(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093626
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】電極交換装置および電極交換方法
(51)【国際特許分類】
B23K 9/26 20060101AFI20240702BHJP
B23K 9/29 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
B23K9/26 Z
B23K9/29 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210134
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 朋彦
【テーマコード(参考)】
4E001
【Fターム(参考)】
4E001LD09
4E001LH05
4E001LH11
4E001MD01
(57)【要約】
【課題】電極の交換と研磨とを効率よく実行する。
【解決手段】電極交換装置1000は、複数の位置に電極5を移動させることが可能な移動装置10と、電極を研磨する研磨装置2と、制御装置100と、を備える。制御装置100は、位置P1において溶接トーチ4から取り外した使用済みの電極5を、移動装置10を用いて位置P2に移動させ、第2位置において、研磨装置2を用いて使用済みの電極5を研磨し、研磨装置2によって研磨された研磨済みの電極5を、移動装置10を用いて位置P2から位置P3に移動させ、位置P3において、研磨済みの電極5を溶接トーチ4へ挿入する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接トーチの先端に設置される電極を交換するための電極交換装置であって、
複数の位置に電極を移動させることが可能な移動装置と、
電極を研磨する研磨装置と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
第1位置において前記溶接トーチから取り外した使用済みの電極を、前記移動装置を用いて第2位置に移動させ、
前記第2位置において、前記研磨装置を用いて前記使用済みの電極を研磨し、
前記研磨装置によって研磨された研磨済みの電極を、前記移動装置を用いて前記第2位置から第3位置に移動させ、
前記第3位置において、前記研磨済みの電極を前記溶接トーチへ挿入する、電極交換装置。
【請求項2】
前記移動装置は、各々が電極をクランプする機構を有する第1治具および第2治具を含む、請求項1に記載の電極交換装置。
【請求項3】
電極の長さを検出する検出装置をさらに備え、
前記制御装置は、
前記検出装置が検出した電極の長さが基準値以上である場合、前記第1位置にある電極を前記第2位置へ移動させ、
前記検出装置が検出した電極の長さが前記基準値未満である場合、前記第1位置にある電極を電極回収のための第4位置へ移動させる、請求項1または請求項2に記載の電極交換装置。
【請求項4】
電極を支持し電極の軸方向に電極を移動させる電極移動装置をさらに備える、請求項1または請求項2に記載の電極交換装置。
【請求項5】
溶接トーチの先端に配置される電極を交換するための電極交換方法であって、
第1位置において前記溶接トーチから使用済みの電極を取出すステップと、
第2位置において前記使用済みの電極を研磨するステップと、
第3位置において前記溶接トーチへ研磨済みの電極を挿入するステップと、を備える、電極交換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電極交換装置および電極交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平5-285654号公報(特許文献1)には、溶接トーチがアームの先端に取付けられた溶接ロボットが開示されている。特開平5-285654号公報(特許文献1)の溶接ロボットは、溶接トーチの先端に電極を固定し、溶接作業により電極が消耗した際に自動で電極を交換する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特開平5-285654号公報(特許文献1)の溶接ロボットでは、電極交換治具として使用済みの電極用のものと新品の電極用のものとが別々に設けられている。各電極交換治具には、複数本の電極がセットされる。特開平5-285654号公報(特許文献1)の溶接ロボットは、各電極交換治具とはさらに別の位置に使用済みの電極を研磨するための研磨装置が配置されている。
【0005】
しかしながら、特開平5-285654号公報(特許文献1)のような装置においては、複数本の電極がセットされる各電極交換治具とは別の位置に使用済みの電極を研磨するための研磨装置が設けられているため、電極の交換と研磨とをスムーズに行なうことが難しい。
【0006】
本開示は、上記の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、電極の交換と研磨とを効率よく実行することが可能な電極交換装置および電極交換方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、溶接トーチの先端に設置される電極を交換するための電極交換装置に関する。電極交換装置は、複数の位置に電極を移動させることが可能な移動装置と、電極を研磨する研磨装置と、制御装置と、を備える。制御装置は、第1位置において溶接トーチから取り外した使用済みの電極を、移動装置を用いて第2位置に移動させ、第2位置において、研磨装置を用いて使用済みの電極を研磨し、研磨装置によって研磨された研磨済みの電極を、移動装置を用いて第2位置から第3位置に移動させ、第3位置において、研磨済みの電極を溶接トーチへ挿入する。
【0008】
好ましくは、各々が電極をクランプする機構を有する第1治具および第2治具を含む。
好ましくは、電極の長さを検出する検出装置をさらに備える。制御装置は、検出装置が検出した電極の長さが基準値以上である場合、第1位置にある電極を第2位置へ移動させ、検出装置が検出した電極の長さが基準値未満である場合、第1位置にある電極を電極回収のための第4位置へ移動させる。
【0009】
好ましくは、電極を支持し電極の軸方向に電極を移動させる電極移動装置をさらに備える。
【0010】
本開示は、溶接トーチの先端に配置される電極を交換するための電極交換方法に関する。電極交換方法は、第1位置において溶接トーチから使用済みの電極を取出すステップと、第2位置において使用済みの電極を研磨するステップと、第3位置において溶接トーチへ研磨済みの電極を挿入するステップと、を実行する。
【発明の効果】
【0011】
本開示の電極交換装置および電極交換方法によれば、第1位置において溶接トーチから使用済みの電極を取出し、第2位置において使用済みの電極を研磨し、第3位置において溶接トーチへ研磨済みの電極を挿入する。これによって、電極の交換の過程で電極を研磨することが可能となり、電極の交換と研磨とを効率よく実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1における電極交換装置の平面図である。
【
図2】実施の形態1における電極交換装置の正面図である。
【
図4】電極の交換の流れを説明するための図である。
【
図6】実施の形態2における電極交換装置の平面図である。
【
図7】実施の形態3における電極交換装置の平面図である。
【
図8】実施の形態4における電極交換装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0014】
[実施の形態1]
図1は、実施の形態における電極交換装置1000の平面図である。
図1に示すようにX軸、Y軸、Z軸を規定した場合、X軸方向が電極交換装置1000の左右方向、Y軸方向が電極交換装置1000の前後方向、Z軸方向が電極交換装置1000の上下方向とする。
【0015】
図1に示すように、電極交換装置1000は、電極交換機構1と、研磨装置2と、制御装置100とを備える。電極交換装置1000は、例えばTIG(Tungsten Inert Gas)溶接により消耗した、後述する電極5の交換および研磨を行なうための装置である。TIG溶接では、溶接作業を繰返すことにより電極5の先端が摩耗するため、溶接途中に電極5の交換が必要となる。電極5の先端は、摩耗等により次第に丸みを帯び、また電極5の先端に溶接中の析出部が付着するため消耗する。電極交換装置1000は、使用済みの電極5の交換および研磨を効率よく自動で行なう。
【0016】
電極交換機構1および研磨装置2は、台座3に固定されている。電極交換機構1は、電極5の移動および交換を行なうための機構である。研磨装置2は、TIG溶接により消耗した使用済みの電極5を研磨するための装置である。電極交換機構1は、移動装置10と、固定装置30とを含む。
【0017】
移動装置10は、治具11と、移動台13と、軸部14と、本体部15と、モータ16とを含む。治具11は、電極5を掴むとともに放す動作が可能なクランプ機構を有している。移動台13は、長方形の四隅が面取りされた板状の形態であり、長手方向の両端に治具11が固定されている。移動台13は、本体部15から延びる軸部14の上端に回転可能に固定される。モータ16は、軸部14を介して移動台13を回転させるためのモータである。なお、モータ部分は、駆動機構であればどのような機構であってもよい。例えば、モータの替わりにエアシリンダ等の機構を用いてもよい。
【0018】
固定装置30は、モータ31と、モータ31を支える支持台33とを含む。固定装置30は、軸部14に対してX軸の負方向と正方向とに各1つずつ配置され、台座3に支持台33が固定されている。モータ31は、治具11に対して電極5を固定するとともに、固定した電極5を治具11から外すために動作するモータである。電極5の固定方法については、
図3で詳しく説明する。
【0019】
図1に示す軸部14から見てX軸の負方向にある固定装置30と接している治具11がある位置を位置P1、軸部14から見てX軸の正方向にある固定装置30と接している治具11がある位置を位置P3と規定する。位置P1は、後述する溶接トーチ4から使用済みの電極5を取出すための取出位置である。位置P3は、溶接トーチ4へ研磨済みの電極5を挿入するための挿入位置である。治具11は、移動装置10の動作により位置P1と位置P3との間を移動可能である。
【0020】
位置P1側に配置される固定装置30には、検出装置17が固定されている。検出装置17は、電極5の長さを検知するための装置である。検出装置17は、例えば、反射型フォトセンサである。反射型フォトセンサは、発光素子からの光を電極5に当て、反射して帰ってきた光を受光素子で検知する。検出装置17は、例えば、治具11の上面に向けて光りを照射し、反射された光を受光した場合に電極5の長さが基準値以上であることを検知し、光が反射されない場合に電極5の長さが基準値未満であることを検知する。なお、検知装置は、透過型フォトセンサ、分離型フォトセンサ等のフォトセンサであってもよく、電極5の長さが検出可能なセンサであればフォトセンサ以外のどのようなセンサであってもよい。
【0021】
研磨装置2は、研磨部21と、モータ22と、モータ23とを含む。研磨部21は、電極5を研磨するための研磨ベルトから構成される。モータ22は、電極5が固定された治具11を回転させるためのモータである。モータ23は、研磨部21に設けられた研磨ベルトを回転させるためのモータである。
【0022】
制御装置100は、CPU(Central Processing Unit)101と、メモリ102(ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory))と、各種信号を入出力するための入出力ポートとを含んで構成される。制御装置100のCPU101は、ROMに格納されているプログラムをRAM等に展開して実行する。ROMに格納されるプログラムは、制御装置100の処理手順が記されたプログラムである。制御装置100は、これらのプログラムに従って、各機器の制御を実行する。この制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で処理することも可能である。制御装置100は、例えば各モータへ制御信号を送信し、検出装置17からの信号を受信する。
【0023】
図2は、実施の形態1における電極交換装置1000の正面図である。
図2は、Y軸方向から電極交換装置1000を正面視した図を示している。
図2に示すように、図示しない溶接ロボットのアームの先端には、溶接トーチ4が取付けられている。溶接トーチ4は、トーチ本体部41と、トーチヘッド42と、ワイヤガイド43とを含む。溶接トーチ4では、トーチ本体部41から延びるトーチヘッド42の先端に電極5が固定されている。溶接トーチ4では、ワイヤガイド43の内部を通る溶接ワイヤが溶接中に繰り出される。電極5は、トーチヘッド42の内部において図示しないコレットから構成されるクランプ部によりクランプされている。TIG溶接では、ダングステン製の電極5を用い母材との間にアークを発生させ、発生する熱により母材および溶接ワイヤを溶かして接合する。
【0024】
電極交換装置1000は、正面視において移動装置10の本体部15の両側に昇降装置18が配置されている。昇降装置18は、ピストン機構を有し、シリンダ本体からピストンロッド18aが延びている。ピストンロッド18aの先端には、ピン18bが接続されている。制御装置100は、図示しないモータを駆動させピストン機構を制御することによりピストンロッド18aおよびピン18bをZ軸方向に上下動させる。なお、モータの替わりにエアシリンダ等の駆動機構を用いてもよい。昇降装置18は、電極5を支持し電極5の軸方向(延在方向、Z軸方向)に電極5を移動させる電極移動装置として機能する。
【0025】
図2では、移動装置10、治具11、および固定装置30の一部が断面図として図示されている。
図2の位置P1では、電極交換装置1000において位置P1に移動した溶接トーチ4から使用済みの電極5を取り外す際の様子が示されている。昇降装置18のピン18bは、治具11の内部を通過し、トーチヘッド42の先端の電極5を支持する位置まで上昇している。治具11は、電極固定部11bと、治具回転部11aとを含む。ピン18bは、電極固定部11bおよび治具回転部11aの内部を通過して治具11よりも上方に突出している。
【0026】
電極固定部11bは、治具11に電極5を固定するための部材である。治具回転部11aは、治具11を回転させるための部材である。固定装置30は、支持台33とモータ31との間に配置される歯車32を含む。制御装置100は、モータ31を駆動させ、歯車32を回転させることにより、動力を電極固定部11bに伝達し、電極5を固定する。電極5の固定方法については、
図3で詳しく説明する。
【0027】
図2の位置P3では、電極交換装置1000において位置P3に移動した溶接トーチ4が破線で示されており、当該溶接トーチ4に対して研磨済みの電極5を挿入する際の様子が示されている。位置P3では、治具11の下方に突出している電極をピン18bの先端で支持する。溶接トーチ4に電極5を挿入する際は、電極固定部11bが逆回転するように歯車32を回転させ、電極5のクランプを解除する。これによって、ピン18bの先端に支持された電極5が昇降装置18の動作により溶接トーチ4に向けて移動することが可能となる。
【0028】
図3は、治具11の構造を説明するための図である。
図3に示すように、治具11は、電極固定部11bと、治具回転部11aと、チャック11dと、軸受11eと、取付部11fとを含む。治具11は、移動台13に連結部11gを介してボルト19で固定されている。電極固定部11bおよび治具回転部11aは、周方向に歯が形成された歯車の構造である。治具11では、制御装置100がモータ31を動作させ歯車32を回転させることによって歯車32とかみあう電極固定部11bが回転し、チャック11dを締め付けることで、電極5が治具11にクランプされる。治具11では、制御装置100がモータ31を動作させ歯車32を逆回転させることによって歯車32とかみあう電極固定部11bが逆回転し、チャック11dを緩めることで、電極5クランプが解除される。
【0029】
図3に示すように、電極5を研磨する場合、制御装置100は、電極5の先端を研磨ベルトから構成される研磨部21に移動させる。制御装置100は、研磨部21の研磨ベルトを回転させることによって電極5の先端を研磨する。制御装置100は、治具回転部11aと研磨装置2に設けられた図示しない歯車とをかみ合わせ、歯車を回転させることによって治具回転部11aを回転させる。治具回転部11aを回転させることによって、電極5の全周を均一に研磨することができる。
【0030】
図4は、電極5の交換の流れを説明するための図である。電極交換装置1000においては、
図4(a)~(f)の順に移動装置10が動作する。
図4(a)の状態は、位置P1の治具11に電極5が無く、位置P3の治具11に研磨済み(研磨後)の電極5が挿入されている状態である。
【0031】
図4(b)の状態は、
図4(a)の状態から溶接トーチ4が位置P1に移動し、溶接トーチ4から電極5が取り外され、使用済み(研磨前)の電極5が治具11に固定された状態である。
図4(c)の状態は、
図4(b)の状態から溶接トーチ4が位置P3に移動し、溶接トーチ4へ研磨済みの電極5が挿入され、位置P3の治具11から電極5が無くなった状態である。
【0032】
図4(d)の状態は、
図4(c)の状態から移動装置10が動作し、軸部14を中心に移動台13が回転することによって、位置P1の治具11が位置P2に移動した状態である。
図4(e)の状態は、
図4(d)の状態から研磨装置2が動作し、位置P2の電極5が研磨された状態である。
【0033】
図4(f)の状態は、
図4(e)の状態から移動装置10が動作し、軸部14を中心に移動台13が回転することによって、位置P2の治具11が位置P3に移動した状態である。
図4(f)では、元々位置P3にあった治具11が位置P1まで移動することより、位置P1の治具11に電極5が無く、位置P3の治具11に研磨済みの電極5が挿入されている
図4(a)の状態に戻る。以降、電極5が基準値未満の長さになるまで
図4(a)~
図4(f)の状態の変化が繰返される。
【0034】
なお、初回の動作では、位置P1に研磨前の電極5をセットし、位置P3に電極5が無い状態で、
図4(a)~(f)の状態に変化させることにより、位置P3に研磨後の電極5がセットされる状態とすることができる。電極5が基準値未満の長さになった場合、電極5は、回収位置において回収される。回収位置は、任意の位置に設定することが可能であるが、例えば、
図4(c)に示すように、研磨装置2において研磨がされる前の位置P4を回収位置することが好ましい。このようにすれば無駄な研磨作業を減らすことができる。回収位置は、位置P1のような電極5の取り出し位置、あるいは、位置P2のような電極5の研磨位置と同じ位置であってもよい。
【0035】
図5は、電極交換処理を示すフローチャートである。
図5のフローチャートの処理は、制御装置100の制御におけるメインルーチンから、サブルーチンとして繰返し呼び出されて実行される。
【0036】
制御装置100は、まずステップS(以下、単に「S」と示す)1において、溶接を開始してから一定時間経過したか否かを判定する。一定時間は、溶接により電極が消耗することを考慮した、予め定められた時間である。なお、制御装置100は、S1において時間経過以外に、回転数、溶接電流の値等により電極が消耗したと判定してもよい。制御装置100は、溶接を開始してから一定時間経過していないと判定した場合(S1のNO)、S1へ処理を戻す。制御装置100は、溶接を開始してから一定時間経過したと判定した場合(S1のYES)、S2の処理へ移行する。一定時間の経過により、溶接トーチ4を制御するロボットの制御装置が溶接トーチ4を取出位置へ移動させる。
【0037】
制御装置100は、取出位置の昇降装置18を動作させピン18bを電極5の真下まで上昇させる(S2)。ここで、ロボットの制御装置が溶接トーチ4のクランプ部を開放することによって、使用済みの電極5が溶接トーチ4から自重により下がり、ピン18bの上で支持される。制御装置100は、昇降装置18を制御し、ピン18bを予め定められた規定位置に下降させる(S3)。
【0038】
次いで、制御装置100は、治具11のチャック11dを閉鎖し、電極5を治具11にクランプする(S4)。次いで、制御装置100は、検出装置17からの信号を受信することにより電極5の長さを検出する(S5)。次いで、制御装置100は、電極5の長さが予め定められた規定値以上であるか否かを判定する(S6)。
【0039】
制御装置100は、S6において電極5の長さが基準値以上であると判定した場合(S6のYES)、供給位置の昇降装置18を動作させピン18bを電極5の真下まで上昇させる(S7)。次いで、制御装置100は、治具11のチャック11dを開放し、電極5のクランプを解除する(S8)。ここで、治具11のチャック11dを開放することによって、使用済みの電極5が治具11から自重により下がり、ピン18bの上で支持される。
【0040】
次いで、制御装置100は、供給位置の昇降装置18を制御し、ピン18bを上昇させ、電極5を溶接トーチ4の予め定められた突出位置へ移動させる(S9)。突出位置とは、溶接トーチ4から突出する電極5が溶接に適した長さで固定される位置である。S9の処理の後、ロボットの制御装置は、溶接トーチ4のクランプ部を閉鎖することによって電極5を溶接トーチ4にクランプし、溶接トーチ4を溶接位置へ移動させる。
【0041】
次いで、制御装置100は、移動台13を回転させることによって治具11を位置P1から研磨位置である位置P2へと移動させる(S10)。次いで、制御装置100は、位置P2において研磨装置2によって電極5の研磨を実行する(S11)。次いで、制御装置100は、位置P2の治具11を供給位置である位置P3へと移動させ(S12)、処理をサブルーチンからメインルーチンに戻す。
【0042】
一方、制御装置100は、S6において電極5の長さが基準値未満であると判定した場合(S6のNO)、治具11を回収位置へ移動させる(S13)。次いで、制御装置100は、治具11のチャック11dを開放し、電極5のクランプを解除する(S14)。これによって、基準値未満の電極5は、自重により落下し、回収箱等に回収される。
【0043】
次いで、制御装置100は、治具11を供給位置である位置P3へ移動させる(S15)。次いで、制御装置100は、研磨後(研磨済み)の電極5が治具11に挿入されたか否かを判定する(S16)。制御装置100は、研磨後の電極5が治具11に挿入されていると判定した場合(S16のYES)、処理をサブルーチンからメインルーチンに戻す。
【0044】
制御装置100は、研磨後の電極5が治具11に挿入されていないと判定した場合(S16のNO)、電極5が無いことを通知し(S17)、S16へ処理を戻す。制御装置100は、例えば、ユーザーに対して音、あるいは画面の表示により電極5が治具11に挿入されていないことを通知する。なお、S16の判定では、画像センサ等のセンサを用いて電極5の有無を検知すればよい。
【0045】
図5に示すように、電極交換装置1000は、使用済みの電極5を第1位置である取出位置で取出すとともに、研磨済みの電極5を第3位置である供給位置から溶接トーチ4へ挿入することができる。さらに、電極交換装置1000は、使用済みの電極5を第1位置から研磨位置である第2位置へ移動させて、電極5を研磨した後、第3位置へ移動させる。これによって、電極交換装置1000は、電極5の交換の過程で電極5を研磨することが可能となり、電極5の交換と研磨とを効率よく実行することができる。
【0046】
電極交換装置1000は、電極5の長さが基準値未満となるまで自動的に
図5に示す処理を実行することができるため、溶接工程において作業の出来ない時間を減少させることができる。また、電極5の交換の過程で電極5を研磨することが可能となり、電極5の交換と研磨とを効率よく実行することができる。
【0047】
[実施の形態2]
図6は、実施の形態2における電極交換装置1000Aの平面図である。実施の形態2の電極交換装置1000Aは、実施の形態1の電極交換装置1000と比較し、移動装置10Aが回転動作ではなく平行移動する点が異なる。
【0048】
図6に示すように、電極交換装置1000Aは、移動装置10Aの動作により移動台13がX軸の正方向と負方向との間を移動する。制御装置100が実行する電極交換装置1000Aの具体的な動作について説明する。電極交換装置1000Aには、事前に位置P3に研磨済みの電極5が挿入されているとする。制御装置100は、位置P1において使用済みの電極5を溶接トーチ4から取出す。研磨済みの電極5が挿入されている位置P3に溶接トーチ4が移動した後、制御装置100は、位置P3の治具11にある電極5を溶接トーチ4へと挿入する。
【0049】
制御装置100は、使用済みの電極5がクランプされた治具11を位置P1から位置P2へ移動させ、位置P2において電極5を研磨する。制御装置100は、電極5が研磨された後に、位置P2から位置P1へと治具11を移動し、溶接トーチ4が来るまで待機する。電極5の交換のタイミングにおいて位置P3へと溶接トーチ4が移動した後、制御装置100は、位置P3において使用済みの電極5を溶接トーチ4から取出す。以降の処理は、前述した位置P1と位置P3との処理を入れ替えた処理に相当するため説明を省略する。
【0050】
電極交換装置1000Aは、平行移動により電極5の交換の過程で電極5を研磨することが可能となり、電極5の交換と研磨とを効率よく実行することができる。なお、電極交換装置1000Aにおいては、位置P1と位置P3とで取出し位置と供給位置とが交互に入れ替わるため、位置P1と位置P3の各々の位置に実施の形態1の検出装置17を配置すればよい。
【0051】
[実施の形態3]
図7は、実施の形態3における電極交換装置1000Bの平面図である。実施の形態3の電極交換装置1000Bは、実施の形態1の電極交換装置1000と比較し、移動装置10Bの移動台13Bの上に4つの治具11が設置されている点が異なる。
【0052】
制御装置100が実行する電極交換装置1000Bの具体的な動作について説明する。電極交換装置1000Bには、事前に位置P2および位置P3に研磨済みの電極5が挿入されているとする。制御装置100は、位置P1において使用済みの電極5を溶接トーチ4から取出す。研磨済みの電極5が挿入されている位置P3に溶接トーチ4が移動した後、制御装置100は、位置P3の治具11にある電極5を溶接トーチ4へと挿入する。
【0053】
制御装置100は、位置P1から位置P2へ使用済みの電極5がクランプされた治具11を移動させ、位置P2において電極5を研磨する。このとき、位置P3へ移動した研磨済みの電極5は、位置P3において待機される。制御装置100は、位置P2において電極5が研磨された後、溶接トーチ4が来るまで待機する。電極5の交換のタイミングにおいて位置P1へと溶接トーチ4が移動した後、制御装置100は、位置P1において使用済みの電極5を溶接トーチ4から取出す。
【0054】
研磨済みの電極5が挿入されている位置P3に溶接トーチ4が移動した後、制御装置100は、位置P3の治具11にある電極5を溶接トーチ4へと挿入する。その後、制御装置100は、位置P1から位置P2へ使用済みの電極5がクランプされた治具11を移動させ、位置P2において電極5を研磨する。以降の処理は、前述した位置P2および位置P3に研磨済みの電極5が挿入されている場合の処理と同様であるため説明を省略する。
【0055】
ここで、電極交換装置1000Bによれば、予備の研磨済みの電極5がセットされているため、電極5の長さが基準値未満となったとしても予備の研磨済みの電極5をすぐに使用することができる。これによって、溶接工程において作業の出来ない時間を減少させることができる。なお、電極交換装置100Bにおいては、位置P1に実施の形態1の検出装置17を配置すればよい。
【0056】
[実施の形態4]
図8は、実施の形態4における電極交換装置1000Cの平面図である。実施の形態4の電極交換装置1000Cは、実施の形態1の電極交換装置1000と比較し、移動装置10Cの移動台13Cの上に6つの治具11が設置されている点、および研磨後の電極5の状態を検査する検査装置が設置されている点が異なる。
【0057】
電極交換装置1000Cは、検査装置として第1検査装置50と、第2検査装置51とを含む。第1検査装置50は、電極5の先端の角度を検出するための検査装置である。第2検査装置51は、電極5の全体の長さを測定するための検査装置である。電極交換装置1000Cには、事前に位置P5および位置P6に研磨済みの電極5が挿入されているとする。
【0058】
制御装置100が実行する電極交換装置1000Cの具体的な動作について説明する。制御装置100は、位置P1において使用済みの電極5を溶接トーチ4から取出す。研磨済みの電極5が挿入されている位置P5に溶接トーチ4が移動した後、制御装置100は、位置P5の治具11にある電極5を溶接トーチ4へと挿入する。
【0059】
制御装置100は、位置P1から位置P2へ使用済みの電極5がクランプされた治具11を移動させ、位置P2において電極5を研磨する。このとき、位置P6の研磨済みの電極5は、位置P1において待機される。制御装置100は、位置P2において電極5が研磨された後、研磨済みの電極5がクランプされた治具11を位置P3へ移動させる。このとき、位置P1の研磨済みの電極5は、位置P2において待機される。
【0060】
制御装置100は、位置P3において第1検査装置50を用いて、研磨済みの電極5の先端の角度が予め定められた規定の角度を満たしているか否かを判定する。第1検査装置50は、例えば、画像を取得するカメラと取得した画像から角度を演算する演算装置とを備える装置を用いればよい。
【0061】
次いで、制御装置100は、位置P3から位置P4へ角度検出後の電極5がクランプされた治具11を移動させる。このとき、位置P2の電極5は、位置P3において待機される。制御装置100は、位置P4において第2検査装置51を用いて、研磨済みの電極5の長さを確認する。第2検査装置51は、実施の形態1の検出装置17と同様の構成であればよい。なお、第2検査装置51は、研磨前の位置P1に配置されるようにしてもよい。
【0062】
第2検査装置51は、基準位置(例えば、電極5の下端位置)からZ軸の正方向へ延びる電極5の上端位置まで発光素子を移動させながら電極5に光を当て、反射して帰ってきた光を受光素子で検知する移動式の反射型フォトセンサを用いてもよい。これによって、第2検査装置51は、反射光の検知により電極5の全長を計測可能である。第2検査装置51は、その他の方式の装置を用いてもよい。
【0063】
制御装置100は、その後、位置P5および位置P6に研磨済みの電極5が挿入されている状態まで移動台13Cを移動する。電極交換装置1000Cによれば、予備の研磨済みの電極5がセットされているため、電極5の長さが基準値未満となったとしても予備の研磨済みの電極5をすぐに使用することができる。電極交換装置1000Cは、研磨済みの電極5の角度および全長を検出可能であるため、溶接品質を満たさないような電極を除外することができる。これによって、電極交換装置1000Cは、電極5の交換の過程で電極5を研磨することが可能となり、電極5の交換と研磨とを効率よく実行することができ、溶接工程において作業の出来ない時間を減少させることができるとともに、溶接品質を向上させることができる。
【0064】
<まとめ>
(1) 本開示は、溶接トーチ4の先端に設置される電極5を交換するための電極交換装置1000に関する。電極交換装置1000は、複数の位置に電極5を移動させることが可能な移動装置10と、電極を研磨する研磨装置2と、制御装置100と、を備える。制御装置100は、第1位置である位置P1において溶接トーチ4から取り外した使用済みの電極5を、移動装置10を用いて第2位置である位置P2に移動させ、第2位置において、研磨装置2を用いて使用済みの電極5を研磨し、研磨装置2によって研磨された研磨済みの電極5を、移動装置10を用いて第2位置から第3位置である位置P3に移動させ、第3位置において、研磨済みの電極5を溶接トーチ4へ挿入する。
【0065】
(2) (1)の電極交換装置1000において、移動装置10は、各々が電極5をクランプする機構を有する第1治具としての治具11および第2治具としての治具11を含む。
【0066】
(3) (1)または(2)の電極交換装置1000において、電極5の長さを検出する検出装置17をさらに備える。制御装置100は、検出装置17が検出した電極5の長さが基準値以上である場合、第1位置にある電極5を第2位置へ移動させ、検出装置17が検出した電極の長さが基準値未満である場合、第1位置にある電極5を電極回収のための第4位置である位置P4へ移動させる。
【0067】
(4) (1)から(3)のいずれかの電極交換装置1000において、電極5を支持し電極5の軸方向に電極5を移動させる電極移動装置としての昇降装置18をさらに備える。
【0068】
(5) 本開示は、溶接トーチ4の先端に配置される電極5を交換するための電極交換方法に関する。電極交換方法は、第1位置である位置P1において溶接トーチ4から使用済みの電極5を取出すステップと、第2位置である位置P2において使用済みの電極5を研磨するステップと、第3位置である位置P3において溶接トーチ4へ研磨済みの電極5を挿入するステップと、を備える。
【0069】
本開示の電極交換装置1000および電極交換方法によれば、第1位置において溶接トーチ4から使用済みの電極5を取出し、第2位置において使用済みの電極5を研磨し、第3位置において溶接トーチ4へ研磨済みの電極を挿入する。これによって、電極5の交換の過程で電極5を研磨することが可能となり、電極5の交換と研磨とを効率よく実行することができる。
【0070】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0071】
1 電極交換機構、2 研磨装置、3 台座、4 溶接トーチ、5 電極、10,10A,10B,10C 移動装置、11 治具、11a 電極固定部、11b 治具回転部、11d チャック、11e 軸受、11f 取付部、11g 連結部、13,13B,13C 移動台、14 軸部、15 本体部、16 移動用モータ、17 検出装置、18 昇降装置、18a ピストンロッド、18b ピン、19 ボルト、21 研磨部、22 治具回転用モータ、23 研磨用モータ、30 固定装置、31 固定用モータ、32 歯車、33 支持台、41 トーチ本体部、42 トーチヘッド、43 ワイヤガイド、50 第1検査装置、51 第2検査装置、100 制御装置、101 CPU、102 メモリ、1000,1000A,1000B,1000C 電極交換装置。