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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093543
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】プラズマ加工装置用パルス電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 9/06 20060101AFI20240702BHJP
   H02M 3/155 20060101ALI20240702BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20240702BHJP
【FI】
H02M9/06 Z
H02M3/155 H
H02M7/48 E
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209998
(22)【出願日】2022-12-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】392026888
【氏名又は名称】京都電機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】弁理士法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤吉 敏一
(72)【発明者】
【氏名】小西 庸平
【テーマコード(参考)】
5H730
5H770
【Fターム(参考)】
5H730AS05
5H730BB13
5H730BB27
5H730CC02
5H730EE04
5H730EE07
5H730EE13
5H730EE59
5H730FD01
5H730FD31
5H770CA01
5H770CA02
5H770DA01
5H770DA41
(57)【要約】
【課題】パルス電圧の繰り返し周波数を高くする場合でも、急峻な立上り及び立下りとパルス頂部の波形形状の柔軟性とを両立させる。
【解決手段】本発明の一態様であるプラズマ加工装置用パルス電源装置は、交流電力に基いて出力電圧波形の1周期分に対応する電圧パターン情報によるピーク電圧値に応じた直流高電圧を生成する高電圧生成部2と、電圧パターン情報による時間経過に対応するパターン形状の変化に従って、高電圧をスイッチングするPWM方式のコンバータであるパルス頂部波形整形部3と、キャリア信号成分を除去するフィルタ4と、複数の半導体スイッチング素子、共振リアクトル、共振コンデンサ、を有し、LC共振を利用してパルス電圧の急峻な立上り部及び立下り部をそれぞれ形成するパルス端部波形整形部5と、を備える。パルス頂部とパルス端部をそれぞれに特化した回路で生成することにより、急峻に立上げ及び立下げを行うとともにパルス頂部の波形形状の柔軟性を可能とし得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ加工装置において加工処理を行うためのプラズマ負荷に繰り返しパルス電圧を印加するプラズマ加工装置用パルス電源装置であって、
a)外部から供給される交流電力に基いて、当該パルス電源装置からの出力電圧波形の少なくとも1周期分に対応する電圧パターン情報によるピーク電圧値に応じた、絶対値が該ピーク電圧値以上である高電圧を生成する高電圧生成部、
b)前記電圧パターン情報による時間経過に対応するパターン形状の変化に従って、前記高電圧をスイッチングするコンバータである波形整形部、及び、前記波形整形部から出力される電圧波形に重畳している該波形整形部でのスイッチングに伴う不要な信号成分を除去するフィルタ、を含み、前記繰り返しパルス電圧の頂部の電圧波形を形成するパルス頂部波形形成部と、
c)前記パルス頂部波形形成部からの出力電圧が与えられる一対の電位線間に接続された電源コンデンサ、前記一対の電位線間に配置された複数の半導体スイッチング素子を含むブリッジ回路、該ブリッジ回路の中点と電圧出力端との間に接続された共振リアクトル、及び、前記電圧出力端と前記一対の電位線の一方との間に接続された共振コンデンサ、を有し、前記パルス頂部波形形成部により形成された周期的な電圧の変化に同期した所定のタイミングで前記複数の半導体スイッチング素子をオン・オフ動作させて前記共振リアクトルと前記共振コンデンサとの共振による共振電流を流し、該共振電流による電圧波形を部分的に利用して、前記繰り返しパルス電圧の立上り部及び立下り部をそれぞれ形成するパルス端部波形形成部と、
を備えるプラズマ加工装置用パルス電源装置。
【請求項2】
前記高電圧生成部、前記パルス頂部波形形成部、及び前記パルス端部波形形成部の組を複数備え、該複数のパルス端部波形形成部の出力を直列に合成するとともに、該複数の組を同位相で駆動することにより出力を加算する、請求項1に記載のプラズマ加工装置用パルス電源装置。
【請求項3】
前記高電圧生成部、前記パルス頂部波形形成部、及び前記パルス端部波形形成部の組を複数備え、該複数のパルス端部波形形成部の出力を直列に合成するとともに、該複数の組を時分割で駆動する、請求項1に記載のプラズマ加工装置用パルス電源装置。
【請求項4】
互いに異なる組において同極性のパルス電圧を生成する、請求項3に記載のプラズマ加工装置用パルス電源装置。
【請求項5】
前記複数の組の少なくとも一つの組の出力が他の組とは異なる極性のパルス電圧となるように、前記パルス頂部波形形成部の出力配線の接続を入れ替え可能とした、請求項3に記載のプラズマ加工装置用パルス電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種のプラズマ加工装置に用いられるパルス電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、半導体プロセスを始めとする様々な分野において、プラズマを利用して対象物に対しエッチング、スパッタリングなどの加工処理を施すプラズマ加工装置が用いられている。こうしたプラズマ加工装置に使用される電源装置では、数百V~数kV程度の波高値の高電圧パルスを生成する必要がある。
【0003】
こうした電源装置として、特許文献1、2に記載のものが知られている。この電源装置では、リアクトルと容量性負荷回路とを含む共振回路での共振現象を利用して、直流パルス電圧の立上り波形及び立下り波形を形成している。こうした手法によって、直流パルス電圧の損失を抑えながら、高電圧である直流パルス電圧の立上り時間及び立下り時間を短縮することが可能である。
【0004】
一方で、プラズマ加工装置用の電源装置には、その加工の目的や対象物の種類、加工の方式などに応じて、直流パルス電圧の立上りや立下りを緩慢に行いたい、或いは、特定の二つの電圧レベルのパルス電圧だけでなく、多段階の電圧レベルのパルス電圧を使用したい、といった様々な要望がある。こうした要望に対し、特許文献3に記載の電源装置では、PWM制御を利用して高電圧パルスの立上り部、立下り部、パルス頂部を含めて様々なパルス波形を低損失で柔軟に形成することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6810316号公報
【特許文献2】特許第6810317号公報
【特許文献3】特許第7011118号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】S.-B.Wang、ほか1名、「Control of ion energy distribution at substrates during plasma processing」、JOURNAL OF APPLIED PHYSICS、Vol. 88、No. 2、15 JULY 2000、pp.643-646
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1等の記載によれば、基板(ウエハ)に対するプラズマ処理において、電源装置からプラズマ加工装置に供給する高電圧パルスの頂部の電圧変化を鋸波状とし、プラズマ負荷の諸条件に合わせてこの鋸波状の電圧変化を制御することにより、ウエハ上における電位の時間変動を平坦な矩形波状とすることが、該ウエハ上のイオンエネルギーを適切に制御するうえで望ましい場合があるとされている。上述した特許文献3に記載の電源装置では、こうした波形形状の高電圧パルスも生成することが可能である。
【0008】
しかしながら、パルス電圧の繰り返し周波数を例えば数百kHz以上もの高い周波数としたい場合、パルス電圧の立上り及び立下りにそれぞれ要求される時間は50~100nsecとかなり短い。こうした立上り及び立下りの高速化への対応は、特許文献3に記載の方式では困難である。特許文献3に記載の方式においても、技術的には、PWMキャリア周波数をより高くしたりマルチフェーズ化を拡大したりすることによって、PWM制御周波数をさらに高めることは可能であるものの、スイッチング素子での電力損失の増大や回路の複雑化などに伴うコストアップが問題となり、あまり実用的ではない。
【0009】
本発明はこうした課題を解決するためになされたものであり、その主な目的は、パルス電圧の繰り返し周波数を高くする場合であっても、急峻な立上り及び立下りと、パルス頂部の波形設定の柔軟性とを両立させることができるプラズマ加工装置用のパルス電源装置を提供することにある。
【0010】
なお、パルス電圧は、パルスが発生していない状態を0Vとした場合にパルスが正電圧側に(つまり一般的な波形図において上側に)現れるもの(正極性パルス)と負電圧側に(つまり一般的な波形図において下側に)現れるもの(負極性パルス)とがあり、目的等に応じて使い分けられる。本開示における電源装置から出力される単極性パルスは正極性パルス、負極性パルスのいずれでもよいため、本明細書では、パルスの電圧値に関して絶対値で考えるものとする。従って、例えば、正極性、負極性パルスともに、パルスの立上りは電圧が増加又は上昇するものとし、パルスの立下りは電圧が減少又は低下するものとする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するためになされた本発明の一態様は、プラズマ加工装置において加工処理を行うためのプラズマ負荷に繰り返しパルス電圧を印加するプラズマ加工装置用パルス電源装置であって、
a)外部から供給される交流電力に基いて、当該パルス電源装置からの出力電圧波形の少なくとも1周期分に対応する電圧パターン情報によるピーク電圧値に応じた、絶対値が該ピーク電圧値以上である高電圧を生成する高電圧生成部、
b)前記電圧パターン情報による時間経過に対応するパターン形状の変化に従って、前記高電圧をスイッチングするコンバータである波形整形部、及び、前記波形整形部から出力される電圧波形に重畳している該波形整形部でのスイッチングに伴う不要な信号成分を除去するフィルタ、を含み、前記繰り返しパルス電圧の頂部の電圧波形を形成するパルス頂部波形形成部と、
c)前記パルス頂部波形形成部からの出力電圧が与えられる一対の電位線間に接続された電源コンデンサ、前記一対の電位線間に配置された複数の半導体スイッチング素子を含むブリッジ回路、該ブリッジ回路の中点と電圧出力端との間に接続された共振リアクトル、及び、前記電圧出力端と前記一対の電位線の一方との間に接続された共振コンデンサ、を有し、前記パルス頂部波形形成部により形成された周期的な電圧の変化に同期した所定のタイミングで前記複数の半導体スイッチング素子をオン・オフ動作させて前記共振リアクトルと前記共振コンデンサとの共振による共振電流を流し、該共振電流による電圧波形を部分的に利用して、前記繰り返しパルス電圧の立上り部及び立下り部をそれぞれ形成するパルス端部波形形成部と、
を備える。
【0012】
上記態様のパルス電源装置において、電圧パターン情報は例えば、繰り返しパルス電圧の1周期内の所定時間間隔を有する各時点における電圧値を示すものである。高電圧生成部は、出力パルス電圧波形のピーク電圧又はそれ以上の電圧値を持つ高電圧を生成する。パルス頂部波形形成部の波形整形部は例えば位相シフトPWM方式のマルチレベルコンバータであり、電圧パターン情報に基いて、高電圧生成部から与えられた電圧を各段のコンバータでそれぞれPWM制御することでパルス電圧を生成し、その複数のパルス電圧を合成して出力する。フィルタはこの電圧波形に重畳しているキャリア成分を除去する。
【0013】
次のパルス端部波形形成部では、パルス頂部波形形成部で生成された電圧を受け、ブリッジ回路を構成する複数の半導体スイッチング素子を所定のタイミングでオン・オフ動作させる。一例として、ブリッジ回路が、第1半導体スイッチング素子と第2半導体スイッチング素子とが直列に接続された第1の直列回路と、第3半導体スイッチング素子と第4半導体スイッチング素子とが直列に接続された第2の直列回路と、を有するものとし、共振リアクトルが、第1半導体スイッチング素子と第2半導体スイッチング素子との接続部と、電圧出力端である第3半導体スイッチング素子と第4半導体スイッチング素子との接続部と、の間に接続されているものとする。この場合、第1半導体スイッチング素子と第2半導体スイッチング素子とは所定の時間間隔を空けて交互にオン動作され、第3半導体スイッチング素子は、第1半導体スイッチング素子がオフしてから第2半導体スイッチング素子がオンするまでの間オン動作され、第4半導体スイッチング素子は、第2半導体スイッチング素子がオフしてから第1半導体スイッチング素子がオンするまでの間オン動作される。
【0014】
いま、一対の電位線のうちの一方が接地されているものとする。電源コンデンサはパルス頂部波形形成部の出力電圧値である電位Vsに充電される。例えば、直流パルス電圧を電位0から電位Vsまで立ち上げる際に、第1半導体スイッチング部がオンされると、共振リアクトルと、共振コンデンサとのLC共振による共振電流が流れ、該電流が共振コンデンサを充電する。これにより、電圧出力端の電圧は立ち上がる。共振電流を供給する電源コンデンサの共振初期電圧はVsであるため、電圧出力端の電圧がVsを超えると、第3半導体スイッチング素子の寄生ダイオードがオンし、電圧出力端の電圧上昇は停止する。そのあと、第3半導体スイッチング素子がターンオンされると、電圧出力端は高電位線に短絡され、電圧出力端の電位はVsにクランプされる。
【0015】
一方、パルス電圧を電位Vsから電位0にまで立ち下げる際に、第2半導体スイッチング素子がオンされると、LC共振による共振電流が共振リアクトルを先とは逆方向に流れ、電圧出力端の電圧は低下する。電圧出力端の電圧が0を下回ると第4半導体スイッチング素子の寄生ダイオードがオンし、電圧出力端の電圧降下は止まる。そのあと、第4半導体スイッチング素子がターンオンされると、電圧出力端は低電位線に短絡され、電圧出力端の電位は0Vにクランプされる。
【0016】
このように共振波形の立上り及び立下りのスロープの一部のみを利用した部分共振方式によってパルス電圧の立上り及び立下りが形成される。一方、パルス電圧の頂部の波形は、予め決められた電圧パターン情報に応じたものとなる。これにより、パルス頂部の波形形状はユーザの要望に応じて適宜に決めることができる。
【0017】
なお、パルス頂部波形形成部は、各々が、少なくとも一組の相補スイッチ、又は該相補スイッチの代わりとなる一個のスイッチと一個のダイオードとの組合せ、を含む波形整形ユニットを複数直列に接続した、位相シフトPWM方式によるマルチレベルカスケードコンバータである構成とすることができる。
【0018】
本発明に係るパルス電源装置では、前記高電圧生成部、前記パルス頂部波形形成部、及び前記パルス端部波形形成部の組を複数備え、該複数のパルス端部波形形成部の出力を直列に合成するとともに、該複数の組を同位相で駆動して出力を加算する構成とすることができる。
【0019】
この構成によれば、例えば高電圧生成部、パルス頂部波形形成部、及びパルス端部波形形成部の組を二つ用いる場合、同じ波高値のパルス電圧を得るために一つの高電圧生成部及びパルス頂部波形形成部において生成する電圧の電圧値を半分に減らすことができる。それによって、電圧定格の低い、廉価でありながらスイッチング特性の良好な素子を使用することが可能となる。一般に電圧定格が高くスイッチング特性も良好である素子は高価であることから、上記構成では、使用する素子数が増えることを差し引いてもコスト削減に有利である。
【0020】
また、本発明に係るパルス電源装置では、高電圧生成部、パルス頂部波形形成部、及びパルス端部波形形成部の組を複数備え、該複数のパルス端部波形形成部の出力を直列に合成するとともに、該複数の組を時分割で駆動する構成とすることができる。
【0021】
この構成では、複数の組のうちの互いに異なる組において同極性のパルス電圧を生成することができる。或いは、複数の組の少なくとも一つの組の出力を他の組とは異なる極性のパルス電圧とするために、その一つの組の出力の極性が反転するようにパルス端部波形形成部の出力配線を入れ替え可能とした構成とすることもできる。即ち、前者の構成は正又は負の単極性のパルス電圧を負荷に印加するものであり、後者の構成は正、負の両極性のパルス電圧、典型的には、正極性と負極性とが交互に現れるパルス電圧を負荷に印加するものである。
【0022】
複数の組のうちの互いに異なる組において同極性のパルス電圧を生成する場合、一つの組における回路の動作に時間的な余裕が生じるので、例えばパルス頂部波形形成部におけるスイッチング制御が容易になる。一方、複数の組の少なくとも一つが他の組とは異なる極性のパルス電圧を生成する場合、正極性パルス電圧と負極性パルス電圧とを負荷に印加することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、パルス電圧の繰り返し周波数を高くする場合であっても、急峻な立上り及び立下りと、パルス頂部の波形設定の柔軟性とを両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態であるパルス電源装置の概略ブロック構成図。
図2】本実施形態のパルス電源装置による電圧出力波形及び負荷電流波形の一例を示す図。
図3】高電圧生成部の一例の概略回路図。
図4】パルス頂部波形整形部及びフィルタの一例の概略回路図。
図5】パルス頂部波形整形部の動作波形の一例を示す図。
図6】パルス頂部波形整形部における電流経路の一例を示す図。
図7】パルス頂部波形整形部における電流経路の一例を示す図。
図8】パルス頂部波形整形部における電流経路の一例を示す図。
図9】パルス頂部波形整形部における電流経路の一例を示す図。
図10】パルス端部波形整形部の一例の概略回路図。
図11】パルス端部波形整形部の動作時の電流経路を示す図。
図12】パルス端部波形整形部の動作時の電流経路を示す図。
図13】パルス端部波形整形部の動作時の電流経路を示す図。
図14】本実施形態のパルス電源装置における動作波形の一例を示す図。
図15】一変形例であるパルス電源装置の概略ブロック構成図。
図16】変形例のパルス電源装置における要部の波形図。
図17】変形例のパルス電源装置における要部の波形図。
図18】変形例のパルス電源装置における要部の波形図。
図19】パルス頂部波形整形部及びフィルタの変形例の概略回路図。
図20】パルス頂部波形整形部及びフィルタの変形例の概略回路図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係るプラズマ加工装置用パルス電源装置の実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【0026】
<一実施形態であるパルス電源装置の全体構成と概略動作>
図1は本実施形態のパルス電源装置の概略ブロック構成図、図2はこのパルス電源装置による電圧出力波形及び負荷電流波形の一例を示す図である。
【0027】
図1に示すように、本実施形態のパルス電源装置1は、外部の三相交流電源7から三相交流電力を受け、プラズマ加工処理装置におけるプラズマ負荷8にパルス電圧を印加するものである。プラズマ負荷8は、他のプラズマ生成装置により励起されたものであってもよく、簡略的には、負荷抵抗82とシース容量による負荷容量81との直列回路で示すことができる。実際には、プラズマ負荷の整流作用とブロッキングコンデンサ(図示しない)によって直流電圧Vdcが発生するが、基本的な動作には影響がないのでここでは無視する。
【0028】
パルス電源装置1は、三相交流電力を受けて単極性の高電圧を生成する高電圧生成部2と、その高電圧を入力とし、スイッチングにより波形整形された周期的に変化する電圧を出力するパルス頂部波形整形部3と、波形整形された電圧に重畳しているキャリア信号成分を除去するフィルタ4と、フィルタ4から出力された電圧をパルス頂部の電圧とするパルス電圧の端部つまりは立上り及び立下りの波形を形成するパルス端部波形整形部5と、予め設定された電圧波形のパターン情報等が記憶された電圧パターン記憶部61を含み、高電圧生成部2、パルス頂部波形整形部3及びパルス端部波形整形部5の動作をそれぞれ制御する制御部6と、を含む。
【0029】
電圧パターン記憶部61は、フラッシュメモリなどの不揮発性の半導体メモリと該メモリへのデータの読み書きを制御するリードライト回路などを中心に構成される。その不揮発性半導体メモリには、図2(B)に示したような出力パルス電圧の少なくとも1周期中のパルス頂部の範囲における、時間経過に対する電圧値データが格納される。この時間経過に対する電圧値データが電圧パターンであり、この電圧パターンを適宜書き換えることで、パルス頂部の波形形状を適宜に変更又は設定することができる。
【0030】
プラズマ負荷8が図1図2(A)に示すようなRC直列回路である場合、パルスをオンしたときに負荷容量81(Cp)は充電され、パルスをオフすると負荷容量81(Cp)は放電される。従って、負荷抵抗82(Rp)に生じる電圧Rp(v)が、図2(C)に示すように、そのパルスの頂部の期間において電圧が変動しない矩形波状になるようにするには、負荷容量81(Cp)に流れる電流を一定にする必要がある。そのため、パルス電源装置1の出力電圧Vopにおいてパルス頂部に相当する期間の電圧変化dV/dtは基本的に一定であり、図2(B)に示すようにランプ形状になる。但し、負荷変動、出力変化等に応じて電圧変化dV/dtを調整する必要がある。
【0031】
ごく簡単に言うと、このパルス電源装置1では、電圧パターン記憶部61に予め格納された電圧パターンに従って、このパターンに倣った形状で電圧値が変化するパルス頂部を有し、そのパルス端部が急峻に立ち上がる及び立ち下がるようなパルス電圧を生成して、プラズマ負荷8に出力する。各部の動作としては、高電圧生成部2は制御部6による制御の下に、絶対値がVsである直流電圧を生成する。パルス頂部波形整形部3は電圧パターン記憶部61に格納されている電圧パターンに従って、高電圧生成部2から与えられた電圧をスイッチング制御してパルス頂部に対応する電圧を出力する。フィルタ4はLCローパスフィルタであり、パルス頂部波形整形部3でのスイッチング制御により発生するキャリア周波数成分等を除去して出力する。パルス端部波形整形部5は、フィルタ4からの出力電圧をスイッチング制御し、LC共振を利用してパルス端部に相当する立上り波形及び立下り波形を形成する。
【0032】
次に各部の詳細な構成と動作を順に説明する。
図14は、パルス電源装置1の要部の波形の一例を示す図である。この例におけるパルス電源装置1からの出力電圧(パルス電圧)Vopは図14(h)であり、この電圧により負荷抵抗82には図14(j)に示すような電圧が発生する。
【0033】
<高電圧生成部の構成及び動作>
図3は、高電圧生成部2の一例の概略回路図である。なお、この高電圧生成部2の回路構成及び動作は、特許文献3に記載のものを利用することができる。この高電圧生成部2、パルス頂部波形整形部3、及びフィルタ4は、図14(g)において一点鎖線で示す鋸波状の周期的な波形を形成するものである。従って、電圧パターン記憶部61には、この鋸波状の波形の1周期分(Tに相当する期間)の電圧パターンが格納される。
【0034】
高電圧生成部2は、降圧コンバータ2Aと高周波インバータ2Bを含む。三相交流電源7から供給される三相交流電圧は、ヒューズ回路20を通して、ブリッジダイオード21とコンデンサ22とから成る整流回路に入力される。コンデンサ22の両端間の電圧は、直列接続された二つのスイッチング素子231、232から成る相補スイッチ23、リアクトル24、及びコンデンサ26により構成される降圧コンバータ2Aに入力される。降圧コンバータ2Aにおける相補スイッチ23のオン・オフ動作は制御部6により制御され、それによりコンデンサ26の両端に所定の電圧値のP/Nバスライン電圧Vpnが得られる。リアクトル24とコンデンサ26との間には電流トランス25が挿入され、電流トランス25で検出された電流値は制御部6にフィードバックされる。
【0035】
P/Nバスラインの両端は、直列に接続されたスイッチング素子271、272を含む第1レッグ27と、同じく直列に接続されたスイッチング素子281、282を含む第2レッグ28とで構成されるブリッジ回路の一端と他端にそれぞれ接続される。このブリッジ回路が高周波インバータ2Bを構成し、P/Nバスライン電圧Vpnの変化により、第1レッグ27の中点eと第2レッグ28の中点fとの間に、振幅が可変である高周波高電圧が出力される。この高周波高電圧が、後述する高周波スイッチングトランスの1次巻線を励磁し、パルス頂部波形整形部3に電力を供給する。
【0036】
上記の回路方式は、PAM(パルス振幅変調)方式として知られている手法である。三相交流電圧に起因する商用リップルの改善は、よく知られているように、上記のPWM制御にピーク電流モード制御を併用することで行うことができる。
【0037】
なお、降圧コンバータ2A及び高周波インバータ2Bに用いられる各スイッチング素子は、例えば100kHz程度以上の高速のスイッチング周波数で動作することが望ましい。そのため、スイッチング素子としてはSiC-MOSFETを用いることができる。また、アーム短絡を防止するために、通常、スイッチング素子の切替え時にはデッドタイムが設けられる。
【0038】
<パルス頂部波形整形部及びフィルタの構成、並びに動作>
図4は、パルス頂部波形整形部3及びフィルタ4の一例の概略回路図である。パルス頂部波形整形部3及びフィルタ4の回路構成及び動作は、特許文献3に記載のものを利用することができる。但し、ここでは、パルス頂部波形整形部3から出力する電圧は単極性でよい。
【0039】
プラズマ加工装置用のパルス電源装置において、図14(h)に示した出力電圧Vopのピーク電圧は、通常、1kV~10kVと、かなり高い電圧が必要とされる。そのため、一般に流通しているスイッチング素子等の回路部品の電圧定格の制約から、パルス頂部波形整形部3としては、回路を複数に分割し、分割された各回路の出力を直列に接続する、位相シフトPWM方式のマルチレベルカスケードコンバータを採用する。こうした回路を採用することで、回路部品の電圧定格の制約を回避し易くなり、また、流通性の高いスイッチング特性の良好な回路部品を使用することが可能となるので、性能、コスト共に有利である。
【0040】
図4に示した例では、パルス電圧のピーク電圧値を2kVと想定し、パルス頂部波形整形部3の回路を符号30A、30B、30C、30Dで示す四つの波形整形ユニットに分割している。なお、図4中で符号30A、30B、30C、30Dで示した波形整形ユニットに含まれる構成は全く同じであり、符号31~34の構成要素には一部しか符号を明示していないものの、それら構成要素には31A~31D、32A~32D、…の符号が付されているものとみなす。これは、後述する変形例の説明においても同様である。
【0041】
上述したようにパルス頂部波形整形部3を四つのユニットに分割したため、前段の高電圧生成部2からの電圧供給も四つの回路に対応して分岐させる必要がある。即ち、図4に示すように、高電圧生成部2の高周波インバータ2Bにおける各レッグ27、28の中点e、fは四つの高周波スイッチングトランス31A~31Dの1次側巻線にそれぞれ接続され、その四つの2次側巻線において分離され、且つ互いに電気的に絶縁されている。四つの高周波スイッチングトランス31A~31Dの2次側巻線はそれぞれ、ブリッジダイオード32A~32Dのそれぞれ交流入力端に接続され、その直流出力端にはコンデンサ33A~33Dがそれぞれ接続されている。ブリッジダイオード32A~32D及びコンデンサ33A~33Dは高周波整流回路を形成する。
【0042】
波形整形ユニット30A~30Dにおけるコンデンサ33A~33Dの両端はそれぞれ、四つに分岐された独立した高電圧生成部2の出力端であるとみることもできる。即ち、図4において波形整形ユニット30A~30Dに含まれる符号3Aで示した範囲(高周波スイッチングトランス31A~31D、ブリッジダイオード32A~32D、コンデンサ33A~33D)は実質的には高電圧生成部2に含まれるとみなすことができ、その場合には、高電圧生成部2から各波形整形ユニット30A~30Dの符号3A以降の回路に、それぞれ独立に直流電圧が印加されることになる。こうした回路構成を採ることによって、高電圧生成部2からパルス頂部波形整形部3に対して十分に高い直流電圧を印加する一方、パルス頂部波形整形部3では適切に出力電圧を設定するとともにその波形形状を制御することができる。
【0043】
上記高電圧生成部2における高周波インバータ2B、高周波スイッチングトランス31A~31D、及び高周波整流回路を含むDC-DCコンバータは、PWMデューティ比D=0.5で動作する2相コンバータである。
【0044】
四つの波形整形ユニット30A~30Dは、4組の直列接続されたスイッチング素子Sa1、Sb1~Sa4、Sb4を含む相補スイッチ34A~34Dを備える。各波形整形ユニット30A~30Dにおいて、相補スイッチ34A~34Dはそれぞれ降圧チョッパ回路を構成するレッグである。
【0045】
波形整形ユニット30A~30Dはそれぞれ、上述したように四つに分岐独立した高電圧生成部2の出力の一端とみなせるコンデンサ33A~33Dの正極側の端部と、相補スイッチ34A~34Dの一端であるスイッチング素子Sb1~Sb4の一端(ドレイン)をそれぞれ共通に接続した第1の出力端aと、相補スイッチ34A~34D同士を接続するスイッチング素子Sa1~Sa4の一端(ドレイン)とスイッチング素子Sb1~Sb4の他端(ソース)のそれぞれの接続点である第2の出力端bと、を含む。相補スイッチ34A~34Dに含まれる各スイッチング素子のオン・オフ動作は、制御部6により制御される。
【0046】
このパルス頂部波形整形部3は、4段目の波形整形ユニット30Dの第2の出力端bが3段目の波形整形ユニット30Cの第1の出力端aに接続され、同様に3段目の波形整形ユニット30Cの出力端bが2段目の波形整形ユニット30Bの出力端aに接続され、これが順次繰り返されることによって、4段目の波形整形ユニット30Dの出力端aと1段目の波形整形ユニット30Aの出力端bとの間に、波形整形ユニット30A~30D毎に1/4に分割された出力電圧が直列に合成されて出力される構成である。
【0047】
フィルタ4は、リアクトル40とコンデンサ41とを含むLCローパスフィルタである。リアクトル40の一端と出力端との間には、電流トランス42が設けられる。また、両出力端の間には、電圧検出用のモニタ抵抗44、45が設けられており、電流トランス42により検出されるモニタ電流とモニタ抵抗44により検出されるモニタ電圧とが制御部6にフィードバックされる。
【0048】
四つの波形整形ユニット30A~30Dにおける出力電圧の調整は、制御部6によるPWM制御によって実施される。相補スイッチ34A~34Dに含まれる二つのスイッチング素子はそれぞれ、PWM制御によるパルス幅で相補動作する。4段の波形整形ユニット30A~30Dにおいて、PWM制御のためのパルス頂部波形整形部3のキャリア周波数の位相は、それぞれ360°/4=90°づつずれた位相シフト動作がなされている。それ故に、この制御方式は位相シフトPWM方式である。この場合、リップル周波数frは4×キャリア周波数fである。例えばf=400kHzである場合、リップル周波数frは1.6MHzである。
【0049】
図5は、各波形整形ユニット30A~30Dの出力端a、b間の出力電圧をVo1~Vo4とし、4段目の波形整形ユニット30Dの出力端aと1段目の波形整形ユニット30Aの出力端bとの間の直列に合成された出力電圧をVo5として、図14に示した波形図におけるt0~t1期間におけるPWM動作例を示す概略波形図である。図5は、それぞれ位相が90°異なるキャリア周波数fの三角波形Tri1~Tri4と出力Vo設定電圧とをコンパレータComp1~4で比較することでPWM出力電圧Vo1~Vo4が得られ、そのPWM出力電圧Vo1~Vo4の合算がVo5となることを示している。なお、ここでは、三角波形Tri1~Tri4とVo設定電圧とを比較するフィードフォワード制御を用いているが、Vo設定電圧とVo検出電圧との誤差電圧を増幅してそれをゼロにするようなフィードバック制御を用いてもよい。
【0050】
図6図9は、図5に示した出力電圧Vo5でパルス電圧Va~Vdが出力されるときの、パルス頂部波形整形部3における電流経路を示す概略図である。なお、図6図9に示す回路では、図4中に示した高周波スイッチングトランス等を含む高周波整流回路を、電源Vs1~Vs4を用いて簡易的に示している。
【0051】
図6は、Vo5=Vaの場合である。この場合、スイッチング素子Sa3、Sb1、Sb2、Sb4がPWM制御により一時的にオンする。そのため、図中に太線矢印で示すように、スイッチング素子Sb1→Sb2→Sa3→コンデンサ33C→Sb4の経路で循環的に電流が流れ、出力端Vo5に、Vo3=Vs3、が出力される。
【0052】
図7は、Vo5=Vbの場合である。この場合、スイッチング素子Sa1、Sa4、Sb2、Sb3がPWM制御により一時的にオンする。そのため、図中に太線矢印で示すように、スイッチング素子Sa1→コンデンサ33A→Sb2→Sb3→Sb4→コンデンサ33D、の経路で循環的に電流が流れ、出力端Vo5には、Vo1+Vo4=Vs1+Vs4、が出力される。
【0053】
図8は、Vo5=Vcの場合である。この場合、スイッチング素子Sa2、Sa3、Sa4、Sb1がPWM制御により一時的にオンする。そのため、図中に太線矢印で示すように、スイッチング素子Sb1→Sa2→コンデンサ33B→Sa3→コンデンサ33C→Sa4→コンデンサ33D、の経路で循環的に電流が流れ、出力端Vo5にはVo2+Vo3+Vo4=Vs2+Vs3+Vs4、が出力される。
【0054】
図9は、Vo5=Vdの場合である。この場合、スイッチング素子Sa1、Sa2、Sa3、Sa4がPWM制御により一時的にオンする。そのため、スイッチング素子Sa1→コンデンサ33A→Sa2→コンデンサ33B→Sa3→コンデンサ33C→Sa4→コンデンサ33D、の経路で循環的に電流が流れ、出力端Vo5には、Vo1+Vo2+Vo3+Vo4=Vs1+Vs2+Vs3+Vs4、が出力される。
こうしてパルス頂部波形整形部3及びフィルタ4では、電圧パターン記憶部61に格納されている電圧パターンに応じた形状の周期的な電圧波形が生成される。
【0055】
<パルス端部波形整形部の構成及び動作>
図10は、パルス端部波形整形部5の一例の構成図である。パルス端部波形整形部5は、電源コンデンサ51、第1スイッチング素子52a、第1ダイオード53a、第2スイッチング素子52b、第2ダイオード53b、共振リアクトル54、第3スイッチング素子52c、第3ダイオード53c、第4スイッチング素子52d、第4ダイオード53d、共振コンデンサ55、ダンピング抵抗56、を含む。
【0056】
上述したフィルタ4の出力電圧Voは、電源コンデンサ51の一端(高電圧側端子)と、第1スイッチング素子52aと第2スイッチング素子52bとを含む第1の直列回路の一端、さらには、第3スイッチング素子52cと第4スイッチング素子52dとを含む第2の直列回路の一端に、接続されている。第1の直列回路、第2の直列回路、及び電源コンデンサ51の他端は互いに接続されている。
【0057】
第1ダイオード53aは第1スイッチング素子52aに、第2ダイオード53bは第2スイッチング素子52bに、それぞれ逆並列に接続されている。第3ダイオード53cは第3スイッチング素子52cに、第4ダイオード53dは第4スイッチング素子52dに、それぞれ逆並列に接続されている。第1~第4スイッチング素子52a、52b、52c、52dは電力用MOSFETなどの半導体スイッチング素子から成り、その場合、第1乃至第4ダイオード53a、53b、53c、53dはそれら半導体スイッチング素子の寄生ダイオードを利用することができる。
【0058】
共振リアクトル54は、第1スイッチング素子52aと第2スイッチング素子52bとの接続点と、第3スイッチング素子52cと第4スイッチング素子52dとの接続点との間に接続されている。共振コンデンサ55は第4スイッチング素子52dに並列に接続され、ダンピング抵抗56は正極側出力端57と共振コンデンサ55との間に接続されている。制御部6は、4系統の制御信号G1、G2、G3及びG4により四つのスイッチング素子52a、52b、52c、52dのオン・オフ動作を制御する。
【0059】
パルス端部波形整形部5は、特許文献1、2等に記載の装置と同様に、LC共振による共振波形を部分的に利用し、立上り及び立下りの速い波形を形成する。図14とともに図11図13を参照して動作を説明する。図11図13において、Lr(i)は共振リアクトル54に流れる共振電流、Rp(i)は負荷抵抗82に流れる負荷電流である。
【0060】
第1スイッチング素子52aは、図14(a)に示す制御信号G1がハイレベルであるt0~t1期間だけオンする。第2スイッチング素子52bは、図14(b)に示す制御信号G2がハイレベルであるt2~t3期間だけオンする。t1~t2期間及びt3~t0期間は制御信号G1、G2が共にローレベルであり、この二つの期間を挟んで二つのスイッチング素子52a、52bは交互にオン動作する。
【0061】
一方、第3スイッチング素子52cは、図14(c)に示す制御信号G3がハイレベルであるt1~t2期間だけオンする。第4スイッチング素子52dは、図14(d)に示す制御信号G4がハイレベルであるt3~t4(t0)期間だけオンする。換言すれば、第1スイッチング素子52a、第3スイッチング素子52c、第2スイッチング素子52b、及び第4スイッチング素子52dはこの順番に一つづつオン動作し、そのオン動作が一巡する期間が1サイクルであり、このサイクルが繰り返される。
【0062】
1サイクル中の動作は、大略、α(α1、α2)、β(β1、β2)、γ(γ1、γ2)、δ(δ1、δ2)の四つのモードに集約され得る。
簡単に言うと、αは、共振リアクトル54と共振コンデンサ55とのLC共振回路において共振が生じる共振モードである。βは、共振リアクトル54に蓄積されたエネルギが循環する短絡モードである。γは、共振リアクトル54に蓄積されたエネルギが電源コンデンサ51に回生される電源回生モードである。δは、第3、第4スイッチング素子52c、52dを介して、電源コンデンサ51から負荷抵抗82に電力を供給する又は該負荷抵抗82の両端を短絡させる定常モードである。
【0063】
各モードの詳細な動作は次の通りである。
[α1モード](図11(a)参照)
時刻t0において制御信号G4、G1がそれぞれ変化すると、第4スイッチング素子52dがターンオフし、第1スイッチング素子52aがターンオンする。すると、共振リアクトル54及び共振コンデンサ55のLC共振による共振電流Lr(i)、並びに負荷容量81による放電電流である負荷電流Rp(i)が共に共振コンデンサ55に流入し、該コンデンサ55の電圧は0から上昇し始める。その充電電圧が負荷容量81の充電電圧を超えると、負荷容量81の動作は放電から充電に移行し負荷電流Rp(i)の流れの方向が反転する。
【0064】
[β1モード](図11(b)参照)
第1スイッチング素子52aがオンした状態で共振コンデンサ55の充電電圧が入力電圧Voに達すると、第3ダイオード53cが導通し、共振コンデンサ55の充電電圧は入力電圧Voにクランプされる。これと共に共振リアクトル54は短絡状態となり、電流Lr(i)は還流する。入力電圧Voによって第3ダイオード53cを介して負荷電流Rp(i)が流れ、負荷抵抗82への電力供給が始まる。
【0065】
[γ1モード](図11(c)参照)
時刻t1において第1スイッチング素子52aがターンオフし、第3スイッチング素子52cがターンオンすると、共振リアクトル54の短絡が解放される。共振リアクトル54のエネルギは、電流Lr(i)によって電源コンデンサ51に回生される。
【0066】
[δ1モード](図12(a)参照)
共振リアクトル54のエネルギが放出され終わると、電流Lr(i)は0となる。第3スイッチング素子52cがオンした状態で、入力電圧VoはV1からV2まで電圧変化率略一定で増加するため、出力端57、58間の電圧も同様に変化する。負荷容量81の充電電流である負荷電流Rp(i)は一定の電流値となるから、負荷抵抗82に生じる電圧Rp(v)は一定となる。
【0067】
[α2モード](図12(b)参照)
時刻t2において第3スイッチング素子52cがターンオフし、第2スイッチング素子52bがターンオンすると、共振リアクトル54及び共振コンデンサ55のLC共振による共振電流Lr(i)で共振コンデンサ55は放電され、該コンデンサ55の充電電圧はV2から減少する。その充電電圧の減少に伴って負荷容量81から共振コンデンサ55に放電電流として負荷電流Rp(i)が流れ、共振コンデンサ55の充電電圧の変化に比べれば緩慢であるものの負荷容量81の充電電圧も減少する。
【0068】
[β2モード](図12(c)参照)
第2スイッチング素子52bがオンした状態で共振コンデンサ55の充電電圧が0にまで下がると、第4ダイオード53dが導通して共振コンデンサ55充電電圧は0にクランプされる。これと共に共振リアクトル54は短絡状態となり、電流Lr(i)は還流する。負荷容量81の放電電流である負荷電流Rp(i)は、第4ダイオード53dを介し循環的に持続して流れる。
【0069】
[γ2モード](図13(a)参照)
時刻t3において第2スイッチング素子52bがターンオフし、第4スイッチング素子52dがターンオンすると、共振リアクトル54の短絡が解放され、共振リアクトル54のエネルギは電流Lr(i)により電源コンデンサ51に回生される。負荷容量81の放電電流である負荷電流Rp(i)は、第4スイッチング素子52dを介し循環的に持続して流れる。
【0070】
[δ2モード](図13(b)参照)
共振リアクトル54のエネルギが放出され終わると、電流Lr(i)は0となる。負荷容量81の放電は緩慢であり、負荷容量81の放電電流である負荷電流Rp(i)は第4スイッチング素子52dを介し循環的に持続して流れる。
【0071】
以上のような動作で1サイクルが終了し、これにより出力端57、58からは図14(h)に示すように変化する出力電圧Vopが出力される。即ち、パルス頂部の電圧波形は前段のパルス頂部波形整形部3を中心に形成された波形(ここではランプ状の波形)となり、パルス端部の電圧波形はLC共振を利用した高速な立上り及び立下り波形となる。パルス頂部の電圧波形の形状は、電圧パターン記憶部61に予め格納する電圧パターン情報によってユーザが適宜に設定することが可能である。
【0072】
ここで、共振リアクトル54のインダクタンスをLr、共振コンデンサ55のキャパシタンスをCrとしたとき、パルス端部の共振周波数Frは、
Fr=1/[2π√(Lr・Cr)]
となる。パルス端部の立上り時間tα1、立下り時間tα2は、
tα1≒tα2≒0.25/Fr
である。また、出力電圧Vopの立上り時の電圧Vopu及び立下り時の電圧Vopdは次の通りである。
Vopu=V1×(1-cosθ)
Vopd=V2×cosθ
ここでθはLC共振のパラメータ等により決まる。但し、Vopuが共振によりV1以上の電圧となる期間では、Vopuはパルス頂部の電圧Vo≒V1にクランプされる。Vopdが共振により0V以下の電圧となる期間では、Vopuは0Vにクランプされる。
【0073】
<変形例>
上記実施形態のパルス電源装置において各部の構成は適宜に変形することができる。その変形例について説明する。
図19及び図20は、パルス頂部波形整形部3の一変形例の概略回路図である。上述した図4に示したパルス頂部波形整形部3では、四つの波形整形ユニット30A~30Dが直列に接続された構成であるが、図19に示した例は、リアクトル40A~40Dを介した四つの波形整形ユニット30A~30Dの90°づつ位相がずれた出力電流を並列に合成した位相シフトPWM方式によるマルチフェーズコンバータの構成である。
【0074】
ここで、リアクトル40A~40Dの磁気回路は単独であっても又は共通部を有して磁気集積したものでもよく、各リアクトル40A~40Dが発生した磁束を打ち消すように構成し、合成した漏れインダクタンス成分を出力の等価インダクタンスとする磁気反結合リアクトルとしてもよい。磁気反結合リアクトルとすることで、スイッチング素子の電流波形に関する等価インダクタンスは大きくなり、スイッチング素子の損失を低減させることができる。また、出力に関する等価インダクタンスに流れるリップル電流の周波数はPWMキャリア周波数×位相数(4相)となり、加えて出力等価インダクタンス値は小さくなるので、後段のコンデンサ41と組み合わせたローパスフィルタのカットオフ周波数が上昇し、制御応答性が向上する。
【0075】
一方、図20に示した例では、リアクトル40A、40Cを介した二つの波形整形ユニット30A、30Cの180°づつ位相がずれた出力電流を並列に合成した出力端a、b1間に、電圧源となるコンデンサ41Aを設けている。同様に、別のリアクトル40B、40Dを介した二つの波形整形ユニット30B、30Dの180°づつ位相がずれた出力電流を並列に合成した他の出力端a、b2間に、同じく電圧源となるコンデンサ41Bを設けている。この二つのコンデンサ41A、41Bを直列に接続することで、四つの波形整形ユニット30A~30Dを並列及び直列に接続したことと同じとなり、4相2段の位相シフトPWM方式によるマルチレベルカスケードコンバータが実現される。なお、このリアクトル40A、40C、及びリアクトル40B、40Dの組合せも、それぞれ磁気反結合リアクトルとすることが望ましい。
【0076】
図4に示したように、複数の波形整形ユニットを直列に接続する構成では、必要な位相数を得ようとすると直列段数が多くなり、その直列の段毎に、高周波スイッチングトランス、高周波整流回路のブリッジダイオード、コンデンサ等の回路部品の必要数が増加する。特に、パルス頂部波形の電圧値が低い場合には1段当たりの回路電圧が低すぎるため、入手が容易である、つまりは廉価である電圧定格(例えば電圧定格650V、1200V等)のスイッチング素子が適合しにくくなる。これに対し、図19図20に示したような方法で波形整形ユニットを適宜に並列及び直列に接続することによって、PWM方式によるマルチレベルカスケードコンバータ構成を最適化することができる。
【0077】
パルス電圧の端部波形を形成するパルス端部波形整形部5は、図10に示した構成を基本としつつ特許文献1、2に記載の構成を採用して変形することができる。
例えば、図10においてフルブリッジ回路を構成する2個のスイッチング素子52c、52dを単なるダイオードに置き換えることができる。このダイオードは実質的にクランプダイオードである。その際には、2個のスイッチング素子52a、52bをオン・オフさせるタイミングを適宜変更すればよい。
【0078】
また、図10においてスイッチング素子52dに並列に接続されている共振コンデンサ55を、スイッチング素子52cに並列に接続する構成とすることもできる。この場合の各スイッチング素子52a、52b、52c、52dのオン・オフ動作は上記実施形態の場合と同じである。
また、図10において4個のスイッチング素子52a、52b、52c、52dを含むブリッジ回路の低電位側又は高電位側の端部とg又はhの電位線との間に直流電圧源を挿入する構成とすることもできる。これにより、例えば0VとVoとの間のパルス電圧ではなく、0V以外のVbiasとVoとの間のパルス電圧を生成することができる。
【0079】
<他の実施形態によるパルス電源装置>
図15は、本発明の他の実施形態によるパルス電源装置のブロック構成図である。この実施形態のパルス電源装置1Aは、上述した、高電圧生成部2、パルス頂部波形整形部3、フィルタ4、及びパルス端部波形整形部5の組を複数(ここでは2組)備える。図15では、各組の構成要素の符号をX、Yで区別している。各組の回路ではそれぞれ上述したように単極性のパルス電圧を生成することが可能であるが、出力の接続及び制御の仕方によって、各組の回路を同じタイミングで動作させ生成したパルス電圧を同位相で直列に重畳して出力する方法と、各組の回路を時分割で動作させて生成したパルス電圧を交互に出力し合成する方法とのいずれかを採用することができる。
【0080】
図16は、2組の回路を同相で動作させて生成した電圧パルスを加算して出力する場合の要部の波形の一例を示す図である。基本的な動作は上記実施形態と同様であるので、詳しい動作説明は省略するが、この場合には、パルス電源装置1Aの出力電圧Vopは、2つのパルス端部波形整形部5X、5Yの出力であるパルス電圧(図16(f)、(g))を単純に加算したものとなるから、図16(h)に示すように、出力電圧Vopの電圧値は各組のパルス電圧の2倍となる。従って、同じ電圧値のパルス電圧を得るために、各組の回路で生成するパルス電圧の電圧値を1/2にすることができ、例えばスイッチング素子等として、電圧定格が低く廉価でありながらスイッチング特性が良好な素子を使用することが可能となる。
【0081】
図17は、2組の回路を180°位相をずらして時分割で動作させて生成した電圧パルスを合成して出力する場合の要部の波形の一例を示す図である。基本的な動作は上記実施形態と同様であるので、詳しい動作説明は省略するが、この場合には、パルス電源装置1Aの出力電圧Vopは、一方のパルス端部波形整形部5Xの出力である一つのパルス電圧と次のパルス電圧との間に、他方のパルス端部波形整形部5Yの出力であるパルス電圧が差し込まれたものとなる。従って、図17(o)に示すように、出力電圧Vopは図14(h)と同じであるが、各組における鋸波状波形の周波数は出力電圧Vopの周波数の1/2で済む。例えば出力電圧Vopのパルス周波数が400kHzである場合、各組における鋸波状波形の周波数は200kHzである。これにより、特にパルス頂部波形整形部3X、3Yにおけるスイッチング制御が容易になる。
【0082】
図18は、2組の回路を180°位相をずらして時分割で動作させて生成した電圧パルスを合成して出力する場合であって、2組の回路のうちの一方の組の回路の出力の極性を反転した場合の要部の波形の一例を示す図である。図17の例と同様に、パルス電源装置1Aの出力電圧Vopは、一方のパルス端部波形整形部5Xの出力である一つのパルス電圧と次のパルス電圧との間に、他方のパルス端部波形整形部5Yの出力であるパルス電圧が差し込まれたものとなるが、そのパルス端部波形整形部5Yの出力であるパルス電圧の極性は反転している。このようにして、交互に極性が反転するパルス電圧をプラズマ負荷に供給することも可能である。なお、このように正負両極性のパルス電圧を生成する場合、パルス電源装置1Bの出力の極性がパルス電源装置1Aの出力の極性とは反転するように、図15中に破線Aで示すようにパルス電源装置1Bの出力配線の接続を入れ替えればよい。
【0083】
また、図18に示す構成において、高電圧生成部2X、2Yから出力される直流電圧Vs1、Vs2が同じである場合、これら高電圧生成部2X、2Yは共用することが可能である。また、高電圧生成部、パルス頂部波形整形部、フィルタ、及びパルス端部波形整形部の組を3組以上にすることが可能であることは当然である。
【0084】
なお、上記実施形態や変形例はあくまでも本発明の一例であり、本発明の趣旨の範囲で適宜修正、変更、追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは明らかである。
【符号の説明】
【0085】
1、1A…パルス電源装置
19…第3スイッチング素子
2、2X、2Y…高電圧生成部
20…ヒューズ回路
21…ブリッジダイオード
22、26…コンデンサ
23…相補スイッチ
231、232…スイッチング素子
24…リアクトル
25…電流トランス
27…第1レッグ
271…スイッチング素子
28…第2レッグ
281…スイッチング素子
2A…降圧コンバータ
2B…高周波インバータ
3、3X、3Y…パルス頂部波形整形部
30A、30B、30C、30D…波形整形ユニット
31A…高周波スイッチングトランス
32A…ブリッジダイオード
33A、33B、33C、33D…コンデンサ
34A…相補スイッチ
4…フィルタ
40、40A、40B…リアクトル
41、41A、41B…コンデンサ
42…電流トランス
44…モニタ抵抗
5…パルス端部波形整形部
51…電源コンデンサ
52a、52b、52c、52d…スイッチング素子
53a、53b、53c、53d…ダイオード
54…共振リアクトル
55…共振コンデンサ
56…ダンピング抵抗
57、58…出力端
6…制御部
61…電圧パターン記憶部
7…三相交流電源
8…プラズマ負荷
81…負荷容量
82…負荷抵抗
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
【手続補正書】
【提出日】2023-08-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ加工装置において加工処理を行うためのプラズマ負荷に繰り返しパルス電圧を印加するプラズマ加工装置用パルス電源装置であって、
a)外部から供給される交流電力に基いて、後記パルス端部波形形成部ら出される合成前パルス圧の立上り部から次の立上り部までの1周期分に対応する電圧パターン情報によるピーク電圧値に応じた、絶対値が該ピーク電圧値以上である高電圧を生成する高電圧生成部と、
b)前記電圧パターン情報による時間経過に対応するパターン形状の変化に従って、前記高電圧をスイッチングするコンバータである波形整形部、及び、前記波形整形部から出力される電圧波形に重畳している該波形整形部でのスイッチングに伴う不要な信号成分を除去するフィルタ、を含み、前記合成前パルス電圧の1周期中の立上り部と立下り部とで挟まれる頂部に対応する電圧波形を含む、前記電圧パターン情報に応じた形状の周期的な電圧波形を有する電圧を出力するパルス頂部波形形成部と、
c)前記パルス頂部波形形成部から出力される電圧が与えられる一対の電位線間に接続された電源コンデンサ、前記一対の電位線間に配置された、二つの半導体スイッチング素子が直列に接続された直列回路を二つ含むブリッジ回路、その二つの直列回路の各々における二つの半導体スイッチング素子の接続点の間に接続された共振リアクトル、及び、その二つの接続点の一方である電圧出力端と前記一対の電位線の一方との間に接続された共振コンデンサ、を有し、前記パルス頂部波形形成部により形成された周期的な電圧の変化に同期した所定のタイミングで前記ブリッジ回路に含まれる半導体スイッチング素子をそれぞれオン・オフ動作させて前記共振リアクトルと前記共振コンデンサとの共振による共振電流を流し、該共振電流による電圧波形を部分的に利用して、前記一対の電位線において低電位側の電位線に印加されている所定の低電圧から前記周期的な電圧波形上の所定電圧まで変化する前記立上り部、及び、該周期的な電圧波形上の所定の電圧から前記所定の低電圧まで変化する前記立下り部を形成し、該立上り部及び該立下り部を端部とし前記周期的な電圧波形の一部を頂部とする合成前パルス電圧を出力するパルス端部波形形成部と、
を一組として、複数の組を備え、該複数の組に含まれる複数の前記パルス端部波形形成部の出力を直列に合成するとともに、該複数の組を時分割で駆動することにより、各パルス端部波形形成部からの出力電圧が順に現れる電圧を前記繰り返しパルス電圧として外部へ出力する、プラズマ加工装置用パルス電源装置。
【請求項2】
前記複数の組において同極性の合成前パルス電圧を生成する、請求項に記載のプラズマ加工装置用パルス電源装置。
【請求項3】
前記複数の組の少なくとも一つの組の出力が他の組とは異なる極性の合成前パルス電圧となるように、前記パルス頂部波形形成部の出力配線の接続を入れ替え可能とした、請求項に記載のプラズマ加工装置用パルス電源装置。
【手続補正書】
【提出日】2024-02-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ加工装置において加工処理を行うためのプラズマ負荷に繰り返しパルス電圧を印加するプラズマ加工装置用パルス電源装置であって、
a)外部から供給される交流電力に基いて、後記パルス端部波形形成部から出力される合成前パルス電圧の立上り部から次の立上り部までの1周期分に対応する電圧パターン情報によるピーク電圧値に応じた、絶対値が該ピーク電圧値以上である高電圧を生成する高電圧生成部と、
b)前記電圧パターン情報による時間経過に対応するパターン形状の変化に従って、前記高電圧をスイッチングするコンバータである波形整形部、及び、前記波形整形部から出力される電圧波形に重畳している該波形整形部でのスイッチングに伴う不要な信号成分を除去するフィルタ、を含み、前記合成前パルス電圧の1周期中の立上り部と立下り部とで挟まれる頂部に対応する電圧波形を含む、前記電圧パターン情報に応じた形状の周期的な電圧波形を有する電圧を出力するパルス頂部波形形成部と、
c)前記パルス頂部波形形成部から出力される前記周期的な電圧波形を有する電圧が与えられる一対の電位線間に接続された電源コンデンサ、前記一対の電位線間に配置された、二つの半導体スイッチング素子が直列に接続された直列回路を二つ含むブリッジ回路、その二つの直列回路の各々における二つの半導体スイッチング素子の接続点の間に接続された共振リアクトル、及び、その二つの接続点の一方である電圧出力端と前記一対の電位線の一方との間に接続された共振コンデンサ、を有し、前記周期的な電圧波形を有する電圧の変化に同期した所定のタイミングで前記ブリッジ回路に含まれる半導体スイッチング素子をそれぞれオン・オフ動作させて前記共振リアクトルと前記共振コンデンサとの共振による共振電流を流し、該共振電流による電圧波形を部分的に利用して、前記一対の電位線において低電位側の電位線に印加されている所定の低電圧から前記周期的な電圧波形上の所定電圧まで変化する前記立上り部、及び、該周期的な電圧波形上の所定の電圧から前記所定の低電圧まで変化する前記立下り部を形成し、該立上り部及び該立下り部を端部とし前記周期的な電圧波形の一部を頂部とする合成前パルス電圧を出力するパルス端部波形形成部と、
を一組として、複数の組を備え、該複数の組に含まれる複数の前記パルス端部波形形成部の出力である合成前パルス電圧を直列に合成するとともに、該複数の組を時分割で駆動することにより、各パルス端部波形形成部から出される合成前パルス電圧が順に現れる電圧を前記繰り返しパルス電圧として外部へ出力する、プラズマ加工装置用パルス電源装置。
【請求項2】
前記複数の組に含まれる複数の前記パルス端部波形形成部において同極性の合成前パルス電圧を生成する、請求項1に記載のプラズマ加工装置用パルス電源装置。
【請求項3】
前記合成前パルス電圧が直列に合成された後の電圧において前記複数の組の少なくとも一つの組の出力である合成前パルス電圧が他の組とは異なる極性の合成前パルス電圧となるように、前記複数の前記パルス端部波形形成部の出力である合成前パルス電圧を直列に合成するための該パルス端部波形形成部の出力配線の接続を入れ替え可能とした、請求項1に記載のプラズマ加工装置用パルス電源装置。