(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093627
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】半導体装置とその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20240702BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240702BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20240702BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
H01L29/78 652K
H01L29/78 652F
H01L29/78 652S
H01L29/78 653C
H01L29/78 652B
H01L29/78 658G
H01L29/78 658F
H01L29/78 652T
H01L29/06 301V
H01L29/06 301M
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210136
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 仁志
(57)【要約】
【課題】複数のトレンチゲートを備えた半導体装置において、微細化に有用な技術を提供する。
【解決手段】内側トレンチ40Bの一対の端側壁42の表面粗さが、内側トレンチ40Bのうち長手方向の中間部46にある一対の長手側壁44の表面粗さよりも大きい。さらに、内側トレンチ40Bの一対の端側壁42を被覆するゲート絶縁膜34の膜厚が、内側トレンチ40Bの中間部46にある一対の長手側壁44を被覆するゲート絶縁膜34の膜厚よりも大きい。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置(1,2)であって、
半導体層(10)と、
前記半導体層に設けられている複数のトレンチゲート(30)であって、前記複数のトレンチゲートの各々が前記半導体層の上層部に形成されている複数のトレンチ(40)のうち対応するトレンチ内に設けられている、複数のトレンチゲートと、を備えており、
前記複数のトレンチの各々は、前記半導体層を平面視したときに、少なくとも第1方向に沿って延びており、
前記複数のトレンチは、前記半導体層を平面視したときに、前記第1方向に直交する第2方向に相互に間隔を置いて配置されており、
前記複数のトレンチの各々は、前記第1方向の両端の各々にある端側壁(42)と、一対の前記端側壁の間を延びている一対の長手側壁(44)と、を有しており、
前記複数のトレンチは、前記第2方向の両端の各々に配置されている両端トレンチ(40A)と、一対の前記両端トレンチの間に配置されている内側トレンチ(40B)と、に区別され、
前記内側トレンチの前記端側壁の表面粗さが、前記内側トレンチのうち前記第1方向の中間部(46)にある前記長手側壁の表面粗さよりも大きく、
前記内側トレンチの前記端側壁を被覆するゲート絶縁膜(34)の膜厚が、前記内側トレンチの前記中間部にある前記長手側壁を被覆するゲート絶縁膜の膜厚よりも大きい、半導体装置。
【請求項2】
前記内側トレンチの前記端側壁の傾斜角度が、前記内側トレンチの前記中間部にある前記長手側壁の傾斜角度よりも小さい、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記トレンチでは、前記第1方向の両端部の各々のトレンチ幅が、前記第1方向の中間部のトレンチ幅よりも大きい、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記両端トレンチの一対の前記長手側壁のうち前記第2方向の外側にある外側長手側壁の表面粗さが、前記内側トレンチの前記中間部にある前記長手側壁の表面粗さよりも大きく、
前記両端トレンチの前記外側長手側壁を被覆するゲート絶縁膜の膜厚が、前記内側トレンチの前記中間部にある前記長手側壁を被覆するゲート絶縁膜の膜厚よりも大きい、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体層が炭化珪素である、請求項1~4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
半導体装置(1,2)の製造方法であって、
半導体層(10)の上層部に複数のトレンチ(40)を形成するトレンチ形成工程と、
前記複数のトレンチの各々にトレンチゲート(30)を形成し、複数のトレンチゲートを形成するトレンチゲート形成工程と、を備えており、
前記複数のトレンチの各々は、前記半導体層を平面視したときに、少なくとも第1方向に沿って延びており、
前記複数のトレンチは、前記半導体層を平面視したときに、前記第1方向に直交する第2方向に相互に間隔を置いて配置されており、
前記複数のトレンチの各々は、前記第1方向の両端の各々にある端側壁(42)と、一対の前記端側壁の間を延びている一対の長手側壁(44)と、を有しており、
前記複数のトレンチは、前記第2方向の両端の各々に配置されている両端トレンチ(40A)と、一対の前記両端トレンチの間に配置されている内側トレンチ(40B)と、に区別され、
前記トレンチゲート形成工程では、前記内側トレンチの前記端側壁の表面粗さが、前記内側トレンチのうち前記第1方向の中間部(46)にある前記長手側壁の表面粗さよりも大きい状態で、前記内側トレンチの前記端側壁を被覆するゲート絶縁膜(34)の膜厚が、前記内側トレンチの前記中間部にある前記長手側壁を被覆するゲート絶縁膜の膜厚よりも大きくなるように、前記複数のトレンチゲートが形成される、半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記トレンチ形成工程では、前記内側トレンチの前記端側壁の傾斜角度が、前記内側トレンチの前記中間部の前記長手側壁の傾斜角度よりも小さくなるように、前記複数のトレンチが形成される、請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記トレンチ形成工程では、前記トレンチの前記第1方向の両端部の各々のトレンチ幅が、前記トレンチの前記第1方向の中間部のトレンチ幅よりも大きくなるように、前記複数のトレンチが形成される、請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記トレンチゲート形成工程では、前記両端トレンチの一対の前記長手側壁のうち前記第2方向の外側にある外側長手側壁の表面粗さが、前記内側トレンチの前記中間部にある前記長手側壁の表面粗さよりも大きい状態で、前記両端トレンチの前記外側長手側壁を被覆するゲート絶縁膜の膜厚が、前記内側トレンチの前記中間部にある前記長手側壁を被覆するゲート絶縁膜の膜厚よりも大きくなるように、前記複数のトレンチゲートが形成される、請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記半導体層が炭化珪素である、請求項6~9のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、半導体装置とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のトレンチゲートを備えた半導体装置の開発が進められている。複数のトレンチゲートの各々は、半導体層の上層部に形成された複数のトレンチのうち対応するトレンチ内に設けられている。半導体層の上層部にトレンチを形成するときにトレンチの側壁に凹凸が形成されると、トレンチゲートのゲート絶縁膜の耐圧及び信頼性が悪化する可能性がある。特許文献1は、トレンチを形成した後に、ケミカルドライエッチング法を利用してトレンチの側壁の凹凸を除去する技術を提案する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トレンチの側壁の凹凸を十分に除去すると、エッチング量が増加してトレンチ幅が拡大し、隣り合うトレンチ間の距離が短くなってしまう。このため、トレンチの側壁の凹凸を十分に除去しながら隣り合うトレンチ間の距離を確保するためには、トレンチピッチを大きくしなければならず、半導体装置の微細化が犠牲となる。本明細書は、複数のトレンチゲートを備えた半導体装置において、微細化に有用な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する半導体装置(1,2)は、半導体層(10)と、前記半導体層に設けられている複数のトレンチゲート(30)であって、前記複数のトレンチゲートの各々が前記半導体層の上層部に形成されている複数のトレンチ(40)のうち対応するトレンチ内に設けられている、複数のトレンチゲートと、を備えていてもよい。前記複数のトレンチの各々は、前記半導体層を平面視したときに、少なくとも第1方向に沿って延びていてもよい。前記複数のトレンチは、前記半導体層を平面視したときに、前記第1方向に直交する第2方向に相互に間隔を置いて配置されていてもよい。前記複数のトレンチの各々は、前記第1方向の両端の各々にある端側壁(42)と、一対の前記端側壁の間を延びている一対の長手側壁(44)と、を有していてもよい。前記複数のトレンチは、前記第2方向の両端の各々に配置されている両端トレンチ(40A)と、一対の前記両端トレンチの間に配置されている内側トレンチ(40B)と、に区別されてもよい。前記内側トレンチの前記端側壁の表面粗さが、前記内側トレンチのうち前記第1方向の中間部(46)にある前記長手側壁の表面粗さよりも大きくてもよい。前記内側トレンチの前記端側壁を被覆するゲート絶縁膜(34)の膜厚が、前記内側トレンチの前記中間部にある前記長手側壁を被覆するゲート絶縁膜の膜厚よりも大きくてもよい。この半導体装置では、表面粗さが相対的に大きいトレンチの側壁に膜厚が相対的に大きいゲート絶縁膜が被膜されている。このため、上記半導体装置では、トレンチの側壁の凹凸に起因したゲート絶縁膜の耐圧及び信頼性の悪化が抑えられている。換言すると、上記半導体装置では、トレンチの側壁の凹凸を許容しながら、ゲート絶縁膜の耐圧及び信頼性の悪化が抑えられている。このため、上記半導体装置では、トレンチの側壁の凹凸を十分に除去する必要がないので、トレンチピッチを小さくすることができる。上記半導体装置は、微細化に有用な構造を備えている。
【0006】
本明細書が開示する半導体装置(1,2)の製造方法は、半導体層(10)の上層部に複数のトレンチ(40)を形成するトレンチ形成工程と、前記複数のトレンチの各々にトレンチゲート(30)を形成し、複数のトレンチゲートを形成するトレンチゲート形成工程と、を備えていてもよい。前記複数のトレンチの各々は、前記半導体層を平面視したときに、少なくとも第1方向に沿って延びていてもよい。前記複数のトレンチは、前記半導体層を平面視したときに、前記第1方向に直交する第2方向に相互に間隔を置いて配置されていてもよい。前記複数のトレンチの各々は、前記第1方向の両端の各々にある端側壁(42)と、一対の前記端側壁の間を延びている一対の長手側壁(44)と、を有していてもよい。前記複数のトレンチは、前記第2方向の両端の各々に配置されている両端トレンチ(40A)と、一対の前記両端トレンチの間に配置されている内側トレンチ(40B)と、に区別されてもよい。前記トレンチゲート形成工程では、前記内側トレンチの前記端側壁の表面粗さが、前記内側トレンチのうち前記第1方向の中間部(46)にある前記長手側壁の表面粗さよりも大きい状態で、前記内側トレンチの前端側壁を被覆するゲート絶縁膜(34)の膜厚が、前記内側トレンチの前記中間部にある前記長手側壁を被覆するゲート絶縁膜の膜厚よりも大きくなるように、前記複数のトレンチゲートが形成されてもよい。この製造方法によると、表面粗さが相対的に大きいトレンチの側壁に膜厚が相対的に大きいゲート絶縁膜を被膜することができる。このため、上記製造方法で製造される半導体装置では、トレンチの側壁の凹凸に起因したゲート絶縁膜の耐圧及び信頼性の悪化が抑えられる。換言すると、上記製造方法で製造される半導体装置は、トレンチの側壁の凹凸を許容しながら、ゲート絶縁膜の耐圧及び信頼性の悪化を抑えられる。このため、上記製造方法では、トレンチの側壁の凹凸を十分に除去する必要がないので、トレンチピッチが小さい半導体装置を製造することができる。上記製造方法は、微細な構造を備えた半導体装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本明細書が開示する半導体装置が備える半導体層の平面図を模式的に示しており、複数のトレンチゲートのレイアウトを示す図である。
【
図2】半導体層の上層部に形成されているトレンチの端部近傍の要部斜視図を模式的に示す図である。
【
図3】本明細書が開示する第1の実施形態の半導体装置の要部断面図を模式的に示しており、
図1のIII-III線に対応した断面図である。
【
図4】本明細書が開示する第1の実施形態の半導体装置の要部断面図を模式的に示しており、
図1のIV-IV線に対応した断面図である。
【
図5】両端トレンチの長手側壁の電子顕微鏡写真である。
【
図6】内側トレンチの長手側壁の電子顕微鏡写真である。
【
図7】本明細書が開示する第1の実施形態の半導体装置の製造方法のうち、トレンチゲートを形成するための製造フローを示す図である。
【
図8】本明細書が開示する第1の実施形態の半導体装置の製造方法のうち、トレンチゲートを形成する製造工程中の半導体層の要部断面図を示す図である。
【
図9】本明細書が開示する第1の実施形態の半導体装置の製造方法のうち、トレンチゲートを形成する製造工程中の半導体層の要部断面図を示す図である。
【
図10】本明細書が開示する第1の実施形態の半導体装置の製造方法のうち、トレンチゲートを形成する製造工程中の半導体層の要部断面図を示す図である。
【
図11】本明細書が開示する第1の実施形態の半導体装置の製造方法のうち、トレンチゲートを形成する製造工程中の半導体層の要部断面図を示す図である。
【
図12】本明細書が開示する第2の実施形態の半導体装置の要部断面図を模式的に示しており、
図1のIII-III線に対応した断面図である。
【
図13】本明細書が開示する第2の実施形態の半導体装置の要部断面図を模式的に示しており、
図1のIV-IV線に対応した断面図である。
【
図14】本明細書が開示する第2の実施形態の半導体装置の製造方法のうち、トレンチゲートを形成する製造工程中の半導体層の要部断面図を示す図である。
【
図15】本明細書が開示する第2の実施形態の半導体装置の製造方法のうち、トレンチゲートを形成する製造工程中の半導体層の要部断面図を示す図である。
【
図16】本明細書が開示する第2の実施形態の半導体装置の製造方法のうち、トレンチゲートを形成する製造工程中の半導体層の要部断面図を示す図である。
【
図17】本明細書が開示する第2の実施形態の半導体装置の製造方法のうち、トレンチゲートを形成する製造工程中の半導体層の要部断面図を示す図である。
【
図18】本明細書が開示する第3の実施形態の半導体装置であって、トレンチの両端部の平面形状を模式的に示す図である。
【
図19】本明細書が開示する第3の実施形態の半導体装置であって、トレンチの両端部の平面形状を模式的に示す図である。
【
図20】本明細書が開示する第3の実施形態の半導体装置であって、トレンチの両端部の平面形状を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本明細書が開示する複数の実施形態の半導体装置について説明する。複数の実施形態を通して共通する構成要素には共通の符号を付し、その説明を省略する。なお、図示明瞭化を目的として、繰り返し配置されている構成要素についてはその1つのみに符号を付すことがある。
【0009】
(第1実施形態)
図1に示すように、半導体装置1は、半導体層10を備えている。半導体層10は、特に限定されるものではないが、例えば4Hの炭化珪素層であってもよい。半導体層10は、その上面の結晶面が(0001)のSi面に対してオフ角だけ傾斜していてもよい。オフ角は、特に限定されるものではないが、例えば4°であってもよい。半導体層10は、炭化珪素層に代えて、例えばシリコン層、窒化物半導体層、酸化ガリウム層であってもよい。以下では、半導体層10の厚み方向をz方向といい、半導体層10の上面に平行な一方向をx方向といい、x方向とz方向に対して直交する方向をy方向という。
【0010】
半導体装置1は、半導体層10の上層部に設けられた複数のトレンチゲート30を備えている。複数のトレンチゲート30の各々は、半導体層10を平面視したときに、一方向(この例ではy方向であり、以下、「トレンチゲート30の長手方向」という)に沿って延びている。また、複数のトレンチゲート30は、半導体層10を平面視したときに、トレンチゲート30の長手方向に直交する方向(この例ではx方向であり、以下、「トレンチゲート30の繰り返し方向」という)に相互に間隔を置いて配置されている。このように、複数のトレンチゲート30は、半導体層10を平面視したときに、ストライプ状に配置されている。
【0011】
複数のトレンチゲート30の各々は、半導体層10の上層部に形成された複数のトレンチ40のうち対応するトレンチ40内に設けられている。
図2に、半導体層10の上層部に形成された1つのトレンチ40の端部近傍を示す。ここで、本明細書では、トレンチ40の側壁のうち、トレンチ40の長手方向(この例では、y方向)の両端の各々にある側壁を端側壁42という。一対の端側壁42は、トレンチ40の長手方向に対向するように形成されている。一対の端側壁42の各々は、トレンチ40の長手方向に非平行な側壁であり、この例では、トレンチ40の長手方向に直交する方向、即ちxz平面に平行に延びている。また、トレンチ40の側壁のうち、一対の端側壁42の間を延びている一対の側壁の各々を長手側壁44という。一対の長手側壁44の各々は、トレンチ40の長手方向に平行な側壁であり、この例では、yz平面に平行に延びている。
【0012】
図1に示すように、本明細書では、複数のトレンチゲート30のうち繰り返し方向の両端の各々に配置されているトレンチゲート30を両端トレンチゲート30Aとして他のトレンチゲート30から区別し、それらの両端トレンチゲート30Aが設けられているトレンチ40を両端トレンチ40Aという。また、複数のトレンチゲート30のうち、一対の両端トレンチゲート30Aの間に配置されている複数のトレンチゲート30の各々を内側トレンチゲート30Bとして他のトレンチゲート30から区別し、それら複数の内側トレンチゲート30Bが設けられているトレンチ40を内側トレンチ40Bという。
【0013】
図3及び
図4に示されるように、半導体装置1は、MOSFETと称される種類のパワー半導体装置であり、半導体層10の下面を被覆するドレイン電極22と、半導体層10の上面を被覆するソース電極24と、を備えている。半導体層10は、n
+型のドレイン領域12と、n型のドリフト領域14と、p型のボディ領域16と、n
+型のソース領域18と、p
+型のボディコンタクト領域19と、を有している。
【0014】
ドレイン領域12は、半導体層10の下層部に配置されており、半導体層10の下面に露出する位置に設けられている。ドレイン領域12は、半導体層10の下面を被膜するドレイン電極22にオーミック接触している。
【0015】
ドリフト領域14は、ドレイン領域12とボディ領域16の間に設けられている。ドリフト領域14のn型不純物の濃度は、ドレイン領域12のn型不純物の濃度よりも低い。なお、ドリフト領域14は、n型コラムとp型コラムが半導体層10の横断面内において少なくとも一方向に沿って交互に繰り返すように配置されたスーパージャンクション構造を構成していてもよい。
【0016】
ボディ領域16は、ドリフト領域14上に設けられており、半導体層10の上層部に配置されている。ボディ領域16は、ドリフト領域14とソース領域18の間に設けられており、ドリフト領域14とソース領域18の双方に接しており、ドリフト領域14とソース領域18を隔てている。ボディ領域16のp型不純物の濃度は、所望のゲート閾値電圧に応じて調整されている。
【0017】
ソース領域18は、ボディ領域16上に設けられており、半導体層10の上層部に配置されており、半導体層10の表面に露出する位置に設けられている。ソース領域18は、トレンチゲート30の側面に接している。ソース領域18は、半導体層10の表面を被膜するソース電極24にオーミック接触している。
【0018】
ボディコンタクト領域19は、ボディ領域16上に設けられており、半導体層10の上層部に配置されており、半導体層10の表面に露出する位置に設けられている。ボディコンタクト領域19は、半導体層10の表面を被膜するソース電極24にオーミック接触している。
【0019】
複数のトレンチゲート30の各々は、半導体層10の上面からソース領域18及びボディ領域16を貫通してドリフト領域14に達している。複数のトレンチゲート30の各々は、ゲート電極32とゲート絶縁膜34を有している。ゲート電極32は、特に限定されるものではないが、例えば不純物を含むポリシリコンで形成されており、ゲート絶縁膜34を介して半導体層10に対向している。特に、ゲート電極32は、ドリフト領域14とソース領域18を隔てる部分のボディ領域16にゲート絶縁膜34を介して対向している。ゲート絶縁膜34は、特に限定されるものではないが、例えば高温シリコン酸化膜(HTO膜)で形成されており、トレンチ40の内壁を被覆している。
【0020】
次に、半導体装置1の動作を説明する。ソース電極24の電位よりもドレイン電極22の電位が高い状態で、トレンチゲート30のゲート電極32の電位がソース電極24よりも高く、且つ閾値よりも高くなるように制御されると、半導体装置1はターンオンする。このとき、ソース領域18とドリフト領域14を隔てる部分のボディ領域16に反転層が形成される。ソース領域18から供給される電子は、その反転層のチャネルを経由してドリフト領域14に達する。ドリフト領域14に達した電子は、ドリフト領域14を経由してドレイン領域12に流れる。一方、トレンチゲート30のゲート電極32の電位がソース電極24の電位と同一となるように制御されると、反転層のチャネルが消失し、半導体装置1はターンオフする。このように、半導体装置1は、スイッチング素子として動作することができる。
【0021】
次に、半導体装置1の特徴について説明する。
図5に、両端トレンチゲート30Aが設けられている両端トレンチ40Aの長手側壁44の電子顕微鏡写真を示す。
図6に、内側トレンチゲート30Bが設けられている内側トレンチ40Bの長手側壁44の電子顕微鏡写真を示す。
図5に示されるように、両端トレンチ40Aの長手側壁44には、高低差の大きい凹凸が形成されている。一方、
図6に示されるように、内側トレンチ40Bの長手側壁44には、高低差の小さい凹凸が形成されている。又は、内側トレンチ40Bの長手側壁44は、実質的に凹凸がなく、平坦になっていてもよい。このため、
図5及び
図6に示されるように、両端トレンチ40Aの長手側壁44の表面粗さは、内側トレンチ40Bの長手側壁44の表面粗さよりも大きい。なお、図示省略しているが、両端トレンチ40A及び内側トレンチ40Bの各々の端側壁42も、両端トレンチ40Aの長手側壁44と同様に高低差の大きい凹凸が形成されている。このため、両端トレンチ40A及び内側トレンチ40Bの各々の端側壁42の表面粗さも、内側トレンチ40Bの長手側壁44の表面粗さよりも大きい。
【0022】
後述の製造方法で説明するように、このような凹凸は、トレンチ40をエッチング加工するときに形成された凹凸が残存してできたものである。凹凸の表面粗さは、トレンチ40の位置に依存しており、複数のトレンチ40が形成されている領域の外周部分で大きくなる。このため、両端トレンチ40A及び内側トレンチ40Bの端側壁42、並びに両端トレンチ40Aの長手側壁44の表面粗さが大きくなる。なお、ここでいう表面粗さは、算術平均粗さ(Ra)をいう。
【0023】
ここで、本明細書では、特に説明がない限り、内側トレンチ40Bの長手側壁44とは、内側トレンチ40Bの長手方向(この例では、y方向)の中間部にある一対の長手側壁44のことをいう。
図1に示すように、内側トレンチ40Bの中間部46は、内側トレンチ40Bの長手方向の中間点47から長手方向に所定距離だけ延びた範囲として定義される。所定距離は、内側トレンチ40Bの短手方向(この例では、x方向)に沿って計測されるトレンチ幅と同一としてもよい。以下、内側トレンチ40Bの長手側壁44という場合、内側トレンチ40Bの中間部46にある長手側壁44のことをいう。一方、両端トレンチ40Aの長手側壁44という場合、両端トレンチ40Aの長手方向の任意の位置にある長手側壁44のことをいう。
【0024】
図4に示されるように、内側トレンチ40Bの端側壁42を被覆するゲート絶縁膜34の膜厚が「W1」である。なお、図示省略しているが、両端トレンチ40Aの端側壁42を被覆するゲート絶縁膜34の膜厚も同様に略「W1」である。
図3に示されるように、両端トレンチ40Aの長手側壁44を被覆するゲート絶縁膜34の膜厚が「W2」であり、内側トレンチ40Bの長手側壁44を被覆するゲート絶縁膜34の膜厚が「W3」である。半導体装置1では、W1>W3が成立し、W2>W3が成立している。
【0025】
半導体装置1では、表面粗さが相対的に大きい両端トレンチ40A及び内側トレンチ40Bの端側壁42に、相対的に膜厚の大きいゲート絶縁膜34が被覆している(即ち、膜厚W1)。同様に、両端トレンチ40Aの長手側壁44にも相対的に膜厚の大きいゲート絶縁膜34が被覆している(即ち、膜厚W2)。一方、半導体装置1では、表面粗さが相対的に小さい内側トレンチ40Bの長手側壁44に、相対的に膜厚の小さいゲート絶縁膜34が被覆している(即ち、膜厚W3)。トレンチ40の側壁のうち表面粗さの大きい側壁では、トレンチゲート30のゲート絶縁膜34の耐圧及び信頼性が悪化する可能性がある。半導体装置1では、トレンチ40の側壁のうち表面粗さの大きい側壁に対応したトレンチゲート30のゲート絶縁膜34が厚く形成されているので、ゲート絶縁膜34の耐圧及び信頼性の悪化が抑えられている。
【0026】
(第1実施形態の半導体装置の製造方法)
次に、
図7~
図11を参照し、半導体装置1の製造方法のうちトレンチゲートを形成する工程について説明する。
図7に製造フローを示し、
図8~
図11に製造工程中の要部断面図を模式的に示す。
図8~
図11において、(A)が
図1のIII-III線の断面図に対応しており、(B)が
図1のIV-IV線の断面図に対応している。なお、半導体装置1の製造するための他の工程については、公知の製造技術を利用することができる。
【0027】
まず、
図8に示すように、n
+型の炭化珪素基板であるドレイン領域12を準備する。次に、特に限定されるものではないが、例えばエピタキシャル成長技術を利用して、ドレイン領域12の表面から炭化珪素のn型のエピ層を成長させ、半導体層10を形成する。次に、イオン注入技術を利用して、p型不純物イオン及びn型不純物イオンを半導体層10の上層部に注入し、ボディ領域16とソース領域18とボディコンタクト領域19を形成する。
【0028】
次に、
図9に示すように、ドライエッチング技術を利用して、半導体層10の上層部に複数のトレンチ40を形成する(即ち、
図7のステップS1)。このトレンチ形成工程では、トレンチ40の側壁に凹凸が形成される。特に、両端トレンチ40A及び内側トレンチ40Bの端側壁42は、トレンチ40が形成されている領域の最外周に位置し、それよりも外側にトレンチ40が形成されていない。このため、両端トレンチ40A及び内側トレンチ40Bの端側壁42は、単位当たりの表面積が相対的に小さいので、単位面積当たりに供給されるエッチングガスが多くなり、凹凸が相対的に深く形成される。同様に、両端トレンチ40Aの長手側壁44も、単位当たりの表面積が相対的に小さいので、凹凸が相対的に深く形成される。一方、内側トレンチ40Bの中間部(即ち、
図1の中間部46)の長手側壁44は、トレンチ40が形成されている領域の最外周から離れており、単位当たりの表面積が相対的に大きいので、凹凸が相対的に浅く形成される。
【0029】
次に、CF
4とO
2を含むガスを用いたケミカルドライエッチング技術を利用して、トレンチ40の側壁に形成された凹凸を平坦化し、トレンチ40の側壁の表面粗さを低下させる(即ち、
図7のステップS2)。この平坦化工程は、全てのトレンチ40の側壁の凹凸が実質的に平坦になるまで実施されない。平坦化工程は、
図5及び
図6に示したように、両端トレンチ40A及び内側トレンチ40Bの端側壁42、並びに両端トレンチ40Aの長手側壁44に凹凸が残存し、これら側壁の表面粗さが内側トレンチ40Bの長手側壁44の表面粗さよりも大きい状態が維持されているときに終了する。例えば、両端トレンチ40A及び内側トレンチ40Bの端側壁42、並びに両端トレンチ40Aの長手側壁44の表面粗さが内側トレンチ40Bの長手側壁44の表面粗さと同等になるまで平坦化工程を継続すると、エッチング量が増加してトレンチ幅が拡大し、隣り合うトレンチ40間の距離が短くなるという問題がある。本明細書が開示する製造方法では、両端トレンチ40A及び内側トレンチ40Bの端側壁42、並びに両端トレンチ40Aの長手側壁44の凹凸を許容することで、隣り合うトレンチ40間の距離を確保することができる。
【0030】
次に、
図10示すように、減圧CVD技術を利用して、トレンチ40の側壁にゲート絶縁膜34を成膜する(即ち、
図7のステップS3)。両端トレンチ40A及び内側トレンチ40Bの端側壁42は、単位当たりの表面積が相対的に小さいので、単位面積当たりに供給される原料ガスが多くなり、被膜するゲート絶縁膜34の膜厚が相対的に大きく形成される。同様に、両端トレンチ40Aの長手側壁44も、単位当たりの表面積が相対的に小さいので、被膜するゲート絶縁膜34の膜厚が相対的に大きく形成される。一方、内側トレンチ40Bの長手側壁44は、単位当たりの表面積が相対的に大きいので、被膜するゲート絶縁膜34の膜厚が相対的に小さく形成される。このように、トレンチゲート形成工程では、トレンチ40の側壁のうち表面粗さが相対的に大きい側壁に被膜するゲート絶縁膜34の膜厚を相対的に大きくなることができる。
【0031】
次に、
図11に示すように、CVD技術を利用して、トレンチ40内にゲート電極32を充填する(即ち、
図7のステップS4)。その後、半導体層10の上面に堆積したゲート電極32及びゲート絶縁膜34を除去することにより、トレンチゲート30を形成することができる。
【0032】
上記製造方法では、両端トレンチ40A及び内側トレンチ40Bの端側壁42、並びに両端トレンチ40Aの長手側壁44に表面粗さが相対的に大きい凹凸が残存した状態で平坦化工程を終了する。しかしながら、その後のトレンチゲート形成工程では、表面粗さが相対的に大きい側壁に膜厚が相対的に大きいゲート絶縁膜34を選択的に成膜することができる。このため、上記製造方法で製造される半導体装置では、ゲート絶縁膜34の耐圧及び信頼性の悪化が抑えられる。換言すると、上記製造方法は、平坦化工程を短縮してエッチング量を削減しながら、ゲート絶縁膜の耐圧及び信頼性の悪化が抑えられた半導体装置を製造することができる。このため、エッチング量を考慮して隣り合うトレンチ40間の距離を大きく確保する必要がない。上記製造方法は、トレンチピッが微細化された半導体装置を製造することができる。
【0033】
(第2実施形態)
図12及び
図13に、第2実施形態の半導体装置2を示す。ここで、
図13に示すように、内側トレンチ40Bの端側壁42の傾斜角が「θ1」である。なお、図示省略しているが、両端トレンチ40Aの端側壁42の傾斜角も略「θ1」である。さらに、
図12に示すように、両端トレンチ40Aの一対の長手側壁44のうち繰り返し方向(この例では、x方向)の外側の長手側壁44の傾斜角が「θ2」であり、内側トレンチ40Bの長手側壁44の傾斜角が「θ3」である。半導体装置2では、θ1<θ3が成立し、θ2<θ3が成立している。ここで、トレンチ40の側壁の傾斜角とは、半導体層10の上面に平行な面(この例では、xy平面である)とトレンチ40の側壁との間で形成される外角である。
【0034】
傾斜角が相対的に小さい側壁は、ゲート絶縁膜形成工程におけるカバレッジ増加により、ゲート絶縁膜34の膜厚が相対的に大きくなる。なお、ゲート絶縁膜34の膜厚W1,W2,W3の相対的な関係は、第1実施形態の半導体装置1と同様である。したがって、半導体装置2では、両端トレンチ40A及び内側トレンチ40Bの端側壁42、並びに両端トレンチ40Aの長手側壁44に、膜厚が相対的に大きいゲート絶縁膜34が被覆している。この結果、半導体装置2では、トレンチ40の側壁のうち表面粗さの大きい側壁に対応したトレンチゲート30のゲート絶縁膜34が厚く形成されているので、ゲート絶縁膜34の耐圧及び信頼性の悪化が抑えられる。
【0035】
(第2実施形態の半導体装置の製造方法)
次に、
図14~
図17を参照し、半導体装置2の製造方法のうちトレンチゲートを形成する工程について説明する。
図14~
図17において、(A)が
図1のIII-III線の断面図に対応しており、(B)が
図1のIV-IV線の断面図に対応している。
【0036】
まず、半導体層10を準備するまでの工程(
図8参照)は、第1実施形態の半導体装置1の製造方法と同様である。次に、
図14に示すように、CVD技術を利用して、半導体層10の上面にマスク52を成膜する。マスク52は、特に限定されるものではないが、例えば酸化シリコンであってもよい。次に、フォトリソグラフィー技術を利用して、マスク52上にレジスト54をパターニングする。レジスト54は、トレンチゲート用のトレンチの形成範囲に対応して開口している。
【0037】
次に、
図15に示すように、熱処理技術を利用して、レジスト54を収縮させる。レジスト54は、表面積が大きいほど収縮量が大きくなる。このため、レジスト54の開口部を画定する側面のうち表面積が大きいレジスト54に隣接する開口部の側面が大きく傾斜する。この例では、両端トレンチ40A及び内側トレンチ40Bの端側壁42、並びに両端トレンチ40Aの長手側壁44に対応したレジスト54の開口部の側面が大きく傾斜する。
【0038】
次に、
図16に示すように、ドライエッチング技術を利用して、レジスト54の開口部から露出するマスク52の一部をエッチングし、マスク52に開口部を形成する。マスク52に形成される開口部は、レジスト54の開口部の形状を反映して形成される。
【0039】
次に、
図17に示すように、ドライエッチング技術を利用して、マスク52の開口部から露出する半導体層10の上層部をエッチングし、半導体層10の上層部に複数のトレンチ40を形成する。半導体層10の上層部に形成される複数のトレンチ40の形状は、マスク52の開口部の形状を反映して形成される。このトレンチ形成工程は、第1実施形態の半導体装置1の製造方法のトレンチ形成工程に対応する(即ち、
図7のステップS1)。これ以降の工程は、第1実施形態の半導体装置1の製造方法と同様である。これにより、半導体装置2の複数のトレンチゲート30を形成することができる。上記したように、両端トレンチ40A及び内側トレンチ40Bの端側壁42、並びに両端トレンチ40Aの長手側壁44の傾斜角が相対的に小さいので、ゲート絶縁膜形成工程におけるカバレッジ増加により、両端トレンチ40A及び内側トレンチ40Bの端側壁42、並びに両端トレンチ40Aの長手側壁44を被覆するゲート絶縁膜34の膜厚が相対的に大きくなる。
【0040】
(第3実施形態)
トレンチゲート30の長手方向の両端部に設けられているゲート絶縁膜34の膜厚を選択的に大きくするために、トレンチ40の長手方向の両端部のアスペクト比を大きくしてもよい。トレンチ40のアスペクト比が大きいと、ゲート絶縁膜形成工程におけるカバレッジ増加により、ゲート絶縁膜34の膜厚が大きくなる。
【0041】
図18の例は、トレンチ40の長手方向の両端部48のトレンチ幅W48が大きく形成され、平面視したときに、トレンチ40の長手方向の両端部48が矩形状に形成された例である。端部48以外のトレンチ40のトレンチ幅W40は、両端部48の間に亘って一定である。ここで、トレンチ40の端部48は、端側壁42から長手方向に沿って所定距離だけ延びた範囲として定義される。所定距離は、トレンチ40のトレンチ幅W40以上であり、トレンチ40のトレンチ幅W40の10倍以下、8倍以下、又は5倍以下であってもよい。また、トレンチ幅は、トレンチ40の長手方向に直交する方向に沿って計測された長さである。このように、トレンチ40の両端部48では、アスペクト比が大きく形成されており、この結果、ゲート絶縁膜形成工程におけるカバレッジ増加により、ゲート絶縁膜34の膜厚が大きく形成される。
【0042】
図19の例は、トレンチ40の長手方向の両端部48のトレンチ幅W48が大きく形成され、平面視したときに、トレンチ40の長手方向の両端部48が台形状に形成された例である。トレンチ40の両端部48のトレンチ幅W48は、トレンチ40の長手方向に沿って外側に向かって連続的に増加している。この例も同様に、トレンチ40の両端部48では、アスペクト比が大きく形成されており、この結果、ゲート絶縁膜形成工程におけるカバレッジ増加により、ゲート絶縁膜34の膜厚が大きく形成される。
【0043】
図20の例は、トレンチ40の長手方向の両端部48のトレンチ幅W48が大きく形成され、平面視したときに、トレンチ40の長手方向の両端部48が円形状に形成された例である。この例も同様に、トレンチ40の両端部48では、アスペクト比が大きく形成されており、この結果、ゲート絶縁膜形成工程におけるカバレッジ増加により、ゲート絶縁膜34の膜厚が大きく形成される。
【0044】
図18~
図20の例は、トレンチ40の両端部48の形状に合わせてマスクのパターニングを変更するだけで容易に製造することができる。
【0045】
以下、本明細書で開示される技術の特徴を整理する。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【0046】
(特徴1)
半導体装置(1,2)であって、
半導体層(10)と、
前記半導体層に設けられている複数のトレンチゲート(30)であって、前記複数のトレンチゲートの各々が前記半導体層の上層部に形成されている複数のトレンチ(40)のうち対応するトレンチ内に設けられている、複数のトレンチゲートと、を備えており、
前記複数のトレンチの各々は、前記半導体層を平面視したときに、少なくとも第1方向に沿って延びており、
前記複数のトレンチは、前記半導体層を平面視したときに、前記第1方向に直交する第2方向に相互に間隔を置いて配置されており、
前記複数のトレンチの各々は、前記第1方向の両端の各々にある端側壁(42)と、一対の前記端側壁の間を延びている一対の長手側壁(44)と、を有しており、
前記複数のトレンチは、前記第2方向の両端の各々に配置されている両端トレンチ(40A)と、一対の前記両端トレンチの間に配置されている内側トレンチ(40B)と、に区別され、
前記内側トレンチの前記端側壁の表面粗さが、前記内側トレンチのうち前記第1方向の中間部(46)にある前記長手側壁の表面粗さよりも大きく、
前記内側トレンチの前記端側壁を被覆するゲート絶縁膜(34)の膜厚が、前記内側トレンチの前記中間部にある前記長手側壁を被覆するゲート絶縁膜の膜厚よりも大きい、半導体装置。
【0047】
(特徴2)
前記内側トレンチの前記端側壁の傾斜角度が、前記内側トレンチの前記中間部にある前記長手側壁の傾斜角度よりも小さい、特徴1に記載の半導体装置。
【0048】
(特徴3)
前記トレンチでは、前記第1方向の両端部の各々のトレンチ幅が、前記第1方向の中間部のトレンチ幅よりも大きい、特徴1又は2に記載の半導体装置。
【0049】
(特徴4)
前記両端トレンチの一対の前記長手側壁のうち前記第2方向の外側にある外側長手側壁の表面粗さが、前記内側トレンチの前記中間部にある前記長手側壁の表面粗さよりも大きく、
前記両端トレンチの前記外側長手側壁を被覆するゲート絶縁膜の膜厚が、前記内側トレンチの前記中間部にある前記長手側壁を被覆するゲート絶縁膜の膜厚よりも大きい、特徴1~3のいずれか1つに記載の半導体装置。
【0050】
(特徴5)
前記半導体層が炭化珪素である、特徴1~4のいずれか1つに記載の半導体装置。
【0051】
(特徴6)
半導体装置(1,2)の製造方法であって、
半導体層(10)の上層部に複数のトレンチ(40)を形成するトレンチ形成工程と、
前記複数のトレンチの各々にトレンチゲート(30)を形成し、複数のトレンチゲートを形成するトレンチゲート形成工程と、を備えており、
前記複数のトレンチの各々は、前記半導体層を平面視したときに、少なくとも第1方向に沿って延びており、
前記複数のトレンチは、前記半導体層を平面視したときに、前記第1方向に直交する第2方向に相互に間隔を置いて配置されており、
前記複数のトレンチの各々は、前記第1方向の両端の各々にある端側壁(42)と、一対の前記端側壁の間を延びている一対の長手側壁(44)と、を有しており、
前記複数のトレンチは、前記第2方向の両端の各々に配置されている両端トレンチ(40A)と、一対の前記両端トレンチの間に配置されている内側トレンチ(40B)と、に区別され、
前記トレンチゲート形成工程では、前記内側トレンチの前記端側壁の表面粗さが、前記内側トレンチのうち前記第1方向の中間部(46)にある前記長手側壁の表面粗さよりも大きい状態で、前記内側トレンチの前記端側壁を被覆するゲート絶縁膜(34)の膜厚が、前記内側トレンチの前記中間部にある前記長手側壁を被覆するゲート絶縁膜の膜厚よりも大きくなるように、前記複数のトレンチゲートが形成される、半導体装置の製造方法。
【0052】
(特徴7)
前記トレンチ形成工程では、前記内側トレンチの前記端側壁の傾斜角度が、前記内側トレンチの前記中間部の前記長手側壁の傾斜角度よりも小さくなるように、前記複数のトレンチが形成される、特徴6に記載の半導体装置の製造方法。
【0053】
(特徴8)
前記トレンチ形成工程では、前記トレンチの前記第1方向の両端部の各々のトレンチ幅が、前記トレンチの前記第1方向の中間部のトレンチ幅よりも大きくなるように、前記複数のトレンチが形成される、特徴6又は7に記載の半導体装置の製造方法。
【0054】
(特徴9)
前記トレンチゲート形成工程では、前記両端トレンチの一対の前記長手側壁のうち前記第2方向の外側にある外側長手側壁の表面粗さが、前記内側トレンチの前記中間部にある前記長手側壁の表面粗さよりも大きい状態で、前記両端トレンチの前記外側長手側壁を被覆するゲート絶縁膜の膜厚が、前記内側トレンチの前記中間部にある前記長手側壁を被覆するゲート絶縁膜の膜厚よりも大きくなるように、前記複数のトレンチゲートが形成される、特徴6~8のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【0055】
前記半導体層が炭化珪素である、特徴6~9のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【0056】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0057】
1,2:半導体装置、 10:半導体層、 30:トレンチゲート、 30A:両端トレンチゲート、 30B:内側トレンチゲート、 32:ゲート電極、 34:ゲート絶縁膜、 40:トレンチ、 40A:両端トレンチ、 40B:内側トレンチ、 42:端側壁、 44:長手側壁、 46:中間部