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特開2024-93604配信システム、配信方法、及び、配信装置
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  • 特開-配信システム、配信方法、及び、配信装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093604
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】配信システム、配信方法、及び、配信装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 21/436 20110101AFI20240702BHJP
   H04L 67/101 20220101ALI20240702BHJP
【FI】
H04N21/436
H04L67/101
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210105
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】522502325
【氏名又は名称】株式会社アールスポーツウェブ
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(74)【代理人】
【識別番号】100224719
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 隆治
(72)【発明者】
【氏名】根岸 良多
【テーマコード(参考)】
5C164
【Fターム(参考)】
5C164GA03
5C164UA04S
5C164UB41P
5C164UB71P
5C164YA24
(57)【要約】
【課題】
本発明は、配信システムに係る新規な技術を提供することを、解決すべき課題とする。
【解決手段】
サーバと、前記サーバからストリーミング配信を受信する端末装置を含む配信システムであって、前記端末装置は、前記サーバ及び前記端末装置間の接続速度の変化を計測する計測手段と、前記計測手段が計測した前記接続速度が予め定められた数値を下回った場合、前記端末装置の周囲で前記サーバからコンテンツデータを受信できている端末装置を検索する検索手段と、前記端末装置間での前記コンテンツデータのやり取りを行うためのメッシュネットワークを形成する形成手段と、前記検索手段が発見した端末装置から前記コンテンツデータを取得する取得手段と、を有することを特徴とする配信システム。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーバと、前記サーバからストリーミング配信を受信する端末装置を含む配信システムであって、
前記端末装置は、
前記サーバ及び前記端末装置間の接続速度の変化を計測する計測手段と、
前記計測手段が計測した前記接続速度が予め定められた数値を下回った場合、前記端末装置の周囲で前記サーバからコンテンツデータを受信できている端末装置を検索する検索手段と、
前記端末装置間での前記コンテンツデータのやり取りを行うためのメッシュネットワークを形成する形成手段と、
前記検索手段が発見した端末装置から前記コンテンツデータを取得する取得手段と、
を有することを特徴とする配信システム。
【請求項2】
前記検索手段は、周囲の前記端末装置に対して前記接続速度を含む端末情報を要求し、取得した前記端末情報に基づき前記接続速度が予め定められた数値よりも高い前記端末装置を決定する請求項1に記載の配信システム。
【請求項3】
前記形成手段は、前記接続速度に基づき、前記サーバとの接続の継続又は中止を決定し、前記メッシュネットワークを形成する請求項2に記載の配信システム。
【請求項4】
前記計測手段は、前記接続速度の変化を予め定められた時間ごとに計測する請求項3に記載の配信システム。
【請求項5】
前記サーバは、前記コンテンツデータを前記端末装置に送信する際にタイムコードを付与する送信手段を有する請求項4に記載の配信システム。
【請求項6】
前記計測手段は、前記コンテンツデータが有するタイムスタンプ又はタイムコード及び、前記コンテンツデータの受信日時に基づき遅延を判断する請求項5に記載の配信システム。
【請求項7】
前記配信システムは、複数の前記端末装置を備え、
無線通信で基地局又はアクセスポイントを経由して前記サーバと通信する前記端末装置と、アクセスポイントと有線接続される前記端末装置と、を有することを特徴とする請求項6に記載の配信システム。
【請求項8】
サーバと、前記サーバからストリーミング配信を受信する端末装置と、によって実行される配信方法であって、
前記サーバ及び前記端末装置間の接続速度の変化を計測する計測ステップと、
前記計測ステップが計測した前記接続速度が予め定められた数値を下回った場合、前記端末装置の周囲で前記サーバからコンテンツデータを受信できている端末装置を検索する検索ステップと、
前記端末装置間での前記コンテンツデータのやり取りを行うためのメッシュネットワークを形成する形成ステップと、
前記検索ステップが発見した端末装置から前記コンテンツデータを取得する取得ステップと、
を前記端末装置に実行させることを特徴とする配信方法。
【請求項9】
サーバからストリーミング配信を受信する端末装置である配信装置であって、
前記サーバ及び前記端末装置間の接続速度の変化を計測する計測手段と、
前記計測手段が計測した前記接続速度が予め定められた数値を下回った場合、前記端末装置の周囲で前記サーバからコンテンツデータを受信できている端末装置を検索する検索手段と、
前記端末装置間での前記コンテンツデータのやり取りを行うためのメッシュネットワークを形成する形成手段と、
前記検索手段が発見した端末装置から前記コンテンツデータを取得する取得手段と、
を備えることを特徴とする配信装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配信システム、配信方法、及び、配信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、映像や音声等のデータを複数の利用者に配信する場合、ビデオカメラやマイク等の機器によって撮影・録音されたコンテンツデータを有する配信元から、これらのデータを要求する利用者に対して、IPパケット等を用いたユニキャスト通信で配信する方法が用いられる。このようなユニキャスト通信では、データの送信を要求する利用者数が増加すると、配信サーバは利用者数に応じたユニキャスト通信路の数だけ同じデータを複製して配信するため、ネットワークの帯域幅を浪費して十分な数の利用者に配信できないという問題がある。
【0003】
特許文献1では、P2Pネットワークの通信回線が混雑している場合であっても、配信サービスを継続させるための発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-187637号公報
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の発明は、回線の混雑度合いに応じて通常レート又は低レートデータを取得することが記載されているが、回線の混雑具合の影響を軽減するために品質の低いデータを取得させており、また、回線の混雑の影響を回避するための通信方法の最適化等について対応していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記事情を鑑みて、本発明は、配信システムに係る新規な技術を提供することを、解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、サーバと、前記サーバからストリーミング配信を受信する端末装置を含む配信システムであって、前記端末装置は、前記サーバ及び前記端末装置間の接続速度の変化を計測する計測手段と、前記計測手段が計測した前記接続速度が予め定められた数値を下回った場合、前記端末装置の周囲で前記サーバからコンテンツデータを受信できている端末装置を検索する検索手段と、前記端末装置間での前記コンテンツデータのやり取りを行うためのメッシュネットワークを形成する形成手段と、前記検索手段が発見した端末装置から前記コンテンツデータを取得する取得手段と、を有することを特徴とする。このような構成とすることで、本発明は、ライブ会場等において端末装置を有する観客が密集又は大勢存在している場合にも、帯域が圧迫されず、スムーズなコンテンツデータの送受信を行うことができる。
【0008】
本発明の好ましい形態では、前記検索手段は、周囲の前記端末装置に対して前記接続速度を含む端末情報を要求し、取得した前記端末情報に基づき前記接続速度が予め定められた数値よりも高い前記端末装置を決定することを特徴とする。このような構成とすることで、本発明は、接続速度が高くサーバからコンテンツデータを受信できている可能性の高い端末装置から、コンテンツデータを受け取ることができる。
【0009】
本発明の好ましい形態では、前記形成手段は、前記接続速度に基づき、前記サーバとの接続の継続又は中止を決定し、前記メッシュネットワークを形成することを特徴とする。このような構成とすることで、本発明は、接続速度に基づいて通信方法の切り替えを行うことが可能となり、また、サーバ・端末装置間のコンテンツデータの送受信を安定させることができる。
【0010】
本発明の好ましい形態では、前記計測手段は、前記接続速度の変化を予め定められた時間ごとに計測することを特徴とする。このような構成とすることで、本発明は、配信サーバとの接続速度が遅くなった際に、迅速に接続の形態を変更し、ネットワークの混雑を回避することができる。
【0011】
本発明の好ましい形態では、前記サーバは、前記コンテンツデータを前記端末装置に送信する際にタイムコードを付与する送信手段を有することを特徴とする。このような構成とすることで、本発明は、受信したコンテンツデータに基づきサーバと端末装置間の接続速度を決定することができる。
【0012】
本発明の好ましい形態では、前記計測手段は、前記コンテンツデータが有するタイムスタンプ又はタイムコード及び、前記コンテンツデータの受信日時に基づき遅延を判断することを特徴とする。このような構成とすることで、本発明は、サーバと端末の間の接続速度を決定することができる。
【0013】
本発明の好ましい形態では、前記配信システムは、複数の前記端末装置を備え、無線通信で基地局又はアクセスポイントを経由して前記サーバと通信する前記端末装置と、アクセスポイントと有線接続される前記端末装置と、を有することを特徴とする。このような構成とすることで、本発明は、無線通信でサーバと通信する全ての端末装置の接続速度が予め定められた数値を下回った場合であっても、サーバとの通信を維持している端末装置を残すことができる。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明は、サーバと、前記サーバからストリーミング配信を受信する端末装置と、によって実行される配信方法であって、前記サーバ及び前記端末装置間の接続速度の変化を計測する計測ステップと、前記計測ステップが計測した前記接続速度が予め定められた数値を下回った場合、前記端末装置の周囲で前記サーバからコンテンツデータを受信できている端末装置を検索する検索ステップと、前記端末装置間での前記コンテンツデータのやり取りを行うためのメッシュネットワークを形成する形成ステップと、前記検索ステップが発見した端末装置から前記コンテンツデータを取得する取得ステップと、を前記端末装置に実行させることを特徴とする。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明は、サーバからストリーミング配信を受信する端末装置である配信装置であって、前記サーバ及び前記端末装置間の接続速度の変化を計測する計測手段と、前記計測手段が計測した前記接続速度が予め定められた数値を下回った場合、前記端末装置の周囲で前記サーバからコンテンツデータを受信できている端末装置を検索する検索手段と、前記端末装置間での前記コンテンツデータのやり取りを行うためのメッシュネットワークを形成する形成手段と、前記検索手段が発見した端末装置から前記コンテンツデータを取得する取得手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、配信システムに係る新規な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係るシステム構成図を示す。
図2】本発明の一実施形態に係るハードウェア構成図を示す
図3】本発明の一実施形態に係るライブ配信を行う際の全体手順を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書は、本発明の一実施形態にかかる構成や作用効果等について、図面を交えて、以下に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されず、様々な構成を採用し得る。
【0019】
例えば、本実施形態では配信システムの構成、動作等について説明するが、実行される方法、コンピュータプログラム等によっても、同様の作用効果を奏することができる。本実施形態におけるプログラムは、コンピュータが読み取り可能な非一過性の記録媒体として提供されてもよいし、外部のサーバからダウンロード可能に提供されてもよいし、配信システムでその機能を実現する為に外部のコンピュータにおいて当該プログラムを起動させてもよい(いわゆるクラウドコンピューティング)。
【0020】
また、本実施形態において「手段」とは、例えば、広義の回路によって実施されるハードウェア資源と、これらハードウェア資源によって具体的に実現され得るソフトウェアの情報処理とを合わせたものも含み得る。本実施形態において「情報」とは、例えば電圧・電流を表す信号値の物理的な値、0又は1で構成される2進数のビット集合体としての信号値の高低、又は量子的な重ね合わせ(いわゆる量子ビット)によって表され、広義の回路上で通信・演算が実行され得る。
【0021】
広義の回路とは、回路(Circuit)、回路類(Circuitry)、プロセッサ(Processor)及びメモリ(Memory)等を適宜組み合わせることによって実現される回路である。即ち、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等を含むものである。
【0022】
<全体構成>
図1は、本実施形態における配信システムの概要図である。配信システムは、配信サーバ1と、複数の端末装置2(2A、2B、2C・・・)と、を備える。配信サーバ1と複数の端末装置2は、通信ネットワークNWを介して通信可能に構成されている。本実施形態では、通信ネットワークNWは、例えば5Gの規格に準拠したネットワークであるが、4G、LTE、及びその他の規格に準拠した回線であってよい。配信システムでは、通信端点であるソケットが生成され、当該ソケットを通じてコンテンツデータの送受信が行われる。なお、本実施形態では、ソケットを通じたコンテンツデータの送受信に限らず、コンテンツデータの取得の度に端末装置2が配信サーバ1に対してリクエストを行い、配信サーバ1は受信したリクエストに応じて端末装置2にコンテンツデータを送信してもよい。また、複数の端末装置2間は、移動体通信ネットワークを介したマルチキャスト方式で後述のコンテンツデータを通信可能に構成される。ここで、配信システムは、配信サーバ1と有線接続される端末装置2を備えてもよく、当該端末装置2とその他の端末装置2が通信ネットワークNWを介して通信可能に構成されることで、少なくとも1以上の端末装置2が配信サーバ1から後述のコンテンツデータ受信することが可能になる。なお、配信サーバ1と有線接続される上記端末装置2の提供者は、配信サーバ1を有する企業やライブの主催者(設営者)等であってよい。
【0023】
通信ネットワークNWは、インターネットなどのIP(Internet Protocol)網等から構成される。なお、以下の説明では、不明確にならない限り通信ネットワークNWの介在を省略する。
【0024】
<配信サーバ1>
配信サーバ1として、スマートフォンやタブレット端末、汎用のサーバ向けのコンピュータやパーソナルコンピュータ等を利用することが可能である。また、本実施形態において、複数のコンピュータを用いて配信サーバ1を構成することも可能である。
【0025】
<端末装置2>
各端末装置2は、パーソナルコンピュータ、スマートフォン及びタブレット端末等であってよい。端末装置2は、配信サーバ1に対してリクエスト(送信要求)を行い、レスポンスを受け取るためのアプリケーション(典型的には、ウェブブラウザ)を有する。本実施形態では、配信サーバ1はリクエストを行った端末装置2に対して後述のコンテンツデータを送信する。
【0026】
図2は、配信システムにおける、配信サーバ1と端末装置2のハードウェア構成図である。
【0027】
<配信サーバ1のハードウェア構成>
図2(a)は、配信サーバ1のハードウェア構成の一例を示す図である。配信サーバ1は、ハードウェア構成として、通信部11と、制御部12と、記憶部13と、を備える。
【0028】
通信部11は、通信ネットワークNWとの通信制御を実行して、配信サーバ1を動作させるために必要な入力や、動作結果に係る出力を行う。制御部12は、CPU(Central Processing Unit)等の1又は2以上のプロセッサを含み、本発明にかかる配信プログラム、OS(Operating System)及びその他のアプリケーションを実行することで、配信サーバ1の動作処理全体を制御する。記憶部13は、HDD(hard disk drive)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等であって、本発明に係る配信プログラム及び、制御部12がプログラムに基づき処理を実行する際に利用するデータ等を記憶する。
【0029】
<端末装置2のハードウェア構成>
図2(b)は、端末装置2のハードウェア構成の一例を示す図である。端末装置2も同様に、ハードウェア構成として、通信部21と、制御部22と、記憶部23と、出力部24と、を備える。
【0030】
端末装置2の通信部21は、通信ネットワークNWとの通信を制御する。制御部22は、CPU等の1以上のプロセッサを含み、端末装置2の動作処理全体を制御する。記憶部23は、HDD、ROM、RAM等であって、本発明に係る配信プログラム及び、制御部22がプログラムに基づき処理を実行する際に利用するデータ等を記憶する。
【0031】
出力部24は、例としてモニタやスピーカー等の、利用者に対するライブ映像の表示や音源の再生を行うためのインタフェースである。
【0032】
<機能構成要素>
図2(a)に例示されるように、配信サーバ1は、送信手段101と、データベースDBと、を有する。
【0033】
また、図2(b)に例示されるように、端末装置2は、計測手段201と、検索手段202と、形成手段203と、取得手段204と、出力処理手段205と、を有する。
【0034】
本実施形態では、データベースDBは、配信システムにおいて配信サーバ1が端末装置2に対して送信するデータであるコンテンツデータを記憶する。本実施形態では、当該コンテンツデータはライブ等で流される映像データであるが、災害時において状況把握等のために配信される映像データであってよい。また、当該コンテンツデータは、データベースDBにおいてチャンク形式(データチャンクDC)で記憶されており、映像データに加えて音源データも含んでいてよい。本実施形態では、映像データ等を所定のサイズで分割したときのデータをデータチャンクDCとし、映像データを所定のサイズ毎のデータチャンクDCに時間軸上で順番に分割した際に、映像データのデータチャンクDCを識別するための番号をデータチャンク番号とする。ここで、所定のサイズに分割したデータとは、例として1秒間の映像データ及び、当該映像データに対応する音源データのことである。なお、本実施形態では、配信サーバ1は、データベースDBを有していなくてよい。その場合、配信サーバ1は、撮影された上記コンテンツデータを受信し記憶部13に記憶し、記憶部13に記憶したコンテンツデータを端末装置2に送信する。なお、配信サーバ1は、記憶部13に記憶される上記コンテンツデータを、予め定められた期間の経過後に記憶部13から削除してよい。
【0035】
配信サーバ1において上述した機能構成要素を論理的に実現するには、記憶部23に配信プログラムをアプリケーションプログラムとしてインストールしておく。そして、端末装置2においては、映像データを表示するための画面の表示等を契機に、制御部22が、記憶部23に記憶されている配信プログラムに基づき処理を実行することによって、上述した機能構成が実現される。
【0036】
送信手段101は、データチャンクDCをデータベースDBから選択し、通信ネットワークNW及び有線を介して配信サーバ1と接続されている端末装置2に対して、当該データチャンクDCを通信部11を介して送信する。送信手段101は、送信の開始時点から、時系列に沿ってデータチャンクDCを選択する。また、送信手段101は、当該データチャンクDCに対して、タイムスタンプ又はタイムコードを付与してよい。送信手段101がデータチャンクDCに付与するタイムスタンプ又はタイムコードは、当該データチャンクDCが送信手段101を介して端末装置2に対して送信される日時である。
【0037】
計測手段201は、配信サーバ1と端末装置2間の接続速度等の変化を計測する。本実施形態では、計測手段201は、端末装置2と接続される通信ネットワークNWの帯域使用率、配信サーバ1と端末装置2間の応答速度(応答に掛かる時間)、及びジッター値(応答速度の振れ幅の平均値)の何れかに基づき上記接続速度の変化を計測する。或いは、計測手段201は、通信部21を介して受信したデータチャンクDCが有するタイムスタンプ又はタイムコードと、通信部21を介してデータチャンクDCを受信した日時を比較することで接続速度を決定してもよい。なお、本実施形態では、計測手段201は接続速度等の変化を予め定められた時間ごとに計測する。
【0038】
検索手段202は、計測手段201が計測した接続速度等が予め定められた数値よりも遅い又は大きい場合、端末装置2の周囲に存在する異なる端末装置2であって、且つ配信サーバ1との接続速度等が予め定められた数値より速い又は小さい端末装置2が存在するかを検索する。或いは、検索手段202は、前回の受信時から予め定められた時間が経過しても通信部21を介したデータチャンクDCの受信ができなかった場合、上記条件に当てはまる端末装置2の検索を開始する。検索手段202は、端末装置2の周囲に存在する他の端末装置2から、接続速度等の当該端末装置2に係る情報を含む端末情報を取得し、周囲の端末装置2の中で最も接続速度が速い端末装置2を決定する。本実施形態において、端末装置2の周囲とは、当該端末装置2と無線通信でデータチャンクDCの送受信を行うことができる距離のことである。また、接続速度等における予め定められた数値とは、データチャンクDCに付与されたタイムスタンプ又はタイムコードと端末装置2が当該データチャンクDCを受信した日時の差が一定以上であることを指してよい。
なお、本実施形態において、端末装置2の周囲で接続速度が予め定められた数値以上である他の端末装置2が発見されなかった場合、端末装置2の出力部24では、上記条件に該当する端末装置2が発見されなかったことが示される。また、その場合端末装置2は、周囲に上記条件に当てはまる端末装置2が存在している他の端末装置2を検索してよい。
【0039】
形成手段203は、配信サーバ1と端末装置2間の接続速度等が一定以上遅く又は大きくなった際に、複数の端末装置2で構成されるメッシュネットワークを形成する。なお、本実施形態において、形成手段203は、複数の端末装置2及び中継機によって構成されるマルチキャスト網を形成してよい。本実施形態において、通信速度等が一定以上速い又は小さい端末装置2は配信サーバ1との通信を継続し、通信速度等が一定以上遅い又は大きい端末装置2は配信サーバ1との通信を中断する。このような構成とすることで、通信ネットワークNWを介して配信サーバ1と接続する端末装置2の数が減少し、帯域が空くことによって接続速度等が速く又は小さくなり、データチャンクDCの送受信が安定する。
【0040】
配信サーバ1との通信が中断された端末装置2の取得手段204は、当該端末装置2の周囲で最も接続速度の速い他の端末装置2に対して、当該端末装置2が最後に受信したデータチャンクDCに付与されているデータチャンク番号以降の番号を有するデータチャンクDCの送信を要求する送信要求を上記他の端末装置2に対して送信する。他の端末装置2から送信要求を受信した端末装置2は、配信サーバ1から受信したデータチャンクDCを、通信部21を介して送信する。或いは、端末装置2の周囲に、配信サーバ1との接続速度等が予め定められた数値より速い又は小さい端末装置2が存在しない場合、取得手段204は、周囲に上記条件に当てはまる端末装置2が存在している他の端末装置2に対して送信要求を送信してよい。この際、配信サーバ1との通信が中断された端末装置2も同様に、他の端末装置2から受信したデータチャンクDCを、通信部21を介して送信可能である。
【0041】
出力処理手段205は、通信部21を介して受信したデータチャンクDCに基づき、出力部24を介して映像データ及び/又は音源データを出力する。
【0042】
<ライブ配信の全体手順>
図3を用いて、配信システムを用いたライブ配信の全体手順の例を説明する。本実施形態では、ライブ会場等における利用者の密集や配信サーバ1に対する接続が一斉に行われることによって起きる、映像データ及び音源データの送受信の遅れを解消することを想定している。なお、配信システムの利用はライブ会場等に限定されなくともよく、例として災害現場等の通信状況が常よりも悪化し易い場所への情報の送信にも利用されてよい。また、以下の例では、データチャンクDCに付与されたタイムスタンプ又はタイムコードに基づき接続速度を決定するものとする。
図3が示すように、本発明にかかる一連の処理は以下のステップを含む。図3に示される各ステップの順序は一例であり、指定がない限り適宜、当該順序は変更され得る。
【0043】
送信手段101は、データベースDBからデータチャンクDCを選択し、配信サーバ1と通信ネットワークNWを介して接続されている端末装置2に対して当該データチャンクDCを送信する(ステップS101)。この際、送信手段101は、データチャンク番号が最新のデータチャンクDC(最後に送信したデータチャンクDCの次のデータチャンク番号を付与されたデータチャンクDC)を送信する。送信手段101は、ライブの途中から通信ネットワークNWに接続を行った端末装置2にも最新のデータチャンク番号のデータチャンクDCを送信する。なお、災害時において状況把握等のためにストリーミング配信されるデータ(例えば映像データや音源データ等)を送信する場合においては、送信手段101は、データチャンク番号の最初から時系列に沿ってデータチャンクDCを送信してよい。
また、送信手段101は、端末装置2にデータチャンクDCを送信する際に、送信日時を示すタイムスタンプ又はタイムコードを付与してよい。
【0044】
計測手段201は、配信サーバ1と端末装置2間の接続速度等の変化を計測する(ステップS102)。本実施形態では、計測手段201は、端末装置2と接続される通信ネットワークNWの帯域使用率、配信サーバ1と端末装置2間の応答速度、及びジッター値の何れかに基づき上記接続速度の変化を計測する。また、ステップS101で送信されたデータチャンクDCにタイムスタンプ又はタイムコードが付与されている場合、計測手段201は、当該データチャンクDCに付与されたタイムスタンプ又はタイムコード及び、端末装置2が当該データチャンクDCを受信した日時に基づき接続速度を計測してよい。
【0045】
検索手段202は、計測手段201が計測した接続速度が予め定められた数値を下回った場合、端末装置2の周囲で接続速度が予め定められた数値を上回っている端末装置2の検索を行う(ステップS103)。本実施形態では、配信サーバ1との接続速度が予め定められた数値を上回っている端末装置2は、データチャンクDCを取得できているものとする。
なお、ステップS103における検索の結果、端末装置2の周囲に上記条件に当てはまる他の端末装置2が存在しなかった場合、検索手段202は、当該端末装置2の周囲に、上記条件に当てはまる他の端末装置2が存在する端末装置2が存在するかの検索を行う。
【0046】
形成手段203は、端末装置2間でのデータチャンクDCのやり取りを行うためのメッシュネットワークを形成する(ステップS104)。本実施形態では、形成手段203は、配信サーバ1との接続速度が予め定められた数値以上である場合、端末装置2と配信サーバ1との接続を維持し、当該接続速度が予め定められた数値以下である場合、配信サーバ1との接続を終了し他の端末装置2と通信可能なメッシュネットワークを形成する。なお、形成手段203は、ステップS103で取得した周囲の端末装置2の接続速度に基づき、メッシュネットワークの形成の要否を決定する。例として、検索手段202による検索の結果、ある端末装置2の接続速度だけが予め定められた数値以下であった場合、当該端末装置2に対して通信制限がかけられている等の事態が考えられる。そのため、当該端末装置2の周囲に接続速度が予め定められた数値以上でない端末装置2が一定の数以上存在しない場合、形成手段203はメッシュネットワークを形成しなくてよい。その場合、出力処理手段205は、出力部24を介して、端末装置2の所有者に再読み込みや通信設定の確認等を求めるメッセージを表示してよい。
本実施形態における構成では、全ての端末装置2における接続速度が同時に予め定められた数値を下回った場合、全ての端末装置2が配信サーバ1との接続を中止してしまうため、そのような事態が起こらないよう、配信サーバ1と有線で接続された端末装置2がライブ会場等に設置されていてもよい。
【0047】
取得手段204は、データチャンクDCの送信要求を行う(ステップS105)。本実施形態では、取得手段204は、ステップS104におけるメッシュネットワークの形成の際に、配信サーバ1との接続を維持している端末装置2又は配信サーバ1と有線で接続されている端末装置2に対してデータチャンクDCの送信要求を送信する。また、端末装置2の周囲に配信サーバ1との接続を継続している他の端末装置2が存在しない場合、取得手段204は、周囲に配信サーバ1との接続を維持している端末装置2が存在している端末装置2に対して送信要求を送信する。
【0048】
送信要求を受信した端末装置2は、送信要求を送信した端末装置2に対して、通信部21を介してデータチャンクDCを送信する(ステップS106)。なお、送信要求を受信した端末装置2は、送信要求に基づき他の端末装置2が受信した最後のデータチャンクDCの次のデータチャンク番号を有するデータチャンクDCを送信してよく、他の端末装置2からの送信要求を受信した時点における最も新しいデータチャンクDCを送信してもよい。
【0049】
出力処理手段205は、通信部21を介して受信したデータチャンクDCに基づき、映像データ及び/又は音源データを出力する(ステップS107)。
【0050】
本発明によれば、配信システムに係る新規な技術を提供することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 :配信サーバ
2 :端末装置
11、21 :通信部
12、22 :制御部
13、23 :記憶部
24 :出力部
101 :送信手段
201 :計測手段
202 :検索手段
203 :形成手段
204 :取得手段
205 :出力処理手段

図1
図2
図3