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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093593
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/861 20060101AFI20240702BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
H01L29/91 D
H01L29/91 J
H01L29/06 301G
H01L29/06 301V
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210085
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100104709
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 誠剛
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 梓
(72)【発明者】
【氏名】松崎 欣史
(57)【要約】
【課題】破壊耐量を高くすることが可能で、かつ、リカバリー特性を良好なものとすることができ、リカバリー損失が増大し難い半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体基体110と、開口122を有する絶縁層120と、表面電極130とを備え、半導体基体110は、ドリフト領域112と、p型不純物領域113と、周辺不純物領域114とを有し、p型不純物領域114は、周辺不純物領域114と重なる部分に形成された高濃度領域115を有し、半導体基体110内には、再結合中心が形成されており、半導体基体110の表面における周辺不純物領域114の内周端は、開口122の端部の内周側に位置しており、周辺不純物領域114の内周端から開口122の端部までの長さが0.01μm以上30μm未満である半導体装置100。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基体と、
前記半導体基体の表面上に形成され、前記半導体基体の表面を露出させる開口を有する絶縁層と、
前記開口において前記半導体基体と接続される表面電極とを備え、
前記半導体基体は、
第1導電型のドリフト領域と、
前記ドリフト領域の表層部に形成された第2導電型不純物領域と、
前記ドリフト領域の表層部における前記第2導電型不純物領域の周縁部に形成され、前記第2導電型不純物領域と重なる領域を有し、不純物濃度が前記第2導電型不純物領域の不純物濃度よりも高い第2導電型の周辺不純物領域とを有し、
前記第2導電型不純物領域は、少なくとも前記周辺不純物領域と重なる部分に形成され、かつ、前記第2導電型不純物領域の他の領域よりも不純物濃度が高い高濃度領域を有し、
前記半導体基体内には、再結合中心が形成されており、
前記半導体基体の表面における前記周辺不純物領域の内周端は、前記開口の端部の内周側に位置しており、
前記周辺不純物領域の内周端から前記開口の端部までの長さが0.01μm以上30μm未満であることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
半導体基体と、
前記半導体基体の表面上に形成され、前記半導体基体の表面を露出させる開口を有する絶縁層と、
前記開口において前記半導体基体と接続される表面電極とを備え、
前記半導体基体は、
第1導電型のドリフト領域と、
前記ドリフト領域の表層部に形成された第2導電型不純物領域と、
前記ドリフト領域の表層部における前記第2導電型不純物領域の周縁部に形成され、前記第2導電型不純物領域と重なる領域を有し、不純物濃度が前記第2導電型不純物領域の不純物濃度よりも高い第2導電型の周辺不純物領域とを有し、
前記第2導電型不純物領域は、少なくとも前記周辺不純物領域と重なる部分に形成され、かつ、前記第2導電型不純物領域の他の領域よりも不純物濃度が高い高濃度領域を有し、
前記半導体基体内には、再結合中心が形成されており、
前記半導体基体の表面における前記周辺不純物領域の内周端は、前記開口の端部と同じ位置、又はその外周側に位置しており、
前記高濃度領域の不純物濃度は、1.0×1016cm-3~1.0×1020cm-3の範囲内にあることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
前記高濃度領域は、前記第2導電型不純物領域と前記周辺不純物領域とが重なる領域にのみ形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2導電型不純物領域は、前記開口の外周側まで延在していることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記ドリフト領域の不純物濃度は、1.0×1013cm-3~1.0×1015cm-3の範囲内にあることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、絶縁層の開口を介して半導体基体と接続された表面電極を備える半導体装置(ダイオード)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図7は、従来の半導体装置900を示す断面図である。なお、符号917はガードリングを示す。特許文献1に記載の半導体装置(以下、従来の半導体装置900と呼称する)は、図7に示すように、半導体基体910と、絶縁層920と、表面電極930と、裏面電極940と、表面保護膜950とを備える。絶縁層920は、半導体基体910の表面上に形成され、半導体基体910の表面を露出させる開口922を有する。また、表面電極930は、開口922において半導体基体910と接続されている。
【0004】
半導体基体910は、n型の低抵抗半導体層911と、n型のドリフト領域912と、ドリフト領域912の表層部に形成されたp型のp型不純物領域913と、ドリフト領域912の表層部におけるp型不純物領域913の周縁部に形成され、不純物濃度がp型不純物領域913の不純物濃度よりも高いp型の周辺不純物領域914とを有する。
【0005】
従来の半導体装置900によれば、周辺不純物領域914を有するため、p型不純物領域913の外周端部の不純物濃度の勾配を低減して、p型不純物領域913の外周端部での降伏を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10-335679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで近年、脱酸素社会の実現に向けた取り組みが行われており、これに伴って低損失の電気機器が求められている。そして、半導体装置の技術分野においては、このような電気機器に用いる高効率・低損失の半導体装置が求められている。
【0008】
しかしながら、従来の半導体装置900においては、スイッチングのオンオフ時において、外周領域A2に残存するホールが周辺不純物領域914を介して表面電極930へと流れ込む。すると、p型不純物領域913を介して表面電極930へ流れ込む電流(素子形成領域A1に残存するホールによる電流)と、周辺不純物領域914を介して表面電極930へ流れ込む電流とが合流する付近の電流密度が急激に高くなり、これに伴って、合流する付近の温度が急激に上昇するため、破壊耐量を高くすることが難しい、という問題がある。また、逆回復電流が急激に大きくなるため、リカバリー特性を良好なものとすることが難しく、リカバリー損失が増大してしまう問題もある。
【0009】
本発明は、上記した問題を解決するためになされたものであり、破壊耐量を高くすることが可能で、かつ、リカバリー特性を良好なものとすることができ、リカバリー損失が増大し難い半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の半導体装置は、半導体基体と、前記半導体基体の表面上に形成され、前記半導体基体の表面を露出させる開口を有する絶縁層と、前記開口において前記半導体基体と接続される表面電極とを備え、前記半導体基体は、第1導電型のドリフト領域と、前記ドリフト領域の表層部に形成された第2導電型不純物領域と、前記ドリフト領域の表層部における前記第2導電型不純物領域の周縁部に形成され、前記第2導電型不純物領域と重なる部分を有し、不純物濃度が前記第2導電型不純物領域の不純物濃度よりも高い第2導電型の周辺不純物領域とを有し、前記第2導電型不純物領域は、少なくとも前記周辺不純物領域と重なる部分に形成され、前記第2導電型不純物領域の他の領域よりも不純物濃度が高い高濃度領域を有し、前記半導体基体内には、再結合中心が形成されており、前記半導体基体の表面における前記周辺不純物領域の内周端は、前記開口の端部の内周側に位置しており、前記周辺不純物領域の内周端から前記開口の端部までの長さが0.01μm以上30μm未満であることを特徴とする。
【0011】
本発明の第2の半導体装置は、半導体基体と、前記半導体基体の表面上に形成され、前記半導体基体の表面を露出させる開口を有する絶縁層と、前記開口において前記半導体基体と接続される表面電極とを備え、前記半導体基体は、第1導電型のドリフト領域と、前記ドリフト領域の表層部に形成された第2導電型不純物領域と、前記ドリフト領域の表層部における前記第2導電型不純物領域の周縁部に形成され、前記第2導電型不純物領域と重なる部分を有し、不純物濃度が前記第2導電型不純物領域の不純物濃度よりも高い第2導電型の周辺不純物領域とを有し、前記第2導電型不純物領域は、少なくとも前記周辺不純物領域と重なる部分に形成され、前記第2導電型不純物領域の他の領域よりも不純物濃度が高い高濃度領域を有し、前記半導体基体内には、再結合中心が形成されており、前記半導体基体の表面における前記周辺不純物領域の内周端は、前記開口の端部と同じ位置、又はその外周側に位置しており、前記高濃度領域の不純物濃度は、1.0×1016cm-3~1.0×1020cm-3の範囲内にあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1の半導体装置によれば、半導体基体内には再結合中心が形成され、かつ、周辺不純物領域の内周端から開口の端部までの長さが0.01μm以上30μm未満であるため、スイッチングのオンオフ時において、外周領域を含めて半導体基体に発生するホールなどが再結合中心によって回収され、表面電極に達する電流量そのものを小さくする(表面電極に達するホールを少なくする)ことができる。従って、第2導電型不純物領域を介して表面電極へ流れ込む電流と、周辺不純物領域を介して表面電極へ流れ込む電流の両方を低減することができ、合流する付近の電流密度を低減することができ、温度上昇を抑えることができる。その結果、破壊耐量を高くすることが可能となる。また、素子形成領域の電流密度を低減することができることから、周辺不純物領域の内周端から開口の端部までの長さを小さくすることができる。このため、リカバリー電流が急激に増大することを防ぐことができるため、リカバリー特性を良好なものとすることができ、リカバリー損失が増大することを抑制することができる。
【0013】
本発明の第2の半導体装置によれば、半導体基体内には再結合中心が形成され、かつ、周辺不純物領域の内周端が開口の端部と同じ位置、又はその外周側に位置し、高濃度領域の不純物濃度は、1.0×1016cm-3~1.0×1020cm-3の範囲内にあるため、スイッチングのオンオフ時において、外周領域を含めて半導体基体に発生するホールなどが再結合中心によって回収され、表面電極に達する電流量そのものを小さくすることができる。従って、素子形成領域から第2導電型不純物領域を介して表面電極に流れる電流の電流密度と周辺不純物領域から第2導電型不純物領域に流れ込み、表面電極に流れる電流の電流密度とが重なる領域付近の電流密度を低減することができ、温度上昇を抑えることができる。その結果、破壊耐量を高くすることが可能となる。さらに、素子形成領域の電流密度を低減することができることから、周辺不純物領域と表面電極とが接しなくても破壊耐量を保つことができる。そして、周辺不純物領域と表面電極とが接していないことで、リカバリー電流が急激に増大を防ぐことができることから、リカバリー特性を良好なものとすることができ、リカバリー損失が増大することを抑制することができる。
【0014】
本発明の第1の半導体装置及び第2の半導体装置によれば、第2導電型不純物領域は、少なくとも周辺不純物領域と重なる部分に形成され、第2導電型不純物領域の他の領域よりも不純物濃度が高い高濃度領域を有するため、第2導電型不純物領域と周辺不純物領域との不純物濃度差に起因して外周領域のホールが素子形成領域表面まで流れることを防ぐことができる。このため、素子形成領域表面の電流密度が増加することを防ぐことができ、破壊耐量をより一層向上させた半導体装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態1に係る半導体装置100の断面図である。
図2】実施形態1に係る半導体装置100の要部拡大断面図である。
図3】「従来構造」及び「発明構造」のリカバリー電圧波形及びリカバリー電流を示すグラフである。
図4】実施形態2に係る半導体装置101の断面図である。
図5】実施形態2に係る半導体装置101の要部拡大断面図である。
図6】変形例に係る半導体装置の要部拡大断面図である。
図7】従来の半導体装置900を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の半導体装置について、図に示す実施形態に基づいて説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0017】
[実施形態1]
1.実施形態1に係る半導体装置100の構成
図1は、実施形態1に係る半導体装置100を示す断面図である。なお、図1中、「×」は再結合中心を示す。図2は、実施形態1に係る半導体装置100の要部拡大断面図である。実施形態1に係る半導体装置100は、図1に示すように、半導体基体110と、半導体基体110の表面上に形成され、半導体基体110の表面を露出させる開口122を有する絶縁層120と、開口122において半導体基体110と接続される表面電極130と、半導体基体110の裏面側に形成された裏面電極140と、半導体基体110の表面の最外周付近に形成されたEQR電極(Equi-Potential Ring電極)132と、中央部に開口を有する保護絶縁膜150とを備える。
【0018】
実施形態1に係る半導体装置100は、素子形成領域A1と外周領域A2とで構成されている。実施形態1においては、後述する周辺不純物領域114の内周端Bよりも内周側を素子形成領域A1とし、周辺不純物領域114の内周端Bよりも外周側を外周領域A2とする。
【0019】
半導体基体110は、n型の低抵抗半導体領域111と、n型のドリフト領域112と、ドリフト領域112の表層部に形成されたp型不純物領域113と、ドリフト領域112の表層部におけるp型不純物領域113の周縁部に形成され、p型不純物領域113と重なる部分を有し、不純物濃度がp型不純物領域113の不純物濃度よりも高いp型の周辺不純物領域114と、半導体基体110の最外周に形成されたn型のチャネルストップ領域116とを有する。
【0020】
半導体基体110内には、再結合中心が形成されている。再結合中心は、半導体基体110に電子線を照射する(その後アニールする)ことによって形成してもよいし、重金属(例えば、白金や金)を半導体基体に塗布した後に加熱して拡散させることによって形成してもよい。
【0021】
ドリフト領域112の不純物濃度は、1.0×1013cm-3~1.0×1015cm-3の範囲内にある。チャネルストップ領域116は、半導体基体110上の最外周に位置するEQR電極132と接続されている。チャネルストップ領域116の不純物濃度は、ドリフト領域112の不純物濃度よりも高い。
【0022】
p型不純物領域113は、周辺不純物領域114と重なる領域を有しており、周辺不純物領域114と重なる領域には、高濃度領域115が形成されている。実施形態1において、高濃度領域115は、p型不純物領域113と周辺不純物領域114とが重なる領域にのみ形成されているが、当該重なる領域だけでなく、当該重なる領域の内周側にも形成されていてもよい。高濃度領域115の不純物濃度は、p型不純物領域113の他の領域の不純物濃度よりも高く、周辺不純物領域114の不純物濃度よりも高い。高濃度領域115の不純物濃度は、1.0×1016cm-3~1.0×1020cm-3の範囲内にあり、より好ましくは、2.0×1017cm-3~1.0×1020cm-3の範囲内にある。
【0023】
p型不純物領域113は、図1及び図2に示すように、開口122の内側に形成されており、p型不純物領域113の端部は、開口122の端部の内周側に位置している。p型不純物領域113の外周側の端部(高濃度領域115の外周側の端部)と開口122の端部Bとの間の領域においては、周辺不純物領域114と表面電極130とが接している。p型不純物領域113の不純物濃度は、高濃度領域115の不純物濃度よりも低く、例えば、5.0×1015cm-3~4.4×1016cm-3の範囲内にある。
【0024】
周辺不純物領域114の深さは、p型不純物領域113の深さよりも深い。半導体基体110の表面における周辺不純物領域114の内周端Bは、開口122の端部Aの内周側に位置しており、周辺不純物領域114の内周端Bから開口122の端部Aまでの長さL1が0.01μm以上30μm未満である。周辺不純物領域114の不純物濃度は、高濃度領域115よりも低い。従って、不純物濃度は、p型不純物領域113、周辺不純物領域114、高濃度領域115の順に高くなる。
【0025】
2.実施形態1に係る半導体装置100におけるスイッチングのオンオフ時のキャリアの様子
実施形態1に係る半導体装置100におけるスイッチングのオンオフ時のキャリアの様子について説明する前に、従来の半導体装置900におけるスイッチングのオンオフ時のキャリアの様子を説明する。
【0026】
従来の半導体装置900においては、スイッチングのオン時において、表面電極930と裏面電極940との間に電圧が印加されると、キャリアとしてのホールが半導体基体910内を表面電極930から裏面電極940に向かって移動する。そして、表面電極930と裏面電極940との間に電圧が印加されなくなり、スイッチングのオフ時に移行すると、半導体基体910内のホールは、表面電極930に向かって移動し、表面電極930に回収される。
【0027】
外周領域A2においても、残留したホールが表面電極930に向かって移動する。しかしながら、外周領域A2において半導体基体910の表面には絶縁層920が形成されているため、ホールは、素子形成領域A1に向かって移動し、周辺不純物領域914を通って表面電極930に回収される。このため、周辺不純物領域914及びp型不純物領域913付近の電流密度が増大することから、破壊耐量を大きくすることが難しくなる。また、ホールが表面電極930まで到達するのに時間がかかることから逆回復時間が長くなる。
【0028】
これに対して、実施形態1に係る半導体装置100の外周領域においては、(1)半導体基体110に再結合中心が形成されているため、当該再結合中心によってホールが回収され、素子形成領域に向かって移動するホール自体が少なくなる。また、(2)半導体基体110の表面における周辺不純物領域114の内周端Bは、開口122の端部Aの内周側に位置しているため、従来同様、周辺不純物領域114を介して表面電極130にホールが移動するだけでなく、p型不純物領域113を介して表面電極130にホールが移動する。従って、効率的にホールを回収することができる。また、(3)p型不純物領域113と周辺不純物領域114とが接している領域にp型不純物領域113の高濃度領域115が形成されているため、周辺不純物領域114に流れる電流の電流密度がp型不純物領域113に流れる電流の電流密度よりも大きくなることを防ぎ、p型不純物領域113と周辺不純物領域114との不純物濃度の差を緩和し、電流密度の増加を防ぐことができる。また、周辺不純物領域114の内周端から開口122の端部までの長さS1が0.01μm以上30μm未満であるため、図3の「発明構造」の波形に示すように、ソフトリカバリーの波形となる。その結果、リカバリー電圧を抑えることができ、かつ、逆回復電流を小さくすることができる。
【0029】
3.実施形態1に係る半導体装置100の効果
実施形態1に係る半導体装置100によれば、半導体基体110内には再結合中心が形成され、かつ、周辺不純物領域114の内周端から開口122の端部までの長さL1が0.01μm以上30μm未満であるため、スイッチングのオンオフ時において、外周領域A2を含めて半導体基体110に発生するホールなどが再結合中心によって回収され、表面電極130に達する電流量そのものを小さくする(表面電極130に達するホールを少なくする)ことができる。従って、p型不純物領域113を介して表面電極130へ流れ込む電流と、周辺不純物領域114を介して表面電極130へ流れ込む電流の両方を低減することができ、合流する付近の電流密度を低減することができ、温度上昇を抑えることができる。その結果、破壊耐量を高くすることが可能となる。また、素子形成領域A1の電流密度を低減することができることから、周辺不純物領域114の内周端から開口122の端部までの長さL1を小さくすることができる。このため、リカバリー電流が急激に増大することを防ぐことができるため、リカバリー特性を良好なものとすることができ、リカバリー損失が増大することを抑制することができる。
【0030】
なお、実施形態1において、周辺不純物領域114の内周端から開口122の端部までの長さL1を0.01μm以上としたのは、周辺不純物領域114の内周端から開口122の端部までの長さL1が0.01μm未満の場合には、周辺不純物領域114と表面電極130とが接する面積が小さく、周辺不純物領域114から表面電極130へ移動するホールが少なくなるため、効率的にホールを回収することが難しいからである。また、周辺不純物領域114の内周端から開口122の端部までの長さL1を30μm未満としたのは、周辺不純物領域114の内周端から開口122の端部までの長さL1が30μm以上の場合には、周辺不純物領域114と表面電極130とが接する面積が大きくなるため、リカバリー電流が急激に大きくなり、リカバリー損失が大きくなってしまうからである(図3の「従来構造」の波形をご参照)。
【0031】
図3は、「従来構造」及び「発明構造」のリカバリー電圧及びリカバリー電流を示すグラフである。図3(a)は「従来構造」及び「発明構造」のリカバリー電圧波形を示し、図3(b)は「従来構造」及び「発明構造」のリカバリー電流波形を示す。図3において、「従来構造」(図3の破線)は、周辺不純物領域114の内周端から開口122の端部までの長さL1が60μmである点を除き、実施形態1に係る半導体装置100と同様の構成を有する半導体装置である。また、「発明構造」(図3の実線)は、実施形態1に係る半導体装置100と同様の構成を有する半導体装置である。
図3(a)に示すように、スイッチングのオンオフ時において「発明構造」のリカバリー電圧の波形は、立ち上がった後のピークが「従来構造」の波形のピークよりも小さく、ピーク直後のリンギングの振幅も小さくなっている。また、図3(b)に示すように、スイッチングのオンオフ時において「発明構造」のリカバリー電流の波形は、「従来構造」の波形に比べて逆回復電流が大きく、逆回復時間も短くなっている。
【0032】
ところで、仮にp型不純物領域113がすべて高濃度領域であった場合には、スイッチングのオンオフ時においてp型不純物領域の電流密度を低減させることができるものの、表面電極130へ急速に電流が流れる易くなるため、ハードリカバリーになりやすく、リカバリー波形を良好なものとすることが難しい。これに対して、実施形態1に係る半導体装置100によれば、高濃度領域115は、p型不純物領域113と周辺不純物領域114とが重なる領域にのみ形成されているため、表面電極130へ比較的ゆっくりと電流が流れる易くなるため、ソフトリカバリーになりやすく、リカバリー波形を良好なものとすることができる。
【0033】
また、実施形態1に係る半導体装置100によれば、ドリフト領域112の不純物濃度は、1.0×1013cm-3~1.0×1015cm-3の範囲内にあるため、スイッチングのオンオフ時においてリカバリー電流の電流密度(ホールの量)を比較的少なくすることができ、さらに半導体基体110内には再結合中心が形成されており、ホールを回収することができることから半導体基体110の表面付近のリカバリー電流の電流密度をより一層少なくすることができる。その結果、より一層破壊耐量を高くすることができる。
【0034】
[実施形態2]
図4は、実施形態2に係る半導体装置101の断面図である。図5は、実施形態2に係る半導体装置101の要部拡大断面図である。実施形態2に係る半導体装置101は、基本的には実施形態1に係る半導体装置100と同様の構成を有するが、半導体基体の表面における周辺不純物領域の内周端の位置が実施形態1に係る半導体装置100の場合とは異なる(図4及び図5参照)。すなわち、実施形態2に係る半導体装置101においては、半導体基体110の表面における周辺不純物領域114の内周端Bは、開口122の端部Aの外周側に位置している。従って、周辺不純物領域114は表面電極130とは接していない。
【0035】
p型不純物領域113は、開口122の外周側まで延在しており、周辺不純物領域114と重なる領域を有する。そして、実施形態1の場合と同様に、高濃度領域115は、p型不純物領域113と周辺不純物領域114とが重なる領域にのみ(厳密には重なる領域の近傍のみ)形成されている。従って、高濃度領域115も表面電極130とは接しておらず、p型不純物領域113のその他の部分を介して表面電極130と接続されている。
【0036】
高濃度領域の不純物濃度は、1.0×1016cm-3~1.0×1020cm-3の範囲内にある。より好ましくは、2.0×1017cm-3~1.0×1020cm-3の範囲内にある。これは、p型不純物領域113の不純物濃度よりも高く、周辺不純物領域114の不純物濃度よりも高い。従って、実施形態2においても、不純物濃度は、p型不純物領域113、周辺不純物領域114、高濃度領域115の順に高くなる。
【0037】
このように、実施形態2に係る半導体装置101は、半導体基体の表面における周辺不純物領域の内周端の位置が実施形態1に係る半導体装置100の場合とは異なるが、半導体基体110内には再結合中心が形成され、かつ、周辺不純物領域114の内周端が開口122の端部の外周側に位置し、高濃度領域115の不純物濃度が1.0×1016cm-3~1.0×1020cm-3cm-3の範囲内にあるため、スイッチングのオンオフ時において、外周領域A2を含めて半導体基体110に発生するホールなどが再結合中心によって回収され、表面電極130に達する電流量そのものを小さくすることができる。従って、素子形成領域A1からp型不純物領域113を介して表面電極130に流れる電流の電流密度と周辺不純物領域114からp型不純物領域113に流れ込み、表面電極130に流れる電流の電流密度とが重なる領域付近の電流密度を低減することができ、温度上昇を抑えることができる。その結果、破壊耐量を高くすることが可能となる。さらに、素子形成領域A1の電流密度を低減することができることから、周辺不純物領域114と表面電極130とが接しなくても破壊耐量を保つことができる。そして、周辺不純物領域114と表面電極130とが接していないことで、急激なリカバリー電流の増大を抑制することができることから、リカバリー特性を良好なものとすることができ、リカバリー損失が増大することを抑制することができる。
【0038】
また、実施形態2に係る半導体装置101によれば、p型不純物領域113は、開口122の外周側まで延在しているため、ホールは、周辺不純物領域114(高濃度領域115)から比較的低濃度のp型不純物領域113を介して表面電極130へ流れることとなる。従って、リカバリー特性を良好なものとすることができ、リカバリー損失が増大することを抑制することができる。
【0039】
なお、実施形態2に係る半導体装置101は、半導体基体の表面における周辺不純物領域の内周端の位置以外の点においては実施形態1に係る半導体装置100と同様の構成を有するため、実施形態1に係る半導体装置100が有する効果のうち該当する効果を有する。
【0040】
以上、本発明を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0041】
(1)上記各実施形態(各変形例も含む。以下同じ。)において記載した位置、接続、個数等は例示であり、本発明の効果を損なわない範囲において変更することが可能である。
【0042】
(2)上記実施形態2においては、半導体基体110の表面における周辺不純物領域114の内周端が開口122の端部の外周側に位置することとしたが、本発明はこれに限定するものではない。水平方向に対して半導体基体110の表面における周辺不純物領域114の内周端が開口122の端部と同じ位置に位置することとしてもよい。
【0043】
(3)上記各実施形態においては、半導体装置としてダイオードを用いたが、本発明はこれに限定するものではない。半導体装置としてMOSFETに用いてもよいし、その他適宜の半導体装置に用いてもよい。
【0044】
(4)上記各実施形態においては、高濃度領域をp型不純物領域と周辺不純物領域とが重なる領域にのみ形成したが、本発明はこれに限定するものではない。高濃度領域を第2導電型不純物領域における当該重なる領域以外の領域にまで形成してもよい。ただし、第2導電型不純物領域全てを高濃度領域にした場合にはリカバリー特性の面から好ましくなく、高濃度領域以外の領域を有することが好ましい。
【0045】
(5)上記各実施形態においては、ドリフト領域の不純物濃度を1.0×1013cm-3~1.0×1015cm-3の範囲内にあるものとしたが、本発明はこれに限定するものではない。それ以外の不純物濃度の場合であっても本発明を適用可能である。
【0046】
(6)上記各実施形態において、周辺不純物領域114の外周側にp型のガードリング領域を形成してもよい。p型のガードリング領域の本数は複数本であってもよい。また、ガードリングの深さは、周辺不純物領域114の深さと同じ深さであることが好ましい。
【0047】
(7)上記各実施形態において、p型不純物領域113の外周端は、絶縁層120の内周端Aよりも内側にあるが、本発明はこれに限定されるものではない。p型不純物領域113の外周端が、絶縁層120の内周端Aよりも外側にあってもよい(図6参照)。
【符号の説明】
【0048】
100,101,900…半導体装置、110、910…半導体基体、111,911…低抵抗半導体領域、112,912…ドリフト領域、113,913…p型不純物領域、114,914…周辺不純物領域、115,915…高濃度領域、116,916…チャネルストップ領域、120,920…絶縁層、122,922…開口、130,930…表面電極、132…EQR電極、140,940…裏面電極、150,950…保護絶縁膜、A1…素子形成領域、A2…外周領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7