカメラ35(図3参照)とLiDARスキャナ36(図3参照)の向きを変更し)、現場の地表面マップを生成する。
【0103】
地表面マップの生成が終了すると、情報端末30は、メッシュの生成条件の受け付け画面を表示する。
図17は、メッシュの生成条件の受け付け画面の遷移を説明する図である。(A)は初期画面310Eであり、(B)~(D)はメッシュの生成条件の入力に用いる操作画面310F~310Hである。
【0104】
初期画面310Eには、カメラ35(図3参照)で撮像中の画像が表示される表示欄318に重ねて、作業者に求める操作の説明文319と、各種のボタン320~322が表示されている。初期画面310Eの表示欄318には、現場の地表面が写っている。
【0105】
初期画面310Eの場合、説明文319には「メッシュを配置したい場所がカメラに写っている状態で、新規配置または記録ボタンをタップしてください」と表示されている。
今回は、「初めての測定」を想定しているので、作業者は、「新規配置」ボタン320をタップする。
なお、2回目以降の測定の場合、作業者は、「記録」ボタン321をタップする。「リセット」ボタン322は、前の画面に戻るためのボタンである。
【0106】
情報端末30は、「新規配置」ボタン320のタップを検知すると、操作画面310Fに遷移する。
操作画面310Fには、メッシュの生成条件の設定欄301と、設定の確定に使用する「OK」ボタン302と、数値や文字の入力に使用する入力キー323が表示されている。
設定欄301には、「メッシュの生成条件を設定してください」等の説明文と、計測点に付ける「名前」の入力欄、「範囲」の入力欄、「厚み」の入力欄、「透過」率の入力欄と、「OK」ボタン302が配置される。なお、新規配置なので各欄には文字や数値が入力されていない。
【0107】
操作画面310Gは、各欄に文字や数値が入力された状態を表している。操作画面310Gの場合、「名前」の入力欄には「テスト」が入力され、「範囲」には「100」が入力され、「厚み」には「30」が入力され、「透過」率には「60」が入力されている。
情報端末30は、「OK」ボタン302の操作を検知すると、操作画面310Hに遷移する。
【0108】
操作画面310Hには、カメラ35(図3参照)で撮像中の画像が表示される表示欄318に重ねて、作業者に求める操作の説明文324と、配置中であることを示す「配置中」ボタン325、測定の中止を指示する「キャンセル」ボタン326が表示されている。
操作画面310Hの場合、説明文324には「メッシュを配置したい場所をタップしてください」と表示されている。
【0109】
図18は、メッシュの配置に関連する画面の遷移を説明する図である。(A)はメッシュを配置する地点の指定例を示す操作画面310Iであり、(B)はメッシュの向きの調整例を示す操作画面310Jであり、(C)はメッシュの配置の確定例を示す操作画面310Kであり、(D)は測定点の受け付けが可能になった状態を示す操作画面310Lである。
操作画面310Iでは、作業者がタップした地点に矩形のマーク327が表示されている。もっとも、マーク327の表示は任意である。操作画面310Iでは、作業者によるタップ操作を説明する観点からマーク327を表示している。
【0110】
情報端末30は、作業者のタップを検知すると、操作画面310Jに遷移する。
操作画面310Jには、カメラ35で撮像中の画像の表示欄318に重ねて、生成条件を満たすメッシュのAR画像328と、作業者に求める操作の説明文329と、向きの調整方向を示す矢印330と、調整の確定を指示する「確定」ボタン331と、「キャンセル」ボタン326が表示されている。
本実施の形態の場合、メッシュのAR画像328は水平面として表示されるが、表示直後の向きと作業者が希望する向きとが一致するとは限らない。
【0111】
このため、操作画面310Jの説明文329には「メッシュに触れたままスワイプすると回転して向きを調整できます。確定ボタンを押すまで配置と調整は何度もやりなおせます。」と表示されている。操作画面310Kは、メッシュの位置と向きを調整した後の状態を表している。
操作画面310Kで「確定」ボタン331が操作されると、情報端末30は、操作画面310Lに遷移する。
【0112】
操作画面310Lには、カメラ35で撮像中の画像の表示欄318に重ねて、調整が済んだメッシュのAR画像328と、作業者に求める操作の説明文332と、「キャンセル」ボタン326が表示されている。
操作画面310Lは、メッシュのAR画像328の位置と向きの調整が確定した直後であるので、表示内容の変化は、説明文332と「キャンセル」ボタン326のみである。
【0113】
図19は、測定に関連する画面の遷移を説明する図である。(A)は測定点の指定を説明する操作画面310Mであり、(B)は測定開始の受け付けに使用する操作画面310Nであり、(C)は測定開始が指示された状態を説明する操作画面310Oであり、(D)は測定中の表示を説明する操作画面310Pである。
操作画面310Mでは、AR画像328の手前側に、実空間の存在である漏水探知機20と作業者の手が写り込んでいる。
【0114】
なお、操作画面310Mには、作業者に求める操作の説明文332と、測定点の指定を受け付けたことを示すマーク333と、「キャンセル」ボタン326が表示されている。
もっとも、マーク333の表示は任意である。操作画面310Mでは、作業者によるタップ操作を説明する観点から表示している。
作業画面310Mでは、写り込んでいる感振棒21の先端に合わせて測定点が指定される手順を想定するが、作業者が指定した測定点に合わせて感振棒21の先端を位置決めしてもよい。
【0115】
情報端末30は、作業者のタップ操作を検知すると、操作画面310Nに示すように、受け付けた測定点の位置をコーン型のマーク334で表示するとともに、測定の開始の指示を求める説明文335と「OK」ボタン336と、「キャンセル」ボタン337を表示する。
操作画面310Nの説明文335には、「測定を開始しますか?」と表示されている。この状態で「OK」ボタン336が操作されると、振動データの測定が開始される。一方、「キャンセル」ボタン337が操作されると、測定が中止される。
【0116】
操作画面310Oには、操作欄338が表示される。操作欄338には、測定時間カウンタ339と、記録ボタン340と、再生ボタン341と、「保存」ボタン342と、「キャンセル」ボタン343と、状態表示344とが含まれる。
もっとも、操作画面310Oにおける測定時間カウンタ339の表示は0(ゼロ)のままである。
【0117】
記録ボタン340のタップが検知されると、振動データの記録が開始され、測定時間カウンタ339のカウントアップが開始される。なお、操作画面310Oの場合、再生ボタン341はグレーアウト表示されている。
「保存」ボタン342は、振動データの記録を終了する場合に操作される。本実施の形態の場合、「保存」ボタン342の操作があると、記録された振動データが仮保存の状態になる。
【0118】
「キャンセル」ボタン343の操作があると、振動データの記録が停止され、記録された振動データが破棄される。
なお、状態表示344は、記録状態を作業者に提示するために使用される。
操作画面310Pでは、測定時間カウンタ339がカウントアップされている。また、記録ボタン340に代えて停止ボタン345が表示されている。停止ボタン345の操作が検知されると、記録が停止される。操作画面310Pの状態表示344には、振動データの記録中であることを示す画像が表示されている。
【0119】
図20は、1か所以上の測定が完了した場合の画面の遷移を説明する図である。(A)は1つ目の測定点について測定が終わった状態を示す操作画面310Qであり、(B)は2つ目の測定点について測定が終わった状態を示す操作画面310Rであり、(C)は測定された振動データの保存の確定に使用する操作画面310Sである。
【0120】
操作画面310Qでは、操作欄338の表示が消え、測定点の位置を示すマーク334の表示と、作業者に求める操作の説明文346と、「保存」ボタン347と、「キャンセル」ボタン326が表示されている。
操作画面310Qの説明文346には「1か所以上の測定が完了したらデータを保存できます。「保存」ボタンを押してデータを保存してください。キャンセルボタンで破棄することもできます。」と表示されている。
【0121】
操作画面310Qでは表示していないが、解析サーバ40(図1参照)による振動データの解析結果をマーク334に関連付けて表示することも可能である。もっとも、情報端末30から解析サーバ40に振動データがアップロードされ、解析サーバ40から解析結果が情報端末30に通知されるまでには、例えば15秒ほど時間が必要になる。この時間は、通信環境や解析サーバ40の処理の能力等により変動する。
【0122】
解析結果は、例えば漏水の可能性を0%~100%の数値で表示される。この他、漏水の可能性を表す数値に対応付けられた色で、測定点を表すマーク334やマーク334に対応する区画を表示してもよい。これらの情報は解析結果の通知と同時に表示してもよいし、作業者から表示が指示された場合に限って表示してもよい。
この他、解析結果は、波形グラフ、スペクトルグラフ、平均値と最大値の混合グラフ、1/3オクターブグラフ等により表示することも可能である。表示するグラフ等の切り替えは作業者の操作により実行が可能である。
【0123】
本実施の形態では、「保存」ボタン347の操作の前に、2つ目の測定点が指定されるものとする。この場合、図19(A)~(D)に示す操作画面310M~310Pが順番に表示される。
操作画面310Rは、2つ目の測定点について測定が終わった段階で表示される。操作画面310Rでは、測定点を示すマーク334が2つに増えている。
この操作画面310Rで「保存」ボタン347が操作されると、操作画面310Sが表示される。
【0124】
操作画面310Sでは、作業者に求める操作の説明文348と、「OK」ボタン349と、「キャンセル」ボタン350が表示されている。
操作画面310Sの説明文348には「データを保存してよければOKを押してください」と表示されている。
ここで「OK」ボタン349が操作されると、仮保存されている測定点と振動データの保存が確定される。
一方、「キャンセル」ボタン350が操作されると、仮保存されている測定点と振動データが破棄される。
【0125】
<2回目以降の測定時>
図21は、メッシュの生成条件の受付画面の他の遷移例を説明する図である。(A)は初期画面310Eであり、(B)はメッシュの生成条件の入力に用いる操作画面320Aであり、(C)はメッシュの配置を受け付ける操作画面310Hである。
なお、図21には、図17との対応部分に対応する符号を付して示している。
【0126】
図21(A)に示す初期画面310Eは、図17(A)に示す初期画面310Eと同一である。
今回は、既に存在するメッシュを使用したいので「記録」ボタン321がタップされる。
この場合、操作画面320Aが表示される。操作画面320Aには「生成条件のロード」とのタイトルが付いた設定欄351が表示されている。
【0127】
ここでの設定欄351には「記録済みのメッシュの生成条件をロードします。よろしいですか?」と表示されている。
なお、設定欄351の「名前」には「テスト」、「範囲」には「100」、「厚み」には「30」、「透過」率には「60」が表示されている。これらの文字列や数値は、操作画面310G(図17参照)で設定された生成条件に一致する。
この操作画面320Aにおいて「OK」ボタン302がタップされると、メッシュの配置を受け付ける操作画面310Hが表示される。
その後の操作画面の遷移は、図18図20と同じである。
【0128】
<同一現場で測定された記録がある場合>
図22は、同一現場で測定された記録がある場合の測定点の指定に用いる操作画面330Aの一例を説明する図である。図22に示す操作画面330Aは、例えばメッシュの配置が確定すると表示される。
操作画面330Aの場合、LiDARスキャナ36(図3参照)で新たに測定された地表面マップと同一現場について記録されている地表面マップとの照合により特定されたAR画像と測定点が表示されている。
【0129】
このように、新たに測定された地表面マップと記録されている地表面マップとの一致度が高い場合には、前回までの測定点を確認しながら新たな測定を開始できる。
もっとも、操作画面330Aの表示は、新たに測定された地表面マップと記録されている地表面マップとの一致度が閾値を満たさない場合には、同一現場であっても新規の現場と同様の操作画面の遷移が繰り返される。
【0130】
<測定結果の確認時>
図23は、測定結果の確認時の処理動作例を説明するフローチャートである。
図23に示す処理動作は、例えば測定結果の表示を指示するボタンや測定点を表すマーク334(図20参照)がタップされることで開始される。
操作を受け付けた情報端末30は、保存データの一覧を表示する(ステップ31)。保存データの一覧は、例えば測定日時でソートされて表示される。
【0131】
続いて、情報端末30は、終了ボタンの操作を受け付けたか否かを判定する(ステップ32)。
終了ボタンの操作を受け付けた場合、ステップ32で肯定結果が得られる。この場合、情報端末30は、保存ファイルの一覧画面を閉じる。
これに対し、終了ボタンの操作を検知しない場合、ステップ32で否定結果が得られる。
この場合、情報端末30は、一覧内で選択された保存データを再生する(ステップ33)。ここでの保存データは、測定点に紐づけて記録されている振動データである。再生が開始すると、振動データは、例えば音として出力される。
【0132】
次に、情報端末30は、表示ボタンの操作を受け付けたか否かを判定する(ステップ34)。
表示ボタンの操作を受け付けた場合、ステップ34で肯定結果が得られる。この場合、情報端末30は、波形図を表示する(ステップ35)。波形図には、例えば波形グラフ、スペクトルグラフ、平均値と最大値の混合グラフ、1/3オクターブグラフ等がある。
【0133】
続いて、情報端末30は、戻るボタンの操作を受け付けたか否かを判定する(ステップ36)。
戻るボタンの操作を検知しない場合、ステップ36で否定結果が得られる。この場合、情報端末30は、ステップ36の判定を繰り返す。
一方、戻るボタンの操作を受け付けた場合、ステップ36で肯定結果を得る。
この場合、情報端末30は、ステップ34に戻る。
【0134】
因みに、ステップ34で否定結果が得られた場合(表示ボタンの操作を受け付けない場合)、情報端末30は、再生停止ボタンの操作を受け付けたか否かを判定する(ステップ37)。
再生停止ボタンの操作を受け付けた場合、ステップ37で肯定結果が得られる。この場合、情報端末30は、保存データの再生を停止し(ステップ38)、ステップ34に戻る。なお、保存ファイルの再生が停止した状態で再生ボタンの操作を受け付けた場合には、保存データの再生を再開してもよい。
【0135】
ステップ37で否定結果が得られた場合(再生停止ボタンの操作を受け付けない場合)、情報端末30は、キャンセルボタンの操作を受け付けたか否かを判定する(ステップ39)。
キャンセルボタンの操作を受け付けない場合、ステップ39で否定結果が得られる。この場合、情報端末30は、ステップ34に戻る。
一方、キャンセルボタンの操作を受け付けた場合、ステップ39で肯定結果が得られる。この場合、情報端末30は、ステップ32に戻る。
【0136】
<振動データの再生時における操作画面の遷移>
図24は、振動データの再生時における操作画面の遷移例を説明する図である。(A)は取得日時でソートされた振動データの一覧画面340Aであり、(B)は再生画面340Bである。
【0137】
一覧画面340Aでは、2つの振動データ361と、「終了」ボタン362が表示されている。図24に示す一覧画面340Aでは、振動データ361の測定日時も表示されている。
2つの振動データ361のうちいずれか1つをタップすると、対応する振動データの再生が開始される。なお、「終了」ボタン362が操作されると、一覧画面340Aが閉じられる。
【0138】
一覧画面340Aは、例えば作業者が特定の日時や現場を指定することにより表示されてもよい。
もっとも、一覧画面340Aは、測定点を示すマーク334(図22参照)が操作画面上でタップされることで表示されてもよい。この場合、一覧画面340Aには、作業者等が指定した特定の測定点334について記録されている振動データ361の一覧が表示される。
【0139】
また、一覧画面340Aには測定現場の図や画像も表示し、作業者が指定した振動データ361に対応する測定点334の位置を視覚的に把握可能としてもよい。例えば作業者による振動データ361の指定に連動して、対応する測定点の位置を示すマーク334等を地表面の画像やメッシュの区画上に表示してもよい。また、図や画像上に複数のマーク334が表示されている場合には、作業者の指定した振動データ361に対応するマーク334等の色や輝度を他のマーク334等と区別可能に表示してもよい。
【0140】
再生画面340Bには、再生時間カウンタ371と、「停止」ボタン372と、「再生」ボタン373と、「戻る」ボタン374と、「キャンセル」ボタン375と、波形図(グラフ)の表示欄376が配置されている。表示欄376には、波形グラフ、スペクトルグラフ等が表示される。
【0141】
<まとめ>
本実施の形態の場合、情報端末30に設けたLiDARスキャナ36(図3参照)を用いて地表面マップを現場で生成し、地表面マップ上の座標点に、ユーザが指定する測定点で測定された振動データを紐づけて記録することができる。
【0142】
この手法によれば、現場の施工図や現場を撮像した写真(航空写真、ドローンで上空から撮像した写真)、地図を予め用意する必要がなく、現場に到着してすぐに漏れ検査を開始できる。その結果、現場に到着してから漏れ検査の結果を記録するまでに要する時間の短縮が可能になる。
また、測定された振動データを現場の地表面マップ上の座標点に紐づけるので、振動データに対応する測定点の情報を手書きで記録する場合に比して、振動データと測定点の確認など活用が容易になる。
【0143】
因みに、記録の精度は、現場で使用するLiDARスキャナ36の精度に比例して向上する。このため、スマートフォン等の情報端末30に搭載される民生用のLiDARスキャナ36の精度の向上に伴い、現場の測定点と記録された座標との誤差も少なくなる。
【0144】
また、据え置き型の産業用のLiDARスキャナ36を使用可能な場合には、民生用のLiDARスキャナ36に比べ、一度により広い範囲の漏水検査を実現できる。
また、記録上の測定点とLiDARスキャナ36で測定される現場の一致度が高くなることにより、後日の改修工事においても、漏水箇所をピンポイントで探し出すことができる。
【0145】
また、本実施の形態では、作業者が指定した範囲等を三次元メッシュとして表示することにより、三次元メッシュが表示されない場合に比して、検査範囲の確認が容易になる。例えば三次元メッシュが表示されない場合、情報端末30の画面上にはカメラ35(図3参照)で撮像中の画像が表示されるだけであるので、地表面マップが存在しないことに気づかずに漏水検査を継続する可能性が生じる。最悪の場合、漏水検査のやり直しが必要になる。
【0146】
さらに、二次元の写真や地表面マップとは異なり、三次元メッシュは鉛直方向に厚みを有するため、厚みの調整により、測定面の起伏(凹凸)やLiDARスキャナ36(図3参照)の測定精度によらず、三次元メッシュを確認しながらの漏水検査を担保できる。
【0147】
なお、三次元メッシュは枠線だけで区画を表現することも可能である。この場合、撮像中の現場の画像に三次元メッシュを重ねて表示しても、枠線で囲まれた空間を通して地表面を直接観察することができ、測定点の確認が容易になる。
また、三次元メッシュが区画に対応する単位形状の集合体として表現される場合には、透過率の調整により地表面の透視が可能になり、測定点の確認を容易にできる。
【0148】
また、本実施の形態では、地表面マップ上を基準に三次元メッシュを表示するので、地表面の起伏(凹凸)や傾斜によらず、測定点と区画の位置関係の確認を容易化できる。具体的には、測定面の起伏(凹凸)や傾斜に応じた基準高さ(例えば図12(A)~(C)参照)を選択することにより、三次元メッシュの視認性を担保できる。
【0149】
因みに、三次元メッシュは地表面マップを基準に表示されるので、地表面マップよりも作業者寄りの空間にのみ表示される。換言すると、ユーザにより観察が可能な空間にのみ三次元メッシュが表示される。このため、三次元メッシュが地中内に存在する表示にはならず、測定範囲の確認が容易になる。
【0150】
また、本実施の形態の場合、地表面マップが既に存在する現場で測定が開始された場合、地表面マップに紐づけて記録されている測定点の位置と測定点で測定された振動データの解析結果を記録データから読み出して、例えば図22に例示したように表示することが可能である。
この機能により、過去の測定時に記録した測定点を今回の測定時に容易に確認できる。
また、ユーザが新たに指定した測定点を地表面マップに追加できるので、今回の測定時に指定する測定点を過去の測定時に記録した測定点と一緒に確認できる。
【0151】
<実施の形態2>
<システム構成>
図25は、実施の形態2で使用する漏水検査システム1Aの概念構成例を説明する図である。図25には、図1との対応部分に対応する符号を付して示している。
図25に示す漏水検査システム1Aの場合、漏水検査デバイス10Aが漏水探知機20と装置本体250で構成される点で、実施の形態1で説明した漏水検査デバイス10(図1参照)と相違する。
【0152】
本実施の形態で使用する装置本体250は、実施の形態1における装置本体25(図1参照)と情報端末30(図1参照)を一体化した装置である。すなわち、装置本体250は、本体回路25Aと、プロセッサ31(図3参照)、フラッシュメモリ33(図3参照)、タッチパネル34(図3参照)、カメラ35(図3参照)、LiDARスキャナ36(図3参照)、通信モジュール37(図3参照)等で構成される。本実施の形態で使用する装置本体250は、実施の形態1における情報端末30(図2参照)の機能を、内蔵するプロセッサ31等を用いて実現する。ここでの装置本体250は、漏れ検査装置の一例である。
【0153】
<実施の形態3>
図26は、実施の形態3で使用する漏水検査システム1Bの概念構成例を説明する図である。(A)は漏水検査システム1Bの外観例であり、(B)は漏水検査システム1Bを構成する装置間におけるデータの流れの概要を説明する図である。図26には、図1及び図2との対応部分に対応する符号を付して示している。
【0154】
図26(A)に示す漏水検査システム1Bは、漏水探知機20と装置本体260で構成され、装置本体260が振動データの解析処理を実行する点で、実施の形態1で説明した漏水検査デバイス10(図1参照)や実施の形態2で説明した漏水検査デバイス10A(図25参照)と相違する。
【0155】
すなわち、本実施の形態で使用する漏水検査システム1Bは、解析サーバ40(図1参照)を必要としない。
図26(B)に示す装置本体260は、本体回路25Aと情報処理部25Bとで構成される。
【0156】
ただし、情報処理部25Bの計算能力は、実施の形態1で説明した情報端末30(図1参照)よりも格段に速く、測定データの記録が可能な十分な記憶容量を有している。
このシステム構成の場合、振動データの解析も情報処理部25Bで実行され、解析サーバ40との通信が不要であるので、通信状態が悪い現場でも、測定点の漏水検査の実行が可能になる。
ここでの装置本体260は、漏れ検査装置の一例である。
【0157】
<実施の形態4>
図27は、実施の形態4で使用する漏水検査システム1Cの概念構成例を説明する図である。図27には、図1との対応部分に対応する符号を付して示している。
図27に示す漏水検査システム1Cは、実施の形態3と同様、解析サーバ40(図1参照)を必要とせず、現場で全ての処理が完結する。
実施の形態3との違いは、振動データの解析処理をスマートフォン等の情報端末30で実行する点である。
ここでの情報端末30は、漏れ検査装置の一例である。
【0158】
<実施の形態5>
図28は、実施の形態5で使用する漏水検査システム1Dの概念構成例を説明する図である。図28には、図1との対応部分に対応する符号を付して示している。
図28に示す漏水検査システム1Dは、現場で使用する漏水検査デバイス10Dとクラウド側に設ける解析サーバ40とで構成される。
【0159】
図28に示す漏水検査デバイス10Dでは、情報端末30(図1参照)の代わりにスマートグラス70を使用する点で相違する。
スマートグラス70は、導光部材やミラーで構成される光学系を通じて小型のディスプレイに表示された画像を装着者の眼に導くデバイスである。スマートグラス70は、装着者の視野内にAR画像を表示する
【0160】
すなわち、スマートグラス70の装着者は、現場の風景に加え、AR画像を視認する。
このスマートグラス70は、ARグラスやMR(=Mixed Reality)グラスとも呼ばれる。
図28の場合、スマートグラス70は、装着具70Aを介して、作業者のヘルメット60に取り付けられているが、作業者の頭部や首部等に直接取り付けることも可能である。ここでのスマートグラス70と装着具70A(カメラ35、LiDARスキャナ36を含む。)は、いわゆるヘッドセットである。このヘッドセットは、作業者の頭部に取り付けて使用するデバイスの一例である。
【0161】
図28に示すスマートグラス70には、作業者の前方を撮像するカメラ35とLiDARスキャナ36が取り付けられている。もっとも、カメラ35とLiDARスキャナ36は、スマートグラス70と一体に取り付けられていてもよい。なお、カメラ35とLiDARスキャナ36を一体化したスマートグラス70も、作業者の頭部に取り付けて使用するデバイスの一例である。
本実施の形態で使用する装置本体25は、情報端末30を取り付ける必要がないため、実施の形態1よりも小型の筐体でよい。
本実施の形態の場合、作業者の視野内に常にAR画像が表示されるので、少ない視線移動で振動データの測定作業を実行できる。
ここでのスマートグラス70は、漏れ検査装置の一例である。
【0162】
<他の実施の形態>
(1)以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の技術的範囲は前述した実施の形態に記載の範囲に限定されない。前述した実施の形態に、種々の変更又は改良を加えたものも、本発明の技術的範囲に含まれることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0163】
(2)前述の実施の形態では、情報端末30(図1参照)が図6及び図7に示す処理動作を実行する場合について説明したが、解析サーバ40のプロセッサ41(図4参照)が図6及び図7に示す処理動作を実行してもよい。なお、図6及び図7に示す処理動作を情報端末30と解析サーバ40の連携により実行してもよい。
【0164】
(3)前述の実施の形態では、流体の一例として液体や気体を例示したが、流体は、粉体その他の固体でもよい。
【0165】
(4)前述の実施の形態では、AR画像として表示する三次元メッシュには9行9列の区画が表示されているが、作業者が確認可能な区画は1つでもよい。すなわち、測定範囲が1つの区画として表示されてもよい。
【0166】
(5)前述の実施の形態では、測定範囲を三次元メッシュで表現する場合を説明したが、いわゆる井桁格子に限らず、横格子、縦格子、クロス格子その他の格子形状でもよい。また、三次元メッシュの1区画は矩形に限らず、三角形や三角錐などの形状でもよく、円や楕円その他の図形でもよい。
【0167】
(6)前述の実施の形態では、三次元メッシュの1区画と隣接する他の区画が線によって分離される場合について説明したが、例えば格子点の位置を示す点や十字記号その他の図形によって表現してもよい。本実施の形態における三次元メッシュは、これらの図形によって想起される区画の集合体も含む。
【0168】
(7)前述の実施の形態では、地面に埋設されている配管からの漏水を検査する場合を想定しているが、配管は構造物の天井や壁側に埋設されていてもよい。この場合、天井や壁が測定面となる。
【0169】
(8)前述の実施の形態では、漏れ検査の対象である配管は地面や構造物に埋設されている場合を想定しているが、配管は地面や構造物の表面に露出していてもよい。
【0170】
(9)前述の実施の形態では、説明の都合上、任意の機能や保存データを読み出すための「メニュー」ボタン等の表示を省略しているが、図示した各操作画面には「メニュー」ボタンを配置してもよい。
【0171】
(10)前述の実施の形態では、作業者が指定した生成条件を満たす三次元メッシュのAR画像が測定作業の間、表示され続ける場合について説明したが、作業者の選択等により表示と非表示を切り替え可能としてもよい。三次元メッシュを表示しない場合でも、測定点を示すマーカはタッチパネル34(図3参照)に表示され、測定された振動データとともに地表面マップ上の座標に紐づけて記録される。
【0172】
(11)前述の実施の形態では、三次元スキャナの一例として、レーザー光を使用するLiDARスキャナ36を例示したが、カメラで撮像された画像を使用する三次元スキャナ、ミリ波などの電波を使用する三次元スキャナ、超音波を使用する三次元スキャナなどを使用してもよい。
【0173】
(12)前述の実施の形態では、地中の埋設された配管からの漏水等に起因した振動データを測定する場合について説明したが、前述した三次元マップの生成や三次元メッシュのAR表示についての説明は、配管が壁面や天井に埋設されている場合にも適用が可能である。
【0174】
(13)前述の実施の形態では、三次元メッシュを水平面(法線が重力方向と平行となる面)として表示したが、配管が壁面に埋め込まれている場合の三次元メッシュは垂直面(法線が水平面と平行となる面)として表示してもよい。なお、配管が天井に埋め込まれている場合の三次元メッシュは水平面として表示する。なお、配管が空間に露出している場合(すなわち作業者が漏洩検査の対象とする配管を直接観察できる場合)には、操作画面で基準面を選択してもよい。例えば操作画面に、水平面と垂直面のいずれか一方を、測定範囲の設定に適した基準面として選択する画面を用意してもよい。
【0175】
(14)前述の実施の形態では、三次元メッシュを測定面の傾斜角(水平面又は垂直面に対する代表的な角度)とは無関係なく設定する例について説明したが、測定面の代表的な面(例えば平均的な高さ)を通る仮想の面を基準面に定めて三次元メッシュを表示してもよい。すなわち、測定面に沿って三次元メッシュを表示してもよい。
【0176】
例えばスマートフォン等では、撮像又はスキャン範囲内にある面を検出するアプリケーションプログラムが存在する。このアプリケーションプログラムを用いれば、測定現場の測定面に沿うように三次元メッシュを生成し、画面内に表示することが可能である。
図29は、測定面に沿って生成される三次元メッシュの例を説明する図である。(A)は測定現場の断面図であり、(B)は三次元メッシュの表示例である。
【0177】
図29(A)は、測定現場の地上面が傾斜面の例を表している。また、図29(A)に示す地上面には、不図示の凹凸の他、構造物や自然物等の物体O1、O2が存在している。しかし、物体O1、O2を除いた地上面は概略平坦である。
このため、前述したアプリケーションプログラム等を用いれば、この概略平坦な部分を平面として抽出し、平面メッシュを配置することが可能になる。
その結果、図29(B)に示すような平面メッシュを地表面に添って配置した画像を作業者に見せることが可能になる。
【0178】
なお、図29(B)では、平面メッシュを表示しているが厚みが指定されている場合には、三次元メッシュが情報端末30の表示画面に表示されることになる。
この手法は、測定面が天井面や壁面の場合にも適用が可能である。特に、測定面が水平面や垂直面でない場合には、この手法を適用することにより、少ない厚みで測定面の観察が可能になる。
【0179】
(15)前述の実施の形態5では、作業者の頭部に取り付けて使用するデバイスの一例として、ヘルメット60に取り付けて使用するヘッドセットに付いて説明したが、スマートフォンを取り付けて使用するARヘッドセットでもよい。
【0180】
(16)前述の実施の形態では、測定面の取得が可能な場合を想定している。例えば測定面となる地表面、天井面、壁面等をLiDARスキャナ36で計測可能な場合を想定している。
しかし、基準面を与える地表面等が測定対象である配管から遠く離れている場合には、基準面を設定すること自体が難しい場合がある。
【0181】
図30は、基準面を設定することが難しい測定現場における平面メッシュの設定例を説明する図である。(A1)は測定現場を作業者の視点から見た図であり、(A2)は配管P1~P4の奥行方向における位置関係を示し、(B1)は平面メッシュの表示例を示し、(B2)は平面メッシュと配管P1~P4の奥行方向における位置関係を示す。
【0182】
図30(A1)、(A2)の場合、4本の配管P1~P4が地表面に対して垂直に設置されている。このうち3本の配管P1~P3は密集し、配管P4はこれら3本の配管P1~P3から離れている。加えて、4本の配管P1~P4は、いずれも奥行き方向(図30のY方向)の位置が異なっている。
また、配管P1~P4の背後には何も存在しないか、存在しても配管P1~P4から奥行方向に遠く離れている。
【0183】
この種の測定現場を想定する操作画面310F(図17(B)参照)におけるメッシュの生成条件の設定欄301には、例えばメッシュの向きを指定する選択肢(例えば水平面と垂直面)を追加する。
図30(B1)、(B2)は、メッシュの向きとして垂直面が指定された場合の平面メッシュの表示例である。なお、平面メッシュの初期位置は、図30(A1)に星印で表したタップ位置を基準に表示される。
【0184】
ただし、図30の場合には、作業者が1点しか指定していないので、平面メッシュの初期位置は、作業者が希望する配置と一致するとは限らない。その場合には、図18(B)で説明したように、平面メッシュのスワイプにより向きや位置を調整する。図30(B1)には、調整の方向として、奥行方向(調整1)、水平方向(調整2)、水平面内の回転(調整3)を示している。ここでの水平面内の回転は、いわゆるZ軸(ヨー軸)周りの回転である。この他、X軸周りの回転やY軸周りの回転を可能としてもよい。
図30(B2)の場合、手前から2本目の配管P3と3本目の配管P2の間に平面メッシュの位置が調整されている。
【0185】
ところで、図30の例は、作業者が画面内でタップした位置が1つの場合における平面メッシュの表示例の1つを表しているが、タップした位置を通る配管P2の座標情報をLiDARスキャナ36で取り込めた場合には、配管P2の軸線方向を含む平面メッシュを画面上に表示してもよい。
また、作業者が画面内で2点をタップした場合には、2点を通る垂直面(又は水平面)を平面メッシュとして表示してもよい。
また、作業者が画面内で3点をタップした場合には、3点を通る平面メッシュを表示してもよい。
【符号の説明】
【0186】
1、1A、1B、1C、1D…漏水検査システム、10、10A、10D…漏水検査デバイス、20…漏水探知機、21…感振棒、23…振動センサ、25、250、260…装置本体、25B…情報処理部、30…情報端末、40…解析サーバ、50…通信ネットワーク、60…ヘルメット、70…スマートグラス、400…データベース
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