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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093514
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
   B60B 27/00 20060101AFI20240702BHJP
   B62M 21/00 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
B60B27/00 C
B62M21/00
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209945
(22)【出願日】2022-12-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-06-18
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【弁理士】
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 要
(74)【代理人】
【識別番号】100195349
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 信喜
(72)【発明者】
【氏名】香島 仁
(72)【発明者】
【氏名】清水 健太
(57)【要約】
【課題】鞍乗型車両の振動を小さくする鞍乗型車両を提供する。
【解決手段】鞍乗型車両1は、クラッチハブ31とダンパ51とリアホイール61を備える。鞍乗型車両11が前方に移動するとき、クラッチハブ31は、正転方向D1に回転する。ダンパ51は、クラッチハブ31と接触する。リアホイール61は、ダンパ51を支持する。クラッチハブ31は、第1爪41aと第2爪41bを備える。ダンパ51は、第1前ブロック53aと第2前ブロック53bを備える。第1前ブロック53aは、正転方向D1において第1爪41aの前方に配置される。第2前ブロック53bは、正転方向D1において第2爪41bの前方に配置される。第2前ブロック53bは、第1前ブロック53aよりも小さい。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞍乗型車両であって、
前記鞍乗型車両が前方に移動するとき、前記鞍乗型車両の幅方向と平行な第1軸線回りの正転方向に回転するクラッチハブと、
前記クラッチハブと接触するダンパと、
前記ダンパを支持し、前記ダンパを介して前記クラッチハブによって前記第1軸線回りに回転駆動されるホイールと、
を備え、
前記クラッチハブは、
第1爪と、
第2爪と、
を備え、
前記ダンパは、
前記正転方向において前記第1爪の前方に配置される第1前ブロックと、
前記正転方向において前記第2爪の前方に配置される第2前ブロックと、
を備え、
前記第2前ブロックは、前記第1前ブロックよりも小さい
鞍乗型車両。
【請求項2】
請求項1に記載の鞍乗型車両において、
前記第2前ブロックは、前記第1前ブロックの体積よりも小さな体積を有する
鞍乗型車両。
【請求項3】
請求項1または2に記載の鞍乗型車両において、
前記鞍乗型車両の側面視において、前記第2前ブロックは、前記第1前ブロックの面積よりも小さい面積を有する
鞍乗型車両。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の鞍乗型車両において、
前記第1軸線の周方向における前記第2前ブロックの長さは、前記第1軸線の周方向における前記第1前ブロックの長さよりも小さい
鞍乗型車両。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の鞍乗型車両において、
前記クラッチハブと前記ダンパは、第1状態と第2状態の間で、切り替わり、
前記クラッチハブと前記ダンパが前記第1状態にあるとき、前記第1前ブロックは前記第1爪と接触しており、かつ、前記第2前ブロックは前記第2爪から離れており、
前記クラッチハブと前記ダンパが前記第2状態にあるとき、前記第1前ブロックは前記第1爪と接触しており、かつ、前記第2前ブロックは前記第2爪と接触している
鞍乗型車両。
【請求項6】
請求項5に記載の鞍乗型車両において、
前記鞍乗型車両が発進するとき、前記クラッチハブと前記ダンパは、前記第1状態にあり、
前記ホイールを制動するとき、前記クラッチハブと前記ダンパは、前記第2状態にある
鞍乗型車両。
【請求項7】
請求項5または6に記載の鞍乗型車両において、
前記鞍乗型車両が停止した状態にあるとき、前記クラッチハブと前記ダンパは前記第1状態にある
鞍乗型車両。
【請求項8】
請求項5から7のいずれかに記載の鞍乗型車両において、
前記鞍乗型車両が走行しているとき、前記クラッチハブと前記ダンパは前記第2状態にある
鞍乗型車両。
【請求項9】
請求項5から8のいずれかに記載の鞍乗型車両において、
前記第1前ブロックは、前記正転方向に収縮し、かつ、伸張し、
前記第1前ブロックが前記正転方向に収縮するとき、前記第2爪は前記第2前ブロックに対して前記正転方向に移動し、
前記第1前ブロックが前記正転方向に伸張するとき、前記第2爪は前記第2前ブロックに対して前記正転方向とは逆の方向に移動する
鞍乗型車両。
【請求項10】
請求項5から9のいずれかに記載の鞍乗型車両において、
前記クラッチハブと前記ダンパが前記第1状態にあるとき、前記第2爪と前記第2前ブロックは、隙間を形成し、
前記隙間は、前記正転方向において前記第2爪の前方で、かつ、前記正転方向において前記第2前ブロックの後方に位置する
鞍乗型車両。
【請求項11】
請求項5から10のいずれかに記載の鞍乗型車両において、
前記正転方向における前記ホイールに対する前記クラッチハブの回転角度である相対回転角度に応じて、前記クラッチハブと前記ダンパは、前記第1状態と前記第2状態の間で、切り替わる
鞍乗型車両。
【請求項12】
請求項11に記載の鞍乗型車両において、
前記相対回転角度が閾値未満であるとき、前記クラッチハブと前記ダンパは前記第1状態にあり、
前記相対回転角度が前記閾値以上であるとき、前記クラッチハブと前記ダンパは前記第2状態にある
鞍乗型車両。
【請求項13】
請求項12に記載の鞍乗型車両において、
前記鞍乗型車両が発進するとき、前記相対回転角度は0度から増加し、
前記閾値は、3度以上、かつ、5度以下である
鞍乗型車両。
【請求項14】
請求項1から13のいずれかに記載の鞍乗型車両において、
前記クラッチハブは、
第3爪と、
第4爪と、
を備え、
前記ダンパは、
前記正転方向において前記第3爪の前方に配置される第3前ブロックと、
前記正転方向において前記第4爪の前方に配置される第4前ブロックと、
を備え、
前記第4前ブロックは、前記第3前ブロックよりも小さい
鞍乗型車両。
【請求項15】
請求項5から14のいずれかに記載の鞍乗型車両において、
前記鞍乗型車両は、
前記第1軸線回りの前記ホイールの回転を制動する制動機構と、
を備え、
前記鞍乗型車両が走行している状態で前記制動機構が前記ホイールの回転を制動し始めるとき、前記クラッチハブと前記ダンパは前記第2状態にある
鞍乗型車両。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は自動二輪車を開示する。特許文献1の自動二輪車は、ストリート型の車両に分類される。以下の説明では、特許文献1に記載される符号を、括弧書きで表記する。
【0003】
特許文献1の自動二輪車は、車体フレーム(F)とエンジンユニット(EU)と後車軸(23)とドリブンスプロケット(29)とチェーン(30)とクラッチハブ(54)とダンパとホイール(31)を備える。エンジンユニット(EU)は、車体フレーム(F)に固定される。エンジンユニット(EU)は、リジッドマウントエンジンに分類される。エンジンユニット(EU)は、車体フレーム(F)に対して揺動しない。エンジンユニット(EU)は、ユニットスイングエンジンに分類されない。後車軸(23)は、自動二輪車の幅方向に延びる。ドリブンスプロケット(29)は、後車軸(23)に支持される。ドリブンスプロケット(29)は、後車軸(23)回りに回転可能である。チェーン(30)は、エンジンユニット(EU)とドリブンスプロケット(29)を連結する。クラッチハブ(54)は、ドリブンスプロケット(29)に固定される。クラッチハブ(54)は、後車軸(23)回りに回転可能である。ダンパは、クラッチハブ(54)に接触する。ホイール(31)は、後車軸(23)に支持される。ホイール(31)は、後車軸(23)回りに回転可能である。ホイール(31)は、ダンパを支持する。
【0004】
エンジンユニット(EU)は、チェーン(30)を介して、ドリブンスプロケット(29)を回転させる。ドリブンスプロケット(29)は、後車軸(23)回りに回転する。クラッチハブ(54)は、ドリブンスプロケット(29)と一体に回転する。クラッチハブ(54)は、正転方向(60)に回転する。正転方向(60)は、後車軸(23)回りの1つの方向である。クラッチハブ(54)は、ダンパを介して、ホイール(31)を回転させる。ホイール(31)は、正転方向(60)に回転する。自動二輪車は、前方に移動する。
【0005】
クラッチハブ(54)とダンパを詳しく説明する。クラッチハブ(54)は、複数の爪(54a)を備える。ダンパは、複数の前ブロック(61)を備える。前ブロック(61)は、弾性体である。各前ブロック(61)は、正転方向(60)において、各爪(54a)の前方に配置される。このため、爪(54a)が前ブロック(61)を正転方向(60)に押圧することは、可能である。爪(54a)の正転方向(60)の回転に前ブロック(61)が抵抗することは、可能である。
【0006】
ダンパは、さらに、複数の後ブロック(62)を備える。後ブロック(62)は、弾性体である。各後ブロック(62)は、正転方向(60)において、各爪(54a)の後方に配置される。このため、爪(54a)が後ブロック(62)を正転方向に押圧することは、不可能である。爪(54a)の正転方向(60)の回転に後ブロック(62)が抵抗することは、不可能である。
【0007】
クラッチハブ(54)が正転方向(60)に回転するとき、爪(54a)は正転方向(60)に回転する。爪(54a)が正転方向(60)に回転するとき、爪(54a)は前ブロック(61)を正転方向(60)に押圧し、かつ、前ブロック(61)はホイール(31)を正転方向(60)に押圧する。すなわち、クラッチハブ(54)が正転方向(60)に回転するとき、クラッチハブ(54)は、前ブロック(61)を介して、ホイール(31)を正転方向(60)に回転させる。
【0008】
爪(54a)が正転方向(60)に回転するとき、爪(54a)は後ブロック(62)を正転方向(60)に押圧しない。すなわち、クラッチハブ(54)が正転方向(60)に回転するとき、クラッチハブ(54)は、後ブロック(62)を介さずに、ホイール(31)を正転方向(60)に回転させる。
【0009】
前進駆動力の伝わり方を説明する。「前進駆動力」は、自動二輪車を前方に移動させるための力である。前進駆動力は、エンジンユニット(EU)によって生み出される。前進駆動力は、エンジンユニット(EU)からクラッチハブ(54)に伝達される。クラッチハブ(54)は、前ブロック(61)を介して、ホイール(31)に前進駆動力を伝達する。クラッチハブ(54)は、後ブロック(62)を介さずに、ホイール(31)に前進駆動力を伝達する。言い換えれば、前ブロック(61)は、クラッチハブ(54)からホイール(31)に前進駆動力を伝達する。後ブロック(62)は、クラッチハブ(54)からホイール(31)に前進駆動力を伝達しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2013-159329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
鞍乗型車両が前ブロックを備える場合であっても、鞍乗型車両は著しく振動することがある。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、鞍乗型車両の振動を小さくする鞍乗型車両を提供することを目的とする。
【0013】
本発明者は、鞍乗型車両の振動について研究した。そして、本発明者は、第1の問題を知見した。第1の問題は、鞍乗型車両が発進するとき、鞍乗型車両が振動することである。鞍乗型車両が発進するときにおける鞍乗型車両の振動を、特に「発進振動」と呼ぶ。
【0014】
本発明者は、発進振動について、さらに研究した。そして、本発明者は、以下の複数の知見を得た。
【0015】
鞍乗型車両が発進するときのエンジンの回転数が低くなるほど、発進振動は大きくなる。発進振動が大きくなるほど、鞍乗型車両の乗り心地性は悪化する。このため、鞍乗型車両が発進するときのエンジンの回転数を低くすることは、難しい。
【0016】
ところで、鞍乗型車両が発進するときのエンジンの回転数がより低く設定されると、鞍乗型車両の燃費は低下する。上述の通り、鞍乗型車両が発進するときのエンジンの回転数を低くすることは、難しい。このため、鞍乗型車両の燃費を低下させることは、難しい。要するに、第1の問題は、鞍乗型車両の燃費を低下させることを、困難にさせる。
【0017】
本発明者は、第1の問題を解決するために、さらに研究した。そして、本発明者は、第1の知見を得た。第1の知見は、前ブロックが柔らかくなるほど、発進振動は小さくなることである。ここで、「前ブロックが柔らかい」は、例えば、前ブロックが小さい弾性率を有することを意味する。逆に、「前ブロックが硬い」は、例えば、前ブロックが大きい弾性率を有することを意味する。
【0018】
本発明者は、第1の知見に基づいて、第1の解決手段を得た。第1の解決手段は、前ブロックを大きくすることである。第1の解決手段は、第1の問題を解決する。
【0019】
ここで、ブロックのサイズとブロックの特性との間の関係について、説明する。ブロックは、弾性体である。ブロックが大きくなるにしたがって、ブロックは柔らかくなる。ブロックが大きくなるにしたがって、ブロックの弾性率は小さくなる。ブロックが小さくなるにしたがって、ブロックは硬くなる。ブロックが小さくなるにしたがって、ブロックの弾性率は大きくなる。
【0020】
言い換えれば、ブロックが大きいほど、ブロックは変形し易い。ブロックが小さいほど、ブロックは変形し難い。
【0021】
言い換えれば、ブロックが大きいほど、ブロックは撓み易い。ブロックが小さいほど、ブロックは撓み難い。
【0022】
言い換えれば、今、小ブロックと大ブロックがあるとする。大ブロックは小ブロックよりも大きいとする。この場合、大ブロックは、小ブロックよりも柔らかい。大ブロックは、小ブロックの弾性率よりも小さな弾性率を有する。大ブロックは、小ブロックよりも、変形し易い。大ブロックは、小ブロックよりも、撓み易い。大ブロックに加えた荷重が小ブロックに加えた荷重と等しいとき、大ブロックの変形量は、小ブロックの変形量よりも大きい。大ブロックに加えた荷重が小ブロックに加えた荷重と等しいとき、大ブロックの撓み量は、小ブロックの撓み量よりも大きい。
【0023】
本発明者は、実際に、鞍乗型車両のプロトタイプを試作した。鞍乗型車両のプロトタイプは、エンジンと前ブロックを備える。エンジンは、車体フレームに対して揺動可能である。エンジンは、ユニットスイングエンジンに分類される。前ブロックは、正転方向において爪の前方に配置される。クラッチハブは、前ブロックを介して、ホイールを回転させる。前ブロックは、大きいサイズを有する。そして、鞍乗型車両のプロトタイプが発進振動を発生することが、観察された。さらに、鞍乗型車両のプロトタイプの発進振動が一層小さいことが、観察された。
【0024】
本発明者は、鞍乗型車両のプロトタイプをさらに観察することによって、第2の問題を知見した。第2の問題は、ホイールを制動するときに鞍乗型車両が振動することである。ホイールを制動するときにおける鞍乗型車両の振動を、特に「制動振動」と呼ぶ。
【0025】
本発明者は、さらに、制動振動について研究した。そして、本発明者は、以下の複数の知見を得た。
【0026】
ホイールを制動するとき、さらに、ホイールはクラッチハブを制動する。具体的には、ホイールは、前ブロックを介して、爪の回転を制動する。爪の正転方向の回転に前ブロックは抵抗する。このため、ホイールを制動するとき、ホイールは、前ブロックを介して、クラッチハブの回転を制動する。
【0027】
ホイールの回転を制動するとき、ホイールは、後ブロックを介さずに、爪の回転を制動する。ホイールの回転を制動するとき、爪の正転方向の回転に後ブロックは抵抗しない。このため、ホイールを制動するとき、ホイールは、後ブロックを介さずに、クラッチハブ31の回転を制動する。
【0028】
制動力の伝わり方を説明する。「制動力」は、ホイールを制動するための力である。制動力は、例えば、制動機構によって発生される。制動力は、制動機構からホイールに伝達される。ホイールは、さらに、前ブロックを介して、クラッチハブに制動力を伝達する。ホイールは、後ブロックを介さずに、クラッチハブに制動力を伝達する。言い換えれば、前ブロックは、ホイールからクラッチハブに制動力を伝達する。後ブロックは、ホイールからクラッチハブに制動力を伝達しない。
【0029】
エンジンが車体フレームに対して揺動可能である場合、制動振動は比較的に大きい。さらに、前ブロックが大きいほど、制動振動は大きくなる。上述の通り、鞍乗型車両のプロトタイプでは、エンジンは車体フレームに対して揺動可能である。鞍乗型車両のプロトタイプでは、前ブロックは大きい。このため、鞍乗型車両のプロトタイプは、著しく大きな制動振動を有した。鞍乗型車両のプロトタイプを試作したからこそ、制動振動が発見された。鞍乗型車両のプロトタイプを試作しなければ、制動振動は発見されなかったはずである。
【0030】
制動振動が発見された後、鞍乗型車両のプロトタイプ以外の鞍乗型車両が制動振動を発生するか否かを調べた。
【0031】
例えば、第1鞍乗型車両が準備された。第1鞍乗型車両は、特許文献1に開示される車両と同じである。第1鞍乗型車両は、ストリート型車両に属する。第1鞍乗型車両は、エンジンと前ブロックを備える。エンジンは、車体フレームに固定される。エンジンは、リジッドマウントエンジンに分類される。そして、第1鞍乗型車両が制動振動を発生することが、観察された。但し、第1鞍乗型車両の制動振動は、鞍乗型車両のプロトタイプの制動振動よりも、小さい。例えば、第1鞍乗型車両の制動振動は、第1鞍乗型車両の乗り心地性を実質的に悪化させないほど小さい。例えば、第1鞍乗型車両の制動振動に運転者が気付きくことは困難である。これが、制動振動が今まで発見されなかった理由の1つかも知れない。
【0032】
例えば、第2鞍乗型車両が準備された。第2鞍乗型車両は、ストリート型車両に属する。第2鞍乗型車両は、エンジンを備える。エンジンは、車体フレームに固定される。エンジンは、リジッドマウントエンジンに分類される。但し、第2鞍乗型車両は、前ブロックを備えない。第2鞍乗型車両では、ホイールは、ドリブンスプロケットに直接的に連結される。第2鞍乗型車両では、ホイールは、前ブロックを介さずに、ドリブンスプロケットに連結される。そして、第2鞍乗型車両が制動振動を発生しないことが、観察された。このため、制動振動は前ブロックに起因するかも知れない。
【0033】
制動振動が鞍乗型車両の乗り心地性を実質的に悪化させないほど小さい場合であっても、制動振動は、鞍乗型車両に設けられるセンサの精度を悪化させることがある。センサは、例えば、速度センサ、加速度センサ、および、圧力センサの少なくともいずれかである。このため、制動振動が鞍乗型車両の乗り心地性を悪化させないほど小さい場合であっても、制動振動をさらに小さくすることは有益である。
【0034】
本発明者は、第2の問題を解決するために、さらに研究した。そして、本発明者は、第2の知見を得た。第2の知見は、前ブロックが硬くなるほど、制動振動は小さくなることである。
【0035】
さらに、本発明者は、第2の知見に基づいて、第2の解決手段を得た。第2の解決手段は、前ブロックを小さくすることである。第2の解決手段は、第2の問題を解決する。
【0036】
本発明者は、第3の問題を知見した。第3の問題は、第2の解決手段が第1の解決手段と相容れないことである。例えば、第2の解決手段は、第2の問題を解決するが、第1の問題を解決しない。具体的には、前ブロックが小さいとき、制動振動は小さいが、発進振動は小さくない。逆に、第1の解決手段は、第1の問題を解決するが、第2の問題を助長する。具体的には、前ブロックが大きいとき、発進振動は小さいが、制動振動は大きい。
【0037】
本発明者は、第1の問題と第2の問題の両方を解決するために、さらに研究した。具体的には、発進振動と制動振動の両方を小さくするために、本発明者はさらに研究した。
【0038】
これらの知見および検討に基づく本発明は、次のような構成をとる。
すなわち、本発明は、
鞍乗型車両であって、
前記鞍乗型車両が前方に移動するとき、前記鞍乗型車両の幅方向と平行な第1軸線回りの正転方向に回転するクラッチハブと、
前記クラッチハブと接触するダンパと、
前記ダンパを支持し、前記ダンパを介して前記クラッチハブによって前記第1軸線回りに回転駆動されるホイールと、
を備え、
前記クラッチハブは、
第1爪と、
第2爪と、
を備え、
前記ダンパは、
前記正転方向において前記第1爪の前方に配置される第1前ブロックと、
前記正転方向において前記第2爪の前方に配置される第2前ブロックと、
を備え、
前記第2前ブロックは、前記第1前ブロックよりも小さい
鞍乗型車両である。
【0039】
鞍乗型車両は、クラッチハブとダンパとホイールを備える。鞍乗型車両が前方に移動するとき、クラッチハブは正転方向に回転する。正転方向は、第1軸線回りの1つの方向である。第1軸線は、鞍乗型車両の幅方向と平行である。ダンパは、クラッチハブと接触する。ホイールは、ダンパを支持する。クラッチハブは、ダンパを介して、ホイールを第1軸線回りに回転させる。ホイールは、ダンパを介して、クラッチハブによって第1軸線回りに回転駆動される。
【0040】
クラッチハブは、第1爪を備える。ダンパは、第1前ブロックを備える。第1前ブロックは、正転方向において第1爪の前方に配置される。このため、第1爪が第1前ブロックを正転方向に押圧することは、可能である。第1爪の正転方向の回転に第1前ブロックが抵抗することは、可能である。よって、クラッチハブからホイールに前進駆動力を第1前ブロックが伝達することは、可能である。ホイールからクラッチハブに制動力を第1前ブロックが伝達することは、可能である。「前進駆動力」は、鞍乗型車両を前方に移動させるための力である。「制動力」は、ホイールを制動するための力である。
【0041】
同様に、クラッチハブは、第2爪を備える。ダンパは、第2前ブロックを備える。第2前ブロックは、正転方向において第2爪の前方に配置される。このため、第2爪が第2前ブロックを正転方向に押圧することは、可能である。よって、クラッチハブからホイールに前進駆動力を第2前ブロックが伝達することは、可能である。
【0042】
第2前ブロックは、第1前ブロックよりも小さい。このため、第2前ブロックは、第1前ブロックの特性と異なる特性を有する。
【0043】
具体的には、第2前ブロックは、第1前ブロックよりも硬い。よって、第2前ブロックは、制動振動を好適に小さくする。「制動振動」は、ホイールを制動するときにおける鞍乗型車両の振動である。
【0044】
言い換えれば、第1前ブロックは、第2前ブロックよりも大きい。このため、第1前ブロックは、第2前ブロックよりも柔らかい。よって、第1前ブロックは、発進振動を好適に小さくする。「発進振動」は、鞍乗型車両が発進するときにおける鞍乗型車両の振動である。
【0045】
まとめると、本鞍乗型車両は、鞍乗型車両の振動を小さくする。具体的には、本鞍乗型車両は、発進振動および制動振動の両方を小さくする。
【0046】
上述した鞍乗型車両において、
前記第2前ブロックは、前記第1前ブロックの体積よりも小さな体積を有することが好ましい。
このため、第2前ブロックを第1前ブロックよりも小さくさせることは、容易である。
【0047】
上述した鞍乗型車両において、
前記鞍乗型車両の側面視において、前記第2前ブロックは、前記第1前ブロックの面積よりも小さい面積を有することが好ましい。
このため、第2前ブロックを第1前ブロックよりも小さくさせることは、容易である。
【0048】
上述した鞍乗型車両において、
前記第1軸線の周方向における前記第2前ブロックの長さは、前記第1軸線の周方向における前記第1前ブロックの長さよりも小さいことが好ましい。
このため、第2前ブロックを第1前ブロックよりも小さくさせることは、容易である。
【0049】
上述した鞍乗型車両において、
前記クラッチハブと前記ダンパは、第1状態と第2状態の間で、切り替わり、
前記クラッチハブと前記ダンパが前記第1状態にあるとき、前記第1前ブロックは前記第1爪と接触しており、かつ、前記第2前ブロックは前記第2爪から離れており、
前記クラッチハブと前記ダンパが前記第2状態にあるとき、前記第1前ブロックは前記第1爪と接触しており、かつ、前記第2前ブロックは前記第2爪と接触していることが好ましい。
【0050】
クラッチハブとダンパが第1状態にあるときのクラッチハブとダンパとホイールを説明する。第1前ブロックは第1爪と接触している。第2前ブロックは第2爪から離れている。このため、第1前ブロックは、クラッチハブとホイールの間で、前進駆動力および制動力を伝達する。第2前ブロックは、クラッチハブからホイールに前進駆動力を伝達しない。第2前ブロックは、ホイールからクラッチハブに制動力を伝達しない。
【0051】
クラッチハブとダンパが第2状態にあるときのクラッチハブとダンパとホイールを説明する。第1前ブロックは第1爪と接触している。第2前ブロックは第2爪と接触している。第1前ブロックと第2前ブロックは、クラッチハブとホイールの間に、並列に接続される。このため、第1前ブロックは、クラッチハブとホイールの間で、前進駆動力および制動力を伝達する。第2前ブロックは、クラッチハブとホイールの間で、前進駆動力および制動力を伝達する。
【0052】
クラッチハブとダンパが第1状態にあるときにクラッチハブとホイールの間で前進駆動力および制動力を伝達するダンパを、便宜上、「第1状態における伝達ダンパ」と呼ぶ。クラッチハブとダンパが第2状態にあるときにクラッチハブとホイールの間で前進駆動力および制動力を伝達するダンパを、便宜上、「第2状態における伝達ダンパ」と呼ぶ。第1状態における伝達ダンパは、第1前ブロックを含み、第2前ブロックを含まない。第2状態における伝達ダンパは、並列に接続される第1前ブロックと第2前ブロックを含む。このため、第1状態における伝達ダンパは、第2状態における伝達ダンパが有する特性とは異なる特性を有する。
【0053】
具体的には、第1状態における伝達ダンパは、第2状態における伝達ダンパよりも、柔らかい。よって、第1状態における伝達ダンパは発進振動を好適に小さくする。すなわち、クラッチハブとダンパが第1状態にあるとき、ダンパは発進振動を好適に小さくする。
【0054】
他方、第2状態における伝達ダンパは、第1状態における伝達ダンパよりも、硬い。よって、第2状態における伝達ダンパは制動振動を好適に小さくする。すなわち、クラッチハブとダンパが第2状態にあるとき、ダンパは制動振動を好適に小さくする。
【0055】
クラッチハブとダンパは、第1状態と第2状態の間で切り替わる。このため、本鞍乗型車両が発進振動および制動振動の両方を小さくすることは、容易である。
【0056】
上述した鞍乗型車両において、
前記鞍乗型車両が発進するとき、前記クラッチハブと前記ダンパは、前記第1状態にあり、
前記ホイールを制動するとき、前記クラッチハブと前記ダンパは、前記第2状態にあることが好ましい。
鞍乗型車両が発進するとき、発進振動が発生する。鞍乗型車両が発進するとき、クラッチハブとダンパは第1状態にある。このため、発進振動が発生するとき、クラッチハブとダンパは第1状態にある。上述の通り、クラッチハブとダンパが第1状態にあるとき、ダンパは発進振動を好適に小さくする。よって、発進振動は好適に小さくされる。ホイールを制動するとき、制動振動が発生する。ホイールを制動するとき、クラッチハブとダンパは第2状態にある。このため、制動振動が発生するとき、クラッチハブとダンパは第2状態にある。上述の通り、クラッチハブとダンパが第2状態にあるとき、第2前ブロックは制動振動を好適に小さくする。よって、制動振動は好適に小さくされる。
【0057】
上述した鞍乗型車両において、
前記鞍乗型車両が停止した状態にあるとき、前記クラッチハブと前記ダンパは前記第1状態にあることが好ましい。
鞍乗型車両が発進するとき、鞍乗型車両が停止した状態から鞍乗型車両は前方に移動し始める。鞍乗型車両が停止した状態にあるとき、クラッチハブとダンパは第1状態にある。このため、鞍乗型車両が発進するときにクラッチハブとダンパが第1状態にあることは、容易である。
【0058】
上述した鞍乗型車両において、
前記クラッチハブが第1軸線回りに回転していないとき、前記クラッチハブと前記ダンパは前記第1状態にあることが好ましい。
鞍乗型車両が停止した状態にあるとき、クラッチハブは第1軸線回りに回転していない。クラッチハブが第1軸線回りに回転していないとき、クラッチハブとダンパは第1状態にある。このため、鞍乗型車両が停止した状態にあるときにクラッチハブとダンパが第1状態にあることは、容易である。
【0059】
上述した鞍乗型車両において、
前記鞍乗型車両が走行しているとき、前記クラッチハブと前記ダンパは前記第2状態にあることが好ましい。
ホイールを制動するとき、鞍乗型車両は走行している。鞍乗型車両が走行しているとき、クラッチハブとダンパは第2状態にある。このため、ホイールを制動するときにクラッチハブとダンパが第2状態にあることは、容易である。
【0060】
上述した鞍乗型車両において、
前記クラッチハブが正転方向に回転しているとき、前記クラッチハブと前記ダンパは前記第2状態にあることが好ましい。
鞍乗型車両が走行しているとき、クラッチハブは正転方向に回転している。クラッチハブが正転方向に回転しているとき、クラッチハブとダンパは第2状態にある。このため、鞍乗型車両が走行しているときにクラッチハブとダンパが第2状態にあることは、容易である。
【0061】
上述した鞍乗型車両において、
前記鞍乗型車両が発進した後、前記クラッチハブと前記ダンパは前記第1状態から前記第2状態に切り替わることが好ましい。
鞍乗型車両が発進した後、鞍乗型車両は走行する。鞍乗型車両が発進した後、クラッチハブとダンパは第1状態から第2状態に切り替わる。このため、鞍乗型車両が走行しているときにクラッチハブとダンパが第2状態にあることは、容易である。
【0062】
上述した鞍乗型車両において、
前記クラッチハブが前記正転方向に回転し始めた後、前記クラッチハブと前記ダンパは前記第1状態から前記第2状態に切り替わることが好ましい。
鞍乗型車両が発進するとき、クラッチハブは正転方向に回転し始める。クラッチハブが正転方向に回転し始めた後、クラッチハブとダンパは第1状態から第2状態に切り替わる。このため、鞍乗型車両が発進した後にクラッチハブとダンパが第1状態から第2状態に切り替わることは、容易である。
【0063】
上述した鞍乗型車両において、
前記鞍乗型車両が走行を停止するとき、前記クラッチハブと前記ダンパは前記第2状態から前記第1状態に切り替わることが好ましい。
鞍乗型車両が走行を停止した後、鞍乗型車両は停止した状態になる。鞍乗型車両が走行を停止するとき、クラッチハブとダンパは第2状態から第1状態に切り替わる。このため、前記鞍乗型車両が停止した状態にあるときにクラッチハブとダンパが第1状態にあることは、容易である。
【0064】
上述した鞍乗型車両において、
前記クラッチハブが第1軸線回りの回転を停止するとき、前記クラッチハブと前記ダンパは前記第2状態から前記第1状態に切り替わることが好ましい。
鞍乗型車両が走行を停止するとき、クラッチハブは第1軸線回りの回転を停止する。クラッチハブが第1軸線回りの回転を停止するとき、クラッチハブとダンパは第2状態から第1状態に切り替わる。このため、鞍乗型車両が走行を停止するときにクラッチハブとダンパが第2状態から第1状態に切り替わることは、容易である。
【0065】
上述した鞍乗型車両において、
前記第1前ブロックは、前記正転方向に収縮し、かつ、伸張し、
前記第1前ブロックが前記正転方向に収縮するとき、前記第2爪は前記第2前ブロックに対して前記正転方向に移動し、
前記第1前ブロックが前記正転方向に伸張するとき、前記第2爪は前記第2前ブロックに対して前記正転方向とは逆の方向に移動することが好ましい。
第1前ブロックが正転方向に収縮するとき、第2爪は第2前ブロックに対して正転方向に移動する。上述の通り、第2前ブロックは、正転方向において第1爪の前方に配置される。このため、第2前ブロックが第2爪と接触することは、容易である。よって、クラッチハブとダンパが第1状態から第2状態に切り替わることは、容易である。第1前ブロックが正転方向に伸張するとき、第2爪は第2前ブロックに対して正転方向とは逆の方向に移動する。このため、第2前ブロックが第2爪から離れることは、容易である。よって、クラッチハブとダンパが第2状態から第1状態に切り替わることは、容易である。
【0066】
上述した鞍乗型車両において、
前記クラッチハブと前記ダンパが前記第1状態にあるとき、前記第2爪と前記第2前ブロックは、隙間を形成し、
前記隙間は、前記正転方向において前記第2爪の前方で、かつ、前記正転方向において前記第2前ブロックの後方に位置することが好ましい。
クラッチハブとダンパが第1状態にあるとき、第2爪と第2前ブロックは、隙間を形成する。このため、クラッチハブとダンパが第1状態にあるときに第2前ブロックを第2爪から離すことは、容易である。隙間は、正転方向において第2爪の前方で、かつ、正転方向において第2前ブロックの後方に位置する。言い換えれば、隙間は、正転方向において第2爪と第2前ブロックの間に位置する。このため、第2爪が第2前ブロックに対して正転方向に移動することによって、第2爪は第2前ブロックに接触する。よって、クラッチハブとダンパが第1状態から第2状態に切り替わることは、容易である。さらに、第2爪が第2前ブロックに対して正転方向とは逆方向に移動することによって、第2爪は第2前ブロックから離れる。よって、クラッチハブとダンパが第2状態から第1状態に切り替わることは、容易である。
【0067】
上述した鞍乗型車両において、
前記正転方向における前記ホイールに対する前記クラッチハブの回転角度である相対回転角度に応じて、前記クラッチハブと前記ダンパは、前記第1状態と前記第2状態の間で、切り替わることが好ましい。
相対回転角度は、正転方向におけるホイールに対するクラッチハブの回転角度である。相対回転角度に応じて、クラッチハブとダンパは、第1状態と第2状態の間で、切り替わる。このため、クラッチハブとダンパが第1状態と第2状態の間で切り替わることは、容易である。
【0068】
上述した鞍乗型車両において、
前記相対回転角度が閾値未満であるとき、前記クラッチハブと前記ダンパは前記第1状態にあり、
前記相対回転角度が前記閾値以上であるとき、前記クラッチハブと前記ダンパは前記第2状態にあることが好ましい。
このため、クラッチハブとダンパが第1状態と第2状態の間で相対回転角度に応じて切り替わることは、容易である。
【0069】
上述した鞍乗型車両において、
前記鞍乗型車両が発進するとき、前記相対回転角度は0度から増加し、
前記閾値は、3度以上、かつ、5度以下であることが好ましい。
このため、鞍乗型車両が発進するときに相対回転角度が閾値未満であることは、容易である。よって、鞍乗型車両が発進するときにクラッチハブとダンパが第1状態にあることは、容易である。さらに、鞍乗型車両が発進した後に相対回転角度が閾値以上に増加することは、容易である。よって、ホイールを制動するときにクラッチハブとダンパが第2状態にあることは、容易である。まとめると、クラッチハブとダンパは、第1状態と第2状態の間で、適切なタイミングで切り替わる。
【0070】
上述した鞍乗型車両において、
前記クラッチハブは、
第3爪と、
第4爪と、
を備え、
前記ダンパは、
前記正転方向において前記第3爪の前方に配置される第3前ブロックと、
前記正転方向において前記第4爪の前方に配置される第4前ブロックと、
を備え、
前記第4前ブロックは、前記第3前ブロックよりも小さいことが好ましい。
【0071】
クラッチハブは、第3爪を備える。ダンパは、第3前ブロックを備える。第3前ブロックは、正転方向において第3爪の前方に配置される。このため、第3爪が第3前ブロックを正転方向に押圧することは、可能である。第3爪の正転方向の回転に第3前ブロックが抵抗することは、可能である。よって、クラッチハブからホイールに前進駆動力を第3前ブロックが伝達することは、可能である。ホイールからクラッチハブに制動力を第3前ブロックが伝達することは、可能である。
【0072】
同様に、クラッチハブは、第4爪を備える。ダンパは、第4前ブロックを備える。第4前ブロックは、正転方向において第4爪の前方に配置される。このため、第4爪が第4前ブロックを正転方向に押圧することは、可能である。第4爪の正転方向の回転に第4前ブロックが抵抗することは、可能である。よって、クラッチハブからホイールに前進駆動力を第4前ブロックが伝達することは、可能である。ホイールからクラッチハブに制動力を第4前ブロックが伝達することは、可能である。
【0073】
第4前ブロックは、第3前ブロックよりも小さい。このため、第4前ブロックは、第3前ブロックの特性と異なる特性を有する。
【0074】
具体的には、第4前ブロックは、第3前ブロックよりも硬い。よって、第4前ブロックは、制動振動を好適に小さくする。
【0075】
言い換えれば、第3前ブロックは、第4前ブロックよりも大きい。このため、第3前ブロックは、第4前ブロックよりも柔らかい。よって、第3前ブロックは、発進振動を好適に小さくする。
【0076】
まとめると、本鞍乗型車両は、鞍乗型車両の振動を一層小さくする。具体的には、本鞍乗型車両は、発進振動および制動振動の両方を一層小さくする。
【0077】
上述した鞍乗型車両において、
前記第3前ブロックは、前記第1前ブロックと同じ形状を有し、
前記第4前ブロックは、前記第2前ブロックと同じ形状を有することが好ましい。
第3前ブロックの形状は、第1前ブロックの形状と同じである。このため、第3前ブロックの特性を、第1前ブロックの特性と等しくさせることは、容易である。よって、第1前ブロックおよび第3前ブロックは、発進振動を一層好適に小さくする。同様に、第4前ブロックの形状は、第2前ブロックの形状と同じである。このため、第4前ブロックの特性を、第2前ブロックの特性と等しくさせることは、容易である。よって、第2前ブロックおよび第4前ブロックは、制動振動を一層好適に小さくする。
【0078】
上述した鞍乗型車両において、
前記第3爪は、前記鞍乗型車両の側面視において、前記第1軸線に関して前記第1爪と点対称な位置に配置され、
前記第3前ブロックは、前記鞍乗型車両の側面視において、前記第1軸線に関して前記第1前ブロックと点対称な位置に配置されることが好ましい。
このため、第1前ブロックと第3前ブロックは、発進振動を一層好適に小さくする。
【0079】
上述した鞍乗型車両において、
前記第4爪は、前記鞍乗型車両の側面視において、前記第1軸線に関して前記第2爪と点対称な位置に配置され、
前記第4前ブロックは、前記鞍乗型車両の側面視において、前記第1軸線に関して前記第2前ブロックと点対称な位置に配置されることが好ましい。
このため、第2前ブロックと第4前ブロックは、制動振動を一層好適に小さくする。
【0080】
上述した鞍乗型車両において、
前記第2爪は、前記第1爪から前記正転方向に90度、回転した位置に配置されることが好ましい。
このため、第1前ブロックと第3前ブロックは、発進振動を一層好適に小さくする。
【0081】
上述した鞍乗型車両において、
前記第4爪は、前記第3爪から前記正転方向に90度、回転した位置に配置されることが好ましい。
このため、第2前ブロックと第4前ブロックは、制動振動を一層好適に小さくする。
【0082】
上述した鞍乗型車両において、
前記クラッチハブと前記ダンパが前記第1状態にあるとき、前記第3前ブロックは前記第3爪と接触しており、かつ、前記第4前ブロックは前記第4爪から離れており、
前記クラッチハブと前記ダンパが前記第2状態にあるとき、前記第3前ブロックは前記第3爪と接触しており、かつ、前記第4前ブロックは前記第4爪と接触していることが好ましい。
【0083】
クラッチハブとダンパが第1状態にあるときのクラッチハブとダンパとホイールを説明する。第1前ブロックは第1爪と接触している。第2前ブロックは第2爪から離れている。第3前ブロックは第3爪と接触している。第4前ブロックは第4爪から離れている。第1前ブロックと第3前ブロックは、クラッチハブとホイールの間に、並列に接続される。このため、第1前ブロックは、クラッチハブとホイールの間で、前進駆動力および制動力を伝達する。第2前ブロックは、クラッチハブからホイールに前進駆動力を伝達しない。第2前ブロックは、ホイールからクラッチハブに制動力を伝達しない。第3前ブロックは、クラッチハブとホイールの間で、前進駆動力および制動力を伝達する。第4前ブロックは、クラッチハブからホイールに前進駆動力を伝達しない。第4前ブロックは、ホイールからクラッチハブに制動力を伝達しない。
【0084】
クラッチハブとダンパが第2状態にあるときのクラッチハブとダンパとホイールを説明する。第1前ブロックは第1爪と接触している。第2前ブロックは第2爪と接触している。第3前ブロックは第3爪と接触している。第4前ブロックは第4爪と接触している。第1前ブロックと第2前ブロックと第3前ブロックと第4前ブロックは、クラッチハブとホイールの間に、並列に接続される。このため、第1前ブロックは、クラッチハブとホイールの間で、前進駆動力および制動力を伝達する。第2前ブロックは、クラッチハブとホイールの間で、前進駆動力および制動力を伝達する。第3前ブロックは、クラッチハブとホイールの間で、前進駆動力および制動力を伝達する。第4前ブロックは、クラッチハブとホイールの間で、前進駆動力および制動力を伝達する。
【0085】
第1状態における伝達ダンパは、並列に接続される第1前ブロックと第2前ブロックを含み、第2前ブロックと第4前ブロックを含まない。第2状態における伝達ダンパは、並列に接続される第1前ブロックと第2前ブロックと第3ダンパと第4ダンパを含む。このため、第1状態における伝達ダンパの特性は、第2状態における伝達ダンパが有する特性と、一層異なる。
【0086】
具体的には、第1状態における伝達ダンパは、第2状態における伝達ダンパよりも、一層柔らかい。よって、第1状態における伝達ダンパは発進振動を一層好適に小さくする。すなわち、クラッチハブとダンパが第1状態にあるとき、ダンパは発進振動を一層好適に小さくする。
【0087】
他方、第2状態における伝達ダンパは、第1状態における伝達ダンパよりも、一層硬い。よって、第2状態における伝達ダンパは制動振動を一層好適に小さくする。すなわち、クラッチハブとダンパが第2状態にあるとき、ダンパは制動振動を一層好適に小さくする。
【0088】
上述の通り、クラッチハブとダンパは、第1状態と第2状態の間で切り替わる。このため、本鞍乗型車両が発進振動および制動振動の両方を小さくすることは、容易である。
【0089】
上述した鞍乗型車両において、
前記鞍乗型車両は、
前記第1軸線回りの前記ホイールの回転を制動する制動機構と、
を備え、
前記鞍乗型車両が走行している状態で前記制動機構が前記ホイールの回転を制動し始めるとき、前記クラッチハブと前記ダンパは前記第2状態にあることが好ましい。
鞍乗型車両が走行している状態で制動機構がホイールの回転を制動し始めるとき、制動振動が発生する。鞍乗型車両が前方に移動している状態で制動機構がホイールの回転を制動し始めるとき、クラッチハブとダンパは第2状態にある。このため、制動振動が発生するとき、クラッチハブとダンパは第2状態にある。上述の通り、クラッチハブとダンパが第2状態にあるとき、ダンパは制動振動を好適に小さくする。よって、制動振動は好適に小さくされる。
【発明の効果】
【0090】
本鞍乗型車両によれば、鞍乗型車両の振動を小さくする。
【図面の簡単な説明】
【0091】
図1】実施形態に係る鞍乗型車両の左側面図である。
図2図1のII-II線に沿う断面図である。
図3】クラッチハブの斜視図である。
図4】クラッチハブの側面図である。
図5】リアホイールの斜視図である。
図6】リアホイールの側面図である。
図7】クラッチハブとダンパとリアホイールの分解斜視図である。
図8】ダンパの側面図である。
図9】第1前ブロックの斜視図である。
図10】第2前ブロックの斜視図である。
図11】クラッチハブとダンパが第1状態にあるときの爪とダンパの側面図である。
図12】クラッチハブとダンパが第2状態にあるときの爪とダンパの側面図である。
図13図13Aは、クラッチハブとダンパが第1状態にあるときの前進駆動力の伝わり方を模式的に示す図である。 図13Bは、クラッチハブとダンパが第2状態にあるときの前進駆動力の伝わり方を模式的に示す図である。
図14】相対回転角度とダンパの復元力の間の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0092】
以下、図面を参照して本発明に係る鞍乗型車両1について説明する。
【0093】
1.鞍乗型車両1の概略構成
図1は、実施形態に係る鞍乗型車両1の左側面図である。鞍乗型車両1は、スクータ型の車両に分類される。
【0094】
図1は、鞍乗型車両1の前後方向X、幅方向Yおよび上下方向Zを示す。前後方向X、幅方向Yおよび上下方向Zは、鞍乗型車両1に乗車した運転者(ライダーともいう)を基準として定義される。前後方向X、幅方向Yおよび上下方向Zは互いに直交する。前後方向Xおよび幅方向Yは、水平である。上下方向Zは、鉛直である。
【0095】
「前方」、「後方」、「上方」、「下方」、「右方」、「左方」はそれぞれ、鞍乗型車両1に乗車した運転者にとっての「前方」、「後方」、「上方」、「下方」、「右方」、「左方」を意味する。本明細書において特に断らない限り、「前方」および「後方」は、前後方向Xと平行な方向のみならず、前後方向Xに近い方向も含む。前後方向Xと近い方向は、例えば前後方向Xとのなす角度が45度以下の方向である。同様に、特に断らない限り、「右方」および「左方」は、幅方向Yと平行な方向のみならず、幅方向Yに近い方向も含む。特に断らない限り、「上方」および「下方」は、上下方向Zと平行な方向のみならず、上下方向Zに近い方向も含む。各図では、参考として、FRONT、REAR、UP、DOWN、RIGHT、LEFTを適宜に示す。
【0096】
本明細書では、「鞍乗型車両1の側面視において」を、適宜に「車両側面視において」という。
【0097】
鞍乗型車両1は、ハンドル3とシート4とフートボード5を備える。ハンドル3は、鞍乗型車両1の前部に配置される。シート4は、ハンドル3よりも後方に配置される。フートボード5は、ハンドル3よりも後方で、かつ、シート4よりも前方に配置される。フートボード5は、ハンドル3およびシート4よりも下方に配置される。鞍乗型車両1の運転者は、運転者の手でハンドル3を握る。運転者は、シート4に座る。運転者は、フートボード5に運転者の足を置く。
【0098】
鞍乗型車両1は、凹部空間6を形成する。凹部空間6は、空きスペース(unoccupied space)である。凹部空間6は、ハンドル3よりも後方に位置する。凹部空間6は、シート4よりも前方に位置する。凹部空間6は、フートボード5よりも上方に位置する。凹部空間6は、上方に開放される。凹部空間6は、下方に延びる。凹部空間6は、ハンドル3およびシート4よりも低い位置まで延びる。運転者が鞍乗型車両1に容易に乗降することを、凹部空間6は許容する。例えば、運転者が凹部空間6に運転者の脚を通すことによって、運転者が鞍乗型車両1に乗降することは容易である。
【0099】
鞍乗型車両1は、フロントフォーク7とフロントホイール8とフロントタイヤ9を備える。フロントフォーク7は、ハンドル3に連結される。フロントフォーク7は、ハンドル3から下方かつ前方に延びる。フロントホイール8は、フロントフォーク7の下部に支持される。フロントタイヤ9は、フロントホイール8に保持される。
【0100】
鞍乗型車両1は、車体フレームとパワーユニット11とリアホイール61とリアタイヤ69を備える。車体フレームの図示を省略する。パワーユニット11は、車体フレームに支持される。パワーユニット11は、車体フレームに対して揺動する。パワーユニット11は、車体フレームから後方に延びる。リアホイール61は、パワーユニット11に支持される。リアホイール61は、パワーユニット11の後部に支持される。リアタイヤ69は、リアホイール61に保持される。鞍乗型車両1が前方に移動するとき、パワーユニット11はリアホイール61を正転方向D1に回転する。
【0101】
リアホイール61は、本発明における「ホイール」の例である。
【0102】
パワーユニット11は、例えば、エンジンとトランスミッションとクラッチとケース12を備える。エンジンとトランスミッションとクラッチの図示を省略する。エンジンは、例えば、内燃機関である。エンジンは、車体フレームに対して揺動可能である。エンジンは、ユニットスイングエンジンに分類される。トランスミッションは、エンジンに連結される。トランスミッションは、例えば、無段変速機(CVT)である。クラッチは、トランスミッションに連結される。クラッチは、例えば、遠心クラッチである。ケース12は、エンジンとトランスミッションとクラッチを収容する。
【0103】
図2は、図1のII-II線に沿う断面図である。鞍乗型車両1は、駆動軸21を備える。駆動軸21は、パワーユニット11に連結される。駆動軸21は、例えば、クラッチに連結される。
【0104】
駆動軸21は、パワーユニット11から延びる。駆動軸21は、幅方向Yに延びる。
【0105】
駆動軸21は、第1軸線22を有する。第1軸線22は、仮想的な直線である。第1軸線22は、駆動軸21の中心を通る。第1軸線22は、幅方向Yと平行である。駆動軸21は、第1軸線22に沿って延びる。
【0106】
駆動軸21は、ケース12に支持される。駆動軸21は、ベアリング71を介して、ケース12に支持される。ベアリング71は、例えば、ボールベアリングである。駆動軸21は、ケース12に対して回転可能である。駆動軸21は、第1軸線22回りに回転可能である。
【0107】
鞍乗型車両1は、クラッチハブ31を備える。クラッチハブ31は、駆動軸21に支持される。クラッチハブ31は、駆動軸21と一体に回転する。クラッチハブ31は、第1軸線22回りに回転する。
【0108】
鞍乗型車両1は、ダンパ51を備える。ダンパ51は、クラッチハブ31と接触する。
【0109】
ダンパ51は、弾性体である。ダンパ51は、圧縮変形可能である。ダンパ51が圧縮されるとき、ダンパ51は復元力を発揮する。ダンパ51は、例えば、ゴム、樹脂およびエラストマの少なくともいずれかからなる。
【0110】
リアホイール61は、駆動軸21に支持される。リアホイール61は、ベアリング72を介して、駆動軸21に支持される。ベアリング72は、例えば、ボールベアリングである。リアホイール61は、駆動軸21に対して回転可能である。リアホイール61は、第1軸線22回りに回転可能である。上述した正転方向D1は、第1軸線22回りの1つの方向である。
【0111】
リアホイール61は、クラッチハブ31に支持される。リアホイール61は、ベアリング73を介して、クラッチハブ31に支持される。ベアリング73は、例えば、ニードルベアリングである。リアホイール61は、クラッチハブ31に対して回転可能である。
【0112】
リアホイール61は、ダンパ51を支持する。
【0113】
鞍乗型車両1は、制動機構81を備える。制動機構81は、リアホイール61に連結される。制動機構81は、第1軸線22回りのリアホイール61の回転を制動する。制動機構81は、ドラムブレーキに分類される。
【0114】
前進駆動力の伝わり方を説明する。「前進駆動力」は、鞍乗型車両1を前方に移動させるための力である。「前進駆動力」は、回転動力である。パワーユニット11は、前進駆動力を発生する。具体的には、エンジンは、前進駆動力を発生する。
【0115】
パワーユニット11は、前進駆動力をクラッチハブ31に伝達する。具体的には、トランスミッションは、エンジンからクラッチに前進駆動力を伝達する。トランスミッションがエンジンからクラッチに前進駆動力を伝達するとき、トランスミッションは前進駆動力の回転速度を変えてもよい。クラッチは、接続状態と遮断状態の間で切り替わる。クラッチが接続状態にあるとき、クラッチはトランスミッションを駆動軸21に接続し、かつ、パワーユニット11は駆動軸21に前進駆動力を伝達する。クラッチが遮断状態にあるとき、クラッチはトランスミッションを駆動軸21から遮断し、かつ、パワーユニット11は駆動軸21に前進駆動力を伝達しない。パワーユニット11が駆動軸21に前進駆動力を伝達するとき、駆動軸21は第1軸線22回りに回転する。駆動軸21は第1軸線22回りに回転するとき、駆動軸21はクラッチハブ31に前進駆動力を伝達する。具体的には、駆動軸21が第1軸線22回りに回転するとき、クラッチハブ31は駆動軸21と一体に回転する。クラッチハブ31は、第1軸線22回りに回転する。クラッチハブ31は、正転方向D1に回転する。
【0116】
クラッチハブ31は、ダンパ51を介して、リアホイール61に前進駆動力を伝達する。リアホイール61は、ダンパ51を介して、クラッチハブ31によって第1軸線22回りに回転駆動される。具体的には、クラッチハブ31が回転するとき、クラッチハブ31は、ダンパ51を介して、リアホイール61を回転させる。リアホイール61は、クラッチハブ31と実質的に一体に、回転する。リアホイール61は、第1軸線22回りに回転する。リアホイール61は、正転方向D1に回転する。鞍乗型車両1は、前方に移動する。
【0117】
制動力の伝わり方を説明する。「制動力」は、リアホイール61を制動するための力である。制動機構81は、制動力を発生する。
【0118】
制動機構81は、制動力をリアホイール61に伝達する。制動機構81は、リアホイール61の回転を制動する。例えば、リアホイール61が正転方向D1に回転しているとき、制動機構81は正転方向D1におけるリアホイール61の回転速度を強制的に低下させる。鞍乗型車両1は、減速する。
【0119】
リアホイール61は、さらに、ダンパ51を介して、クラッチハブ31に制動力を伝達する。具体的には、リアホイール61を制動するとき、リアホイール61は、ダンパ51を介して、クラッチハブ31の回転を制動する。リアホイール61の回転速度の低下に追従するように、クラッチハブ31の回転速度は低下する。
【0120】
2.クラッチハブ31の詳細
図2-4を参照する。図3は、クラッチハブ31の斜視図である。図4は、クラッチハブ31の側面図である。
【0121】
クラッチハブ31は、ボス32を備える。ボス32は、駆動軸21に支持される。
【0122】
ボス32は、第1軸線22に沿って延びる筒形状を有する。ボス32は、駆動軸21の径方向外方に配置される。駆動軸21は、ボス32を貫通する。ボス32は、駆動軸21に取り付けられる。ボス32は、駆動軸21に対して回転不能である。ボス32は、駆動軸21と一体に回転する。ボス32は、第1軸線22回りに回転する。ボス32と駆動軸21は、例えば、セレーション嵌合によって、互いに連結される。
【0123】
クラッチハブ31は、フランジ33を備える。フランジ33は、ボス32に支持される。
【0124】
フランジ33は、環形状を有する。フランジ33は、ボス32の径方向外方に配置される。フランジ33は、ボス32に接続される。フランジ33は、ボス32から延びる。フランジ33は、径方向外方に延びる。フランジ33は、第1軸線22の半径方向に延びる。
【0125】
クラッチハブ31は、複数の爪41を備える。爪41の数は、例えば、4つである。爪41は、フランジ33に支持される。爪41は、ダンパ51と接触する。
【0126】
爪41は平板形状を有する。複数の爪41は、例えば、互いに同じ形状を有する。複数の各爪41は、例えば、互いに同じサイズを有する。爪41は、フランジ33に接続される。爪41は、フランジ33から延びる。爪41は、幅方向Yに延びる。爪41は、フランジ33に対して実質的に垂直である。さらに、爪41は、径方向に延びる。爪41は、第1軸線22の半径方向に延びる。
【0127】
図4を参照する。爪41は、第1軸線22の径方向外方に配置される。爪41は、車両側面視において、ボス32の径方向外方に配置される。複数の爪41は、車両側面視において、第1軸線22を中心とする円周上に並ぶ。複数の爪41は、第1軸線22回りに等間隔で配列される。
【0128】
4つの爪41を区別するとき、各爪41を、「第1爪41a」、「第2爪41b」、「第3爪41c」および「第4爪41d」と呼ぶ。
【0129】
第2爪41bは、第1爪41aから正転方向D1に90度、回転した位置に配置される。第3爪41cは、第2爪41bから正転方向D1に90度、回転した位置に配置される。第4爪41dは、第3爪41cから正転方向D1に90度、回転した位置に配置される。第1爪41aは、第4爪41dから正転方向D1に90度、回転した位置に配置される。
【0130】
第3爪41cは、車両側面視において、第1軸線22に関して、第1爪41aと点対称な位置に配置される。第4爪41dは、車両側面視において、第1軸線22に関して、第2爪41bと点対称な位置に配置される。
【0131】
各爪41は、正転方向D1における前面42を有する。各前面42は、正転方向D1を向く。各爪41は、正転方向D1における背面43を有する。各背面43は、前面42とは反対側に位置する。各背面43は、正転方向D1とは逆の方向を向く。
【0132】
4つの前面42を区別するとき、各前面42を、「第1前面42a」、「第2前面42b」、「第3前面42c」および「第4前面42d」と呼ぶ。4つの背面43を区別するとき、各背面43を、「第1背面43a」、「第2背面43b」、「第3背面43c」および「第4背面43d」と呼ぶ。
【0133】
3.リアホイール61の詳細
図2、5、6を参照する。図5は、リアホイール61の斜視図である。図6は、リアホイール61の側面図である。
【0134】
リアホイール61は、ハブ62を備える。ハブ62は、駆動軸21とボス32に支持される。
【0135】
ハブ62は、筒形状を有する。ハブ62は、駆動軸21の径方向外方に配置される。駆動軸21は、ハブ62を貫通する。上述したベアリング72は、駆動軸21とハブ62の間に設置される。ハブ62は、駆動軸21に対して回転可能である。
【0136】
ハブ62の一部は、ボス32の径方向外方に位置する。ボス32の一部は、駆動軸21とハブ62の間に差し込まれる。上述したベアリング73は、ボス32とハブ62の間に設置される。ハブ62は、ボス32に対して回転可能である。
【0137】
リアホイール61は、スポーク65とリム66を備える。スポーク65は、ハブ62に支持される。スポーク65は、径方向外方に延びる。スポーク65は、ハブ62から放射状に延びる。リム66は、スポーク65に支持される。リム66は、リアホイール61の外縁に位置する。リム66は、リング形状を有する。リム66は、リアタイヤ69を保持する。
【0138】
リアホイール61は、ハウジング63を備える。ハウジング63は、ダンパ51を支持する。ハウジング63は、ダンパ51を収容する。ハウジング63は、例えば、ハブ62の一部である。
【0139】
ハウジング63は、内周壁63aと外周壁63bを備える。内周壁63aは、第1軸線22に沿って延びる筒形状を有する。外周壁63bは、第1軸線22に沿って延びる筒形状を有する。内周壁63aは、駆動軸21の径方向外方に配置される。外周壁63bの径は、内周壁63aの径よりも大きい。外周壁63bは、内周壁63aの径方向外方に配置される。
【0140】
図5、6を参照する。ハウジング63は、内周壁63aと外周壁63bに加えて、複数の隔壁63cを備える。隔壁63cは、リブとも呼ばれる。隔壁63cの数は、例えば、4つである。各隔壁63cは、径方向に延びる。各隔壁63cは、第1軸線22の半径方向に延びる。例えば、各隔壁63cは、内周壁63aから外周壁63bに延びる。隔壁63cは、さらに、幅方向Yに延びる。
【0141】
リアホイール61は、複数の凹所Eを有する。凹所Eの数は、例えば、4つである。各凹所Eは、ダンパ51を設置するための空間である。
【0142】
凹所Eは、ハウジング63によって形成される。具体的には、凹所Eは、内周壁63aと外周壁63bと隔壁63cによって形成される。凹所Eは、内周壁63aの径方向外方に位置する。凹所Eは、外周壁63bの径方向内方に位置する。複数の凹所Eは、隔壁63cによって、互いに仕切られる。複数の凹所Eは、車両側面視において、第1軸線22を中心とする円周上に並ぶ。各凹所Eは、車両側面視において、実質的に扇形形状を有する。
【0143】
4つの凹所Eを区別するとき、各凹所Eを、「第1凹所Ea」、「第2凹所Eb」、「第3凹所Ec」および「第4凹所Ed」と呼ぶ。
【0144】
第2凹所Ebは、第1凹所Eaよりも小さい。第4凹所Edは、第3凹所Ecよりも小さい。
【0145】
第3凹所Ecは、例えば、第1凹所Eaと同じ形状を有する。第4凹所Edは、例えば、第2凹所Ebと同じ形状を有する。
【0146】
図2、5、6を参照する。リアホイール61は、ブレーキドラム64を備える。ブレーキドラム64は、制動機構81に連結される。ブレーキドラム64は、第1軸線22に沿って延びる筒形状を有する。
【0147】
図2を参照する。ブレーキドラム64は、例えば、ハブ62の一部である。例えば、ハウジング63とブレーキドラム64は、幅方向Yに並ぶ。例えば、ブレーキドラム64は、ハウジング63の左方に位置する。
【0148】
4.制動機構81の詳細
図2を参照する。制動機構81は、ブレーキシュー82とアンカーピン83とカム84とブレーキレバー85を備える。ブレーキシュー82は、ブレーキドラム64の径方向内方に配置される。アンカーピン83は、ブレーキシュー82を支持する。ブレーキシュー82は、アンカーピン82回りに揺動可能である。カム84は、ブレーキシュー82をアンカーピン83回りに揺動させて、ブレーキシュー82をブレーキドラム64に接触させるように構成される。ブレーキレバー85は、カム84に連結される。ブレーキレバー85が操作されたとき、カム84はブレーキシュー82をブレーキドラム64に接触させる。ブレーキシュー82がブレーキドラム64に接触したとき、リアホイール61は制動される。
【0149】
5.ダンパ51の詳細
図7は、クラッチハブ31とダンパ51とリアホイール61の分解斜視図である。図7では、クラッチハブ31は、駆動軸21から取り外されている。
【0150】
ダンパ51は、ハウジング63に支持される。クラッチハブ31が駆動軸21に取り付けられるとき、ダンパ51はフランジ33と向かい合う。
【0151】
ダンパ51は、複数のダンパ片52を含む。ダンパ片52の数は、例えば、4つである。ダンパ片52は、凹所Eに収容される。例えば、ダンパ片52は、凹所Eに圧入される。例えば、ダンパ片52は、内周壁63a、外周壁63bおよび隔壁63cと接触する。
【0152】
ダンパ51は、複数の孔Fを有する。孔Fは、ダンパ片52に形成される。孔Fは、爪41を設置するための空間である。
【0153】
4つのダンパ片52を区別するとき、各ダンパ片52を、「第1ダンパ片52a」、「第2ダンパ片52b」、「第3ダンパ片52c」および「第4ダンパ片52d」と呼ぶ。
【0154】
第1ダンパ片52aは、第1凹所Eaに配置される。同様に、第2、第3、第4ダンパ片52b、52c、52dは、第2、第3、第4凹所Eb、Ec、Edに配置される。
【0155】
4つの孔Fを区別するとき、各孔Fを、「第1孔Fa」、「第2孔Fb」、「第3孔Fc」および「第4孔Fd」と呼ぶ。
【0156】
第1孔Faは、第1ダンパ片52aに形成される。同様に、第2-第4孔Fb-Fdは、第2-第4ダンパ片52b-52dに形成される。
【0157】
図8は、ダンパ51の側面図である。複数のダンパ片52は、互いに分離されている。複数のダンパ片52は、車両側面視において、第1軸線22を中心とする円周上に並ぶ。各ダンパ片52は、車両側面視において、実質的に扇形形状を有する。
【0158】
第1ダンパ片52aは、車両側面視において、第1凹所Eaと実質的に同じ形状を有する。同様に、第2-第4ダンパ片52b-52dは、車両側面視において、第2-第4凹所Eb-53dと実質的に同じ形状を有する。
【0159】
第2ダンパ片52bは、第1ダンパ片52aよりも小さい。第4ダンパ片52dは、第3ダンパ片52cよりも小さい。
【0160】
第3ダンパ片52cは、例えば、第1ダンパ片52aと同じ形状を有する。第4ダンパ片52dは、例えば、第2ダンパ片52bと同じ形状を有する。
【0161】
孔Fは、幅方向Yに延びる。孔Fは、さらに、径方向に延びる。孔Fは、第1軸線22の半径方向に延びる。
【0162】
図8、9を参照する。図9は、第1ダンパ片52aの斜視図である。第1ダンパ片52aについて説明する。第1ダンパ片52aは、第1前ブロック53aを備える。第1前ブロック53aは、正転方向D1において第1孔Faの前方に配置される。第1前ブロック53aの全部は、正転方向D1において第1孔Faの全部よりも、前方に配置される。第1前ブロック53aは、車両側面視において、実質的に扇形形状を有する。さらに、第1前ブロック53aは、幅方向Yに延びる。第1前ブロック53aは、第1孔Faと接する。
【0163】
第1ダンパ片52aは、第1後ブロック54aと第1連結部55aを備える。第1後ブロック54aは、正転方向D1において第1前ブロック53aの後方に配置される。第1後ブロック54aの全部は、正転方向D1において第1前ブロック53aの全部よりも、後方に配置される。第1後ブロック54aは、正転方向D1において第1孔Faの後方に配置される。第1連結部55aは、第1前ブロック53aと第1後ブロック54aを連結する。
【0164】
図8、9は、仮想線Ja、Kaを示す。仮想線Jaは、第1前ブロック53aと第1連結部55aの間の境界を示す。仮想線Kaは、第1連結部55aと第1後ブロック54aの間の境界を示す。
【0165】
第1孔Faは、第1ダンパ片52aを貫通する。第1孔Faは、第1前ブロック53aと第1後ブロック54aと第1連結部55aによって区画される。第1孔Faは、正転方向D1において、第1前ブロック53aと第1後ブロック54aの間に位置する。第1孔Faは、正転方向D1において、第1前ブロック53aの後方で、第1後ブロック54aの前方に位置する。
【0166】
第1前ブロック53aと第1後ブロック54aと第1連結部55aは、一体に成形される。第1前ブロック53aと第1後ブロック54aと第1連結部55aは、互いに分離不能である。
【0167】
第1前ブロック53aと第1後ブロック54aと第1連結部55aは、第1凹所Eaに収容される。
【0168】
図8、10を参照する。図10は、第2ダンパ片52bの斜視図である。第2ダンパ片52bについて説明する。第2ダンパ片52aは、第2前ブロック53bを備える。第2前ブロック53bは、正転方向D1において第2孔Fbの前方に配置される。第2前ブロック53bの全部は、正転方向D1において第2孔Fbの全部よりも、前方に配置される。第2前ブロック53bは、車両側面視において、実質的に扇形形状を有する。さらに、第2前ブロック53bは、幅方向Yに延びる。第2前ブロック53bは、第2孔Fbと接する。
【0169】
第2ダンパ片52aは、第2後ブロック54bと第2連結部55bを備える。第2後ブロック54bは、正転方向D1において第2前ブロック53bの後方に配置される。第2後ブロック54bの全部は、正転方向D1において第2前ブロック53bの全部よりも、後方に配置される。第2後ブロック54bは、正転方向D1において第2孔Fbの後方に配置される。第2連結部55bは、第2前ブロック53bと第2後ブロック54bを連結する。
【0170】
図8は、仮想線Jb、Kbを示す。仮想線Jbは、第2前ブロック53bと第2連結部55bの間の境界を示す。仮想線Kbは、第2連結部55bと第2後ブロック54bの間の境界を示す。
【0171】
第2孔Fbは、第2ダンパ片52bを貫通する。第2孔Fbは、第2前ブロック53bと第2後ブロック54bと第2連結部55bによって区画される。第2孔Fbは、正転方向D1において、第2前ブロック53bと第1後ブロック54aの間に位置する。第2孔Fbは、正転方向D1において、第2前ブロック53bの後方で、第2後ブロック54bの前方に位置する。
【0172】
第2前ブロック53bと第2後ブロック54bと第2連結部55bは、一体に成形される。第2前ブロック53bと第2後ブロック54bと第2連結部55bは、互いに分離不能である。
【0173】
第2前ブロック53bと第2後ブロック54bと第2連結部55bは、第2凹所Ebに収容される。
【0174】
第1前ブロック53aと第2前ブロック53bを比較する。第1、第2前ブロック53a、53bは、弾性体である。第1、第2前ブロック53a、53bは、例えば、ゴム、樹脂およびエラストマの少なくともいずれかからなる。例えば、第2前ブロック53bの組成は、第1前ブロック53aの組成と同じである。例えば、第2前ブロック53bの材質は、第1前ブロック53aの材質と同じである。
【0175】
第1、第2前ブロック53a、53bは、変形可能である。第1、第2前ブロック53a、53bは、圧縮変形可能である。第1、第2前ブロック53a、53bは、正転方向D1において、収縮し、かつ、伸張する。第1、第2前ブロック53a、53bが圧縮されるとき、第1、第2前ブロック53a、53bは復元力を発揮する。第1、第2前ブロック53a、53bが正転方向D1において収縮するとき、第1、第2前ブロック53a、53bは復元力を発揮する。
【0176】
第2前ブロック53bは、第1前ブロック53aとは異なる形状を有する。第2前ブロック53bは、第1前ブロック53aよりも小さい。第2前ブロック53bは、第1前ブロック53aの形状よりも小さな形状を有する。第2前ブロック53bは、第1前ブロック53aのサイズよりも小さなサイズを有する。第2前ブロック53bは、第1前ブロック53aの容量よりも小さな容量を有する。
【0177】
車両側面視において、第2前ブロック53bは、第1前ブロック53aの面積よりも小さい面積を有する。車両側面視において、第2前ブロック53bの面積は、第1前ブロック53aの面積の2分の1以下である。
【0178】
図8は、長さLa、Lbを示す。長さLaは、第1軸線22の周方向における第1前ブロック53aの長さである。長さLbは、第1軸線22の周方向における第2前ブロック53bの長さである。長さLbは、長さLaよりも小さい。長さLbは、長さLaの2分の1以下である。
【0179】
図9は、長さMaを示す。長さMaは、第1前ブロック53aの幅方向Yの長さである。図10は、長さMbを示す。長さMbは、第2前ブロック53bの幅方向Yの長さである。長さMは、長さMと等しい。
【0180】
このため、第2前ブロック53bは、第1前ブロック53aの体積よりも小さな体積を有する。例えば、第2前ブロック53bの体積は、第1前ブロック53aの体積の2分の1以下である。
【0181】
したがって、第2前ブロック53bは、第1前ブロック53aの特性と異なる特性を有する。具体的には、第2前ブロック53bは、第1前ブロック53aよりも硬い。言い換えれば、第2前ブロック53bは、第1前ブロック53aの弾性率よりも大きい弾性率を有する。逆に、第1前ブロック53aは、第2前ブロック53bよりも柔らかい。言い換えれば、第1前ブロック53aの弾性率は、第2前ブロック53bの弾性率よりも、小さい。
【0182】
第1孔Faと第2孔Fbを比較する。第2孔Fbは、第1孔Faとは異なる形状を有する。第2孔Fbは、第1孔Faよりも大きい。
【0183】
図8は、長さNa、Nbを示す。長さNaは、第1軸線22の周方向における第1孔Faの長さである。長さNbは、第1軸線22の周方向における第2孔Fbの長さである。長さNbは、長さNaよりも大きい。
【0184】
第3ダンパ片52cについて説明する。第3ダンパ片52cは、第1ダンパ片52aと同じ形状を有する。第3ダンパ片52cは、第1ダンパ片52aと同じ構造を有する。具体的には、第3ダンパ片52cは、第3前ブロック53cと第3後ブロック54cと第3連結部55cを備える。第3前ブロック53c、第3後ブロック54cおよび第3連結部55cはそれぞれ、第1前ブロック53a、第1後ブロック54aおよび第1連結部55aに対応する。第3前ブロック53cは、弾性体である。第3前ブロック53cは、正転方向D1において、収縮し、かつ、伸張する。例えば、第3前ブロック53cの組成は、第1前ブロック53aの組成と同じである。例えば、第3前ブロック53cは、第1前ブロック53aと同じ形状を有する。例えば、第3前ブロック53cは、第1前ブロック53aの特性と同じ特性を有する。例えば、第3孔Fcは、第1孔Faと同じ形状を有する。
【0185】
第4ダンパ片52dについて説明する。第4ダンパ片52dは、第2ダンパ片52bと同じ形状を有する。第4ダンパ片52dは、第2ダンパ片52bと同じ構造を有する。具体的には、第4ダンパ片52dは、第4前ブロック53dと第4後ブロック54dと第4連結部55dを備える。第4前ブロック53d、第4後ブロック54dおよび第4連結部55dはそれぞれ、第2前ブロック53b、第2後ブロック54bおよび第2連結部55bに対応する。第4前ブロック53dは、弾性体である。第4前ブロック53dは、正転方向D1において、収縮し、かつ、伸張する。例えば、第4前ブロック53dの組成は、第2前ブロック53bの組成と同じである。例えば、第4前ブロック53dは、第2前ブロック53bと同じ形状を有する。例えば、第4前ブロック53dは、第2前ブロック53bの特性と同じ特性を有する。例えば、第4前ブロック53dは、第3前ブロック53cよりも小さい。例えば、第4前ブロック53dは、第3前ブロック53cよりも硬い。例えば、第4孔Fdは、第2孔Fbと同じ形状を有する。例えば、第4孔Fdは、第3孔Fcよりも大きい。
【0186】
第1-第4前ブロック53a-53aは、車両側面視において、第1軸線22を中心とする円周上に並ぶ。
【0187】
第3前ブロック53cは、車両側面視において、第1軸線22に関して、第1前ブロック53aと点対称な位置に配置される。第3孔Fcは、車両側面視において、第1軸線22に関して、第1孔Faと点対称な位置に配置される。
【0188】
第4前ブロック53dは、車両側面視において、第1軸線22に関して、第2前ブロック53bと点対称な位置に配置される。第4孔Fdは、車両側面視において、第1軸線22に関して、第2孔Fbと点対称な位置に配置される。
【0189】
6.クラッチハブ31とダンパ51の関係
図11図12は、爪41aとダンパ51の側面図である。爪41は、孔Fに挿入される。具体的には、第1爪41aは、第1孔Faに挿入される。同様に、第2-第4爪41b-1dは、第2-第4孔Fb-Fdに挿入される。
【0190】
第1前ブロック53aは、正転方向D1において、第1爪41aの前方に配置される。第1前ブロック53aの全部は、正転方向D1において、第1爪41aの全部よりも、前方に配置される。第1前ブロック53aは、第1爪41aと向かい合う。具体的には、第1前ブロック53aは、正転方向D1において、第1前面42aの前方に配置される。第1前ブロック53aの全部は、正転方向D1において、第1前面42aの全部よりも、前方に配置される。第1前ブロック53aは、第1前面42aと向かい合う。
【0191】
第2前ブロック53bは、正転方向D1において、第2爪41bの前方に配置される。第2前ブロック53bの全部は、正転方向D1において、第2爪41bの全部よりも、前方に配置される。第2前ブロック53bは、第2爪41bと向かい合う。具体的には、第2前ブロック53bは、正転方向D1において、第2前面42bの前方に配置される。第2前ブロック53bの全部は、正転方向D1において、第2前面42bの全部よりも、前方に配置される。第2前ブロック53bは、第2前面42bと向かい合う。
【0192】
同様に、第3前ブロック53cは、正転方向D1において、第3爪41cの前方に配置される。第4前ブロック53dは、正転方向D1において、第4爪41dの前方に配置される。
【0193】
第1後ブロック54aは、正転方向D1において、第1爪41aの後方に配置される。第1後ブロック54aの全部は、正転方向D1において、第1爪41aの全部よりも、後方に配置される。第1後ブロック54aは、第1爪41aと向かい合う。具体的には、第1後ブロック54aは、正転方向D1において、第1背面43aの後方に配置される。第1後ブロック54aの全部は、正転方向D1において、第1背面43aの全部よりも、後方に配置される。第1後ブロック54aは、第1背面43aと向かい合う。
【0194】
同様に、第2後ブロック54bは、正転方向D1において、第2爪41bの後方に配置される。第3後ブロック54cは、正転方向D1において、第3爪41cの後方に配置される。第4後ブロック54dは、正転方向D1において、第4爪41dの後方に配置される。
【0195】
車両側面視において、第1孔Faは、第1爪41aと実質的に同じ大きさを有する。このため、第1前ブロック53aは、第1爪41aと接触する。第1後ブロック54aは、第1爪41aと接触する。具体的には、第1前ブロック53aは、第1前面42aと接触する。第1後ブロック54aは、第1背面43aと接触する。
【0196】
但し、第1前ブロック53aは、第1背面43bと接触しない。第1後ブロック54aは、第1前面42aと接触しない。
【0197】
同様に、車両側面視において、第3孔Fcは、第3爪41cと実質的に同じ大きさを有する。このため、第3前ブロック53cは、第3爪41cと接触する。第3後ブロック54cは、第3爪41cと接触する。
【0198】
車両側面視において、第2孔Fbは、第2爪41bよりも大きい。このため、第2前ブロック53bは、第2爪41bと接離可能である。図11では、第2前ブロック53bは、第2爪41bから離れている。図12では、第2前ブロック53bは、第2爪41bと接触する。具体的には、第2前ブロック53bは、第2前面42bと接離可能である。図11では、第2前ブロック53bは、第2前面42bから離れている。図12では、第2前ブロック53bは、第2前面42bと接触している。
【0199】
同様に、車両側面視において、第4孔Fdは、第4爪41dよりも大きい。このため、第4前ブロック53dは、第4爪41dと接離可能である。図11では、第4前ブロック53dは、第4爪41dから離れている。図12では、第4前ブロック53dは、第4爪41dと接触している。
【0200】
上述の通り、クラッチハブ31とダンパ51の間における接触状態は、変わる。クラッチハブ31とダンパ51の間における接触状態は、複数の態様を含む。そこで、クラッチハブ31とダンパ51に関し、「第1状態」と「第2状態」を、次のように定義する。クラッチハブ31とダンパ51が第1状態にあるとき、第1前ブロック53aは第1爪41aと接触しており、かつ、第2前ブロック53bは第2爪41bから離れている。さらに、クラッチハブ31とダンパ51が第1状態にあるとき、第3前ブロック53cは第3爪41cと接触しており、かつ、第4前ブロック53dは第4爪41dから離れている。
【0201】
クラッチハブ31とダンパ51が第2状態にあるとき、第1前ブロック53aは第1爪41aと接触しており、かつ、第2前ブロック53bは第2爪41bと接触している。さらに、クラッチハブ31とダンパ51が第2状態にあるとき、第3前ブロック53cは第3爪41cと接触しており、かつ、第4前ブロック53dは第4爪41dと接触している。
【0202】
図11を参照する。クラッチハブ31とダンパ51が第1状態にあるとき、第2爪41bと第2前ブロック53bは、隙間Gbを形成する。隙間Gbは、第2孔Fbの一部である。隙間Gbは、空きスペース(unoccupied space)である。隙間Gbは、正転方向D1において第2爪41bと第2前ブロック53bの間に位置する。隙間Gbは、正転方向D1において第2爪41bの前方で、かつ、正転方向D1において第2前ブロック53bの後方に位置する。隙間Gbは、第2爪41bと第2前ブロック53bを隔てる。
【0203】
同様に、クラッチハブ31とダンパ51が第1状態にあるとき、第4爪41dと第4前ブロック53dは、隙間Gdを形成する。
【0204】
図12を参照する。クラッチハブ31とダンパ51が第2状態にあるとき、第2爪41bと第2前ブロック53bは、隙間Gbを形成しない。クラッチハブ31とダンパ51が第2状態にあるとき、第2前ブロック53bが第2爪41bと接触しているからである。
【0205】
同様に、クラッチハブ31とダンパ51が第2状態にあるとき、第4爪41dと第4前ブロック53dは、隙間Gdを形成しない。
【0206】
クラッチハブ31とダンパ51は第1状態と第2状態の間で切り替わる。クラッチハブ31とダンパ51が第1状態から第2状態に切り替わるとき、隙間Gb、Gdは消失する。クラッチハブ31とダンパ51が第1状態から第2状態に切り替わるとき、隙間Gb、Gdは発生する。
【0207】
例えば、リアホイール61に対するクラッチハブ31の動きに応じて、クラッチハブ31とダンパ51は第1状態と第2状態の間で切り替わる。
【0208】
例えば、相対回転角度θに応じて、クラッチハブ31とダンパ51は第1状態と第2状態の間で切り替わる。相対回転角度θは、正転方向D1におけるリアホイール61に対するクラッチハブ31の回転角度である。相対回転角度θは、「正転方向D1におけるリアホイール61に対するクラッチハブ31のねじれ角度」とも呼ばれる。
【0209】
例えば、相対回転角度θは、第1軸線22回りのリアホイール61の角度位置と、第1軸線22回りのクラッチハブ31の角度位置の差である。
【0210】
例えば、相対回転角度θは、仮想直線Pと仮想直線Qのなす角度である。ここで、仮想直線Pは、第1軸線22回りのリアホイール61の角度位置を示す。仮想直線Qは、第1軸線22回りのクラッチハブ31の角度位置を示す。仮想直線P、Qはそれぞれ、車両側面視において、第1軸線22を通る。図11では相対回転角度θの図示を省略するが、図11では、相対回転角度θは、例えば、0度である。図12では、相対回転角度θは、0度よりも大きい。
【0211】
クラッチハブ31がリアホイール61に対して正転方向D1に移動するとき、相対回転角度θは増加する。クラッチハブ31がリアホイール61に対して正転方向D1とは逆の方向に移動するとき、相対回転角度θは減少する。
【0212】
クラッチハブ31とダンパ51が第2状態にあるときの相対回転角度θは、クラッチハブ31とダンパ51が第1状態にあるときの相対回転角度θよりも、大きい。
【0213】
相対回転角度θが閾値θth未満であるとき、クラッチハブ31とダンパ51は第1状態にある。相対回転角度θが閾値θth以上であるとき、クラッチハブ31とダンパ51は第2状態にある。閾値θthは、第2爪41bと第2孔Fbによって定義される角度である。閾値θthは、第4爪41dと第4孔Fdによって定義される角度である。
【0214】
閾値θthは、例えば、3度以上、かつ、5度以下である。閾値θthは、例えば、4度である。
【0215】
例えば、隙間Gb、Gdは、車両側面視において、実質的に扇形形状を有する。例えば、図11の隙間Gbは、例えば、閾値θthと実質的に等しい中心角を有する。例えば、図11の隙間Gdは、例えば、閾値θthと実質的に等しい中心角を有する。
【0216】
なお、クラッチハブ31とダンパ51が第1状態にあるとき、第1後ブロック54aは第1爪41aと接触しており、かつ、第2後ブロック54bは第2爪41bと接触している。さらに、クラッチハブ31とダンパ51が第1状態にあるとき、第3後ブロック54cは第3爪41cと接触しており、かつ、第4後ブロック54dは第4爪41dと接触している。
【0217】
クラッチハブ31とダンパ51が第2状態にあるとき、第1後ブロック54aは第1爪41aから離れており、かつ、第2後ブロック54bは第2爪41bから離れている。さらに、クラッチハブ31とダンパ51が第2状態にあるとき、第3後ブロック54cは第3爪41cから離れており、かつ、第4後ブロック54dは第4爪41dから離れている。
【0218】
7.動作例
鞍乗型車両1は、例えば、発進し、その後、走行し、その後、停止する。鞍乗型車両1が走行しているとき、リアホイール61は制動される。
【0219】
鞍乗型車両1が発進するとき、クラッチハブ31とダンパ51は、第1状態にある。鞍乗型車両1が走行するとき、クラッチハブ31とダンパ51は、第2状態にある。リアホイール61を制動とき、クラッチハブ31とダンパ51は、第2状態にある。鞍乗型車両1が走行を停止するとき、クラッチハブ31とダンパ51は、第1状態にある。鞍乗型車両1が停止した状態にあるとき、クラッチハブ31とダンパ51は、第1状態にある。このように、クラッチハブ31とダンパ51は、第1状態と第2状態の間で、切り替わる。
【0220】
7-1.鞍乗型車両1が発進するときの動作例
「鞍乗型車両1が発進する」とは、鞍乗型車両1鞍乗型車両が停止した状態から鞍乗型車両1が前方に移動し始めることである。
【0221】
鞍乗型車両1が停止した状態にあるとき、パワーユニット11はクラッチハブ31に前進駆動力を伝達しない。鞍乗型車両1が停止した状態にあるとき、パワーユニット11のクラッチは、遮断状態にある。鞍乗型車両1が停止した状態にあるとき、パワーユニット11のクラッチは、遮断状態に保たれる。鞍乗型車両1が停止した状態にあるとき、クラッチハブ31とリアホイール61は第1軸線22回りに回転していない。鞍乗型車両1が停止した状態にあるとき、クラッチハブ31とリアホイール61は静止した状態に保たれる。
【0222】
鞍乗型車両1が停止した状態にあるとき、クラッチハブ31とダンパ51は第1状態にある。言い換えれば、クラッチハブ31は第1軸線22回りに回転していないとき、クラッチハブ31とダンパ51は第1状態にある。鞍乗型車両1が停止した状態にあるとき、相対回転角度θは、例えば、0度である。
【0223】
よって、鞍乗型車両1が発進するとき、クラッチハブ31とダンパ51は第1状態にある。
【0224】
鞍乗型車両1が発進するとき、鞍乗型車両1の各要素は次のように動作する。パワーユニット11のクラッチは、遮断状態から接続状態に切り替わる。パワーユニット11は、前進駆動力をクラッチハブ31に伝達し始める。クラッチハブ31は正転方向D1に回転し始める。クラッチハブ31はリアホイール61に前進駆動力を伝達し始める。リアホイール61は、正転方向D1に回転し始める。
【0225】
便宜上、図11を参照する。第1-第4爪41a-41dは、正転方向D1に回転し始める。第1、第3爪41a、41cは、第1、第3前ブロック53a、53cを正転方向D1に押圧し始める。第2、第4爪41b、41dは、第2、第4前ブロック53b、53dを押圧しない。第2、第4前ブロック53b、53dは、例えば、自然状態にある。第1、第3前ブロック53a、53cは、リアホイール61を正転方向D1に押圧し始める。第1、第3前ブロック53a、53cは、例えば、隔壁63cを正転方向D1に押圧し始める。このように、クラッチハブ31とダンパ51が第1状態にあるとき、第1、第3前ブロック53a、53cは、クラッチハブ31からリアホイール61に前進駆動力を伝達する。クラッチハブ31とダンパ51が第1状態にあるとき、第2、第4前ブロック53b、53dは、クラッチハブ31からリアホイール61に前進駆動力を伝達しない。
【0226】
なお、第1-第4後ブロック54a-54dは、常に、クラッチハブ31からリアホイール61に前進駆動力を伝達しない。第1-第4後ブロック54a-54dがクラッチハブ31からリアホイール61に前進駆動力を伝達することは、不可能である。同様に、第1-第4連結部55a-55dは、常に、クラッチハブ31からリアホイール61に前進駆動力を伝達しない。第1-第4連結部55a-55dがクラッチハブ31からリアホイール61に前進駆動力を伝達することは、不可能である。
【0227】
鞍乗型車両1が発進するとき、鞍乗型車両1は振動することがある。鞍乗型車両が発進するときにおける鞍乗型車両1の振動を、特に「発進振動」と呼ぶ。発進振動は、例えば、クラッチハブ31の回転トルクの変動に起因する。クラッチハブ31とダンパ51が第1状態にあるとき、第1、第3前ブロック53a、53cは、クラッチハブ31からリアホイール61に発進振動を伝達する。クラッチハブ31とダンパ51が第1状態にあるとき、第2、第4前ブロック53b、53dは、クラッチハブ31からリアホイール61に発進振動を伝達しない。
【0228】
第1、第3前ブロック53a、53cは、第1、第3爪41a、41cによって、変形し始める。第1、第3前ブロック53a、53cは、第1、第3爪41a、41cによって、正転方向D1に圧縮され始める。第1、第3前ブロック53a、53cは、正転方向D1に収縮し始める。第1-第4爪41a-41dは、第1-第4前ブロック53a-53dに対して、正転方向D1に移動し始める。すなわち、クラッチハブ31は、リアホイール61に対して正転方向D1に移動し始める。相対回転角度θは、0度から増加する。隙間Gb、Gdは、縮小する。第2、第4爪41b、41dは、第2、第4前ブロック53b、53dに近づく。
【0229】
7-2.鞍乗型車両1が走行するときの動作例
「鞍乗型車両1が走行している」とは、鞍乗型車両1の発進を除いて、鞍乗型車両1が前方に移動することである。「鞍乗型車両1が走行している」とは、鞍乗型車両1が発進した後に、鞍乗型車両1が前方に移動することである。
【0230】
鞍乗型車両1が走行するとき、鞍乗型車両1の各要素は次のように動作する。パワーユニット11のクラッチは、接続状態にある。パワーユニット11は、前進駆動力をクラッチハブ31に伝達する。クラッチハブ31は正転方向D1に回転する。クラッチハブ31はリアホイール61に前進駆動力を伝達する。リアホイール61は、正転方向D1に回転する。
【0231】
便宜上、図12を参照する。鞍乗型車両1が発進した後、クラッチハブ31は、リアホイール61に対して正転方向D1に、さらに移動する。相対回転角度θは、さらに増加する。やがて、相対回転角度θは閾値θth以上になる。クラッチハブ31とダンパ51は、第1状態から第2状態に切り替わる。より詳しくは、鞍乗型車両1が発進した後に、クラッチハブ31とダンパ51は、第1状態から第2状態に切り替わる。鞍乗型車両1が走行しているとき、クラッチハブ31とダンパ51は、第1状態から第2状態に切り替わる。第2、第4爪41b、41dは、第2、第4前ブロック53b、53dに接触する。隙間Gb、Gdは、消失する。
【0232】
第1-第4爪41a-41dは、正転方向D1に回転している。第1-第4爪41a-41dは、正転方向D1に、第1-第4前ブロック53a-53dを押圧する。第1-第4前ブロック53a-53dは、正転方向D1に、リアホイール61(隔壁63c)を押圧する。このように、クラッチハブ31とダンパ51が第2状態にあるとき、第1-第4前ブロック53a-53dは、クラッチハブ31からリアホイール61に前進駆動力を伝達する。
【0233】
第1、第3前ブロック53a、53cは、第1、第3爪41a、41cによって、さらに変形する。第1、第3前ブロック53a、53cは、第1、第3爪41a、41cによって、正転方向D1にさらに圧縮される。第1、第3前ブロック53a、53cは、正転方向D1にさらに収縮する。第2、第4前ブロック53b、53dは、第2、第4爪41b、41dによって、変形し始める。第2、第4前ブロック53b、53dは、第2、第4爪41b、41dによって、正転方向D1に圧縮され始める。第2、第4前ブロック53b、53dは、正転方向D1に収縮し始める。第1-第4爪41a-41dは、第1-第4前ブロック53a-53dに対して、正転方向D1に移動し始める。すなわち、クラッチハブ31は、リアホイール61に対して正転方向D1に、さらに移動する。相対回転角度θは、さらに増加する。
【0234】
7-3.リアホイール61を制動するときの動作例
「リアホイール61を制動する」とは、鞍乗型車両1が走行しているときに、正転方向D1におけるリアホイール61の回転速度を強制的に低下させることである。
【0235】
リアホイール61を制動するとき、鞍乗型車両1の各要素は次のように動作する。鞍乗型車両1は、走行している。クラッチハブ31は、正転方向D1に回転する。リアホイール61は、正転方向D1に回転する。クラッチハブ31とダンパ51は、第2状態にある。制動機構81は、リアホイール61に制動力を伝達し始める。リアホイール61の回転速度は、低下し始める。リアホイール61は、クラッチハブ31に制動力を伝達し始める。クラッチハブ31の回転速度は、低下し始める。
【0236】
便宜上、図12を参照する。リアホイール61を制動するとき、クラッチハブ31とダンパ51は、第2状態にある。第1-第4爪41a-41dは、正転方向D1に回転している。制動機構81がリアホイール61を制動する。リアホイール61の回転速度は、低下する。リアホイール61は、さらに、第1-第4前ブロック53a-53dの回転速度を、低下させる。第1-第4前ブロック53a-53dは、第1-第4爪41a-41dの正転方向D1の回転に抵抗する。第1-第4爪41a-41dの回転速度は、低下する。このように、クラッチハブ31とダンパ51が第2状態にあるとき、第1-第4前ブロック53a-53dは、リアホイール61からクラッチハブ31に制動力を伝達する。
【0237】
なお、第1-第4後ブロック54a-54dは、常に、リアホイール61からクラッチハブ31に制動力を伝達しない。第1-第4後ブロック54a-54dがリアホイール61からクラッチハブ31に制動力を伝達することは、不可能である。同様に、第1-第4連結部55a-55dは、常に、リアホイール61からクラッチハブ31に制動力を伝達しない。第1-第4連結部55a-55dがリアホイール61からクラッチハブ31に制動力を伝達することは、不可能である。
【0238】
リアホイール61を制動するとき、鞍乗型車両1は振動することがある。リアホイール61を制動するときにおける鞍乗型車両1の振動を、特に「制動振動」と呼ぶ。制動振動は、例えば、リアホイール61の回転トルクの変動に起因する。クラッチハブ31とダンパ51が第2状態にあるとき、第1-第4前ブロック53a-53dは、リアホイール61からクラッチハブ31に制動振動を伝達する。
【0239】
7-4.鞍乗型車両1が走行を停止するときの動作例
鞍乗型車両1が走行を停止するとき、鞍乗型車両1の各要素は次のように動作する。パワーユニット11のクラッチは、接続状態から遮断状態に切り替わる。パワーユニット11は、クラッチハブ31への前進駆動力の伝達を停止する。クラッチハブ31の第1軸線22回りの回転は停止する。リアホイール61の第1軸線22回りの回転は停止する。クラッチハブ31とダンパ51は、第2状態から第1状態に切り替わる。例えば、クラッチハブ31が第1軸線22回りの回転を停止するとき、クラッチハブ31とダンパ51は第2状態から前記第1状態に切り替わる。
【0240】
便宜上、図12を参照する。例えば、クラッチハブ31とダンパ51は第2状態にあるとき、第1-第4爪41a-41dの回転は停止する。第1-第4爪41a-41dは、第1-第4前ブロック53a-53dを押圧しなくなる。第1-第4爪41a-41dは、第1-第4前ブロック53a-53dが伸張することを、許容する。第1-第4前ブロック53a-53dは、正転方向D1に伸張し始める。第1-第4前ブロック53a-53dは、第1-第4爪41a-41dを、正転方向D1とは逆の方向に押圧し始める。第1-第4爪41a-41dは、第1-第4前ブロック53a-53dに対して、正転方向D1とは逆の方向に移動し始める。すなわち、クラッチハブ31は、リアホイール61に対して正転方向D1とは逆の方向に移動し始める。相対回転角度θは、減少し始める。
【0241】
便宜上、図11を参照する。やがて、相対回転角度θは閾値θth未満になる。クラッチハブ31とダンパ51は第2状態から第1状態に切り替わる。第2、第4爪41b、41dは、第2、第4前ブロック53b、53dから離れる。隙間Gb、Gdは、再び、発生する。第2、第4前ブロック53b、53dは、自然状態に戻る。
【0242】
さらに、第1、第3前ブロック53a、53cは、第1、第3爪41a、41cを、正転方向D1とは逆の方向に押圧する。クラッチハブ31は、リアホイール61に対して正転方向D1とは逆の方向に、さらに移動する。相対回転角度θは、さらに減少する。隙間Gb、Gdは、拡大する。Rやがて、相対回転角度θは、0度になる。
【0243】
8.第1状態におけるダンパ51と第2状態におけるダンパ51の違い
図13Aは、クラッチハブ31とダンパ51が第1状態にあるときの前進駆動力の伝わり方を模式的に示す図である。クラッチハブ31とダンパ51が第1状態にあるときのクラッチハブ31とダンパ51とリアホイール61を説明する。
【0244】
第1、第3前ブロック53a、53cは、クラッチハブ31とリアホイール61の間に、並列に接続される。第1、第3前ブロック53a、53cは、クラッチハブ31からリアホイール61に前進駆動力を伝達する。第2前ブロック53bは、クラッチハブ31からリアホイール61に前進駆動力を伝達しない。第4前ブロック53dは、クラッチハブ31からリアホイール61に前進駆動力を伝達しない。
【0245】
発進振動が発生した場合、第1、第3前ブロック53a、53cは、クラッチハブ31からリアホイール61に発進振動を伝達する。発進振動が発生した場合であっても、第2前ブロック53bは、クラッチハブ31からリアホイール61に発進振動を伝達しない。発進振動が発生した場合であっても、第4前ブロック53dは、クラッチハブ31からリアホイール61に発進振動を伝達しない。
【0246】
図13Bは、クラッチハブ31とダンパ51が第2状態にあるときの前進駆動力および制動力の伝わり方を模式的に示す図である。クラッチハブ31とダンパ51が第2状態にあるときのクラッチハブ31とダンパ51とリアホイール61を説明する。
【0247】
第1-第4前ブロック53a-53dは、クラッチハブ31とリアホイール61の間に、並列に接続される。第1-第4前ブロック53a-53dは、クラッチハブ31からリアホイール61に前進駆動力を伝達する。第1-第4前ブロック53a-53dは、リアホイール61からクラッチハブ31に制動力を伝達する。
【0248】
制動振動が発生した場合、第1-第4前ブロック53a-53dは、リアホイール61からクラッチハブ31に制動振動を伝達する。
【0249】
ここで、クラッチハブ31とダンパ51が第1状態にあるとき、ダンパ51はクラッチハブ31に対して柔らかい。例えば、クラッチハブ31とダンパ51が第1状態にあるとき、ダンパ51はクラッチハブ31によって圧縮され易い。例えば、クラッチハブ31とダンパ51が第1状態にあるとき、相対回転角度θの増加に対するダンパ51の抵抗は弱い。他方、クラッチハブ31とダンパ51が第2状態にあるとき、ダンパ51は、クラッチハブ31に対して硬い。例えば、クラッチハブ31とダンパ51が第2状態にあるとき、ダンパ51はクラッチハブ31によって圧縮され難い。例えば、クラッチハブ31とダンパ51が第2状態にあるとき、相対回転角度θの増加に対するダンパ51の抵抗は強い。
【0250】
クラッチハブ31とダンパ51が第1状態にあるときにクラッチハブ31とリアホイール61の間で前進駆動力および制動力を伝達するダンパ51を、「第1状態における伝達ダンパ51a」と呼ぶ。第1状態における伝達ダンパ51aは、互いに並列に接続される第1、第3前ブロック53a、53cと等価な1つのブロックである。クラッチハブ31とダンパ51が第2状態にあるときにクラッチハブ31とリアホイール61の間で前進駆動力および制動力を伝達するダンパ51を、「第2状態における伝達ダンパ51b」と呼ぶ。第2状態における伝達ダンパ51bは、互いに並列に接続される第1-第4前ブロック53a-53dと等価な1つのブロックである。第1状態における伝達ダンパ51aは、第2状態における伝達ダンパ51bが有する特性とは異なる特性を有する。第1状態における伝達ダンパ51aは、第2状態における伝達ダンパ51bよりも、柔らかい。第2状態における伝達ダンパ51bは、第1状態における伝達ダンパ51aよりも、硬い。
【0251】
言い換えれば、第1状態における伝達ダンパ51aは、弾性率を有する。第2状態における伝達ダンパ51bは、弾性率を有する。第1状態における伝達ダンパ51aの弾性率は、第2状態における伝達ダンパ51bの弾性率よりも、小さい。第2状態における伝達ダンパ51bの弾性率は、第1状態における伝達ダンパ51aの弾性率よりも、大きい。
【0252】
図14は、相対回転角度θとダンパ51の復元力の間の関係を示すグラフである。ダンパ51の復元力は、ダンパ51を押圧するクラッチハブ31の力に相当する。図14のグラフでは、相対回転角度θは、右に行くほど、大きくなる。図14のグラフでは、ダンパ51の復元力は、上にいくほど、大きくなる。
【0253】
上述の通り、相対回転角度θが閾値θth未満であるとき、クラッチハブ31とダンパ51は第1状態にある。図14の線分Raは、クラッチハブ31とダンパ51は第1状態にあるときの相対回転角度θとダンパ51の復元力の関係を示す。相対回転角度θが閾値θth以上であるとき、クラッチハブ31とダンパ51は第2状態にある。図14の線分Rbは、クラッチハブ31とダンパ51は第1状態にあるときの相対回転角度θとダンパ51の復元力の関係を示す。ここで、線分Raの傾きは、線分Rbの傾きよりも、小さい。このため、第1状態における伝達ダンパ51aは、柔らかい。クラッチハブ31とダンパ51が第1状態にあるとき、ダンパ51はクラッチハブ31に対して柔らかい。線分Rbの傾きは、線分Raの傾きよりも、大きい。このため、第2状態における伝達ダンパ51bは、硬い。クラッチハブ31とダンパ51が第2状態にあるとき、ダンパ51はクラッチハブ31に対して硬い。
【0254】
線分Raの傾きは、第1状態における伝達ダンパ51aの弾性率に相当する。線分Rbの傾きは、第2状態における伝達ダンパ51bの弾性率に相当する。
【0255】
上述の通り、クラッチハブ31とダンパ51が第1状態にあるとき、ダンパ51はクラッチハブ31に対して柔らかい。このため、ダンパ51は発進振動を効果的に減衰させる。具体的には、第1、第3前ブロック53a、53cは、発進振動を効果的に減衰させる。
【0256】
クラッチハブ31とダンパ51が第2状態にあるとき、ダンパ51は、クラッチハブ31に対して硬い。このため、ダンパ51は制動振動を効果的に減衰させる。具体的には、第2、第4前ブロック53b、53dは、制動振動を効果的に減衰させる。
【0257】
9.実施形態の効果
鞍乗型車両1は、クラッチハブ31とダンパ51とリアホイール61を備える。鞍乗型車両1が前方に移動するとき、クラッチハブ31は正転方向D1に回転する。正転方向D1は、第1軸線22回りの1つの方向である。第1軸線22は、幅方向Yと平行である。ダンパ51は、クラッチハブ31と接触する。リアホイール61は、ダンパ51を支持する。クラッチハブ31は、ダンパ51を介して、リアホイール61を第1軸線22回りに回転させる。リアホイール61は、ダンパ51を介して、クラッチハブ31によって第1軸線22回りに回転駆動される。
【0258】
クラッチハブ31は、第1爪41aを備える。ダンパ51は、第1前ブロック53aを備える。第1前ブロック53aは、正転方向D1において第1爪41aの前方に配置される。このため、第1爪41aが第1前ブロック53aを正転方向D1に押圧することは、可能である。第1爪41aの正転方向D1の回転に第1前ブロック53aが抵抗することは、可能である。よって、クラッチハブ31からリアホイール61に前進駆動力を第1前ブロック53aが伝達することは、可能である。リアホイール61からクラッチハブ31に制動力を第1前ブロック53aが伝達することは、可能である。
【0259】
同様に、クラッチハブ31は、第2爪41bを備える。ダンパ51は、第2前ブロック53bを備える。第2前ブロック53bは、正転方向D1において第2爪41bの前方に配置される。このため、第2爪41bが第2前ブロック53bを正転方向D1に押圧することは、可能である。第2爪41bの正転方向D1の回転に第2前ブロック53bが抵抗することは、可能である。よって、クラッチハブ31からリアホイール61に前進駆動力を第2前ブロック53bが伝達することは、可能である。リアホイール61からクラッチハブ31に制動力を第2前ブロック53bが伝達することは、可能である。
【0260】
第2前ブロック53bは、第1前ブロック53aよりも小さい。このため、第2前ブロック53bは、第1前ブロック53aの特性と異なる特性を有する。
【0261】
具体的には、第2前ブロック53bは、第1前ブロック53aよりも硬い。よって、第2前ブロック53bは、制動振動を好適に小さくする。例えば、第2前ブロック53bは、制動振動を好適に減衰させる。例えば、第2前ブロック53bは、リアホイール61の回転トルクの変動を好適に吸収する。
【0262】
言い換えれば、第1前ブロック53aは、第2前ブロック53bよりも大きい。このため、第1前ブロック53aは、第2前ブロック53bよりも柔らかい。よって、第1前ブロック53aは、発進振動を好適に小さくする。例えば、第1前ブロック53aは、発進振動を好適に減衰させる。例えば、第1前ブロック53aは、クラッチハブ31の回転トルクの変動を好適に吸収する。
【0263】
まとめると、鞍乗型車両1は、鞍乗型車両1の振動を小さくする。具体的には、鞍乗型車両1は、発進振動および制動振動の両方を小さくする。
【0264】
上述の通り、鞍乗型車両1は発進振動を小さくする。このため、鞍乗型車両1が発進するときのエンジンの回転数を低くすることは、容易である。例えば、鞍乗型車両1が発進するときのエンジンの回転数を低く設定することは、容易である。例えば、パワーユニット11が前進駆動力をクラッチハブ31に伝達し始めるときのエンジンの回転数を低くすることは、容易である。例えば、パワーユニット11のクラッチが遮断状態から接続状態に切り替わるときのエンジンの回転数を低くすることは、容易である。よって、鞍乗型車両1の燃費を低下させることは、容易である。
【0265】
上述の通り、鞍乗型車両1は制動振動を小さくする。このため、鞍乗型車両1に設けられるセンサは、制動振動から適切に保護される。例えば、制動振動が発生した場合であっても、鞍乗型車両1に設けられるセンサの精度は悪化しない。ここで、センサは、例えば、速度センサ、加速度センサ、および、圧力センサの少なくともいずれかである。速度センサは、例えば、鞍乗型車両の速度を検出するためのものである。加速度センサは、例えば、鞍乗型車両の加速度を検出するためのものである。加速度センサは、例えば、ジャイロセンサおよび慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)の少なくともいずれかに含まれていてもよい。圧力センサは、例えば、ブレーキ液の圧力を検出する。速度センサ、加速度センサおよび圧力センサの少なくともいずれかは、ABS(antilock brake system)装置に含まれていてもよい。
【0266】
第2前ブロック53bは、第1前ブロック53aの体積よりも小さな体積を有する。このため、第2前ブロック53bを第1前ブロック53aよりも小さくさせることは、容易である。
【0267】
車両側面視において、第2前ブロック53bは、第1前ブロック53aの面積よりも小さい面積を有する。このため、第2前ブロック53bを第1前ブロック53aよりも小さくさせることは、容易である。
【0268】
第1軸線22の周方向における第2前ブロック53bの長さLbは、第1軸線22の周方向における第1前ブロック53aの長さLaよりも小さい。このため、第2前ブロック53bを第1前ブロック53aよりも小さくさせることは、容易である。
【0269】
クラッチハブ31とダンパ51が第1状態にあるとき、第1前ブロック53aは第1爪41aと接触しており、かつ、第2前ブロック53bは第2爪41bから離れている。このため、第1前ブロック53aは、クラッチハブ31とリアホイール61の間で、前進駆動力および制動力を伝達する。第2前ブロック53bは、クラッチハブ31からリアホイール61に前進駆動力を伝達しない。第2前ブロック53bは、リアホイール61からクラッチハブ31に制動力を伝達しない。
【0270】
クラッチハブ31とダンパ51が第2状態にあるとき、第1前ブロック53aは第1爪41aと接触しており、かつ、第2前ブロック53bは第2爪41bと接触している。第1前ブロック53aと第2前ブロック53bは、クラッチハブ31とリアホイール61の間に、並列に接続される。このため、第1前ブロック53aは、クラッチハブ31とリアホイール61の間で、前進駆動力および制動力を伝達する。第2前ブロック53bは、クラッチハブ31とリアホイール61の間で、前進駆動力および制動力を伝達する。
【0271】
第1状態における伝達ダンパ51aは、第1前ブロック53aを含み、第2前ブロック53bを含まない。第2状態における伝達ダンパ51bは、並列に接続される第1前ブロック53aと第2前ブロック53bを含む。このため、第1状態における伝達ダンパ51aは、第2状態における伝達ダンパ51bが有する特性とは異なる特性を有する。
【0272】
具体的には、第1状態における伝達ダンパ51aは、第2状態における伝達ダンパ51bよりも、柔らかい。言い換えれば、第1状態における伝達ダンパ51aの弾性率は、第2状態における伝達ダンパ51bの弾性率よりも、小さい。よって、第1状態における伝達ダンパ51aは発進振動を好適に小さくする。すなわち、クラッチハブ31とダンパ51が第1状態にあるとき、ダンパ51は発進振動を好適に小さくする。
【0273】
他方、第2状態における伝達ダンパ51bは、第1状態における伝達ダンパ51aよりも、硬い。言い換えれば、第2状態における伝達ダンパ51bの弾性率は、第1状態における伝達ダンパ51aの弾性率よりも、大きい。よって、第2状態における伝達ダンパ51bは制動振動を好適に小さくする。すなわち、クラッチハブ31とダンパ51が第2状態にあるとき、ダンパ51は制動振動を好適に小さくする。
【0274】
なお、クラッチハブ31とダンパ51が第2状態にあるとき、ダンパ51が発進振動を小さくすることは難しい。そればかりでなく、クラッチハブ31とダンパ51が第2状態にあるとき、ダンパ51は発進振動を大きくすることがある。このため、クラッチハブ31とダンパ51が第1状態にあるときの発進振動は、クラッチハブ31とダンパ51が第2状態にあるときの発進振動よりも、小さい。
【0275】
クラッチハブ31とダンパ51が第1状態にあるとき、ダンパ51が制動振動を小さくすることは難しい。このため、クラッチハブ31とダンパ51が第2状態にあるときの制動振動は、クラッチハブ31とダンパ51が第1状態にあるときの制動振動よりも、小さい。
【0276】
クラッチハブ31とダンパ51は、第1状態と第2状態の間で切り替わる。クラッチハブ31とダンパ51が第1状態と第2状態の間で切り替わるとき、クラッチハブ31に対するダンパ51の特性は変わる。このため、鞍乗型車両1が発進振動および制動振動の両方を小さくすることは、容易である。
【0277】
鞍乗型車両1が発進するとき、クラッチハブ31とダンパ51は、第1状態にある。鞍乗型車両1が発進するとき、発進振動が発生する。このため、発進振動が発生するとき、クラッチハブ31とダンパ51は第1状態にある。上述の通り、クラッチハブ31とダンパ51が第1状態にあるとき、ダンパ51は発進振動を好適に小さくする。よって、発進振動は好適に小さくされる。
【0278】
リアホイール61を制動するとき、クラッチハブ31とダンパ51は、第2状態にある。リアホイール61を制動するとき、制動振動が発生する。このため、制動振動が発生するとき、クラッチハブ31とダンパ51は第2状態にある。上述の通り、クラッチハブ31とダンパ51が第2状態にあるとき、第2前ブロック53bは制動振動を好適に小さくする。よって、制動振動は好適に小さくされる。
【0279】
鞍乗型車両1が発進するとき、鞍乗型車両1が停止した状態から鞍乗型車両1は前方に移動し始める。鞍乗型車両1が停止した状態にあるとき、クラッチハブ31とダンパ51は第1状態にある。このため、鞍乗型車両1が発進するときにクラッチハブ31とダンパ51が第1状態にあることは、容易である。
【0280】
鞍乗型車両1が停止した状態にあるとき、クラッチハブ31は第1軸線22回りに回転していない。クラッチハブ31が第1軸線22回りに回転していないとき、クラッチハブ31とダンパ51は第1状態にある。このため、鞍乗型車両1が停止した状態にあるときにクラッチハブ31とダンパ51が第1状態にあることは、容易である。
【0281】
リアホイール61を制動するとき、鞍乗型車両1は走行している。鞍乗型車両1が走行しているとき、クラッチハブ31とダンパ51は第2状態にある。このため、リアホイール61を制動するときにクラッチハブ31とダンパ51が第2状態にあることは、容易である。
【0282】
鞍乗型車両1が走行しているとき、クラッチハブ31は正転方向D1に回転している。クラッチハブ31が正転方向D1に回転しているとき、クラッチハブ31とダンパ51は第2状態にある。このため、鞍乗型車両1が走行しているときにクラッチハブ31とダンパ51が第2状態にあることは、容易である。
【0283】
鞍乗型車両1が発進した後、鞍乗型車両1は走行する。鞍乗型車両1が発進した後、クラッチハブ31とダンパ51は第1状態から第2状態に切り替わる。このため、鞍乗型車両1が走行しているときにクラッチハブ31とダンパ51が第2状態にあることは、容易である。
【0284】
鞍乗型車両1が発進するとき、クラッチハブ31は正転方向D1に回転し始める。クラッチハブ31が正転方向D1に回転し始めた後、クラッチハブ31とダンパ51は第1状態から第2状態に切り替わる。このため、鞍乗型車両1が発進した後にクラッチハブ31とダンパ51が第1状態から第2状態に切り替わることは、容易である。
【0285】
鞍乗型車両1が走行を停止した後、鞍乗型車両1は停止した状態になる。鞍乗型車両1が走行を停止するとき、クラッチハブ31とダンパ51は第2状態から第1状態に切り替わる。このため、鞍乗型車両1が停止した状態にあるときにクラッチハブ31とダンパ51が第1状態にあることは、容易である。
【0286】
鞍乗型車両1が走行を停止するとき、クラッチハブ31は第1軸線22回りの回転を停止する。クラッチハブ31が第1軸線22回りの回転を停止するとき、クラッチハブ31とダンパ51は第2状態から第1状態に切り替わる。このため、鞍乗型車両1が走行を停止するときにクラッチハブ31とダンパ51が第2状態から第1状態に切り替わることは、容易である。
【0287】
第1前ブロック53aは正転方向D1に収縮する。第1前ブロック53aが正転方向D1に収縮するとき、第2爪41bは第2前ブロック53bに対して正転方向D1に移動する。上述の通り、第2前ブロック53bは、正転方向D1において第1爪41aの前方に配置される。このため、第2前ブロック53bが第2爪41bと接触することは、容易である。よって、クラッチハブ31とダンパ51が第1状態から第2状態に切り替わることは、容易である。
【0288】
第1前ブロック53aは正転方向D1に伸張する。第1前ブロック53aが正転方向D1に伸張するとき、第2爪41bは第2前ブロック53bに対して正転方向D1とは逆の方向に移動する。このため、第2前ブロック53bが第2爪41bから離れることは、容易である。よって、クラッチハブ31とダンパ51が第2状態から第1状態に切り替わることは、容易である。
【0289】
クラッチハブ31とダンパ51が第1状態にあるとき、第2爪41bと第2前ブロック53bは、隙間Gbを形成する。このため、クラッチハブ31とダンパ51が第1状態にあるときに第2前ブロック53bを第2爪41bから離すことは、容易である。
【0290】
隙間Gbは、正転方向D1において第2爪41bの前方で、かつ、正転方向D1において第2前ブロック53bの後方に位置する。言い換えれば、隙間Gbは、正転方向D1において第2爪41bと第2前ブロック53bの間に位置する。このため、第2爪41bが第2前ブロック53bに対して正転方向D1に移動することによって、第2爪41bは第2前ブロック53bに接触する。よって、クラッチハブ31とダンパ51が第1状態から第2状態に切り替わることは、容易である。さらに、第2爪41bが第2前ブロック53bに対して正転方向D1とは逆方向に移動することによって、第2爪41bは第2前ブロック53bから離れる。よって、クラッチハブ31とダンパ51が第2状態から第1状態に切り替わることは、容易である。
【0291】
相対回転角度θに応じて、クラッチハブ31とダンパ51は、第1状態と第2状態の間で、切り替わる。このため、クラッチハブ31とダンパ51が第1状態と第2状態の間で切り替わることは、容易である。
【0292】
相対回転角度θが閾値θth未満であるとき、クラッチハブ31とダンパ51は第1状態にある。相対回転角度θが閾値θth以上であるとき、クラッチハブ31とダンパ51は第2状態にある。このため、クラッチハブ31とダンパ51が第1状態と第2状態の間で相対回転角度θに応じて切り替わることは、容易である。
【0293】
鞍乗型車両1が発進するとき、相対回転角度θは0度から増加する。閾値θthは、3度以上、かつ、5度以下である。このため、鞍乗型車両1が発進するときに相対回転角度θが閾値θth未満であることは、容易である。よって、鞍乗型車両1が発進するときにクラッチハブ31とダンパ51が第1状態にあることは、容易である。さらに、鞍乗型車両1が発進した後に相対回転角度θが閾値θth以上に増加することは、容易である。よって、リアホイール61を制動するときにクラッチハブ31とダンパ51が第2状態にあることは、容易である。まとめると、クラッチハブ31とダンパ51は、第1状態と第2状態の間で、適切なタイミングで切り替わる。
【0294】
クラッチハブ31は、第3爪41cを備える。ダンパ51は、第3前ブロック53cを備える。第3前ブロック53cは、正転方向D1において第3爪41cの前方に配置される。このため、第3爪41cが第3前ブロック53cを正転方向D1に押圧することは、可能である。第3爪41cの正転方向D1の回転に第3前ブロック53cが抵抗することは、可能である。よって、クラッチハブ31からリアホイール61に前進駆動力を第3前ブロック53cが伝達することは、可能である。リアホイール61からクラッチハブ31に制動力を第3前ブロック53cが伝達することは、可能である。
【0295】
同様に、クラッチハブ31は、第4爪41dを備える。ダンパ51は、第4前ブロック53dを備える。第4前ブロック53dは、正転方向D1において第4爪41dの前方に配置される。このため、第4爪41dが第4前ブロック53dを正転方向D1に押圧することは、可能である。第4爪41dの正転方向D1の回転に第4前ブロック53dが抵抗することは、可能である。よって、クラッチハブ31からリアホイール61に前進駆動力を第4前ブロック53dが伝達することは、可能である。リアホイール61からクラッチハブ31に制動力を第4前ブロック53dが伝達することは、可能である。
【0296】
第4前ブロック53dは、第3前ブロック53cよりも小さい。このため、第4前ブロック53dは、第3前ブロック53cの特性と異なる特性を有する。
【0297】
具体的には、第4前ブロック53dは、第3前ブロック53cよりも硬い。よって、第4前ブロック53dは、制動振動を好適に小さくする。
【0298】
言い換えれば、第3前ブロック53cは、第4前ブロック53dよりも大きい。このため、第3前ブロック53cは、第4前ブロック53dよりも柔らかい。よって、第3前ブロック53cは、発進振動を好適に小さくする。
【0299】
まとめると、鞍乗型車両1は、鞍乗型車両1の振動を一層小さくする。具体的には、鞍乗型車両1は、発進振動および制動振動の両方を一層小さくする。
【0300】
上述の通り、鞍乗型車両1は発進振動を一層小さくする。このため、鞍乗型車両1が発進するときのエンジンの回転数を低くすることは、一層容易である。よって、鞍乗型車両1の燃費を低下させることは、一層容易である。
【0301】
上述の通り、鞍乗型車両1は制動振動を一層小さくする。このため、鞍乗型車両1に設けられるセンサは、制動振動から一層適切に保護される。
【0302】
第3前ブロック53cは、第1前ブロック53aと同じ形状を有する。すなわち、第3前ブロック53cの形状は、第1前ブロック53aの形状と同じである。このため、第3前ブロック53cの特性を、第1前ブロック53aの特性と等しくさせることは、容易である。よって、第1、第3前ブロック53a、53cは、発進振動を一層好適に小さくする。
【0303】
同様に、第4前ブロック53dは、第2前ブロック53bと同じ形状を有する。すなわち、第4前ブロック53dの形状は、第2前ブロック53bの形状と同じである。このため、第4前ブロック53dの特性を、第2前ブロック53bの特性と等しくさせることは、容易である。よって、第2、第4前ブロック53b、53dは、制動振動を一層好適に小さくする。
【0304】
第3爪41cは、車両側面視において、第1軸線22に関して第1爪41aと点対称な位置に配置される。第3前ブロック53cは、車両側面視において、第1軸線22に関して第1前ブロック53aと点対称な位置に配置される。このため、第1前ブロック53aと第3前ブロック53cは、発進振動を一層好適に小さくする。
【0305】
第4爪41dは、車両側面視において、第1軸線22に関して第2爪41bと点対称な位置に配置される。第4前ブロック53dは、車両側面視において、第1軸線22に関して第2前ブロック53bと点対称な位置に配置される。このため、第2前ブロック53bと第4前ブロック53dは、制動振動を一層好適に小さくする。
【0306】
第2爪41bは、第1爪41aから正転方向D1に90度、回転した位置に配置される。このため、第1前ブロック53aと第3前ブロック53cは、発進振動を一層好適に小さくする。
【0307】
第4爪41dは、第3爪41cから正転方向D1に90度、回転した位置に配置されることが好ましい。このため、第2前ブロック53bと第4前ブロック53dは、制動振動を一層好適に小さくする。
【0308】
クラッチハブ31とダンパ51が第1状態にあるときのクラッチハブ31とダンパ51とリアホイール61を説明する。第1前ブロック53aは第1爪41aと接触している。第2前ブロック53bは第2爪41bから離れている。第3前ブロック53cは第3爪41cと接触している。第4前ブロック53dは第4爪41dから離れている。第1前ブロック53aと第3前ブロック53cは、クラッチハブ31とリアホイール61の間に、並列に接続される。
【0309】
クラッチハブ31とダンパ51が第2状態にあるときのクラッチハブ31とダンパ51とリアホイール61を説明する。第1前ブロック53aは第1爪41aと接触している。第2前ブロック53bは第2爪41bと接触している。第3前ブロック53cは第3爪41cと接触している。第4前ブロック53dは第4爪41dと接触している。第1前ブロック53aと第2前ブロック53bと第3前ブロック53cと第4前ブロック53dは、クラッチハブ31とリアホイール61の間に、並列に接続される。
【0310】
第1状態における伝達ダンパ51aは、並列に接続される第1前ブロック53aと第2前ブロック53bを含み、第2前ブロック53bと第4前ブロック53dを含まない。第2状態における伝達ダンパ51bは、並列に接続される第1前ブロック53aと第2前ブロック53bと第3前ブロック53cと第4前ブロック53dを含む。このため、第1状態における伝達ダンパ51aの特性は、第2状態における伝達ダンパ51bが有する特性と、一層異なる。
【0311】
具体的には、第1状態における伝達ダンパ51aは、第2状態における伝達ダンパ51bよりも、一層柔らかい。言い換えれば、第1状態における伝達ダンパ51aの弾性率は、第2状態における伝達ダンパ51bの弾性率よりも、一層小さい。よって、第1状態における伝達ダンパ51aは発進振動を一層好適に小さくする。すなわち、クラッチハブ31とダンパ51が第1状態にあるとき、ダンパ51は発進振動を一層好適に小さくする。
【0312】
他方、第2状態における伝達ダンパ51bは、第1状態における伝達ダンパ51aよりも、一層硬い。言い換えれば、第2状態における伝達ダンパ51bの弾性率は、第1状態における伝達ダンパ51aの弾性率よりも、一層大きい。よって、第2状態における伝達ダンパ51bは制動振動を一層好適に小さくする。すなわち、クラッチハブ31とダンパ51が第2状態にあるとき、ダンパ51は制動振動を一層好適に小さくする。
【0313】
上述の通り、クラッチハブ31とダンパ51は、第1状態と第2状態の間で切り替わる。このため、鞍乗型車両1が発進振動および制動振動の両方を小さくすることは、容易である。
【0314】
鞍乗型車両1は、制動機構81を備える。制動機構81は、第1軸線22回りのリアホイール61の回転を制動する。鞍乗型車両1が走行している状態で制動機構81がリアホイール61の回転を制動し始めるとき、制動振動が発生する。鞍乗型車両1が前方に移動している状態で制動機構81がリアホイール61の回転を制動し始めるとき、クラッチハブ31とダンパ51は第2状態にある。このため、制動振動が発生するとき、クラッチハブ31とダンパ51は第2状態にある。上述の通り、クラッチハブ31とダンパ51が第2状態にあるとき、ダンパ51は制動振動を好適に小さくする。よって、制動振動は好適に小さくされる。
【0315】
10.変形実施形態
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0316】
(1)実施形態では、第2前ブロック53bの組成は、第1前ブロック53aの組成と同じであった。但し、これに限られない。第2前ブロック53bの組成は、第1前ブロック53aの組成と異なってもよい。
【0317】
同様に、第3前ブロック53cの組成は、第1前ブロック53aの組成と異なってもよい。第4前ブロック53dの組成は、第1前ブロック53aの組成と異なってもよい。
【0318】
(2)実施形態では、第3前ブロック53cは、第1前ブロック53aと同じ形状を有した。但し、これに限られない。第3前ブロック53cは、第1前ブロック53aと異なる形状を有してもよい。
【0319】
同様に、第4前ブロック53dは、第2前ブロック53bと異なる形状を有してもよい。
【0320】
(3)実施形態では、複数のダンパ片52は、互いに分離されていた。但し、これに限られない。例えば、複数のダンパ片52は、互いに連結されてもよい。例えば、複数のダンパ片52は、一体に成形されてもよい。例えば、複数のダンパ片52は、互いに分離不能であってもよい。
【0321】
(4)実施形態では、第1前ブロック53aと第1後ブロック54aは、互いに連結されていた。但し、これに限られない。第1前ブロック53aと第1後ブロック54aは、互いに分離されていてもよい。
【0322】
同様に、第2前ブロック53bと第2後ブロック54bは、互いに分離されていてもよい。
【0323】
(5)実施形態では、第1前ブロック53aと第2後ブロック54bは、互いに分離されていた。但し、これに限られない。例えば、第1前ブロック53aと第2後ブロック54bは、互いに連結されてもよい。例えば、第1前ブロック53aと第2後ブロック54bは、一体に成形されてもよい。例えば、第1前ブロック53aと第2後ブロック54bは、互いに分離不能であってもよい。
【0324】
(6)実施形態では、第1ダンパ片52aは、第1後ブロック54aを備えた。但し、これに限られない。例えば、第1後ブロック54aを省略してもよい。
【0325】
同様に、第2後ブロック54bを省略してもよい。
【0326】
(7)実施形態では、第1ダンパ片52aは、第1連結部55aを備えた。但し、これに限られない。例えば、第1連結部54aを省略してもよい。
【0327】
同様に、第2連結部54bを省略してもよい。
【0328】
(8)実施形態では、爪41の数は、4つであった。但し、これに限られない。爪41の数は、2つ、または、3つであってもよい。あるいは、爪41の数は、4つよりも多くでもよい。
【0329】
(9)実施形態では、クラッチハブ31は、第3爪41cと第4爪41dを備えた。ダンパ51は、第3前ブロック53cと第4前ブロック53dを備えた。但し、これに限られない。第3爪41cと第4爪41dの少なくともいずれかを省略してもよい。第3前ブロック53cと第4前ブロック53dの少なくともいずれかを省略してもよい。
【0330】
(10)実施形態では、パワーユニット11は車体フレームに対して揺動可能であった。但し、これに限られない。パワーユニット11は、車体フレームに固定されてもよい。パワーユニット11は、車体フレームに対して揺動不能であってもよい。本変形実施形態によっても、鞍乗型車両1は、制動振動を小さくする。
【0331】
(11)実施形態では、エンジンは車体フレームに対して揺動可能であった。エンジンは、ユニットスイングエンジンに分類された。但し、これに限られない。エンジンは、車体フレームに固定されてもよい。エンジンは、車体フレームに対して揺動不能であってもよい。エンジンは、リジッドマウントエンジンに分類されてもよい。本変形実施形態によっても、鞍乗型車両1は、制動振動を小さくする。
【0332】
(12)実施形態では、鞍乗型車両1は駆動軸21を備えた。クラッチハブ31は駆動軸21と一体に回転した。パワーユニット11は、駆動軸21を介して、クラッチハブ31に前進駆動力を伝達した。但し、これに限られない。鞍乗型車両1は、駆動軸21に代えて、リアアスクルを備えてもよい。パワーユニット11は、リアアスクルを介さずに、クラッチハブ31に前進駆動力を伝達する。具体的には、リアアスクルは、クラッチハブ31とリアホイール61を支持する。クラッチハブ31はリアアスクルに対して回転可能である。リアホイール61もリアアスクルに対して回転可能である。鞍乗型車両1は、例えば、ドリブンスプロケットとチェーンを備える。ドリブンスプロケットは、クラッチハブ31に固定される。チェーンは、パワーユニット11とドリブンスプロケットを連結する。パワーユニット11は、チェーンとドリブンスプロケットを介して、クラッチハブ31に前進駆動力を伝達する。
【0333】
(13)実施形態では、パワーユニット11はエンジンを備えた。但し、これに限られない。パワーユニット11は、電気モータを備えてもよい。パワーユニット11は、エンジンを備えなくてもよい。
【0334】
(14)実施形態では、制動機構81はドラムブレーキに分類された。但し、これに限られない。制動機構81は、ディスクブレーキに分類されてもよい。
【0335】
(15)実施形態では、フロントホイール8の数は1つである。但し、これに限られない。フロントホイール8の数は2つであってもよい。実施形態では、リアホイール61の数は1つである。これに限られない。リアホイール61の数は2つであってもよい。
【0336】
(16)実施形態では、鞍乗型車両1としてのスクータ型の車両を例示する。ただし、これに限られない。例えば、鞍乗型車両1を、ストリート型、スポーツ型、オフロード型、不整地走行用車両(ALL-TERRAIN VEHICLE)など、他の種類の車両に変更してもよい。
【0337】
(17)実施形態および上記(1)から(16)で説明した各変形実施形態については、さらに各構成を他の変形実施形態の構成に置換または組み合わせるなどして適宜に変更してもよい。
【符号の説明】
【0338】
1 :鞍乗型車両
11 :パワーユニット
21 :駆動軸
22 :第1軸線
31 :クラッチハブ
41 :爪
41a:第1爪
41b:第2爪
41c:第3爪
41d:第4爪
51 :ダンパ
52 :ダンパ片
53a:第1前ブロック
53b:第2前ブロック
53c:第3前ブロック
53d:第4前ブロック
61 :リアホイール(ホイール)
63 :ハウジング
63a:内周壁
63b:外周壁
63c:隔壁
D1 :正転方向
E :凹所
F :孔
Gb、Gd :隙間
θ :相対回転角度
θth:閾値
La :第1軸線の周方向における第1前ブロックの長さ
Lb :第1軸線の周方向における第2前ブロックの長さ
X :鞍乗型車両の前後方向
Y :鞍乗型車両の幅方向
Z :鞍乗型車両の上下方向

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2024-05-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞍乗型車両であって、
前記鞍乗型車両が前方に移動するとき、前記鞍乗型車両の幅方向と平行な第1軸線回りの正転方向に回転するクラッチハブと、
前記クラッチハブと接触するダンパと、
前記ダンパを支持し、前記ダンパを介して前記クラッチハブによって前記第1軸線回りに回転駆動されるホイールと、
を備え、
前記クラッチハブは、
第1爪と、
第2爪と、
を備え、
前記ダンパは、
前記正転方向において前記第1爪の前方に配置される第1前ブロックと、
前記正転方向において前記第2爪の前方に配置される第2前ブロックと、
を備え、
前記第2前ブロックは、前記第1前ブロックよりも小さい
鞍乗型車両。
【請求項2】
請求項1に記載の鞍乗型車両において、
前記第2前ブロックは、前記第1前ブロックの体積よりも小さな体積を有する
鞍乗型車両。
【請求項3】
請求項1または2に記載の鞍乗型車両において、
前記鞍乗型車両の側面視において、前記第2前ブロックは、前記第1前ブロックの面積よりも小さい面積を有する
鞍乗型車両。
【請求項4】
請求項1または2に記載の鞍乗型車両において、
前記第1軸線の周方向における前記第2前ブロックの長さは、前記第1軸線の周方向における前記第1前ブロックの長さよりも小さい
鞍乗型車両。
【請求項5】
請求項1または2に記載の鞍乗型車両において、
前記クラッチハブと前記ダンパは、第1状態と第2状態の間で、切り替わり、
前記クラッチハブと前記ダンパが前記第1状態にあるとき、前記第1前ブロックは前記第1爪と接触しており、かつ、前記第2前ブロックは前記第2爪から離れており、
前記クラッチハブと前記ダンパが前記第2状態にあるとき、前記第1前ブロックは前記第1爪と接触しており、かつ、前記第2前ブロックは前記第2爪と接触している
鞍乗型車両。
【請求項6】
請求項5に記載の鞍乗型車両において、
前記鞍乗型車両が発進するとき、前記クラッチハブと前記ダンパは、前記第1状態にあり、
前記ホイールを制動するとき、前記クラッチハブと前記ダンパは、前記第2状態にある
鞍乗型車両。
【請求項7】
請求項5に記載の鞍乗型車両において、
前記鞍乗型車両が停止した状態にあるとき、前記クラッチハブと前記ダンパは前記第1状態にある
鞍乗型車両。
【請求項8】
請求項5に記載の鞍乗型車両において、
前記鞍乗型車両が走行しているとき、前記クラッチハブと前記ダンパは前記第2状態にある
鞍乗型車両。
【請求項9】
請求項5に記載の鞍乗型車両において、
前記第1前ブロックは、前記正転方向に収縮し、かつ、伸張し、
前記第1前ブロックが前記正転方向に収縮するとき、前記第2爪は前記第2前ブロックに対して前記正転方向に移動し、
前記第1前ブロックが前記正転方向に伸張するとき、前記第2爪は前記第2前ブロックに対して前記正転方向とは逆の方向に移動する
鞍乗型車両。
【請求項10】
請求項5に記載の鞍乗型車両において、
前記クラッチハブと前記ダンパが前記第1状態にあるとき、前記第2爪と前記第2前ブロックは、隙間を形成し、
前記隙間は、前記正転方向において前記第2爪の前方で、かつ、前記正転方向において前記第2前ブロックの後方に位置する
鞍乗型車両。
【請求項11】
請求項5に記載の鞍乗型車両において、
前記正転方向における前記ホイールに対する前記クラッチハブの回転角度である相対回転角度に応じて、前記クラッチハブと前記ダンパは、前記第1状態と前記第2状態の間で、切り替わる
鞍乗型車両。
【請求項12】
請求項11に記載の鞍乗型車両において、
前記相対回転角度が閾値未満であるとき、前記クラッチハブと前記ダンパは前記第1状態にあり、
前記相対回転角度が前記閾値以上であるとき、前記クラッチハブと前記ダンパは前記第2状態にある
鞍乗型車両。
【請求項13】
請求項12に記載の鞍乗型車両において、
前記鞍乗型車両が発進するとき、前記相対回転角度は0度から増加し、
前記閾値は、3度以上、かつ、5度以下である
鞍乗型車両。
【請求項14】
請求項1または2に記載の鞍乗型車両において、
前記クラッチハブは、
第3爪と、
第4爪と、
を備え、
前記ダンパは、
前記正転方向において前記第3爪の前方に配置される第3前ブロックと、
前記正転方向において前記第4爪の前方に配置される第4前ブロックと、
を備え、
前記第4前ブロックは、前記第3前ブロックよりも小さい
鞍乗型車両。
【請求項15】
請求項5に記載の鞍乗型車両において、
前記鞍乗型車両は、
前記第1軸線回りの前記ホイールの回転を制動する制動機構と、
を備え、
前記鞍乗型車両が走行している状態で前記制動機構が前記ホイールの回転を制動し始めるとき、前記クラッチハブと前記ダンパは前記第2状態にある
鞍乗型車両。