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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093570
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】排気熱回収器
(51)【国際特許分類】
   F01N 5/02 20060101AFI20240702BHJP
   F02M 26/51 20160101ALI20240702BHJP
   F02M 26/68 20160101ALI20240702BHJP
   F01N 13/08 20100101ALI20240702BHJP
【FI】
F01N5/02 B
F02M26/51
F02M26/68 301
F01N5/02 G
F01N13/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210050
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】大嶽 怜央
(72)【発明者】
【氏名】戸市 進之介
【テーマコード(参考)】
3G004
3G062
【Fターム(参考)】
3G004BA06
3G004DA24
3G004EA06
3G004FA02
3G062EC01
3G062ED01
(57)【要約】
【課題】バルブの構成を簡素化できる排気熱回収器を提供する。
【解決手段】本開示は、熱交換部と、熱交換部へ排気ガスを供給する供給口を有するバルブ収容部を有する主流路と、バルブ収容部の内部に配置されると共に、主流路から熱交換部への排気ガスの供給量を調整するバルブ機構と、を備える排気熱回収器である。バルブ収容部は、排気ガスの流れ方向と平行な中心軸を有する筒体である。バルブ機構は、主排出口への排気ガスの流量を調整するメインバルブと、供給口の開度を調整するサブバルブと、メインバルブとサブバルブとが取り付けられると共に、軸回転によりメインバルブとサブバルブとを回転させる軸部とを有する。サブバルブは、供給口の全体を覆う閉塞部を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気ガスと、冷媒との間で熱交換を行う熱交換部と、
前記排気ガスを導入する導入口と、前記排気ガスを外部に排出する主排出口と、前記熱交換部へ前記排気ガスを供給する供給口を有するバルブ収容部と、を有する主流路と、
前記バルブ収容部の内部に配置されると共に、前記主流路から前記熱交換部への前記排気ガスの供給量を調整するように構成されたバルブ機構と、
を備え、
前記バルブ収容部は、前記排気ガスの流れ方向と平行な中心軸を有する筒体であり、
前記バルブ機構は、
前記主排出口への前記排気ガスの流量を調整するように構成されたメインバルブと、
前記供給口の開度を調整するように構成されたサブバルブと、
前記メインバルブと前記サブバルブとが取り付けられると共に、軸回転により前記メインバルブと前記サブバルブとを回転させるように構成された軸部と、
を有し、
前記サブバルブは、前記供給口の全体を覆うように構成された閉塞部を有する、排気熱回収器。
【請求項2】
請求項1に記載の排気熱回収器であって、
前記バルブ収容部は、角筒体であり、
前記閉塞部は、平板状である、排気熱回収器。
【請求項3】
請求項1に記載の排気熱回収器であって、
前記バルブ収容部は、円筒体であり、
前記閉塞部は、前記バルブ収容部の周方向に沿って湾曲する、排気熱回収器。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の排気熱回収器であって、
前記サブバルブは、前記軸部によって前記メインバルブと一体となって回転する、排気熱回収器。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の排気熱回収器であって、
前記バルブ機構は、前記サブバルブの前記閉塞部の外面に配置された弾性部材を有する、排気熱回収器。
【請求項6】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の排気熱回収器であって、
前記バルブ収容部は、前記主流路のうち前記排気ガスの流れ方向において前記バルブ収容部よりも上流の部位に対し拡径している、排気熱回収器。
【請求項7】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の排気熱回収器であって、
前記軸部の軸方向から視て、前記閉塞部の回転方向における第1端部の前記軸部の中心軸からの距離は、前記閉塞部の回転方向における前記第1端部とは反対側の第2端部の前記軸部の中心軸からの距離とは異なる、排気熱回収器。
【請求項8】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の排気熱回収器であって、
前記熱交換部を通過した前記排気ガスが流れるEGR流路をさらに備え、
前記EGR流路内にはバルブが存在しない、排気熱回収器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、排気熱回収器に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用の内燃機関における排気ガスの熱を冷却水によって回収すると共に、EGR(排気再循環)ガスとして内燃機関に循環させる排気熱回収器が公知である(特許文献1参照)。
【0003】
この排気熱回収器では、排気ガスの主流路内に設けられたバルブによって熱交換器への流入量を制御し、さらにEGR流路内に設けられた別のバルブによってEGRガス量を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-82706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の排気熱回収器では、2つのバルブが別々の流路に独立して設けられる。そのため、バルブの取り付け構造や、制御機構が煩雑となりやすい。
【0006】
本開示の一局面は、バルブの構成を簡素化できる排気熱回収器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、内燃機関の排気ガスと、冷媒との間で熱交換を行う熱交換部と、排気ガスを導入する導入口と、排気ガスを外部に排出する主排出口と、熱交換部へ排気ガスを供給する供給口を有するバルブ収容部と、を有する主流路と、バルブ収容部の内部に配置されると共に、主流路から熱交換部への排気ガスの供給量を調整するように構成されたバルブ機構と、を備える排気熱回収器である。
【0008】
バルブ収容部は、排気ガスの流れ方向と平行な中心軸を有する筒体である。バルブ機構は、主排出口への排気ガスの流量を調整するように構成されたメインバルブと、供給口の開度を調整するように構成されたサブバルブと、メインバルブとサブバルブとが取り付けられると共に、軸回転によりメインバルブとサブバルブとを回転させるように構成された軸部とを有する。サブバルブは、供給口の全体を覆うように構成された閉塞部を有する。
【0009】
このような構成によれば、共通する軸部に取り付けられたメインバルブとサブバルブとによって、EGR流路に供給される排気ガスの流量を調整することができる。そのため、バルブの構成を簡素化できる。
【0010】
本開示の一態様では、バルブ収容部は、角筒体であってもよい。閉塞部は、平板状であってもよい。このような構成によれば、サブバルブの回転位置による排気ガスの流量の調整が容易となる。
【0011】
本開示の一態様では、バルブ収容部は、円筒体であってもよい。閉塞部は、バルブ収容部の周方向に沿って湾曲してもよい。このような構成によっても、サブバルブの回転位置による排気ガスの流量の調整が容易となる。
【0012】
本開示の一態様では、サブバルブは、軸部によってメインバルブと一体となって回転してもよい。このような構成によれば、メインバルブとサブバルブとの制御を同時に行えるため、バルブの構成の簡素化を促進できる。
【0013】
本開示の一態様では、バルブ機構は、サブバルブの閉塞部の外面に配置された弾性部材を有してもよい。このような構成によれば、サブバルブによる供給口の密閉性を高められる。
【0014】
本開示の一態様では、バルブ収容部は、主流路のうち排気ガスの流れ方向においてバルブ収容部よりも上流の部位に対し拡径していてもよい。このような構成によれば、バルブ収容部の上流側の配管の径を抑えたまま、バルブ収容部にバルブ機構を配置することができる。
【0015】
本開示の一態様では、軸部の軸方向から視て、閉塞部の回転方向における第1端部の軸部の中心軸からの距離は、閉塞部の回転方向における第1端部とは反対側の第2端部の軸部の中心軸からの距離とは異なってもよい。このような構成によれば、サブバルブが回転する際に、閉塞部とバルブ収容部との摺動面積を低減できる。そのため、サブバルブの開閉時に発生する摺動音が低減できる。
【0016】
本開示の一態様は、熱交換部を通過した排気ガスが流れるEGR流路をさらに備えてもよい。EGR流路内にはバルブが存在しなくてもよい。このような構成によれば、EGR流路に遮蔽物が存在しないため、排気ガスの最大循環量を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1A及び図1Bは、実施形態の排気熱回収器の配置を示す模式図である。
図2図2は、実施形態における排気熱回収器の模式的な断面図である。
図3図3Aは、図2の排気熱回収器のバルブ機構の模式的な斜視図であり、図3Bは、図3Aのバルブ機構の模式的な平面図であり、図3Cは、図3Aのバルブ機構の模式的な正面図である。
図4図4Aは、EGRモードにおける図2の排気熱回収器の模式的な断面図であり、図4Bは、中間状態における図2の排気熱回収器の模式的な断面図であり、図4Cは、非EGRモードにおける図2の排気熱回収器の模式的な断面図である。
図5図5は、図2の排気熱回収器におけるサブバルブの位置変化を示す模式的な断面図である。
図6図6A図6B及び図6Cは、図2とは異なる実施形態における排気熱回収器の模式的な断面図である。
図7図7A図7B及び図7Cは、図2とは異なる実施形態における排気熱回収器の模式的な断面図である。
図8図8Aは、図3Aとは異なる実施形態におけるバルブ機構の模式的な斜視図であり、図8Bは、図8Aのバルブ機構の模式的な平面図であり、図8Cは、図8Aのバルブ機構の模式的な正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1A及び図1Bに示す排気熱回収器1は、内燃機関101の排気ガス流路内に設けられている。
【0019】
排気熱回収器1は、排気ガスの浄化を行う。また、排気熱回収器1は、浄化した排気ガスの一部の熱を冷媒に回収した上で、冷却された排気ガスをEGRガスとして内燃機関101に循環させる。
【0020】
排気熱回収器1が設けられる内燃機関101としては、例えば、自動車に用いられるガソリンエンジン又はディーゼルエンジンが挙げられる。排気熱回収器1においてEGRガスとして循環されなかった排気ガスは、下流側のサブマフラ104及びメインマフラ105を通過して、系外に排出される。
【0021】
排気熱回収器1は、図1Aに示すように、SC(Start Catalyst)触媒装置102の下流側に配置されてもよい。この場合、排気熱回収器1は、UF(Under Floor)触媒装置として機能する。また、排気熱回収器1は、図1Bに示すように、UF触媒装置103の上流側に配置されてもよい。この場合、排気熱回収器1は、SC触媒装置として機能する。
【0022】
図2に示すように、排気熱回収器1は、触媒ケース2と、触媒3と、熱交換部4と、主流路5と、EGR流路6と、バルブ機構7と、アクチュエータ8とを備える。
【0023】
<触媒ケース>
触媒ケース2は、内燃機関101の排気ガスGが軸方向に流れる内部空間を有する筒状の部材である。触媒ケース2の下流端には、主流路5が接続されている。
【0024】
<触媒>
触媒3は、排気ガスGとの接触によって排気ガスG中の環境汚染物質を改質又は捕集し、排気ガスGを浄化する。
【0025】
触媒3は、触媒ケース2に格納されている。触媒3は、例えば、触媒ケース2の軸方向に延伸する複数の仕切り板が格子状に配置された立体形状(例えばハニカム形状)を有する。
【0026】
<熱交換部>
熱交換部4は、内燃機関101の排気ガスGと、冷媒(具体的には冷却水)との間で熱交換を行う部位である。
【0027】
熱交換部4は、主流路5の少なくとも一部を径方向(つまり、排気ガスGの流れ方向と交差する方向)の外側から囲むように配置されている。熱交換部4は、伝熱部材41を有する。排気ガスGを冷却する冷媒は、伝熱部材41を通過する。
【0028】
伝熱部材41は、主流路5における排気ガスGの流れ方向に沿って並置された複数の伝熱プレートを有する。伝熱プレートは、一方の面に接触する排気ガスGと、他方の面に接触する冷媒との間で熱交換を行う。伝熱プレートは、主流路5を径方向外側から囲っている。なお、伝熱部材41として、複数の伝熱プレートの代わりに、複数のフィンを有するチューブが用いられてもよい。
【0029】
排気ガスGは、主流路5の供給口53から熱交換部4の内部へ供給される。熱交換後の排気ガスGは、熱交換部4の内部からEGR流路6へと排出され、EGR流路6を経由して内燃機関101に送られる。
【0030】
<主流路>
主流路5は、導入口51と、主排出口52と、供給口53と、上流部54と、バルブ収容部55と、下流部56とを有する配管である。
【0031】
導入口51は、触媒3を通過した排気ガスGを主流路5の内部へ導入する。主排出口52は、排気ガスGを排気熱回収器1の外部に排出する。本実施形態では、導入口51と主排出口52とは、互いに対向するように配置されている。
【0032】
つまり、導入口51における排気ガスGの流れ方向と、主排出口52における排気ガスGの流れ方向とは平行である。さらに、導入口51の中心は、導入口51における排気ガスGの流れ方向から視て、主排出口52と重なっている。なお、主流路5内において排気ガスGの流れ方向が湾曲していてもよい。
【0033】
供給口53は、熱交換部4へ排気ガスGを供給する。供給口53は、バルブ収容部55に設けられている。供給口53は、主流路5の内周面に設けられており、導入口51及び主排出口52とは対向していない。
【0034】
上流部54は、導入口51とバルブ収容部55とを連結する管体である。上流部54の内径は軸方向に沿って一定である。
【0035】
バルブ収容部55は、バルブ機構7が内部に配置される部位であり、排気ガスGの流れ方向と平行な中心軸P1を有する円筒体である。バルブ収容部55は、拡径部55Aと、ストレート部55Bと、縮径部55Cとを有する。
【0036】
拡径部55Aは、上流部54に連続すると共に、排気ガスGの流れ方向における下流に向かって拡径する部位である。つまり、バルブ収容部55は、主流路5のうち排気ガスGの流れ方向においてバルブ収容部55よりも上流の部位に対し拡径している。
【0037】
ストレート部55Bは、拡径部55Aの下流側に配置されると共に、内径が軸方向に沿って一定の部位である。ストレート部55Bの周壁のうちバルブ収容部55の中心軸P1よりも下方の領域には、供給口53が設けられている。
【0038】
縮径部55Cは、ストレート部55Bの下流側に配置されると共に、排気ガスGの流れ方向における下流に向かって縮径する部位である。つまり、バルブ収容部55は、主流路5のうち排気ガスGの流れ方向においてバルブ収容部55よりも下流の部位に向かって縮径している。
【0039】
下流部56は、バルブ収容部55と主排出口52とを連結する管体である。下流部56の内径は軸方向に沿って一定である。
【0040】
<EGR流路>
EGR流路6は、熱交換部4を通過した排気ガスGが流れる配管である。EGR流路6は、熱交換部4の排気ガスGの排出口と、内燃機関101のEGR導入口とを連結している。本実施形態では、EGR流路6内には、EGR流路6における排気ガスGの流量を調整するバルブが存在しない。
【0041】
<バルブ機構>
バルブ機構7は、バルブ収容部55の内部に配置されると共に、主流路5から熱交換部4への排気ガスGの供給量を調整するように構成されている。
【0042】
バルブ機構7は、排気熱回収器1のモードに応じて、開度が変化する。図3A図3B及び図3Cに示すように、バルブ機構7は、メインバルブ71と、サブバルブ72と、軸部73と、弾性部材74とを有する。
【0043】
メインバルブ71は、主排出口52への排気ガスGの流量を調整するように構成されている。つまり、メインバルブ71は、主流路5(具体的にはバルブ収容部55)の開度を調整する。
【0044】
メインバルブ71は、円盤状であり、軸部73に固定されている。メインバルブ71は、軸部73の中心軸P2がメインバルブ71の中心を通るように軸部73に取り付けられている。
【0045】
軸部73の軸回転により、メインバルブ71は、図4Aに示す主流路5を完全に塞ぐ位置(つまり、主流路5の開度をゼロとする位置)から、図4Bに示す主流路5が中間開度となる位置を経て、図4Cに示す主流路5の開度を100%とする位置まで回転する。主流路5の開度を100%とする位置にメインバルブ71があるとき、メインバルブ71の板面は、排気ガスGの流れ方向と平行となる。
【0046】
サブバルブ72は、供給口53の開度を調整するように構成されている。サブバルブ72は、メインバルブ71と共に、主流路5から熱交換部4に供給される排気ガスGの流量を調整する。
【0047】
サブバルブ72は、メインバルブ71と共に軸部73に取り付けられている。サブバルブ72は、軸部73によってメインバルブ71と一体となって回転する。つまり、サブバルブ72のメインバルブ71に対する相対的な位置は、メインバルブ71の位置によらず不変である。
【0048】
図3Aに示すように、サブバルブ72は、バルブ収容部55の周方向(つまりバルブ収容部55の内面形状)に沿って湾曲した帯状の閉塞部72Aを有する。閉塞部72Aは、供給口53の全体を覆うように構成されている。
【0049】
具体的には、図3Bに示すように、閉塞部72Aは、軸部73とは反対側に膨出するように円弧状に湾曲している。軸部73の径方向において、閉塞部72Aと軸部73との間には排気ガスGが通過可能な空間が存在する。つまり、閉塞部72Aは、軸部73の径方向において、軸部73と対向している。サブバルブ72は、閉塞部72Aが軸部73の周方向に移動するように軸部73に取り付けられている。
【0050】
軸部73の軸回転により、サブバルブ72は、図4Aに示す供給口53から離れた位置(つまり供給口53の開度を100%とする位置)から、図4Bに示す供給口53に近づいた位置を経て、図4Cに示す供給口53を閉塞部72Aによって完全に塞ぐ位置(つまり供給口53の開度をゼロとする位置)まで回転する。
【0051】
図5に示すように、軸部73の軸方向から視て、閉塞部72Aの回転方向における第1端部72Bの軸部73の中心軸P2からの第1距離D1は、閉塞部72Aの回転方向における第1端部72Bとは反対側の第2端部72Cの軸部73の中心軸P2からの第2距離D2とは異なる。具体的には、第1距離D1(つまり、第1端部72Bが描く軌跡の半径)は、第2距離D2(つまり、第2端部72Cが描く軌跡の半径)よりも小さい。
【0052】
なお、第1端部72Bは、閉塞部72Aが供給口53を閉塞する向きに回転する際に先頭となる端部である。第2端部72Cは、閉塞部72Aが供給口53を開く向きに回転する際に先頭となる端部である。
【0053】
このように、バルブ機構7は、図4Aに示すEGRモードと、図4Cに示す非EGRモードと、これら2つのモードの中間状態である図4Bに示す任意のバルブ開度とに変位可能である。
【0054】
EGRモードでは、排気ガスGの全量が熱交換部4を経てEGR流路6に供給される。EGRモードでは、サブバルブ72は、メインバルブ71よりも排気ガスGの流れ方向上流側、具体的には上流部54の内部に位置する。非EGRモードでは、排気ガスGの全量が主排出口52から排出され、EGR流路6には排気ガスGは供給されない。
【0055】
中間状態では、一部の排気ガスGが熱交換部4を経てEGR流路6に供給され、残りの排気ガスGが主排出口52から排出される。EGR流路6に供給される排気ガスGの量と、主排出口52から排出される排気ガスGの量との比は、メインバルブ71及びサブバルブ72の開度によって決まる。
【0056】
軸部73は、アクチュエータ8に接続された棒状の部材(つまりステム)である。軸部73は、バルブ収容部55に回転可能に取り付けられている。軸部73は、アクチュエータ8の駆動によって軸回転する。
【0057】
図2に示すように、軸部73の中心軸P2は、バルブ収容部55の中心軸P1(つまり排気ガスGの流れ方向)と直交している。また、軸部73の中心軸P2は、バルブ収容部55の中心軸P1を通っている。供給口53は、軸部73の径方向外側(具体的には鉛直方向下方)に設けられている。
【0058】
図3Aに示す弾性部材74は、閉塞部72Aの外面に配置された耐熱性を有する緩衝部材である。弾性部材74は、閉塞部72Aの外面のうち、供給口53と重なる部位を少なくとも覆っている。弾性部材74としては、例えば、ステンレスウール等の金属ワイヤで構成されたメッシュ、グラスウール、アルミナファイバー等で構成されたマット、又はゴムが使用できる。
【0059】
弾性部材74は、閉塞部72Aが供給口53を閉塞する際に、閉塞部72Aによって、バルブ収容部55の供給口53の周囲の内面に押し付けられる。また、閉塞部72Aの回転に伴って、弾性部材74は、バルブ収容部55の内面に対し摺動する。
【0060】
<アクチュエータ>
アクチュエータ8は、バルブ機構7を動作させる。具体的には、アクチュエータ8は、軸部73を軸回転させることにより、バルブ機構7を変位させる。
【0061】
アクチュエータ8としては、電力、空気圧、油圧等の動力を用いて駆動するモータ、冷媒の温度に対応して伸縮する熱膨張体を用いたサーモアクチュエータ等を使用することができる。
【0062】
[1-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)共通する軸部73に取り付けられたメインバルブ71とサブバルブ72とによって、EGR流路6に供給される排気ガスの流量を調整することができる。そのため、バルブの構成を簡素化できる。
【0063】
(1b)サブバルブ72の閉塞部72Aがバルブ収容部55の周方向に沿って湾曲することで、サブバルブ72の回転位置による排気ガスの流量の調整が容易となる。
【0064】
(1c)サブバルブ72が軸部73によってメインバルブ71と一体となって回転することで、メインバルブ71とサブバルブ72との制御を同時に行えるため、バルブの構成の簡素化を促進できる。
【0065】
(1d)閉塞部72Aの外面に配置された弾性部材74によって、サブバルブ72による供給口53の密閉性を高められる。
(1e)バルブ収容部55が拡径部55Aを有することで、バルブ収容部55の上流側の配管の径を抑えたまま、バルブ収容部55にバルブ機構7を配置することができる。
【0066】
(1f)閉塞部72Aの第1端部72Bの軸部73の中心軸からの第1距離が第2端部72Cの軸部73の中心軸からの第2距離と異なることで、サブバルブ72が回転する際に、閉塞部72Aとバルブ収容部55との摺動面積を低減できる。そのため、サブバルブ72の開閉時に発生する摺動音が低減できる。
【0067】
(1g)EGR流路6内に遮蔽物となるバルブが存在しないことで、排気ガスGの最大循環量を大きくすることができる。
【0068】
[2.第2実施形態]
[2-1.構成]
図8A図8B及び図8Cに示すバルブ機構17は、図2の排気熱回収器1において、バルブ機構7に替えて用いられる。第2実施形態のバルブ機構17が用いられる排気熱回収器1では、バルブ収容部55は角筒体(例えば四角筒体)である。
【0069】
バルブ機構17は、メインバルブ171と、サブバルブ172と、軸部73と、弾性部材174とを有する。バルブ機構17の軸部73は、図3Aのバルブ機構7の軸部73と同じものである。
【0070】
メインバルブ171及びサブバルブ172は、それぞれ、図3Aのバルブ機構7のメインバルブ71及びサブバルブ72と同じ機能を奏する。メインバルブ171は、図3Aのメインバルブ71の平面形状を角形に変更したものである。
【0071】
サブバルブ172は、バルブ収容部55の周壁に設けられた供給口53の全体を覆うように構成された平板状の閉塞部172Aを有する。弾性部材174は、閉塞部172Aの外面に配置されている。弾性部材174の材質は、図3Aの弾性部材74と同じである。
【0072】
[2-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(2a)サブバルブ172の閉塞部172Aが平板状であることで、サブバルブ172の回転位置による排気ガスの流量の調整が容易となる。
【0073】
[3.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0074】
(3a)上記実施形態の排気熱回収器において、供給口は、必ずしもバルブ収容部のストレート部に配置されなくてもよい。例えば、図6Aに示すように、供給口53は、バルブ収容部55の拡径部55Aに設けられてもよい。さらに、図6B及び図6Cに示すように、供給口53は、バルブ収容部55の中心軸P1よりも上方に設けられてもよい。
【0075】
(3b)上記実施形態の排気熱回収器において、図7A及び図7Bに示すように、軸部73の中心軸P2は、メインバルブ71の中心からずれ、かつ、バルブ収容部55の中心軸P1を通らなくてもよい。また、図7Cに示すように、軸部73は、供給口53よりも排気ガスの流れ方向下流に位置してもよい。
【0076】
(3c)上記実施形態の排気熱回収器において、バルブ収容部は、必ずしも上流の部位に対し拡径していなくてもよい。
【0077】
(3d)上記実施形態の排気熱回収器において、バルブ機構は、必ずしも弾性部材を有しなくてもよい。また、閉塞部の第1端部の軸部の中心軸からの距離と第2端部の軸部の中心軸からの距離とが同じであってもよい。
【0078】
(3e)上記実施形態の排気熱回収器において、サブバルブは必ずしもメインバルブと一体となって回転しなくてもよい。例えば、バルブ機構は、メインバルブとサブバルブとがそれぞれ異なるタイミングで回転する構成を有してもよい。
【0079】
(3f)上記実施形態の排気熱回収器において、EGR流路に排気ガスの流量を調整するバルブが設けられてもよい。
【0080】
(3g)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0081】
1…排気熱回収器、2…触媒ケース、3…触媒、4…熱交換部、5…主流路、
6…EGR流路、7,17…バルブ機構、8…アクチュエータ、41…伝熱部材、
51…導入口、52…主排出口、53…供給口、54…上流部、55…バルブ収容部、
55A…拡径部、55B…ストレート部、55C…縮径部、56…下流部、
71,171…メインバルブ、72,172…サブバルブ、
72A,172A…閉塞部、72B…第1端部、72C…第2端部、73…軸部、
74,174…弾性部材、101…内燃機関、102…SC触媒装置、
103…UF触媒装置、104…サブマフラ、105…メインマフラ。
図1
図2
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図8