IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧 ▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社ミライズテクノロジーズの特許一覧

<>
  • 特開-半導体装置とその製造方法 図1
  • 特開-半導体装置とその製造方法 図2
  • 特開-半導体装置とその製造方法 図3
  • 特開-半導体装置とその製造方法 図4
  • 特開-半導体装置とその製造方法 図5
  • 特開-半導体装置とその製造方法 図6
  • 特開-半導体装置とその製造方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093631
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】半導体装置とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20240702BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20240702BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20240702BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
H01L29/78 658A
H01L29/78 652H
H01L29/78 653A
H01L29/78 652T
H01L21/265 F
H01L21/265 602A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210142
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古村 雄太
(57)【要約】
【課題】繰り返し構造を備えた半導体装置において、所望形状の繰り返し構造を形成することができる技術を提供する。
【解決手段】半導体装置の製造方法は、半導体層10の上面にマスク42を成膜する成膜工程であって、半導体層10は上面に露出する位置に配置されているn型不純物を含むn型半導体層140を有しており、マスク42はp型領域の形成範囲に対応して開口している、成膜工程と、マスク42の開口を介して半導体層10のn型半導体層140内にp型不純物をイオン注入するイオン注入工程であって、注入されたp型不純物の濃度が半導体層10の深さ方向に沿って半導体層10の深部に向けて増加する、イオン注入工程と、イオン注入工程の後に、半導体層10を熱処理する熱処理工程と、を備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型領域(14a)と第2導電型領域(14b)が少なくとも一方向に沿って交互に繰り返し配置されている繰り返し構造を含む半導体層(10)、を備えた半導体装置(1)の製造方法であって、
前記半導体層の上面にマスク(42)を成膜する成膜工程であって、前記半導体層は前記上面に露出する位置に配置されている第2導電型不純物を含む第2導電型半導体層(140)を有しており、前記マスクは前記第1導電型領域の形成範囲に対応して開口している、成膜工程と、
前記マスクの開口を介して前記半導体層の前記第2導電型半導体層内に第1導電型不純物をイオン注入するイオン注入工程であって、注入された前記第1導電型不純物の濃度が前記半導体層の深さ方向に沿って前記半導体層の深部に向けて増加する、イオン注入工程と、
前記イオン注入工程の後に、前記半導体層を熱処理する熱処理工程と、を備える、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記イオン注入工程では、前記第1導電型不純物が注入された領域の少なくとも一部の深さ範囲において欠陥密度が5[個/0.01μm2]以上となるように、前記第1導電型不純物がイオン注入される、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第2導電型半導体層に含まれる前記第2導電型不純物の濃度が前記半導体層の前記深さ方向に沿って前記半導体層の深部に向けて増加しており、
前記繰り返し構造がスーパージャンクション構造である、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
半導体装置(1)であって
第1導電型領域(14a)と第2導電型領域(14b)が少なくとも一方向に沿って交互に繰り返し配置されている繰り返し構造を含む半導体層(10)、を備えており、
前記第1導電型領域に含まれる第1導電型不純物の濃度は、前記半導体層の深さ方向に沿って前記半導体層の深部に向けて増加している、半導体装置。
【請求項5】
前記第1導電型領域は、少なくとも一部の深さ範囲において欠陥密度が5[個/0.01μm2]以上である、請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第2導電型領域に含まれる第2導電型不純物の濃度は、前記半導体層の前記深さ方向に沿って前記半導体層の深部に向けて増加しており、
前記繰り返し構造がスーパージャンクション構造である、請求項4に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、半導体装置とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ある種の半導体装置は、p型領域とn型領域が少なくとも一方向に沿って交互に繰り返し配置されている繰り返し構造を含む半導体層を備えている。特許文献1は、このような繰り返し構造を備えた半導体装置の一例を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-118464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような繰り返し構造は、例えばn型半導体層の所定領域にp型不純物をイオン注入して形成される。p型不純物をイオン注入するとき、n型半導体層の上面からn型半導体層内に注入されたp型不純物は、n型半導体層の深さが増加するにつれて散乱現象によって横方向に拡散する。p型不純物が横方向に拡散すると、p型不純物の濃度は薄くなる。このため、p型不純物が横方向に拡散した領域では、p型不純物がn型半導体層のn型不純物と相殺され、p型領域になることができない。このため、n型半導体層内の所定領域には先細り形状のp型領域が形成されてしまう。本明細書は、繰り返し構造を備えた半導体装置において、所望形状の繰り返し構造を形成することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書は、第1導電型領域(14a)と第2導電型領域(14b)が少なくとも一方向に沿って交互に繰り返し配置されている繰り返し構造を含む半導体層(10)、を備えた半導体装置(1)の製造方法を開示することができる。この製造方法は、前記半導体層の上面にマスク(42)を成膜する成膜工程であって、前記半導体層は前記上面に露出する位置に配置されている第2導電型不純物を含む第2導電型半導体層を有しており、前記マスクは前記第1導電型領域の形成範囲に対応して開口している、成膜工程と、前記マスクの開口を介して前記半導体層の前記第2導電型半導体層内に第1導電型不純物をイオン注入するイオン注入工程であって、注入された第1導電型不純物の濃度が前記半導体層の深さ方向に沿って前記半導体層の深部に向けて増加する、イオン注入工程と、前記イオン注入工程の後に、前記半導体層を熱処理する熱処理工程と、を備えていてもよい。この製造方法では、前記イオン注入工程の注入ダメージによって前記第1導電型不純物が注入された領域に欠陥が形成される。欠陥が形成される領域は、前記第1導電型不純物の照射方向に沿って観測したときに、前記マスクの開口の範囲内に収まる。また、形成される欠陥の密度は、前記半導体層の深さ方向に沿って前記半導体層の深部に向けて増加する。前記熱処理工程を実施すると、形成された欠陥は、前記第1導電型不純物をトラップするように働くことができる。このため、散乱現象によって横方向に拡散した前記第1導電型不純物は、欠陥が形成された領域内に偏在することができる。特に、前記半導体層の深部において欠陥の密度が高く形成されているので、前記半導体層の深部において前記第1導電型不純物の横方向の拡散が効果的に抑えられる。この結果、前記第1導電型不純物が注入された領域は、先細り形状になることが抑制される。上記製造方法によると、所望形状の繰り返し構造を備えた半導体装置を製造することができる。
【0006】
本明細書が開示する半導体装置(1)は、第1導電型領域(14a)と第2導電型領域(14b)が少なくとも一方向に沿って交互に繰り返し配置されている繰り返し構造を含む半導体層(10)、を備えていてもよい。前記第1導電型領域に含まれる第1導電型不純物の濃度は、前記半導体層の深さ方向に沿って前記半導体層の深部に向けて増加していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本明細書が開示する実施形態の半導体装置の要部断面図を模式的に示す。
図2】半導体層の深さ方向におけるp型コラムのp型不純物の濃度分布を示す。
図3】半導体層の深さ方向におけるn型コラムのn型不純物の濃度分布を示す。
図4図1に示す半導体装置を製造する製造工程中の要部断面図を模式的に示す。
図5図1に示す半導体装置を製造する製造工程中の要部断面図を模式的に示す。
図6図1に示す半導体装置を製造する製造工程中の要部断面図であって、注入されたp型不純物の範囲と注入ダメージで形成された高濃度欠陥の範囲を模式的に示す。
図7図1に示す半導体装置を製造する製造工程中の要部断面図であって、熱処理工程後のp型不純物の範囲を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本明細書が開示する半導体装置について説明する。なお、図示明瞭化を目的として、繰り返し配置されている構成要素についてはその1つのみに符号を付す。
【0009】
図1に、半導体装置1の要部断面図を模式的に示す。半導体装置1は、MOSFETと称される種類のパワー半導体装置であり、半導体層10と、半導体層10の下面を被覆するドレイン電極22と、半導体層10の上面を被覆するソース電極24と、半導体層10の上層部に設けられている複数のトレンチゲート30と、を備えている。
【0010】
半導体層10は、特に限定されるものではないが、例えば4Hの炭化珪素層であってもよい。半導体層10は、その上面の結晶面が(0001)のSi面に対してオフ角だけ傾斜していてもよい。オフ角は、特に限定されるものではないが、例えば4°であってもよい。半導体層10は、炭化珪素層に代えて、例えばシリコン層、窒化物半導体層、酸化ガリウム層であってもよい。半導体層10は、n+型のドレイン領域12と、ドリフト領域14と、p型のボディ領域16と、n+型のソース領域18と、p+型のボディコンタクト領域19と、を有している。
【0011】
ドレイン領域12は、半導体層10の下層部に配置されており、半導体層10の下面に露出する位置に設けられている。ドレイン領域12は、半導体層10の下面を被膜するドレイン電極22にオーミック接触している。
【0012】
ドリフト領域14は、ドレイン領域12とボディ領域16の間に設けられており、複数のp型コラム14aと複数のn型コラム14bを有している。p型コラム14aは第1導電型領域の一例であり、n型コラム14bは第2導電型領域の一例である。p型コラム14aとn型コラム14bは、半導体層10の横断面内において少なくとも一方向に沿って交互に繰り返すように配置されており、スーパージャンクション構造を構成している。複数のp型コラム14aと複数のn型コラム14bは、特に限定されるものではないが、半導体層10の上面に直交する方向から見たときに(以下、「平面視したときに」という)、例えばストライプ状に配置されていてもよい。
【0013】
図2に示すように、複数のp型コラム14aの各々のp型不純物の濃度は、半導体層10の深さ方向に沿って半導体層10の深部に向けて、即ち、ボディ領域16に接する部分からドレイン領域12に接する部分に向けて単調増加している。同様に、図3に示すように、複数のn型コラム14bの各々のn型不純物の濃度も、半導体層10の深さ方向に沿って半導体層10の深部に向けて、即ち、ボディ領域16に接する部分からドレイン領域12に接する部分に向けて単調増加している。
【0014】
ドリフト領域14が空乏化すると、p型コラム14aが負に帯電され、n型コラム14bが正に帯電する。p型コラム14aの負電荷のチャージ量とn型コラム14bの正電荷のチャージ量がバランスすると、ドリフト領域14が良好に空乏化され、半導体装置1の耐圧が向上する。上記したように、p型コラム14aのp型不純物とn型コラム14bのn型不純物の濃度分布はいずれも、半導体層10の深さ方向に沿って半導体層10の深部に向けて単調増加している。これにより、p型コラム14aとn型コラム14bのチャージ量は、半導体層10の深さ方向に沿ってバランスするように調整されている。また、p型コラム14aのチャージ量とn型コラム14bのチャージ量が高濃度な状態でバランスすることにより、オン抵抗と耐圧のトレードオフ関係が改善される。このように、半導体装置1では、p型コラム14aとn型コラム14bの間でチャージバランスするように設計される。
【0015】
図1に示すように、ボディ領域16は、ドリフト領域14上に設けられており、半導体層10の上層部に配置されている。ボディ領域16は、ドリフト領域14のn型コラム14bとソース領域18の間に設けられており、n型コラム14bとソース領域18の双方に接しており、n型コラム14bとソース領域18を隔てている。ボディ領域16のp型不純物の濃度は、所望のゲート閾値電圧に応じて調整されている。
【0016】
ソース領域18は、ボディ領域16上に設けられており、半導体層10の上層部に配置されており、半導体層10の表面に露出する位置に設けられている。ソース領域18は、トレンチゲート30の側面に接している。ソース領域18は、半導体層10の表面を被膜するソース電極24にオーミック接触している。
【0017】
ボディコンタクト領域19は、ボディ領域16上に設けられており、半導体層10の上層部に配置されており、半導体層10の表面に露出する位置に設けられている。ボディコンタクト領域19は、半導体層10の表面を被膜するソース電極24にオーミック接触している。
【0018】
トレンチゲート30は、半導体層10の上層部に形成されているトレンチ内に充填されており、ソース領域18とボディ領域16を貫通してドリフト領域14のn型コラム14bに達している。この例では、トレンチゲート30は、半導体層10を平面視したときに、p型コラム14aとn型コラム14bの長手方向に沿って延びている。この例に代えて、トレンチゲート30は、半導体層10を平面視したときに、p型コラム14aとn型コラム14bの繰り返し方向、即ち、p型コラム14aとn型コラム14bの長手方向に直交する方向に沿って延びていてもよい。トレンチゲート30は、ゲート電極32とゲート絶縁膜34を有している。ゲート電極32は、不純物を含むポリシリコンで形成されており、ゲート絶縁膜34を介して半導体層10に対向している。特に、ゲート電極32は、ドリフト領域14のn型コラム14bとソース領域18を隔てる部分のボディ領域16にゲート絶縁膜34を介して対向している。ゲート絶縁膜34は、酸化シリコンで形成されており、トレンチの内壁を被覆している。
【0019】
次に、図1を参照し、半導体装置1の動作を説明する。ソース電極24の電位よりもドレイン電極22の電位が正となる状態で、トレンチゲート30のゲート電極32の電位がソース電極24よりも正であり、且つ閾値よりも高く制御されると、半導体装置1はターンオンする。このとき、ソース領域18とドリフト領域14のn型コラム14bを隔てる部分のボディ領域16に反転層が形成される。ソース領域18から供給される電子は、その反転層のチャネルを経由してドリフト領域14のn型コラム14bに達する。n型コラム14bに達した電子は、n型コラム14bを経由してドレイン領域12に流れる。n型コラム14bは、n型不純物の濃度が高いので、半導体装置1は低オン抵抗という特性を有することができる。
【0020】
トレンチゲート30のゲート電極32の電位がソース電極24の電位と同一となるように制御されると、反転層のチャネルが消失し、半導体装置1はターンオフする。スーパージャンクション構造を構成する複数のp型コラム14aと複数のn型コラム14bは実質的に完全空乏化され、ドリフト領域14の広い範囲が空乏化される。また、ドリフト領域14はスーパージャンクション構造を有することから、ドリフト領域14の電界分布が深さ方向に平準化される。このため、ドリフト領域14は大きい電位差を負担することができるので、半導体装置1は高耐圧という特性を有することができる。
【0021】
(半導体装置の第1の製造方法)
次に、図4図7を参照し、半導体装置1の第1の製造方法のうちのスーパージャンクション構造を形成する工程について説明する。半導体装置1の製造するための他の工程については、公知の製造技術を利用することができる。
【0022】
まず、図4に示すように、n型の炭化珪素基板であるドレイン領域12を準備する。次に、特に限定されるものではないが、エピタキシャル成長技術を利用して、ドレイン領域12の表面から炭化珪素のn型のエピ層140を成長させる。なお、エピ層140は半導体層10の少なくとも一部を構成しており、半導体層又はn型半導体層と称することもある。
【0023】
エピ層140に含まれるn型不純物の濃度は、エピ層140の上面から下面まで単調増加している(図3参照)。この例に代えて、エピ層140に含まれるn型不純物の濃度は、エピ層140の上面から下面まで多段で増加してもよい。このようなn型不純物の濃度の分布は、エピ層140をエピタキシャル成長するときに調整されてもよく、エピタキシャル成長した後にイオン注入技術を利用して調整されてもよく、それらの組み合わせによって調整されてもよい。
【0024】
次に、図5に示すように、フォトリソグラフィー技術を利用してエピ層140上にマスク42を成膜する。マスク42は、p型コラム14aの形成範囲に対応して開口するようにパターニングされる。
【0025】
次に、図6に示すように、イオン注入技術を利用して、マスク42の開口を介してエピ層140内にp型不純物をイオン注入する。符号44の破線で囲まれた範囲は、注入されたp型不純物の存在範囲を示す。エピ層140内に注入されたp型不純物は、p型不純物をイオン注入するときの散乱現象によってエピ層140の深さが増加するにつれて横方向に拡散している。
【0026】
符号46が注入ダメージによって形成された欠陥であって、欠陥密度が5[個/0.01μm2]以上の欠陥が高密度に形成された範囲を示す。このイオン注入工程では、注入されたp型不純物の濃度がエピ層140の深さ方向に沿ってエピ層140の深部に向けて単調増加するように照射条件が調整される(図2参照)。この例に代えて、エピ層140に注入されるp型不純物の濃度は、エピ層140の深さ方向に沿ってエピ層140の深部に向けて多段で増加してもよい。ここで、注入されたp型不純物の濃度が所定濃度を超えると、形成される欠陥密度が5[個/0.01μm2]以上となる。図2では、その所定濃度を「14N」で示す。欠陥密度が5[個/0.01μm2]以上となる高密度範囲は「14D」で示されている。所定濃度は、イオン種によって異なっており、例えば、p型不純物としてアルミニウム(Al)が用いられる場合、不純物濃度が2×1017cm-3以上の深さ範囲で欠陥密度が5[個/0.01μm2]以上となり、p型不純物としてボロン(B)が用いられる場合、不純物濃度が8×1017cm-3以上の深さ範囲で欠陥密度が5[個/0.01μm2]以上となる。欠陥が形成される領域は、p型不純物の照射方向に沿って観測したときに、マスク42の開口の範囲内に収まる。この例では、エピ層140の上面に直交する方向からp型不純物が照射されているので、欠陥が形成される領域は、マスク42の開口の直下の範囲内に収まっている。
【0027】
次に、図7に示すように、半導体層10を熱処理し、注入されたp型不純物を活性化する。ここで、エピ層140内に形成された欠陥は、熱処理工程が実施されると、p型不純物をトラップするように働くことができる。このため、熱処理工程が実施されると、散乱現象によって横方向に拡散したp型不純物は、欠陥が形成された領域内に偏在することができる。特に、エピ層140の深部において高密度な欠陥領域が形成されているので、エピ層140の深部においてp型不純物の横方向の拡散が効果的に抑えられる。この熱処理工程により、エピ層140のうち破線44で囲まれた領域がp型コラム14aとなり、それ以外のエピ層140の一部がn型コラム14bとなる。
【0028】
例えば、高密度欠陥領域が存在しない場合、p型不純物が横方向に拡散した領域では、p型不純物がエピ層140のn型不純物と相殺され、p型領域になることができない。このため、活性化されるp型不純物の領域は、先細り形状となってしまう。特に、スーパージャンクション構造を形成する場合、マスク42の膜厚が大きく、その開口幅が狭いことが多い(例えば、膜厚が約5μm、開口幅が約1μm)。さらに、p型不純物を数MeVの高エネルギーで照射する。このような場合、p型不純物は、マスク42の開口を画定する側壁で反射によりかき集められながらイオン注入される。このため、エピ層140内に形成されるp型領域は、先細り形状となる傾向が強い。
【0029】
上記製造方法では、横方向に拡散したp型不純物を高密度欠陥領域内に偏在させることにより、p型領域が先細り形状となることを抑制し、所望幅のp型コラム14aを形成することができる。また、p型不純物の拡散によるp型不純物とn型不純物の相殺を抑制することができるので、p型コラム14a及びn型コラム14bの各々の不純物を高濃度に活性化させることができる。このため、上記製造方法で形成されるスーパージャンクション構造は、低オン抵抗と高耐圧を両立することができる。
【0030】
上記では、繰り返し構造の一例としてスーパージャンクション構造を例示した。本明細書が開示する技術は、他の繰り返し構造にも適用することができる。例えばトレンチゲート30の底面の電界を緩和するためにボディ領域16の底面からドリフト領域14に突出するように設けられるp型領域は、ドリフト領域との間で繰り返し構造を構成する。例えば、FLRと称される耐圧構造も、ドリフト領域との間で繰り返し構造を構成する。本明細書が開示する技術は、これら繰り返し構造に適用されてもよい。
【0031】
上記では、n型半導体層内にp型不純物をイオン注入してp型領域とn型領域が交互に繰り返す繰り返し構造を形成する製造方法を例示した。この例に代えて、p型半導体層内にn型不純物をイオン注入してp型領域とn型領域が交互に繰り返す繰り返し構造を形成してもよい。この場合も同様に、n型不純物を半導体層の深さ方向に沿って半導体層の深部に向けて増加するようにイオン注入することで、活性化されたn型領域が先細り形状となることを抑えることができる。この場合も同様に、n型不純物を欠陥領域に偏在させるために、欠陥密度が5[個/0.01μm2]以上となる高密度範囲を形成するのが望ましい。例えば、n型不純物としてリン(P)が用いられる場合、不純物濃度が2×1017cm-3以上の深さ範囲で欠陥密度が5[個/0.01μm2]以上となり、n型不純物として窒素(N)が用いられる場合、不純物濃度が1×1019cm-3以上の深さ範囲で欠陥密度が5[個/0.01μm2]以上となる。
【0032】
以下、本明細書で開示される技術の特徴を整理する。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【0033】
(特徴1)
第1導電型領域(14a)と第2導電型領域(14b)が少なくとも一方向に沿って交互に繰り返し配置されている繰り返し構造を含む半導体層(10)、を備えた半導体装置(1)の製造方法であって、
前記半導体層の上面にマスク(42)を成膜する成膜工程であって、前記半導体層は前記上面に露出する位置に配置されている第2導電型不純物を含む第2導電型半導体層(140)を有しており、前記マスクは前記第1導電型領域の形成範囲に対応して開口している、成膜工程と、
前記マスクの開口を介して前記半導体層の前記第2導電型半導体層内に第1導電型不純物をイオン注入するイオン注入工程であって、注入された前記第1導電型不純物の濃度が前記半導体層の深さ方向に沿って前記半導体層の深部に向けて増加する、イオン注入工程と、
前記イオン注入工程の後に、前記半導体層を熱処理する熱処理工程と、を備える、半導体装置の製造方法。
【0034】
(特徴2)
前記イオン注入工程では、前記第1導電型不純物が注入された領域の少なくとも一部の深さ範囲において欠陥密度が5[個/0.01μm2]以上となるように、前記第1導電型不純物がイオン注入される、特徴1に記載の半導体装置の製造方法。
【0035】
(特徴3)
前記第2導電型半導体層に含まれる前記第2導電型不純物の濃度が前記半導体層の前記深さ方向に沿って前記半導体層の深部に向けて増加しており、
前記繰り返し構造がスーパージャンクション構造である、特徴1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【0036】
(特徴4)
半導体装置(1)であって
第1導電型領域(14a)と第2導電型領域(14b)が少なくとも一方向に沿って交互に繰り返し配置されている繰り返し構造を含む半導体層(10)、を備えており、
前記第1導電型領域に含まれる第1導電型不純物の濃度は、前記半導体層の深さ方向に沿って前記半導体層の深部に向けて増加している、半導体装置。
【0037】
(特徴5)
前記第1導電型領域は、少なくとも一部の深さ範囲において欠陥密度が5[個/0.01μm2]以上である、特徴4に記載の半導体装置。
【0038】
(特徴6)
前記第2導電型領域に含まれる第2導電型不純物の濃度は、前記半導体層の前記深さ方向に沿って前記半導体層の深部に向けて増加しており、
前記繰り返し構造がスーパージャンクション構造である、特徴4又は5に記載の半導体装置。
【0039】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0040】
1:半導体装置、 10:半導体層、 12:ドレイン領域、 14:ドリフト領域、 14a:p型コラム、 14b:n型コラム、 16:ボディ領域、 18:ソース領域、 19:ボディコンタクト領域、 22:ドレイン電極、 24:ソース電極、 30:トレンチゲート、 32:ゲート電極、 34:ゲート絶縁膜、 140:エピ層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7