(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093490
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】金属含有液の処理方法及び修飾型マガディアイトの製造方法
(51)【国際特許分類】
B01D 15/00 20060101AFI20240702BHJP
B01J 20/22 20060101ALI20240702BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20240702BHJP
C01G 5/00 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
B01D15/00 J
B01J20/22 B
B01J20/30
C01G5/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209903
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】小田嶋 智
(72)【発明者】
【氏名】岡田 友彦
(72)【発明者】
【氏名】庵 美奈
【テーマコード(参考)】
4D017
4G066
【Fターム(参考)】
4D017AA03
4D017BA13
4D017CA14
4D017CB01
4D017DA07
4G066AA30C
4G066AB05B
4G066AB09B
4G066AB18B
4G066BA36
4G066CA45
4G066CA46
4G066DA07
4G066FA03
4G066FA21
4G066FA40
(57)【要約】
【課題】本発明は、有機溶剤に含まれる金属イオン、特に銀イオンを吸着して除去することが可能な、金属含有液の処理方法及び修飾型マガディアイトの製造方法を提供する。
【解決手段】有機溶剤の存在下で、金属イオンを含む処理対象液と、シラノール基の一部がアミノ基を有するアルコキシシランで置換された修飾型マガディアイトとを接触させ、前記金属イオンを前記修飾型マガディアイトに吸着させることにより、前記処理対象液から前記金属イオンの少なくとも一部が除去された処理済液を得ることを含む、金属含有液の処理方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶剤の存在下で、金属イオンを含む処理対象液と、シラノール基の一部がアミノ基を有するアルコキシシランで置換された修飾型マガディアイトとを接触させ、
前記金属イオンを前記修飾型マガディアイトに吸着させることにより、
前記処理対象液から前記金属イオンの少なくとも一部が除去された処理済液を得ることを含む、金属含有液の処理方法。
【請求項2】
前記金属イオンが銀イオンである、請求項1に記載の金属含有液の処理方法。
【請求項3】
前記アルコキシシランがアミノアルキルトリアルコキシシランである、請求項1又は2に記載の金属含有液の処理方法。
【請求項4】
前記有機溶剤が非極性溶剤である、請求項1又は2に記載の金属含有液の処理方法。
【請求項5】
前記修飾型マガディアイトと、層状ポリケイ酸アルカリが酸処理されたH型マガディアイトとを併用する、請求項1又は2に記載の金属含有液の処理方法。
【請求項6】
層状ポリケイ酸アルカリであるマガディアイトと炭素数8~16のアルキル基を有するアルキルトリメチルアンモニウムとを溶媒中で混合し、前記マガディアイトの層間を拡げたアルキル基修飾マガディアイトを得る工程と、
前記アルキル基修飾マガディアイトとアミノ基を有するアルコキシシランとを混合し、前記アルキル基修飾マガディアイトのシラノール基の少なくとも一部が前記アミノ基を有するアルコキシシランで置換された修飾型マガディアイトを得る工程と、を有する、修飾型マガディアイトの製造方法。
【請求項7】
前記アルキルトリメチルアンモニウムのアルキル基の炭素数が12~16である、請求項6に記載の修飾型マガディアイトの製造方法。
【請求項8】
前記アルコキシシランがアミノアルキルトリアルコキシシランである、請求項6又は7に記載の修飾型マガディアイトの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属含有液の処理方法及び修飾型マガディアイトの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水溶液中に含まれる金属イオンを吸着する金属イオン吸着剤及びその製造方法が特許文献1に開示されている。この金属イオン吸着剤は、磁性粒子内包シリカ中空粒子表面に、金属イオンを吸着可能な官能基をもつシラン化合物がシロキサン結合されたものである。
【0003】
特許文献1では、水溶液中の金属イオンを吸着する実用的な材料として、陽イオン交換性の粘土鉱物が挙げられており、このような粘土鉱物に対して特許文献1の金属イオン吸着剤の方が水溶液中からの回収が容易であるとされている。その一方、粘土鉱物や層状ポリケイ酸アルカリ(層状ケイ酸塩)等の層構造を有する無機物は、天然から産出し、簡便な合成法も確立されているので、入手が容易な金属吸着剤の材料としての魅力は相変わらず大きい。
【0004】
ところで、粘土鉱物や層状ポリケイ酸アルカリの金属吸着剤としての適用は、水溶液に含まれる金属イオンに対して専ら行われてきた。本発明者らは、有機溶剤に含まれる金属イオンを除去することが、今後の産業に資するところが大きいと考えた。
【0005】
特許文献2には、層状ポリケイ酸アルカリを酸処理することにより得られるH型マガディアイトを用いて、有機溶剤に含まれる金属イオンを除去する金属含有液の処理方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-171929号公報
【特許文献2】特開2022-033711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2の発明によれば、有機溶剤に含まれる鉄やアルミニウム等の遷移金属の金属イオンを除去できることが開示されている。
しかしながら、銀イオンに対する吸着性能が充分なものではなかった。
【0008】
そこで、本発明は、有機溶剤に含まれる金属イオン、特に銀イオンを吸着して除去することが可能な、金属含有液の処理方法及び修飾型マガディアイトの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、鋭意研究をした結果、層状ポリケイ酸アルカリとアミノ基を有するアルコキシシランとを混合して処理することにより得られる修飾型マガディアイトは、有機溶剤存在下で、銀イオンを吸着可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下の態様を有する。
[1]有機溶剤の存在下で、金属イオンを含む処理対象液と、シラノール基の一部がアミノ基を有するアルコキシシランで置換された修飾型マガディアイトとを接触させ、
前記金属イオンを前記修飾型マガディアイトに吸着させることにより、
前記処理対象液から前記金属イオンの少なくとも一部が除去された処理済液を得ることを含む、金属含有液の処理方法。
[2]前記金属イオンが銀イオンである、[1]に記載の金属含有液の処理方法。
[3]前記アルコキシシランがアミノアルキルトリアルコキシシランである、[1]又は[2]に記載の金属含有液の処理方法。
[4]前記有機溶剤が非極性溶剤である、[1]~[3]のいずれかに記載の金属含有液の処理方法。
[5]前記修飾型マガディアイトと、層状ポリケイ酸アルカリが酸処理されたH型マガディアイトとを併用する、[1]~[4]のいずれかに記載の金属含有液の処理方法。
【0010】
[6]層状ポリケイ酸アルカリであるマガディアイトと炭素数8~16のアルキル基を有するアルキルトリメチルアンモニウムとを溶媒中で混合し、前記マガディアイトの層間を拡げたアルキル基修飾マガディアイトを得る工程と、
前記アルキル基修飾マガディアイトとアミノ基を有するアルコキシシランとを混合し、前記アルキル基修飾マガディアイトのシラノール基の少なくとも一部が前記アミノ基を有するアルコキシシランで置換された修飾型マガディアイトを得る工程と、を有する、修飾型マガディアイトの製造方法。
[7]前記アルキルトリメチルアンモニウムのアルキル基の炭素数が12~16である、[6]に記載の修飾型マガディアイトの製造方法。
[8]前記アルコキシシランがアミノアルキルトリアルコキシシランである、[6]又は[7]に記載の修飾型マガディアイトの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の金属含有液の処理方法によれば、有機溶剤に含まれる金属イオン、特に銀イオンを吸着して除去することができる。
本発明の修飾型マガディアイトの製造方法によれば、有機溶剤に含まれる金属イオン、特に銀イオンを吸着して除去できる修飾型マガディアイトを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】マガディアイトの層構造を示す模式図である。
【
図2】アルキル基修飾マガディアイトとアミノ基を有するアルコキシシランとの反応メカニズムの一例を示す模式図である。
【
図3】アルキル基修飾マガディアイトとアミノ基を有するアルコキシシランとの反応メカニズムの一例を示す模式図である。
【
図4】アルキル基修飾マガディアイトとアミノ基を有するアルコキシシランとの反応メカニズムの一例を示す模式図である。
【
図5】マガディアイトの層間を拡げたアルキル基修飾マガディアイトを得る工程の一例を示すフロー図である。
【
図6】アルキル基修飾マガディアイトから修飾型マガディアイトを得る工程の一例を示すフロー図である。
【
図7】マガディアイトの層間を拡げたアルキル基修飾マガディアイトを得る工程の他の一例を示すフロー図である。
【
図8】アルキル基修飾マガディアイトから修飾型マガディアイトを得る工程の他の一例を示すフロー図である。
【
図9】修飾型マガディアイトのXRD(X線回折法)の測定結果の一例を示すグラフである。
【
図10】修飾型マガディアイトの
13C固体NMR(核磁気共鳴)の測定結果の一例を示すグラフである。
【
図11】修飾型マガディアイトの
29Si固体NMRの測定結果の一例を示すグラフである。
【
図12】修飾型マガディアイトのXPS(X線光電子分光法)分析の測定結果の一例を示すグラフである。
【
図13】修飾型マガディアイトのXRD(X線回折法)の測定結果の他の一例を示すグラフである。
【
図14】修飾型マガディアイトの
13C固体NMR(核磁気共鳴)の測定結果の他の一例を示すグラフである。
【
図15】修飾型マガディアイトの
29Si固体NMRの測定結果の他の一例を示すグラフである。
【
図16】修飾型マガディアイトのXPS(X線光電子分光法)分析の測定結果の他の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
≪金属含有液の処理方法≫
本発明の第一態様は、有機溶剤の存在下で、金属イオンを含む処理対象液と、シラノール基の一部がアミノ基を有するアルコキシシランで置換された修飾型マガディアイト(アミノ基修飾マガディアイト)とを接触させ、前記金属イオンを前記修飾型マガディアイトに吸着させることにより、前記処理対象液から前記金属イオンの少なくとも一部が除去された処理済液を得ることを含む、金属含有液の処理方法である。
【0014】
有機溶剤は修飾型マガディアイトのチャンネル構造内に含まれていることが好ましい。修飾型マガディアイトのチャンネル構造内に有機溶剤が含まれると、チャンネル構造の内部空間が拡大し、金属イオンが吸着し易い空間となる。修飾型マガディアイトのチャンネル構造内に有機溶剤が安定に存在するためには、処理対象液に有機溶剤が充分に含まれていることが好ましい。
【0015】
[処理対象液]
処理対象液に含まれる有機溶剤は特に制限されず、極性有機溶剤、非極性有機溶剤(非極性溶剤)が挙げられる。
極性有機溶剤としては、例えば、アセトニトリル、アセトン、酢酸エチル、クロロホルム、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性溶剤や、イソプロパノール(IPA)、エタノール、メタノール、酢酸、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル(PGME)等のプロトン性溶剤が挙げられる。
非極性溶剤としては、例えば、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセテート(PGMEA)等が挙げられる。
有機溶剤としては、低濃度(例えば、ppmオーダー)の金属元素に対して高い吸着率(例えば、80%以上)を示すことから、非極性溶剤が好ましく、PGMEAがより好ましい。
【0016】
処理対象液に含まれる金属イオンは、1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
具体的な金属イオンは特に制限されず、化学的な性質で分類すれば、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属;カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム等のアルカリ土類金属;ベリリウム、マグネシウム、亜鉛、カドミウム、水銀等のマグネシウム族元素;アルミニウム、ガリウム、インジウム等のアルミニウム族元素;イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム等の希土類元素;チタン、ジルコニウム、スズ、ハフニウム、鉛、トリウム等のスズ族元素;鉄、コバルト、ニッケル等の鉄族元素;バナジウム、ニオブ、タンタル等の土酸族元素;クロム、モリブデン、タングステン、ウラン等のクロム族元素;マンガン、レニウム等のマンガン族元素;銅、銀、金等の貴金属;ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金等の白金族元素;ウラン、トリウム、ラジウム、ラドン、アクチノイド等の天然放射性元素;ネプツニウム、プルトニウム、アメリシウム、キュリウム、バークリウム、カリホルニウム等の超ウラン元素;等のイオンが挙げられる。
これらの金属イオンとしては、修飾型マガディアイトによる吸着率が良好であることから、アルミニウム族元素のイオン、貴金属のイオンが好ましく、アルミニウムイオン、銀イオンがより好ましく、銀イオンが特に好ましい。
【0017】
また、処理対象液に含まれる金属イオンとしては、遷移金属(周期表の第3族~第12族)、アルカリ金属(周期表の第1族)及びアルカリ土類金属(周期表の第2族)から選択される1種以上が挙げられる。
【0018】
処理対象液に含まれる金属イオンは、錯体を形成していてもよい。金属イオンを含む錯体は、金属イオンの正電荷が中和された中性の錯体が好ましい。
錯体を構成する金属イオン以外の配位子は特に制限されず、有機物であってもよいし、無機物であってもよいし、水分子であってもよいし、その他の溶媒の分子であってもよい。
また、処理対象液には金属イオンのカウンターイオン(カウンターアニオン)が含まれてもよい。この場合、修飾型マガディアイトに吸着した金属イオンの近傍にはカウンターアニオンが存在してもよい。つまり、金属イオンと同時にカウンターアニオンが吸着してもよい。
【0019】
処理対象液には水が含まれていてもよい。処理対象液に含まれる水は、錯体を構成する水分子であってもよいし、溶媒としてのバルクの水であってもよい。
処理対象液に含まれる水は、同じ処理対象液に含まれる有機溶剤と混和していることが好ましい。つまり、処理対象液に含まれる有機溶剤が極性である場合、その有機溶剤と混和した水を含んでいてもよい。
【0020】
処理対象液に水が含まれる場合、処理対象液の総質量に対する水の含有量は、例えば、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましく、10質量%以下が特に好ましい。下限値は0質量%であってもよい。これらの好適な範囲であると、金属イオンの含有量が低減した有機溶剤を得る際に、水分子を除去する手間が少なくなる。
【0021】
公知の層状ポリケイ酸アルカリであるマガディアイト(Na2Si14O29・nH2O)は、天然に産出し、その水熱合成法も公知である。水熱合成法としては、シリカ材料を含むアルカリ水溶液を耐熱・耐圧容器に収めて、140~160℃で数日間処理する方法が挙げられる。シリカ材料としては、例えば、シリカゲルやコロイダルシリカ等が挙げられる。アルカリ源としては、例えば、水酸化ナトリウムや炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウム等の無機アルカリが挙げられる。水熱合成法により得られた結晶がマガディアイトであることはXRD回折パターンを調べることにより確認することができる。
【0022】
マガディアイトの層構造は、単位となる層(単位層)が複数積層してなる。単位層は、SiO
4四面体が二次元的に重合してなるシートが複数枚積み重なって形成されている。
図1は、マガディアイト(Na-Mag)の第一層と第二層とが積層した層構造の一例を表す模式図(便宜上、図示の化学結合は必ずしも正確ではない。)である。各層の表面にはシラノール基(≡Si-OH)と、層間カチオンであるNaイオンと電気的中性を保っているイオン化した酸素(≡Si-O
-)が存在する。また、各層の内部には、酸素八員環からなるチャンネル構造が存在し、内部には水分子が存在すると考えられている。
【0023】
修飾型マガディアイトは、シラノール基の一部がアミノ基を有するアルコキシシランで置換されているため、層間の距離が広がっている。この広がった層間に金属イオンが吸着しているものと考えられる。
特に、銀イオンは、アミノ基との親和性が高く、層間に修飾されたアミノ基が、銀イオンの吸着を促進していると考えられる。
【0024】
修飾型マガディアイトに有機溶剤を含む処理対象液を接触させることにより、修飾型マガディアイトの層間及び層内のチャンネル構造に有機溶剤が流入する。この際、処理対象液に含まれる金属イオンは、有機溶剤とともに層間及びチャンネル構造内の双方又はいずれか一方に収まる。あるいは、先行して層間及びチャンネル構造内の双方又はいずれか一方に流入した有機溶剤の一部又は全部と交換(置換)されて層間及びチャンネル構造内の双方又はいずれか一方に収まる。層間又はチャンネル構造内において、金属イオンに水和した水が加水分解されて生成する水酸基(OH-)が金属イオンの正電荷と中和すると考えられる。また、層間に存在するアミノ基と金属イオンとが相互作用し、金属イオンが吸着されると考えられる。
【0025】
処理対象液と修飾型マガディアイトとを接触させる方法は特に制限されず、例えば、処理対象液に修飾型マガディアイトの粉末を添加し、攪拌する方法が挙げられる。
処理対象液の総質量に対する修飾型マガディアイトの添加量は特に制限されず、容易に攪拌する観点から、例えば、1~10質量%とすることができる。
また、別の接触方法として、修飾型マガディアイトを充填したカラムに、処理対象液を流通させる方法が挙げられる。この際、処理対象液を循環させてカラムに複数回接触させてもよい。
処理対象液と修飾型マガディアイトとの接触時間は特に制限されず、例えば、数分~数十時間の範囲で、金属イオンの吸着量に応じて適宜調整すればよい。
処理対象液と修飾型マガディアイトとを接触させる際の温度は特に制限されず、例えば、4℃~40℃の範囲で調整すればよい。
処理対象液には、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸を含ませてもよい。
【0026】
H型マガディアイトの理論的な組成式は、H2Si14O29・nH2O(n<0.3)と考えられている。例えば、具体的な酸処理の方法としては、非修飾型のマガディアイトを分散した水溶液中に酸を滴下して、イオン交換を行う方法が挙げられる。等量点まで酸を滴下することにより、上記の理論的な組成式に近いH型マガディアイトが得られる。
【0027】
H型マガディアイトにあっては、層間のNaイオンがプロトンに置換されているため、層表面のシラノール基による水素結合や層間のファンデルワールス力により、各層の表面が互いに近づき、層間が閉じた状態となる。このため、層間距離がゼロに近しいので、H型マガディアイトのXRD回折の格子面間隔d(001)は、マガディアイトの単位層の厚さの近似値である。
【0028】
特許文献2に示されるように、H型マガディアイトにおける金属イオンの吸着力は非常に優れる。このため、修飾型マガディアイトとH型マガディアイトとを併用することで、より多くの種類の金属イオンを吸着できるものと考えられる。
処理対象液からの金属イオンの除去率をより高められる観点から、本実施形態の金属含有液の処理方法は、修飾型マガディアイトとH型マガディアイトとを併用することが好ましい。併用する場合、修飾型マガディアイトとH型マガディアイトをそれぞれ個別に準備し、処理対象液に両者を接触させることが好ましい。
【0029】
以上の処理方法により、処理対象液である金属含有液から金属イオンの少なくとも一部を修飾型マガディアイトに吸着させることにより除去した処理済液を得ることができる。
【0030】
≪修飾型マガディアイトの製造方法≫
本発明の第二態様は、層状ポリケイ酸アルカリであるマガディアイトと炭素数8~16のアルキル基を有するアルキルトリメチルアンモニウムとを混合し、前記マガディアイトの層間を拡げたアルキル基修飾マガディアイトを得る工程と、前記アルキル基修飾マガディアイトとアミノ基を有するアミノアルキルアルコキシシランとを混合し、前記アルキル基修飾マガディアイトのシラノール基の一部が前記アミノ基を有するアミノアルキルアルコキシシランで置換された修飾型マガディアイトを得る工程と、を有する、修飾型マガディアイトの製造方法である。
本態様の製造方法によって、第一態様の修飾型マガディアイトが得られる。
【0031】
[アルキル基修飾マガディアイトを得る工程(工程I)]
工程Iは、層状ポリケイ酸アルカリであるマガディアイトと炭素数8~16のアルキル基を有するアルキルトリメチルアンモニウムとを溶媒中で混合し、前記マガディアイトの層間を拡げたアルキル基修飾マガディアイトを得る工程である。本態様は、工程Iを有することで、後述するアミノ基を有するアミノアルキルアルコキシシランをマガディアイトの層間に導入しやすくなる。その結果、修飾型マガディアイトの生産効率をより高められる。
【0032】
アルキルトリメチルアンモニウムのアルキル基の炭素数は、例えば、8~16が好ましく、12~16がより好ましく、12~14がさらに好ましく、12が最も好ましい。アルキルトリメチルアンモニウムのアルキル基の炭素数が上記数値範囲内であると、アルキルトリメチルアンモニウムがマガディアイトの層間のシラノール基と結合しやすくなる。このため、マガディアイトの層間を拡げたアルキル基修飾マガディアイトをより得られやすくなる。
【0033】
アルキルトリメチルアンモニウムのカウンターアニオン(対イオン)としては、特に制限されず、例えば、ハロゲン化物イオン等が挙げられる。ハロゲン化物イオンとしては、例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、アスタチン化物イオン等が挙げられる。
【0034】
マガディアイトとアルキルトリメチルアンモニウムとを混合する際のモル比は、例えば、マガディアイト1モルに対して、アルキルトリメチルアンモニウム1~15モルが好ましく、2~10モルがより好ましく、3~8モルがさらに好ましい。マガディアイト1モルに対するアルキルトリメチルアンモニウムのモル数が上記数値範囲内であると、アルキルトリメチルアンモニウムがマガディアイトの層間のシラノール基と結合しやすくなる。このため、マガディアイトの層間を拡げたアルキル基修飾マガディアイトをより得られやすくなる。
【0035】
マガディアイトとアルキルトリメチルアンモニウムとを混合する際の溶媒は、水が好ましい。
水としては、水道水でもよく、蒸留水やイオン交換水等の純水でもよく、超純水でもよい。水としては、不純物の混入を抑制できることから、純水が好ましく、超純水がより好ましい。
マガディアイトとアルキルトリメチルアンモニウムとを混合する際のマガディアイトの添加量は、特に制限されず、容易に攪拌する観点から、溶媒100質量部に対して、例えば、1~10質量部が好ましい。
【0036】
マガディアイトとアルキルトリメチルアンモニウムとを混合する方法は特に制限されず、公知の攪拌方法を適用できる。
【0037】
マガディアイトとアルキルトリメチルアンモニウムとを混合する際の温度は特に制限されず、例えば、4~40℃の範囲で調整すればよい。
マガディアイトとアルキルトリメチルアンモニウムとを混合する時間は、アルキルトリメチルアンモニウムをマガディアイトの層間に充分に導入する観点から、1~10日間が好ましく、2~6日間がより好ましい。
マガディアイトとアルキルトリメチルアンモニウムとを混合する際の溶液のpH(25℃)は、アルキルトリメチルアンモニウムの導入量を必要かつ十分な量とする観点から、7~10が好ましく、7.5~9がより好ましい。
溶液のpHは、測定対象を25℃に調整し、公知のpHメーターで測定することにより求められる。
【0038】
アルキル基修飾マガディアイトを上記の溶液から分離する方法としては、例えば、濾過、デカンテーション、遠心分離等の公知の固液分離方法を適用することができる。
【0039】
[修飾型マガディアイトを得る工程(工程II)]
工程IIは、前記アルキル基修飾マガディアイトとアミノ基を有するアミノアルキルアルコキシシランとを混合し、前記アルキル基修飾マガディアイトのシラノール基の一部が前記アミノ基を有するアミノアルキルアルコキシシランで置換された修飾型マガディアイトを得る工程である。本態様は、工程IIを有することで、目的物であるアミノ基を有する修飾型マガディアイトを得ることができる。
【0040】
アミノアルキルアルコキシシランは、モノアルコキシシランでもよく、ジアルコキシシランでもよく、トリアルコキシシランでもよい。マガディアイトの層間のシラノール基との結合をより強固にできることから、アミノアルキルアルコキシシランとしては、アミノアルキルトリアルコキシシランが好ましい。アミノアルキルトリアルコキシシランとしては、例えば、アミノエチルトリアルコキシシラン、アミノプロピルトリアルコキシシラン等が挙げられる。
【0041】
アミノアルキルアルコキシシランのアルコシキ基は、メトキシ基でもよく、エトキシ基でもよく、プロポキシ基でもよく、ブトキシ基でもよい。工程IIの途中でエタノールを生じ、より安定して修飾型マガディアイトを得ることができることから、アミノ基を有するアルコキシシランのアルコシキ基は、エトキシ基が好ましい。
【0042】
アミノアルキルアルコキシシランにおいて、アミノ基とケイ素原子との間のアルキレン基の炭素数は、マガディアイトの層間距離を適度な距離に保つ観点から、1~4が好ましく、2~3がより好ましい。
【0043】
アルキル基修飾マガディアイトとアミノアルキルアルコキシシランとを混合する際の溶媒は、特に制限されず、上述した有機溶剤を適用できる。アルキル基修飾マガディアイトとアミノアルキルアルコキシシランとを混合する際の溶媒としては、修飾型マガディアイトを溶媒から分離しやすいことから、エタノール、トルエンが好ましく、トルエンがより好ましい。
アルキル基修飾マガディアイトとアミノアルキルアルコキシシランとを混合する際のアルキル基修飾マガディアイトの添加量は、特に制限されず、容易に攪拌する観点から、溶媒100質量部に対して、例えば、1~10質量部が好ましい。
【0044】
アルキル基修飾マガディアイトとアミノアルキルアルコキシシランとを混合する際の質量比は、例えば、アルキル基修飾マガディアイト1質量部に対して、アミノアルキルアルコキシシラン5~50質量部が好ましく、10~30質量部がより好ましく、15~25質量部がさらに好ましい。アルキル基修飾マガディアイト1質量部に対するアミノアルキルアルコキシシランの添加量が上記数値範囲内であると、アミノアルキルアルコキシシランがマガディアイトの層間のシラノール基と結合しやすくなる。このため、修飾型マガディアイトをより安定して得られる。
【0045】
アルキル基修飾マガディアイトと溶媒とを混合する方法は特に制限されず、公知の攪拌方法を適用できる。
【0046】
アルキル基修飾マガディアイトとアミノアルキルアルコキシシランとを混合する方法としては、例えば、不活性ガスを流通下、加熱して還流する方法が挙げられる。
還流する際の温度は、例えば、40~80℃が好ましく、50~70℃がより好ましい。
還流する時間は、マガディアイトにアミノ基を充分に導入する観点から、0.5~4日間(12~96時間)が好ましく、1~3日間(24~72時間)がより好ましい。
不活性ガスとしては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノン等の貴ガス;窒素ガス等が挙げられる。
【0047】
修飾型マガディアイトをアルキル基修飾マガディアイトとアミノアルキルアルコキシシランとを混合した溶液から分離する方法としては、例えば、濾過、デカンテーション、遠心分離等の公知の固液分離方法を適用することができる。
【0048】
アルキル基修飾マガディアイトとアミノアルキルアルコキシシランとを混合した溶液から分離した修飾型マガディアイトは、洗浄、乾燥した後、酸処理を行うことが好ましい。酸処理を行うことで、修飾型マガディアイトの層間距離を縮めることができ、金属イオンを層間に安定して取り込むことができる。加えて、酸処理を行うことで、修飾型マガディアイトの層間を確実に閉じることができるので、金属イオンをチャンネル構造内に優先的に吸着させることができる。
酸処理に用いる酸としては、例えば、塩酸、硝酸等の無機酸が挙げられる。
酸処理に用いる酸の濃度は、例えば、0.1N以上が好ましく、0.2N以上がより好ましい。酸の濃度の上限値は、安全性の観点から、例えば、5N以下が好ましい。
酸処理を行う時間は特に制限されず、例えば、数分~数十時間の範囲で適宜調整できる。
【0049】
工程IIにおける反応のメカニズムを図面を用いて説明する。
図2に示すように、マガディアイトの層間のシラノール基に炭素数8~16のアルキル基を有するアルキルトリメチルアンモニウムが導入されたアルキル基修飾マガディアイトに、アミノ基を有するアミノアルキルアルコキシシラン(図では、アミノプロピルトリエトキシシラン、以下、APTESともいう。)を添加すると、マガディアイトの層間のシラノール基とAPTESとが反応して、エタノールが脱離する。エタノールが脱離するとともに、層間の空間に有機基(アミノ基)が固定化される。
【0050】
次に、
図3に示すように、脱離によって生成したエタノールが隣接するシラノール基と反応して、マガディアイトにエトキシ基が形成されるとともに、水が生成する。
【0051】
次に、
図4に示すように、生成された水が炭素数8~16のアルキル基を有するアルキルトリメチルアンモニウムと相互作用して、アルキルトリメチルアンモニウムが脱離するとともに、シラノール基が形成される。新たに形成されたシラノール基は、最初の反応と同様にAPTESと反応する。この繰り返しで工程IIの反応が進行する。
【0052】
マガディアイトに直接APTESを修飾しようとしても、層間が狭く反応が進行しないため、まず、炭素数8~16のアルキル基を有するアルキルトリメチルアンモニウムで層間を拡げる(工程I)。ここで、炭素数8~16のアルキル基を有するアルキルトリメチルアンモニウムは、界面活性剤(カチオン界面活性剤)として機能する。
【0053】
以上のメカニズムで、アルキル基修飾マガディアイトのシラノール基の一部がAPTESで置換された修飾型マガディアイトが得られる。
【0054】
≪金属吸着剤組成物≫
本発明に関連する第三態様は、有機溶剤と、修飾型マガディアイトとを含む金属吸着剤組成物である。
金属吸着剤組成物にあっては、修飾型マガディアイトは有機溶剤と接触した状態にある。この状態であると、有機溶剤が内部に入った層間及びチャンネル構造は拡がった状態にある。このような金属吸着剤組成物に、金属イオンが接触した場合、金属イオンは修飾型マガディアイトの層間及びチャンネル構造内の双方又はいずれか一方に吸着される。
金属吸着剤組成物を構成する有機溶剤としては、第一態様で例示したものが挙げられる。
金属吸着剤組成物に吸着させ得る金属イオンとしては、第一態様で例示したものが挙げられる。
【0055】
金属吸着剤組成物を構成する有機溶剤の質量M1と修飾型マガディアイトの質量M2との質量比は特に制限されず、例えば、M1:M2=1:100~100:1とすることができる。少なくとも、金属吸着剤組成物を構成する修飾型マガディアイトの全体が有機溶剤によって湿る程度に互いに接触していることが好ましい。
金属吸着剤組成物の使用方法としては、例えば、金属吸着剤組成物と処理対象液とを接触させる方法、前述した処理対象液とは異なる「金属イオンを含む液体又はガス」を金属吸着剤組成物に接触させる方法等が挙げられる。上記液体は有機溶剤を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。上記液体が有機溶剤を含んでいる場合、その有機溶剤が、金属吸着剤組成物に含まれる前記有機溶剤と同じであると、修飾型マガディアイトの層間及びチャンネル構造の拡がりを維持し易いので好ましい。
【0056】
≪金属吸着剤≫
本発明に関連する第四態様は、修飾型マガディアイトと、前記修飾型マガディアイトの層間及びチャンネル構造の双方又はいずれか一方に含まれる有機化合物と、を備えた金属吸着剤である。
本態様の金属吸着剤が、第三態様の金属吸着剤組成物と異なる点は、バルクの有機化合物からなる有機溶剤を必ずしも含まなくてよい点である。つまり、修飾型マガディアイトの層間及びチャンネル構造の双方又はいずれか一方に有機化合物が含まれていればよく、修飾型マガディアイトの外側にこれを含む有機溶剤があってもよいし、なくてもよい。層間及びチャンネル構造の双方又はいずれか一方に有機化合物が含まれていることにより、層間及びチャンネル構造の双方又はいずれか一方の空間が拡がった状態になっている。このように拡がった層間及びチャンネル構造の双方又はいずれか一方を有する修飾型マガディアイトは、金属吸着剤として金属イオンを吸着し易い。
【0057】
金属吸着剤を構成する有機化合物としては、第一態様で例示した有機溶剤を構成する有機化合物が挙げられる。
金属吸着剤に吸着させ得る金属イオンとしては、第一態様で例示したものが挙げられる。
金属吸着剤の使用方法としては、例えば、金属吸着剤と処理対象液とを接触させる方法、前述した処理対象液とは異なる「金属イオンを含む液体又はガス」を金属吸着剤に接触させる方法等が挙げられる。上記液体は有機溶剤を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。上記液体が有機溶剤を含んでいる場合、その有機溶剤を構成する有機化合物が、金属吸着剤に含まれる前記有機化合物と同じであると、修飾型マガディアイトの層間及びチャンネル構造の双方又はいずれか一方の拡がりを維持し易いので好ましい。
【0058】
≪金属吸着装置≫
本発明に関連する第五態様は、第三態様の金属吸着剤組成物又は第四態様の金属吸着剤を収めた処理容器を備えた金属吸着装置である。
処理容器としては、金属吸着剤と処理対象液とを接触させることが可能なものであれば特に制限されず、例えば、カラム、フラスコ等の液体やガスを取り扱う公知の処理容器が挙げられる。
【0059】
装置構成の一例として、カラムと、前記カラムに充填した金属吸着剤組成物又は金属吸着剤と、前記カラムの流入口に接続された導入管と、前記カラムの流出口に接続された導出管と、前記導入管又は導出管に接続されたポンプと、を備えた金属吸着装置が挙げられる。
このような金属吸着装置の使用方法としては、例えば次の方法が挙げられる。まず、ポンプにより処理対象液を導入管からカラム内に流入させ、カラム内の金属吸着剤と処理対象液とを接触させ、処理対象液に含まれる金属イオンを金属吸着剤の修飾型マガディアイトに吸着させる。次に、カラムに接続された導出管から処理済液を排出することにより、金属イオンの少なくとも一部が除去された処理済液を得ることができる。
【0060】
≪複合体≫
本発明に関連する第六態様は、修飾型マガディアイトと、前記修飾型マガディアイトの層間及びチャンネル構造の双方又はいずれか一方に含まれる金属イオン(ただし、Naイオンを除く。)と、を備えた複合体である。
本態様の複合体は、例えば、第一態様の金属含有液の処理方法により、修飾型マガディアイトの層間及びチャンネル構造の双方又はいずれか一方に金属イオンを吸着させたものとして得ることができる。
本態様の複合体において、修飾型マガディアイトの層間及びチャンネル構造の双方又はいずれか一方には、金属イオン以外のものが含まれていてもよいし、金属イオンのみが含まれていてもよい。金属イオン以外のものとしては、前記有機溶剤を構成する有機化合物、水分子等が挙げられる。層間及びチャンネル構造の双方又はいずれか一方に含まれる金属イオン以外のものは、層間及びチャンネル構造の双方又はいずれか一方に含まれる金属イオンに配位した配位子であってもよいし、配位しないで単に共存するものであってもよい。修飾型マガディアイトの層間及びチャンネル構造の双方又はいずれか一方に含まれる金属イオンの数は1つでもよいし、2つ以上でもよい。複数の金属イオンが層間及びチャンネル構造の双方又はいずれか一方に含まれる場合、それらの金属イオン同士は互いに結合していてもよいし、独立に離れて存在していてもよい。
【0061】
本態様の複合体において、修飾型マガディアイトが有する複数のチャンネル構造の総数に対して、金属イオンが含まれるチャンネル構造の数は3%以上が好ましく、5%以上がより好ましく、10%以上がさらに好ましい。
本態様の複合体の総質量に対する金属イオンの含有量は、例えば、0.001質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上がさらに好ましく、1質量%以上が特に好ましい。
本態様の複合体に含まれる金属イオンの種類は、1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
【0062】
≪金属含有物の製造方法≫
本発明に関連する第七態様は、修飾型マガディアイトと、前記修飾型マガディアイトの層間及びチャンネル構造の双方又はいずれか一方に含まれるNaイオン以外の金属イオン及び溶媒化合物と、を備えた複合体に対して、前記層間及びチャンネル構造の双方又はいずれか一方から前記溶媒化合物を除去する処理を行うことにより、前記複合体中で、前記金属イオンの化学状態を変化させた金属含有物を得ることを含む、金属含有物の製造方法である。
【0063】
本態様の複合体は、層間及びチャンネル構造の双方又はいずれか一方に溶媒化合物を含むことが必須である点を除いて、第六態様の複合体と同様である。溶媒化合物としては、第一態様の有機溶剤を構成する有機化合物、水分子、それ以外の公知の溶媒を構成する化合物が挙げられる。ここで、溶媒化合物とは、1気圧、25℃の標準状態で液体である化合物をいう。
本態様で用いる複合体に含まれる金属イオンは1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
本態様で用いる複合体に含まれる溶媒化合物は1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
前記層間及びチャンネル構造の双方又はいずれか一方に含まれる前記溶媒化合物を除去する処理としては、例えば、乾燥処理、加熱処理が挙げられる。乾燥や加熱により、溶媒化合物をチャンネル構造から脱離させることができる。
【0064】
本態様の一例として、次の実施形態が挙げられる。まず、修飾型マガディアイトの層間及びチャンネル構造の双方又はいずれか一方に金属アコ錯体(例えば、鉄アコ錯体)が含まれた複合体を加熱することにより、前記金属アコ錯体の配位子である水分子を分解させ、金属成分を層間及びチャンネル構造の双方又はいずれか一方に残留させる。続いて、水分子が脱離した層間及びチャンネル構造の双方又はいずれか一方に空気中の酸素分子が流入すると、酸素分子と金属イオンとが反応し、金属酸化物(例えば、酸化鉄)が生成する。この結果、修飾型マガディアイトに金属酸化物が含まれた複合体が得られる。
【0065】
本態様の別の一例として、次の実施形態が挙げられる。まず、修飾型マガディアイトの層間及びチャンネル構造の双方又はいずれか一方に金属アコ錯体(例えば、鉄アコ錯体)が含まれた複合体を加熱することにより、前記金属アコ錯体の配位子である水分子を分解させ、金属成分を層間及びチャンネル構造の双方又はいずれか一方に残留させる。この際、例えば窒素ガス等の不活性ガス中に置くと、層間及びチャンネル構造の双方又はいずれか一方に空気が流入せず、チャンネル構造内の金属成分同士が結合した金属体(例えば、純鉄、鉄化合物等)が生成する。この結果、修飾型マガディアイトに金属体が含まれた複合体が得られる。上記の例において、複数のチャンネル構造同士が隣接している箇所では、チャンネル構造の範囲を超えて、隣接するチャンネル構造に含まれる金属体が互いに連結し得る。この結果、金属体からなる微小なワイヤやクラスターを修飾型マガディアイト内に形成することも可能である。
【実施例0066】
以下に、実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0067】
<試験例1;修飾型マガディアイトの製造1>
非特許文献(Y. Asakura, et al., Bull. Chem. Soc. Jpn., 2015, 88, 1241-1249)に記載の公知方法により、粉末状のNa型マガディアイトを得た。
このNa型マガディアイト3.0gと、炭素数12のアルキル基を有するトリメチルアンモニウム(ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、以下、C
12TMAともいう。)6.17g(20mmol)とを、ビーカーに入れ、超純水200mLを加えて室温(25℃)で4日間磁気攪拌して混合した。攪拌中、混合液のpHを7.5~9に保つように0.2mol/Lの塩酸を適宜添加した。攪拌後の混合液を遠心分離(遠心加速度1400G)し、沈殿をろ過し、アセトンで洗浄した後、120℃で2時間乾燥して、マガディアイトの層間にC
12TMAが導入されたアルキル基修飾マガディアイト(ここでは、C
12-Magともいう。)を得た(工程I)。C
12-Magは、粉末状の白色固体であった。C
12-Magを得るまでのフロー図を
図5に示す。
【0068】
得られたC
12-Mag1.0gを丸底フラスコに入れ、トルエン100mLを加え、アルゴン(Ar)流通下、室温(25℃)で1時間磁気攪拌した。その後、液体のアミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)20mL(19g)を添加し、Ar流通下、60℃で2日間還流して混合した。得られた液体をろ過し、ろ物をアセトンで洗浄し、室温(25℃)で一晩乾燥して、マガディアイトの層間にAPTESが導入された修飾型マガディアイト(ここでは、APTES-Tともいう。)を得た(工程II)。得られたAPTES-Tは、粉末状の白色固体であった。APTES-T0.3gを超純水に懸濁して、0.2mol/Lの塩酸を100mL滴下し、2日間攪拌して酸処理を行った。得られた懸濁液をろ過し、ろ物を超純水で洗浄し、室温で一晩乾燥して、マガディアイトの層間からC
12TMAを除去した修飾型マガディアイト(ここでは、A-APTES-Tともいう。)を得た。得られたA-APTES-Tは、粉末状の白色固体であった。A-APTES-Tを得るまでのフロー図を
図6に示す。
【0069】
<試験例2;修飾型マガディアイトの製造2>
試験例1と同様の方法で粉末状のNa型マガディアイトを得た。
このNa型マガディアイト3.0gと、炭素数16のアルキル基を有するトリメチルアンモニウム(ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、以下、C
16TMAともいう。)7.3g(20mmol)とを、ビーカーに入れ、超純水200mLを加えて室温(25℃)で4日間磁気攪拌して混合した。攪拌中、混合液のpHを9~10に保つように0.2mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を適宜添加した。攪拌後の混合液を遠心分離(遠心加速度1400G)し、沈殿をろ過し、アセトンで洗浄した後、120℃で2時間乾燥して、マガディアイトの層間にC
16TMAが導入されたアルキル基修飾マガディアイト(ここでは、C
16-Magともいう。)を得た(工程I)。C
16-Magは、粉末状の白色固体であった。C
16-Magを得るまでのフロー図を
図7に示す。
【0070】
得られたC
16-Mag0.5gを丸底フラスコに入れ、エタノール100mLを加え、アルゴン(Ar)流通下、室温(25℃)で1時間磁気攪拌した。その後、液体のアミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)20mL(19g)を添加し、Ar流通下、50℃で2日間還流して混合した。得られた液体をろ過し、ろ物をアセトンで洗浄し、室温で一晩乾燥して、マガディアイトの層間にAPTESが導入された修飾型マガディアイト(ここでは、APTES-Eともいう。)を得た(工程II)。得られたAPTES-Eは、粉末状の白色固体であった。APTES-E0.3gを超純水に懸濁して、0.2mol/Lの塩酸を100mL滴下し、2日間攪拌して酸処理を行った。得られた懸濁液をろ過し、ろ物を超純水で洗浄し、室温で一晩乾燥して、マガディアイトの層間からC
16TMAを除去した修飾型マガディアイト(ここでは、A-APTES-Eともいう。)を得た。得られたA-APTES-Eは、粉末状の白色固体であった。A-APTES-Eを得るまでのフロー図を
図8に示す。
【0071】
<試験例3;XRD測定1>
アルキル基修飾マガディアイト(C
12-Mag)、修飾型マガディアイト(APTES-T、A-APTES-T)及びH型マガディアイト(H-Mag)の層間の間隔が変化することを、X線回折装置(RIGAKU社製)を使用してXRDにて確認した。層間の間隔は、それぞれの乾燥粉末の格子面間隔d(001)を測定することによって求めた。結果を
図9に示す。
【0072】
図9に示すように、C
12-Magのd(001)は2.9nmであり、H-Magのd(001)1.2nmに比べて層間の間隔が拡がっていることが確認できた。これは、H-Magの層間に、C
12-TMAが導入されたためだと考えられる。次に、APTES-Tのd(001)を測定したところ、3.1nmであった。C
12-Magよりも層間の間隔が拡がっているのは、C
12-Magの層間にAPTESが導入されたためだと考えられる。A-APTES-Tでは、d(001)が1.7nmと、APTES-Tに比べて層間の間隔が縮まっていることが確認できた。これは、酸処理によってAPTES-Tの層間のC
12-TMAが脱離したためだと考えられる。
【0073】
<試験例4;
13C固体NMR測定1>
A-APTES-Tについて、
13C固体NMR測定(Blucker社製Ascend500)を行った。NMR測定は、以下の条件で行った。
・共鳴周波数:125.77MHz。
・積算回数:2048回。
・緩和時間:30秒間。
・試料回転数:10kHz。
結果を
図10に示す。
【0074】
図10に示すように、アミノプロピル基の炭素(C
1、C
2、C
3)のシグナルが観測された。さらに、エトキシ基に由来するシグナルも観測された。このことから、A-APTES-Tでは、マガディアイトの層間にAPTESが導入されたものと考えられる。
【0075】
<試験例5;
29Si固体NMR測定1>
次に、Na型マガディアイト(Na-Mag)とA-APTES-Tとの
29Si固体NMR測定(Blucker社製Ascend500)を行った。NMR測定は、以下の条件で行った。
・共鳴周波数:99.35MHz。
・積算回数:2048回。
・緩和時間:40秒間。
・試料回転数:10kHz。
結果を
図11に示す。
【0076】
図11に示すように、Na-Mag、A-APTES-Tともに、-100ppm付近に現れるシリカ(Q
3、Q
4)由来のシグナルが観測された。Q
4は、ケイ素原子から伸びる4つの結合が全てシロキサン結合であり、Q
3は、ケイ素原子から伸びる結合の1つがシラノール基である。A-APTES-Tでは、アミノプロピル基と共有結合するケイ素(T
1、T
2、T
3)のシグナルが観測された。また、Q
4に対するQ
3の割合をNa-Magの場合と比較すると、A-APTES-TではQ
3の割合が小さかった。これらのことから、アミノプロピル基がマガディアイトに固定化されたものと考えられる。
【0077】
<試験例6;XPS分析1>
A-APTES-Tについて、XPS分析(アルバック・ファイ社製)を行った。XPS分析では、モノクロAlKαのX線(管電圧:15kV、管電流:1.7mA)をビーム径100μmで試料に照射した。
結果を
図12に示す。
【0078】
図12に示すように、窒素原子の1s軌道に帰属されるピークが確認された。このことから、アミノ基がマガディアイトに修飾されたことが分かる。窒素原子の含有量は、2.6Atomic%(原子百分率)であった。また、炭素原子に結合しているプロトン化されたアミノ基(-NH
3+)に由来するピークも確認された。これは、APTESを修飾した後に酸処理を行ったためだと考えられる。
【0079】
<試験例7;XRD測定2>
試験例2で得られたアルキル基修飾マガディアイト(C
16-Mag)、修飾型マガディアイト(APTES-E、A-APTES-E)及びH型マガディアイト(H-Mag)の層間の間隔を、試験例3と同様に測定した。結果を
図13に示す。
【0080】
図13に示すように、C
16-Magのd(001)は3.5nmであり、C
12-Magのd(001)2.9nmよりも大きかった。これは、導入したC
16-TMAの分子サイズが、C
12-TMAに比べて大きいためだと考えられる。あるいは、混合液のpHをC
12-TMAを導入した際よりも高くしたことにより、C
16-TMAの導入量がC
12-TMAの導入量よりも多くなったためだと考えられる。次に、APTES-Eのd(001)を測定したところ、2.5nmであった。C
16-Magに比べて層間が縮まっているのは、C
16-TMAとAPTESとが置き換わっているためだと考えられる。A-APTES-Eでは、d(001)が1.6nmと、APTES-Eに比べて層間の間隔が縮まっていることが確認できた。これは、酸処理によってAPTES-Eの層間のC
16-TMAが脱離したためだと考えられる。A-APTES-Eの層間の間隔がH-Magの層間の間隔よりも大きいのは、マガディアイトの層間にAPTESが修飾されたためだと考えられる。また、A-APTES-Eのd(001)が1.6nm、A-APTES-Tのd(001)が1.7nm(
図9参照)と差があるのは、C
16-Magを中間体とするよりも、C
12-Magを中間体とする方が、マガディアイトの層間に導入されるAPTESの含有量が多いためだと考えられる。
【0081】
<試験例8;
13C固体NMR測定2>
A-APTES-Eについて、
13C固体NMR測定を行った。NMRの測定条件は、試験例4と同様とした。
結果を
図14に示す。
【0082】
図14に示すように、アミノプロピル基の炭素(C
1、C
2、C
3)のシグナルが観測された。さらに、エトキシ基に由来するシグナルも観測された。このことから、A-APTES-Eでは、マガディアイトの層間にAPTESが導入されたものと考えられる。すなわち、層間にアミノ基が修飾されたといえる。
【0083】
<試験例9;
29Si固体NMR測定1>
次に、Na-MagとA-APTES-Eとの
29Si固体NMR測定を行った。NMRの測定条件は、試験例5と同様とした。
結果を
図15に示す。
【0084】
図15に示すように、Na-Mag、A-APTES-Eともに、-100ppm付近に現れるシロキサン結合(Q
4)及びシラノール基(Q
3)由来のシグナルが観測された。A-APTES-Eでは、-60ppm付近にアミノプロピル基と共有結合するケイ素(T
2、T
3)のシグナルが観測された。また、Q
4に対するQ
3の割合をNa-Magの場合と比較すると、A-APTES-EではQ
3の割合が小さかった。これらのことから、アミノプロピル基がマガディアイトに固定化されたものと考えられる。T
3の割合をA-APTES-Tの場合と比較すると、A-APTES-Tの方が大きい(
図11参照)。このことは、隣接するAPTESが縮合し、A-APTES-Eに比べて、A-APTES-Tの方がより密にAPTESがマガディアイトに固定化されているためだと考えられる。
【0085】
<試験例10;XPS分析2>
A-APTES-Eについて、試験例6と同様の条件でXPS分析を行った。
結果を
図16に示す。
【0086】
図16に示すように、窒素原子の1s軌道に帰属されるピークが確認された。このことから、アミノ基がマガディアイトに修飾されたことが分かる。窒素原子の含有量は、1.7Atomic%であった。また、炭素原子に結合しているプロトン化されたアミノ基(-NH
3
+)に由来するピークも確認された。これは、APTESを修飾した後に酸処理を行ったためだと考えられる。酸処理によって残存したAPTESをAPTES固定化量とすると、APTES固定化量は、A-APTES-Tでは、Si:N=25.1:2.6から、H-Mag(H
2Si
14O
29)1molあたり、窒素原子(アミノプロピル基由来)は、1.45mol修飾されていることが分かった。APTES固定化量は、A-APTES-Eでは、Si:N=25.8:1.7から、H-Mag(H
2Si
14O
29)1molあたり、窒素原子(アミノプロピル基由来)は、0.92mol修飾されていることが分かった。すなわち、A-APTES-Eに比べて、A-APTES-Tの方がより密にAPTESがマガディアイトに固定化されていることを意味する。
【0087】
<試験例11;A-APTES-Tを用いた金属イオンの吸着試験>
市販のICP(誘導結合プラズマ)標準水溶液にIPA、PGME又はPGMEAを添加して、1.2ppm(質量基準)に希釈した3種の金属イオン(Fe、Al、Ag)を含む処理対象液を調製した。
処理対象液に試験例1で得られたA-APTES-T(吸着剤)を0.05g又は0.1g添加し、室温(25℃)で2時間攪拌した後、ろ過によりA-APTES-Tを除去し、得られた処理済液に含まれる各金属イオン量をICP分析(日立ハイテク社製、SPS5510)により定量した。結果を表1に示す。
【0088】
【0089】
表1に示すように、有機溶剤としてPGMEAを用いた場合、吸着剤の添加量によらず、どの金属イオンに対しても90%前後の高い吸着率を示した。有機溶剤としてIPA又はPGMEを用いた場合、吸着剤の添加量が多いほど高い吸着率を示した。IPAを用いた場合の方が、PGMEを用いた場合よりも金属イオンの吸着率が高かった。いずれの有機溶剤を用いた場合も、銀イオンに対しては高い吸着率を示した。これは、修飾型マガディアイトの層間に導入されたアミノ基と銀イオンとの親和性が高いためだと考えられる。また、有機溶剤としてPGMEAを用いた場合に高い吸着率を示すのは、PGMEAがマガディアイトとの親和性が低い非極性溶剤であるためだと考えられる。
【0090】
<試験例12;吸着剤の種類を変えた金属イオンの吸着試験>
吸着剤として、H-Mag、多孔質シリカ(SBA-15)、SBA-15をアミノシラン(APTES)でシリル化した多孔質シリカ(SBA-NH2)、A-APTES-Tの4種類を用意した。
市販のICP標準水溶液にIPA又はPGMEを添加して、1.2ppm(質量基準)に希釈した3種の金属イオン(Fe、Al、Ag)を含む処理対象液を調製した。
処理対象液に上記4種類の吸着剤を0.05g添加し、室温(25℃)で2時間攪拌した後、ろ過により吸着剤を除去し、得られた処理済液に含まれる各金属イオン量をICP分析により定量した。結果を表2に示す。
【0091】
【0092】
表2に示すように、吸着剤としてH-Mag、有機溶剤としてIPAを用いた場合、鉄イオン及びアルミニウムイオンの吸着率が高かった。吸着剤としてH-Mag、有機溶剤としてPGMEを用いた場合、鉄イオン及びアルミニウムイオンの吸着率は、26~37%であった。吸着剤としてH-Magを用いた場合、銀イオンの吸着率は10~16%であった。
吸着剤としてSBA-15を用いた場合、有機溶剤がIPAの場合の銀イオンの吸着率が28%だったものの、それ以外の吸着率は10%未満であった。
吸着剤としてSBA-NH2を用いた場合、銀イオンの吸着率のみ高かった。
吸着剤としてA-APTES-Tを用いた場合、鉄イオンに対する吸着率は10%前後であったが、アルミニウムイオン及び銀イオンの吸着率は46~90%と良好であった。
以上のことから、有機溶剤がIPA又はPGMEである場合には、吸着剤としてH-MagとA-APTES-Tとを併用することで、鉄、アルミニウム及び銀のいずれのイオンに対しても高い吸着率を示すことが推測できる。
【0093】
以上の試験結果から、本発明の金属含有液の処理方法によれば、有機溶剤に含まれる金属イオン、特に銀イオンを吸着して除去することができることが分かった。
本発明の修飾型マガディアイトの製造方法によれば、有機溶剤に含まれる金属イオン、特に銀イオンを吸着して除去できる修飾型マガディアイトを得ることができることが分かった。