(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093561
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】止水シャッター装置
(51)【国際特許分類】
E06B 5/00 20060101AFI20240702BHJP
E06B 9/17 20060101ALI20240702BHJP
E06B 7/18 20060101ALI20240702BHJP
E06B 7/22 20060101ALI20240702BHJP
E04H 9/14 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
E06B5/00 Z
E06B9/17 Z
E06B7/18 A
E06B7/22 A
E04H9/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210033
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】上村 達也
(72)【発明者】
【氏名】角 和博
【テーマコード(参考)】
2E036
2E139
2E239
【Fターム(参考)】
2E036AA01
2E036CA01
2E036DA02
2E036EB08
2E036FA01
2E036HB08
2E139AA08
2E239AC04
(57)【要約】
【課題】 押圧装置による押圧状態を容易に解除する。
【解決手段】 空間を仕切るようにして閉鎖動作する開閉体10と、押圧力を発生する押圧装置40とを備え、閉鎖状態の開閉体10を押圧装置40の押圧力により不動部位に押し付けるようにした止水シャッター装置であって、前記押圧力の伝達経路の少なくとも一部を分離して前記押圧力を伝達不能にする分離可能部Aが設けられている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間を仕切るようにして閉鎖動作する開閉体と、押圧力を発生する押圧装置とを備え、閉鎖状態の前記開閉体を前記押圧装置の押圧力により不動部位に押し付けるようにした止水シャッター装置であって、
前記押圧力の伝達経路の少なくとも一部を分離して前記押圧力を伝達不能にする分離可能部が設けられていることを特徴とする止水シャッター装置。
【請求項2】
前記押圧装置は、本体部と、前記本体部に相対し前進して押圧力を発生するロッドを備え、前記ロッドの先端側には、前記開閉体を押圧する押圧部材が設けられ、前記分離可能部は、前記ロッドと前記押圧部材の間に設けられていることを特徴とする請求項1記載の止水シャッター装置。
【請求項3】
前記押圧部材は、開閉体幅方向の軸を中心に回転するように設けられていることを特徴とする請求項2記載の止水シャッター装置。
【請求項4】
前記押圧装置が、開閉体幅方向へ間隔を置いて複数設けられ、
これら複数の押圧装置によって押圧されるように前記押圧部材が設けられ、
前記分離可能部は、前記押圧装置と前記押圧部材の間の複数の接続部分にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項2記載の止水シャッター装置。
【請求項5】
前記開閉体の幅方向端部を囲んで開閉方向へ案内するガイドレールを備え、
前記押圧装置の押圧力により前記開閉体を開閉体厚さ方向へ押圧して前記ガイドレールに押し付ける厚さ方向押圧機構を備え、
前記分離可能部は、前記押圧装置と前記厚さ方向押圧機構の間に設けられていることを特徴とする請求項1記載の止水シャッター装置。
【請求項6】
前記分離可能部は、前記押圧力の伝達経路中に接続された二部材のうちの一方に、切り離し可能な切離可能部を設けてなり、前記切離可能部が切り離されることで前記二部材を分離することを特徴とする請求項1記載の止水シャッター装置。
【請求項7】
前記分離可能部により前記押圧力の伝達経路の一部を分離することで、閉鎖状態の前記開閉体の開放方向側に、前記開閉体が開放動作するための空間が確保されるようにしたことを特徴とする請求項1~6何れか1項記載の止水シャッター装置。
【請求項8】
前記押圧装置は、前記押圧力の伝達経路が前記分離可能部により分離した際に、前記開閉体の開閉経路の外側に移動することを特徴とする請求項7記載の止水シャッター装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水が流通しないように開口部を閉鎖する止水シャッター装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の発明は、例えば特許文献1に記載されるように、上下方向へ積み重ねられる複数のパネルからなるシャッターカーテンを、パワーシリンダ、ピストンロッド等からなる電動の押圧装置により押圧し、このシャッターカーテンを、水密ゴムを介して不動部位(床面やレール等)に圧接し、水密性を保持するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術によれば、閉鎖状態のシャッターカーテンを押圧装置により押圧している最中に停電が発生した場合、押圧装置による押圧状態を解除できず、シャッターカーテンの開放が困難になるおそれがある。
そこで、バッテリー等の予備電源を備える場合もあるが、予備電源自体が水害等により故障してしまうおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題に鑑みて、本発明の一つは、以下の構成を具備するものである。
空間を仕切るようにして閉鎖動作する開閉体と、押圧力を発生する押圧装置とを備え、閉鎖状態の前記開閉体を前記押圧装置の押圧力により不動部位に押し付けるようにした止水シャッター装置であって、前記押圧力の伝達経路の少なくとも一部を分離して前記押圧力を伝達不能にする分離可能部が設けられていることを特徴とする止水シャッター装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上説明したように構成されているので、押圧装置による押圧状態を容易に解除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明に係る止水シャッター装置の一例を屋外側から視た正面図である。
【
図2】同止水シャッター装置の全閉状態を示す縦断面図であり、閉鎖前のパネルを二点鎖線で示している。
【
図3】
図1の(III)-(III)線に沿う横断面図である。
【
図6】開閉体を垂直方向へ押圧する構造を示す図であり、(a)は押圧前の状態、(b)は開閉体を押圧した状態、(c)は分離可能部材を外している途中の状態を示す。
【
図7】
図6に続く状態の図であり、(d)は分離可能部材を取り除いて押圧部材を後退させた状態、(e)は押圧装置を回動して開閉体の開放経路を確保した状態を示す。
【
図8】開閉体を水平方向へ押圧する構造を示す図であり、(a)は押圧前の状態、(b)は開閉体を押圧した状態、(c)は分離可能部材を外している途中の状態を示す。
【
図9】
図8に続く状態の図であり、(d)は分離可能部材を取り除いた状態、(e)は開閉体に対する押圧を解除した状態を示す。
【
図11】同分離可能部において、押圧力の伝達経路を分離する手順を(a)~(c)に順次に示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、本発明に係る実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
本明細書中、「開閉体厚さ方向」とは、閉鎖状態の開閉体の厚さ方向を意味する。また、「開閉体幅方向」とは、開閉体の開閉方向と略直交する方向であって、開閉体の厚さ方向ではない方向を意味する。
また、「開閉体開閉方向」とは、開閉体が開閉動作のために空間を仕切ったり開放したりするスライド方向を意味する。
【0009】
また、「開閉体幅方向外側」とは、開閉体幅方向に沿って開閉体の外側へ向かう方向側を意味する。例えば、向かって右側のガイドレールを基準にすると、開閉体幅方向外側は、右方向側になる。
また、「開閉体幅方向内側」とは、開閉体幅方向に沿って開閉体の内側へ向かう方向側を意味する。例えば、向かって右側のガイドレールを基準にすると、開閉体幅方向内側は、左方向側になる。
【0010】
また、「開閉体厚さ方向外側」とは、開閉体の厚みの中央部から開閉体厚さ方向に沿って離れる方向側を意味する。
また、「開閉体厚さ方向内側」とは、開閉体厚さ方向に沿って開閉体の厚みの中央部へ向かう方向側を意味する。
【0011】
<具体的実施形態>
止水シャッター装置1は、建物等の躯体開口部を開閉体10によって開閉するように設置される。
この止水シャッター装置1は、空間を仕切るようにして閉鎖動作し閉鎖方向端部を対向する被当接面G(例えば、地面や床面等)に当接して全閉する開閉体10と、開閉体10の幅方向の両端部をそれぞれ横断面凹状に囲んで閉鎖方向へ案内する左右のガイドレール20,20と、開閉体10を上方側で収納したり繰り出したりする開閉体収納部30と、開閉体収納部30内で押圧力を発生する押圧装置40,50とを備え(
図1参照)、閉鎖状態の開閉体10を押圧装置40,50の押圧力により不動部位である被当接面Gやガイドレール20に押し付ける。
この止水シャッター装置1は、前記押圧力の伝達経路の一部に、該伝達経路を分離して前記押圧力を伝達不能にする分離可能部Aを有する。
【0012】
開閉体10は、開閉体収納部30によって閉鎖方向へ順次に繰出される複数のパネル11,12を略垂直に積み重ねて全閉状態になる(
図2参照)。
複数のパネル11,12は、パネル連繋チェーン14によって開閉方向に繋がっている。
【0013】
パネル11は、開閉体幅方向へ長尺な正面視矩形板状の部材である。このパネル11は、金属材料を引抜成形又は押出成形することで、上下に仕切られた空洞を有する縦断面枠状に形成される。
このパネル11の下端部は、開閉体幅方向の全長にわたって縦断面略V字状に突出しており、その突出する外面には、シール部16が一体的に設けられる。
【0014】
シール部16は、ゴムやエラストマー樹脂等の弾性材料から、パネル11下端に沿う縦断面V字状に形成され、パネル11の下端部に開閉体幅方向の全長にわたって接合されている。
【0015】
また、パネル11の上端部には、上方に重なり合うパネル11(又は12)のシール部16に嵌り合うように、開閉体幅方向の全長にわたって縦断面略V溝状の凹部11aが形成される。
そして、パネル11の横幅方向の両端部には、開閉体幅方向へ突出するように、支持軸部13が設けられる。
【0016】
最上部のパネル12は、開閉体幅方向へ長尺状に連続する正面視矩形状を呈し、パネル11よりも高さ寸法が小さい。前記寸法は、開閉体10によって開閉される開口部の高さ寸法等に応じて適宜に設定される。
このパネル12は、パネル11と略同様に、金属材料を引抜成形又は押出成形することで、開閉体幅方向に連続する空洞を内在する縦断面枠状に形成される。
パネル12の下端側には、パネル11と同様にシール部16が設けられる。さらに、パネル12の側面には、パネル11と同様に支持軸部13が設けられる。また、また、パネル12の上端には、開閉体幅方向へわたって連続する凹部12aが設けられる。
【0017】
なお、複数のパネル11のみによって所望とする高さ寸法の開閉体10を構成できる場合には、パネル12を省くことも可能である。この場合、最上部には、パネル11が位置し、このパネル11の上端部が、押圧装置40によって押圧される。
【0018】
支持軸部13は、各パネル11,12の幅方向の両端部から、それぞれ、開閉体幅方向外側へ突出している(
図3参照)。
この支持軸部13は、パネル連繋チェーン14に挿通された軸状部材の先端側に、ローラを回転自在に支持してなる。
【0019】
パネル連繋チェーン14は、動力伝達用等に用いられる所謂ローラチェーンであり、その長さ方向において所定間隔置きに支持軸部13を回転自在に挿通している。
このパネル連繋チェーン14は、上下方向のすべてのパネル11,12を、支持軸部13を介して連結し、その上端側が開閉体収納部30内の複数(図示例によれば、二つ)のスプロケット31a,31bに掛けられている。
【0020】
また、各パネル11の側面において、下端側の屋内寄りには、ガイド軸部15が設けられている(
図2及び
図3参照)。
ガイド軸部15は、各パネル11の幅方向端部から突出する軸状部材の先端側にローラを回転自在に支持してなる。
このガイド軸部15は、各パネル11が開閉体収納部30に収納される際に、開閉体収納部30内のガイド部材34(
図2参照)に係合し案内され、開閉体厚さ方向の振れを抑制する。なお、このガイド軸部15は、省くことも可能である。
【0021】
ガイドレール20は、閉鎖状態の開閉体10の幅方向端部を囲むように、横断面凹状もしくはコ字状に形成される(
図3参照)。このガイドレール20は、被当接面Gから開閉体収納部30へわたる長尺状に形成される。
ガイドレール20内には、閉鎖状態の開閉体10を屋外側から屋内側へ押圧する厚さ方向押圧機構55と、この厚さ方向押圧機構55によって押動された開閉体10を屋内側から受ける受部材21とが、上下方向へわたって連続的に設けられる。
【0022】
厚さ方向押圧機構55は、後述する押圧装置50の下方向きの力によって、全閉状態の開閉体10を屋内側へ押圧する装置である。
この厚さ方向押圧機構55は、開閉体10の屋外側面に当接する当接部材55aと、この当接部材55aを屋内側へ平行移動する押圧方向変換機構55bと、ロッド52の進退に連動して上下動する連動部材55cとを具備して構成される(
図3及び
図8参照)。
【0023】
押圧方向変換機構55bは、上下方向の力を開閉体厚さ方向の力に変換する機構である。
この押圧方向変換機構55bは、上下方向の力を開閉体厚さ方向へ変換する二つのリンク部材55b1,55b2と、これらリンク部材55b1,55b2を支持する支持部材55b3とを備える(
図8参照)。
【0024】
二つのリンク部材55b1,55b2は、開閉体厚さ方向に直列的に配設され、これらの中央側が回転自在に接続されて、この接続部分を上方へ突出させた側面視略へ字状に構成される。
一方のリンク部材55b1は、屋外側(
図8によれば左側)の部分が、支持部材55b3に対し回転自在に枢支されている。この枢支部分は、開閉体厚さ方向及び上下方向へは移動しない。
【0025】
他方のリンク部材55b2は、屋内側(
図8によれば右側)の部分が、支持部材55b3に対し開閉体厚さ方向へ移動可能に掛合し、且つ当接部材55aに対し回転自在に枢着されている。この枢着部分は、上下方向へは移動しない。
【0026】
連動部材55cは、上下方向へわたる長尺杆状の部材であり、支持部材55b3に対し上下方向へ移動可能に係合している。
この連動部材55cの上端側には、接続部材56に対し着脱可能に嵌り合うように、着脱ブラケット55dが固定される。この着脱ブラケット55dの上端側は、ロッド52に対し回転自在且つ着脱可能に枢着されて、分離可能部Bを構成する。
【0027】
連動部材55cの下端側は、二つのリンク部材55b1,55b2の接続部分に嵌り合っている。
したがって、連動部材55cが上下方向へ移動すると、これに連動して、リンク部材55b1,55b2の接続部分も同上下方向へ移動する。
【0028】
例えば、押圧装置50の押圧力により、接続部材45及び連動部材55cが下方へ移動すると、当接部材55aが屋外側(
図8によれば右側)へ移動し開閉体10を押し動かす。
また、ロッド52の後退により接続部材45及び連動部材55cが上方へ移動すると、当接部材55aが屋内側(
図8によれば左側)へ移動し、開閉体10から離れる。
【0029】
なお、図示を省略するが、単一の連動部材55cには、上下方向に間隔を置いて複数の押圧方向変換機構55bが配設される。
【0030】
また、受部材21は、閉鎖状態の開閉体10に対し、上下方向の全長にわたって接するようにした長尺状の部材である(
図3及び
図8参照)。この受部材21は、ゴムやエラストマー樹脂等の弾性材料から形成され、開閉体10の屋内側面に弾性的に接触して、開閉体10とガイドレール20の間の水密性を保持する。
【0031】
また、開閉体収納部30は、開閉体10によって開閉される開口部の上方において、当該止水シャッター装置1の設置対象物である躯体等の壁面に固定される。
この開閉体収納部30は、
図2に示すように、内側に空間を有する基体30aに、パネル連繋チェーン14を掛け回したスプロケット31a,31bと、これらスプロケット31a,31bを双方向へ回転させる駆動機構32と、パネル11,12を、支持軸部13を介してパネル11,12を吊持して前後方向へ導く収納レール33と、パネル11下端側のガイド軸部15を水平方向へ案内するガイド部材34とを支持している。
【0032】
この開閉体収納部30は、駆動機構32によりスプロケット31a,31bを一方向へ回転させることで、収納状態にある複数のパネル11,12を屋外側へ順次に繰り出して下方へ閉鎖動作させる。また、同開閉体収納部30は、駆動機構32によりスプロケット31a,31bを逆方向へ回転させることで、閉鎖状態にあるパネル11,12を開放動作させ、上方側で屋内側へ収納する。
【0033】
一方のスプロケット31aは、全閉状態の開閉体10の上方側且つ屋内寄りに位置する。そして、他方のスプロケット31bは、スプロケット31aよりも上方側且つ屋内寄りに位置する。
したがって、開閉体10の閉鎖動作の際、開閉体収納部30から繰り出されるパネル11,12は、スプロケット31a,31bにより屋外側斜め下方へ繰り出される。また、開閉体10の開放動作の際。パネル11,12は、スプロケット31a,31bにより屋内側斜め上方へ移動し収納される。
【0034】
また、駆動機構32は、電動モータによってチェーン及びスプロケット31a,31b等を動作させる電動開閉機構と、操作部32aに対する手動操作により同チェーン及びスプロケット等を動作させる手動開閉機構とを備える。操作部32aは、図示例によれば、手で引っ張るようにして回転させることが可能なチェーンである。
【0035】
二種類の押圧装置40,50は、開閉体収納部30の基体30aに対し、開閉体幅方向に間隔を置いて複数装着される(
図1参照)。
【0036】
一方の押圧装置40は、開閉体収納部30の基体30aに固定されたシリンダ状の本体部41と、本体部41に相対し前進するように嵌り合ったロッド42と、ロッド42を前進させるための駆動源(例えば、図示しない電動モータ等)とを備え(
図6参照)、前記駆動源の駆動によりロッド42を前進させて押圧力を発生したり、同ロッド42を後退させて前記押圧力を解除したりする。
【0037】
この押圧装置40は、ロッド42の先端側を開閉体厚さ方向へ移動できるように、本体部41の後端側が基体30aに枢支されている。
詳細に説明すれば、本体部41の後端側は、枢支部41aを介して基体30aに支持される。このため、押圧装置40の前端側は。開閉体厚さ方向に沿うようにして円弧状に回動可能である(
図7(e)参照)。
枢支部41aは、開閉体幅方向を軸部と、この軸部を支持する支持ブラケット等から構成され、前記軸部により本体部41の後端側を回転自在に支持している。
【0038】
複数に押圧装置40の下方側には、これら押圧装置40の複数のロッド42に跨り、これらロッド42によって押圧され連動するように、押圧部材43が接続されている。この押圧部材43は、開閉体10を上方側から押圧して下方側の不動部位に押し付ける。
詳細に説明すれば、押圧装置40は、左側と右側にそれぞれ複数(
図1の一例によれば二つ)設けられる。そして、押圧部材43は、左側の複数の押圧装置40により上下動するように一つ設けられ、同様に、右側の複数の押圧装置40により上下動するように一つ設けられる。
【0039】
各押圧部材43は。水平片と垂直片を有するアングル状の部材であり、開閉体幅方向へ長尺状に延設されている。
この押圧部材43は、押圧装置40のロッド42先端側に、接続部材45を介して、開閉体幅方向の軸を中心に回転するように枢着される。
さらに、この押圧部材43は、ロッド42の前進に伴って所定の軌跡を描いて開閉体10の上端へ近づくようにリンク機構44によって支持されている。
【0040】
詳細に説明すれば、押圧部材43の水平片の一端側と他端側には、着脱ブラケット43aが設けられる(
図4及び
図5参照)。
この着脱ブラケット43aは、略平行に直立する二つの板状部の間に、接続部材45を嵌脱可能に嵌め合わせている。前記二つの板状部には、それぞれ、開閉体幅方向の貫通孔43a1が設けられる。各貫通孔43a1には外側から着脱可能な止着具46が挿通される。
【0041】
各止着具46は、雄ネジ部を有する先端側を、着脱ブラケット43aの貫通孔43a1に挿通して接続部材45の雌ネジ孔45aに螺合している。止着具46は、図示例によれば、先端側に雄ねじ部を有し後端側に摘まみ部を有する蝶ボルトである。
【0042】
この止着具46を緩めて抜き取れば、押圧部材43を接続部材45から分離することが可能である。
すなわち、止着具46、着脱ブラケット43aの貫通孔43a1、接続部材45の雌ネジ孔45a等は、押圧装置40の押圧力の伝達経路を分離して該押圧力の伝達を不能する分離可能部Aを構成する。
【0043】
そして、上記構成の押圧部材43は、ロッド42の前進に伴って所定の軌跡を描いて開閉体10の上端へ近づくようにリンク機構44によって支持される(
図6参照)。
【0044】
リンク機構44は、基体30aにブラケット等を介して支持され回動する複数のアーム等からなる。このリンク機構44は、押圧部材43を、略水平に保持したまま、側面視円弧状の軌跡を描くようにして、開閉体10上端部に対し接近させたり離隔させたりする(
図7参照)。
【0045】
図5中、符号43a3は、リンク機構44の複数のアームの一部を枢支する枢支孔である。また、符号43bは。前記複数のアームの他の一部を枢支する枢支ブラケットである。
【0046】
また、接続部材45は、ロッド42に対し押圧部材43を枢着する中間部材である。この接続部材45の後端側は、ロッド42の先端側に対し、開閉体幅方向の軸を支点にして回転するように枢着されている。そして、同接続部材45の先端側は、上記押圧部材43の着脱ブラケット43aに嵌り合うとともに、止着具46によって着脱可能に接続されている。
【0047】
また、他方の押圧装置50は、押圧装置40と略同様に、開閉体収納部30の基体30aに固定されたシリンダ状の本体部51と、本体部51に相対し前進するように嵌り合ったロッド52と、ロッド52を前進させるための駆動源(例えば、電動モータ等)とを備え、ロッド52の前進により押圧力を発生する(
図8参照)。
この押圧装置50は、ロッド52のストロークが、押圧装置40のものとは異なる。ロッド52のストロークは、厚さ方向押圧機構55の動作量等に応じて適宜に設置される。
【0048】
この押圧装置50は、開閉体幅方向において複数の押圧装置40を間に置くようにして、その左側と右側に、それぞれ間隔をおいて設けられる(
図1参照)。
各押圧装置50のロッド52には、接続部材56が枢着され、この接続部材56には、分離可能部Bを構成するように、連動部材55cと一体の着脱ブラケット55dが着脱可能に接続される。
【0049】
接続部材56は、接続部材45と略同様に構成され、ロッド52に対し連動部材55cの上端側を回転自在に接続するものである。
詳細に説明すれば、この接続部材56の後端側は、ロッド52の先端側に対し、開閉体幅方向の軸を支点にして回転するように枢着されている。そして、同接続部材56の下端側は、止着具46及び着脱ブラケット55dによって、連動部材55cの上端側に対し、着脱可能に接続されている。
【0050】
止着具46は、例えば、上記止着具46と同様の蝶ボルトとすればよい。
着脱ブラケット55dは、上記着脱ブラケット43aと略同様に構成され、上端側を接続部材56に嵌め合わせ、止着具46によって着脱可能に止着している。この着脱ブラケット55dの下端側は、連動部材55cに対し一体的に固定される。
【0051】
なお、
図2中の符号90は、開閉体幅方向の中央寄りへ可動柱91を移動させ、この可動柱91を開閉体10の屋内側面に押し付けて、開閉体10の撓みを抑制する撓み抑制装置である。
【0052】
<作用効果>
次に、上記構成の止水シャッター装置1について、その特徴的な作用効果を詳細に説明する。
【0053】
開閉体収納部30にパネル11,12が収納された状態で、駆動機構32による閉鎖動作が開始されると、複数のパネル11,12が、開閉体収納部30から順次に下方へ繰り出され、被当接面Gに積み重ねられる。そして、これら複数のパネル11,12からなる開閉体10は、
図2に示す全閉状態で静止する。
【0054】
この全閉状態において、押圧装置40,50が動作すると、開閉体10は、押圧部材43及び厚さ方向押圧機構55等を介して、垂直方向及び水平方向に押圧される。
【0055】
垂直方向の動作について説明すれば、押圧装置40は、図示しない制御回路からの信号及び電力により動作し、本体部41に相対しロッド42を下向きに伸長させる(
図6(a)(b)参照)。
すると、ロッド42前端に接続部材45を介して接続された押圧部材43が、リンク機構44により円弧状に回動し、パネル12(開閉体10)の上端部に当接し、開閉体10を下方へ押圧する。
【0056】
また、水平方向の動作について説明すれば、押圧装置50は、図示しない制御回路からの信号及び電力により動作し、本体部51に相対しロッド52を下向きに伸長させる(
図8(a)(b)参照)。
すると、ロッド52の押圧力により、接続部材56、着脱ブラケット55d及び連動部材55c等が下方へ移動し、これに連動し、当接部材55aが水平方向へ移動して開閉体10の屋外側面に当接する。さらに、前記水平方向の移動が継続することで、開閉体10が屋内側へ押し動かされ受部材21に押し付けられる(
図8(b)参照)。
【0057】
押圧装置40等による垂直方向の押圧力により、最下側のパネル11は、下端のシール部16を被当接面Gに押し付けて弾性変形する。また、上下に隣接するパネル11,11(又は12)間でも、シール部16が挟まれ弾性変形する。
また、押圧装置50等による水平方向の押圧力により、開閉体10の各パネル11,12は、ガイドレール20の受部材21に押し付けられて、受部材21が弾性変形する。
よって、開閉体10の下端と被当接面Gの間、上下に隣接するパネル11,11(又は12)間、及び開閉体10とガイドレール20の間において、水密性が保持される。
【0058】
<解除動作>
前記押圧状態において、開閉体10を開放する場合、通常は、前記制御回路等を介した電気的な操作により、押圧装置40,50を逆方向へ動作させ、前記押圧状態を解除すればよい。
しかしながら、例えば停電等の発生により、押圧装置40,50や前記制御回路へ電力が供給されず、電気的な解除操作ができない場合には、押圧装置40,50の押圧力の伝達経路を分離可能部A,Bにより分離すればよい。
【0059】
押圧装置40の押圧力の伝達経路の分離について説明すれば、先ず、
図6(c)に示すように。止着具46を緩めて取り外す。
これによって、押圧装置40の押圧力の伝達経路が、分離可能部Aにおいて分離された状態になる。
【0060】
次に、
図7(d)に示すように、接続部材45から分離した押圧部材43を手で持ち上げるようにして、初期位置に戻す。
【0061】
さらに、
図7(e)に示すように、押圧装置40の下部側を、枢支部41aを支点にして、開閉体10の開閉経路の外側(屋外側)へ回動させる。この回動は、押圧装置40の自重によるものとすればよい。
これによって、全閉状態にある開閉体10の上方側には、開閉体10が開放動作するための空間が確保される。
【0062】
また、押圧装置50の押圧力の伝達経路の分離について説明すれば、先ず、
図8(c)に示すように。止着具46を緩めて取り外す。
これによって、押圧装置50の押圧力の伝達経路が、分離可能部Bにおいて分離した状態になる。
【0063】
次に、
図9(d)に示すように、押圧装置50の下部側及び接続部材56を、枢支部51aを支点にして、屋外側へ回動させる。この回動は、押圧装置50の自重による回動とすることが可能である。
この後、連動部材55cを上方へ持ち上げれば、当接部材55aが屋外側へ移動して開閉体10から離れる。
このため、開閉体10は、受部材21に圧接した状態から、受部材21に緩く接触又は近接した状態になる(
図9(e)参照)。
【0064】
これらの作業によって、押圧装置40,50による押圧力が解除され、開閉体10は、上方へ開放動作可能な状態になる。
停電状態のまま開閉体10を開放させるには、操作部32aを手で操作して、駆動機構32を人力で開放方向へ動作させればよい。
【0065】
よって、上記構成の止水シャッター装置1によれば、押圧装置40,50による押圧状態を手動で容易に解除することができ、ひいては、停電等により電力供給がない場合でも、開閉体10を容易に開放することができる。
停電時に押圧装置40,50を電動で解除するための予備電源を不要にすることも可能である。
また、電力復帰後は、分離可能部Aを復元して、押圧装置40を電力により動作させればよい。
【0066】
<分離可能部の他例>
上記分離可能部A,Bは、止着具46の取り外しによって接続部材45(又又は56)と着脱ブラケット43a(又は55d)を分離する構成としたが、これらは、分離可能部Cに置換することができる。
【0067】
分離可能部Cは、押圧装置40(又は50)の押圧力の伝達経路中に接続された二部材のうちの一方に、切り離し可能な切離可能部81bを設けてなり、切離可能部81bが切り離されることで前記二部材を分離する。
具体的に説明すれば。この分離可能部Cは、
図10及び
図11に示すように、着脱ブラケット81の切離可能部81bが取り除かれることで、接続部材45(又は56)に接続された軸部82が分離されるように構成される。
【0068】
着脱ブラケット81は、間隔を開けた二つの板部81a,81aを一体的に有する。これら板部81a,81a間には、接続部材45(又は56)が着脱可能に嵌め合わせられる。これら板部81a,81a及び接続部材45(又は56)には、貫通状に軸部82が挿通される。軸部82は、圧入等により固定される。
【0069】
各板部81aには。軸部82を挿通する支持孔81cが設けられ、この支持孔81cの周りには、切離可能部81bが設けられる。
切離可能部81bは、板部81aの外側の面から略ブロック状に突出しており、外力により切り離し可能である。この切離可能部81bは、切り離される際に、板部81aの一部を取り除いて、板部81aに貫通部81b1(
図11(b)参照)を形成する。貫通部81b1は、隣接する支持孔81cに連通して、貫通状の単数の孔を形成する。
この切離可能部81bの形状および大きさは、支持孔81cに挿通された軸部82が貫通部81b1側へ移動可能となるように適宜に設定される。
【0070】
よって、上記構成の分離可能部Cによれば、着脱ブラケット81に支持孔81cが装着された状態(
図11(a)参照)において、切離可能部81bを工具等により取り除けば(
図11(b)参照)、軸部82を貫通部81b1内へ移動して取り外すことができる。
さらには、軸部82を着脱ブラケット81及び接続部材45(又は56)から抜き取って、着脱ブラケット81と接続部材45(又は56)を分離することができる。
【0071】
<他の変形例>
上記分離可能部は、押圧装置40による押圧力の伝達経路の少なくとも一部を分離して、該押圧力を伝達不能にするものであればよい。したがって、上記分離可能部の他例としては、ロッド42と接続部材45の間に設けられた態様や、接続部材45を省き、ロッド42を直接、押圧部材43に対し、回転自在且つ着脱可能に枢着した態様等とすることが可能である。
【0072】
また、上記実施形態によれば、分離可能部を単数設けたが、図示例以外の他例としては。例えば、押圧装置40と押圧部材43の間の複数の接続部分等、押圧力の伝達経路の複数箇所にそれぞれ対応するように、複数の分離可能部を設けることも可能である。
【0073】
また、上記実施形態によれば、開閉体10を複数のパネル11によって構成したが、開閉体10の単数の略板状の部材から構成することも可能である。
【0074】
また、上記実施形態によれば、押圧装置40,50をピストンシリンダ方式により押圧力を発生する機構としたが、前記押圧装置の他例としては、駆動回転するネジ部材に螺合したナット状部材によって押圧力を発生する機構や、駆動回転する平歯車とラック歯車によって押圧力を発生する機構、リニアモータによって押圧力を発生する機構、その他の機構とすることが可能である。
【0075】
また、上記実施形態よれば、押圧装置40と押圧装置50をストロークの異なるものとしたが、図示しない他例としては、厚さ方向押圧機構55の動作量等を適宜に調整して、二つの押圧装置40,50のストロークを略同一にすることも可能である。
【0076】
また、上記実施形態において押圧方向変換機構55bは、リンク機構等によってロッド52の上下方向の力を開閉体厚さ方向の力に変換するようにしたが、他例としては、図示例以外の構成(例えば、ラック・ピニオン機構等)によってロッド52の上下方向の力を開閉体厚さ方向の力に変換することも可能である。
【0077】
また、上記実施形態によれば、好ましい一例として、押圧装置40の押圧力の伝達経路が上記分離可能部により分離した際に、押圧装置40が自重により開閉経路の外側に移動するようにしたが、図例以外の他例としては、前記分離により押圧装置40がバネ等の付勢部材の付勢力により前記開閉経路の外側に移動する態様や、前記分離の後に押圧装置40が人力で前記開閉経路の外側に移動する態様等とすることが可能である。
【0078】
また、本発明は上述した具体的構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【0079】
<総括>
以上のとおり、上記実施形態では以下の発明を開示している。
(1)
空間を仕切るようにして閉鎖動作する開閉体と、押圧力を発生する押圧装置とを備え、閉鎖状態の前記開閉体を前記押圧装置の押圧力により不動部位に押し付けるようにした止水シャッター装置であって、前記押圧力の伝達経路の少なくとも一部を分離して前記押圧力を伝達不能にする分離可能部が設けられていることを特徴とする止水シャッター装置(
図1~
図11参照)。
(2)
前記押圧装置は、本体部と、前記本体部に相対し前進して押圧力を発生するロッドを備え、前記ロッドの先端側には、前記開閉体を押圧する押圧部材が設けられ、前記分離可能部は、前記ロッドと前記押圧部材の間に設けられていることを特徴とする(1)に記載の止水シャッター装置(
図6及び
図7参照)。
(3)
前記押圧部材は、開閉体幅方向の軸を中心に回転するように設けられていることを特徴とする(2)に記載の止水シャッター装置(
図6参照)。
(4)
前記押圧装置が、開閉体幅方向へ間隔を置いて複数設けられ、これら複数の押圧装置によって押圧されるように前記押圧部材が設けられ、前記分離可能部は、前記押圧装置と前記押圧部材の間の複数の接続部分にそれぞれ設けられていることを特徴とする(2)または(3)に記載の止水シャッター装置(
図1参照)。
(5)
前記開閉体の幅方向端部を囲んで開閉方向へ案内するガイドレールを備え、前記押圧装置の押圧力により前記開閉体を開閉体厚さ方向へ押圧して前記ガイドレールに押し付ける厚さ方向押圧機構を備え、前記分離可能部は、前記押圧装置と前記厚さ方向押圧機構の間に設けられていることを特徴とする(1)~(4)のいずれかに記載の止水シャッター装置(
図8及び
図9参照)。
(6)
前記分離可能部は、前記押圧力の伝達経路中に接続された二部材のうちの一方に、切り離し可能な切離可能部を設けてなり、前記切離可能部が切り離されることで前記二部材を分離することを特徴とする(1)~(5)のいずれかに記載の止水シャッター装置(
図10及び
図11参照)。
(7)
前記分離可能部により前記押圧力の伝達経路の一部を分離することで、閉鎖状態の前記開閉体の開放方向側に、前記開閉体が開放動作するための空間が確保されるようにしたことを特徴とする(1)~(6)のいずれかに記載の止水シャッター装置(
図7参照)
(8)
前記押圧装置は、前記押圧力の伝達経路が前記分離可能部により分離した際に、前記開閉体の開閉経路の外側に移動することを特徴とする(7)に記載の止水シャッター装置(
図7参照)。
【0080】
また、上記実施形態では、次の構成要件のみを必須とした発明も開示している。
すなわち、この発明は、押圧力の伝達経路の少なくとも一部に、前記押圧力を伝達不能に分離することが可能な分離可能部を備え、前記分離可能部は、前記押圧力の伝達経路中に接続された二部材のうちの一方に、切り離し可能な切離可能部を設けてなり、前記切離可能部が切り離されることで前記二部材が分離されるようにしたことを特徴とする押圧力伝達構造(
図10及び
図11参照)。
この発明によれば、押圧力の伝達経路を容易に分離することができる。
【符号の説明】
【0081】
1:止水シャッター装置
10:開閉体
20:ガイドレール
30:開閉体収納部
40,50:押圧装置
41,51:本体部
42,52:ロッド
43:押圧部材
43a,55d,81:着脱ブラケット
45:接続部材
46:止着具
55:厚さ方向押圧機構
55c:連動部材
81b:切離可能部
A,B,C:分離可能部