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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093504
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/12 20060101AFI20240702BHJP
   B60C 11/13 20060101ALI20240702BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
B60C11/12 A
B60C11/12 C
B60C11/13 C
B60C11/03 300A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209932
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】石橋 賢太
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BA03
3D131BB01
3D131BB11
3D131BC12
3D131BC13
3D131BC15
3D131BC18
3D131BC34
3D131EA08U
3D131EB11V
3D131EB11X
3D131EB23V
3D131EB23X
3D131EB24V
3D131EB24X
3D131EB31V
3D131EB31W
3D131EB31X
3D131EB39V
3D131EB40V
3D131EB43W
3D131EB43X
3D131EB47X
3D131EB48X
3D131EB83V
3D131EB83W
3D131EB83X
3D131EB86W
3D131EB86X
3D131EB87V
3D131EB87W
3D131EB87X
3D131EB91V
3D131EB91W
3D131EB91X
3D131EC12V
3D131EC12W
3D131EC12X
3D131EC14V
(57)【要約】
【課題】ドライ路面での操縦安定性を維持しつつ優れた氷雪上性能を発揮し得るタイヤを提供する。
【解決手段】トレッド部2を有するタイヤである。トレッド部2は、第1トレッド端T1及び第2トレッド端T2と、複数の周方向溝3と、複数の陸部4とを含む。第1ショルダー陸部11には、複数のショルダーサイプ30が設けられており、複数のショルダーサイプ30は、第1ショルダー陸部11のタイヤ軸方向の幅の60%以上の長さを有する。第1ミドル陸部13には、ミドルサイプ群38がタイヤ周方向に複数設けられている。ミドルサイプ群38のそれぞれは、複数のクローズドサイプ39がタイヤ軸方向及びタイヤ周方向の双方に重複するように配されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、第1トレッド端及び第2トレッド端と、前記第1トレッド端と前記第2トレッド端との間でタイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝と、前記複数の周方向溝に区分された複数の陸部とを含み、
前記複数の周方向溝は、最も前記第1トレッド端側に設けられた第1ショルダー周方向溝を含み、
前記複数の陸部は、前記第1トレッド端を含む第1ショルダー陸部と、前記第1ショルダー周方向溝を介して前記第1ショルダー陸部と隣接する第1ミドル陸部とを含み、
前記第1ショルダー陸部には、タイヤ軸方向にジグザグ状に延びる複数のショルダーサイプが設けられており、前記複数のショルダーサイプは、前記第1ショルダー陸部のタイヤ軸方向の幅の60%以上の長さを有し、
前記第1ミドル陸部には、ミドルサイプ群がタイヤ周方向に複数設けられており、
前記ミドルサイプ群のそれぞれは、複数のクローズドサイプがタイヤ軸方向及びタイヤ周方向の双方に重複するように配されている、
タイヤ。
【請求項2】
前記第1ショルダー陸部は、前記第1ショルダー周方向溝から少なくとも前記第1トレッド端まで延びる複数のショルダー横溝によって区分された複数のショルダーブロックを含み、
前記複数のショルダーブロックのそれぞれには、前記複数のショルダー横溝を繋ぐ少なくとも1本の縦サイプが設けられている、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記第1ミドル陸部は、前記第1ミドル陸部をタイヤ軸方向に完全に横断する複数のミドル横溝によって区分された複数のミドルブロックを含み、
前記複数のミドルブロックのそれぞれには、前記ミドルブロックをタイヤ周方向に完全に横断するサイプが設けられていない、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記複数のミドルブロックのそれぞれには、前記ミドルブロックをタイヤ軸方向に完全に横断するサイプが設けられていない、請求項3に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記第1ミドル陸部及び前記第1ショルダー陸部のそれぞれは、サイプによって構成されるエッジのタイヤ周方向の長さに相当する縦エッジ成分を含み、
前記第1ミドル陸部における前記縦エッジ成分の総和は、前記第1ショルダー陸部における前記縦エッジ成分の総和の105%~200%である、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記第1ミドル陸部及び前記第1ショルダー陸部のそれぞれは、サイプによって構成されるエッジのタイヤ軸方向の長さに相当する横エッジ成分を含み、
前記第1ミドル陸部における前記横エッジ成分の総和は、前記第1ショルダー陸部における前記横エッジ成分の総和の50%~95%である、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記複数のクローズドサイプのそれぞれは、前記第1トレッド端側でタイヤ軸方向に沿って延びる第1サイプ片と、前記第2トレッド端側でタイヤ軸方向に沿って延び、かつ、前記第1サイプ片に対してタイヤ周方向に位置ずれしている第2サイプ片と、前記第1サイプ片及び第2サイプ片に連なり、かつ、タイヤ軸方向に対して前記第1サイプ片及び前記第2サイプ片よりも大きい角度で延びる第3サイプ片とを含む、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記複数の周方向溝は、前記第1ショルダー周方向溝とタイヤ赤道との間に設けられた第1クラウン周方向溝を含み、
前記複数の陸部は、前記第1クラウン周方向溝を介して前記第1ミドル陸部と隣接するクラウン陸部を含み、
前記クラウン陸部は、前記クラウン陸部をタイヤ軸方向に完全に横断する複数のクラウン横溝によって区分された複数のクラウンブロックを含む、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記複数のクラウンブロックのそれぞれには、前記クラウンブロックをタイヤ軸方向に完全に横断するサイプが設けられていない、請求項8に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記クラウン横溝の少なくとも一方の溝壁は、局所的に凹む複数の凹部を含み、
前記複数の凹部のそれぞれは、前記クラウン陸部の接地面で開口している、請求項8に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、冬期での使用を前提としたタイヤが提案されている。このタイヤの外側ショルダー陸部は、タイヤ軸方向に延びる複数の外側ショルダー横溝によって複数の外側ショルダーブロックに区分されている。外側ショルダーブロックの少なくとも1つは、タイヤ周方向に延びる第1縦細溝によって、外側トレッド端側の第1ブロック片と、内側トレッド端側の第2ブロック片とに区分されている。第1ブロック片には、複数の第1サイプが設けられ、第2ブロック片には、複数の第2サイプが設けられている。また、第2ブロック片の第2サイプの合計本数は、第1ブロック片の第1サイプの合計本数よりも大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-195051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、車両の高性能化に伴い、氷雪上性能に優れたタイヤが要求されている。一方、タイヤには、ドライ路面での操縦安定性を維持することも要求される。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出なされたもので、ドライ路面での操縦安定性を維持しつつ優れた氷雪上性能を発揮し得るタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トレッド部を有するタイヤであって、前記トレッド部は、第1トレッド端及び第2トレッド端と、前記第1トレッド端と前記第2トレッド端との間でタイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝と、前記複数の周方向溝に区分された複数の陸部とを含み、前記複数の周方向溝は、最も前記第1トレッド端側に設けられた第1ショルダー周方向溝を含み、前記複数の陸部は、前記第1トレッド端を含む第1ショルダー陸部と、前記第1ショルダー周方向溝を介して前記第1ショルダー陸部と隣接する第1ミドル陸部とを含み、前記第1ショルダー陸部には、タイヤ軸方向にジグザグ状に延びる複数のショルダーサイプが設けられており、前記複数のショルダーサイプは、前記第1ショルダー陸部のタイヤ軸方向の幅の60%以上の長さを有し、前記第1ミドル陸部には、ミドルサイプ群がタイヤ周方向に複数設けられており、前記ミドルサイプ群のそれぞれは、複数のクローズドサイプがタイヤ軸方向及びタイヤ周方向の双方に重複するように配されている、タイヤである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のタイヤは、上述の構成を採用したことにより、ドライ路面での操縦安定性を維持しつつ優れた氷雪上性能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態のタイヤのトレッド部の展開図である。
図2図1の第1ショルダー陸部及び第1ミドル陸部の拡大図である。
図3図2のショルダーブロックの拡大図である。
図4図2のミドルブロックの拡大図である。
図5図3の第1外側ショルダーサイプの拡大図である。
図6図4の第2ミドルサイプの拡大図である。
図7図1のクラウン陸部の拡大図である。
図8図7のクラウン横溝の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。図1は、本発明の一実施形態を示すタイヤ1のトレッド部2の展開図である。本実施形態のタイヤ1は、例えば、冬用の乗用車用の空気入りタイヤとして好適に用いられる。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではない。
【0010】
図1に示されるように、トレッド部2には、第1トレッド端T1及び第2トレッド端T2と、これらの間でタイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝3と、複数の周方向溝 に区分された複数の陸部4とを含む。
【0011】
第1トレッド端T1及び第2トレッド端T2は、それぞれ、正規状態のタイヤ1に正規荷重の70%が負荷され、トレッド部2をキャンバー角0°で平面に接地させたときの接地面の端に相当する。
【0012】
「正規状態」とは、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。各種の規格が定められていないタイヤや、非空気式タイヤの場合、前記正規状態は、タイヤの使用目的に応じた標準的な使用状態であって無負荷の状態を意味する。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、前記正規状態で測定された値である。
【0013】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
【0014】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0015】
「正規荷重」は、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。また、各種の規格が定められていないタイヤの場合、「正規荷重」は、上述の規格に準じ、タイヤを使用する上で適用可能な最大の荷重を指す。
【0016】
複数の周方向溝3は、少なくとも、第1ショルダー周方向溝5を含む。これに加え、本実施形態における複数の周方向溝3は、第2ショルダー周方向溝6、第1クラウン周方向溝7及び第2クラウン周方向溝8を含む。
【0017】
第1ショルダー周方向溝5は、複数の周方向溝3のうち、最も第1トレッド端T1側に設けられた周方向溝3である。第2ショルダー周方向溝6は、複数の周方向溝3のうち、最も第2トレッド端T2側に設けられた周方向溝3である。第1クラウン周方向溝7は、第1ショルダー周方向溝5とタイヤ赤道Cとの間に設けられている。第2クラウン周方向溝8は、第2ショルダー周方向溝6とタイヤ赤道Cとの間に設けられている。
【0018】
第1ショルダー周方向溝5の溝中心線又は第2ショルダー周方向溝6の溝中心線からタイヤ赤道Cまでのタイヤ軸方向の距離L1は、例えば、トレッド幅TWの25%~35%である。また、第1クラウン周方向溝7の溝中心線又は第2クラウン周方向溝8の溝中心線からタイヤ赤道Cまでのタイヤ軸方向の距離L2は、例えば、トレッド幅TWの5%~15%である。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではない。なお、トレッド幅TWは、前記正規状態における第1トレッド端T1から第2トレッド端T2までのタイヤ軸方向の距離である。
【0019】
各周方向溝3は、例えば、タイヤ周方向に平行に直線状にのびている。各周方向溝3は、タイヤ周方向にジグザグ状又は波状にのびるものでも良い。
【0020】
周方向溝3の溝幅W1は、少なくとも3.0mm以上であり、例えば、トレッド幅TWの3.0%~5.0%である。周方向溝3の深さ(図示省略)は、例えば、5.0~15.0mmである。但し、周方向溝3は、このような態様に限定されるものではない。
【0021】
複数の陸部4は、少なくとも、第1ショルダー陸部11及び第1ミドル陸部13を含む。第1ショルダー陸部11は、第1トレッド端T1を含んでいる。第1ミドル陸部13は、第1ショルダー周方向溝5と第1クラウン周方向溝7との間に区分されている。これにより、第1ミドル陸部13は、第1ショルダー周方向溝5を介して第1ショルダー陸部11と隣接している。
【0022】
本実施形態の複数の陸部4は、第2ショルダー陸部12、第2ミドル陸部14及びクラウン陸部15を含む。第2ショルダー陸部12は、第2トレッド端T2を含んでいる。第2ミドル陸部14は、第2ショルダー周方向溝6と第2クラウン周方向溝8との間に区分されている。これにより、第2ミドル陸部14は、第2ショルダー周方向溝6を介して第2ショルダー陸部12と隣接している。クラウン陸部15は、第1クラウン周方向溝7と第2クラウン周方向溝8との間に区分されている。これにより、クラウン陸部15は、第1クラウン周方向溝7を介して第1ミドル陸部13と隣接している。以下で説明される第1ショルダー陸部11の構成は、第2ショルダー陸部12に適用できる。同様に、以下で説明される第1ミドル陸部13の構成は、第2ミドル陸部14に適用できる。
【0023】
図2には、第1ショルダー陸部11及び第1ミドル陸部13の拡大図が示されている。図2に示されるように、第1ショルダー陸部11には、タイヤ軸方向にジグザグ状に延びる複数のショルダーサイプ30が設けられている。望ましい態様として、本実施形態の第1ショルダー陸部11は、第1ショルダー周方向溝5から少なくとも第1トレッド端T1まで延びる複数のショルダー横溝20によって区分された複数のショルダーブロック23を含み、各ショルダーブロック23に、複数のショルダーサイプ30が設けられている。
【0024】
本明細書において、「サイプ」とは、微小な幅を有する切れ込みであって、互いに向き合う2つの内壁間の幅が1.5mm以下のものを指す。サイプの前記幅は、望ましくは0.3~1.2mmであり、より望ましくは0.5~1.0mmである。本実施形態のサイプは、その全深さに亘って、一定幅で構成されており、かつ、その幅が上述の範囲とされている。但し、このような態様に限定されるものではなく、サイプの開口部には、面取り部が設けられても良い。また、サイプは、幅が部分的に拡大した所謂フラスコ底を備えるものでも良い。
【0025】
図3には、1つのショルダーブロック23の拡大図が示されている。本発明において、複数のショルダーサイプ30は、第1ショルダー陸部11の踏面11sのタイヤ軸方向の幅W2(図2に示され、以下、同様である。)の60%以上の長さを有している。なお、この構成は、本実施形態の様に2本のショルダーサイプ30がタイヤ軸方向に並んでいる場合、一方のショルダーサイプ30のタイヤ軸方向の長さと、他方のショルダーサイプ30のタイヤ軸方向の長さとの合計が、第1ショルダー陸部11の前記幅W2の60%以上であることを意味する。3本以上のショルダーサイプ30がタイヤ軸方向に並んでいる場合も同様である。
【0026】
図2に示されるように、本発明の第1ミドル陸部13には、ミドルサイプ群38がタイヤ周方向に複数設けられている。ミドルサイプ群38のそれぞれは、複数のクローズドサイプ39がタイヤ軸方向及びタイヤ周方向の双方に重複するように配されている。なお、クローズドサイプ39とは、両端が陸部の踏面内で途切れているサイプを意味する。望ましい態様として、本実施形態の第1ミドル陸部13は、第1ミドル陸部13をタイヤ軸方向に完全に横断する複数のミドル横溝35によって区分された複数のミドルブロック36を含み、各ミドルブロック36に、複数のミドルサイプ群38が設けられている。
【0027】
図4には、1つのミドルブロック36の拡大図が示されている。図4に示されるように、上記の構成のうち、「複数のクローズドサイプ39がタイヤ軸方向に重複する」とは、タイヤ軸方向に並んだ2つのクローズドサイプ39をトレッド平面視において観察したとき、一方のクローズドサイプ39をタイヤ周方向に平行に延長した仮想領域が、他方のクローズドサイプ39の少なくとも一部と重複し、この位置関係がタイヤ軸方向に並んだ複数のクローズドサイプ39のそれぞれにおいて成立することを意味する。
【0028】
また、上記の構成のうち、「複数のクローズドサイプ39がタイヤ周方向に重複する」とは、タイヤ軸方向に並んだ2つのクローズドサイプ39をトレッド平面視において観察したとき、一方のクローズドサイプ39をタイヤ軸方向に平行に延長した仮想領域が、他方のクローズドサイプ39の少なくとも一部と重複し、この位置関係がタイヤ軸方向に並んだ複数のクローズドサイプ39のそれぞれにおいて成立することを意味する。
【0029】
本発明のタイヤ1は、上記の構成を採用したことによって、ドライ路面での操縦安定性(以下、単に「操縦安定性」という場合がある。)を維持しつつ優れた氷雪上性能を発揮することができる。その理由は、以下の通りである。
【0030】
ショルダー陸部に設けられたサイプや溝は、氷雪上性能への寄与が高い傾向がある。この傾向に基づき、図2に示されように、本発明の第1ショルダー陸部11には、タイヤ軸方向にジグザグ状に延びる複数のショルダーサイプ30が設けられており、複数のショルダーサイプ30は、第1ショルダー陸部11の踏面11sタイヤ軸方向の幅W2の60%以上の長さを有している。このようなショルダーサイプ30は、氷雪路面で大きな摩擦力を提供する一方、接地圧負荷時には、互いに向き合うサイプ壁が噛み合って第1ショルダー陸部11の剛性(とりわけ、タイヤ軸方向の剛性である。)を維持し、ひいてはドライ路面での操縦安定性を維持することができる。
【0031】
一方、ドライ路面での操縦安定性は、比較的大きな接地圧が作用するミドル陸部の影響が大きい。本発明の第1ミドル陸部13には、ミドルサイプ群38がタイヤ周方向に複数設けられており、ミドルサイプ群38のそれぞれは、複数のクローズドサイプ39がタイヤ軸方向及びタイヤ周方向の双方に重複するように配されている。このようなミドルサイプ群38は、とりわけ第1ミドル陸部13のタイヤ周方向の剛性を維持するのに役立つ。これにより、第1ショルダー陸部11における上述の構成だけでは不足しがちなタイヤ周方向の剛性を、第1ミドル陸部13によって補うことができる。すなわち、本発明では、第1ショルダー陸部11及び第1ミドル陸部13によってタイヤ周方向及びタイヤ軸方向に高い剛性を期待でき、優れた操縦安定性が発揮される。また、ミドルサイプ群38は、氷雪路において、タイヤ周方向及びタイヤ軸方向の双方に摩擦力を提供でき、氷雪上性能を効果的に向上させることができる。このような理由により、本発明のタイヤ1は、ドライ路面での操縦安定性を維持しつつ優れた氷雪上性能を発揮することができる。
【0032】
以下、本実施形態のさらに詳細な構成が説明される。なお、以下で説明される各構成は、本実施形態の具体的態様を示すものである。したがって、本発明は、以下で説明される構成を具えないものであっても、上述の効果を発揮し得るのは言うまでもない。また、上述の特徴を具えた本発明のタイヤに、以下で説明される各構成のいずれか1つが単独で適用されても、各構成に応じた性能の向上は期待できる。さらに、以下で説明される各構成のいくつかが複合して適用された場合、各構成に応じた複合的な性能の向上が期待できる。
【0033】
ショルダー横溝20は、内側溝部21と外側溝部22とを含んでいる。内側溝部21は、第1ショルダー周方向溝5に連通しており、一定の溝幅W3で延びている。外側溝部22は、内側溝部18のタイヤ軸方向外側に連通しており、少なくとも第1トレッド端T1まで延びている。外側溝部22は、一定の溝幅W4でタイヤ軸方向に延びている。外側溝部22の溝幅W4は、内側溝部21の溝幅W3よりも大きい。具体的には、前記溝幅W4は、前記溝幅W3の130%~150%である。このような内側溝部21及び外側溝部22を含むショルダー横溝20は、第1ショルダー周方向溝5と連通する部分の周辺における、第1ショルダー陸部11の偏摩耗を抑制できる。
【0034】
内側溝部21のタイヤ軸方向に対する角度θ1は、例えば、10~20°である。外側溝部22のタイヤ軸方向に対する角度θ2は、内側溝部21の前記角度θ1よりも小さいのが望ましい。具体的には、外側溝部22の前記角度θ2は、例えば、10°以下であり、望ましくは5°以下である。このような内側溝部21及び外側溝部22は、氷雪路面においてタイヤ軸方向及びタイヤ周方向にバランス良く摩擦力を提供できる。
【0035】
複数のショルダーブロック23のそれぞれには、少なくとも1本の縦サイプ24が設けられている。縦サイプ24は、ショルダーブロック23のタイヤ周方向の両側に配された2本のショルダー横溝20を繋ぐように配されている。縦サイプ24は、例えば、ショルダー横溝20をその長さ方向に3等分したときの中央の領域に連通している。また、縦サイプ24は、タイヤ周方向に対して5°以下の角度で配されており、本実施形態の縦サイプ24は、タイヤ周方向に平行に延びている。これにより、縦サイプ24は、第1ショルダー陸部11をタイヤ軸方向に3等分したときの中央の領域に配されている。このような縦サイプ24は、氷雪路面での旋回性能を高めるのに役立つ。
【0036】
図3に示されるように、ショルダーブロック23は、縦サイプ24によって区分された内側ブロック片26と外側ブロック片27とを含む。内側ブロック片26は、縦サイプ24よりも第1ショルダー周方向溝5(図2に示す)側に配されている。外側ブロック片27は、縦サイプ24よりも第1トレッド端T1側に配されている。
【0037】
ショルダーサイプ30は、内側ブロック片26に配された内側ショルダーサイプ31と、外側ブロック片27に配された外側ショルダーサイプ32とを含む。本実施形態では、1本の内側ショルダーサイプ31のタイヤ軸方向の長さL3と、1本の外側ショルダーサイプ32のタイヤ軸方向の長さL4との合計が、第1ショルダー陸部11の前記幅W2の60%以上となっている。
【0038】
1つの内側ブロック片26には、3~7本の内側ショルダーサイプ31が設けられている。各内側ショルダーサイプ31は、互いに同じ形状を有している。内側ショルダーサイプ31は、両端が内側ブロック片26内で途切れている。内側ショルダーサイプ31のタイヤ軸方向の長さL3は、第1ショルダー陸部11の前記幅W2の25%~35%である。このような内側ショルダーサイプ31は、氷雪上性能とドライ路面での操縦安定性とをバランス良く高めるのに役立つ。
【0039】
内側ショルダーサイプ31の両端を結んだ仮想線31vのタイヤ軸方向に対する角度θ3は、例えば、10~20°である。このような内側ショルダーサイプ31は、氷雪路面においてタイヤ軸方向にも摩擦力を提供できる。
【0040】
1つの外側ブロック片27には、3~7本の外側ショルダーサイプ32が設けられている。望ましい態様として、本実施形態では、1つの外側ブロック片27に配された外側ショルダーサイプ32の本数が、1つの内側ブロック片26に配された内側ショルダーサイプ31の本数と同じである。これにより、内側ブロック片26及び外側ブロック片27の摩耗の進行が均一となり、耐偏摩耗性能が向上する。
【0041】
外側ショルダーサイプ32の両端を結んだ仮想線32vのタイヤ軸方向に対する角度θ4は、例えば、0~10°である。このような外側ショルダーサイプ32は、氷雪路面でのトラクション性能を高めるのに役立つ。
【0042】
外側ショルダーサイプ32は、第1ショルダー周方向溝5側の端が、縦サイプ24から僅かに離れており、この端からタイヤ軸方向外側に延びている。外側ショルダーサイプ32は、このような態様に限定されるものではなく、例えば、縦サイプ24に連通するものでも良い。外側ショルダーサイプ32のタイヤ軸方向の長さL4は、第1ショルダー陸部11の前記幅W2の30%~50%である。
【0043】
外側ショルダーサイプ32は、形状が異なる第1外側ショルダーサイプ32Aと第2外側ショルダーサイプ32Bとを含む。第1外側ショルダーサイプ32Aは、第1トレッド端T1に達することなく、外側ブロック片27内で途切れている。第2外側ショルダーサイプ32Bは、第1トレッド端T1まで延びている。本実施形態では、第1外側ショルダーサイプ32Aと第2外側ショルダーサイプ32Bとがタイヤ周方向に交互に設けられている。これにより、第1トレッド端T1付近の偏摩耗が抑制される。
【0044】
図5には、ショルダーサイプ30の一例として、第1外側ショルダーサイプ32Aの拡大図が示されている。なお、構成を理解し易い様に、ショルダーサイプ30の開口部には、ドットが施されている。図5に示されるように、ショルダーサイプ30は、100~120°の折れ曲がり角度θ5を有している。このようなショルダーサイプ30は、互いに向き合うサイプ壁が噛み合ったとき、第1ショルダー陸部11の剛性を確実に高めることができる。
【0045】
ショルダーサイプ30は、縦エッジ成分及び横エッジ成分を有している。ショルダーサイプ30の横エッジ成分は、ショルダーサイプ30のタイヤ軸方向の長さL5に相当する。ショルダーサイプ30の縦エッジ成分は、傾斜したサイプ片29のタイヤ周方向の長さL6を合計したものである。なお、前記長さL5及び前記長さL6は、いずれも、サイプ中心線30cで測定されたものである。図5で示されるショルダーサイプ30では、タイヤ周方向の長さL6を有するサイプ片29が6個あるため、6×L6がこのショルダーサイプ30の縦エッジ成分となる。
【0046】
図2に示されるように、ミドル横溝35は、例えば、一定の溝幅W5でタイヤ軸方向に直線状に延びている。ミドル横溝35の溝幅W5は、例えば、ショルダー横溝20の内側溝部21の溝幅W3よりも小さい。具体的には、ミドル横溝35の溝幅W5は、内側溝部21の溝幅W4の60%~80%である。このようなミドル横溝35は、第1ミドル陸部13偏摩耗を抑制し、かつ、ドライ路面での操縦安定性を向上させることができる。
【0047】
ミドル横溝35は、例えば、タイヤ軸方向に対して10°以下の角度で配されている。望ましい態様として、本実施形態のミドル横溝35は、タイヤ軸方向に対して平行に延びている。これにより、氷雪路面でのトラクション性能が確実に向上する。
【0048】
ミドル横溝35は、ショルダー横溝20とはタイヤ周方向の異なる位置で第1ショルダー周方向溝5に連通しているのが望ましい。具体的には、トレッド平面視において、ショルダー横溝20の第1ショルダー周方向溝5側の端部をタイヤ軸方向に平行に延長した仮想領域20v(図2ではドットが施されている)が、ミドル横溝35の第1ショルダー周方向溝5側の端部と重複していない。これにより、第1ショルダー周方向溝5の周辺での偏摩耗が抑制される。
【0049】
図2及び図4に示されるように、複数のミドルブロック36のそれぞれには、ミドルブロック36をタイヤ周方向に完全に横断するサイプが設けられていないのが望ましい。また、複数のミドルブロック36のそれぞれには、ミドルブロック36をタイヤ軸方向に完全に横断するサイプが設けられていないのが望ましい。このようなミドルブロック36は、高い剛性を有し、ドライ路面での操縦安定性をさらに高めることができる。
【0050】
図4に示されるように、1つのミドルブロック36には、例えば、2~5個のミドルサイプ群38が設けられている。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではない。
【0051】
1つのミドルサイプ群38は、例えば、3~6本のクローズドサイプ39で構成されている。本実施形態のミドルサイプ群38は、1本の第1ミドルサイプ41と、2本の第2ミドルサイプ42と、1本の第3ミドルサイプ43とで構成されている。第1ミドルサイプ41は、1つのミドルサイプ群38のうち最もタイヤ赤道C(図1に示す)側に位置している。第3ミドルサイプ43は、1つのミドルサイプ群38のうち最も第1トレッド端T1側(図1に示す)に位置している。第2ミドルサイプ42は、第1ミドルサイプ41と第3ミドルサイプ43との間に配されている。本実施形態では、1つのミドルサイプ群38に、2つの第2ミドルサイプ42が配されている。
【0052】
図6には、ミドルサイプ40の一例として、第2ミドルサイプ42の拡大図が示されている。なお、構成を理解し易い様に、図6のショルダーサイプ30の開口部には、ドットが施されている。図4及び図6に示されるように、本実施形態の各ミドルサイプ40は、第1サイプ片46、第2サイプ片47及び第3サイプ片48を含んでいる。第1サイプ片46及び第2サイプ片47はそれぞれ、タイヤ軸方向に延びている。また、第2サイプ片47は、第1サイプ片46よりもタイヤ赤道C側に設けられており、かつ、第1サイプ片46に対してタイヤ周方向に位置ずれしている。第3サイプ片48は、第1サイプ片46と第2サイプ片47との間に連なり、かつ、タイヤ軸方向に対する角度が第1サイプ片46及び第2サイプ片47よりも大きい。第3サイプ片48のタイヤ軸方向に対する角度θ5(図6に示す)は、例えば、60~80°である。このような各ミドルサイプ40は、多方向に摩擦力を提供でき、氷雪上走行時のトラクション性能及び旋回性能を高めることができる。
【0053】
ミドルサイプ40の端部には、タイヤ軸方向に対して第1サイプ片46又は第2サイプ片47よりも大きい角度で延びる傾斜片49が構成されている。傾斜片49のタイヤ軸方向に対する角度θ6(図6に示す)は、例えば、60~80°であり、本実施形態では第3サイプ片48の前記角度θ5と実質的に同じである。このような傾斜片49は、ミドルサイプ40が過度に開くのを抑制でき、ミドルサイプ40周辺での偏摩耗を抑制することができる。
【0054】
図4に示されるように、本実施形態では、第1ミドルサイプ41において、第1トレッド端T1側の端部に傾斜片49が構成されており、その反対側の端部には傾斜片49が構成されていない。第2ミドルサイプ42において、タイヤ軸方向の両側の端部に傾斜片49が構成されている。第3ミドルサイプ43において、タイヤ赤道C側の端部に傾斜片49が構成されており、その反対側の端部には傾斜片49が構成されていない。このような傾斜片49の配置は、耐偏摩耗性能と氷雪上性能とをバランス良く高めるのに役立つ。
【0055】
図6に示されるように、ミドルサイプ40は、縦エッジ成分及び横エッジ成分を有している。ミドルサイプ40の横エッジ成分は、ミドルサイプ40のタイヤ軸方向の長さL7に相当する。ミドルサイプ40の縦エッジ成分は、傾斜したサイプ片のタイヤ周方向の長さL8を合計したものである。なお、前記長さL7及び前記長さL8は、いずれも、サイプ中心線40cで測定されたものである。図6で示される第2ミドルサイプ42では、第1サイプ片46のタイヤ周方向の長さと、第2サイプ片47のタイヤ周方向の長さと、第3サイプ片48のタイヤ周方向の長さL9と、傾斜片49のタイヤ周方向の長さL10の合計である2×L10とを足し合わせたものが、第2ミドルサイプ42の縦エッジ成分となる。なお、本実施形態の第1サイプ片46及び第2サイプ片47は、タイヤ軸方向に平行に延びているため、タイヤ周方向の長さが実質的に0となる。
【0056】
図2に示されるように、第1ミドル陸部13及び第1ショルダー陸部11のそれぞれは、サイプによって構成されるエッジのタイヤ周方向の長さに相当する縦エッジ成分と、サイプによって構成されるエッジのタイヤ軸方向の長さに相当する横エッジ成分とを含む。各サイプの縦エッジ成分及び横エッジ成分の測定方法は、上述の通りである。第1ミドル陸部13におけるサイプの縦エッジ成分の総和は、第1ショルダー陸部11におけるサイプの縦エッジ成分の総和の105%~200%であるのが望ましい。これにより、氷雪路面での旋回性能が向上する。なお、上記の構成は、例えば、ショルダーサイプ30の折れ曲がり角度θ5(図5に示す)を適宜調整することにより、得ることができる。
【0057】
第1ミドル陸部13におけるサイプの横エッジ成分の総和は、第1ショルダー陸部11におけるサイプの横エッジ成分の総和の50%~95%である。これにより、第1ミドル陸部13の剛性が維持され、ドライ路面での操縦安定性が向上する。
【0058】
図7には、クラウン陸部15の拡大図が示されている。図7に示されるように、クラウン陸部15は、複数のクラウン横溝50によって区分された複数のクラウンブロック51を含む。クラウン横溝50は、クラウン陸部15をタイヤ軸方向に完全に横断しており、第1クラウン周方向溝7から第2クラウン周方向溝8まで延びている。
【0059】
図8には、クラウン横溝50の拡大斜視図が示されている。図8に示されるように、クラウン横溝50の少なくとも一方の溝壁50wは、局所的に凹む複数の凹部53を含む。本実施形態では、クラウン横溝50の両方の溝壁50wが、凹部53を含んでいる。また、複数の凹部53のそれぞれは、クラウン陸部15の接地面で開口している。このような凹部53は、氷雪上性能を高めるのに役立つ。
【0060】
図7に示されるように、本実施形態では、クラウン横溝50の一方の溝壁に設けられた凹部53と、他方の溝壁に設けられた凹部53とが、クラウン横溝50の長さ方向に位置ずれしている。
【0061】
1つの凹部53のタイヤ軸方向の開口長さL11は、例えば、5.0mm以下であり、望ましくは、クラウン陸部15のタイヤ軸方向の幅W6の10%~25%である。また、凹部53の最大の深さは、クラウン横溝50の最大の深さの40%~60%である。このような凹部53は、氷雪上性能とドライ路面での操縦安定性とをバランス良く高める。
【0062】
複数のクラウンブロック51のそれぞれには、前記クラウンブロックをタイヤ軸方向に完全に横断するサイプが設けられていない。また、複数のクラウンブロック51のそれぞれには、クラウンブロック51をタイヤ周方向に完全に横断するサイプが設けられていない。本実施形態のクラウンブロック51には、両端がクラウンブロック51内で途切れる複数のクラウンサイプ55が設けられている。このようなクラウンサイプ55は、クラウンブロック51の剛性を維持しつつ、氷雪路面において摩擦力を提供できる。
【0063】
クラウンサイプ55は、例えば、タイヤ軸方向にジグザグ状に延びている。また、1つのクラウンブロック51には、例えば、2~6本のクラウンサイプ55が設けられている。これにより、クラウンブロック51の偏摩耗を抑制しつつ、氷雪上性能を向上させることができる。
【0064】
図1に示されるように、トレッド部2を構成するトレッドゴムの0℃における複素弾性率E*は、5.0~9.0MPaである。これにより、氷雪上性能と操縦安定性とがバランス良く向上する。なお、前記複素弾性率E*は、JIS-K6394の規定に準じて、次に示される条件で、粘弾性スペクトロメータを用いて測定された値である。
初期歪み:10%
振幅:±2%
周波数:10Hz
変形モード:引張り
測定温度:0℃
【0065】
以上、本発明の一実施形態の空気入りタイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【0066】
[付記]
本発明は以下の態様を含む。
【0067】
[本発明1]
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、第1トレッド端及び第2トレッド端と、前記第1トレッド端と前記第2トレッド端との間でタイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝と、前記複数の周方向溝に区分された複数の陸部とを含み、
前記複数の周方向溝は、最も前記第1トレッド端側に設けられた第1ショルダー周方向溝を含み、
前記複数の陸部は、前記第1トレッド端を含む第1ショルダー陸部と、前記第1ショルダー周方向溝を介して前記第1ショルダー陸部と隣接する第1ミドル陸部とを含み、
前記第1ショルダー陸部には、タイヤ軸方向にジグザグ状に延びる複数のショルダーサイプが設けられており、前記複数のショルダーサイプは、前記第1ショルダー陸部のタイヤ軸方向の幅の60%以上の長さを有し、
前記第1ミドル陸部には、ミドルサイプ群がタイヤ周方向に複数設けられており、
前記ミドルサイプ群のそれぞれは、複数のクローズドサイプがタイヤ軸方向及びタイヤ周方向の双方に重複するように配されている、
タイヤ。
[本発明2]
前記第1ショルダー陸部は、前記第1ショルダー周方向溝から少なくとも前記第1トレッド端まで延びる複数のショルダー横溝によって区分された複数のショルダーブロックを含み、
前記複数のショルダーブロックのそれぞれには、前記複数のショルダー横溝を繋ぐ少なくとも1本の縦サイプが設けられている、本発明1に記載のタイヤ。
[本発明3]
前記第1ミドル陸部は、前記第1ミドル陸部をタイヤ軸方向に完全に横断する複数のミドル横溝によって区分された複数のミドルブロックを含み、
前記複数のミドルブロックのそれぞれには、前記ミドルブロックをタイヤ周方向に完全に横断するサイプが設けられていない、本発明1又は2に記載のタイヤ。
[本発明4]
前記複数のミドルブロックのそれぞれには、前記ミドルブロックをタイヤ軸方向に完全に横断するサイプが設けられていない、本発明3に記載のタイヤ。
[本発明5]
前記第1ミドル陸部及び前記第1ショルダー陸部のそれぞれは、サイプによって構成されるエッジのタイヤ周方向の長さに相当する縦エッジ成分を含み、
前記第1ミドル陸部における前記縦エッジ成分の総和は、前記第1ショルダー陸部における前記縦エッジ成分の総和の105%~200%である、本発明1ないし4のいずれか1項に記載のタイヤ。
[本発明6]
前記第1ミドル陸部及び前記第1ショルダー陸部のそれぞれは、サイプによって構成されるエッジのタイヤ軸方向の長さに相当する横エッジ成分を含み、
前記第1ミドル陸部における前記横エッジ成分の総和は、前記第1ショルダー陸部における前記横エッジ成分の総和の50%~95%である、本発明1ないし5のいずれか1項に記載のタイヤ。
[本発明7]
前記複数のクローズドサイプのそれぞれは、前記第1トレッド端側でタイヤ軸方向に沿って延びる第1サイプ片と、前記第2トレッド端側でタイヤ軸方向に沿って延び、かつ、前記第1サイプ片に対してタイヤ周方向に位置ずれしている第2サイプ片と、前記第1サイプ片及び第2サイプ片に連なり、かつ、タイヤ軸方向に対して前記第1サイプ片及び前記第2サイプ片よりも大きい角度で延びる第3サイプ片とを含む、本発明1ないし6のいずれか1項に記載のタイヤ。
[本発明8]
前記複数の周方向溝は、前記第1ショルダー周方向溝とタイヤ赤道との間に設けられた第1クラウン周方向溝を含み、
前記複数の陸部は、前記第1クラウン周方向溝を介して前記第1ミドル陸部と隣接するクラウン陸部を含み、
前記クラウン陸部は、前記クラウン陸部をタイヤ軸方向に完全に横断する複数のクラウン横溝によって区分された複数のクラウンブロックを含む、本発明1ないし7のいずれか1項に記載のタイヤ。
[本発明9]
前記複数のクラウンブロックのそれぞれには、前記クラウンブロックをタイヤ軸方向に完全に横断するサイプが設けられていない、本発明8に記載のタイヤ。
[本発明10]
前記クラウン横溝の少なくとも一方の溝壁は、局所的に凹む複数の凹部を含み、
前記複数の凹部のそれぞれは、前記クラウン陸部の接地面で開口している、本発明8に記載のタイヤ。
【符号の説明】
【0068】
2 トレッド部
3 周方向溝
4 陸部
5 第1ショルダー周方向溝
11 第1ショルダー陸部
13 第1ミドル陸部
30 ショルダーサイプ
38 ミドルサイプ群
39 クローズドサイプ
T1 第1トレッド端
T2 第2トレッド端
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2023-10-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0033
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0033】
ショルダー横溝20は、内側溝部21と外側溝部22とを含んでいる。内側溝部21は、第1ショルダー周方向溝5に連通しており、一定の溝幅W3で延びている。外側溝部22は、内側溝部21のタイヤ軸方向外側に連通しており、少なくとも第1トレッド端T1まで延びている。外側溝部22は、一定の溝幅W4でタイヤ軸方向に延びている。外側溝部22の溝幅W4は、内側溝部21の溝幅W3よりも大きい。具体的には、前記溝幅W4は、前記溝幅W3の130%~150%である。このような内側溝部21及び外側溝部22を含むショルダー横溝20は、第1ショルダー周方向溝5と連通する部分の周辺における、第1ショルダー陸部11の偏摩耗を抑制できる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0046
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0046】
図2に示されるように、ミドル横溝35は、例えば、一定の溝幅W5でタイヤ軸方向に直線状に延びている。ミドル横溝35の溝幅W5は、例えば、ショルダー横溝20の内側溝部21の溝幅W3よりも小さい。具体的には、ミドル横溝35の溝幅W5は、内側溝部21の溝幅W3の60%~80%である。このようなミドル横溝35は、第1ミドル陸部13偏摩耗を抑制し、かつ、ドライ路面での操縦安定性を向上させることができる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0052
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0052】
図6には、ミドルサイプ40の一例として、第2ミドルサイプ42の拡大図が示されている。なお、構成を理解し易い様に、図6ミドルサイプ40の開口部には、ドットが施されている。図4及び図6に示されるように、本実施形態の各ミドルサイプ40は、第1サイプ片46、第2サイプ片47及び第3サイプ片48を含んでいる。第1サイプ片46及び第2サイプ片47はそれぞれ、タイヤ軸方向に延びている。また、第2サイプ片47は、第1サイプ片46よりもタイヤ赤道C側に設けられており、かつ、第1サイプ片46に対してタイヤ周方向に位置ずれしている。第3サイプ片48は、第1サイプ片46と第2サイプ片47との間に連なり、かつ、タイヤ軸方向に対する角度が第1サイプ片46及び第2サイプ片47よりも大きい。第3サイプ片48のタイヤ軸方向に対する角度θ5(図6に示す)は、例えば、60~80°である。このような各ミドルサイプ40は、多方向に摩擦力を提供でき、氷雪上走行時のトラクション性能及び旋回性能を高めることができる。