IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ハンマーキャスター株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-キャスター 図1
  • 特開-キャスター 図2
  • 特開-キャスター 図3
  • 特開-キャスター 図4
  • 特開-キャスター 図5
  • 特開-キャスター 図6
  • 特開-キャスター 図7
  • 特開-キャスター 図8
  • 特開-キャスター 図9
  • 特開-キャスター 図10
  • 特開-キャスター 図11
  • 特開-キャスター 図12
  • 特開-キャスター 図13
  • 特開-キャスター 図14
  • 特開-キャスター 図15
  • 特開-キャスター 図16
  • 特開-キャスター 図17
  • 特開-キャスター 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093479
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】キャスター
(51)【国際特許分類】
   B60B 33/00 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
B60B33/00 501D
B60B33/00 F
B60B33/00 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209876
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000111731
【氏名又は名称】ハンマーキャスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100176337
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】清水 龍
(72)【発明者】
【氏名】寳角 光伸
(57)【要約】
【課題】車輪を好適に制動できるキャスターを提供する。
【解決手段】キャスターは、被移動体と連結される本体と、前記本体に対して回転可能に取り付けられる車輪と、前記本体に対する前記車輪の回転を規制するロック状態と、前記本体に対する前記車輪の回転を許容する非ロック状態と、を切り替えるロック機構と、を備える。前記ロック機構は、軸部と、前記車輪に形成された凹部と、を含む。前記軸部は、前記非ロック状態においては、先端が前記本体に収容され、前記ロック状態においては、前記先端が前記凹部に嵌まるように構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被移動体と連結される本体と、
前記本体に対して回転可能に取り付けられる車輪と、
前記本体に対する前記車輪の回転を規制するロック状態と、前記本体に対する前記車輪の回転を許容する非ロック状態と、を切り替えるロック機構と、を備え、
前記ロック機構は、
軸部と、
前記車輪に形成された凹部と、を含み、
前記軸部は、
前記非ロック状態においては、先端が前記本体に収容され、
前記ロック状態においては、前記先端が前記凹部に嵌まるように構成される
キャスター。
【請求項2】
前記凹部は、前記車輪の周方向に沿って複数形成される
請求項1に記載のキャスター。
【請求項3】
前記凹部は、前記車輪の外郭の近傍に形成される
請求項1または2に記載のキャスター。
【請求項4】
前記軸部の前記先端は、前記車輪に近づくにつれて先細りのテーパ形状であり、
前記凹部の内郭は、前記本体に近づくにつれて広がるテーパ形状であり、
前記ロック状態において、前記車輪に所定の大きさ以上のトルクが作用した場合、前記ロック状態が解除されるように構成される
請求項1または2に記載のキャスター。
【請求項5】
前記ロック機構は、前記ロック状態と前記非ロック状態とを切り替えるレバーをさらに含む
請求項1または2に記載のキャスター。
【請求項6】
前記車輪は、
前記本体に対して一方に配置される第1車輪と、
前記本体に対して他方に配置される第2車輪と、を含み、
前記ロック機構は、前記第1車輪および前記第2車輪の前記ロック状態と前記非ロック状態とを切り替える
請求項1または2に記載のキャスター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャスターに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、被移動体に連結されるキャスターの一例を開示している。このキャスターは、被移動体と連結される本体と、本体に対して回転可能に取り付けられる車輪と、車輪を制動するブレーキ装置と、を備える。ブレーキ装置は、回転規制部を有する。回転規制部は、本体に対する車輪の回転を規制するロック状態と、本体に対する車輪の回転を許容する非ロック状態と、を切り替える。ロック状態においては、回転規制部は、車輪の外面に接触する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-6703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記キャスターは、ロック状態においては、回転規制部と車輪との摩擦力によって本体に対する車輪の回転が規制される。このため、例えば、長期間の使用によって車輪の表面がすり減った場合、回転規制部と車輪との摩擦力が低下し、ロック状態において車輪に作用する制動力が低下するおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、車輪を好適に制動できるキャスターを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1観点に係るキャスターは、被移動体と連結される本体と、前記本体に対して回転可能に取り付けられる車輪と、前記本体に対する前記車輪の回転を規制するロック状態と、前記本体に対する前記車輪の回転を許容する非ロック状態と、を切り替えるロック機構と、を備え、前記ロック機構は、軸部と、前記車輪に形成された凹部と、を含み、
前記軸部は、前記非ロック状態においては、先端が前記本体に収容され、前記ロック状態においては、前記先端が前記凹部に嵌まるように構成される。
【0007】
上記キャスターによれば、ロック状態においては、軸部と凹部との嵌合によって、車輪の回転が規制される。このため、車輪を好適に制動することができる。
【0008】
本発明の第2観点に係るキャスターは、第1観点に係るキャスターであって、前記凹部は、前記車輪の周方向に沿って複数形成される。
【0009】
上記キャスターによれば、凹部の数が多いため、非ロック状態からロック状態に移行する機会を多く確保できる。
【0010】
本発明の第3観点に係るキャスターは、第1観点または第2観点に係るキャスターであって、前記凹部は、前記車輪の外郭の近傍に形成される。
【0011】
上記キャスターによれば、ロック状態において、車輪の外郭の近傍で軸部と凹部とが嵌合する。このため、車輪の中心の近傍で軸部と凹部とが嵌合する構成と比較して、ロック状態においてロック機構に作用する負荷を低減できる。
【0012】
本発明の第4観点に係るキャスターは、第1観点~第3観点のいずれか1つに係るキャスターであって、前記軸部の前記先端は、前記車輪に近づくにつれて先細りのテーパ形状であり、前記凹部の内郭は、前記本体に近づくにつれて広がるテーパ形状であり、前記ロック状態において、前記車輪に所定の大きさ以上のトルクが作用した場合、前記ロック状態が解除されるように構成される。
【0013】
上記キャスターによれば、ロック状態において、車輪に所定の大きさ以上のトルクが作用した場合に、ロック機構が破損することが抑制される。
【0014】
本発明の第5観点に係るキャスターは、第1観点~第4観点のいずれか1つに係るキャスターであって、前記ロック機構は、前記ロック状態と前記非ロック状態とを切り替えるレバーをさらに含む。
【0015】
上記キャスターによれば、ロック状態と非ロック状態とを容易に切り替えることができる。
【0016】
本発明の第6観点に係るキャスターは、第1観点~第5観点のいずれか1つに係るキャスターであって、前記車輪は、前記本体に対して一方に配置される第1車輪と、前記本体に対して他方に配置される第2車輪と、を含み、前記ロック機構は、前記第1車輪および前記第2車輪の前記ロック状態と前記非ロック状態とを切り替える。
【0017】
上記キャスターによれば、第1車輪および第2車輪を好適に制動できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に関するキャスターによれば、車輪を好適に制動できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態の非ロック状態のキャスターを左方から視た斜視図。
図2】実施形態のロック状態のキャスターを左方から視た斜視図。
図3図2のキャスターの正面図。
図4】左方から視た本体の斜視図。
図5】右方から視た本体の斜視図。
図6図2から本体を省略した錠剤のキャスターの平面図。
図7図1のキャスターが備える車輪を左方から視た斜視図。
図8図1の車輪が備えるタイヤの背面図。
図9図8のタイヤの正面図。
図10図1のキャスターが備えるレバーの斜視図。
図11図10のレバーの正面図。
図12図1のキャスターが備えるロック部を正面から視た斜視図。
図13図12のロック部を背面から視た斜視図。
図14図12のロック部の断面構造を示す分解斜視図。
図15図12のロック部の断面図。
図16】非ロック状態のロック機構の断面図。
図17】ロック状態のロック機構の断面図。
図18】ロック状態が自動的に解除された直後のロック機構の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るキャスターの一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0021】
<1.キャスターの構成>
図1は、左方から視た非ロック状態のキャスター10の斜視図である。図2は、左方から視たロック状態のキャスター10の斜視図である。図3は、図2のキャスター10の正面図である。キャスター10は、被移動体(図示略)の底部に取り付けられる。被移動体は、例えば、食品等を運搬するワゴン、荷物を運搬する台車、または、家具である。キャスター10は、例えば、1台の被移動体の底部に4つ取り付けられる。キャスター10は、1台の被移動体の底部に1~3つ、または、5つ以上取り付けられてもよい。キャスター10は、本体30と、車輪60と、ロック機構70と、を含む。本体30は、ステム(図示略)を介して被移動体と連結される。
【0022】
図4は、左方から視た本体30の斜視図である。図5は、右方から視た本体30の斜視図である。図6は、図2から本体30を省略した状態のキャスター10の平面図である。
【0023】
本体30は、例えば、アルミニウムまたはステンレスによって構成される。アルミニウムは、例えば、アルマイト処理が施されることが好ましい。ステンレスは、ヘアライン加工が施されることが好ましい。本体30は、基部40と、被連結部50と、を有する。
【0024】
基部40は、円柱に類似する形状である。基部40の中央には、車輪60の車軸60C(図7参照)が挿入される貫通孔40Aが形成される。貫通孔40Aは、基部40の一対の側面40YA、40YBを貫通する。基部40のうちの貫通孔40Aよりも径方向の外側には、ロック機構70を構成する要素を収容する空間40Bが形成される。基部40の上面40Xには、空間40Bと繋がる開口40Cが形成される。開口40Cは、後述するレバー80(図1参照)によって閉じられる。
【0025】
一対の側面40YA、40YBのうちの貫通孔40Aよりも径方向の外側には、第1孔41、第2孔42、および、第3孔43が形成される。第1孔41、第2孔42、および、第3孔43は、空間40Bと連通する。第1孔41、第2孔42、および、第3孔43は、ロック機構70を構成する要素と基部40とを固定するねじが挿入される。
【0026】
被連結部50は、基部40と一体的に形成される。被連結部50は、基部40と別体で形成され、基部40と接合されてもよい。被連結部50は、ステムが挿入される連結穴51が形成される。
【0027】
図7は、車輪60を左方から視た斜視図である。車輪60は、本体30に対して回転可能に取り付けられる。車輪60は、第1車輪60Aと、第2車輪60Bと、車軸60Cと、を有する。第1車輪60Aは、基部40の側面40YAに取り付けられる。第2車輪60Bは、基部40の側面40YBに取り付けられる。車軸60Cは、基部40の貫通孔40Aに挿入される。第1車輪60Aおよび第2車輪60Bの構成は、実施的に同じである。以下では、第1車輪60Aおよび第2車輪60Bを特に区別しない場合、単に車輪60と称する。車輪60は、ラジアルベアリング61、ホイール62、および、タイヤ63を有する。
【0028】
ラジアルベアリング61は、公知の構成である。ラジアルベアリング61は、車軸60Cの端部に取り付けられる。ラジアルベアリング61の内輪は、車軸60Cに対して回転不能である。ラジアルベアリング61の外輪は、車軸60Cに対して回転する。
【0029】
ホイール62は、ラジアルベアリング61の外輪に取り付けられる。ホイール62は、ラジアルベアリング61の外輪とともに、車軸60C回りに回転可能である。
【0030】
図8は、タイヤ63の背面図である。図9は、タイヤ63の正面図である。タイヤ63は、ホイール62に装着される。タイヤ63は、ラジアルベアリング61の外輪、および、ホイール62とともに、車軸60C回りに回転可能である。タイヤ63の内面には、後述するロック機構70を構成する複数の凹部63Aが形成される。
【0031】
ロック機構70は、本体30に対する車輪60の回転を規制するロック状態と、本体30に対する車輪60の回転を許容する非ロック状態と、を切り替える。本実施形態では、ロック機構70は、第1車輪60Aおよび第2車輪60Bのロック状態と、非ロック状態と、を切り替える。
【0032】
ロック機構70は、レバー80(図1参照)と、回転軸90(図6参照)と、一対の切替軸100(図6参照)と、一対のロック部110(図6参照)と、凹部63A(図8参照)と、を有する。ロック機構70を構成する要素のうち、回転軸90、一対の切替軸100、および、一対のロック部110は、基部40の空間40B(図4参照)に配置される。
【0033】
図10は、左方から視たレバー80の斜視図である。図11は、レバー80の正面図である。レバー80は、操作部81と、押圧部82と、軸挿入部83と、切替部84と、を有する。
【0034】
操作部81は、ロック状態と非ロック状態とを切り替えるときにユーザによって操作される。操作部81は、例えば、板状である。非ロック状態(図1参照)においては、操作部81の上面81Xは、被連結部50の上面50Xと実質的に面一となる。ロック状態(図2参照)においては、操作部81は、非ロック状態よりも先端81Zが本体30の基部40に接近するように傾く。このため、非ロック状態においては、操作部81の上面81Xと被連結部50の上面50Xとの間には、段差が形成される。
【0035】
押圧部82は、ロック状態において、ロック部110を押圧する。押圧部82は、操作部81の下面81Yから下方に突出する。押圧部82の下端は、下方に向かうにつれて先細りのテーパ形状である。
【0036】
軸挿入部83は、操作部81の下面81Yから下方に突出する。軸挿入部83は、押圧部82および切替部84と繋がる。軸挿入部83は、回転軸用孔83Aが形成される。回転軸用孔83Aは、回転軸90(図6参照)が挿入される。レバー80は、回転軸90回りに回転可能である。
【0037】
切替部84は、操作部81の下面81Yから下方に突出する。切替部84は、ロック用穴84A、非ロック用穴84B、および、連結溝84Cを有する。ロック用穴84A、非ロック用穴84B、および、連結溝84Cは、切替部84を貫通しない。ロック用穴84A、非ロック用穴84B、および、連結溝84Cは、切替部84の一対の側面にそれぞれ形成される。ロック用穴84Aおよび非ロック用穴84Bの深さは、連結溝84Cの深さよりも深い。
【0038】
ロック用穴84Aは、ロック状態において、切替軸100のピン102(図6参照)の先端102Cが挿入される。非ロック用穴84Bは、非ロック状態において、切替軸100のピン102の先端102C(図6参照)が挿入される。連結溝84Cは、ロック用穴84Aおよび非ロック用穴84Bと繋がる。ピン102の先端102Cは、ロック用穴84Aおよび非ロック用穴84Bの一方から他方に移動する過程において連結溝84Cを通過する。
【0039】
回転軸90(図6参照)は、キャスター10の平面視における車輪60の中心軸と直交する方向において、切替軸100とロック部110との間に配置される。回転軸90は、回転軸用孔83A(図10)参照に挿入される。回転軸90の両端部は、基部40の第2孔42(図4参照)から挿入されるねじを介して、基部40に対して回転不能に連結される。
【0040】
一対の切替軸100(図6参照)は、ロック状態および非ロック状態の一方から他方にレバー80が回転することを規制する。切替軸100は、固定部101と、ピン102と、コイルばね103と、を有する。
【0041】
固定部101は、円柱形状であり、基部40の第1孔41(図4参照)に挿入されるねじを介して基部40に回転不能に取り付けられる。ピン102は、固定部101と離間して配置される。ピン102は、ベース102Aと、ばね取付部102Bと、先端102Cと、を有する。
【0042】
ベース102Aは、円柱形状であり、ばね取付部102Bと先端102Cとの間に位置する。ばね取付部102Bは、円柱状であり、ベース102Aから第1孔41に向けて延びる。ばね取付部102Bは、コイルばね103に挿入される。先端102Cは、円錐形状であり、ベース102Aからばね取付部102Bとは反対の方向に延びる。先端102Cは、ロック状態においてレバー80のロック用穴84A(図10参照)に挿入される。先端102Cは、非ロック状態においてレバー80の非ロック用穴84B(図10参照)に挿入される。
【0043】
コイルばね103は、固定部101とピン102とを接続する。コイルばね103は、ピン102をレバー80の切替部84(図10参照)に向けて付勢する。
【0044】
図12は、正面から視たロック部110の斜視図である。図13は、背面から視たロック部110の斜視図である。図14は、ロック部110の断面構造を示す分解斜視図である。図15は、ロック部110の断面図である。
【0045】
ロック部110は、軸部120と、ハウジング130と、コイルばね140と、固定部150と、を有する。
【0046】
軸部120は、第1ピン121と、第2ピン122と、コイルばね123と、を有する。第1ピン121は、ロック状態において、レバー80の押圧部82(図10参照)と接触する位置に配置される。第1ピン121は、ベース121Aと、フランジ部121Bと、突出部121Cと、を有する。
【0047】
ベース121Aは、中空の円柱状であり、コイルばね123の一部が収容される凹部121AXが形成される。フランジ部121Bは、ベース121Aから外方に向けて張り出す。突出部121Cは、ベース121Aから第2ピン122とは反対の方向に突出する。突出部121Cは、円錐状である。非ロック状態からロック状態に移行する過程において、突出部121Cは、押圧部82と接触する。非ロック状態からロック状態に移行する過程において、第1ピン121は、押圧部82によって、第2ピン122に接近するように押圧される。
【0048】
第2ピン122は、本体122Aと、フランジ部122Bと、を有する。本体122Aは、円柱状であり、コイルばね123の一部が収容される凹部122AXが形成される。フランジ部122Bは、本体122Aのうちの第1ピン121と近い方の端部から外方に張り出す。
【0049】
本体122Aのうちの第1ピン121から遠い方の端部(以下では、「先端122C」という)は、非ロック状態においては、固定部150の内部に位置する。換言すれば、先端122Cは、非ロック状態においては、基部40の側面40YA、40YBから突出しない。先端122Cは、ロック状態においては、固定部150の外部に位置する。換言すれば、先端122Cは、ロック状態においては、基部40の側面40YA、40YBから突出する。先端122Cは、ロック状態においては、タイヤ63に形成される凹部63Aに挿入される。より詳細には、先端122Cは、ロック状態において、タイヤ63の凹部63Aと嵌合する。
【0050】
図8に示される凹部63Aは、タイヤ63の内面、換言すれば、タイヤ63のうちの基部40の側面40YA、40YBと面する面に形成される。凹部63Aは、タイヤ63を貫通しない。タイヤ63に形成される凹部63Aの数は、任意に選択可能である。非ロック状態からロック状態に移行する機会を多く確保するために、凹部63Aの数は、複数であることが好ましい。タイヤ63に複数の凹部63Aが形成される場合、複数の凹部63Aは、タイヤ63の周方向に沿って形成されることが好ましい。
【0051】
タイヤ63に形成される凹部63Aの位置は、ロック状態において、第2ピン122(図12参照)の先端122Cと嵌合できる位置であれば、任意に選択可能である。凹部63Aが形成される位置が車輪60の中心軸に近い程、ロック状態において、第2ピン122と凹部63Aとに作用する負荷が大きい。このため、ロック状態においてロック機構70に作用する負荷を低減する観点から、凹部63Aは、タイヤ63の外郭に沿う位置、換言すれば、タイヤ63の外郭の近傍に形成されることが好ましい。
【0052】
ロック状態において、例えばユーザが、誤って被移動体を動かそうとした場合、車輪60に大きなトルクが作用するため、ロック機構70が破損するおそれがある。このため、本実施形態のキャスター10は、ロック状態において、車輪60に所定の大きさ以上のトルクが作用した場合、第2ピン122の先端122Cが凹部63Aから自動的に抜ける、換言すれば、ロック状態が自動的に解除されるように、第2ピン122および凹部63Aの形状に工夫が施されている。
【0053】
図16は、非ロック状態におけるロック機構70の断面図である。図17は、ロック状態におけるロック機構70の断面図である。
【0054】
第2ピン122の先端122Cは、凹部63Aの底面に近づくにつれて先細りのテーパ形状である。凹部63Aの内郭は、ロック部110に近づくにつれて広がるテーパ形状である。先端122Cの外郭形状は、凹部63Aの内郭形状と一致する。先端122Cのテーパ形状の角度、および、凹部63Aの内郭のテーパ形状の角度は、車輪60に所定の大きさ以上のトルクが作用した場合に自動的にロック状態が解除される角度であれば、任意に選択可能である。一例では、テーパ形状の角度は、30°である。テーパ形状の角度は、30°未満であってもよく、30°超であってもよい。
【0055】
図14または図15に示されるハウジング130は、軸部120の一部を収容する。ハウジング130は、収容部131と、フランジ部132と、を有する。
【0056】
収容部131は、筒状であり、軸部120の一部を収容する収容空間131Aを有する。第2ピン122の先端122Cは、ロック状態および非ロック状態において、収容空間131Aの外部に位置する。
【0057】
フランジ部132は、収容部131のうちの第1ピン121に近い方の端部から外方に張り出す。ロック状態および非ロック状態において、フランジ部132の端面は、第1ピン121のフランジ部121Bの端面と接触する。
【0058】
コイルばね140は、ハウジング130の外周において、フランジ部132と固定部150との間に配置される。コイルばね140は、ハウジング130、および、ハウジング130と接触する第1ピン121を固定部150から離間するように付勢する。
【0059】
固定部150は、基部40の第3孔43(図4参照)に挿入される。固定部150は、楕円柱状である。固定部150は、基部40の第3孔43に挿入された状態において、基部40の側面40YA、40YBから突出しない。固定部150は、固定孔151、152と、ピン孔153と、を有する。
【0060】
固定孔151、152は、固定部150と基部40と固定するためのねじが挿入される。ピン孔153は、固定孔151と固定孔152との間に形成される。ピン孔153は、第2ピン122の先端122Cが配置される。非ロック状態においては、第2ピン122の先端122Cは、ピン孔153内に位置する。ロック状態においては、第2ピン122の先端122Cは、ピン孔153から突出する。
【0061】
<2.キャスターの作用>
図16に示されるように、非ロック状態においては、第2ピン122の先端122Cは、固定部150のピン孔153内に位置する。また、非ロック状態においては、切替軸100の先端102C(図6参照)は、コイルばね103の付勢力によって、レバー80の非ロック用穴84B(図10参照)に挿入されている。このため、レバー80の押圧部82は、第1ピン121の突出部121Cと接触しない。
【0062】
非ロック状態、かつ、車輪60が静止した状態において、レバー80の操作部81が操作されることによって、レバー80は、先端81Zが本体30に接近するように回転軸90回りに回転する。第1ピン121の突出部121Cが押圧部82に押されることによって、第1ピン121と第2ピン122とがコイルばね123の付勢力に反して接触する。第1ピン121と第2ピン122とが接触したあと、押圧部82によってさらに第1ピン121が押されることによって、第1ピン121と接触する第2ピン122およびハウジング130がコイルばね140の付勢力に反して凹部63Aに接近するように押される。
【0063】
第2ピン122の先端122Cは、固定部150のピン孔153から突出し、換言すれば、基部40の側面40YA、40YBから突出し、凹部63Aと嵌合する。このため、図17に示されるロック状態が形成される。なお、ロック状態においては、コイルばね123の付勢力によって、第1ピン121と第2ピン122とは、再び離間する。
【0064】
一方、ロック状態、かつ、車輪60が静止した状態において、レバー80の操作部81が操作されることによって、レバー80は、先端81Zが本体30から離間するように回転軸90回りに回転する。押圧部82が第1ピン121の突出部121Cから離間するため、第1ピン121およびハウジング130は、コイルばね140の付勢力によって、凹部63Aから離間する。第2ピン122は、コイルばね123によって第1ピン121と接続されているため、第1ピン121の移動に伴って、凹部63Aから離間するように移動する。第2ピン122の先端122Cが凹部63Aから抜けることによって非ロック状態が形成される。
【0065】
ロック状態において、車輪60に所定の大きさ以上のトルクが作用した場合、第2ピン122の先端122Cのテーパ形状、および、凹部63Aのテーパ形状によって、第2ピン122の先端122Cが凹部63Aから自動的に抜ける。このため、図18に示されるように、例えば、第2ピン122の先端122Cは、タイヤ63の周方向において隣り合う凹部63Aの間の部分に乗り上げる。第2ピン122の先端122Cは、隣り合う凹部63Aの間の部分によって第1ピン121に向けて押される。このため、第2ピン122の先端122Cは、コイルばね123の付勢力に反して、ハウジング130に収容される。なお、ロック部110を構成する要素の形状等を変更して、隣り合う凹部63Aの間の部分によって第2ピン122が第1ピン121に向けて押される力に加えて、コイルばね140の付勢力によって、第2ピン122の先端122Cがハウジング130内に収容されるように構成してもよい。また、非ロック状態において、ロック状態に移行するようにレバー80の操作部81が操作されたとき、第2ピン122の先端122Cと凹部63Aとが対向していない場合にも、図18に示されるように第2ピン122の先端122Cは、タイヤ63の周方向において隣り合う凹部63Aの間の部分に乗り上げることがある。このような場合にも、第2ピン122の先端122Cが凹部63Aから自動的に抜けた場合と同様の作用によって、第2ピン122の先端122Cは、ハウジング130に収容される。
【0066】
<3.本実施形態の効果>
本実施形態のキャスター10によれば、次の効果を得ることができる。
<3-1>
キャスター10は、ロック状態において、軸部120と凹部63Aとの嵌合によって、車輪60の回転が規制される。このため、車輪60を好適に制動することができる。
【0067】
<3-2>
凹部63Aは、車輪60の周方向に沿って複数形成される。凹部63Aの数が多いため、非ロック状態からロック状態に移行する機会を多く確保できる。
【0068】
<3-3>
凹部63Aは、車輪60の外郭の近傍に形成されるため、ロック状態において、車輪60の外郭の近傍で軸部120と凹部63Aとが嵌合する。このため、車輪60の中心の近傍で軸部120と凹部63Aとが嵌合する構成と比較して、ロック状態においてロック機構70に作用する負荷を低減できる。
【0069】
<3-4>
軸部120の先端122Cは、車輪60に近づくにつれて先細りのテーパ形状である。凹部63Aの内郭は、本体30に近づくにつれて広がるテーパ形状である。キャスター10は、ロック状態において、車輪60に所定の大きさ以上のトルクが作用した場合、ロック状態が解除される。このため、ロック状態において、車輪60に所定の大きさ以上のトルクが作用した場合に、ロック機構70が破損することが抑制される。
【0070】
<3-5>
ロック機構70は、ロック状態と非ロック状態とを切り替えるレバー80を有する。このため、ロック状態と非ロック状態とを容易に切り替えることができる。
【0071】
<3-6>
車輪60は、本体30に対して一方に配置される第1車輪60Aと、本体30に対して他方に配置される第2車輪60Bとを有する。ロック機構70は、第1車輪60Aおよび第2車輪60Bのロック状態と非ロック状態とを切り替える。このため、第1車輪60Aおよび第2車輪60Bを好適に制動できる。
【0072】
<3-7>
車輪を制動するために、嵌合構造を用いる場合、ユーザは、嵌合位置を強く意識する必要がある。本実施形態のキャスター10は、ロック機構70を構成する凹部63Aが車輪60の周方向に沿って複数形成されるため、車輪60の静止位置に関わらず、軸部120の先端122Cと凹部63Aとが嵌合する可能性が高い。このため、ユーザは、軸部120の先端122Cと凹部63Aとの位置関係を意識することなく、キャスター10のロック状態を形成できる。
【0073】
<3-8>
第2ピン122の先端122Cは、レバー80によって押圧されることによって、本体30から突出する一方、レバー80による荷重が作用しなくなった場合、コイルばね123、140の付勢力によって、本体30に収容される。このため、キャスター10は、本体30に対するタイヤ63の任意の回転位置において、非ロック状態およびロック状態の一方から他方に容易に切り替えることができる。
【0074】
<4.変形例>
上記実施形態は本発明に関するキャスターが取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に関するキャスターは、実施形態に例示された形態とは異なる形態を取り得る。その一例は、実施形態の構成の一部を置換、変更、もしくは、省略した形態、または、実施形態に新たな構成を付加した形態である。以下に実施形態の変形例の幾つかの例を示す。なお、以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲において、互いに組み合わせることができる。
【0075】
<4-1>
上記実施形態において、凹部63Aは、タイヤ63を貫通しなかったが、凹部63Aは、タイヤ63を貫通する孔であってもよい。
【0076】
<4-2>
上記実施形態において、ロック機構70は、第1車輪60Aおよび第2車輪60Bのロック状態と非ロック状態とを切り替えたが、ロック機構70の構成は、任意に変更可能である。変形例のキャスター10では、ロック機構70は、第1車輪60Aおよび第2車輪60Bの一方のみのロック状態と非ロック状態とを切り替えるように構成されてもよい。
【0077】
<4-3>
上記実施形態において、第2ピン122の先端122Cの外郭形状、および、凹部63Aの内郭形状は、ロック状態において嵌合する形状であれば、任意に変更可能である。第2ピン122の先端122Cの外郭形状、および、凹部63Aの内郭形状は、例えば、三角錐以上の角錐、または、円錐であってもよい。
【0078】
<4-4>
上記実施形態において、車輪60は、第1車輪60Aおよび第2車輪60Bを有していたが、第1車輪60Aおよび第2車輪60Bの一方は、省略されてもよい。
【符号の説明】
【0079】
10 :キャスター
30 :本体
60 :車輪
60A :第1車輪
60B :第2車輪
62 :凹部
70 :ロック機構
80 :レバー
120 :軸部
122C:先端
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18