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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093638
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】フラックスゲートセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/04 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
G01R33/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210151
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000110952
【氏名又は名称】ニッカ電測株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】豊田 一実
【テーマコード(参考)】
2G017
【Fターム(参考)】
2G017AA02
2G017AD02
2G017AD42
2G017AD47
2G017AD48
2G017BA03
2G017BA05
2G017BA08
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で微小な磁界を高精度に検知できるフラックスゲートセンサを提供する。
【解決手段】本発明のフラックスゲートセンサ10は、磁性体からなるコア12と、前記コア12の軸心に沿って巻回した1個の励磁コイルe1と、前記励磁コイルe1のいずれか一方に1個又は両側に1対以上の検出コイルp1と、
前記検出コイルp1による検出信号に基づく信号を帰還信号として帰還させてノイズ磁界成分を打ち消す駆動電流を発生する帰還部18と、
前記帰還部18の駆動電流に基づいてキャンセル磁界を発生させるキャンセルコイルc1,c2を備え、
前記キャンセルコイルc1,c2は、前記励磁コイルe1及び前記検出コイルp1を間に挟むように1対以上取り付けてコイル同士を並列又は直列に接続させたことを特徴としている。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体からなるコアと、前記コアの軸心に沿って巻回した1個の励磁コイルと、前記励磁コイルのいずれか一方に1個又は両側に1対以上の検出コイルと、
前記検出コイルによる検出信号に基づく信号を帰還信号として帰還させてノイズ磁界成分を打ち消す駆動電流を発生する帰還部と、
前記帰還部の駆動電流に基づいてキャンセル磁界を発生させるキャンセルコイルを備え、
前記キャンセルコイルは、前記励磁コイル及び前記検出コイルを間に挟むように1対以上取り付けてコイル同士を並列又は直列に接続させたことを特徴とするフラックスゲートセンサ。
【請求項2】
磁性体からなるコアと、前記コアの軸心に沿って巻回した1個の励磁コイルと、前記励磁コイルのいずれか一方に1個又は両側に1対以上の検出コイルと、
前記検出コイルによる検出信号に基づく信号を帰還信号として帰還させてノイズ磁界成分を打ち消す駆動電流を発生する帰還部と、
前記帰還部の駆動電流に基づいてキャンセル磁界を発生させるキャンセルコイルを備え、
前記キャンセルコイルは、前記コアのいずれか一方の前記励磁コイル又は前記検出コイルの側方に1個取り付けたことを特徴とするフラックスゲートセンサ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載されたフラックスゲートセンサであって、
前記励磁コイル及び検出コイルを設けた前記コアは平行に設置されて対を成し、前記励磁コイルは各々逆極性で駆動し、前記検出コイルは並列又は直列接続したことを特徴とするフラックスゲートセンサ。
【請求項4】
請求項3に記載されたフラックスゲートセンサであって、
それぞれの前記キャンセルコイルは並列又は直列又は並列と直列の混在で接続されたことを特徴とするフラックスゲートセンサ。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載されたフラックスゲートセンサであって、
前記キャンセルコイルは、前記励磁コイル及び検出コイルよりも前記コアの端部に近く、かつ、前記キャンセルコイルの全体が前記コアの端部外にはみ出さない位置に設置したことを特徴とするフラックスゲートセンサ。
【請求項6】
請求項1に記載されたフラックスゲートセンサであって、
複数の前記キャンセルコイルは、すべて同一形状であることを特徴とするフラックスゲートセンサ。
【請求項7】
請求項1又は請求項2に記載されたフラックスゲートセンサであって、
前記帰還部は、所定の周波数成分のみ通過又は遮断するフィルタを有することを特徴とするフラックスゲートセンサ。
【請求項8】
請求項1又は請求項2に記載されたフラックスゲートセンサであって、
前記帰還部は、負帰還信号に直流信号を用いたことを特徴とするフラックスゲートセンサ。
【請求項9】
請求項1又は請求項2に記載されたフラックスゲートセンサであって、
前記帰還部は、外部の信号源から入力される帰還信号を用いることを特徴とするフラックスゲートセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類、食品などに混入する金属片などの磁性異物を検出できるフラックスゲートセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
フラックスゲートセンサは、高透磁率材料の磁化飽和性を利用して磁場の1方向成分を検出する。その基本構成は軟磁性体のコア(磁心ともいう)にコイル巻きしたものであり、コイルに電流を流して磁気飽和させると、吸収していた外部磁界を放出する。そして別のコイルを検出コイルとして巻いておき、励磁電流を加えると、軟磁性体は外部磁界の吸収・放出を繰り返すためトランスと同じ原理で誘起電圧が発生する。
このようなフラックスゲートセンサは微小な磁界でも検出できるが、外乱磁界ノイズにも敏感に反応するため、これを回避する種々のセンサが開示されている。
【0003】
特許文献1に開示のセンサは、対を成すそれぞれのコアに励磁コイルと検出コイルを設けて検出コイルを並列又は直列接続し、誘導起電力の検波を検波開始遅れ時間調整手段と検波終了時間調整手段を備えた磁気検出回路によって行っている。しかしながら、外乱ノイズ磁界が励磁コイルから発する励磁磁界に重畳されることにより、コアの励磁状態が変化して磁気検出回路を備えていてもバルクハウゼンノイズの影響を回避することができないおそれがあり、また励磁コイルからの励磁磁界と外乱ノイズ磁界の極性が逆になる場合、磁性体よりなるコアの励磁が不十分となりSN比を向上させた平行スラックスゲートセンサの実現が困難となるおそれがある。
【0004】
特許文献2に開示のセンサは、出力信号に相関した電流により外部磁場を相殺するフィードバックループを備え、このフィードバックループ内にノイズを抑制するためのノイズ抑制フィルタを有している。小さな磁気を検出する場合、ループフィルタの増幅率を大きくする構成が考えられる。このような構成により、増幅可能な入力電圧の範囲が実質的に狭まり信号に対して相対的に大きなノイズが重畳すると、この入力電圧の範囲を超えて出力が飽和して信号成分が消失してしまう動作不具合を回避できる。このため当初よりコア内の磁束を飽和させるのに十分な励磁磁界を加える必要がある。コアを十分飽和させる方式のセンサは、飽和磁束密度Bsと残留磁束密度Brの間の領域を使用する方式のセンサと比べて低感度であり、外乱磁場が重畳することによる励磁磁界の変動がセンサの磁界検出感度に与える影響は相対的に小さくなり、これを打ち消すことは想定されていない。また外部磁場を操作するために帰還する信号は検出コイルによって帰還磁場として作用しており、コアに設置された励磁コイルの外側にキャンセルコイルを兼ねた検出コイルを巻き付けている。しかしコアとキャンセルコイルとの距離は励磁コイルの厚み寸法だけ離れることは回避できず効率良く帰還磁場を印加することができない。また検出コイルとキャンセルコイルを兼用していることからキャンセルコイルから効率良く帰還磁場を印加するためにだけ有効なキャンセルコイルの設置場所を選定できない。従って、最良の状態で帰還磁場を印加することができず、より高感度で精密な微小磁気検知が実現できない。
【0005】
特許文献3に開示のセンサは、対象物の近傍に配置した複数のキャンセルコイルと、キャンセルコイルの各々の内側に配置した磁気センサと、複数の磁気センサの出力の総和をとる加算回路と磁気センサの出力の総和が零磁場の下における磁気センサの出力の総和と一致するような共通のフィードバック駆動電流をキャンセルコイルへ供給するフィードバック制御回路を備えた磁気ノイズ消去装置を備えている。しかし磁気センサに加えて加算回路、制御部が必要であり、さらに個々のセンサ近傍に設置した複数のキャンセル回路にフィードバック電流を通電するための配線も必要となり、装置の全体構成が複雑でコスト高となる。
【0006】
特許文献4に開示のセンサは、ボビンの巻芯部に巻回されたキャンセルコイルと、ボビンの互いに異なる位置に固定された磁気センサと、磁気センサの出力信号に応じてキャンセルコイルにキャンセル電流を流すフィードバック回路を備えている。しかし共通のキャンセルコイルを用いることにより装置構成を簡素化できても、磁気センサそれぞれに応じたキャンセル磁界を印加することは不可能であり、高感度で精度良く微小磁界を検出することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2022-94093号公報
【特許文献2】特開2019-78714号公報
【特許文献3】特開2017-133993号公報
【特許文献4】特開2021-188976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、上記従来技術の問題点に鑑み、簡易な構成で微小な磁界を高精度に検知できるフラックスゲートセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するための第1の手段として、磁性体からなるコアと、前記コアの軸心に沿って巻回した1個の励磁コイルと、前記励磁コイルのいずれか一方に1個又は両側に1対以上の検出コイルと、
前記検出コイルによる検出信号に基づく信号を帰還信号として帰還させてノイズ磁界成分を打ち消す駆動電流を発生する帰還部と、
前記帰還部の駆動電流に基づいてキャンセル磁界を発生させるキャンセルコイルを備え、
前記キャンセルコイルは、前記励磁コイル及び前記検出コイルを間に挟むように1対以上取り付けてコイル同士を並列又は直列に接続させたことを特徴とするフラックスゲートセンサを提供することにある。
上記第1の手段によれば、キャンセルコイルを励磁コイル及び検出コイルを間に挟むように1対以上取り付けてコイル同士を並列又は直列に接続することにより、磁性体からなるコア全体にわたりほぼ一様に、キャンセルコイルが検出コイルからの磁界検出信号のノイズ磁界成分を打ち消す磁界を発生させるにたる磁界を印加可能で、微小磁界信号を検出する際に目的の微小磁界信号が外乱ノイズ磁界によるノイズ磁界信号が重畳されてしまい、高感度で精度良く微小磁界信号を検出できない事態を避けることができる。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するための第2の手段として、磁性体からなるコアと、前記コアの軸心に沿って巻回した1個の励磁コイルと、前記励磁コイルのいずれか一方に1個又は両側に1対以上の検出コイルと、
前記検出コイルによる検出信号に基づく信号を帰還信号として帰還させてノイズ磁界成分を打ち消す駆動電流を発生する帰還部と、
前記帰還部の駆動電流に基づいてキャンセル磁界を発生させるキャンセルコイルを備え、
前記キャンセルコイルは、前記コアのいずれか一方の前記励磁コイル又は前記検出コイルの側方に1個取り付けたことを特徴とするフラックスゲートセンサを提供することにある。
上記第2の手段によれば、キャンセルコイルを前記コアのいずれか一方の前記励磁コイル又は前記検出コイルの側方に1個取り付けることにより、上記第1の手段に比較して少ない部品点数であっても、キャンセルコイルが検出コイルからの磁界検出信号のノイズ磁界成分を打ち消す磁界を発生させるにたる磁界を印加可能で、微小磁界信号を検出する際に目的の微小磁界信号が外乱ノイズ磁界によるノイズ磁界信号が重畳されてしまい、高感度で精度良く微小磁界信号を検出できない事態を避けることができる
【0011】
本発明は、上記課題を解決するための第3の手段として、第1又は第2の手段において、前記励磁コイル及び検出コイルを設けた前記コアは平行に設置されて対を成し、前記励磁コイルは各々逆極性で駆動し、前記検出コイルは並列又は直列接続したことを特徴とするフラックスゲートセンサを提供することにある。
上記第3の手段によれば、励磁電流で誘起する検出コイルでの大きな起電力を相殺させ、検出したい磁界の変動分のみ抽出することが可能である。また、広範囲において各フラックスゲートセンサの感磁領域を可変としつつ感磁領域を分布させることも可能で、二本のコアの間隔を任意としているため、検査機械でこのセンサを利用する場合に感度ムラを抑え検査幅を確保することができる。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するための第4の手段として、第3の手段において、それぞれの前記キャンセルコイルは並列又は直列又は並列と直列の混在で接続されたことを特徴とするフラックスゲートセンサを提供することにある。
上記第4の手段によれば、最も効率良くキャンセル磁界を印加できるキャンセルコイルの接続を選択できる。これにより、コア全体にわたり、キャンセル磁界を均一に効率良く印加できる。
【0013】
本発明は、上記課題を解決するための第5の手段として、第1又は第2の手段において、前記キャンセルコイルは、前記励磁コイル及び検出コイルよりも前記コアの端部に近く、かつ、前記キャンセルコイルの全体が前記コアの端部外にはみ出さない位置に設置したことを特徴とするフラックスゲートセンサを提供することにある。
上記第5の手段によれば、コアがキャンセルコイルの磁芯として機能し、キャンセルコイルが発するキャンセル磁界を効率よく印加できる。
【0014】
本発明は、上記課題を解決するための第6の手段として、第1の手段において、複数の前記キャンセルコイルは、すべて同一形状であることを特徴とするフラックスゲートセンサを提供することにある。
上記第6の手段によれば、部品の種類を減らすことができ、高感度高精度を保持しつつ低コスト化が図れる。
【0015】
本発明は、上記課題を解決するための第7の手段として、第1又は第2の手段において、前記帰還部は、所定の周波数成分のみ通過又は遮断するフィルタを有することを特徴とするフラックスゲートセンサを提供することにある。
上記第7の手段によれば、例えば、当該センサを衣類、食品などに混入する金属片などの磁性異物検出装置に用いた場合、磁性異物が発する磁界に応じた周波数成分を遮断し、磁性異物検出装置の搬送機構等が発するノイズ磁界の周波数成分を通過させることにより、キャンセルコイルが検出コイルからの磁界検出信号のノイズ磁界成分を打ち消す磁界を発生することが可能となり、高感度で精度良く磁性異物が発する微小磁界信号を検出できる。
【0016】
本発明は、上記課題を解決するための第8の手段として、第1又は第2の手段において、前記帰還部は、負帰還信号に直流信号を用いたことを特徴とするフラックスゲートセンサを提供することにある。
上記第8の手段によれば、負帰還信号に直流信号を用いることにより、キャンセルコイルが検出コイルからの磁界検出信号に重畳された、地磁気やセンサ設置場所周辺の構造物等から印加される直流磁界成分を打ち消す磁界を発生させることが可能となり、高感度で精度良く磁性異物が発する微小磁界信号を検出できる。
【0017】
本発明は、上記課題を解決するための第9の手段として、第1又は第2の手段において、前記帰還部は、外部の信号源から入力される帰還信号を用いることを特徴とするフラックスゲートセンサを提供することにある。
上記第9の手段によれば、ノイズ磁界信号の周波数や大きさ等が判明している場合には、検出コイルによるノイズ磁界検出信号に拠らずとも、効率良くキャンセル磁界を印加でき、ノイズ磁界信号が重畳された信号から、目的の微小磁界信号を明瞭に分離して、検出できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、高感度のフラックスゲートセンサにおいて、微小磁界信号を検出するときに目的の微小磁界信号が外乱ノイズ磁界によるノイズ磁界信号が重畳されてしまい、高感度で精度良く微小磁界信号を検出できない事態を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施例1のフラックスゲートセンサの説明図である。
図2】実施例2のフラックスゲートセンサの説明図である。
図3】実施例3のフラックスゲートセンサの説明図である。
図4】実施例4のフラックスゲートセンサの説明図である。
図5】実施例5のフラックスゲートセンサの説明図である。
図6】実施例6のフラックスゲートセンサの説明図である。
図7】実施例8のフラックスゲートセンサの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のフラックスゲートセンサの実施形態について、図面を参照しながら、以下詳細に説明する。
【0021】
(実施例1)
図1は、実施例1のフラックスゲートセンサの説明図である。図示のように実施例1のフラックスゲートセンサ10は、磁性体からなるコア12と、前記コア12の軸心に沿って巻回した1個の励磁コイルe1と、前記励磁コイルe1のいずれか一方に1個又は両側に1対以上の検出コイルp1と、前記検出コイルp1による検出信号に基づく信号を帰還信号として帰還させてノイズ磁界成分を打ち消す駆動電流を発生する帰還部18と、前記帰還部18の駆動電流に基づいてキャンセル磁界を発生させるキャンセルコイルc1を備え、前記キャンセルコイルc1は、コア12のいずれか一方の励磁コイルe1又は検出コイルp1の側方に1個取り付けている。図1(1)はコア12のいずれか一方の検出コイルp1の側方にキャンセルコイルc1を設置した構成を示し、(2)はコア12のいずれか一方の励磁コイルe1の側方にキャンセルコイルc1を設置した構成を示し、(3)は励磁コイルe1の両側に検出コイルを一対(p11,p12)配置して、前記コア12のいずれか一方の検出コイルp11の側方にキャンセルコイルc1を設置した構成を示している。
【0022】
コア12は磁性体であり、一例として、アモルファスフィルムと、それを両側から挟む非磁性物質である厚板樹脂板により挟着したものである。アモルファスフィルムは、例えば0.02mm×1.2mm×30mm(厚さ×幅寸法×長さ寸法)のものを使用し、他方、厚板樹脂板はガラスエポキシが素材として用いられ、そのサイズは0.3mm×1.2mm×30mm(以下、同じ)のものを使用し、アモルファスフィルムを厚板樹脂板でサンドイッチ状に挟み込んでいる。
【0023】
コア12には軸心に沿って巻回した1個の励磁コイルe1と、励磁コイルe1のいずれか一方に1個又は両側に1対以上の検出コイルp1を設置し、励磁コイルe1には励磁電流を流して磁気飽和させる励磁回路14が接続し、検出コイルp1には外部印加磁界によって起きるコア12の磁気変化によって生じる誘電起電力を検出する検出回路16が接続している。
帰還部18は、検出コイルp1の検出信号の一部を帰還させてノイズ磁界成分を打ち消す駆動電流を発生する帰還回路である。帰還部18は、具体的にノイズのない基準値と検出信号を比較して、それに応じた駆動電流をキャンセルコイルc1に供給する。
キャンセルコイルc1は帰還部18の駆動電流に基づいてキャンセル磁界を発生させている。キャンセルコイルc1は、コア12のいずれか一方の励磁コイルe1又は検出コイルp1の側方に1個設置している。
なお、キャンセルコイルc1を励磁コイルe1と検出コイルp1の間に設置する配置も考えられるが、その場合は励磁コイルによって発生された励磁磁界が検出コイルまでコアを伝達する距離が大きくなり、伝達ロスが原因の感度低下が生じる上に、励磁コイルまたは検出コイルがコアの端部に近づくため、コア端部に生じる反磁界の影響による感度低下も発生する。
【0024】
このような実施例1の構成により、キャンセルコイルc1が検出コイルp1からの磁界検出信号のノイズ磁界成分を打ち消す磁界を発生させるにたる磁界を印加することによって、微小磁界信号を検出する際に目的の微小磁界信号が外乱ノイズ磁界によるノイズ磁界信号が重畳されてしまい、高感度で精度良く微小磁界信号を検出できない事態を避けることができる。
また、励磁コイルe1による励磁磁界に外乱ノイズ磁界が重畳されてコア12に印加されることで、コア12の励磁状態が外乱ノイズ磁界によって変化しセンサの特性が変化することも防ぐことができる。
また図1(1)と(2)の構成では大差なく、(3)の構成は、検出コイルが2個に分離されているので、励磁コイルの両サイドから発生する励磁磁界による誘導起電力を効率良く検出することができ、原理上2倍の効率となる。
【0025】
(実施例2)
図2は、実施例2のフラックスゲートセンサの説明図である。図示のように実施例2のフラックスゲートセンサ10Aは、磁性体からなるコア12と、前記コア12の軸心に沿って巻回した1個の励磁コイルe1と、前記励磁コイルe1のいずれか一方に1個又は両側に1対以上の検出コイルp1と、前記検出コイルp1による検出信号に基づく信号を帰還信号として帰還させてノイズ磁界成分を打ち消す駆動電流を発生する帰還部18と、前記帰還部18の駆動電流に基づいてキャンセル磁界を発生させるキャンセルコイルc1,c2を備え、前記キャンセルコイルc1,c2は、前記励磁コイルe1及び前記検出コイルp1を間に挟むように1対以上取り付けてコイル同士を並列又は直列に接続させている。図2(1)は励磁コイルe1及び検出コイルp1を間に挟んで2対(4個)のキャンセルコイルc1,c2,c3,c4を設置した構成であり、図2(2)は励磁コイルe1及び検出コイルp1を間に挟んで1対(2個)のキャンセルコイルc1,c2を設置した構成であり、図2(3)は励磁コイルe1の両側に検出コイルを一対(p11,p12)配置して、励磁コイルe1及び検出コイルp11,p12を間に挟むように1対(2個)のキャンセルコイルc1,c2を設置した構成を示している。
なお、複数のキャンセルコイルc1は、コイルの巻き数、大きさがすべて同一形状である。これにより部品の種類を減らすことができ、高感度高精度を保持しつつ低コスト化が図れる。
実施例2のフラックスゲートセンサ10Aは、コア1個に対しキャンセルコイルc1,c2を複数個取り付けてあり、コイル同士は並列又は直列に接続される。キャンセルコイルから発生させるキャンセル磁界が同一強度とした条件においてそれぞれの接続方法を比較すると、コイル同士を並列に接続した場合は、帰還部が通電させる帰還電流値は大きくなるが、そのために帰還部に必要な帰還電圧は低く済み、帰還部を含めたセンサ全体の低電圧駆動が可能となる。一方、コイル同士を直列に接続した場合は、帰還部が通電させる帰還電流は小さくて済み、そのために帰還部に必要な帰還電圧は大きくなるが、より大きな帰還電流を必要とする場合に対応可能となる。
また図2(1)と(2)の構成では、(1)はキャンセルコイルが4個あるので、コアのより多くの部分にノイズ磁界成分を打ち消す磁界を効率よく印加できる。また、帰還部の駆動電流がより少なくできる。(3)の構成は、検出コイルが2個に分離されているので、(1)に比較して励磁コイルの両サイドから発生する励磁磁界による誘導起電力を効率良く検出することができ、原理上2倍の効率となる。
【0026】
(実施例3)
図3は実施例3のフラックスゲートセンサの説明図である。図3(1)に示す実施例3のフラックスゲートセンサ10Bは、実施例1のコアを2個(一対)平行に配置して(12a,12b)、キャンセルコイルc11,c21を励磁コイルe11,e21又は検出コイルp11,p21よりコア12a,12bの端部に近い箇所に、コア1個に対して1個設置している((1)は検出コイルp11,p21よりコア12a,12bの端部に近い箇所に設置)。
また図3(2)に示す実施例3のフラックスゲートセンサ10Bは、実施例2のコアを2個(一対)平行に配置して(12a,12b)、キャンセルコイルc11,c12,c21,c22を励磁コイルe11,e21及び検出コイルp11,p21よりコア12a.12bの端部に近い箇所に、コア1個に対して2個設置している。
図3(3)に示す実施例3のフラックスゲートセンサ10Bは、実施例2のコアを2個(一対)平行(12a,12b)、かつそれぞれのコア12a,12bの励磁コイルe11,e21の両側に検出コイルを一対(p11,p12,p21,p22)配置して、キャンセルコイルc11,c12,c21,c22を励磁コイルe11,e21及び検出コイルp11,p12,p21,p22を間に挟むように、コア1個に対して1対(2個)設置している。
このような実施例3のフラックスゲートセンサ10Bによれば、広範囲において各フラックスゲートセンサの感磁領域を可変としつつ感磁領域を分布させることも可能で、二本のコアの間隔を任意としているため、検査機械でこのセンサを利用する場合に感度ムラを抑え検査幅を確保することができる。
また図3(1)と(2)の構成では、(2)はキャンセルコイルが2個あるので、コアのより多くの部分にノイズ磁界成分を打ち消す磁界を効率よく印加できる。また、帰還部の駆動電流がより少なくできる。(3)の構成は、検出コイルが2個に分離されているので、(2)に比較して励磁コイルの両サイドから発生する励磁磁界による誘導起電力を効率良く検出することができ、原理上2倍の効率となる。
【0027】
(実施例4)
図4は実施例4のフラックスゲートセンサの説明図である。(1)に示す実施例4のフラックスゲートセンサ10Cは、図3(1)に示す実施例3のフラックスゲートセンサ、すなわちコア1個に対しキャンセルコイルを1個設置したコアが並行に設置され対を成す構造である。キャンセルコイルc11,c21の接続は並列又は直列接続を選択できる。
また(2)に示す実施例4のフラックスゲートセンサ10Cは、図3(2)に示す実施例3のフラックスゲートセンサ、すなわちコア1個に対しキャンセルコイルを2個設置したコアが並行に設置され対を成す構造である。キャンセルコイルc11,c12,c21,c22の接続は並列と直列を混在させた接続を選択できる。
実施例4のフラックスゲートセンサ10Cの構成によれば、それぞれのキャンセルコイルの接続を並列又は直列または並列直列混在で接続でき、さまざまな形状、材質による個々の種のフラックスゲートセンサにおいて、最も効率良くキャンセル磁界を印加できるキャンセルコイルの接続を選択できる。発明者の鋭意研究の結果、キャンセルコイルを4個用い、すべてのキャンセルコイルを並列に接続した場合が、他の接続方法に比較して消費電力が若干増えるものの、コア全体にわたり、キャンセル磁界を均一に効率良く印加できた結果、外乱ノイズ磁界を打ち消し、高感度で精度良く微小磁界信号を検出できることを確認した。
【0028】
(実施例5)
図5は実施例5のフラックスゲートセンサ10Dの説明図である。実施例5のフラックスゲートセンサ10Dは、キャンセルコイルc1の配置箇所を特定したものである。キャンセルコイルc1は、励磁コイルe1又は検出コイルp1とコア12の端部の間のコア12を覆う箇所に配置する。(1)は検出コイルp1とコア12端部の間であって検出コイルp1と接する箇所に設置している。(2)は検出コイルp1とコア12の間であって検出コイルp1から最も離れた箇所でキャンセルコイルc1の端部がコア12端部と一部重なる箇所に設置している。このときキャンセルコイルc1はコア12の端部からはみ出さないようにしている。(3)は検出コイルp1とコア端部の間よりも長い長尺のキャンセルコイルを用い、検出コイルと接し、かつ検出コイルからコア端部側をすべて覆うように設置している。
このような実施例5のフラックスゲートセンサ10Dによれば、前記コアがキャンセルコイルの磁芯として機能し、キャンセルコイルが発するキャンセル磁界を効率よく印加できる。
【0029】
(実施例6)
図6は実施例6のフラックスゲートセンサ10Eの説明図である。実施例6のフラックスゲートセンサ10Eは、帰還部18にフィルタ20を設けている。フィルタ20は帰還部18に所定の周波数成分のみ通過又は遮断する機能を有する。このような構成の実施例6のフラックスゲートセンサ10Eによれば、検出信号に関する信号を帰還させて、外部印加磁界をキャンセルする負帰還機能において、帰還部18に設置したフィルタ20により、所定の周波数成分のみ通過又は遮断した後の信号を負帰還信号としてキャンセル磁界を印加できる。
衣類、食品などに混入する金属片などの磁性異物検出装置に用いた場合、磁性異物が発する磁界に応じた周波数成分を遮断し、磁性異物検出装置の搬送機構等が発するノイズ磁界の周波数成分を通過させることにより、キャンセルコイルが検出コイルからの磁界検出信号のノイズ磁界成分を打ち消す磁界を発することが可能となり、高感度で精度良く磁性異物が発する微小磁界信号を検出できる。
【0030】
(実施例7)
実施例7のフラックスゲートセンサは、帰還部18から帰還される信号は直流信号である。
負帰還信号は直流とすることで、地磁気や定常的な外乱磁界もキャンセルできる。負帰還信号に直流信号を用いることにより、キャンセルコイルが検出コイルからの磁界検出信号に重畳された、地磁気やセンサ設置場所周辺の構造物等から印加される直流磁界成分を打ち消す磁界を発生させることが可能となり、高感度で精度良く磁性異物が発する微小磁界信号を検出できる。
【0031】
(実施例8)
図7は実施例8のフラックスゲートセンサ10Fの説明図である。実施例8のフラックスゲートセンサ10Fは、検出コイルp11,p21の出力信号に関する信号のみならず、外部の信号源から入力される帰還信号も選択できる。
このような実施例8のフラックスゲートセンサ10Fによれば、個々のフラックスゲートセンサの負帰還機能には外部からの信号入力も可能で、ノイズ磁界信号の周波数や大きさ等が判明している場合には、検出コイルによるノイズ磁界検出信号に拠らずとも、効率良くキャンセル磁界を印加でき、ノイズ磁界信号が重畳された信号から、目的の微小磁界信号を明瞭に分離して、検出できる。
【0032】
実施例1~8において、検出コイルp1を励磁コイルe1の両側に1対以上、換言すると2個以上設置することにより、励磁コイルe1の両サイドから発生する励磁磁界による誘導起電力を効率良く検出することができる。理論上、検出コイルが1個の場合の2倍以上の検出効率にできる。
本発明によれば、キャンセルコイルの設置箇所、接続方法、構造形状を工夫することにより、効率良くキャンセル磁界を印加でき、高感度で精度良い微小磁界信号を検出できる。
個々のフラックスゲートセンサにキャンセルコイル等からなる負帰還機能を組み込むことによって、複数のフラックスゲートセンサを用いた異物金属検出装置等の磁界検出機器においては、新たにキャンセルコイルや負帰還機能、それらの制御部やそれぞれの配線を新規設置する必要がなく、低コストで高感度、精度良い微小磁界信号を明瞭に分離して検出できる。
また従来の励磁コイルと検出コイルに重ねてキャンセルコイルを設置する構成と比較して外乱ノイズ磁界をキャンセルするに足るキャンセル磁界をより低電力で効率良く印加できる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明した。しかしながら、本発明は、上記実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の変更が可能である。
また、本発明は、実施形態において示された組み合わせに限定されることなく、種々の組み合わせによって実施可能である。
【符号の説明】
【0033】
10 フラックスゲートセンサ
12 コア
e1 励磁コイル
14 励磁回路
p1 検出コイル
16 検出回路
c1,c2,c11,c12,c21,c22 キャンセルコイル
18 帰還部
20 フィルタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7