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特開2024-93526ゴム組成物、加硫ゴムおよび空気入りタイヤ、ならびにゴム組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093526
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】ゴム組成物、加硫ゴムおよび空気入りタイヤ、ならびにゴム組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20240702BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20240702BHJP
   C08G 18/32 20060101ALI20240702BHJP
   C08G 18/80 20060101ALI20240702BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
C08L9/00
C08L75/04
C08G18/32 015
C08G18/80
B60C1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209961
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】早見 純平
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
4J034
【Fターム(参考)】
3D131AA01
3D131AA02
3D131BA05
3D131BA18
3D131BC01
3D131BC02
3D131BC12
3D131BC15
3D131BC19
4J002AC011
4J002AC031
4J002AC061
4J002AC071
4J002AC081
4J002AC091
4J002CK042
4J002CK043
4J002FD202
4J002FD203
4J002GN01
4J034BA06
4J034CA01
4J034CA03
4J034CA04
4J034CB02
4J034CB03
4J034CB07
4J034CC12
4J034CC62
4J034CC67
4J034CD04
4J034HA01
4J034HA07
4J034HA08
4J034HA09
4J034HB01
4J034HB11
4J034HB12
4J034HB15
4J034HB16
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC17
4J034HC22
4J034HC45
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC54
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC65
4J034HC67
4J034HC68
4J034HC70
4J034HC71
4J034HC73
4J034HD04
4J034HD07
4J034HD12
4J034HD15
4J034JA01
4J034JA41
4J034QA01
4J034QA03
4J034QB12
4J034RA12
(57)【要約】
【課題】0℃でのtanδが大きい加硫ゴムの原料となるゴム組成物および該ゴム組成物の製造方法、0℃でのtanδが大きい加硫ゴム、および該加硫ゴムをゴム部として備え、WET性能に優れた空気入りタイヤを提供すること。
【解決手段】ジエン系ゴムと、活性水素基を有する第1液晶ポリマーと、主鎖または側鎖にブロックイソシアネート基を有する第2液晶ポリマーとを少なくとも含有するゴム組成物、該ゴム組成物を加硫成形してなる加硫ゴム、および該加硫ゴムをゴム部として備える空気入りタイヤ。ジエン系ゴム、活性水素基を有する第1液晶ポリマー、および加硫系配合剤以外の配合剤を混合する第1混合工程と、第1混合工程後に得られた混合物に対し、主鎖または側鎖にブロックイソシアネート基を有する第2液晶ポリマーおよび加硫系配合剤を混合する第2混合工程とを有するゴム組成物の製造方法。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴムと、活性水素基を有する第1液晶ポリマーと、主鎖または側鎖にブロックイソシアネート基を有する第2液晶ポリマーとを少なくとも含有するゴム組成物。
【請求項2】
前記第1液晶ポリマーおよび前記第2液晶ポリマーが、液晶相から等方相への転移温度(Ti)が20℃以下のものである請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記第1液晶ポリマーおよび前記第2液晶ポリマーが、液晶ポリウレタンである請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項4】
請求項1に記載のゴム組成物を加硫成形してなる加硫ゴム。
【請求項5】
請求項4に記載の加硫ゴムをゴム部として備える空気入りタイヤ。
【請求項6】
ジエン系ゴム、活性水素基を有する第1液晶ポリマー、および加硫系配合剤以外の配合剤を混合する第1混合工程と、
前記第1混合工程後に得られた混合物に対し、主鎖または側鎖にブロックイソシアネート基を有する第2液晶ポリマーおよび加硫系配合剤を混合する第2混合工程とを有するゴム組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物、該ゴム組成物の加硫ゴムおよび該加硫ゴムをゴム部として備える空気入りタイヤ、ならびにゴム組成物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、タイヤは様々な走行環境で使用され、例えば雨の中、湿潤路面でのグリップ性能であるウェットグリップ性能(以下、単に「WET性能」とも言う)を改良することが求められる。
【0003】
下記特許文献1では、ゴム成分としてtanδの温度分散曲線がバイモーダルとなる少なくとも2種のジエン系ゴムを含むゴム組成物を原料として使用することで、空気入りタイヤのWET性能および低燃費性の向上を図る技術が記載されている。
【0004】
また、下記特許文献2では、軟化点が140℃以上である芳香族ビニル化合物の単独重合体樹脂および共重合体樹脂から選択される少なくとも1種を所定量配合したゴム組成物を原料として使用することで、タイヤの初期グリップ性能および走行安定性の向上を図る技術が記載されている。
【0005】
さらに、下記特許文献3では、芳香族ビニル化合物と共役ジエン含有化合物とを単量体単位として含有し、重量平均分子量(Mw)が1,000~50,000である液状共重合体を含むゴム組成物を原料として使用することで、空気入りタイヤのWET性能および低燃費性の向上を図る技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平08-27313号公報
【特許文献2】特開2008-169295号公報
【特許文献3】特開2016-117880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
空気入りタイヤのWET性能に着目した場合、加硫ゴムの損失正接(tanδ)の最適化を図ることが重要となる。一般に、WET性能は加硫ゴムの0℃でのtanδ(以下、「tanδ(0℃)」とも言う)に大きく依存し、tanδ(0℃)が大きい方が空気入りタイヤのWET性能に優れる。
【0008】
しかしながら、前記特許文献に記載の技術では、加硫ゴムのtanδ(0℃)を大きくすることが難しく、最終製品である空気入りタイヤのWET性能を向上することが困難であることが判明した。本発明は上記実情に鑑みて完成されたものであり、0℃でのtanδが大きい加硫ゴムの原料となるゴム組成物および該ゴム組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
また本発明は、0℃でのtanδが大きい加硫ゴム、該加硫ゴムをゴム部として備え、WET性能に優れた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。即ち本発明は、ジエン系ゴムと、活性水素基を有する第1液晶ポリマーと、主鎖または側鎖にブロックイソシアネート基を有する第2液晶ポリマーとを少なくとも含有するゴム組成物(1)に関する。
【0011】
上記ゴム組成物(1)において、前記第1液晶ポリマーおよび前記第2液晶ポリマーが、液晶相から等方相への転移温度(Ti)が20℃以下のものであるゴム組成物(2)が好ましい。
【0012】
上記ゴム組成物(1)または(2)において、前記第1液晶ポリマーおよび前記第2液晶ポリマーが、液晶ポリウレタンであるゴム組成物(3)が好ましい。
【0013】
また本発明は、上記ゴム組成物(1)~(3)のいずれかを加硫成形してなる加硫ゴム(4)に関する。
【0014】
また、本発明は、上記加硫ゴム(4)をゴム部として備える空気入りタイヤ(5)に関する。
【0015】
さらに本発明は、ジエン系ゴム、活性水素基を有する第1液晶ポリマー、および加硫系配合剤以外の配合剤を混合する第1混合工程と、前記第1混合工程後に得られた混合物に対し、主鎖または側鎖にブロックイソシアネート基を有する第2液晶ポリマーおよび加硫系配合剤を混合する第2混合工程とを有するゴム組成物の製造方法(6)に関する。
【発明の効果】
【0016】
一般的に、ゴム組成物中に親水性の液晶ポリマーを配合した場合、液晶ポリマーは疎水性のジエン系ゴムと非相溶である。このため、液晶ポリマー由来のtanδピークが加硫ゴムでも残存するため(バイナリーピーク)、加硫ゴムのtanδ(0℃)が上昇することが期待される。その一方で、液晶ポリマーとジエン系ゴムとが非相溶であるため、両者の界面強度は低い。このため、液晶ポリマーを配合したゴム組成物の加硫ゴムは機械物性が悪化する虞がある。
【0017】
本発明に係るゴム組成物は、ジエン系ゴムと、活性水素基を有する第1液晶ポリマーと、主鎖または側鎖にブロックイソシアネート基を有する第2液晶ポリマーとを少なくとも含有するため、その加硫ゴムは機械物性が悪化することなく、tanδ(0℃)が大きくなる。このような効果が得られる理由は明らかではないが、以下のように推定可能である。本発明に係るゴム組成物が加硫される際、加硫時の高温下で第2液晶ポリマーが有するブロックイソシアネート基の保護基が外れ、イソシアネート基が生成する。そして、第2液晶ポリマーが有するイソシアネート基は、第1液晶ポリマーが有する活性水素基と反応し、架橋する。また、第1液晶ポリマーおよび第2液晶ポリマーの架橋に並行して、ジエン系ゴムの架橋も独立して進行する。そして、液晶ポリマー同士の架橋とジエン系ゴムの架橋が独立して進行することで、液晶ポリマーとジエン系ゴムとが複雑に絡み合い、相互貫入網目を形成する。その結果、ジエン系ゴムと液晶ポリマーとの界面強度が向上することに伴い、最終的に得られる加硫ゴムの機械強度(引張強度や引裂強度など)も向上することが期待される。加えて、液晶ポリマーとジエン系ゴムとが相互貫入網目を形成する場合、完全に相溶している訳ではないため、液晶ポリマー由来のtanδピークが加硫ゴムにおいても残存する。このため、本発明に係るゴム組成物の加硫ゴムでは、tanδ(0℃)が上昇する。
【0018】
本発明に係る加硫ゴムは、0℃でのtanδが大きく、かつ機械強度にも優れる。したがって、本発明に係る加硫ゴムをゴム部、特にはトレッド部を構成するゴム部として備える空気入りタイヤは、WET性能に優れる。
【0019】
本発明に係るゴム組成物の製造方法は、ジエン系ゴム、活性水素基を有する第1液晶ポリマー、および加硫系配合剤以外の配合剤を混合する第1混合工程と、第1混合工程後に得られた混合物に対し、主鎖または側鎖にブロックイソシアネート基を有する第2液晶ポリマーおよび加硫系配合剤を混合する第2混合工程とを有する。加硫系配合剤を混合する第2混合工程は、第1混合工程に比して低温で混合するため、第2液晶ポリマーが有するブロックイソシアネート基が脱離し難い。したがって、ジエン系ゴム中で第1液晶ポリマーおよび第2液晶ポリマーが十分に分散した状態で架橋するため、液晶ポリマーとジエン系ゴムとがより高次元に相互貫入網目を形成する。その結果、本発明に係るゴム組成物の製造方法により製造されたゴム組成物の加硫ゴムは、0℃でのtanδが大きく、かつ機械強度にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係るゴム組成物は、ジエン系ゴムと、活性水素基を有する第1液晶ポリマーと、主鎖または側鎖にブロックイソシアネート基を有する第2液晶ポリマーとを少なくとも含有する。
【0021】
ジエン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリスチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)などが挙げられる。必要に応じて、末端を変性したもの(例えば、末端変性BR、末端変性SBRなど)、あるいは所望の特性を付与すべく改質したもの(例えば、改質NR)も好適に使用可能である。また、ポリブタジエンゴム(BR)については、コバルト(Co)触媒、ネオジム(Nd)触媒、ニッケル(Ni)触媒、チタン(Ti)触媒、リチウム(Li)触媒を用いて合成したものに加えて、WO2007-129670に記載のメタロセン錯体を含む重合触媒組成物を用いて合成したものも使用可能である。
【0022】
空気入りタイヤの低燃費性を考慮した場合、ポリスチレンブタジエンゴムについては、スチレン含有量10~40質量%、ブタジエン部のビニル結合量10~70質量%、およびcis分10質量%以上であるものが好ましく、スチレン含有量15~25質量%、ブタジエン部のビニル結合量10~60質量%、およびcis分20質量%以上であるものが特に好ましい。また、本発明に係るゴム組成物を空気入りタイヤのトレッドゴム部として使用する場合、油添タイプよりも非油添タイプのポリスチレンブタジエンゴムを使用することが好ましい。
【0023】
活性水素基を有する第1液晶ポリマーとしては、液晶ポリウレタンであることが好ましい。液晶ポリウレタンについては後述する。
【0024】
第2液晶ポリマーは、主鎖または側鎖にブロックイソシアネート基を有する。かかる第2液晶ポリマーとしては、例えば活性水素基を有する第1液晶ポリマーの主鎖あるいは側鎖にブロックイソシアネート基を導入したものであってもよい。ブロックイソシアネート基は、イソシアネート基が保護基によって保護されている形態を指し、保護基としてはε-カプロラクタム、1,2-ピラゾール、ブタノンオキシム、1,2,4-トリアゾール、ジイソプロピルアミン、3,5-ジメチルピラゾール、ジエチルマロネート、ジメチルマロネート、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、N,N’-ジフェニルホルムアミジンなどが挙げられる。
【0025】
第1液晶ポリマーを構成するポリマーの主鎖あるいは側鎖にブロックイソシアネート基を導入する方法としては、例えば、少なくとも1つ以上のイソシアネート基を保護基により保護された多官能イソシアネート化合物と、第1液晶ポリマーを構成するポリマーが有する活性水素基との、縮合反応または置換反応などにより導入する方法が挙げられる。第2液晶ポリマーを構成するポリマーの有する活性水素基のブロックイソシアネート基の置換率は、0.1~30mol%が好ましく、1~20mol%であることがより好ましい。
【0026】
本発明に係るゴム組成物中、第1液晶ポリマーおよび第2液晶ポリマーの合計の配合量は、加硫ゴムのtanδ(0℃)をより大きくする見地から、ジエン系ゴムの全量を100質量部としたとき、1~50質量部に設計することが好ましく、3~50質量部であることがより好ましく、5~20質量部であることが特に好ましい。
【0027】
本発明においては、加硫ゴムのtanδ(0℃)をより大きくする見地から、第1液晶ポリマーおよび第2液晶ポリマーは、液晶相から等方相への転移温度(Ti)が20℃以下のものであることが好ましく、Tiが5℃以下であることがより好ましい。
【0028】
本発明においては、第1液晶ポリマーおよび第2液晶ポリマーが、液晶ポリウレタンであることがより好ましい。特に本発明においては、第1液晶ポリマーが、少なくとも活性水素基を有するメソゲン基含有化合物と、イソシアネート化合物との反応物であり、第2液晶ポリマーが、少なくとも活性水素基を有するメソゲン基含有化合物と、イソシアネート化合物との反応物の主鎖または側鎖にブロックイソシアネート基が導入されたものであることが好ましい。以下、液晶ポリウレタンの各構成について説明する。
【0029】
活性水素基を有するメソゲン基含有化合物としては、例えば、下記の一般式(1)で表される化合物が使用可能である。
【化1】
【0030】
上記一般式(1)において、Xは活性水素基であり、Rは隣接する結合基の一部をなす単結合、-N=N-、-CO-、-CO-O-、または-CH=N-であり、Rは隣接する結合基の一部をなす単結合、または-O-であり、Rは隣接する結合基の一部をなす単結合、または炭素数1~20のアルキレン基である。ただし、Rが-O-であり、且つRが隣接する結合基の一部をなす単結合であるものを除く。)なお、「隣接する結合基の一部をなす単結合」とは、当該単結合が隣接する結合基の一部と共有されている状態を意味する。例えば、上記一般式(1)において、Rが隣接する結合基の一部をなす単結合である場合、単結合であるRは両側のベンゼン環と共有された状態となり、当該両側のベンゼン環とともにビフェニル構造を形成する。Xとしては、例えば、OH、SH、NH、COOH、二級アミンなどが挙げられる。メソゲン基含有化合物の配合量は、液晶ポリウレタンの原材料全体の中で、30~80質量%、好ましくは40~70質量%となるように調整される。メソゲン基含有化合物の配合量が30質量%未満の場合、生成したポリマーに液晶性が発現し難くなる。メソゲン基含有化合物の配合量が80質量%を超える場合、液晶相から等方相への転移温度(Ti)が高くなり、常温を含む低温領域でポリマーを成形することが困難となる。
【0031】
メソゲン基含有化合物には、アルキレンオキシドおよび/またはスチレンオキシドを併用することが好ましい。アルキレンオキシドおよび/またはスチレンオキシドは、液晶ポリウレタンにおける液晶相の発現温度を低下させるように機能するため、メソゲン基含有化合物にアルキレンオキシドおよび/またはスチレンオキシドを併用して生成した液晶ポリウレタンは、液晶相から等方相への転移温度(Ti)を所望の温度範囲に容易に設計可能となる。アルキレンオキシドは、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、またはブチレンオキシドを使用することができる。上掲のアルキレンオキシドは、単独で使用してもよいし、複数種を混合して使用してもよい。スチレンオキシドについては、ベンゼン環にアルキル基、アルコキシ基、ハロゲンなどの置換基を有するものでもよい。アルキレンオキシドは、上掲のアルキレンオキシドと、上掲のスチレンオキシドとを混合したものを使用することも可能である。アルキレンオキシドおよび/またはスチレンオキシドの配合量は、メソゲン基含有化合物1モルに対して、アルキレンオキシドおよび/またはスチレンオキシドが4~25モル、好ましくは6~20モル付加されるように調整される。
【0032】
イソシアネート化合物は、例えば下記に示すジイソシアネート化合物を使用することができる。ジイソシアネート化合物を例示すると、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-キシリレンジイソシアネート、およびm-キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;エチレンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート、および1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート;並びに1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、およびノルボルナンジイソシアネートなどの脂環式ジイソシアネートなどが挙げられる。例示したジイソシアネート化合物は、単独で使用してもよいし、複数種を混合して使用してもよい。なお、本発明ではイソシアネート化合物として3官能以上のイソシアネート化合物を併用しても良いが、最終的に液晶ポリウレタンを熱可塑性ポリマーの性状にて、ゴム組成物中に均一に分散させるためには、使用するイソシアネート化合物の全量を100質量%としたとき、ジイソシアネート化合物の割合は98質量%以上であることが好ましく、99質量%以上であることがより好ましく、略100質量%であることがさらに好ましい。3官能以上のイソシアネート化合物を例示すると、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオホスフェート、リジンエステルトリイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、1,8-ジイソシアネート-4-イソシアネートメチルオクタン、ビシクロヘプタントリイソシアネートなどのトリイソシアネート、およびテトライソシアネートシランなどのテトライソシアネートが挙げられる。
【0033】
液晶ポリウレタンを構成するメソゲン基含有化合物の全量を100質量部としたとき、イソシアネート化合物の割合は5~40質量部であることが好ましく、10~30質量部であることがより好ましい。イソシアネート化合物の配合量が5質量部未満である場合、ウレタン反応による高分子化が不十分となる。一方、イソシアネート化合物の割合が40質量部を超える場合、液晶ポリウレタンの原材料全体に占めるメソゲン基含有化合物の配合量が相対的に少なくなるため、液晶ポリウレタンの液晶性が低下する。
【0034】
なお、イソシアネート化合物が有するイソシアネート基は、メソゲン基含有化合物が有する水酸基などの活性水素基と反応し得る。メソゲン基含有化合物が有する活性水素基の理論量に対するイソシアネート化合物が有するイソシアネート基の理論量であるNCO INDEX(NCO/OH)は、第1液晶ポリマーについては0.5~0.99であることが好ましく、0.7~0.99であることが好ましい。第1液晶ポリマーのNCO INDEXが0.5未満である場合、ポリマー分子量が低く、その粘度が過度に小さくなるため、ゴム組成物中に配合した際、分散不良が生ずる可能性がある。一方、第1液晶ポリマーのNCO INDEXが0.99を超えると、第1液晶ポリマーの水酸基不足に起因して、最終的に第2液晶ポリマーの脱離したイソシアネート基との反応点が不足し、液晶ポリマーとジエン系ゴムとの相互貫入網目が十分に形成され難くなる。一方、第2液晶ポリマーのNCO INDEXについては、ブロックイソシアネート基を導入する前段階では1.05~1.8であることが好ましく、1.1~1.3であることがより好ましい。ブロックイソシアネート基を導入する前段階での第2液晶ポリマーのNCO INDEXが1.05未満である場合、第1液晶ポリマーの水酸基と反応し得るイソシアネート基の数が不足し、液晶ポリマーとジエン系ゴムとの相互貫入網目が十分に形成され難くなる。一方、ブロックイソシアネート基を導入する前段階での第2液晶ポリマーのNCO INDEXが1.8を超えると、ポリマー分子量が低く、その粘度が過度に小さくなるため、ゴム組成物中に配合した際、分散不良が生ずる可能性がある。なお、ブロックイソシアネート基を導入後の第2液晶ポリマーのNCO INDEXについては、0.95~1.05であることが好ましい。
【0035】
本発明においては、液晶ポリウレタンを製造するに際して、活性水素基を有するメソゲン基含有化合物と、イソシアネート化合物とに加え、液晶ポリウレタンの原材料として、活性水素基含有化合物を使用してもよい。活性水素基含有化合物としては、例えば、ポリオール化合物、アミン化合物が挙げられる。ポリオール化合物としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリカーボネートポリオール、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、meso-エリトリトール、ペンタエリスリトール、テトラメチロールシクロヘキサン、メチルグルコシド、ソルビトール、マンニトール、ズルシトール、スクロース、2,2,6,6-テトラキス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサノール、ジエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、およびトリエタノールアミンなどが挙げられる。アミン化合物としては、エチレンジアミン、トリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、ジエチレントリアミン、モノエタノールアミン、2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール、およびモノプロパノールアミンなどが挙げられる。上掲の各活性水素基含有化合物は、単独で使用してもよいし、複数種を混合して使用してもよい。上掲の各活性水素基含有化合物は、必要に応じて、アルキレンオキシドおよび/またはスチレンオキシドを0.5~20当量程度付加させて使用してもよい。
【0036】
本発明においては、液晶ポリウレタンを製造するに際して、上記活性水素基含有化合物の中でも、活性水素基を2以上有する多官能の活性水素基含有化合物を使用すると、tanδ(0℃)がより大きな加硫ゴムが得られるため好ましい。例えば多官能の活性水素基含有化合物として、ソルビトールの各々の活性水素基に平均してプロピレンオキサイドを2当量付加した化合物を使用した場合、液晶ポリウレタンを構成するメソゲン基含有化合物の全量を100質量部としたとき、該化合物の割合は0.01~30質量部であることが好ましく、0.5~15質量部であることがより好ましい。
【0037】
活性水素基を有するメソゲン基含有化合物と、イソシアネート化合物と、活性水素基含有化合物とを反応させる場合、当業者に公知のウレタン重合触媒を使用してもよい。かかる重合触媒としては、ジブチル錫ジラウレートやオクチル酸錫などの有機錫系触媒、トリエチレンジアミンおよびその誘導体、N-メチルモルホリン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7(DBU)、ビス(N,N-ジメチルアミノ-2-エチル)エーテル、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテルなどの第3級アミン系触媒、酢酸カリウム、オクチル酸カリウムなどのカルボン酸金属塩触媒、イミダゾール系触媒などが挙げられる。これらの中でも、トリエチレンジアミンおよびその誘導体の使用が好ましい。
【0038】
液晶ポリウレタンを製造するに際して、製造条件としては、少なくとも活性水素基を有するメソゲン基含有化合物と、イソシアネート化合物とを例えば60~150℃に加熱した状態で加熱溶融しつつ、反応させる方法が挙げられる。
【0039】
本発明に係るゴム組成物には、前記ジエン系ゴム、第1液晶ポリマーおよび第2液晶ポリマーに加えて、カーボンブラック、シリカ、シランカップリング剤、老化防止剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、ワックス、オイルなどの軟化剤、および加工助剤などの各種配合剤を配合することができる。
【0040】
カーボンブラックは、例えばSAF、ISAF、HAF、FEF、GPFなど、通常のゴム工業で使用されるカーボンブラックの他、アセチレンブラックやケッチェンブラックなどの導電性カーボンブラックを使用することができる。
【0041】
シリカとしては、湿式シリカ、乾式シリカを用いることができるが、特に、含水ケイ酸を主成分とする湿式シリカを用いることが好ましい。
【0042】
シランカップリング剤としては、ジエン系ゴムに対し反応活性を有するシランカップリング剤を使用する。本発明において使用可能なシランカップリング剤としては、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(例えば、デグサ社製「Si69」)、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド(例えば、デグサ社製「Si75」)、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエキトシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィドなどのスルフィドシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、メルカプトエチルトリエトキシシランなどのメルカプトシラン、3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン、3-プロピオニルチオプロピルトリメトキシシランなどの保護化メルカプトシランが挙げられる。
【0043】
老化防止剤としては、ゴム用として通常用いられる、芳香族アミン系老化防止剤、アミン-ケトン系老化防止剤、モノフェノール系老化防止剤、ビスフェノール系老化防止剤、ポリフェノール系老化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系老化防止剤、チオウレア系老化防止剤などの老化防止剤を単独、または適宜混合して使用しても良い。
【0044】
加硫系配合剤以外の配合剤を混合する工程の後、さらに加硫系配合剤を混合・分散させる。加硫系配合剤を混合する工程において使用する加硫系配合剤としては、硫黄、有機過酸化物などの加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、加硫遅延剤などが挙げられる。
【0045】
硫黄系加硫剤としての硫黄は通常のゴム用硫黄であればよく、例えば粉末硫黄、沈降硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などを用いることができる。
【0046】
加硫促進剤としては、ゴム加硫用として通常用いられる、スルフェンアミド系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤などの加硫促進剤を単独、または適宜混合して使用しても良い。
【0047】
本発明に係るゴム組成物は、ジエン系ゴム、第1液晶ポリマーおよび第2液晶ポリマー、必要に応じてカーボンブラック、シリカ、シランカップリング剤、加硫系配合剤、老化防止剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、ワックス、やオイルなどの軟化剤、加工助剤などを、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなどの通常のゴム工業において使用される混練機を用いて混練りすることにより得られる。
【0048】
また、上記各成分の配合方法は特に限定されず、第1液晶ポリマーおよび第2液晶ポリマー、硫黄系加硫剤、および加硫促進剤などの加硫系配合剤以外の配合成分を予め混練してマスターバッチとし、残りの成分を添加してさらに混練する方法、各成分を任意の順序で添加し混練する方法、全成分を同時に添加して混練する方法などのいずれでもよい。
【0049】
ただし、本発明においては、以下の製造方法によりゴム組成物を製造することが好ましい。
ジエン系ゴム、活性水素基を有する第1液晶ポリマー、および加硫系配合剤以外の配合剤を混合する第1混合工程と、前記第1混合工程後に得られた混合物に対し、主鎖または側鎖にブロックイソシアネート基を有する第2液晶ポリマーおよび加硫系配合剤を混合する第2混合工程とを有するゴム組成物の製造方法。
【0050】
第1混合工程において、ジエン系ゴム、活性水素基を有する第1液晶ポリマー、および加硫系配合剤以外の配合剤を混合する際の混合温度は、130~170℃であることが好ましい。なお、第1混合工程後に得られた混合物が水分を含む場合、第2混合工程で第2液晶ポリマーが有するブロックイソシアネート基が脱離した後のイソシアネート基と水分とが反応し、液晶ポリマーとジエン系ゴムとの相互貫入網目が十分に形成され難くなる場合がある。このため、第1混合工程において配合剤としてシリカを配合する場合、必要に応じて第1混合工程を2回以上実施することでシリカに含まれる水分を十分に乾燥させた後、第2混合工程を実施することが好ましい。
【0051】
上記第2混合工程において、第1混合工程後に得られた混合物に対し、主鎖または側鎖にブロックイソシアネート基を有する第2液晶ポリマーおよび加硫系配合剤を混合する際の混合温度は、50~100℃であることが好ましい。
【0052】
上記第2混合工程後に得られた混合物を所定の形状の金型内に配置し、150~170℃で5~40分間加熱加硫し、加硫ゴムを製造することにより、第1液晶ポリマーおよび第2液晶ポリマーの架橋体とジエン系ゴムとが複雑に絡み合い、相互貫入網目が形成された加硫ゴムを製造することができる。かかる加硫ゴムは、tanδ(0℃)が大きく、かつ機械強度(引張強度や引裂強度など)にも優れる。したがって、例えば空気入りタイヤのトレッド部材として特に有用である。
【実施例0053】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例などについて説明する。なお、実施例などにおける評価項目は下記のようにして測定を行った。
【0054】
<転移温度(Ti)>
第1液晶ポリマー1および第1液晶ポリマー2、さらに第2液晶ポリマー1および第2液晶ポリマー2について、示唆走査熱量分析計[DSC](品名:X-DSC 7000、日立ハイテクサイエンス社製)を使用し、転移温度(Ti)を測定した。
【0055】
<動的粘弾性測定>
実施例1~2のゴム組成物、および比較例1~3のゴム組成物について、160℃で20分間加熱することで加硫を行い、所定形状に成形して測定試料とした。各測定試料について、動的粘弾性測定装置(製品名「全自動粘弾性アナライザ VR-7110」、上島製作所社製)により貯蔵弾性率(E’)及び損失弾性率(E”)を測定し、tanδ(0℃)およびtanδ(60℃)を求めた。表2は、比較例1のtanδの値を100とした指数で表示してある。測定条件は以下のとおりである。
測定試料のサイズ:長さ40mm、幅3mm、厚み2mm
測定モード :引張モード
測定温度 :0℃、60℃
周波数 :100Hz
動歪み :0.15%
【0056】
<引裂強度測定>
JIS K6252規定のクレセント形で打ち抜き、くぼみ中央に0.50±0.08mmの切れ込みを入れた試験用サンプルを作製し、該試験用サンプルについて、引張り試験機によって500mm/分の引張り速度で試験を行った。比較例1の値を100として指数で表示し、指数が大きいほど、引き裂き力が大きく、引裂強度に優れることを意味する。
【0057】
(メソゲンジオールの製造)
反応容器に、活性水素基を有するメソゲン基含有化合物としてBH6(500g)、水酸化カリウム(19g)、及び溶媒としてN,N-ジメチルホルムアミド(3000ml)を入れて混合し、さらに、アルキレンオキシドとしてプロピレンオキシドを1モルのBH6に対して16.8当量添加し、これらの混合物を、加圧条件下、120℃で2時間反応させた(付加反応)。次いで、反応容器にシュウ酸(15g)を添加して付加反応を停止させ、反応液中の不溶な塩を吸引ろ過によって除去し、さらに、反応液中のN,N-ジメチルホルムアミドを減圧蒸留法により除去することにより、メソゲンジオールを得た。メソゲンジオールの水酸基価は82である。メソゲンジオールの合成スキームを式(2)に示す。なお、式(2)中に示したメソゲンジオールは代表的なものであり、種々の構造異性体を含み得る。式(2)中のn*は平均8.4である。
【0058】
【化2】
【0059】
(第1液晶ポリマー1および第1液晶ポリマー2の製造)
メソゲンジオール100質量部に対し、イソシアネート化合物として1,5-PDI(1,5-ペンタメチレンジイソシアネート)(東京化成工業株式会社製)、活性水素基含有化合物として、ソルビトールを開始剤として、各々の活性水素基にプロピレンオキシドを2当量ずつ付加した化合物(商品名「EXCENOL385SO(AGC社製)」を表1に記載の配合比で配合し、これらを撹拌しながら80℃で混合し、第1液晶ポリマー1および第1液晶ポリマー2を製造した。
【0060】
(第2液晶ポリマー1および第2液晶ポリマー2の製造)
最初にブロック剤としてDMP(ジメチルピラゾール(東京化成工業社製))と、イソシアネート化合物として1,5-PDI(1,5-ペンタメチレンジイソシアネート)(東京化成工業株式会社製)とを80℃にて30分間撹拌・混合することにより、1,5-ペンタメチレンジイソシアネートに保護基を導入した。メソゲンジオール100質量部に対し、この保護基を導入したブロックイソシアネートと、活性水素基含有化合物として、ソルビトールを開始剤として、各々の活性水素基にプロピレンオキシドを2当量ずつ付加した化合物(商品名「EXCENOL385SO(AGC社製)を表1に記載の配合比で配合し、これらを撹拌しながら80℃で混合し、第2液晶ポリマー1および第2液晶ポリマー2を製造した。なお、表1中の第2液晶ポリマー1および第2液晶ポリマー2のNCO INDEXはブロックイソシアネート基を導入する前段階(ブロック剤と1,5-ペンタメチレンジイソシアネートとを反応させていないと仮定した場合)のNCO INDEXを示しており、ブロックイソシアネート基を導入後のNCO INDEXは1.0となるよう調整した。
【0061】
【表1】
【0062】
(実施例1~2のゴム組成物の製造)
得られた第1液晶ポリマー1および第1液晶ポリマー2、ならびに第2液晶ポリマー1および第2液晶ポリマー2を、ラボミキサー(製品名:ラボプラストミル、東洋精機製作所社製)を使用してジエン系ゴム(SBR、商品名:SL563、JSR社製)に配合した。配合手順は、表2に記載の配合比率で、初めに第一段階として、SBRに対しシリカ(商品名:ニップシールAQ、東ソー・シリカ社製)、シランカップリング剤(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、商品名:Si69、エボニック・デグザ社製)、第1液晶ポリマー1および第1液晶ポリマー2、亜鉛華(商品名:亜鉛華1種、三井金属鉱業社製)、ステアリン酸(商品名:ルナックS-20、花王株式会社製)、および老化防止剤(商品名:ノクラック6C、大内新興化学工業株式会社製)を添加して150℃で混練した(第1混合工程)。次に第1混合工程後に得られた混合物に第2液晶ポリマー1および第2液晶ポリマー2、硫黄(ゴム用粉末硫黄150メッシュ、細井化学工業社製)、および加硫促進剤(商品名:ノクセラーCZ(1次加硫促進剤)、ノクセラーD(2次加硫促進剤)、いずれも大内新興化学工業社製)を添加して90℃で混練し(第2混合工程)、得られたものを実施例1~2のゴム組成物とした。
【0063】
(比較例1~3のゴム組成物の製造)
第1液晶ポリマーおよび第2液晶ポリマーを配合しないこと以外は同じ配合剤を同じ順序で混合したこと以外は同じ方法で比較例1のゴム組成物を製造した。また、第1混合工程で第1液晶ポリマー1および第1液晶ポリマー2を表2に記載の配合量で配合し、第2混合工程では第2液晶ポリマーを配合しないこと以外は同じ方法で比較例2および3のゴム組成物を製造した。
【0064】
【表2】
【0065】
表2の結果から、実施例1~2に係るゴム組成物の加硫ゴムはtanδ(0℃)が大きく増大していることがわかる。また、この結果から、トレッド部を構成するゴム部としてかかる加硫ゴムを備える空気入りタイヤは、WET性能が向上することが理解できる。また、実施例1~2に係るゴム組成物の加硫ゴムは、ジエン系ゴムと液晶ポリマーとの界面強度が向上した結果、加硫ゴムの機械強度(引裂強度)が向上することがわかる。なお、実施例1~2に係るゴム組成物の加硫ゴムは、低燃費性の尺度となるtanδ(60℃)の増大が抑制されており、tanδ(0℃)とtanδ(60℃)とのバランスが改良されていることが分かる。したがって、トレッド部を構成するゴム部として、実施例1~2に係るゴム組成物の加硫ゴムを備える空気入りタイヤは、低燃費性を確保しつつ、WET性能が向上することが理解できる。一方、比較例2~3に係るゴム組成物の加硫ゴムはtanδ(0℃)の上昇割合が低く、さらにジエン系ゴムと液晶ポリマーとの界面強度が低下した結果、加硫ゴムの機械強度(引裂強度)が悪化することがわかる。