特開 2024-93566 空気入りタイヤ

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2024093566

(43)【公開日】2024-07-09

(54)【発明の名称】空気入りタイヤ

(51)【国際特許分類】

   B60C 11/01 20060101AFI20240702BHJP

   B60C 13/00 20060101ALI20240702BHJP

【ＦＩ】

B60C11/01 A

B60C13/00 C

B60C13/00 D

【審査請求】未請求

【請求項の数】7

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2022210038

(22)【出願日】2022-12-27

(71)【出願人】

【識別番号】000003148

【氏名又は名称】ＴＯＹＯ ＴＩＲＥ株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】110001210

【氏名又は名称】弁理士法人ＹＫＩ国際特許事務所

(72)【発明者】

【氏名】伊藤 智仁

【テーマコード（参考）】

3D131

【Ｆターム（参考）】

3D131BB01

3D131BC31

3D131BC47

3D131CA03

3D131EC01Y

3D131EC12Y

3D131GA01

3D131GA03

3D131GA19

(57)【要約】

【課題】色ゴム層を有するサイドウォールを備える空気入りタイヤにおいて、耐久性を高くする。
【解決手段】実施形態の一例であるタイヤ１は、トレッド１０と、色ゴム層を有するサイドウォール２０とを含む。トレッド１０を形成するトレッドゴム１１のタイヤ軸方向端部と、色ゴム層の界面位置Ｐ１との、タイヤ外表面に沿った最短距離Ａ１が５ｍｍ以上である。
【選択図】図２

【特許請求の範囲】

【請求項1】

トレッドと、色ゴム層を有するサイドウォールとを備える空気入りタイヤであって、
前記トレッドを形成するトレッドゴムのタイヤ軸方向端部と、前記色ゴム層の界面位置との、タイヤ外表面に沿った最短距離が５ｍｍ以上である、
空気入りタイヤ。

【請求項2】

前記色ゴム層においてタイヤ外壁面から突出し文字及び模様の一方または両方が表示される色ゴム突部を有し、側面が黒色ゴムで覆われる色ゴム含有突部が形成され、前記色ゴム含有突部の先端面のタイヤ径方向長さは、タイヤ断面高さの２０％以下である、
請求項１に記載の空気入りタイヤ。

【請求項3】

前記色ゴム層においてタイヤ外壁面から突出し文字及び模様の一方または両方が表示される色ゴム突部を有し、側面が黒色ゴム層で覆われる色ゴム含有突部が形成され、前記色ゴム含有突部の側面の基端から先端までのタイヤ軸方向長さは０．５ｍｍ以上である、
請求項１に記載の空気入りタイヤ。

【請求項4】

タイヤ断面高さが１５０ｍｍ以下である、
請求項１から請求項３のいずれか１項に記載の空気入りタイヤ。

【請求項5】

前記トレッドにおける、接地端よりタイヤ軸方向外側のタイヤ軸方向端部において、タイヤ周方向複数位置からタイヤ周方向に離れてタイヤ外表面に沿って、タイヤ径方向内側に突出する複数のブロック突部を備え、
タイヤ子午線断面において、前記複数のブロック突部のそれぞれのタイヤ径方向内側端と前記色ゴム層の界面位置との、タイヤ外表面に沿った最短距離が５ｍｍ以上である、
請求項１に記載の空気入りタイヤ。

【請求項6】

前記トレッドにおける、接地端よりタイヤ軸方向外側のタイヤ軸方向端部において、タイヤ周方向複数位置からタイヤ周方向に離れてタイヤ外表面に沿って、タイヤ径方向内側に突出する複数のブロック突部と、
前記トレッドの外表面のタイヤ軸方向端部において、タイヤ外表面からタイヤ周方向に沿って突出するように形成される周方向リブと、を備え、
前記複数のブロック突部のそれぞれについて、前記周方向リブの頂点を結ぶタイヤ周方向線から前記ブロック突部のタイヤ径方向内側端までの、タイヤ外表面に沿った長さは、１０ｍｍ以上である、
請求項１に記載の空気入りタイヤ。

【請求項7】

前記トレッドにおける、接地端よりタイヤ軸方向外側のタイヤ軸方向端部において、タイヤ周方向複数位置からタイヤ周方向に離れてタイヤ外表面に沿って、タイヤ径方向内側に突出する複数のブロック突部を備え、
前記複数のブロック突部のそれぞれとタイヤ径方向同位置での、タイヤ外表面における前記ブロック突部がない位置から前記ブロック突部のタイヤ外表面までの高さは０．５ｍｍ以上である、
請求項１に記載の空気入りタイヤ。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、空気入りタイヤに関し、より詳しくは、トレッドと、色ゴム層を有するサイドウォールとを備える空気入りタイヤに関する。

【背景技術】

【0002】

特許文献１には、サイドウォールに色ゴム層を配設した空気入りタイヤにおいて、色ゴム層のトータルゲージを２ｍｍ以上、４ｍｍ以下とすることが記載されている。

【0003】

特許文献２には、サイドウォールにおいて、カーカスを形成するカーカスプライの外側に白色ゴム層を設けた構成が記載されている。この構成では、白色ゴム層の表面の平坦面以外の部分に凹部が形成される。黒色ゴムによって形成されたアンダーカバー層に凸部を設け、その凸部と白色ゴム層の凹部とを嵌合させ、互いに接着している。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0004】

【特許文献1】特開２００６－１６８６１６号公報

【特許文献2】特開２０１６－１４１２０２号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

しかしながら、特許文献１，２のいずれにも、色ゴム層の界面位置とトレッドゴムの色ゴム層側端との関係を規制することは記載されていない。このような特許文献１，２に記載された構成では、ゴムの歪みが大きくなる部分が、柔らかく変形しやすい色ゴム層に近づく可能性がある。これにより、色ゴム層に大きな応力が生じやすくなり、十分な耐久性を確保できない可能性がある。

【0006】

本発明の目的は、色ゴム層を有するサイドウォールを備える空気入りタイヤにおいて、耐久性を高くすることである。

【課題を解決するための手段】

【0007】

本発明に係る空気入りタイヤは、トレッドと、色ゴム層を有するサイドウォールとを備える空気入りタイヤであって、前記トレッドを形成するトレッドゴムのタイヤ軸方向端部と、前記色ゴム層の界面位置との、タイヤ外表面に沿った最短距離が５ｍｍ以上である、空気入りタイヤである。
ここで、「タイヤ外表面に沿った最短距離」とは、タイヤ子午線断面において、タイヤ外表面のうち、局所的に突出する突起を除いた外表面に沿って滑らかに接続される曲線に沿った最短距離である。

【発明の効果】

【0008】

本発明に係る空気入りタイヤによれば、トレッドゴムのタイヤ軸方向端部と、サイドウォールの白色ゴム層等の色ゴム層の界面位置との、タイヤ外表面に沿った最短距離が５ｍｍ以上である。これにより、タイヤの歪が大きくなるゴム部分と柔らかく変形しやすい色ゴム層との距離を大きくできるので、色ゴム層に大きな応力が発生することを抑制できる。このため、タイヤの耐久性を高くできる。

【図面の簡単な説明】

【0009】

【図1】実施形態の一例である空気入りタイヤの車両外側部分の子午線断面図である。

【図2】図１のＡ部拡大図である。

【図3】図１のＢ部拡大図である。

【図4】一部のブロック突部を含むタイヤ周方向一部をタイヤ軸方向外側から見て、タイヤ周方向を横方向に伸ばして模式化して示す図である。

【図5】実施形態の別例である空気入りタイヤの車両外側部分の子午線断面図である。

【図6】図５のＣ部拡大図である。

【発明を実施するための形態】

【0010】

以下、図面を参照しながら、本発明に係る空気入りタイヤの実施形態の一例について詳細に説明する。以下で説明する実施形態はあくまでも一例であって、本発明は以下の実施形態に限定されない。また、以下で説明する複数の実施形態及び変形例の各構成要素を選択的に組み合わせることは本発明に含まれている。

【0011】

図１は、実施形態の一例である空気入りタイヤ１の車両外側部分の断面図である。図２は、図１のＡ部拡大図である。図３は、図１のＢ部拡大図である。図１に示すように、空気入りタイヤ１は、路面に接地する部分であるトレッド１０を備える。以下、「空気入りタイヤ１」は、「タイヤ１」と記載する。トレッド１０は、複数のブロックを含むトレッドパターンを有し、タイヤ周方向に沿って環状に形成されている。図示の例では、トレッド１０を、単一のブロックで形成されるように示しているが、実際には、トレッド１０は、複数のブロックを含んで形成されている。トレッド１０は、接地端Ｔを有する。タイヤ１は、整地走行用、または不整地走行用、または整地走行及び不整地走行の両方に優れたタイヤである。タイヤ１は、スノータイヤ以外でもよいし、スノータイヤとしてもよい。

【0012】

以下、タイヤ１の構成として、タイヤ軸方向中央ＣＬを中心として車両外側（ＯＵＴ側）の部分を中心に説明する。タイヤ１の外形の形状は、後述の色ゴム層の配置部分以外の形状について、タイヤ１の車両外側の部分と車両内側の部分とで対称である。

【0013】

タイヤ１は、トレッド１０よりタイヤ軸方向外側の端部に設けられ、最もタイヤ軸方向外側に膨らんだサイドウォール２０と、ホイールのリムに固定されるビード１４とを備える。サイドウォール２０とビード１４は、タイヤ周方向に沿って環状に形成される。サイドウォール２０は、トレッド１０のタイヤ軸方向両端からタイヤ径方向内側に延びている。

【0014】

タイヤ１は、所定圧の空気が充填される空気入りタイヤである。トレッド１０は、トレッドゴム１１で構成される。サイドウォール２０は、トレッドゴム１１とは異なる種類のサイドウォールゴム２１で構成される。タイヤの車両外側のサイドウォール２０は、後述のように、黒色ゴム層２２と白色ゴム層２４とを有するサイドウォールゴム２１で構成される。白色ゴム層２４は、色ゴム層に相当する。タイヤ１の図示しない車両内側部分のサイドウォールは、通常のサイドウォールであり、黒色ゴム層のみからなるサイドウォールゴムで構成される。黒色ゴム層２２及び白色ゴム層２４は、後で詳しく説明する。

【0015】

本例の場合、タイヤ１は、ＴＯＳ（トレッドオンサイド）構造と呼ばれるものである。ＴＯＳ構造では、トレッドゴム１１のタイヤ軸方向外端部が、サイドウォールゴム２１のタイヤ径方向外側端部のタイヤ軸方向外側に重なって、タイヤ外壁面に露出している。

【0016】

また、トレッド１０において、接地端Ｔよりタイヤ軸方向外側の端部にはタイヤ周方向の複数位置からタイヤ周方向に離れてタイヤ径方向内側にブロック状に突出するブロック突部４０が設けられる。ブロック突部４０は、そのブロック突部４０よりタイヤ径方向内側部分の外表面よりも、タイヤ軸方向外側に突出している。ブロック突部４０は、後で詳しく説明する。

【0017】

本明細書では、特に断らない限り、タイヤの各部の寸法は、未使用のタイヤを正規リムに装着し、正規内圧となるように空気を充填した、無負荷の正規状態で測定した寸法である。

【0018】

「接地端Ｔ」とは、未使用のタイヤ１を正規リムに装着して正規内圧となるように空気を充填した状態で、正規内圧における正規荷重の８８％の負荷を加えたときに平坦な路面に接地する領域のタイヤ軸方向両端を意味する。

【0019】

ここで、「正規リム」とは、タイヤ規格により定められたリムであって、ＪＡＴＭＡであれば「標準リム」、ＴＲＡであれば「Design Rim」、ＥＴＲＴＯであれば「Measuring Rim」である。「正規内圧」は、ＪＡＴＭＡであれば「最高空気圧」、ＴＲＡであれば表「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、ＥＴＲＴＯであれば「INFLATION PRESSURE」である。「正規荷重」は、ＪＡＴＭＡであれば「最大負荷能力」、ＴＲＡであれば表「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、ＥＴＲＴＯであれば「LOAD CAPACITY」である。

【0020】

タイヤ１は、カーカス１５、ベルト１６、及びインナーライナー１７を備える。カーカス１５は、ゴムで被覆されたコード層であり、荷重、衝撃、空気圧等に耐えるタイヤ１の骨格を形成する。ベルト１６は、トレッドゴム１１とカーカス１５の間に配置される補強帯である。ベルト１６は、カーカス１５を強く締めつけてタイヤ１の剛性を高める。インナーライナー１７は、カーカス１５の内周面に設けられたゴム層であって、タイヤ１の空気圧を保持する。ビード１４は、ビードコア１４ａとビードフィラー１４ｂを有する。カーカス１５は、タイヤ軸方向両端部に設けられたビードコア１４ａからタイヤ軸方向中央にわたって設けられる。トレッド１０は、カーカス１５の径方向外側に設けられる。

【0021】

カーカス１５は、１枚以上のカーカスプライが重ねられて構成される。図示の例では、カーカスは、２枚のカーカスプライ１５ａ、１５ｂが重ねられて構成されている。カーカスプライ１５ａ、１５ｂは、プライコードと呼ばれる繊維コードやスチールコードが並んで配置され、カーカスゴムとの接着により形成される。さらに、カーカス１５は、タイヤ軸方向両端部でビードコア１４ａの周りをタイヤ軸方向内側から外側に巻き上げるように折り返され、その巻き上げられた巻き上げ端は、カーカスプライ端となる。巻き上げ端は、各カーカスプライに応じた位置に存在する。図示の例では、２枚のカーカスプライ１５ａ、１５ｂのそれぞれの両端に巻き上げ端Ｅ１、Ｅ２がある。

【0022】

実施形態のタイヤ１は、車両に対するタイヤ１の表裏の装着方向が指定されている。すなわち、タイヤ１は、車両の外側及び内側となる側がそれぞれ指定されている。図１では、タイヤ１を、右側が車両の外側（ＯＵＴ側）で、左側が車両の内側（ＩＮ側）となるように、車両に取り付ける。

【0023】

タイヤ側面には、一般的に、セリアルと呼ばれる記号が設けられている。セリアルには、例えばサイズコード、製造時期（製造年週）、製造場所（製造工場コード）などの情報が含まれる。車両の外側に向くタイヤ側面（サイドウォール２０）のみにセリアルを設ける、または車両外側に向く側面と車両内側に向く側面とで異なるセリアルを設けることで、車両に対するタイヤ１の装着方向が特定される。具体例としては、タイヤ１の両側面に製造工場コードおよびサイズコードを設け、車両の外側に向く側面のみに製造年週を設けることが挙げられる。

【0024】

また、車両の外側に向くタイヤ側面に文字または記号で、車両への装着状態で外側であること示す表示が設けられてもよい。

【0025】

さらに、タイヤ１の車両内側のサイドウォール２０は、黒色ゴム層２２と、白色ゴム層２４とを有する。黒色ゴム層２２は、白色ゴム層２４のタイヤ径方向両側に設けられた本体部２２ａと、白色ゴム層２４の表面を覆うカバー部２２ｂとを有する。

【0026】

白色ゴム層２４は、ベース部２５と、ベース部２５からタイヤ軸方向外側に突出する色ゴム突部２６とを有する。ベース部２５は、黒色ゴム層２２の本体部２２ａ間に嵌め込むように固定される。ベース部２５のタイヤ軸方向外側面は、黒色ゴム層２２のカバー部２２ｂで覆われる。

【0027】

色ゴム突部２６は、ベース部２５のタイヤ軸方向外側面のタイヤ径方向中間部のタイヤ周方向複数位置から突出するか、または全周にわたってリング状に突出して形成される。例えば、色ゴム突部２６は、タイヤ周方向に並んだ複数の文字の形状でタイヤ軸方向外側に突出する。色ゴム突部２６の先端は、略平坦面である。色ゴム突部２６の側面を含む表面が、黒色ゴム層２２のカバー部２２ｂで覆われることにより、色ゴム含有突部２７が形成される。

【0028】

色ゴム含有突部２７の先端において、白色ゴム層２４の表面を覆うカバー部２２ｂが除去されることにより、白色の文字及び模様の一方または両方が露出して表示される。色ゴム突部２６をリング状とする場合には、白色のリング状の模様が露出して表示される。図２では、タイヤ外表面の黒太線がカバー部２２ｂを含む黒色ゴム層２２の外表面を示している。図２では、色ゴム含有突部２７の先端からカバー部２２ｂが除去されることにより、白色の色ゴム突部２６の表面が露出することを示している。これにより、白色ゴム層２４には、タイヤ外壁面から突出し、文字及び模様の一方または両方が表示される色ゴム突部２６が形成される。

【0029】

白色ゴム層２４のベース部２５において、タイヤ径方向両端は、タイヤ軸方向内側に向かって、ベース部２５のタイヤ径方向中央側に傾斜したテーパ面となっている。これにより、白色ゴム層２４のタイヤ径方向外側端と本体部２２ａとの界面も、タイヤ軸方向内側に向かって、ベース部２５のタイヤ径方向中央側に傾斜したテーパ面となっている。

【0030】

黒色ゴム層２２は、カーボンを含む。例えば、黒色ゴム層２２は、カーボンにより補強されてなるジエン系ゴム材料により構成される。白色ゴム層２４は、例えば白色充填材が充填されているジエン系ゴム材料により構成される。このため、白色ゴム層２４の剛性は黒色ゴム層２２の剛性より低い。また、トレッドゴム１１の剛性は、サイドウォール２０を構成する黒色ゴム層２２の剛性より高い。

【0031】

トレッドゴム１１のタイヤ軸方向端部で最も白色ゴム層２４に近い位置にある白色ゴム層側端は、図１、図３のブロック突部４０の外表面上のＰ２で示す位置にある。

【0032】

さらに、トレッドゴム１１の白色ゴム層側端Ｐ２と、白色ゴム層２４の本体部２２ａについての界面位置Ｐ１との、タイヤ外表面に沿った最短距離Ａ１は、５ｍｍ以上である。これにより、タイヤ１の歪が大きくなるゴム部分における、トレッドゴム１１及びサイドウォールゴム２１の界面近傍部分と、柔らかく変形しやすい白色ゴム層２４との距離を大きくできるので、白色ゴム層２４に大きな応力が発生することを抑制できる。このため、白色ゴム層２４を有するサイドウォール２０を備えるタイヤ１において、耐久性を高くできる。

【0033】

また、色ゴム突部２６の先端面のタイヤ径方向長さＬ１は、タイヤ断面高さＨの２０％以下である。これにより、白色ゴム層２４の界面位置Ｐ１及び色ゴム突部２６の基端位置の間の製造上必要な距離を確保しながら、タイヤ断面高さＨに対する白色ゴム層２４のベース部２５のタイヤ径方向長さの割合も、十分に小さくできる。このため、白色ゴム層２４の界面位置Ｐ１と、トレッドゴム１１の白色ゴム層側端Ｐ２との距離をさらに大きくしやすくなる。したがって、タイヤ１の製造性を良好に確保しながら、タイヤの耐久性をさらに向上できる。

【0034】

また、色ゴム含有突部２７の側面の基端から先端までのタイヤ軸方向長さＤ１（図２）は、０．５ｍｍ以上である。ここで色ゴム含有突部２７の側面の基端（図２の左端）は、タイヤ子午線断面において、色ゴム含有突部２７を除いた形状におけるタイヤ外表面に沿った曲線（図２の二点鎖線を含む曲線）と、色ゴム含有突部２７のタイヤ径方向内側の側面を表す曲線との交点である。また、色ゴム含有突部２７の側面の先端は、タイヤ子午線断面において、色ゴム含有突部２７のタイヤ径方向内側の側面の先端（図２の右端）である。このようなタイヤ軸方向長さＤ１の規制により、タイヤ１の製造性を良好に確保しながら色ゴム含有突部２７を形成できる。タイヤ軸方向長さＤ１が０．５ｍｍ未満の場合には、特に、色ゴム含有突部２７の先端から黒色ゴム層２２のカバー部２２ｂを機械加工で除去して、白色の文字及び模様の一方または両方を表示する場合に、削る必要がない部分を削ってしまう等、製造作業での不都合が生じやすくなる。タイヤ軸方向長さＤ１が０．５ｍｍ以上の場合には、このような不都合を防止できる。

【0035】

さらに、タイヤ断面高さＨは１５０ｍｍ以下である。タイヤ断面高さＨが小さくなるほど、トレッドゴムの白色ゴム層側端Ｐ２と、タイヤ最大幅付近との距離は小さくなる。タイヤの歪は、タイヤ最大幅付近で最も大きくなりやすい。これにより、トレッドゴムの白色ゴム層側端Ｐ２とタイヤ最大幅付近との距離が小さくなると、耐久性能が低下する。このことは、タイヤ断面高さＨが１５０ｍｍ以下でより顕著になる。したがって、タイヤ断面高さＨが１５０ｍｍ以下である場合には、上記のように白色ゴム層２４の界面位置Ｐ１と、トレッドゴム１１の白色ゴム層側端Ｐ２とのタイヤ外表面に沿った最短距離Ａ１を５ｍｍ以上とすることによって、タイヤの耐久性がより顕著に高くなる。

【0036】

さらに、トレッド１０に複数のブロック突部４０，４１が設けられる。複数のブロック突部４０，４１は、トレッド１０における、接地端Ｔよりタイヤ軸方向外側のタイヤ軸方向端部において、タイヤ周方向複数位置からタイヤ周方向に離れてタイヤ外表面に沿って、タイヤ径方向内側に突出する。ブロック突部４１は図４に示している。例えば、図４は、一部のブロック突部４０，４１を含むタイヤ周方向一部をタイヤ軸方向外側から見て、タイヤ周方向を横方向に伸ばして模式化して示す図である。複数のブロック突部４０、４１は、図４のようにタイヤ軸方向外側から見た状態で、トレッド１０の接地端Ｔよりタイヤ軸方向外側部分のタイヤ周方向複数位置から、タイヤ外表面に沿ってタイヤ径方向内側に延びるようにブロック状に突出する。例えば、複数のブロック突部４０、４１は、トレッド１０の軸方向端部に設けたショルダー陸部からタイヤ外表面に沿ってタイヤ径方向内側に突出する。このとき、ブロック突部４０、４１の基端側部分はトレッドゴムにより形成されると共に、先端側部分はサイドウォールゴムにより形成される。図４に示す曲線Ｐ２Ｌは、ブロック突部４０、４１のタイヤ外表面における、トレッドゴムとサイドウォールゴムとの界面位置を示している。図３に示したトレッドゴム１１の白色ゴム層側端Ｐ２は、図４の曲線Ｐ２Ｌ上にある。なお、図４の例では、タイヤ径方向内端位置がタイヤ径方向について異なるブロック突部４０，４１がタイヤ周方向に交互に並んでいる。また、ブロック突部４０，４１のタイヤ周方向の側面の一部がタイヤ径方向に対し傾斜している。一方、ブロック突部は図４のような形状に限定するものではなく、各ブロック突部のタイヤ径方向内端位置をタイヤ径方向に一致させたり、各ブロック突部のタイヤ周方向両側面をタイヤ径方向に沿うようにしたり、タイヤ軸方向外側面の一部からタイヤ軸方向に突出する突部が形成される等、種々の形状を採用できる。

【0037】

また、タイヤ子午線断面において、各ブロック突部４０、４１のタイヤ径方向内側端Ｐ３（図３）と、白色ゴム層２４の界面位置Ｐ１とのタイヤ外表面に沿った最短距離Ｌ２（図３）は、５ｍｍ以上である。図３では、ブロック突部４１は示していないが、ブロック突部４１を含むタイヤ子午線断面においても、ブロック突部４１のタイヤ径方向内側端と界面位置Ｐ１とのタイヤ外表面に沿った最短距離は、５ｍｍ以上である。これにより、ブロック突部４０、４１とタイヤ径方向同位置では、ブロック突部４０、４１の有無がタイヤ周方向に交互に変化することにより、タイヤ外表面の形状が急激に変化する。このため、タイヤの使用時に、ブロック突部４０、４１とタイヤ径方向同位置では応力集中が生じやすい。一方、距離Ｌ２を５ｍｍ以上とする場合には、この応力が高くなりやすい部分と、柔らかく変形しやすい白色ゴム層２４との距離を十分に大きくできる。このため、柔らかく変形しやすい部分に、ブロック突部４０とタイヤ径方向同位置の高い応力の影響が及ぶことを抑制できるので、タイヤの耐久性をより高くできる。

【0038】

さらに、トレッド１０のタイヤ軸方向端部において、隣り合うブロック突部４０、４１の間に形成された凹み４２の底よりもタイヤ径方向外側に、タイヤ外表面からタイヤ周方向に沿って全周にわたって突出するように、周方向リブ４３が形成される。周方向リブ４３は、タイヤの製造時にタイヤ径方向に分かれた複数の金型を締め付けて加硫工程を行うときに、タイヤ外表面における金型の突き合わせ位置付近に形成される。また、図３に示すように、各ブロック突部４０、４１について、周方向リブ４３の頂点を結ぶタイヤ周方向線４４から各ブロック突部４０、４１のタイヤ径方向内側端Ｐ３までのタイヤ外表面に沿った長さＣ１は、１０ｍｍ以上である。これにより、タイヤ外表面に沿った狭いタイヤ径方向範囲で各ブロック突部４０、４１の有無によってタイヤ外表面の形状が急激に変化することを抑制できる。このため、各ブロック突部４０、４１の形状精度を高くしやすくなる。

【0039】

さらに、各ブロック突部４０、４１とタイヤ径方向同位置での、タイヤ外表面におけるブロック突部４０、４１がない位置からブロック突部４０、４１のタイヤ外表面までの高さＤ２は、０．５ｍｍ以上である。これによっても、各ブロック突部４０、４１でタイヤ外表面の形状が急激に変化することを抑制できる。このため、各ブロック突部４０、４１の形状精度を高くしやすくなる。

【0040】

なお、上記の実施形態では、タイヤ外表面にブロック突部４０、４１を設けた場合を説明したが、ブロック突部４０、４１がない形状としてもよい。この場合、例えば、図１、図３の点Ｐ２ａで示すタイヤ外表面となる位置が、トレッドゴムのタイヤ軸方向端となる。この場合には、点Ｐ２ａで示すトレッドゴムのタイヤ軸方向端と、白色ゴム層２４の界面位置Ｐ１との、タイヤ外表面に沿った最短距離を５ｍｍ以上とする。これにより、白色ゴム層２４に大きな応力が発生することを抑制できるので、タイヤの耐久性を高くできる。

【0041】

図５は、実施形態の別例であるタイヤの車両外側部分の子午線断面図である。図６は、図５のＣ部拡大図である。本例のタイヤ１ａは、図１～図４の構成と異なり、ＳＷＯＴ（サイドウォールオントレッド）構造を有する。ＳＷＯＴ構造は、サイドウォールゴム２１のタイヤ径方向外端部が、トレッドゴム１１のタイヤ軸方向外端部のタイヤ軸方向外側に重なって、タイヤ外壁面に露出する。また、本例では、ブロック突部４０は、全体がサイドウォールゴムにより形成される。

【0042】

本例の場合も、図１～図４の構成と同様に、トレッドゴム１１の白色ゴム層側端Ｐ２と、白色ゴム層２４の界面位置Ｐ１との、タイヤ外表面に沿った最短距離Ａ２は、５ｍｍ以上である。これにより、図１～図４の構成と同様に、白色ゴム層２４を有するサイドウォール２０を備えるタイヤ１ａにおいて、耐久性を高くできる。

【0043】

[一般耐久性能試験]
次に、本発明の発明者が実施形態の効果を確認するために行った試験結果を説明する。試験は、実施例１－３と、比較例１との４種類のタイヤを用いて、所定の条件で、室内ドラム上でのタイヤのドラム試験を行った。具体的には、ＦＭＶＳＳ１３９試験に基づく条件により、第１段階から第６段階までで、それぞれの段階に応じた負荷と速度とでそれぞれに応じた時間、タイヤをドラムにより回転させて、一般耐久性試験を行った。そして、タイヤに損傷等の不具合が確認されるまで試験を継続し、不具合が確認されたときの試験開始からの走行距離を、一般耐久性能を表す距離（一般耐久性能距離）とした。この距離が大きいほど、一般耐久性能が高い。

【0044】

[実施例１]
まず、実施例１のタイヤは、図１～図４に示した実施形態と同様の構成において、白色ゴム層２４の界面位置Ｐ１と、トレッドゴム１１の白色ゴム層側端Ｐ２との最短距離Ａ１を５ｍｍとした。また、タイヤ１は、整地走行及び不整地走行の両方に優れた種類とし、タイヤ１のサイズは、１６５／６０Ｒ１５ ７７Ｑのサイズとした。また、タイヤ断面高さＨは、９９ｍｍとした。タイヤ１の試験条件として、スノータイヤ以外のタイヤで規定される走行時間及び速度を用いた。

【0045】

[実施例２]
実施例２は、白色ゴム層２４の界面位置Ｐ１と、トレッドゴム１１の白色ゴム層側端Ｐ２との最短距離Ａ１を６ｍｍとした。実施例２において、それ以外の構成は、実施例１と同様である。

【0046】

[実施例３]
実施例３は、白色ゴム層２４の界面位置Ｐ１と、トレッドゴム１１の白色ゴム層側端Ｐ２との最短距離Ａ１を１２ｍｍとした。実施例３において、それ以外の構成は、実施例１と同様である。

【0047】

[比較例１]
比較例１は、白色ゴム層２４の界面位置Ｐ１と、トレッドゴム１１の白色ゴム層側端Ｐ２との最短距離Ａ１を３ｍｍとした。比較例１において、それ以外の構成は、実施例１と同様である。

【0048】

表１は、実施例１～３及び比較例１の最短距離Ａ１と、試験結果である一般耐久性能距離とを示している。また、本試験は、タイヤの使用が一般の使用状態よりも過酷な条件で行っている。このため、タイヤの実車での一般の使用を想定して、本試験で７０００ｋｍ以上の走行を実施できたものを耐久性が良好（Ｏ）とし、不具合により７０００ｋｍ以上の走行を実施できなかったものを耐久性が不十分（×）とした。

【0049】

【表1】

【0050】

表１の試験結果から分かるように、白色ゴム層２４の界面位置Ｐ１と、トレッドゴム１１の白色ゴム層側端Ｐ２との最短距離Ａ１が５ｍｍ以上である実施例１～３によれば、一般耐久性能距離を７０００ｋｍ以上と大きく確保できた。これにより、実車にタイヤを使用した場合でも、耐久性を高く確保できることを確認できた。

【0051】

一方、白色ゴム層２４の界面位置Ｐ１と、トレッドゴム１１の白色ゴム層側端Ｐ２との最短距離Ａ１が５ｍｍ未満である比較例１の場合には、一般耐久性能距離が６４３８ｋｍと、７０００ｋｍ未満となった。これにより、比較例１では、耐久性を高くする面から改良の余地があることが分かった。

【0052】

また、上記の一般耐久性試験では、スノータイヤ以外のタイヤに本発明を適用した場合の試験結果を説明したが、スノータイヤに本発明を適用した場合も、一般耐久性能距離を７０００ｋｍ以上に確保できる。

【0053】

なお、上記の各実施形態では、色ゴム層が白色ゴム層である場合を説明したが、色ゴム層は、黒色以外の色であればよく、白色以外としてもよい。

【符号の説明】

【0054】

１，１ａ 空気入りタイヤ（タイヤ）、１０ トレッド、１１ トレッドゴム、１４ ビード、１４ａ ビードコア、１４ｂ ビードフィラー、１５ カーカス、１５ａ，１５ｂ カーカスプライ、１６ ベルト、１７ インナーライナー、２０ サイドウォール、２１ サイドウォールゴム、２２ 黒色ゴム層、２４ 白色ゴム層、２５ ベース部、２６ 色ゴム突部、２７ 色ゴム含有突部、４０，４１ ブロック突部、Ｔ 接地端。

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】