(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093489
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】不良碍子検出装置
(51)【国際特許分類】
G01R 31/12 20200101AFI20240702BHJP
B64U 10/13 20230101ALI20240702BHJP
B64U 20/87 20230101ALI20240702BHJP
B64U 20/80 20230101ALI20240702BHJP
B64U 101/26 20230101ALN20240702BHJP
【FI】
G01R31/12 C
B64U10/13
B64U20/87
B64U20/80
B64U101:26
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209901
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】月坂 太
(72)【発明者】
【氏名】前田 広治
(72)【発明者】
【氏名】松田 啓佑
【テーマコード(参考)】
2G015
【Fターム(参考)】
2G015AA20
2G015BA02
(57)【要約】
【課題】様々な姿勢の碍子連における不良碍子の調査を安全、且つ、簡単に行うことができ、しかも、一人で作業ができて人件費を低く抑えることができる不良碍子検出装置を提供する。
【解決手段】不良碍子検出装置は、隣り合う2つの碍子11間の絶縁性能を検出する第1検出電極72及び第2検出電極73を有する判定器3がドローン2に取り付けられる。判定器3には、ドローン2の前後方向に延びる回転軸心C1を中心として正逆回転可能な回転体7が設けられる。第1検出電極72及び第2検出電極73は、回転軸心C1に沿って延び、且つ、当該回転軸心C1と交差する方向に離間して設けられるとともに、回転軸心C1からずれた配置になっている。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線操縦可能に構成され、少なくとも前後に進退可能な無人飛行体と、
前記無人飛行体に取り付けられ、且つ、碍子連の隣り合う2つの碍子にそれぞれ接触させて当該両碍子間の絶縁性能を検出する一対の検出電極を有し、前記絶縁性能に基づいて前記碍子が不良か否かを判定する判定器と、を備え、
前記判定器には、前記無人飛行体の前後方向に延びる回転軸心を中心として正逆回転可能な回転体が設けられ、
前記両検出電極は、前記回転軸心に沿って延び、且つ、当該回転軸心と交差する方向に離間して設けられるとともに、少なくとも前記両検出電極の一方が前記回転軸心からずれた配置になっていることを特徴とする不良碍子検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の不良碍子検出装置において、
前記回転体を正転させた際、当該回転体が逆転する方向に付勢する付勢部材を備えていることを特徴とする不良碍子検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の不良碍子検出装置において、
前記付勢部材は、前記回転軸心が延びる方向に見て点対称に配置された一対のコイルバネであることを特徴とする不良碍子検出装置。
【請求項4】
請求項1に記載の不良碍子検出装置において、
前記回転体を回転させるモータと、前記モータの回転角度を制御する制御基板と、を備えていることを特徴とする不良碍子検出装置。
【請求項5】
請求項1に記載の不良碍子検出装置において、
前記判定器は、判定結果を点検者に伝える結果伝達部を備えていることを特徴とする不良碍子検出装置。
【請求項6】
請求項5に記載の不良碍子検出装置において、
前記結果伝達部は、検出する前記両碍子間の絶縁性能の違いにより発光の明暗を変更する発光明暗変更部と、前記発光明暗変更部を撮影する撮影部と、前記撮影部で撮影した映像を表示する表示部と、を備えていることを特徴とする不良碍子検出装置。
【請求項7】
請求項6に記載の不良碍子検出装置において、
前記撮影部は、前記両検出電極が撮影画像内に収まるように前記無人飛行体の前進方向を撮影するよう構成されていることを特徴とする不良碍子検出装置。
【請求項8】
請求項5に記載の不良碍子検出装置において、
前記結果伝達部は、前記判定結果を音声に変換して出力する警報装置であることを特徴とする不良碍子検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気絶縁性能が低下した不良碍子を検出する不良碍子検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、架空電線路の鉄塔には、多くの碍子が配設されている。これら各碍子は、雷撃等の原因により劣化して絶縁性能が低下すると、電線を流れる電流が意図せぬところに流れ出るおそれがあるので、各碍子の絶縁性能を点検者により定期的に点検し、不良碍子が無いか調査している。
【0003】
この不良碍子の調査には、例えば、特許文献1,2に開示されている不良碍子検出器が用いられる。この不良碍子検出器は、中心線に沿って伸縮可能に構成され、点検者が把持して操作する絶縁ロッドと、絶縁ロッドの先端に設けられ、当該絶縁ロッドから離れる方向に直線状に延びる棒状をなす第1検出部と、第1検出部の下方に設けられ、先端側が下方に向けて回動可能となるよう基端部分が絶縁ロッドの先端部分に軸支された棒状をなす第2検出部と、第1及び第2検出部の間の抵抗値を測定可能な測定部と、を備え、絶縁ロッドの側方には、当該絶縁ロッドに沿ってスライド操作可能な操作用チェーンが配設されている。
【0004】
ここで、特許文献1の不良碍子検出器においては、操作用チェーンの先端が第2検出部の回動軸よりも基端側に接続されていて、点検者は、絶縁ロッドを把持するとともに、調査する碍子の上側領域に第1検出部の先端部分を接触させた後、操作用チェーンを引っ張って下方に延びる姿勢の第2検出部を上方に回動させることにより、調査する碍子の下側領域に第2検出部の先端部分を下側から接触させて当該碍子の抵抗値を測定部において測定するようになっている。
【0005】
一方、特許文献2の不良碍子検出器においては、第2検出部の基端側と操作用チェーンの先端側との間においてラックアンドピニオン機構が設けられていて、点検者は、絶縁ロッドを把持するとともに、調査する碍子の上側領域に第1検出部の先端部分を接触させた後、操作用チェーンを引っ張って第1検出部と並んで延びる姿勢の第2検出部をラックアンドピニオン機構で下方に回動させることにより、調査する碍子の下側領域に第2検出部の先端部分を上側から接触させて当該碍子の抵抗値を測定部において測定するようになっている。
【0006】
ところで、上述の如き不良碍子検出器は、調査のために点検者が検出器を背負って鉄塔を昇降する必要があり、少なからず危険が伴うといった課題がある。また、調査の際に鉄塔等に設けられた充電部との間で必要な距離が保てない場合には、停電させた後、作業を行わなければならず、作業が煩雑であるといった課題もあった。さらには、安全管理上、複数人で作業を行う必要があり、人件費が嵩むという課題もある。
【0007】
これに対応するために、例えば、特許文献3の如き無人飛行体に特許文献1,2の如き検出器を取り付けるとともに、点検者が碍子から離れた状態において無人飛行体を無線で操縦して検出器による調査を行うといったことが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5-87865号公報
【特許文献2】特開平6-138170号公報
【特許文献3】特開2005-265710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、調査する碍子は、上下に延びる懸垂碍子だけでなく、鉄塔間においてカテナリー曲線で延びる電線路に設けられた斜めに傾いて連なるもの等もある。
しかし、特許文献3の如き無人飛行体は、斜めに傾いた姿勢で長時間同じ位置に静止することができない。したがって、特許文献3の如き無人飛行体に取り付けた検出器で調査対象の懸垂碍子の抵抗値を測定する際には、第1及び第2検出部が上下に並ぶ姿勢で検出器を無人飛行体に取り付ける必要があり、また、斜めに連なる傾斜した調査対象の碍子連の各碍子の抵抗値を測定する際には、第1及び第2検出部の並設方向が碍子連の傾きに沿う姿勢で検出器を無人飛行体に取り付ける必要があるといったように、調査対象の碍子連の姿勢によって無人飛行体に対する検出器の取付状態を変化させる必要があるので、作業が煩雑であるという課題がある。
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、様々な姿勢の碍子連における不良碍子の調査を安全、且つ、簡単に行うことができ、しかも、一人で作業ができて人件費を低く抑えることができる不良碍子検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明に係る不良碍子検出装置は、調査する碍子に接触させる一対の検出電極を回転させる回転体を設けたことを特徴とする。
具体的には、電気絶縁性能が低下した不良碍子を検出する不良碍子検出装置を対象とし、次のような対策を講じた。
すなわち、第1の発明に係る不良碍子検出装置では、無線操縦可能に構成され、少なくとも前後に進退可能な無人飛行体と、前記無人飛行体に取り付けられ、且つ、碍子連の隣り合う2つの碍子にそれぞれ接触させて当該両碍子間の絶縁性能を検出する一対の検出電極を有し、前記絶縁性能に基づいて前記碍子が不良か否かを判定する判定器と、を備え、前記判定器には、前記無人飛行体の前後方向に延びる回転軸心を中心として正逆回転可能な回転体が設けられ、前記両検出電極は、前記回転軸心に沿って延び、且つ、当該回転軸心と交差する方向に離間して設けられるとともに、少なくとも前記両検出電極の一方が前記回転軸心からずれた配置になっていることを特徴とする。
このように構成される不良碍子検出装置では、正逆回転可能な回転体に配置される一対の検出電極のうちいずれか一方が絶縁抵抗の測定対象である碍子に接触した状態で無人飛行体を移動させることで、接触した検出電極に力が加わり他方の検出電極が回転軸心を中心に回転して隣り合う碍子に接触するように作用する。
【0011】
第2の発明に係る不良碍子検出装置では、第1の発明において、前記回転体を正転させた際、当該回転体が逆転する方向に付勢する付勢部材を備えていることを特徴とする。
このように構成される不良碍子検出装置では、付勢部材が正転した回転体を逆転させて一対の検出電極の向きを初期状態に戻すように作用する。
【0012】
第3の発明に係る不良碍子検出装置では、第2の発明において、前記付勢部材は、前記回転軸心が延びる方向に見て点対称に配置された一対のコイルバネであることを特徴とする。
【0013】
第4の発明に係る不良碍子検出装置では、第1の発明において、前記回転体を回転させるモータと、前記モータの回転角度を制御する制御基板と、を備えていることを特徴とする。
このように構成される不良碍子検出装置では、モータが無人飛行体によらずとも回転体を回転させるように作用する。
【0014】
第5の発明に係る不良碍子検出装置では、第1の発明において、前記判定器は、判定結果を点検者に伝える結果伝達部を備えていることを特徴とする。
【0015】
第6の発明に係る不良碍子検出装置では、第5の発明において、前記結果伝達部は、検出する前記両碍子間の絶縁性能の違いにより発光の明暗を変更する発光明暗変更部と、前記発光明暗変更部を撮影する撮影部と、前記撮影部で撮影した映像を表示する表示部と、を備えていることを特徴とする。
このように構成される不良碍子検出装置では、碍子間の絶縁性能の違いによって発光が明暗する発光明暗変更部を撮影部で撮影し、その映像を表示部が表示することで遠隔でも絶縁性能が視認されるように作用する。
【0016】
第7の発明に係る不良碍子検出装置では、第6の発明において、前記撮影部は、前記両検出電極が撮影画像内に収まるように前記無人飛行体の前進方向を撮影するよう構成されていることを特徴とする。
【0017】
第8の発明に係る不良碍子検出装置では、第5の発明において、前記結果伝達部は、前記判定結果を音声に変換して出力する警報装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
第1の発明に係る不良碍子検出装置では、点検者は、無人飛行体を無線操縦により移動させて調査対象の碍子連に接近させる。このとき、アークホーンの張出方向に対して直交する方向から無人飛行体を調査対象の碍子連に向かって接近させ、無人飛行体の前面に調査対象の碍子連が対向する位置となるようにする。そして、点検者は、例えば、無人飛行体を前進させて隣り合う2つの碍子の一方に検出電極の一方を接触させた後、無人飛行体を操作することにより検出電極の一方を2つの碍子の一方に接触させた状態のまま両検出電極の並設方向が碍子連の傾きに沿う方向になるよう回転体を回転させて隣り合う2つの碍子の他方に検出電極の他方を接触させる。
また、例えば、点検者は、碍子連の傾きに両検出電極の並設方向が沿う姿勢となるように回転体を予め回転させた状態にした後、無人飛行体を無線操縦により移動させて調査対象の碍子連に接近させ、その後、無人飛行体を前進させて隣り合う2つの碍子に接触させるか、あるいは、碍子連に両検出電極を接近させて隣り合う2つの碍子の間か、あるいは、1つの碍子を挟むように両検出電極を碍子連の内側に入れた後、碍子連の傾きに両検出電極の並設方向が沿う姿勢となるように回転体を回転させて隣り合う2つの碍子に両検出電極をそれぞれ接触させる。
すると、両碍子間の絶縁性能を検出可能になって当該絶縁性能に基づいて碍子の不良判定が行われる。その後、点検者は、無人飛行体を後退させて両検出電極を碍子連から離間させた後、調査した2つの碍子に隣り合う2つの碍子に対応する位置まで無人飛行体を横方向に移動させ、上記手順と同様にして2つの碍子間の絶縁性能を検出する。このように、点検者が点検時において、例えば、鉄塔等の高所に登る必要が無いので、安全に碍子の調査を行うことができる。
また、一人で無人飛行体を操作して点検を行えるので、作業の省力化を図ることができ人件費が嵩まないようにすることができる。また、無人飛行体に対する絶縁性能の検出部分の取り付けを測定毎に変化させることなく様々な姿勢の碍子連の調査を行うことができるので、効率良く短い時間で調査を終えることができる。
【0019】
第2の発明に係る不良碍子検出装置では、点検者は、調査対象の碍子連に対向する無人飛行体を前進させて隣り合う2つの碍子の一方に検出電極の一方を接触させた状態にした後、当該接触点を支点として付勢部材の付勢力に抗して回転体が元位置から正転するよう無人飛行体を前後方向と交差する所定の方向に移動させる。
すると、両検出電極の並設方向が碍子連の傾きに沿う方向に近づいたときに、検出電極の他方が隣り合う2つの碍子の他方に接触するようになり、両碍子間の絶縁性能を検出可能になって当該絶縁性能に基づいて碍子の不良判定が行われる。その後、無人飛行体を後退させて両検出電極を碍子連から離間させると、付勢部材の付勢力によって回転体が逆転し、両検出電極が元位置となる。
このように、碍子連が傾いていたとしても、比較的簡単な構造で両検出電極の位置を碍子連の傾きに合わせることができるので、低コストな装置にできる。また、碍子の調査後、無人飛行体を後退させるだけで付勢部材の付勢力で両検出電極が元位置に自動で戻るので、時間をかけずに効率良く各碍子を調査していくことができる。
【0020】
第3の発明に係る不良碍子検出装置では、一対のコイルバネが回転軸心を挟んで点対称に配置されているので、回転体を逆転させる際に当該回転体を引っ張る力のバランスが良くなり、当該構造に不必要に働く負荷が減って故障し難くすることができる。
【0021】
第4の発明に係る不良碍子検出装置では、両検出電極の並設方向の傾きが碍子連の傾きに対応するよう制御基板がモータの回転角度を予め制御できるようになるので、調査後、次の調査が異なる姿勢の碍子連である場合には、その調査対象に移動する際中に次の調査対象の碍子連の傾きに両検出電極の並設方向の傾きを合わせておくことができるようになる。したがって、効率良く調査を行って調査時間を短くすることができる。
【0022】
第5の発明に係る不良碍子検出装置では、点検者は、無人飛行体を操作しながら点検した碍子の判定結果を知ることができるようなり、効率良く調査を行うことができる。
【0023】
第6の発明に係る不良碍子検出装置では、調査対象の碍子から遠く離れた位置において無人飛行体を操作しながら表示部に表示される発光明暗変更部の発光状態を監視することで、調査対象の碍子が不良か否かを知ることができるようになる。したがって、安全に、且つ、正確に調査対象の碍子の状態を知ることができる。
【0024】
第7の発明に係る不良碍子検出装置では、点検者は、両検出電極を隣り合う2つの碍子にそれぞれ接触させる際の作業をカメラの撮影画像を見ながら行うことができるようになる。したがって、遠く離れて点検者が目視できない位置の碍子であっても安全に、且つ、簡単に碍子の調査作業を行うことができる。
【0025】
第8の発明に係る不良碍子検出装置では、調査した碍子の判定結果が音声で分かるようになるので、無人飛行体から目を逸らさずに判定結果を知ることができ、判定結果を知る際の無人飛行体の飛行状態を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施例1に係る不良碍子検出装置の正面図である。
【
図2】本発明の実施例1に係る不良碍子検出装置の側面図である。
【
図3】本発明の実施例1に係る不良碍子検出装置の平面図である。
【
図4】
図2のIV部拡大図であり、一部内部構造を示す図である。
【
図6】斜めに延びる碍子連に不良碍子があるか否かを調査する直前の状態を示す不良碍子検出装置の平面図である。
【
図7】
図6の後、無人飛行体を前進させて調査対象の隣り合う2つの碍子の一方に2つの検出電極の一方を接触させた直後の状態を示す碍子連周りの平面図である。
【
図10】
図7の後、無人飛行体を側方に移動させて回転体を回転させることにより隣り合う2つの碍子の他方に2つの検出電極の他方を接触させた直後の状態を示す碍子連周りの平面図である。
【
図14】本発明の実施例2に係る
図4相当図である。
【
図15】本発明の実施例2において懸垂碍子に不良碍子があるか否かを調査する直前の状態を示す不良碍子検出装置の側面図である。
【
図17】
図16の後、回転体を回転させて隣り合う2つの碍子にそれぞれ検出電極を接触させた直後の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【実施例0028】
図1乃至
図3は、本発明の実施例1に係る不良碍子検出装置1を示す。この不良碍子検出装置1は、例えば、架空電線路の鉄塔に配設された碍子連10(
図7等参照)における略傘型状をなす各碍子11(
図7等参照)を順に点検して絶縁性能が低下しているか否かを調査するためのものであり、無線操縦可能に構成されたドローン2(無人飛行体)と、ドローン2に取り付けられ、当該ドローン2の前後方向に長細い形状をなす判定器3と、を備えている。
ドローン2は、厚みを有する略矩形板状のドローン本体21と、ドローン本体21における四隅の側面から平面視で放射状に延びる4つの丸棒状をなすアーム22と、各アーム22の先端部分に設けられた回転軸心が上下方向に向くプロペラユニット23と、を備え、各プロペラユニット23は、図示しない電動モータの回転駆動により、それぞれ独立して回転するようになっている。
ドローン本体21の下面中央には、ドローン2の前方を撮影可能なカメラ4(撮影部)が吊下げられている。
【0029】
また、ドローン本体21の下側には、地上に降りた際に当該ドローン本体21を支持する支持フレーム24が左右に離間して一対設けられ、両支持フレーム24は、下方に行くにつれて次第に左右に離間する形状になっている。
各支持フレーム24は、ドローン本体21の前後の各隅部から下方に行くにつれて次第に前後に離間する形状をなす一対の第1脚部24aと、当該両第1脚部24aの下端部分を橋絡する水平方向に延びる第2脚部24bと、で構成されている。
両支持フレーム24の中途部下側寄りの位置には、左右方向に延びる帯板状をなす一対の台座25が前後に離間して取り付けられ、当該各台座25の中央部分上面に判定器3が固定されている。
【0030】
ドローン本体21内部の制御部分とカメラ4とは、図示しない無線の送受信アンテナを介して地上に設置された操作ユニット12に接続されている。
操作ユニット12は、点検者が操作するコントローラ12aと、カメラ4で撮影した映像を表示するモニタ12b(表示部)と、判定器3の判定結果を音声に変換して出力する警報装置12cと、を備えている。
そして、点検者は、コントローラ12aを操作することにより、ドローン2を無線操縦にて、前後に進退させたり、あるいは、左右に移動させたり、さらには、上下に昇降させたりできるようになっている。
【0031】
判定器3は、各台座25を跨ぎながらドローン2の前側に向かって延びる細棒状をなす本体フレーム5と、本体フレーム5の前端に固定され、筒中心線が当該本体フレーム5の中心線に一致する略円筒状をなす回転支持ボックス6と、回転支持ボックス6の前側に位置し、側面視で前方に開放する二股形状をなす回転体7と、を備えている。
回転支持ボックス6は、
図4に示すように、内部空間S1を有するボックス本体6aと、当該ボックス本体6aの前端中央において内部空間S1に連通する軸支孔6bと、を備え、軸支孔6bには、回転体7の回転軸7aが嵌挿されている。
回転軸7aには、ワッシャーW1を外装させるとともに、その外周面に形成された雄螺子に2つのボルトB1が螺合しており、これにより、回転支持ボックス6は、回転体7を本体フレーム5の中心線と一致するドローン2の前後方向に延びる回転軸心C1を中心として正逆回転可能に軸支している。尚、以下では、
図5に示すように、回転体7の正転をX1方向の回転とし、逆転をX2方向の回転とする。
【0032】
内部空間S1には、回転軸心C1が延びる方向に見て点対称に配置された一対のコイルバネ7b(付勢部材)が配設されている。
各コイルバネ7bは、一端が回転軸7aの外周面に固定される一方、他端がボックス本体6aの内周面に固定されていて、回転体7をX1方向に正転させた際、当該回転体7が逆転するX2方向に付勢するようになっている(
図13参照)。
【0033】
回転体7は、
図1乃至
図4に示すように、上下に延びる直方体形状をなし、上下中途部の回転支持ボックス6側に回転軸7aが設けられた検出器本体71と、検出器本体71の上端寄りの位置からドローン2の前側に細長く直線状に延びる第1検出電極72と、検出器本体71の下端から真下に少し延びた後、その延長端から第1検出電極72と平行にドローン2の前側に細長く直線状に延びる側面視で略L字形状をなす第2検出電極73と、検出器本体71の上端に取り付けられた発光明暗変更部74と、を備え、第1検出電極72は、その先端部分が第2検出電極73よりも若干長い寸法となるよう設定されている。
第1検出電極72の方が長い寸法としているのは、後述するように碍子11に最初に接触させる検出電極としているため、第2検出電極73よりも長めにしておくことで接触と接触の維持を容易にして、続いて第2検出電極73を接触させる作業も容易にするためである。
【0034】
第1検出電極72及び第2検出電極73は、回転軸心C1に沿って延び、且つ、当該回転軸心C1と交差する方向に離間して設けられるとともに、回転軸心C1を間に挟む配置となっている。すなわち、第1検出電極72及び第2検出電極73は、それぞれ回転軸心C1からずれた配置になっている。
第1検出電極72及び第2検出電極73は、カメラ4の撮影画像内に収まる配置となっている。つまり、カメラ4は、第1検出電極72及び第2検出電極73が撮影画像内に収まるようにドローン2の前進方向を撮影するよう構成されている。
また、第1検出電極72及び第2検出電極73は、碍子連10の隣り合う2つの碍子11にそれぞれ接触させて(
図10乃至
図12参照)当該両碍子11間の絶縁性能(抵抗値)を検出可能になっている。
そして、検出器本体71は、第1検出電極72及び第2検出電極73が検出した絶縁性能に基づいて調査対象の碍子11が不良か否かを判定するようになっている。
【0035】
発光明暗変更部74は、検出する両碍子11間の絶縁性能(抵抗値)の違いにより発光の明暗が変更されるネオン式ランプ74aを備えている。具体的には、第1検出電極72及び第2検出電極73により検出する抵抗値が大きいと、ネオン式ランプ74aによる発光が明るく変更される一方、検出する抵抗値が小さいと、ネオン式ランプ74aによる発光が暗く変更されて調査対象の碍子11が不良であると判定できるようになっている。
発光明暗変更部74は、カメラ4に撮影されるようになっていて、この発光明暗変更部74、カメラ4及びモニタ12bは、判定結果を点検者に伝える本発明の結果伝達部13を構成している。
また、警報装置12cは、判定結果を音声に変換して出力するようになっている。したがって、調査した碍子11の判定結果が音声で分かるようになるので、ドローン2から目を逸らさずに判定結果を知ることができ、判定結果を知る際のドローン2の飛行状態を安定させることができる。
【0036】
次に、本発明の実施例1の不良碍子検出装置1を用いた具体的な調査の仕方について詳述する。尚、この実施例1では、各碍子11が斜めに連なる碍子連10の各碍子11の絶縁性能をそれぞれ調査するものとする。
まず、点検者は、
図6に示すように、コントローラ12aを操作してドローン2を無線操縦により移動させて調査対象の碍子連10に接近させる。このとき、碍子連10の一端と他端とにそれぞれ設けられたアークホーン10aの張出方向に対して直交する方向からドローン2を調査対象の碍子連10に向かって接近させ、ドローン2の前面に調査対象の碍子連10が対向する位置となるようにする。
そして、点検者は、
図7乃至
図9に示すように、ドローン2を前進させて隣り合う2つの碍子11の一方に第1検出電極72を接触させる。このとき、第1検出電極72は、一方の碍子11の傘部分の上側面に接触させる一方、第2検出電極73は、2つの碍子11の間に入れ込む。
【0037】
しかる後、点検者は、ドローン2を操作することにより第1検出電極72が2つの碍子11の一方に接触する状態を維持したまま、当該接触点を支点として両コイルバネ7bの付勢力に抗して回転体7が元位置から正転するようドローン2を左側、つまり、前後方向と交差する方向に移動させる。すると、
図10乃至
図13に示すように、第1検出電極72及び第2検出電極73の並設方向が碍子連10の傾きに沿う方向に近づいたときに、第2検出電極73が隣り合う2つの碍子11の他方における傘部分の上側面に接触するようになり、両碍子11間の絶縁性能(抵抗値)を検出可能になる。その後、第1検出電極72及び第2検出電極73で検出した絶縁性能(抵抗値)に基づいて検出器本体71において碍子11の不良判定が行われる。
点検者は、これら第1検出電極72及び第2検出電極73を隣り合う2つの碍子11にそれぞれ接触させる際の作業をカメラ4の撮影画像を見ながら行う。したがって、遠く離れて点検者が目視できない位置の碍子11であっても安全に、且つ、簡単に碍子11の調査作業を行うことができる。
【0038】
検出器本体71による碍子11の不良判定は、例えば、碍子11の抵抗値が大きい場合には、ネオン式ランプ74aが明るく発光する一方、碍子11の抵抗値が小さい場合には、ネオン式ランプ74aが暗く変化する。点検者は、調査対象の碍子11から遠く離れた位置においてもドローン2を操作しながらモニタ12bに表示される発光明暗変更部74の発光状態を監視することで、調査対象の碍子11が不良か否かを知ることができる。したがって、安全に、且つ、正確に調査対象の碍子11の状態を知ることができる。
つまり、点検者は、ドローン2を操作しながら点検した碍子11の判定結果を知ることができるようになり、効率良く調査を行うことができる。
その後、ドローン2を後退させて第1検出電極72及び第2検出電極73を碍子連10から離間させると、両コイルバネ7bの付勢力によって回転体7がX2方向に逆転し、第1検出電極72及び第2検出電極73が元位置となる。このように、碍子連10が傾いていたとしても、比較的簡単な構造で第1検出電極72及び第2検出電極73の位置を碍子連10の傾きに合わせることができるので、低コストな不良碍子検出装置1にできる。
【0039】
また、第1検出電極72及び第2検出電極73を元位置に戻すのに、各コイルバネ7bの付勢力を利用しているので、碍子11の調査後、ドローン2を後退させるだけで両コイルバネ7bの付勢力で第1検出電極72及び第2検出電極73が元位置に自動で戻るようになり、時間をかけずに効率良く各碍子11を調査していくことができる。
さらに、両コイルバネ7bは、回転軸心C1を挟んで点対称に配置されているので、回転体7を逆転させる際に当該回転体7を引っ張る力のバランスが良くなり、当該構造に不必要に働く負荷が減って故障し難くすることができる。
その後、点検者は、調査した2つの碍子11に隣り合う2つの碍子11に対応する位置までドローン2を横方向に移動させ、上記手順と同様にして2つの碍子11間の絶縁性能を検出する。
このように、本発明の実施例1によると、点検者が点検時において、例えば、鉄塔等の高所に登る必要が無いので、安全に碍子の調査を行うことができる。
また、一人でドローン2を操作して点検を行えるので、作業の省力化を図ることができ人件費が嵩まないようにすることができる。さらに、ドローン2に対する絶縁性能の検出部分の取り付けを測定毎に変化させることなく様々な姿勢の碍子連10の調査を行うことができるので、効率良く短い時間で調査を終えることができる。
【0040】
尚、本発明の実施例1では、第1検出電極72及び第2検出電極73の両方が回転軸心C1からずれているが、少なくとも一方がずれていれば、そのずれている方を先に調査対象の碍子11に接触させることで、回転体7を回転させることができる。
また、本発明の実施例1では、回転軸心C1が延びる方向に見て一対のコイルバネ7bが点対称に配置されているが、配置が点対称であることは必須ではない。
さらに、本発明の実施例1では、回転体7を逆転させる付勢部材としてコイルバネ7bを適用しているが、これに限らず、例えば、回転軸7aに巻装させた捩りバネであってもよいし、その他のバネやゴム等であってもよい。
このように、本発明の実施例2によると、第1検出電極72と第2検出電極73の並設方向の傾きが垂直に延びる懸垂碍子10Aに対応するよう制御基板9がモータ8の回転角度を予め制御できるようになるので、調査後、次の調査対象の各碍子11の連なる姿勢が懸垂碍子10Aと異なる場合には、その調査対象に移動する際中に次の調査対象の各碍子11の連なる方向の傾きに第1検出電極72及び第2検出電極73の並設方向の傾きを合わせておくことができるようになる。したがって、効率良く調査を行って調査時間を短くすることができる。
尚、本発明の実施例2では、第1検出電極72及び第2検出電極73を隣り合う2つの碍子11の間に入れ込んだ後、回転体7を回転させて第1検出電極72及び第2検出電極73をそれぞれ隣り合う2つの碍子11に接触させるようにしているが、垂直に延びる懸垂碍子10Aに第1検出電極72及び第2検出電極73の並設方向が沿う姿勢となるように回転体7を予め回転させた状態にした後、ドローン2を無線操縦により移動させて調査対象の懸垂碍子10Aに接近させ、その後、ドローン2を前進させて隣り合う2つの碍子11にそれぞれ接触させるようにしてもよい。また、本発明の実施例2では、第1検出電極72及び第2検出電極73を調査対象の隣り合う2つの碍子11の間に入れ込むようにしているが、1つの碍子11を挟むように第1検出電極72及び第2検出電極73を懸垂碍子10Aの内側に入れた後、回転体7を回転させて隣り合う2つの碍子11に第1検出電極72及び第2検出電極73をそれぞれ接触させるようにしてもよい。
本発明の実施例1,2では、判定器3における判定結果が出ると、ネオン式ランプ74aの明るさで碍子11が不良か否かを知ることができるようになっているが、判定結果を無線で操作ユニット12まで通信して、モニタ12bにその判定結果を表示させるようにしてもよい。
また、ネオン式ランプ74aの仕様として、検出される抵抗値が大きいと発光が明るく変更される一方、抵抗値が小さいと発光が暗く変更されるものを採用しているが、発光の明暗によって絶縁性能の違いが認識可能であれば、発光の明暗が逆の仕様でもよい。
さらに、第1検出電極72の先端部分が第2検出電極73よりも若干長い寸法となるよう設定しているが、このような寸法に限定するもではなく、碍子11間あるいは碍子11を挟んで挿入し、これら一対の検出電極72,73で碍子の絶縁性能を判定できるのであれば、逆に第2検出電極73の方が長い寸法であっても、あるいは同じ長さとなっても問題はない。
加えて、本発明の実施例1,2では、無線操縦可能な無人飛行体としてドローン2が採用されているが、少なくとも前後に進退可能であれば、その他の無人飛行体を採用してもよく、例えば、電動ヘリコプターとかであってもよい。