(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093609
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】ダンプカー
(51)【国際特許分類】
B60P 1/273 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
B60P1/273
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210116
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】坂本 圭
(57)【要約】
【課題】煽戸のロック機構の保護性と設計の自由度を高める。
【解決手段】車枠に傾動可能に搭載された荷箱、及び前記荷箱の側壁を構成する下開き型の煽戸を有し、前記煽戸が、上部側を支点にして下部側が回動するように前記荷箱に対して回動自在に取り付けた外枠体、及び前記外枠体の開口を塞ぐようにして設けられ、前記荷箱の倒伏時に水平方向に回動するように前記外枠体に対して回動自在に取り付けたゲート体を備えたダンプカーにおいて、前記外枠体に設けた外枠体ブラケットと、前記荷箱に設けた荷箱ブラケットと、前記外枠体ブラケット及び前記荷箱ブラケットを固定する固定ピンと、前記外枠体に設けた固定構造物である第1ロック部材と、前記荷箱に設けた固定構造物である第2ロック部材と、前記ゲート体に設けられ、前記第1ロック部材及び前記第2ロック部材に選択的に係脱可能な可動ハンドルとを備えたダンプカーを提供する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転席、前記運転席の後部に連設した車枠、前記車枠に傾動可能に搭載された荷箱、及び前記荷箱の側壁を構成する下開き型の煽戸を有し、前記煽戸が、上部側を支点にして下部側が回動するように前記荷箱に対して回動自在に取り付けた外枠体、及び前記外枠体の開口を塞ぐようにして設けられ、前記荷箱の倒伏時に水平方向に回動するように前記外枠体に対して回動自在に取り付けたゲート体を備えたダンプカーにおいて、
前記外枠体に設けた外枠体ブラケットと、
前記荷箱に設けた荷箱ブラケットと、
前記外枠体ブラケット及び前記荷箱ブラケットを固定する固定ピンと、
前記外枠体に設けた固定構造物である第1ロック部材と、
前記荷箱に設けた固定構造物である第2ロック部材と、
前記ゲート体に設けられ、前記第1ロック部材及び前記第2ロック部材に選択的に係脱可能な可動ハンドルと
を備えたことを特徴とするダンプカー。
【請求項2】
請求項1のダンプカーにおいて、
前記外枠体ブラケット、前記荷箱ブラケット、及び前記第1ロック部材の位置が対応していることを特徴とするダンプカー。
【請求項3】
請求項1のダンプカーにおいて、
前記固定ピンは、先端が屈曲可能な抜け止め機構を備えていることを特徴とするダンプカー。
【請求項4】
請求項1のダンプカーにおいて、
前記外枠体は、チェーンを介して前記固定ピンに連結されていると共に、前記固定ピンの保持部材を備えていることを特徴とするダンプカー。
【請求項5】
請求項1のダンプカーにおいて、
前記可動ハンドルが、前記ゲート体の把手を兼ねることを特徴とするダンプカー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車枠上に荷箱を傾動可能に搭載したダンプカーに関する。
【背景技術】
【0002】
車枠上に荷箱を傾動可能に搭載したダンプカーにおいて、荷箱が下開き型の煽戸を有している場合、荷箱が傾動するに従って煽戸の下部が自然に開くので、荷物のダンプ排出作業の利便性が高い。しかし、下開き型の煽戸は、その上部側に支点があって開放時でも荷箱の床面上方に残るため、例えば荷箱に対して荷物の積み降ろしをする場合には、荷箱の床面と煽戸の間を通るもの以外は煽戸よりも高く持ち上げて積み卸ししなければならない。また、開放時の煽戸と荷箱の床面との間を通らない大きさのものや長尺物等、ダンプ排出することができないものもある。
【0003】
そこで、特許文献1に記載されているように、下開き型の荷箱において、後方に設けた煽戸を、下開き構造の外枠体と、その外枠体の開口を塞ぐ横開き構造のゲート体とで構成したものがある。同文献の煽戸は、ゲート体と荷箱に選択的に係止可能なレバーハンドルが外枠体に設けられている。このレバーハンドルをゲート体に係止すると、外枠体にゲート体が固定されて煽戸が下開き形態となる。反対にレバーハンドルを荷箱に係止すると、外枠体が荷箱に固定される一方でゲート体の拘束が解けて煽戸が横開き形態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された煽戸は、煽戸の外枠体にレバーハンドルが備わっている。このレバーハンドルは、煽戸を横開き形態としてゲート体を開放すると、荷箱の後部出口に残る。この状態で荷箱の荷物をダンプ排出すると、荷箱から放出される荷物がレバーハンドルに干渉する場合がある。岩石等の大型の荷物の排出時には煽戸が横開き形態で使用される場合が多く、このように荷物が干渉するとレバーハンドルが損傷する恐れがある。
【0006】
また、下開き形態時のゲート体のロックと横開き形態時の外枠体のロックにレバーハンドルを兼用するため、レバーハンドルを係止するゲート体ロック用のロック部材と外枠体ロック用のロック部材との位置関係が制約される。
【0007】
本発明の目的は、煽戸の下開き構造によるダンプ排出作業の利便性の高さを維持しつつも荷役作業の利便性を向上させ、かつ煽戸のロック機構の保護性と設計の自由度を高めることができるダンプカーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、運転席、前記運転席の後部に連設した車枠、前記車枠に傾動可能に搭載された荷箱、及び前記荷箱の側壁を構成する下開き型の煽戸を有し、前記煽戸が、上部側を支点にして下部側が回動するように前記荷箱に対して回動自在に取り付けた外枠体、及び前記外枠体の開口を塞ぐようにして設けられ、前記荷箱の倒伏時に水平方向に回動するように前記外枠体に対して回動自在に取り付けたゲート体を備えたダンプカーにおいて、前記外枠体に設けた外枠体ブラケットと、前記荷箱に設けた荷箱ブラケットと、前記外枠体ブラケット及び前記荷箱ブラケットを固定する固定ピンと、前記外枠体に設けた固定構造物である第1ロック部材と、前記荷箱に設けた固定構造物である第2ロック部材と、前記ゲート体に設けられ、前記第1ロック部材及び前記第2ロック部材に選択的に係脱可能な可動ハンドルとを備えたダンプカーを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、煽戸の下開き構造によるダンプ排出作業の利便性の高さを維持しつつも荷役作業の利便性を向上させ、かつ煽戸のロック機構の保護性と設計の自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係るダンプカーの側面図
【
図3】本発明の一実施形態に係るダンプカーに備えられた煽戸の後面図
【
図7】本発明の一実施形態に係るダンプカーに備わった外枠体ロック機構の後面図
【
図8】本発明の一実施形態に係るダンプカーに備わった外枠体ロック機構の右面図
【
図9】本発明の一実施形態に係るダンプカーに備えられた煽戸のゲート体を開放した状態を表す図
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に図面を用いて本発明の実施形態を説明する。
【0012】
図1は本発明の一実施形態に係るダンプカーの側面図、
図2は
図1のダンプカーの荷箱の側面図である。以下の説明において、
図1中の左右をダンプカーの前後とする。
【0013】
-ダンプカー-
図1に示したダンプカーは、運転席1とその後部に連設された車枠(シャシ)2を有する車両3、及び車枠2の上部に傾動自在に搭載した荷箱10を備えている。車枠2のフレームは、前後に延びる左右のフレームをクロスメンバで連結して構成されている。車枠2の上部には、サブフレーム4を介して荷箱10が搭載されている。サブフレーム4の後端部に設けたヒンジ5を中心として、車枠2に対して荷箱10が傾動する。
【0014】
荷箱10の下面には、前後に延びる左右の荷箱フレーム11が設けられている。荷箱フレーム11と車枠2のサブフレーム4は、車両3に搭載された油圧ポンプ(不図示)からの圧油により伸縮する油圧シリンダ(不図示)で連携されている。この油圧シリンダは、一端側がホイスト機構(不図示)を介して荷箱フレーム11に回動自在に支持されており、他端側が車枠2のサブフレーム4に回動自在に支持されている。油圧シリンダを伸長させることによってホイスト機構を伸長させると、車枠2に対してヒンジ5を支点として荷箱10が回動し起立姿勢(
図1の二点鎖線)に立ち上がる。その後、油圧シリンダを収縮させてホイスト機構を屈曲させると、車枠2に対しヒンジ5を支点に荷箱10が回動し倒伏姿勢(
図1の実線)に戻る。
【0015】
荷箱10は、床面と前後左右の側壁とからなっており、本実施形態においては前後左右の4つの側壁のうち後壁が煽戸(テールゲート)12を構成し、他の3つの側壁が固定壁を構成している。但し、後壁に代わって左右の側壁が煽戸を構成する場合もあるし、三転ダンプのように左右の側壁及び後壁が煽戸を構成する場合もある。本実施形態においては、後壁を煽戸とするダンプカーを例に挙げて説明するが、上記のように他の側壁を煽戸とするダンプカーにも本発明は適用可能である。
【0016】
-煽戸-
図3は煽戸12の後面図、
図4は
図3中のIV-IV線による矢視断面図、
図5は煽戸12の右側面図、
図6は左側面図である。
図7は外枠体ロック機構(後述)の後面図、
図8はその右面図である。
【0017】
これらの図に示すように、煽戸12は、外枠体(外フレーム)15と、ゲート体16とを備えている。外枠体15は、その下辺部を構成する横フレーム15aと、左右の側辺部を構成する縦フレーム15b,15cとで横長のU字型に構成されており、上辺部を構成する要素はなく上部は開口している。ゲート体16は、外枠体15の開口(縦フレーム15b,15cの間の空間)を塞ぐようにして設けられる。
【0018】
外枠体15は、左右の縦フレーム15b,15cの上端部に取り付けた2つのヒンジ17,18を介して荷箱10の他の部分(本例では左右の側壁19,20の上面後端部)に回動自在に取り付けられており、上部側(ヒンジ17,18のピン)を支点にして回動し、荷箱が傾動するに従って荷箱10に相対して下部側を開放するようになっている(
図1)。
【0019】
ゲート体16は、荷箱10の倒伏時に水平方向に回動するように外枠体15の左側の縦フレーム15b(右側の縦フレーム15cでも良い)に対してヒンジ25,26を介して回動自在に取り付けられている。各ヒンジ25,26は、それぞれ上下のボス27と、各ボスに1枚ずつ連結された2枚のプレート28とからなる。
【0020】
各ヒンジ25,26の一方のプレート28は、例えば外枠体15の左側から見て(
図6)、ボス27を外枠体15の後面から後方に突出させた姿勢で外枠体15の左側面(縦フレーム15bの左側面)に固着されている。各ヒンジ25,26の他方のプレート28は、例えば外枠体15の後側から見て(
図3)、ボス27を外枠体15の左側端面(縦フレーム15bの左側面)から左方に突出させた姿勢でゲート体16の後面に固着されている。このようにして、外枠体15の縦フレーム15bの左側面とゲート体16の後面左端部には、それぞれヒンジ25,26を構成するプレート28が上下に等間隔で2つずつ設けられている。そして、外枠体15に固着した一方のプレート28のボス27の上に、ゲート体16に固着した他方のプレート28のボス27を載せた状態で、これら4つのボス27に1本の軸29を貫通させることで、軸29を介して4つのプレート28が連結している。
【0021】
なお、
図3や
図6では上下のヒンジ25,26の間に間隙があって軸29の中央部が露出しているが、ヒンジ25,26が、上下に隙間なく互いに当接し軸29が露出しない構成としても良い。また、本実施形態においては2つのヒンジ25,26(計4つのプレート28)を設けた場合を例に挙げて説明したが、ヒンジの数は変更可能である。
【0022】
-自動解除型ロック機構-
また、荷箱10は、倒伏時に煽戸12の下開き動作をロックし、傾動時には自動的に煽戸12のロックを解除して煽戸12の下開き動作を許容する自動解除型ロック機構30を備えている。この自動解除型ロック機構30は、倒伏時には、外枠体15の横フレーム15aの下部に設けられたブラケット31にフック32が掛かった状態で外枠体15を拘束し、荷箱10の傾動時には、荷箱10の傾動にリンクして動作する機構によりフック32がブラケット31から外れ、外枠体15の下開きを許容する構成である。傾動状態から倒伏状態に荷箱が戻る際には、自動的にブラケット31にフック32が掛かり、外枠体15を荷箱10に対して拘束した状態に戻る。自動解除型ロック機構30のより具体的な構成は、例えば特公昭58-49410号公報、特公昭59-25694号公報、特公昭60-21095号公報等に記載されている。
【0023】
-外枠体ロック機構-
また、この自動解除型ロック機構30に加え、ダンプカーには、ゲート体16を開いた状態(煽戸12を横開きにした状態)で荷箱10を起立させた際に外枠体15が下開きしないようにする手動操作式の外枠体ロック機構40が備えられている。外枠体ロック機構40は、外枠体15に設けた外枠体ブラケット41と、荷箱10に設けた荷箱ブラケット42と、外枠体ブラケット41及び荷箱ブラケット42を固定する固定ピン43とを備えている。
【0024】
本実施形態においては、外枠体ブラケット41が横フレーム15aの下面から下方に突出した構成を例示している。荷箱ブラケット42は、外枠体ブラケット41に位置が対応するように、荷箱10に一対設けられている。外枠体ブラケット41及び荷箱ブラケット42にそれぞれ設けられたピン孔に1本の固定ピン43を左右方向に挿し込むことで、固定ピン43を介して外枠体ブラケット41及び荷箱ブラケット42が互いに係止され、外枠体15が荷箱10に拘束された状態となる。
【0025】
また、本実施形態においては、外枠体15の左右方向において外枠体15の中央よりもヒンジ25,26から遠い側(右寄りの位置)に外枠体ブラケット41を一対設けた構成を例示している。外枠体ブラケット41、荷箱ブラケット42、及び後述する第1ロック部材52の位置(左右方向の位置)は対応している。但し、外枠体ブラケット41は、外枠体15の任意の位置に設置することができ、また複数対設けることもできる。複数対の外枠体ブラケット41を設ける場合、これに応じて荷箱ブラケット42や固定ピン43も必要に応じて複数セット用意される。
【0026】
また、固定ピン43は、チェーン44を介して外枠体15に連結されており、外枠体ブラケット41及び荷箱ブラケット42から抜き取った固定ピン43の紛失に対策されている。そして、外枠体ブラケット41及び荷箱ブラケット42から抜き取った固定ピン43は、外枠体15に備えられた保持部材に装着することができる。本実施形態においては、外枠体ブラケット41における荷箱ブラケット42と左右から見て重ならない位置にピン保持孔45(
図5)が設けられており、ピン保持孔45に挿し込んでおくことで固定ピン43を保持できるように構成されている。つまり、本実施形態においては、外枠体ブラケット41が固定ピン43の保持部材を兼ねる。
【0027】
このように固定ピン43は、チェーン44を介して外枠体15に連結され、かつ荷箱ブラケット42から抜き取りピン保持孔45に挿し込んで外枠体15に装着することができる。煽戸12が下開きする際には、固定ピン43は煽戸12に伴って移動し、荷物の排出経路から退避する。
【0028】
また、固定ピン43は、その先端部43aがピン(不図示)を介して固定ピン43の本体部に対して屈曲可能に構成されており、これが抜け止め機構を構成する。
図7に示すように、固定ピン43を外枠体ブラケット41及び荷箱ブラケット42に挿し込んで先端部43aを折り曲げることで、外枠体ブラケット41及び荷箱ブラケット42からの固定ピン43の脱落が抑制される。この抜け止め機構は、固定ピン43をピン保持孔45に挿し込んだ際にも同様に機能することは言うまでもない。
【0029】
-ゲート体ロック機構-
ゲート体16は、ゲート体ロック機構50により外枠体15に対して固定される。ゲート体ロック機構50は、外枠体15に設けた固定構造物である第1ロック部材51,52と、荷箱10に設けた固定構造物である第2ロック部材53(
図1及び
図2)と、第1ロック部材51,52及び第2ロック部材53に選択的に係脱可能な可動ハンドル55とを備えている。
【0030】
本実施形態において、第1ロック部材51は、外枠体15の右側の縦フレーム15cの後面(後方を向く面)に設けられている。第1ロック部材52は、外枠体15の横フレーム15aの後面(同)に設けられている。第2ロック部材53は、荷箱10の左側(荷箱10のヒンジ25,26が設けられた側)の側壁19の外壁面に設けられている。上記ヒンジ25,26の軸29から第2ロック部材53までの距離は、軸29から第1ロック部材51までの距離に対応している。また、第1ロック部材51と第2ロック部材53は、高さ方向の位置も対応している。第1ロック部材51,52及び第2ロック部材53は、ブロック状又はブラケット状の部材であり、それぞれ上向きに開口したピン孔(不図示)を有している。これらピン孔は、第1ロック部材51,52及び第2ロック部材53を貫通していてもしていなくても良い。
【0031】
可動ハンドル55は、ゲート体16の後面に上下に所定間隔をあけて並設した支持部材54に保持され、ゲート体16に対して上下にスライド可能でかつ水平方向に回動可能に構成されている。本実施形態においては、支持部材54は外枠体15の左右方向において外枠体15の中央よりもヒンジ25,26から遠い側に設けられている。外枠体ブラケット41、荷箱ブラケット42、第1ロック部材52、及び支持部材54は上下に並んでおり、外枠体ブラケット41、荷箱ブラケット42、第1ロック部材52、及び支持部材54の左右方向の位置は対応している。
【0032】
可動ハンドル55は、第1係止部55a、第2係止部55b、及びハンドル部55cによりJ字型に形成されている。第1係止部55aは、第1ロック部材51又は第2ロック部材53のピン孔に選択的に挿入することにより、第1ロック部材51及び第2ロック部材53のいずれかに係止可能である。第2係止部55bは、第1ロック部材52のピン孔に挿入することにより、第1ロック部材52に係止可能である。ハンドル部55cは、第1係止部55a及び第2係止部55bを連結する。ハンドル部55cは水平に延び、第1係止部55a及び第2係止部55bはハンドル部55cから下方に伸びる。第1係止部55aに対して、第2係止部55bは上下に長い。第2係止部55bは上記支持部材54に支持され、可動ハンドル55は、第2係止部55bを軸として、軸方向(上下方向)にスライド可能であると共に水平方向に回動可能である。
【0033】
支持部材54に挿入された可動ハンドル55の第2係止部55bには、上下の支持部材54の間に位置するようにストッパ部55dが設けられている。そして、第2係止部55bには、このストッパ部55dと上側の支持部材54との間に介在するようにスプリング57が設けられており、スプリング57によって可動ハンドル55が第1ロック部材51,52及び第2ロック部材53に向かって、つまり下向きに付勢されている。
【0034】
スプリング57に抗して可動ハンドル55を上に持ち上げると、第1ロック部材51,52から第1係止部55a及び第2係止部55bが抜け、外枠体15に対するゲート体16の拘束が解かれる。可動ハンドル55は、ゲート体16の把手を兼ねており、第1ロック部材51,52から抜くとそのまま把手として利用できる。ゲート体16の拘束が解かれた状態で、第1ロック部材51,52から抜かれた可動ハンドル55をそのまま後方に引くことにより、軸29を中心にゲート体16を開放し煽戸12を横開きすることができる。また、開放したゲート体16を270度前方に回動させ、可動ハンドル55の第1係止部55aを第2ロック部材53に挿し込むことにより、ゲート体16を開放状態で固定することができる。
【0035】
なお、下側の支持部材54からの可動ハンドル55(第2係止部55b)の下方への突出量は、支持部材54の上下間隔、ストッパ部55dの厚み、スプリング57の縮減時の厚みにより規定される可動ハンドル55の最大ストロークよりも長く確保されており、可動ハンドル55を上に持ち上げても第2係止部55bが支持部材54から抜けることがない構造になっている。
【0036】
-煽戸の操作-
例えば可動ハンドル55が
図3に示した状態(ロック位置とする)にあるとき、スプリング57の付勢力に抗して可動ハンドル55を持ち上げると、まず可動ハンドル55の第1係止部55a及び第2係止部55bが第1ロック部材51,52から引き抜かれ、ゲート体16のロックが解除される。そのまま可動ハンドル55を後方に引いてゲート体16を開放すれば、荷箱10の後部は障害物のない広く開放された状態となるので、荷箱10に対する荷物の積み卸し作業も効率的である。
【0037】
また、開放したゲート体16は、前方まで回動させて可動ハンドル55を第2ロック部材53に係止することで固定できる。すると、
図9に示したように、可動ハンドル55がゲート体16に同伴して荷箱10の左側面に移動するため、開放された荷箱10の後部開口からロック機構の可動部品が退避した状態となる。この状態で荷箱10を傾動させると、荷箱10の傾動に伴って自動解除型ロック機構30のロックが解除されるが、外枠体ロック機構40で外枠体15が荷箱10に固定されているので、開放されたゲート体16のスペース(外枠体15の縦フレーム15b,15cの間の空間)から荷箱10の荷物をダンプ排出することができる。この場合、ゲート体16が荷箱10の後方から退避しているので、障害物がなく、ゲート体16の高さよりも大きな荷物や長尺物でも容易にダンプ排出することができる。また、可動部品である可動ハンドル55が荷箱10の排出経路から退避しているので、ダンプ排出される荷物と可動ハンドル55との干渉も抑制される。
【0038】
一方、以上と逆の手順で荷箱10を倒伏状態に戻し可動ハンドル55をロック位置に戻すと、可動ハンドル55によりゲート体16が外枠体15に対して2箇所で強固に固定された状態となる。通常時は、この状態としておき、煽戸の下開き動作を行う際には、固定ピン43を荷箱ブラケット42から抜き取って外枠体ロック機構40による外枠体15の拘束を解き、ピン保持孔45に挿し込む。これにより、外枠体15は、自動解除型ロック装置30によってのみロックされた状態になる。
【0039】
外枠体ロック機構40による外枠体15の拘束を解いた状態で荷箱10を傾動させれば、従来の下開き型の煽戸を有する荷箱と同様にして荷箱10の荷物をダンプ排出することができる。このダンプ排出作業が終了したら、荷箱10を倒伏させて再び固定ピン43を外枠体ブラケット41及び荷箱ブラケット42に挿し込む。
【0040】
-効果-
(1)本実施形態によれば、外枠体ロック機構40及びゲート体ロック機構50を有するので、外枠体ロック機構40のロックを解除することによって煽戸12を下開き形態で使用してダンプ排出することができ、ゲート体ロック機構50のロックを解除することによって煽戸12を横開き形態で使用してダンプ排出することができる。また、ゲート体ロック機構50のロックを解除してゲート体16を開放することで、荷箱10の後方を広く開放し障害物のない状態とすることができる。これにより、荷箱10に対する荷物の積み降ろしも効率的に行うことができる。
【0041】
このとき、本実施形態によれば、煽戸12を横開き形態で使用する際、可動ハンドル55がゲート体16に伴って荷箱10の側方に移動し、荷箱10の排出経路からゲート体ロック機構50の可動部品である可動ハンドル55が退避した状態となる。従って、荷箱10から排出される荷物が可動ハンドル55に干渉することを抑制することができる。また、外枠体ロック機構40とゲート体ロック機構50が互いに独立しているので、ゲート体ロック機構50による外枠体ロック機構40のレイアウトの制約も軽減することができる。
【0042】
以上、本実施形態によれば、煽戸12の下開き構造によるダンプ排出作業の利便性の高さを維持しつつも荷役作業の利便性を向上させ、かつ煽戸12のロック機構の保護性と設計の自由度を高めることができる。
【0043】
(2)可動ハンドル55は、第1係止部55aが第1ロック部材51に固定されるのみでなく、可動ハンドル55の回転軸の役割を果たす第2係止部55bが第1ロック部材52に固定される。簡易な構成ながら、2箇所のロックでゲート体16を強固に固定することができ、なおかつ2箇所のロックを同時に操作することができるメリットもある。
【0044】
なお、本実施形態において、可動ハンドル55は、第1係止部55aのみならず第2係止部55bをゲート体16の拘束に用いる構成とした。しかしながら、操作性を確保する上ではこの構成に限定する必要は必ずしもない。このような二重のロック構造にしなくても、例えば第1係止部55aの強度が十分であれば、第2係止部55bと第1ロック部材52との係止機構を省略し、単に第1係止部55aを第1ロック部材51に係止してゲート体16を固定する構成とすることも考えられる。
【0045】
(3)外枠体ロック機構40のレイアウトの自由度が高いため、荷箱10の仕様等に応じて、ゲート体ロック機構50とは離れた位置に外枠体ロック機構40を配置することもできる。その一方で、ゲート体ロック機構50の位置に応じて外枠体ロック機構40を配置することも当然可能である。
図3に示したように、外枠体ブラケット41、荷箱ブラケット42、及び第1ロック部材52の左右方向の位置を対応させることで、作業者は、可動ハンドル55の操作と固定ピン43の操作とを同じ立ち位置で行うことができ、高い操作性を確保することができる。
【0046】
(4)固定ピン43は、先端部43aが屈曲可能な抜け止め機構を備えているので、固定ピン43の抜け止めをすることができることはもちろんのこと、固定ピン43の抜け止めのために更なる部品を必要とすることもない。従って、固定ピン43の抜け止め機構を備えるために部品点数が増加することを抑制することができる。
【0047】
また、固定ピン43の抜け止め機構は、外枠体ブラケット41及び荷箱ブラケット42からの固定ピン43の抜け止めのみならず、ピン保持孔45からの固定ピン43の抜け止めにも適用できる。従って、煽戸12の下開き構造を利用してダンプ排出する際、固定ピン43がピン保持孔45から脱落することを抑制し、荷箱10から排出される荷物に固定ピン43が干渉することを抑制することもできる。
【0048】
(5)固定ピン43は、チェーン44を介して外枠体15に連結され、かつピン保持孔45で保持することができる。従って、外枠体ブラケット41及び荷箱ブラケット42から抜き取った固定ピン43の紛失を抑制することができる。また、外枠体ブラケット41及び荷箱ブラケット42から抜き取った固定ピン43をピン保持孔45で保持することで、固定ピン43は煽戸12が下開きする際には煽戸12に伴って移動する。これにより、荷箱10から排出される荷物に固定ピン43が干渉することを回避することができる。
【0049】
(6)可動ハンドル55がゲート体16の把手を兼ねるので、ゲート体16を開放操作するためのハンドルをゲート体16に別途設ける必要がない。これによっても部品点数の増加を抑えることができる。
【0050】
-変形例-
以上においては、荷箱10の後壁体を煽戸にした場合を例に挙げて説明したが、側壁19,20を煽戸にしたダンプカーやいわゆる三転ダンプにも本発明は適用可能である。側壁19や側壁20を煽戸にする場合、横開き型のゲート体は、全開状態で保持する保持部材を荷箱に設ける上では、側壁の全長(車体の前後方向における長さ寸法)の半分、或いは後壁体の幅(車体の左右方向における長さ寸法)以内の寸法に収めることが好ましい。
【符号の説明】
【0051】
1…運転席、2…車枠、10…荷箱、12…煽戸、15…外枠体、16…ゲート体、41…外枠体ブラケット、42…荷箱ブラケット、43…固定ピン、43a…先端部(抜け止め機構)、44…チェーン、45…ピン保持孔(固定ピンの保持部材)、51,52…第1ロック部材、53…第2ロック部材、55…可動ハンドル