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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093611
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】レーザ加工装置及びレーザ加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/097 20060101AFI20240702BHJP
   H01S 3/00 20060101ALI20240702BHJP
   H01S 3/10 20060101ALI20240702BHJP
   H01S 3/13 20060101ALI20240702BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20240702BHJP
   B23K 26/0622 20140101ALI20240702BHJP
【FI】
H01S3/097 A
H01S3/00 G
H01S3/00 B
H01S3/10 Z
H01S3/13
B23K26/00 N
B23K26/0622
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210119
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】西川 恭生
【テーマコード(参考)】
4E168
5F071
5F172
【Fターム(参考)】
4E168AA00
4E168CA06
4E168CA07
4E168CA13
4E168CB04
4E168CB23
4E168DA02
4E168DA23
4E168DA24
4E168DA52
4E168EA15
4E168KA04
5F071AA05
5F071GG02
5F071HH07
5F071JJ05
5F172AD05
5F172NN26
5F172NP12
5F172XX02
5F172ZA02
5F172ZA04
5F172ZZ01
(57)【要約】
【課題】発振直後のレーザ出力の、レーザ発振部の温度に依存するオーバーシュートを抑制することが可能となる技術を提供する。
【解決手段】レーザ加工装置1において、CPU41は、加工対象物7を加工する際には、動作開始当初の周波数を定常印字中の周波数より高くするように調整する周波数調整処理と、温度センサ120により取得された温度情報が示す温度の高さに応じて制御信号のデューティ比を大きくするように調整するデューティ比調整処理と、を実行する。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光をワークに照射して前記ワークを加工するレーザ加工装置であって、
入力される制御信号に基づいて前記レーザ光を発振するレーザ発振部と、
前記レーザ発振部の温度に係る情報である温度情報を取得する温度取得部と、
前記制御信号を出力する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記ワークを加工する際には、動作開始当初の前記制御信号の周波数を定常動作中の周波数より高くするように調整する周波数調整処理と、
前記温度取得部により取得された前記温度情報が示す温度の高さに応じて前記制御信号のデューティ比を大きくするように調整するデューティ比調整処理と、
を実行する、
ことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
前記周波数調整処理において、前記動作開始当初の前記制御信号の周波数は、前記定常動作中の周波数の2~10倍である、
ことを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記周波数調整処理において、前記動作開始当初は、少なくとも前記動作開始から700~800μs経過するまでである、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記デューティ比調整処理において、常温時の前記制御信号のパルス幅は、前記レーザS14発振部のレーザ出力のオーバーシュート時間の1/10より短い、
ことを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記デューティ比調整処理において、前記制御信号のデューティ比は、10~80%の範囲で調整する、
ことを特徴とする請求項4に記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記デューティ比調整処理において、前記制御信号のデューティ比は、1.1~2.5倍の範囲で調整する、
ことを特徴とする請求項5に記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
入力される制御信号に基づいてレーザ光を発振するレーザ発振部と、前記レーザ発振部の温度に係る情報である温度情報を取得する温度取得部と、前記制御信号を出力する制御部と、を備え、前記レーザ光をワークに照射して前記ワークを加工するレーザ加工装置を用いたレーザ加工方法であって、前記制御部に対して、
前記ワークを加工する際には、動作開始当初の前記制御信号の周波数を定常動作中の周波数より高くするように調整する周波数調整処理と、
前記温度取得部により取得された前記温度情報が示す温度の高さに応じて前記制御信号のデューティ比を大きくするように調整するデューティ比調整処理と、
を実行させる、
ことを特徴とするレーザ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、対象物にレーザ加工する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、レーザ発振器の制御信号を高周波でオン/オフさせることで、発振直後のレーザ出力のピーク強度を抑制して、ピーク強度のばらつきを小さくするようにしたレーザ加工方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-103625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図6は、発振直後のレーザ出力の、レーザ発振器の温度に依存するオーバーシュートを説明するための図である。そして、図6(c)は、レーザ発振器に供給する制御信号を示し、図6(a)は、レーザ発振器の温度が低温時において、供給された制御信号に応じてレーザ発振器が出力したレーザパワーの推移を示し、図6(b)は、レーザ発振器の温度が高温時において、供給された制御信号に応じてレーザ発振器が出力したレーザパワーの推移を示している。図6(a)と図6(b)とを見比べれば分かるように、目標となるレーザパワーTPに対して、低温時のオーバーシュートOS1は、高温時のオーバーシュートOS2より大きくなっている。つまり、発振直後のレーザ出力のオーバーシュートは、レーザ発振器の温度に依存する。したがって、発振直後のレーザ出力のオーバーシュートを抑制するためには、レーザ発振器に供給する制御信号を、レーザ発振器の温度に応じて制御する必要がある。
【0005】
しかし、特許文献1に記載のレーザ加工方法では、レーザ発振器の温度特性については考慮していないので、発振直後のレーザ出力の、レーザ発振器の温度に依存するオーバーシュートを抑制することはできない。
【0006】
本願は、発振直後のレーザ出力の、レーザ発振部の温度に依存するオーバーシュートを抑制することが可能となる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本願のレーザ加工装置は、レーザ光をワークに照射してワークを加工するレーザ加工装置であって、入力される制御信号に基づいてレーザ光を発振するレーザ発振部と、レーザ発振部の温度に係る情報である温度情報を取得する温度取得部と、制御信号を出力する制御部と、を備え、制御部は、ワークを加工する際には、動作開始当初の制御信号の周波数を定常動作中の周波数より高くするように調整する周波数調整処理と、温度取得部により取得された温度情報が示す温度の高さに応じて制御信号のデューティ比を大きくするように調整するデューティ比調整処理と、を実行する、ことを特徴とする。
【0008】
また、上記目的を達成するため、本願のレーザ加工方法は、入力される制御信号に基づいてレーザ光を発振するレーザ発振部と、レーザ発振部の温度に係る情報である温度情報を取得する温度取得部と、制御信号を出力する制御部と、を備え、レーザ光をワークに照射してワークを加工するレーザ加工装置を用いたレーザ加工方法であって、制御部に対し
て、ワークを加工する際には、動作開始当初の制御信号の周波数を定常動作中の周波数より高くするように調整する周波数調整処理と、温度取得部により取得された温度情報が示す温度の高さに応じて制御信号のデューティ比を大きくするように調整するデューティ比調整処理と、を実行させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本願によれば、発振直後のレーザ出力の、レーザ発振部の温度に依存するオーバーシュートを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本願の一実施形態に係るレーザ加工装置のレーザ加工部の概略構成を示す図である。
図2】本願の一実施形態に係るレーザ加工装置の制御構成を示すブロック図である。
図3図2のレーザ加工装置に含まれるコントローラ、特にCPUが実行する制御信号生成処理の手順を示すフローチャートである。
図4】動作開始当初のレーザパワーの推移((a))、動作開始当初の制御信号の推移((b))及び定常印字中の制御信号の推移((c))の各一例を示す図である。
図5】レーザ発振器の温度とレーザパワーとの関係((a))及びレーザ発振器の温度と制御信号のデューティ比との関係((b))の各一例を示す図である。
図6】発振直後のレーザ出力の、レーザ発振器の温度に依存するオーバーシュートを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本願の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
図1は、本願の一実施形態に係るレーザ加工装置1のレーザ加工部3の概略構成を示し、図2は、レーザ加工装置1の制御構成を示している。図2に示すように、レーザ加工装置1は、印字情報作成部2及びレーザ加工部3で構成されている。印字情報作成部2は、パーソナルコンピュータ等で構成されている。
【0013】
レーザ加工部3は、図1に示すように、加工レーザ光Rを加工対象物7の加工面8上で2次元走査してマーキング(印字)加工を行うものである。レーザ加工部3は、図2に示すように、レーザコントローラ6を備えている。
【0014】
レーザコントローラ6は、コンピュータで構成され、印字情報作成部2と双方向通信可能に接続されている。レーザコントローラ6は、印字情報作成部2から送信された印字情報、制御パラメータ、各種指示情報等に基づいてレーザ加工部3を駆動制御する。
【0015】
レーザ加工部3の概略構成について、図1を参照して説明する。レーザ加工部3は、レーザ発振ユニット12、ガイド光部15、ダイクロイックミラー101、光学系70、カメラ103、ガルバノスキャナ18、及びfθレンズ19等を備えており、不図示の略直方体形状の筐体カバーで覆われている。
【0016】
レーザ発振ユニット12は、レーザ発振器21等で構成されている。レーザ発振器21は、CO2レーザ、YAGレーザ等で構成されており、加工レーザ光Rを出射する。なお、加工レーザ光Rの光径は、不図示のビームエキスパンダで調整(例えば、拡大)される。
【0017】
ガイド光部15は、可視半導体レーザ28(図2参照)等で構成されている。可視半導
体レーザ28は、可視可干渉光である可視レーザ光Q、例えば、赤色レーザ光を出射する。可視レーザ光Qは、不図示のレンズ群で平行光にされ、さらに、2次元走査されることによって、例えば、加工レーザ光Rでマーキング(印字)加工すべき印字パターンの像、その像を取り囲んだ矩形の像等を、加工対象物7の加工面8上に軌跡(時間残像)で映し出すものである。つまり、可視レーザ光Qには、マーキング(印字)加工能力がない。
【0018】
可視レーザ光Qの波長は、加工レーザ光Rの波長とは異なる。本実施形態では、例えば、加工レーザ光Rの波長は、1064nmであり、可視レーザ光Qの波長は、650nmである。
【0019】
ダイクロイックミラー101では、入射された加工レーザ光Rのほぼ全部が透過する。また、ダイクロイックミラー101では、加工レーザ光Rが透過する略中央位置にて、可視レーザ光Qが45度の入射角で入射され、45度の反射角で加工レーザ光Rの光路上に反射される。ダイクロイックミラー101の反射率は、波長依存性を持っている。具体的には、ダイクロイックミラー101は、誘電体層の多層膜構造の表面処理がなされており、可視レーザ光Qの波長に対して高い反射率を有し、それ以外の波長の光をほとんど(99%)透過するように構成されている。
【0020】
なお、図1の一点鎖線は、加工レーザ光Rと可視レーザ光Qの光軸10を示している。また、光軸10の方向は、加工レーザ光Rと可視レーザ光Qの経路方向を示している。
【0021】
光学系70は、第1レンズ72、第2レンズ74、及び移動機構76を備えている。光学系70では、ダイクロイックミラー101を経た加工レーザ光Rと可視レーザ光Qが、第1レンズ72に入射し通過する。その際、第1レンズ72によって、加工レーザ光Rと可視レーザ光Qの各光径が縮小される。また、第1レンズ72を通過した加工レーザ光Rと可視レーザ光Qは、第2レンズ74に入射し通過する。その際、第2レンズ74によって、加工レーザ光Rと可視レーザ光Qが平行光にされる。移動機構76は、光学系モータ80と、光学系モータ80の回転運動を直線運動に変換するラック・アンド・ピニオン(不図示)等を備えており、光学系モータ80の回転制御によって、第2レンズ74を加工レーザ光Rと可視レーザ光Qの経路方向に移動させる。
【0022】
なお、移動機構76は、第2レンズ74に代えて第1レンズ72を移動させる構成であってもよいし、第1レンズ72と第2レンズ74との間の距離が変わるように第1レンズ72と第2レンズ74の双方を移動させる構成であってもよい。
【0023】
ガルバノスキャナ18は、光学系70を経た加工レーザ光Rと可視レーザ光Qとを2次元走査するものである。ガルバノスキャナ18では、ガルバノX軸モータ31(図2参照)とガルバノY軸モータ32(図2参照)とが、それぞれのモータ軸が互いに直交するように取り付けられ、各モータ軸の先端部に取り付けられた走査ミラー18X、18Yが内側で互いに対向している。そして、各モータ31、32の回転制御で、各走査ミラー18X、18Yを回転させることによって、加工レーザ光Rと可視レーザ光Qとを2次元走査する。この2次元走査方向は、X方向とY方向である。
【0024】
fθレンズ19は、ガルバノスキャナ18によって2次元走査された加工レーザ光Rと可視レーザ光Qとを加工対象物7の加工面8上に集光するものである。したがって、加工レーザ光Rと可視レーザ光Qは、各モータ31、32の回転制御によって、加工対象物7の加工面8上でX方向とY方向に2次元走査される。
【0025】
加工レーザ光Rと可視レーザ光Qとでは、波長が異なる。そのため、光学系70における第1レンズ72と第2レンズ74との間の距離が一定の場合、加工レーザ光Rと可視レ
ーザ光Qが集光する位置(以下、「焦点位置F」という。)は、上下方向で異なってしまう。そこで、加工レーザ光Rと可視レーザ光Qの焦点位置Fは、光学系70における第1レンズ72と第2レンズ74との間の距離が調整されることによって、加工対象物7の加工面8上に合わせられる。
【0026】
カメラ103は、加工対象物7の加工面8に向けられた状態で、fθレンズ19付近に設けられている。これにより、カメラ103は、例えば、加工対象物7の加工面8上に照射されるガイド光Qを撮像して、後述する液晶ディスプレイ(LCD)56に表示し、これから行う加工画像と加工対象物7との位置合わせが適切であるかをユーザが確認できるようにするものであって良い。
【0027】
次に、レーザ加工装置1を構成する印字情報作成部2とレーザ加工部3の回路構成について図2に基づいて説明する。まず、レーザ加工部3の回路構成について説明する。
【0028】
図2に示すように、レーザ加工部3は、レーザコントローラ6、ガルバノコントローラ35、ガルバノドライバ36、レーザドライバ37、半導体レーザドライバ38、光学系ドライバ78、カメラ103、及び温度センサ120等から構成されている。レーザコントローラ6は、レーザ加工部3の全体を制御する。レーザコントローラ6には、ガルバノコントローラ35、レーザドライバ37、半導体レーザドライバ38、及び光学系ドライバ78等が電気的に接続されている。また、レーザコントローラ6及びカメラ103には、外部の印字情報作成部2が双方向通信可能に接続されている。レーザコントローラ6は、印字情報作成部2から送信された各情報(例えば、印字情報、レーザ加工部3に対する制御パラメータ、ユーザからの各種指示情報等)を受信可能に構成されている。カメラ103は、印字情報作成部2から送信された各情報(例えば、撮像指示情報等)を受信可能に構成され、また、撮像した画像を印字情報作成部2に送信可能に構成されている。
【0029】
レーザコントローラ6は、CPU41、RAM42、及びROM43等を備えている。CPU41は、レーザ加工部3の全体の制御を行う演算装置及び制御装置である。CPU41、RAM42、及びROM43は、不図示のバスにより相互に接続されて、相互にデータのやり取りが行われる。
【0030】
RAM42は、CPU41により演算された各種の演算結果や印字パターンの(XY座標)データ等を一時的に記憶させておくためのものである。
【0031】
ROM43は、各種のプログラムを記憶させておくものであり、例えば、印字情報作成部2から送信された印字情報に基づいて印字パターンのXY座標データを算出してRAM42に記憶するプログラムや、可視レーザ光Qによる正方形状の軌跡のXY座標データを算出してRAM42に記憶するプログラム等が記憶されている。なお、各種プログラムには、上述したプログラムに加えて、例えば、各種のディレイ値、印字情報作成部2から入力された印字情報に対応する印字パターンの太さ、深さ及び本数、レーザ発振器21のレーザ出力、加工レーザ光Rのレーザパルス幅、ガルバノスキャナ18による加工レーザ光Rを走査する速度、及びガルバノスキャナ18による可視レーザ光Qを走査する速度等を示す各種制御パラメータをRAM42に記憶するプログラム等がある。さらに、ROM43には、フォントの種類別に、直線と楕円弧とで構成された各文字のフォントの始点、終点、焦点、曲率等のデータが記憶されている。
【0032】
CPU41は、ROM43に記憶されている各種のプログラムに基づいて各種の演算及び制御を行う。
【0033】
CPU41は、印字情報作成部2から入力された印字情報に基づいて算出した印字パタ
ーンのXY座標データ、可視レーザ光Qによる正方形状の軌跡のXY座標データ、ガルバノスキャナ18による可視レーザ光Qを走査する速度、及びガルバノスキャナ18による加工レーザ光Rを走査する速度等を示すガルバノ走査速度情報等を、ガルバノコントローラ35に出力する。また、CPU41は、印字情報作成部2から入力された印字情報に基づいて設定したレーザ発振器21のレーザ出力、及び加工レーザ光Rのレーザパルス幅等を示すレーザ駆動情報を、レーザドライバ37に出力する。
【0034】
CPU41は、可視半導体レーザ28の点灯開始を指示するオン信号又は消灯を指示するオフ信号を半導体レーザドライバ38に出力する。
【0035】
ガルバノコントローラ35は、レーザコントローラ6から入力された各情報(例えば、印字パターンのXY座標データ、可視レーザ光Qによる正方形状の軌跡のXY座標データ、ガルバノ走査速度情報等)に基づいて、ガルバノX軸モータ31とガルバノY軸モータ32の駆動角度、回転速度等を算出して、駆動角度及び回転速度を示すモータ駆動情報をガルバノドライバ36に出力する。ガルバノドライバ36は、ガルバノコントローラ35から入力されたモータ駆動情報に基づいて、ガルバノX軸モータ31とガルバノY軸モータ32を駆動制御して、加工レーザ光Rと可視レーザ光Qを2次元走査する。
【0036】
レーザドライバ37は、レーザコントローラ6から入力されたレーザ発振器21のレーザ出力、及び加工レーザ光Rのレーザパルス幅等を示すレーザ駆動情報等に基づいて、レーザ発振器21を駆動させる。半導体レーザドライバ38は、レーザコントローラ6から入力されたオン信号又はオフ信号に基づいて、可視半導体レーザ28を点灯駆動又は、消灯させる。
【0037】
光学系ドライバ78は、レーザコントローラ6から入力された情報(例えば、後述する指令値等)に基づいて、光学系モータ80を駆動制御して、第2レンズ74を移動させる。
【0038】
また、温度センサ120は、レーザ発振器21の温度を計測する。温度センサ120も、印字情報作成部2と電気的に接続されており、印字情報作成部2は、温度センサ120によりレーザ発振器21の温度を知ることができる。
【0039】
次に、印字情報作成部2の回路構成について説明する。印字情報作成部2は、制御部51、入力操作部55、液晶ディスプレイ(LCD)56、及びCD-ROMドライブ58等を備えている。制御部51には、不図示の入出力インターフェースを介して、入力操作部55、液晶ディスプレイ56、及びCD-ROMドライブ58等が接続されている。
【0040】
入力操作部55は、不図示のマウス及びキーボード等から構成されており、例えば、各種指示情報をユーザが入力する際に使用される。
【0041】
CD-ROMドライブ58は、各種データ、及び各種アプリケーションソフトウェア等をCD-ROM57から読み込むものである。
【0042】
制御部51は、印字情報作成部2の全体を制御するものであって、CPU61、RAM62、ROM63、及びハードディスクドライブ(HDD)66等を備えている。CPU61は、印字情報作成部2の全体の制御を行う演算装置及び制御装置である。CPU61、RAM62、及びROM63は、不図示のバスにより相互に接続されており、相互にデータのやり取りが行われる。さらに、CPU61とHDD66とは、不図示の入出力インターフェースを介して接続されており、相互にデータのやり取りが行われる。
【0043】
RAM62は、CPU61により演算された各種の演算結果等を一時的に記憶させておくためのものである。ROM63は、各種のプログラム等を記憶させておくものである。
【0044】
HDD66には、各種アプリケーションソフトウェアのプログラム、及び各種データファイル等が記憶される。
【0045】
以下、以上のように構成されたレーザ加工装置1が実行する制御処理を、図3図5に基づいて説明する。図3は、コントローラ6、特にCPU41が実行する制御信号情報生成処理の手順を示している。この制御信号情報生成処理は、例えば、レーザ発振ユニット12を作動させるためのレーザイネーブル信号をCPU41が受け付けたときに開始される。以降、各処理の手順の説明において、ステップを「S」と表記する。
【0046】
図3において、まずCPU41は、レーザ発振器21の温度を取得する(S10)。CPU41は、レーザ発振器21の温度を、上記温度センサ120からの出力に基づいて取得する。なお、温度センサ120は、レーザ発振器21の温度を直接計測しているが、これに限らず、レーザ加工装置1の周囲の温度を計測し、計測した温度に基づいてレーザ発振器21の温度を推定するようにしてもよい。さらに、印字情報作成部2から送信された情報にレーザ加工装置1の周囲の温度に関する情報が含まれていれば、CPU41は、この温度に関する情報に基づいてレーザ発振器21の温度を推定するようにしてもよい。この場合、温度センサ120は必要ない。
【0047】
次にCPU41は、カウンタNを“1”に初期化する(S12)。カウンタNは、例えば、上記RAM42に確保されたカウンタ領域(図示せず)をCPU41がカウントアップすることで、カウンタとして機能させるソフトウェアカウンタであり、レーザ発振器21に供給する制御信号のデューティ比を複数段階で変動させるために使用する。
【0048】
次にCPU41は、動作開始当初の制御信号の周波数をレーザドライバ37に出力する(S14)。図4は、レーザドライバ37がレーザ発振器21に供給する制御信号とその制御信号によりPWM制御されてレーザ発振器21から出力されるレーザのレーザパワーを示している。そして、図4(a)は、動作開始当初のレーザパワーの推移を示し、図4(b)は、動作開始当初の制御信号の推移を示し、図4(c)は、定常印字中の制御信号の推移を示している。つまり、図4(a)のレーザパワーは、図4(b)の制御信号を動作開始当初にレーザ発振器21に供給したときに、レーザ発振器21から出力されたレーザパワーを示している。図4の例では、動作開始当初の制御信号の周波数は、定常印字中の制御信号の周波数の5倍としている。したがって、定常印字中の制御信号の周波数が、例えば、20kHzであるとすると、動作開始当初の制御信号の周波数は、100kHzである。なお、実験結果により、動作開始当初の制御信号の周波数は、定常印字中の制御信号の周波数の2倍から10倍の間であることが好ましい。なお、動作開始当初とは、レーザ発振器21の発振直後から後述する所定時間が経過するまでの期間を示す。また、定常印字中とは、レーザ発振器21が発振されてから前記所定時間経過後の動作期間であり、レーザパワーが所望の出力に安定して制御されている。
【0049】
次にCPU41は、上記S10で取得した温度に基づいて、第N段の制御信号のデューティ比を決定する(S16)。今、N=1であるので、CPU41は、図4(b)において時間T1の区間のデューティ比を決定する。図4(b)に示すように、デューティ比の大きさは、時間T1内では同一であり、段階が上がるに従い、つまり、時間T2,T3,T4,T5とレーザ発振器21が動作を開始してからの経過時間が階段状に上がるに従い、大きくなるようになっている。そして、各時間T1~T5における各デューティ比は、図5(b)に示すように、取得した温度(本実施形態では、動作開始前に取得した温度であって、動作開始当初の動作中に取得した温度ではないが、その動作中に取得した温度で
あってもよい)が高くなるに従って大きくなるように変動させている。これは、図5(a)に示すように、レーザ発振器21のレーザパワーは、同じデューティ比の制御信号をレーザ発振器21に供給したとしても、レーザ発振器21の温度が高くなるに従って小さくなるからである。
【0050】
このように、デューティ比は、温度と段階Nに依存しているので、温度と段階Nにデューティ比を対応付け、例えば上記ROM43に、工場設定等により事前に記憶させておけば、S16では、CPU41は、取得した温度とN=1に対応付けられたデューティ比をROM43から読み出すことで、第1段のデューティ比を決定することができる。
【0051】
次にCPU41は、決定した第1段のデューティ比をレーザドライバ37に出力する(S18)。レーザドライバ37は、この時点で、制御信号の周波数と第1段のデューティ比を取得しているので、第1段のデューティ比の制御信号を取得した周波数でレーザ発振器21に供給する。
【0052】
そして、CPU41は、第1段の所定時間、つまり図4(b)における時間T1経過するまで待機し(S20:NO)、時間T1経過すると(S20:YES)、CPU41は、N=kであるか否かを判断する(S24)。kは定常印字に到るまでのステージ数を示し、図4の例では、k=5であるので、N(=1)≠k(=5)となり(S24:NO)、CPU41は、カウンタNを“1”だけインクリメントした(S26)後、処理を上記S16に戻す。
【0053】
S16では、CPU41は、段階を第1段から第2段に変更して、第2段の制御信号のデューティ比を決定する。この場合、CPU41は、取得した温度とN=2に対応付けられたデューティ比をROM43から読み出すことで、第2段のデューティ比を決定する。続くS18では、CPU41は、決定した第2段のデューティ比をレーザドライバ37に出力する。レーザドライバ37は、第2段のデューティ比の制御信号を取得した周波数でレーザ発振器21に供給する。そして、CPU41は、第2段の所定時間、つまり図4(b)における時間T2経過するまで待機し(S20:NO)、時間T2経過すると(S20:YES)、CPU41は、N=kであるか否かを判断する(S24)。図4の例では、k=5であるので、N(=2)≠k(=5)となり(S24:NO)、CPU41は、カウンタNを“1”だけインクリメントした(S26)後、処理を上記S16に戻す。
【0054】
CPU41は、以上の処理をN=5まで繰り返すと、S24の判断で、N(=5)=k(=5)となり(S24:YES)、CPU41は、定常印字の周波数とデューティ比をレーザドライバ37に出力した(S28)後、制御信号情報生成処理を終了する。ここで、定常印字の周波数は、上述のように、例えば100kHzであり、デューティ比は、図4(c)に示すように、例えば50%である。
【0055】
時間T1から時間T5までの時間T1-T5は、オーバーシュートが始まってから終わるまでの時間に余裕時間を加えた時間であることが好ましい。オーバーシュートが終わったにも拘わらず、動作開始当初の周波数とデューティ比の制御信号をレーザ発振器21に供給し続けていると、定常印字にて所望のパワーよりも低いパワーで加工を行ってしまい、加工不良が発生する虞が生ずるからである。図6(a)及び図6(b)に示すように、オーバーシュートの出現時間は、略750μsであるので、上記時間T1-T5は、少なくとも700~800μsであることが好ましい。
【0056】
また、実験結果により、常温時(20℃±15℃)の制御信号のデューティ比は、オーバーシュート時間、例えば、上記略750μsの1/10より短いパルス幅、つまり、略75μsより短いパルス幅であることが好ましい。本実施形態では、定常印字中の制御信
号の周波数でも、20kHzであり、その周期は、50μsであるので、オーバーシュート時間の1/10より短いパルス幅となっている。
【0057】
なお、レーザパワーとデューティ比との関係については、上記説明では言及していないが、例えば、レーザパワーが5W出力の場合、デューティ比を10~15%で調整し、レーザパワーが10W出力の場合、デューティ比を20~40%で調整し、レーザパワーが15W出力の場合、デューティ比を30~75%で調整すればよい。したがって、レーザパワーの値を考慮しない場合、デューティ比は、10~80%の範囲内で調整するようにすればよい。
【0058】
また、デューティ比を%ではなく、倍率で表現すると、レーザパワーが5W出力の場合、デューティ比を1.1~1.5倍で調整し、レーザパワーが10W出力の場合、デューティ比を1.2~2倍で調整し、レーザパワーが15W出力の場合、デューティ比を1.3~2.5倍で調整すればよい。したがって、レーザパワーの値を考慮しない場合、デューティ比は、1.1~2.5倍の範囲内で調整するようにすればよい。
【0059】
以上説明したように、本実施形態のレーザ加工装置1は、加工レーザ光Rを加工対象物7に照射して加工対象物7を加工するレーザ加工装置であって、入力される制御信号に基づいて加工レーザ光Rを発振するレーザ発振器21と、レーザ発振器21の温度に係る情報である温度情報を取得する温度センサ120と、制御信号を出力するCPU41と、を備えている。そして、CPU41は、加工対象物7を加工する際には、動作開始当初の制御信号の周波数を定常印字中の周波数より高くするように調整する周波数調整処理と、温度センサ120により取得された温度情報が示す温度の高さに応じて制御信号のデューティ比を大きくするように調整するデューティ比調整処理と、を実行する。
【0060】
このように、本実施形態のレーザ加工装置1では、加工対象物7を加工する際には、動作開始当初の制御信号の周波数を定常印字中の周波数より高くするように調整するとともに、温度センサ120により取得された温度情報が示す温度の高さに応じて制御信号のデューティ比を大きくするように調整するようにしたので、発振直後のレーザ出力の、レーザ発振器21の温度に依存するオーバーシュートを抑制することが可能となる。
【0061】
ちなみに、本実施形態において、CPU41は、「制御部」の一例である。加工対象物7は、「ワーク」の一例である。加工レーザ光Rは、「レーザ光」の一例である。レーザ発振器21は、「レーザ発振部」の一例である。温度センサ120は、温度センサ120は、「温度取得部」の一例である。定常印字は、「定常動作」の一例である。
【0062】
また、周波数調整処理において、動作開始当初の制御信号の周波数は、定常印字中の周波数の2~10倍である、ことを特徴とする。
【0063】
これにより、発振直後のレーザ出力の、レーザ発振器21の温度に依存するオーバーシュートを確実に抑制することが可能となる。
【0064】
また、周波数調整処理において、動作開始当初は、少なくとも動作開始から700~800μs経過するまでである、ことを特徴とする。
【0065】
これにより、発振直後のレーザ出力の、レーザ発振器21の温度に依存するオーバーシュートを確実に抑制することが可能となるとともに、定常印字時のパワー不足に起因する加工不良の発生を確実に抑制することが可能となる。
【0066】
また、デューティ比調整処理において、常温時の制御信号のパルス幅は、レーザ発振器
21のレーザ出力のオーバーシュート時間の1/10より短い、ことを特徴とする。
【0067】
これにより、発振直後のレーザ出力の、レーザ発振器21の温度に依存するオーバーシュートをさらに確実に抑制することが可能となる。
【0068】
また、デューティ比調整処理において、制御信号のデューティ比は、10~80%の範囲で調整する、ことを特徴とする。
【0069】
これにより、発振直後のレーザ出力の、レーザ発振器21の温度に依存するオーバーシュートを確実に抑制することが可能となる。
【0070】
また、デューティ比調整処理において、制御信号のデューティ比は、1.1~2.5倍の範囲で調整する。
【0071】
これにより、発振直後のレーザ出力の、レーザ発振器21の温度に依存するオーバーシュートを確実に抑制することが可能となる。
【0072】
なお、本願は上記実施形態に限定されるものでなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0073】
(1)上記実施形態では、動作開始当初に相当する時間を複数段階に分けて、その段階毎にデューティ比を変動するようにしたが、これに限らず、動作開始当初に相当する時間に亘って、取得したレーザ発振器21の温度に応じたデューティ比を1つ決定し、そのデューティ比をレーザドライバ37に出力するようにしてもよい。
【0074】
(2)上記実施形態では、各段階のデューティ比は、すべて異なるようにしたが、これに限らず、一部同じであってもよい。
【0075】
(3)上記実施形態では、動作開始当初に相当する時間に亘って1つの周波数をレーザドライバ37に出力するようにしたが、これに限らず、段階毎に異なる周波数をレーザドライバ37に出力するようにしてもよい。この場合、一部の段階で、同じ周波数をレーザドライバ37に出力するようにしてもよいし、すべての段階で、異なる周波数をレーザドライバ37に出力するようにしてもよい。
【0076】
(4)上記実施形態では、各段階の時間は、同一としたが、これに限らず、異なるようにしてもよい。この場合、一部の段階で、同じ時間としてもよいし、すべての段階で、異なる時間としてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1…レーザ加工装置、6…レーザコントローラ、7…加工対象物、37…レーザドライバ、41…CPU、42…RAM、43…ROM、R…加工レーザ光。
図1
図2
図3
図4
図5
図6