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特開2024-93498移動体の飛行方法、飛行設定装置及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093498
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】移動体の飛行方法、飛行設定装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B64D 47/08 20060101AFI20240702BHJP
   B66C 15/00 20060101ALI20240702BHJP
   B64C 13/18 20060101ALI20240702BHJP
   B64U 10/13 20230101ALI20240702BHJP
【FI】
B64D47/08
B66C15/00 A
B64C13/18 Z
B64U10/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209919
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】503032946
【氏名又は名称】住友重機械建機クレーン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】戸井田 実
(72)【発明者】
【氏名】釜島 勝顕
(72)【発明者】
【氏名】宮原 一臣
(72)【発明者】
【氏名】池田 勇
【テーマコード(参考)】
3F204
【Fターム(参考)】
3F204AA04
3F204CA05
3F204FA10
3F204FC01
(57)【要約】
【課題】狭い作業現場でも移動体によるクレーンの点検作業の実施を可能にする。
【解決手段】検出部を有する移動体40の飛行方法であって、クレーン20の特定部以外の通常部の表面を検出部により検出しながら飛行する第1飛行工程と、第1飛行工程と比べて、位置、旋回角度およびブーム角度の少なくとも一つが異なる状態のクレーン20の特定部の表面を検出部により検出しながら飛行する第2飛行工程と、を有する移動体40の飛行方法である。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出部を有する移動体の飛行方法であって、
クレーンの特定部以外の通常部の表面を前記検出部により検出しながら飛行する第1飛行工程と、
前記第1飛行工程と比べて、位置、旋回角度およびブーム角度の少なくとも一つが異なる状態のクレーンの前記特定部の表面を前記検出部により検出しながら飛行する第2飛行工程と、を有する移動体の飛行方法。
【請求項2】
前記第2飛行工程は、前記第1飛行工程を行った後に、前記クレーンが走行、旋回およびブーム起伏の少なくとも一つの動作を行った後に実行される、請求項1に記載の移動体の飛行方法。
【請求項3】
前記クレーンの上部旋回体の前後方向に平行でかつ前記上部旋回体の左右両外側に位置する2面を左右の2面とし、前記上部旋回体の前後方向に垂直でかつ前記上部旋回体の前後両外側に位置する2面を前後の2面とし、
前記左右の2面と前記前後の2面を合わせた4面のうちの特定の面に前記移動体が位置すると仮定したときに、当該移動体の前記検出部により検出可能な部分を前記特定部とする、請求項1に記載の移動体の飛行方法。
【請求項4】
前記第1飛行工程と前記第2飛行工程の少なくとも一方において、前記移動体は、前記左右の2面の一方を飛行した後に、引き続いて前記前後の2面の一方を飛行する、請求項1に記載の移動体の飛行方法。
【請求項5】
前記第1飛行工程と前記第2飛行工程の少なくとも一方は、前記移動体が、ブームの長手方向に沿って飛行するブーム飛行工程と、前記ブームに沿って配置されたワイヤロープに沿って飛行するワイヤ飛行工程と、を有する、請求項1に記載の移動体の飛行方法。
【請求項6】
カメラを有する移動体の飛行方法であって、
クレーンの特定部以外の通常部の表面を前記カメラにより撮像しながら飛行する第1飛行工程と、
前記第1飛行工程と比べて、位置、旋回角度およびブーム角度の少なくとも一つが異なる状態のクレーンの前記特定部の表面を前記カメラにより撮像しながら飛行する第2飛行工程と、を有する移動体の飛行方法。
【請求項7】
検出部を有する移動体の飛行に関する設定を行う飛行設定装置であって、
前記移動体の飛行経路を設定する飛行経路設定手段と、
飛行経路設定手段により設定された飛行経路に沿って前記移動体を飛行させるための飛行情報を前記移動体に送信する情報送信手段と、を備え、
前記飛行経路設定手段は、前記クレーンの周囲を複数の領域に分割した各領域ごとに飛行経路の設定が可能である、飛行設定装置。
【請求項8】
前記飛行経路設定手段は、前記クレーンの旋回体の前後方向に平行でかつ前記旋回体の左右両外側に位置する2面を左右の2面とし、前記旋回体の前後方向に垂直でかつ前記旋回体の前後両外側に位置する2面を前後の2面としたときに、前記左右の2面と前記前後の2面を合わせた4面のうちの一または複数の面ごとに飛行経路の設定が可能である、請求項7に記載の飛行設定装置。
【請求項9】
検出部を有する移動体の飛行に関する設定を行うためのプログラムであって、
前記移動体の飛行経路を設定する飛行経路設定ステップと、
飛行経路設定ステップにより設定された飛行経路に沿って前記移動体を飛行させるための飛行情報を前記移動体に送信する情報送信ステップと、をコンピュータに実行させ、
前記飛行経路設定ステップにおいては、前記クレーンの周囲を複数の領域に分割した各領域ごとに飛行経路の設定が可能である、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の飛行方法、飛行設定装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
クレーンのような作業機械は、作業上の安全のため、各種の点検が必要である。
特に、クローラクレーンのように装置の大型化が進むほど、安全性の要求が高くなっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2020/218433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
クレーンの点検作業は、移動体(例えば、ドローン)を使用して行われているが、クレーンが配置される作業現場が狭いと、移動体を自由に飛行させられない場合があった。
【0005】
本発明は、狭い作業現場でも移動体によるクレーンの点検作業の実施を可能にする移動体の飛行方法、飛行設定装置及びプログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、検出部を有する移動体の飛行方法であって、クレーンの特定部以外の通常部の表面を前記検出部により検出しながら飛行する第1飛行工程と、前記第1飛行工程と比べて、位置、旋回角度およびブーム角度の少なくとも一つが異なる状態のクレーンの前記特定部の表面を前記検出部により検出しながら飛行する第2飛行工程と、を有する移動体の飛行方法である。
【0007】
また、本発明は、検出部を有する移動体の飛行に関する設定を行う飛行設定装置であって、前記移動体の飛行経路を設定する飛行経路設定手段と、飛行経路設定手段により設定された飛行経路に沿って前記移動体を飛行させるための飛行情報を前記移動体に送信する情報送信手段と、を備えている。そして、前記飛行経路設定手段は、前記クレーンの周囲を複数の領域に分割した各領域ごとに飛行経路の設定が可能である。
【0008】
また、本発明は、検出部を有する移動体の飛行に関する設定を行うためのプログラムであって、前記移動体の飛行経路を設定する飛行経路設定ステップと、飛行経路設定ステップにより設定された飛行経路に沿って前記移動体を飛行させるための飛行情報を前記移動体に送信する情報送信ステップと、をコンピュータに実行させるようになっている。そして、前記飛行経路設定ステップにおいては、前記クレーンの周囲を複数の領域に分割した各領域ごとに飛行経路の設定が可能である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、狭い作業現場でも移動体によるクレーンの点検作業を実施することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係るクレーンの点検システムの概略説明図である。
図2】移動体の制御系を示すブロック図である。
図3】クレーンの側面図である。
図4】クレーンの制御系を示すブロック図である。
図5】管理サーバの構成を示すブロック図である。
図6】情報端末概略の制御系を示すブロック図である。
図7】狭い作業現場に配置されたクレーンの一例を示す図である。
図8図7のA-A線に沿って切断して示すタワーブームの断面図である。
図9】経路設定処理の流れを示すフローチャートである。
図10】経路設定処理の流れを示すフローチャートである。
図11】タワーブームの第1面における移動体の飛行経路を示す図である。
図12】経路設定処理における情報設定画面の一例を示す図である。
図13】移動体の飛行情報設定画面の一例を示す図である。
図14】移動体の飛行経路設定画面の一例を示す図である。
図15】タワーブームの第3面における移動体の飛行経路を示す図である。
図16】タワーブームの第4面における移動体の飛行経路を示す図である。
図17】タワーブームの第2面における移動体の飛行経路を示す図である。
図18】タワーブームの第1面から第4面における移動体の飛行経路を合成して三次元的に示す図である。
図19】移動体の飛行経路の変形例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
[クレーン点検システムの概略]
図1は、本発明の実施形態に係るクレーン点検システム(以下、単に「点検システム」という。)100の概略を示す図である。
図1に示すように、点検システム100は、点検対象であるクレーン20と、クレーン20の周囲を移動する移動体40と、移動体40が取得したデータに対して所定の処理を施す処理部としての情報端末60,70及び管理サーバ50と、リモコン80とを備えている。
【0013】
管理サーバ50は、一般公衆回線網等であるネットワーク130に接続されている。
ネットワーク130には、管理サーバ50の他に、基地局120,150と情報端末60,70等とが接続されている。管理サーバ50は、ネットワーク130に接続されたこれらのノード、すなわち基地局120,150、移動体40及び複数の情報端末60,70と、データの授受を行うことができる。
リモコン80は、移動体40及び情報端末60と通信可能に構成され、これらの間で情報(例えば移動体40が取得した画像情報等)の送受信を媒介する。また、リモコン80は、移動体40の動作を制御可能に構成されており、例えば移動体40を手動操作できる。
【0014】
基地局120は、衛星110を介して電波の送受信が可能な衛星通信回線の基地局であり、基地局150は、いわゆる携帯電話通信回線の基地局である。
基地局120,150は、移動体40やクレーン20等から各種のデータを受信すると、ネットワーク130を介して管理サーバ50に送信する。
【0015】
クレーン20は、後述するように、クレーン20自身の各部の状態を検出する種々のセンサと、コントローラ31とを有している(図4参照)。コントローラ31は、第一通信
部351及び第二通信部352(図4参照)により、種々のセンサで検出された情報を基地局120,150に送信したり、所定の情報を受信したりする。
【0016】
管理サーバ50には、検査情報データベース140と、顧客情報データベース160とが接続されている。管理サーバ50が有する制御装置51(図5参照)は、基地局120,150を経由して移動体40及びクレーン20から受信した後述の診断情報データと、当該診断情報データから生成した状態情報データとを、検査情報データベース140に格納する。
管理サーバ50が有する制御装置51は、検査情報データベース140に格納された状態情報データを、ネットワーク130を介して所定の情報端末60,70に送信する。管理サーバ50が有する制御装置51は、情報の送信先を、顧客情報データベース160の内容に基づいて決定する。情報は、例えば、クレーン20のユーザである現場監督者やクレーンメーカのサービスマン等が利用する情報端末60や、現場から離れたところでクレーン20を利用した業務に関わるユーザである管理者が利用する情報端末70に送信され、情報端末60,70の表示画面に表示される。
なお、図1においては、クレーン20、情報端末60、70がそれぞれ1台のみ示されているが、実際には、管理サーバ50は、多数のクレーン20や多数の情報端末60、70との間で情報の送受信を行うように構成されている。
【0017】
[移動体]
ここで、移動体40について説明する。
図2は移動体40の制御系を示すブロック図である。
【0018】
移動体40は、複数のロータを有し、各ロータの駆動源となるモータの出力を制御することにより飛行し、昇降動作、前後左右の移動、正逆の旋回等を自在に行うことが可能ないわゆるドローンと呼ばれる無人機(無人航空機)である。
移動体40は、点検対象となるクレーン20の周囲を移動して、その各部を撮像し、取得した撮像画像データを所定の情報端末60,70及び管理サーバ50に送信する。
【0019】
図2に示すように、移動体40は、撮像手段としてのカメラ41(検出部)、測位部421、方位センサ422、高さセンサ423、姿勢センサ424、マイク(音検出センサ)425、温度センサ426、駆動部43、制御部44、データ記憶部45、メモリ46、第一通信部471及び第二通信部472を備えている。
なお、上述した測位部421、方位センサ422、高さセンサ423、姿勢センサ424、マイク425、温度センサ426などのセンサ類は、これら全てが移動体40に搭載されていなくともよい。移動体40は、このうち少なくともカメラ41、測位部421及び方位センサ422を備えていればよい。
【0020】
カメラ41(検出部)は、移動体40の機体から所定方向に向けられて支持されており、機体の向きに応じて視線の先の光景を撮像する。上記カメラ41は、一定のフレームレートで連続的に撮像画像を取得することができる。これにより、点検箇所を含む複数箇所の撮像を行うことができる。撮像によって得られた画像信号は、カメラ41に接続された画像処理部411に出力され、画像処理部411により所定形式の撮像画像データが生成されてメモリ46内に記録される。
上記カメラ41は、可視光線の画像を取得するものに限らず、赤外線を撮像する赤外線カメラを使用しても良い。赤外線カメラを使用した場合、位相差法等により、距離画像データを得ることが可能となる。
また、カメラ41は単眼カメラに限定されず、ステレオカメラを使用しても良い。この場合も、距離画像データを得ることが可能となる。
【0021】
測位部421は、GNSS(Global Navigation Satelite System:全球測位衛星シス
テム)受信機であり、移動体40の現在位置を測定する。本実施形態の測位部421には、GPS(Global Positioning System)よりも高精度なRTK(Real Time Kinematic)が適用されている。
方位センサ422は、三軸のジャイロ方位角センサであり、移動体40の進行方向及び機体の傾斜角度を検出する。
高さセンサ423は、例えば光学式であり、下方に投光し、その反射光に生じる位相差から機体の高さを検出する。
姿勢センサ424は、三次元の加速度センサからなり、移動体40に定められたX軸、Y軸、Z軸の各方向の加速度を検出する。これら各軸について検出される重力加速度から機体の姿勢を検出することができる。
マイク425は、指向性を有するものであり、カメラ41の視線と同方向の先にある対象物の音声を検出する。
温度センサ426は、非接触式のいわゆる放射温度計であり、カメラ41の視線と同方向の先にある対象物の温度を検出する。
なお、これらの各センサは所望の情報を検出できるものであればよく、そのセンサ種別や検出原理等は上述したものに限定されない。
【0022】
第一通信部471は、衛星110を介して基地局120とのデータ通信を行う。
第二通信部472は、直接的に基地局150とのデータ通信を行う。
【0023】
駆動部43は、移動体40の移動動作のための推力を出力する構成であり、複数のロータと、各ロータに設けられた複数の回転駆動源であるモータとを有する。当該駆動部43は、機体が目標の移動方向に向かって移動するように、制御部44によって制御される。
【0024】
データ記憶部45は、移動体40の制御プログラムや制御に関する各種の情報を記憶する不揮発性の記憶装置である。
メモリ46は、カメラ41の撮像による撮像画像データや、マイク425及び温度センサ426によって検出された検出データ等を記憶する。
なお、メモリ46は不揮発性の記憶装置から構成しても良い。また、メモリ46は、取り外し可能な記録メディアから構成してもよい。その場合、取り外した記録メディアを用いて、外部の情報端末60,70及び管理サーバ50等に対して、ネットワーク130を介さずに撮像画像データ及び検出データの受け渡しを行うことができる。
【0025】
制御部44は、データ記憶部45に記憶された制御プログラムや、情報端末60,70から送信された制御指令等に基づいて、移動体40の各部を統括的に制御する。
例えば、制御部44は、撮像及び検出時の移動体40の位置及び姿勢の情報を方位センサ422及び姿勢センサ424から取得し、撮像画像データ及び検出データに関連付けてメモリ46に記録する(以下、撮像及び検出時の移動体40の位置及び姿勢の情報を関連付けた撮像画像データ及び検出データを「診断情報データ」という)。また、制御部44は、この診断情報データを、第一通信部471及び第二通信部472により情報端末60,70及び管理サーバ50に送信する。
【0026】
[クレーン]
続いて、クレーン20について説明する。
図3は、クレーン20の側面図である。
本実施形態では、クレーン20として、いわゆる移動式のクローラクレーンを例示する。以下のクレーン20の記載に関して、クレーン20の旋回中心からみてロープがブームから吊り下げられている方向を「前」、前とは反対方向である方向(換言すると、旋回中心からカウンタウエイトが配置される側)を「後」、前を向いた状態で左手側を「左」、前を向いた状態で右手側を「右」とする。なお、クレーン20の特定箇所同士の前後の表現は、相対的に適宜表現できるものとする。例えば、クレーン20の前後方向における「前」側の第1の特定箇所と「前」側の第2の特定箇所とを比較した際に、第2の特定箇所が第1の特定箇所とクレーン20の旋回中心との間に位置する場合には、第2の特定箇所を第1の特定箇所から見て「後」側に位置すると相対的に表現する。また、クレーン20の前後方向における「後」側の第1の特定箇所と「後」側の第2の特定箇所とを比較した際に、第2の特定箇所が第1の特定箇所とクレーン20の旋回中心との間に位置する場合には、第2の特定箇所を第1の特定箇所から見て「前」側に位置すると相対的に表現する。
【0027】
図3に示すように、クレーン20は、自走可能なクローラ式の下部走行体21と、下部走行体21上に旋回可能に搭載された上部旋回体22と、上部旋回体22の前側に起伏可能に取付けられたフロントアタッチメント23とを含んで構成されている。
【0028】
上部旋回体22は、クレーン20の本体を構成するもので、前後方向に延びる旋回フレーム221を有している。旋回フレーム221の前側にはブーム取付部222が設けられ、このブーム取付部222には、後述するタワーブーム24の基端249が起伏可能に取付けられている。
【0029】
また、旋回フレーム221のうち、ブーム取付部222の後側近傍には、マスト取付部223が設けられている。このマスト取付部223には、後述するマスト224の基端が回動可能に取付けられている。さらに、旋回フレーム221のうち、マスト取付部223よりも後側には、後述するバックストップ225の基端が回動可能に取付けられている。
【0030】
旋回フレーム221の後側には、フロントアタッチメント23および吊荷との重量バランスをとるカウンタウエイト226が配設されている。また、旋回フレーム221の後側には、ブーム起伏ウインチ等(図示せず)が配設されている。一方、旋回フレーム221の前部右側には、運転席、各種の操作装置(いずれも図示せず)が配置されたキャブ227が設けられている。
【0031】
フロントアタッチメント23は、上部旋回体22に設けられ、地上と高所との間で資材等の荷物を運搬するものである。フロントアタッチメント23は、タワーブーム24、タワージブ25、タワーストラット26を含んで構成されている。
【0032】
タワーブーム24は、上部旋回体22に起伏可能に取付けられている。タワーブーム24は、基端(フート部)249が旋回フレーム221のブーム取付部222に起伏可能に取付けられた下部ブーム241と、基端が下部ブーム241の先端に取付けられた複数(例えば3段)の中間ブーム242と、最も先端側に位置する中間ブーム242の先端に取付けられた上部ブーム243とにより構成されている。下部ブーム241には、後述するジブ起伏ウインチ244、主巻ウインチ245が取付けられている。
【0033】
図示のように、長さ方向で隣り合う中間ブーム242の各柱材は、それぞれ連結ピンを用いて連結されている。また、最も下側に位置する中間ブーム242と下部ブーム241との間、最も上側に位置する中間ブーム242と上部ブーム243との間も、それぞれ連結ピンを用いて連結されている。
【0034】
上部ブーム243は、タワーブーム24が起立した姿勢(図3に示す姿勢)にあるときに上部が前側に突出した形状をなし、上部ブーム243の下辺部は、最も上側に位置する中間ブーム242の先端(上端)に取付けられている。上部ブーム243の前端側には後述のタワージブ25が起伏可能に取付けられ、上部ブーム243の上端側には後述のタワーストラット26が揺動可能に取付けられている。また、上部ブーム243には、三角形状のシーブブラケット246が後方に向けて突設されている。このシーブブラケット246には、タワーガイドシーブ247とガイドシーブ248が回転可能に取付けられている。
【0035】
タワージブ25は、タワーブーム24の上部ブーム243の先端に起伏可能に取付けられている。タワージブ25は、基端が上部ブーム243に起伏可能に取付けられた下部ジブ251と、下部ジブ251の先端に取付けられた中間ジブ252と、中間ジブ252の先端に設けられた上部ジブ253とにより構成されている。上部ジブ253の先端側には、ガイドシーブ254とポイントシーブ255が回転可能に取付けられている。ガイドシーブ254とポイントシーブ255は、後述の主巻ロープ256が巻回されるものである。
【0036】
タワーストラット26は、タワーブーム24の上部ブーム243の上端側に揺動可能に取付けられている。タワーストラット26は、第1のストラット261、第2のストラット262、第3のストラット263を、第1の連結部264、第2の連結部265、第3の連結部266によって連結することにより、三角形状の構造体として構成されている。
【0037】
ここで、タワーストラット26の第1の連結部264は、上部ブーム243の上端側に取付けられている。これにより、タワーストラット26は、タワーブーム24の上端に第1の連結部264を支点として揺動可能に取付けられている。また、第2の連結部265にはペンダントロープ267の一端が接続され、ペンダントロープ267の他端はタワージブ25の上部ジブ253の先端側に接続されている。さらに、第3の連結部266には、後述するブーム側ペンダントロープ274が接続されている。
【0038】
ジブ起伏ウインチ244は、タワーブーム24の下部ブーム241に取付けられている。ジブ起伏ウインチ244は、タワーストラット26を介してタワージブ25を起伏させるものである。ジブ起伏ウインチ244とタワーストラット26の第3の連結部266との間は、ジブ起伏ロープ27によって接続されている。
【0039】
ジブ起伏ロープ27は、ジブ起伏ウインチ244とタワーストラット26との間に設けられている。ジブ起伏ロープ27は、タワーブーム24の中間ブーム242に取付けられた複数枚のシーブを有する下部スプレッダ271と、下部スプレッダ271に対向して設けられた複数枚のシーブを有する上部スプレッダ272と、下部スプレッダ271のシーブと上部スプレッダ272のシーブに順次巻回された状態でジブ起伏ウインチ244に巻取られる巻回ロープ273と、一端が上部スプレッダ272に接続され、他端がタワーストラット26の第3の連結部266に接続されたブーム側ペンダントロープ274とにより構成されている。
【0040】
従って、ジブ起伏ウインチ244によって巻回ロープ273を巻取り、巻出すことにより、上部スプレッダ272が下部スプレッダ271に対して接近、離間し、タワーストラット26は、第1の連結部264を支点として揺動する。このタワーストラット26の揺動がペンダントロープ267を介してタワージブ25に伝わることにより、タワーブーム24の先端側でタワージブ25が起伏する構成となっている。
【0041】
主巻ウインチ245は、ジブ起伏ウインチ244の上側近傍に位置してタワーブーム24の下部ブーム241に取付けられている。主巻ウインチ245には主巻ロープ256の一端側が巻回されている。主巻ロープ256の他端側は、シーブブラケット246のガイドシーブ248、タワージブ25のガイドシーブ254、ポイントシーブ255を介して吊荷フック28に取付けられている。従って、主巻ウインチ245によって主巻ロープ256を巻取り、巻出すことにより、吊荷フック28を昇降させることができる。
【0042】
バックストップ225は、旋回フレーム221とタワーブーム24の下部ブーム241との間に設けられている。このバックストップ225は、起立したタワーブーム24を背後から支えるものである。
【0043】
マスト224は、その基端が旋回フレーム221のマスト取付部223に回動可能に取付けられている。マスト224の先端は、上下方向ないし前後方向に回動可能な自由端となっている。
マスト224の先端にはブーム用スプレッダ228が設けられ、このブーム用スプレッダ228とタワーブーム24の上部ブーム243との間は、一定の長さを有するペンダントロープ229を介して接続されている。また、ブーム用スプレッダ228と旋回フレーム221側のスプレッダ(図示せず)とに亘って順次巻回されたブーム起伏ロープ291は、旋回フレーム221に設けられたタワーブーム起伏ウインチ(図示せず)に巻回されている。
【0044】
従って、タワーブーム起伏ウインチによってブーム起伏ロープ291を巻取り又は巻出すことにより、ペンダントロープ229を介してタワーブーム24を起伏(起立又は倒伏)させることができる。
【0045】
図4は、クレーン20の制御系を示すブロック図である。
この図に示すように、クレーン20は、当該クレーン20の各部を統括的に制御するコントローラ31を備える。より詳しくは、コントローラ31は、クレーン20の走行、旋回、吊荷等の各種動作の制御及び異常検出の処理等を実行する。コントローラ31は、CPUや記憶装置であるROM及びRAM、その他の周辺回路などを有する演算処理装置を含んで構成される。
【0046】
また、クレーン20は、当該クレーン20各部の状態に関する情報を取得するセンサ類として、ロードセル321、ブーム角度センサ322、操作量センサ323、ジブ角度センサ324、傾斜センサ325、揚程計326等を備えている。
【0047】
ロードセル321は、ブーム用スプレッダ228に取り付けられており、タワーブーム24を起伏させるブーム起伏ロープ291に作用する張力を検出し、検出した張力に対応する制御信号をコントローラ31に出力する。
【0048】
ブーム角度センサ322は、タワーブーム24の基端側に取り付けられており、タワーブーム24の起伏角度(以下、ブーム角度とも記す)を検出し、検出したブーム角度に対応する制御信号をコントローラ31に出力する。ブーム角度センサ322は、例えば、水平面に対する角度である対地角をブーム角度として検出する。
【0049】
ジブ角度センサ324は、タワージブ25の基端側に取り付けられており、タワージブ25の起伏角度(以下、ジブ角度とも記す)を検出し、検出したジブ角度に対応する制御信号をコントローラ31に出力する。ジブ角度センサ324は、例えば、水平面に対する角度である対地角をジブ角度として検出する。
【0050】
操作量センサ323は、例えば、油圧パイロット式操作レバーの操作量を検出し、検出した操作量に対応する制御信号をコントローラ31に出力する。
【0051】
傾斜センサ325は、クレーン20の傾斜、すなわちクレーン20が位置する地盤の傾斜を検出し、コントローラ31に出力する。
揚程計326は、吊荷フック28の高さ位置を検出し、コントローラ31に出力する。
【0052】
また、クレーン20は、入力部331、表示装置332、警報器341、停止装置342、第一通信部351、第二通信部352、操作レバー37、コントロールバルブ38を備えている。
【0053】
入力部331は、例えばタッチパネルであり、作業者からの操作に対応する制御信号をコントローラ31に出力する。作業者は、入力部331を操作して主巻ロープ256の掛け数、タワーブーム長さや吊荷フック28の質量等を設定できる。
表示装置332は、例えば、入力部331としても利用されるタッチパネル式のディスプレイを備え、コントローラ31から出力される制御信号に基づいて、表示画面に吊荷重の情報や作業姿勢の情報等を表示する。
【0054】
警報器341は、コントローラ31から出力される制御信号に基づいて、警報を発生する。
停止装置342は、コントローラ31から出力される制御信号に基づいて、主巻ウインチ245およびジブ起伏ウインチ244のそれぞれに連結された油圧モータ(不図示)の駆動を停止させる。停止装置342は、例えば、油圧ポンプから油圧モータへの圧油の供給を絶つことが可能な電磁切換弁である。
【0055】
第一通信部351は、衛星110を介して基地局120とのデータ通信を行う。
第二通信部352は、直接的に基地局150とのデータ通信を行う。
【0056】
コントロールバルブ38は、コントローラ31からの制御信号に応じて切り替えが可能な複数のバルブから構成されている。
例えば、コントロールバルブ38は、クレーン20が備える油圧ポンプから下部走行体21の駆動輪の回転駆動を行う油圧モータへの油圧の供給と切断及び回転方向を切り替えるバルブ、上記油圧ポンプから上部旋回体22の旋回動作を行う油圧モータへの油圧の供給と切断及び回転方向を切り替えるバルブ、上記油圧ポンプからタワーブーム起伏ウインチの回転駆動を行う油圧モータへの油圧の供給と切断及び回転方向を切り替えるバルブ、上記油圧ポンプからジブ起伏ウインチ244の回転駆動を行う油圧モータへの油圧の供給と切断及び回転方向を切り替えるバルブ、上記油圧ポンプから主巻ウインチ245の回転駆動を行う油圧モータへの油圧の供給と切断及び回転方向を切り替えるバルブ等を含んでいる。
【0057】
操作レバー37は、コントローラ31を通じてコントロールバルブ38の各種のバルブに対して個別に切り替えを行う制御信号を入力する複数のレバーから構成されている。
例えば、操作レバー37の一つである走行レバーは、前述した下部走行体21の駆動輪の回転駆動を行う油圧モータへの油圧の供給、停止及び回転方向の切り替えを行うバルブに対して切り替え信号の入力を行う。
また、操作レバー37の一つである旋回レバーは、前述した油圧ポンプから上部旋回体22の旋回動作を行う油圧モータへの油圧の供給、停止及び回転方向の切り替えを行うバルブに対して切り替え信号の入力を行う。
また、操作レバー37の一つであるブーム起伏レバーは、前述した油圧ポンプからタワーブーム起伏ウインチの回転駆動を行う油圧モータへの油圧の供給、停止及び回転方向の切り替えを行うバルブに対して切り替え信号の入力を行う。
また、操作レバー37の一つであるジブ起伏レバーは、前述した油圧ポンプからジブ起伏ウインチ244の回転駆動を行う油圧モータへの油圧の供給、停止及び回転方向の切り替えを行うバルブに対して切り替え信号の入力を行う。
また、操作レバー37の一つである巻き上げレバーは、前述した油圧ポンプから主巻ウインチ245の回転駆動を行う油圧モータへの油圧の供給、停止及び回転方向の切り替えを行うバルブに対して切り替え信号の入力を行う。
【0058】
コントローラ31は、操作レバー37を構成する各種のレバーの操作に応じて、対応するコントロールバルブ38を構成する各々のバルブに対して油圧の供給、停止及び回転方向の切り替えに対応する制御信号を入力し、各油圧モータの制御を実行する。
これにより、作業者は、操作レバー37を操作することによって、クレーン20の走行動作、上部旋回体22の旋回動作、タワーブーム24の起伏動作、タワージブ25の起伏動作、吊荷フック28の昇降動作を実行することができる。
【0059】
[管理サーバ]
図5は、管理サーバ50の構成を示すブロック図である。
この図に示すように、管理サーバ50は、制御装置51と、記憶部52と、通信部53とを有している。
制御装置51は、CPUや周辺回路などを有する演算処理装置を含んで構成される。制御装置51は、記憶部52に予め記憶されている制御プログラムを読み込んで実行することにより、管理サーバ50の各部を制御する。
記憶部52は、例えば不揮発性の記憶装置である。
通信部53は、所定の手順に則ってネットワーク130を介したデータ通信(送信および受信)を行う。
制御装置51には表示装置54が接続されており、制御装置51は記憶部52や検査情報データベース140、顧客情報データベース160に格納された情報を表示装置54の表示画面に表示させる。
【0060】
制御装置51には、検査情報データベース140および顧客情報データベース160が接続されている。
検査情報データベース140には、移動体40から基地局120,150(クレーン20を介する場合を含む)を介して制御装置51が受信した、日時情報、クレーン20の作業機ID、診断結果等が関連付けられて記憶される。
顧客情報データベース160には、クレーン20の作業機IDと、クレーン20を保有する顧客に関する顧客情報と、顧客の送付先アドレスとが関連付けられて格納されている。なお、一の作業機IDに対応する顧客の送付先アドレスは、任意に設定できる。
これにより、制御装置51は、特定のクレーン20についてクレーンの検査情報データベース140の情報が更新された場合などに、顧客とその送付先を特定し、更新されたクレーン20の情報を送信するか、あるいは更新を通知する。また、制御装置51は、顧客側からアクセスがあった場合に、顧客のクレーン20に関するクレーンの検査情報データベース140に記録された各種の情報を送信又は閲覧許可を行ってもよい。その場合、顧客情報データベース160に顧客ごとにパスワード等を設定し、顧客側からアクセス時にパスワードを要求してもよい。そのパスワードも顧客情報データベース160に登録することが好ましい。
【0061】
制御装置51は、移動体40から取得した撮像画像データ及び検出データを含む診断情報データに基づいて、クレーン20の点検箇所について、以下の検査項目に関して、異常が生じているか否かを判断する診断処理を行う。
検査項目は、例えば以下の通りである。
(1)タワーブーム、タワージブの亀裂、変形、損傷、腐食
(2)フートピン、ジョイントピン、ブッシュの摩耗、損傷
(3)ワイヤロープの摩耗、損傷、乱巻、端末状態、腐食
(4)ペンダントロープの損傷、腐食
(5)各スプレッダ、ハンガ、タワーストラットの亀裂、変形、損傷、腐食
(6)吊荷フックの亀裂、変形、摩耗、腐食
(7)吊荷フックのワイヤ外れ止めの作動状態、変形、損傷
(8)吊荷フックのナットの緩み、ネジ部の損傷、腐食
(9)各シーブの摩耗、変形、損傷、腐食
(10)吊荷フック、タワーブーム、タワージブの過巻防止装置の作動状態
(11)ロードセル、ブーム角度センサの作動状態
(12)バックストップの変形、損傷、腐食
(13)アタッチメントの正規位置への取付有無、取付状態(ボルト締め忘れ、脱落など)
【0062】
[情報端末]
図6は、情報端末60、70の概略の制御系を示すブロック図である。なお、本実施形態の情報端末60、70は同様に構成されているため、以下では情報端末60について説明し、情報端末70についての説明は省略する。
情報端末60は、例えばパソコンやスマートフォン、タブレット端末などの端末装置であり、図6に示すように、入力部61、表示部62、通信部63、記憶部64、制御部65を備えている。
【0063】
入力部61は、例えばタッチパネルを備えており、ユーザによる当該タッチパネルへの操作内容に対応する入力信号を制御部65に出力する。
表示部62は、例えばタッチパネル式のディスプレイ620(図11等参照)を備えており、制御部65から入力される表示信号に基づいて各種情報をディスプレイ620に表示する。
通信部63は、ネットワーク130を介して、クレーン20、移動体40及び管理サーバ50等とデータ通信(送信および受信)が可能となっている。この通信部63は、制御部65(飛行経路設定手段)により設定された飛行経路に沿って移動体40を飛行させるための飛行情報を移動体40に送信する情報送信手段としても機能する。なお、通信部63は、クレーン20、移動体40及び管理サーバ50と、直接通信が可能に構成されていてもよい。
【0064】
記憶部64は、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等により構成されるメモリであり、各種のプログラム及びデータを記憶するとともに、制御部65の作業領域としても機能する。
本実施形態では、記憶部64は、後述の経路設定処理(図9参照)を実行するための経路設定プログラム641を予め記憶している。
【0065】
また、記憶部64は、クレーンに関する各種情報が格納されたクレーン情報データベース(DB)642を有している。
クレーン情報DB642には、複数の機種情報(機種名)と、各機種の構造に関する情報(形状及び各部主要寸法を含む)とが対応付けられて記憶されている。クレーンの構造に関する情報とは、例えば、起伏方式(Aフレーム、ライブマスト、両方あり)、タワージブ起伏方式(スイングレバー、ラッファー)、フロント仕様(クレーンのみ、タワーのみ、両方あり)等の種別を含む。
なお、クレーン情報DB642は、情報端末60が通信可能(情報を読み出し可能)な他の装置(例えば管理サーバ50等)に記憶されていてもよい。
【0066】
制御部65は、ユーザ操作等に基づいて、情報端末60を統括的に制御する。具体的に、制御部65は、入力部61から入力される操作信号等に応じて記憶部64から各種プログラムを読み出し、当該プログラムに従って所定の処理を実行し、その処理結果を記憶部64に一時保存するとともに表示部62に適宜出力させる。
【0067】
[移動体の飛行方法]
以下、狭い作業現場でも移動体40によるクレーン20の点検作業の実施を可能にする移動体40の飛行方法について説明する。
【0068】
(移動体の飛行可能範囲の決定)
図7は、狭い作業現場に配置されたクレーン20の一例を示す図である。この図7に示すクレーン20は、建設躯体700と仕切り壁701との間の通路702に配置されており、下部走行体21が通路702の延びる方向に沿って(図7の紙面に直交する方向に沿って)移動できるものの、下部走行体21が左右方向に移動するのを建設躯体700及び仕切り壁701によって制限されるようになっている。そのため、図7に示すクレーン20は、図3に示したクレーン20の上部旋回体22を左回り方向に90°旋回させた状態で建設躯体700に対して作業するようになっている。
【0069】
このような図7において、クレーン20の点検作業時における移動体40の飛行可能範囲は、建設躯体700及び仕切り壁701によって制限されるため、通路702に沿った空間及び建設躯体700の上部空間に限られ、クレーン20の周りを自由に周回する周回飛行が不可能になる。
【0070】
ここで、本実施形態において、図3に示したクレーン20は、タワーブーム(以下、適宜ブームと略称する)24の長手方向に直交する仮想平面で切断した断面(図7のA-A線に沿って切断して示す断面)が四角形状の4面で構成される場合(図8参照)、説明の便宜上、前側の面を第1面703aとし、この第1面703aを基準にして右回り方向に順に第2―4面(703b-703d)として説明する。すなわち、図3のクレーン20は、前側の面が第1面703a、後側の面が第3面703c、前方に向かって左側の面が第4面703d、前方に向かって右側の面が第2面703bとして説明する。そして、クレーン20の上部旋回体22の前後方向に平行でかつ上部旋回体22の左右両外側に位置する2面を左右の2面(703b、703d)とし、上部旋回体22の前後方向に垂直でかつ上部旋回体22の前後両外側に位置する2面を前後の2面(703a、703c)として適宜説明する。
【0071】
図7に示すクレーン20は、ブーム24の第2面703b及び第4面703dが通路702の前後方向に対向する面であり、移動体40を第2面703b及び第4面703dから所定の間隔(移動体40がクレーン20に接触する虞の無い間隔)を空けて片面飛行させることにより、クレーン20の第2面703b側及び第4面703d側の状態の点検作業を行うことが可能になる。このクレーン20の第2面703b側及び第4面703d側における飛行体40の片面飛行工程を第1飛行工程とする。そして、第1飛行工程において、移動体40がクレーン20に接触する虞の無い間隔を空けて片面飛行できる面であるクレーン20の第2面703b及び第4面703dを特定部以外の通常部の表面とする。また、第1飛行工程において、移動体40がカメラ41(検出部)により検出しながら飛行することができない面(第1面703a、第3面703c)を特定部の表面とする。
【0072】
一方、図7に示すクレーン20は、ブーム24の第1面703aが建設躯体700に対向し、ブーム24の第1面703aと建設躯体700との間隔が狭い(移動体40が飛行中にクレーン20及び建設躯体700に衝突しない安全な距離よりも狭い)。また、図7に示すクレーン20は、ブーム24の第3面703cが仕切り壁701に対向し、ブーム24の第3面703c側と仕切り壁701との間隔が狭い(移動体40が飛行中にクレーン20及び仕切り壁701に衝突しない安全な距離よりも狭い)。さらに、図7に示すクレーン20は、第3面703c側において、タワーストラット26との接触を避けるため、移動体40が敷地外(進入禁止エリア)にはみ出してしまう。したがって、図7に示すクレーン20は、第1面703aと第3面703cが移動体40を飛行させることができない空間に位置する特定の面となる。また、特定の面は、飛行禁止エリア(重要機密施設、航空エリア、安全通路(人が通行できるように確保されるエリア)、公道等)によって移動体の飛行ができない空間に位置する面である。
【0073】
その後、図7に示すクレーン20は、上部旋回体22を右回り方向に90°回転させ、第1面703a及び第3面703cを通路702の延びる方向に対向させることにより、第1面703aの周囲及び第3面703cの周囲に移動体40が飛行できる空間を確保できるため、移動体40を第1面703a及び第3面703cから所定の間隔を空けて片面飛行させて、クレーン20の第1面703a側及び第3面703c側の点検作業を行うことが可能になる。このように、第1飛行工程におけるクレーン20の状態と比べて、クレーン20の位置、上部旋回体22の旋回角度およびブーム角度の少なくとも一つが異なる状態のクレーン20の特定部の表面を移動体40がカメラ41(検出部)により検出しながら飛行する工程を第2飛行工程とする。そして、第1飛行工程で特定の面とされた第1面703a側及び第3面703c側に移動体40が位置すると仮定したときに、移動体40のカメラ41(検出部)により検出可能な部分を特定部とする。
なお、クレーン20の第1面703a側の点検作業及び第3面703c側の点検作業、第2面703b側の点検作業及び第4面703d側の点検作業は、単一の移動体40で順次実施する他に、複数の移動体40で同時に実施してもよい。また、特定の面の周りに移動体40が飛行できる空間を確保するには、上記した上部旋回体22を旋回させることが考えられる他、ブーム24を起伏させること、クレーンを移動させること、及びこれらの組み合わせることが考えられる。
【0074】
以上の説明における特定の面は、作業現場において、実際に作業者が目視で確認して決定してもよく、また、後述するように、移動体40の飛行経路設定処理において、実際の作業現場における施工計画(BIM)、現場敷地の地図情報、クレーンの設置位置のGPS情報等に基づいて自動的に決定してもよい。なお、特定の面は、建設計画の進捗状況に応じて変化する建設物形状、及び建設計画に応じて変化するクレーン20の座標位置に基づいて決定することができるため、建設計画の進捗状況に応じて正確に決定される。
【0075】
(移動体の飛行経路決定)
続いて、クレーン20の点検時における移動体40の飛行経路(飛行ルート)を設定する経路設定処理について説明する。
【0076】
図9及び図10は、経路設定処理の流れを示すフローチャートである。図11は、クレーン20の第2面703b側における移動体40の飛行経路の表示例を示す図である。図12は、経路設定処理における情報設定画面の一例である。図13は、飛行情報設定画面の一例である。また、図14は、飛行設定画面の一例である。
【0077】
ここでは、ユーザが飛行設定装置としての情報端末60を操作して経路設定処理を実行し、移動体40の飛行経路を設定する場合について説明する。経路設定処理は、情報端末60の制御部65が飛行経路設定手段として記憶部64から経路設定プログラム641を読み出して展開することで実行される。
なお、ここでは、クレーン20が組み立てられた状態で静止しているものとする。また、以下の説明では、経路設定処理において、飛行経路の設定後に当該飛行経路に沿って移動体40を飛行させるものとしたが、移動体40の飛行は当該経路設定処理に含まれなくともよい。
【0078】
図9に示すように、経路設定処理が実行されると、まず制御部65は、クレーン20の配置状態のデータ(以下、「配置状態データ」という。)を取得する(ステップS1)。
ここで、クレーン20の「配置状態」とは、クレーン20の構造(大きさ及び形状を含む)、姿勢、位置及び向きの少なくとも1つに関する状態をいう。
【0079】
具体的に、制御部65は、図13(a)に示す飛行設定のトップ画面を表示し、ユーザが機種仕様登録ボタン704bを押すと、図10に示すように、クレーン20の機種を設定する(ステップS11)。ユーザが入力部61によりクレーン20の機種を選択すると、制御部65は、クレーン情報DB642から当該機種の構造(大きさ及び形状を含む)に関する情報を読み出して設定する。また、機種の選択だけでは特定できない寸法(例えばブームの長さ)がある場合、制御部65は、ユーザ操作に基づいて当該寸法を設定する。ここでは、例えば図12(a)に示すような情報設定画面がディスプレイ620に表示され、ユーザの入力を受け付けたり、設定された各種情報が表示されたりする。図12(a)では、機種が選択されると、クレーン情報DB642からフロントの仕様(クレーンやタワー)やシュー幅の選択肢が読みだされて、その選択肢から選択できるようになっている。
【0080】
次に、制御部65は、通信部63を介し、クレーン20自体から当該クレーン20の姿勢に関する情報を取得する(ステップS12)。具体的に、制御部65は、クレーン20のブーム角度センサ322、ジブ角度センサ324、傾斜センサ325、揚程計326によって測定された、ブーム角度、ジブ角度、クレーン20の傾斜、吊荷フック28の高さを、クレーン20の姿勢に関する情報として取得する。さらに、地盤の傾斜角や、風速、天候などの周囲の環境に関する情報を取得してもよい。この情報の取得は、そのためのセンサを設けて行ってもよいし、ネットワーク130上から取得するなどしてもよい。ここでは、例えば図12(b)に示すような情報設定画面がディスプレイ620に表示され、設定された各種情報が表示される。尚、図12(b)では、図12(a)の画面で機種が選択されると、クレーン情報DB642からブームの種類や長さなどの選択肢が読みだされて、その選択肢からブームの種類や長さなどの情報を選択できるようになっている。
なお、測定されたブーム角度、ジブ角度、クレーン20の傾斜、吊荷フック28の高さがクレーン20の表示装置332に表示され、ユーザが当該表示を見ながら情報端末60に測定値を入力することとしてもよい。
【0081】
次に、制御部65は、図13(a)に示す飛行設定のトップ画面の位置登録ボタン704dがユーザによって押されると、移動体40の測位部421及び方位センサ422により、クレーン20の位置及び向きに関する情報を取得する(ステップS13)。具体的には、移動体40をクレーン20の所定位置(例えばクローラ上)に停止(載置)させ、測位部421及び方位センサ422で位置及び向きを測定することにより、クレーン20の位置及び向きに関する情報を取得する。詳細には、移動体40をクローラ上の前後方向2箇所に停止させ、この2箇所に載置した移動体40の緯度経度情報から方位角度を取得する。このとき、1つの移動体40が2箇所に順次移動して緯度経度情報を取得してもよいし、2つの移動体40が2箇所に個別に移動して緯度経度情報を取得してもよい。
なお、クレーン20に測位部及び方位センサを設け、当該測位部及び方位センサによりクレーン20の位置及び向きを測定してもよい。また、ユーザの直接入力(数値入力)によりクレーン20の位置及び向きを取得してもよい。また、移動体40に測距センサ等を搭載し、当該測距センサ等によって移動体40からクレーン20の位置を測定してもよい。
【0082】
こうして、ステップS11~S13により、クレーン20の構造、姿勢、位置及び向きの少なくとも1つに関する配置状態データが取得され、航空写真や地図情報などによる周囲情報と、当該配置状態データとによってクレーン20の配置状態が特定される。
なお、クレーン20の配置状態データは、いずれかがクレーン20から取得されればよい。また、当該配置状態データは、上述の手法により取得したものに限定されず、予め取得していたものを利用してもよい。例えば、クレーン20が起伏制限や巻上げ制限などのために予め取得した配置状態の情報があれば、これを流用してもよい。これにより、入力の手間を減らせる。
また、ステップS1でのクレーン20の配置状態の特定の後に、この配置状態の設定内容をユーザに確認させるのが望ましい。この場合には、例えば、航空写真地図上にクレーン20の向きと最大計画飛行線(飛行経路の大枠)を表したものをディスプレイ620に表示させる。そして、移動体40の飛行経路Rやクレーン20が所定の敷地内から出ていないか、クレーン20の位置や姿勢が正しいか等をユーザに確認させる。
【0083】
また、制御部65は、クレーン20の配置状態のデータ、実際の作業現場における施工計画(BIM)、現場敷地の地図情報等に基づいて、移動体40の飛行スペース(クレーン20と建設躯体700との間隔、クレーン20と仕切り壁701との間隔、クレーン20と進入禁止エリアとの間隔)がブーム24の第1~4面703a~703dのいずれの面側において不足しているか算出し、移動体40が飛行できない特定の面(本実施形態においては第1面703a及び第3面703c)を自動的に決定し、その自動的に決定した特定の面(703a、703c)を表示部62に表示させる(ステップS2)。これにより、作業者は、実際の作業現場を目視で確認しなくとも、特定の面(703a、703c)を確実に認識できる。
【0084】
次に、制御部65は、図9に示すように、移動体40の飛行条件(飛行情報)を設定する(ステップS3)。
本実施形態では、移動体40の飛行条件として、飛行時における移動体40とクレーン20との距離の下限(最接近距離)等が設定される。この場合の「距離」とは、特に限定はされないが、水平面内での距離をいう。ここでは、例えば図13に示すような情報設定画面がディスプレイ620に表示され、ユーザの入力を受け付けたり、設定された各種情報が表示されたりする。
【0085】
図13(a)は、飛行設定のトップ画面であり、飛行設定ボタン704a、機種仕様登録ボタン704b、飛行情報設定ボタン704c、位置登録ボタン704d、リセットボタン704eが表示されている。この図13(a)において、飛行情報設定ボタン704cがユーザによって押されると、図13(b)のドローン飛行情報(移動体飛行情報)の入力画面がディスプレイ620に表示される。この図13(b)に示すドローン飛行情報の入力画面は、離陸地の高低差、撮影モード、飛行モード、片面飛行の面選択、クレーンとの距離をユーザが入力できるようになっている。離陸地の高低差は、離陸地がクレーンの基準位置(例えば、クレーン20の下部走行体21の接地面)よりも低い場合にマイナスの数値が入力されるようになっている(なお、本実施形態において、離陸地は、高低差が無い状態が入力されている)。撮影モードは、静止画、インターバル写真、動画から選択できるようになっており、インターバル写真(所定の時間毎に撮影する写真)が選択された状態になっている。飛行モードは、片面飛行と周回飛行のいずれかを選択できるようになっており、片面飛行が選択された状態になっている。片面飛行の面選択は、移動体40の飛行面を選択する画面であり、「前側」の面(第1面703a)、「後側」の面(第3面703c)、「左側」の面(第4面703d)、「右側」の面(第2面703b)のいずれかを選択することができるようになっており、「前側」の面(第1面703a)が選択された状態を示している。そして、本実施形態は、選択した面ごとに飛行経路Rを表示して(図11図15図17参照)、飛行経路Rを設定できるようになっている。つまり、前記クレーンの周囲を「前側」の面(第1面703a)、「後側」の面(第3面703c)、「左側」の面(第4面703d)、「右側」の面(第2面703b)として複数の領域に分割し、各領域ごとに飛行経路Rの設定をすることができる。クレーン20との距離は、飛行する移動体40とクレーン20との間隔(水平方向の間隔)を入力できるようになっており、2.5メートル(m)が入力された状態を示している。この図13(b)の画面において、ユーザによる各項目の入力が完了し、ユーザがOKボタンを押すと、画面表示が図14(a)に示すトップ画面に切り替わる。
【0086】
次に、制御部65は、図14(a)に示すように、ディスプレイ620のトップ画面において、飛行設定ボタン704aが押されると、図14(b)に示す飛行ルート設定画面が表示され、ステップS1で取得したクレーン20の配置状態データと、ステップS3で設定された飛行条件と、図13(b)に示したドローン飛行情報とに基づいて、移動体40の飛行経路Rを設定し、ディスプレイ620に表示させる(ステップS4)。
【0087】
本実施形態では、図11に示すような片面(前面側)の飛行経路Rが設定され、その飛行経路Rがディスプレイ620に簡略記載されたクレーン20の全体と共に表示される。この飛行経路Rは、移動体40が片面(右側の面である第2面703b)の最下層から最上層まで飛行した後、最上層に移動した移動体40が最下層に向かってブーム24の長手方向に沿って各階層を飛行して、移動体40がクレーン20の状態を検査する場合を示している。そして、この片面の飛行経路Rは、水平飛行部分R1と上下飛行部分R2とで構成され、移動体40がブーム24の長手方向に沿ってシグザグ状に移動する場合を例示している。また、飛行経路Rは、移動体40が片面の最下層から最上層までブームの長手方向に沿って奇数階層を往路飛行した後、最上層に移動した移動体40が最下層に向かってブーム24の長手方向に沿って偶数階層を復路飛行するようにしてもよい。ここで、飛行経路Rは、クレーン20の高さ方向に所定の間隔で水平飛行部分R1が複数階層設定されている。そして、飛行経路Rの各階層間の鉛直距離は、所定のデフォルト値であってもよいし、図9に示す移動体40の飛行条件を設定するステップ(ステップS3)で設定することとしてもよい。なお、この飛行経路Rは、図6に示した経路設定ブログラム641を変更することにより、図11に示した飛行経路Rに限定されず、ブーム24の長手方向に沿って移動体40を上下往復飛行させるブーム飛行工程の場合、ペンダントロープ229やジブ起伏ロープ27及び主巻ロープ256等の長手方向に延びる線状の部材に沿って移動体40を移動させるワイヤ飛行工程の場合、特定箇所に移動体40を一時的に静止させる場合等を適宜組み合わせた飛行経路Rを設定してもよい。なお、往路および復路の少なくとも一方をワイヤ飛行工程とし、他方をブーム飛行工程とすることで、上下の往復飛行において効率よくクレーン20を検出できる。また、移動体40の飛行経路Rは、ブーム24の斜材に沿ってジグザグ飛行させる飛行経路Rを加えてもよい。また、移動体40の飛行経路Rは、図6に示した経路設定ブログラム641を変更することにより、片面飛行と周回飛行とを組み合わせた飛行経路にすることが可能になる。ここで、周回飛行は、クレーン20の周囲を水平面に沿って1周する移動体40の飛行であり、片面の4面を各階層に沿って連続して移動体40が飛行するようになっている。以上のように、複数の飛行経路Rを組み合わせて移動体40の飛行経路Rを決定した場合には、狭い作業現場に配置されたクレーン20の状態をより一層効率的に且つ正確に検出することが可能になる。
【0088】
図11において、ディスプレイ620の左隅には、移動体40の飛行を開始及び停止させるスタートボタン623及びストップボタン624が表示される(そのときに操作可能な一方のボタンがアクティブ表示され、他方が非アクティブ表示される)ほか、移動体40の向きを示す方位表示部625が表示される。
【0089】
次に、制御部65は、図9に示すように、飛行経路Rを変更する操作がなされるか否かを判定し(ステップS5)、なされると判定した場合には(ステップS5;Yes)、その変更操作に基づいて飛行経路Rを変更する(ステップS6)。そして、制御部65は、上述のステップS4の処理に移行し、飛行経路Rを変更後のものに設定して、ディスプレイ620に表示させる。
【0090】
また、制御部65は、ステップS5において、飛行経路Rを変更する操作がなされないと判定した場合(ステップS5;No)、ユーザ操作に基づく飛行計画の確認処理が行われる(ステップS7)。
ここでは、図14(c)に示すように、ディスプレイ620には、飛行計画として、例えばユーザにより設定された撮影枚数や撮影時間等が表示される。
【0091】
次に、制御部65は、図14(c)において、ディスプレイ620の表示画面の飛行計画がユーザによって確認され、OKボタンが押されると、図14(d)に示すように、クレーン20の周辺における作業現場のライブビュー画面をディスプレイ620に表示すると共に、移動体40が飛行する面を表示し(ステップS7)、図14(e)の表示画面でSTARTボタンが押されると、ステップS4で設定された飛行経路Rに沿って移動体40の飛行を開始する(ステップS8)。
【0092】
移動体40の制御部44は、移動体40の飛行中に撮像画像データ及び検出データを取得し、当該撮像画像データ及び検出データを含む診断情報データを、情報端末60,70及び管理サーバ50に送信する。管理サーバ50は、受信した診断情報データに基づいて、クレーン20の所定の点検箇所について異常の有無を判断する診断処理を行う。なお、この診断処理は、情報端末60,70が実行してもよい。また、移動体40の自動飛行中において、移動体40の飛行はユーザ操作により一時停止させることができる。この移動体40の一時停止中は、移動体40の手動操作が可能である。これにより、クレーン20の点検作業は、さらに隈なく実施することができる。移動体40は、一時停止が解除されると、中断位置から自動飛行が再開される。
また、このとき、制御部65は、カメラ41による撮影映像をディスプレイ620にライブビュー表示させる。
【0093】
その後、制御部65は、飛行経路Rに沿った移動体40の飛行が終了すると(ステップS9)、移動体40を離陸位置に戻し(又は離陸位置以外の所定の位置に停止させ)、経路設定処理を終了させる。
なお、制御部65は、移動体40による撮影を行った後に、飛行経路Rをディスプレイ620に表示させ、ユーザ操作により飛行経路R中の撮影ポイントP(図11参照)が選択されたときに、当該撮影ポイントPでの撮影画像を表示させてもよい。
【0094】
以上により、クレーン20の一つの片面(右側の面である第2面703b)側における状態の検出を完了する。続いて、クレーン20の他の3面(第4面703d、第1面703a、第3面703c)側の状態の検出を行う必要がある。
【0095】
制御部65は、図14(e)に示す画面において、左上部に設置された「トップ画面復帰ボタン」705がユーザによって操作されると、図13(a)に示す飛行設定のトップ画面を示し、4面の全ての検出が終了していない場合(ステップS10)、特定の面以外の面である第4面(左側の面)703dの状態の検出を第2面(右側の面)703bの状態の検出と同様に行う(ステップS3~ステップS9)。
【0096】
図15は、クレーン20の第4面(左側の面)703dにおける移動体40の飛行経路Rを示す図であり、ステップS4によって設定された移動体40の飛行経路Rがディスプレイ620に簡略記載されたクレーン20の全体と共に表示される。
【0097】
ここで、図11及び図15に示すような、特定の面以外の面(第2面703b、第4の面703d)の状態を移動体40が飛行しながら検出する飛行工程を第1飛行工程とする。
【0098】
次に、クレーン20の特定の面である第1面(前側の面)703aにおける状態の検出が行われる。このクレーン20の特定の面である第1面703a側における状態の検出を行う前に、移動体40の飛行を可能にする空間を確保するため、クレーン20の上部旋回体22を右回り方向に90°旋回させる。これにより、クレーン20の第1面703a側と第3面703c側が通路702の長手方向(延長方向)に正対し、クレーン20の第1面703a側と第3面703c側を上述した第2面703b側及び第4面703d側と同様に移動体40が自動飛行できる。
【0099】
制御部65は、図14(e)に示す画面において、左上部に設置された「トップ画面復帰ボタン」705がユーザによって操作されると、図13(a)に示す飛行設定のトップ画面を示し、4面の全ての検出が終了していない場合(ステップS10)、クレーン20の第1面703a側の状態の検出を第2面703b側の状態の検出と同様に行う(ステップS3~ステップS9)。
【0100】
図16は、クレーン20の第1面703a側における移動体40の飛行経路Rを示す図であり、ステップS4によって設定された移動体40の飛行経路Rがディスプレイ620に簡略記載されたクレーン20の全体と共に表示される。制御部65は、図16に示す移動体40の飛行経路Rに従って移動体40を自動飛行させ、クレーン20の第1面703a側の状態の検出を行う。
【0101】
次に、クレーン20の特定の面である第3面703c側における状態の検出が行われる。制御部65は、図14(e)に示す画面において、左上部に設置された「トップ画面復帰ボタン」705がユーザによって操作されると、図13(a)に示す飛行設定のトップ画面を示し、4面の全ての検出が終了していない場合(ステップS10)、クレーン20の第3面703c側の状態の検出を第1面703a側の状態の検出と同様に行う(ステップS3~ステップS9)。
【0102】
図17は、クレーン20の第3面703c側における移動体20の飛行経路Rを示す図であり、ステップS4によって設定された移動体40の飛行経路Rがディスプレイ620に簡略記載されたクレーン20の全体と共に表示される。制御部65は、図17に示す移動体40の飛行経路Rに従って移動体40を自動飛行させ、クレーン20の第3面703c側の状態の検出を行う。
【0103】
ここで。図16及び図17に示すような、特定の面(第1面703a、第3面703c)の状態を移動体40が飛行しながら検出する飛行工程を第2飛行工程とする。
【0104】
図18は、図11図15図16及び図17の飛行経路Rを合成して立体的に示す図である。この図18に示すように、片面毎の4面の飛行経路Rを合成すると、クレーン20の周りを周回する周回経路のように表すことができ、片面毎の飛行経路Rであっても、クレーン20の4面(第1面703aから第4面703d)全体の状態を検出することが可能になる。なお、クレーン20の隣り合う面(例えば、第2面703bと第3面703c、第3面703cと第4面703d、第4面703dと第1面703a、第1面703aと第2面703b)の状態を個別に移動体40が飛行するため、特に図18が示すように隣り合う面に隣接する飛行経路R同士が重なる必要性はない。よって、隣り合う面の隣接する飛行経路R同士の間に隙間が設けられる。ただし、隣接する飛行経路R同士が重なっていてもよい。なお、隣り合う面の隣接する飛行経路R同士の間に隙間が設けられると、例えば、複数の移動体40が同時に飛行してそれぞれ異なる面を飛行する場合に接触する可能性を低く抑えられる。
【0105】
[本実施形態の効果]
以上のように、本実施形態によれば、クレーン20のブーム24が4面で構成される場合に、4面のうちの特定の面を除いた少なくとも1面の状態を移動体40が飛行しながら検出する第1飛行工程を実施した後に、クレーン20が旋回、起伏又は走行を行い、特定の面の周囲に移動体40が飛行できる空間を確保し、その後に特定の面の状態を移動体40が飛行しながら検出する第2飛行工程が行われるようになっている。その結果、本実施形態によれば、狭い作業現場でも移動体40によるクレーン20の点検作業を隈なく実施することが可能になる。
【0106】
また、本実施形態に係る移動体40の飛行方法は、GPS受信困難方向に位置する面、磁気や電波障害が強い構造体方向に位置する面、他のクレーン20が稼働しているエリアと干渉するエリアに位置する面、及び風が強く吹いている方向に位置する面を特定の面とすることにより、クレーン20を隈なく検査するために適用することができる。
【0107】
また、本実施形態によれば、クレーン20の複数の機種と、各機種の構造に関する情報とが対応付けられたクレーン情報DB642が予め記憶されている。
したがって、ユーザがクレーン20の機種情報を設定(入力)するだけで、クレーン20の構造に関する情報を簡便に取得することができる。
【0108】
[移動体の飛行経路の変形例]
図19(a)は、移動体の飛行経路Rの第1変形例を模式的に示す図(クレーンを省略して図)である。
この図19(a)に示す移動体の飛行経路Rは、ブームの4面のうちの3面が特定の面でない場合、水平面(同一階層)の飛行経路Rがコ字形状となるように設定されると、移動体が複数の面(特定の面でない3面)を横断するように飛行することが可能になる。その結果、図19(a)に示す移動体の飛行経路Rを適用してクレーンの検査を行う場合には、ブームの3面側を一筆書き状に連続して検査することが可能になり、片面ごとに移動体をセットし直す場合と比較し、作業効率を向上させることができる。
【0109】
図19(b)は、移動体の飛行経路Rの第2変形例を模式的に示す図(クレーンを省略して図)である。
この図19(b)に示す移動体の飛行経路Rは、ブームの4面のうちの隣り合う2面が特定の面でない場合、水平面(同一階層)の飛行経路RがL字形状となるように設定されると、移動体が複数の面(特定の面でない2面)を横断するように飛行することが可能になる。すなわち、第1飛行工程と第2飛行工程の少なくとも一方において、移動体40は、左右の2面(第2面703b、第4面703d)の一方を飛行した後に、引き続いて前後の2面(第1面703a、第3面703c)の一方を飛行することが可能になる。その結果、図19(b)に示す移動体の飛行経路Rを適用してクレーンの検査を行う場合には、ブームの2面側を一筆書き状に連続して検査することが可能になり、片面ごとに移動体をセットし直す場合と比較し、作業効率を向上させることができる。
【0110】
図19(c)は、移動体の飛行経路Rの第3変形例を模式的に示す図(クレーンを省略して示す図)である。
この図19(c)に示す移動体の飛行経路Rは、ブームの1面(片面)が特定の面でない場合、ブームの長手方向(図19(c)の上下方向)に向かう飛行経路部分が往路と復路とで異なるように一筆書き状に設定されている。このような移動体の飛行経路Rを適用してクレーンの検査を行う場合には、ブームの長手方向に向かう飛行経路部分が重複しないため、作業効率が向上する。
【0111】
[その他]
図9において、経路設定処理のステップS1では、クレーン20の配置状態データをクレーン20から所定のタイミングで取得することとし、その後のステップS3では、この所定のタイミングで取得された配置状態データに基づいて移動体40の移動経路を設定(更新)してもよい。すなわち、ステップS1、S3の処理が随時(例えば一定時間間隔で)行われることとしてもよいし、クレーン40の配置状態が変わったタイミングで行われることとしてもよい。これにより、クレーン20の動作中であっても、好適に飛行経路を設定(変更)することができる。
さらに、この所定のタイミングでの経路設定は、ステップS8における移動体40の飛行中に行ってもよい。
【0112】
また上記実施形態では、情報端末60において経路設定プログラム641による経路設定処理が実行されることとした。しかし、当該経路設定処理は、クレーン20の配置状態データを取得可能であって演算能力を備える装置であれば実行可能である。したがって、本発明に係る情報端末は、情報端末60,70及び管理サーバ50のほか、クレーン20自体や移動体40を含む。同様に、クレーン20の点検を行うための処理を行う処理部は、情報端末60,70及び管理サーバ50のほか、クレーン20自体や移動体40を含む。また、本発明に係る経路設定手段は、上記処理部とは異なるものでもよく、例えば処理部が管理サーバ50で、経路設定手段が情報端末60,70などであってもよい。
【0113】
また上記実施形態では、クレーン20の一例として移動式のタワークレーンを例示した。しかし、本発明は、これに限らず、ホイールクレーン、トラッククレーン、ラフテレーンクレーン、オールテレーンクレーン等の他の移動式クレーンに加えて、タワークレーン、天井クレーン、ジブクレーン、引込みクレーン、スタッカークレーン、門型クレーン、アンローダ等のあらゆるクレーンに適用可能である。
さらに、本発明は、吊荷フックを備えるクレーンに限らず、マグネット、アースドリルバケット等のアタッチメントを吊下するクレーンにも適用可能である。
【0114】
また上記実施形態では、クレーン20を移動体40の点検対象としたが、本発明は、配置状態が変化する種々の点検対象に好適に適用可能である。このような点検対象としては、クレーンのほか、観覧車やジェットコースターなどの遊具、風車、ショベル、飛行機、船舶などが挙げられる。また、本発明は、既存の建造物の点検にも適用可能である。
また、本発明は、画像に基づく点検(診断処理)を行うものに限定されず、例えば点検オペレータに対して撮像画像を表示する場合等、点検を目的としない撮影にも適用可能である。
その他、上記実施形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0115】
20 クレーン
22 上部旋回体
24 ブーム
40 移動体
41 カメラ(検出部)
60 情報端末(飛行設定装置)
63 通信部(情報送信手段)
65 制御部(飛行経路設定手段)
R 飛行経路(飛行ルート)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
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図19