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特開2024-93639超臨界流体処理装置の洗浄剤及びそれを用いた超臨界流体処理装置の洗浄方法
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  • 特開-超臨界流体処理装置の洗浄剤及びそれを用いた超臨界流体処理装置の洗浄方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093639
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】超臨界流体処理装置の洗浄剤及びそれを用いた超臨界流体処理装置の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   C11D 1/72 20060101AFI20240702BHJP
   B08B 3/04 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
C11D1/72
B08B3/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210153
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000226161
【氏名又は名称】日華化学株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000006828
【氏名又は名称】YKK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 純
(74)【代理人】
【識別番号】100210697
【弁理士】
【氏名又は名称】日浅 里美
(72)【発明者】
【氏名】末定 君之
(72)【発明者】
【氏名】梅村 深雪
(72)【発明者】
【氏名】紙谷 洋平
(72)【発明者】
【氏名】福田 尚宏
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 崇
(72)【発明者】
【氏名】朝垣 文雄
【テーマコード(参考)】
3B201
4H003
【Fターム(参考)】
3B201AA33
3B201BB82
3B201BB87
3B201BB90
3B201BB95
3B201CD22
4H003AC09
4H003AC23
4H003DA12
4H003DA13
4H003DB01
4H003DC01
4H003FA04
(57)【要約】
【課題】改善された洗浄性を有する超臨界流体処理装置の洗浄剤の提供。
【解決手段】炭素数が10~16の第2級又は第3級アルコ-ルのアルキレンオキサイド付加物で、重量平均分子量が200以上700以下である超臨界流体処理装置の洗浄剤。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数が10~16の第2級又は第3級アルコ-ルのアルキレンオキサイド付加物で、重量平均分子量が200以上700以下である超臨界流体処理装置の洗浄剤。
【請求項2】
融点が-60℃以上20℃以下である請求項1に記載の洗浄剤。
【請求項3】
超臨界流体及び請求項1又は2に記載の洗浄剤を用いた超臨界流体処理装置の洗浄方法であって、
前記超臨界流体処理装置は、染色釜を備え、
前記洗浄方法は、
前記染色釜に前記洗浄剤を投入し、第1の温度及び圧力にて、洗浄剤を超臨界流体に溶解させる第1の工程と、
前記染色釜を前記第1の温度よりも高い第2の温度に昇温し、その温度を所定時間保持して洗浄を行う第2の工程と、
前記染色釜を前記第2の温度よりも低い第3の温度に降温し、染料を含む前記洗浄剤を超臨界流体に溶解させる第3の工程と、
を含む、超臨界流体処理装置の洗浄方法。
【請求項4】
前記第1の温度が45℃以上135℃以下である、請求項3に記載の洗浄方法。
【請求項5】
前記第2の温度が50℃以上150℃以下である、請求項3に記載の洗浄方法。
【請求項6】
前記第1の圧力が10MPa以上28MPa以下である、請求項3に記載の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は超臨界流体処理装置の洗浄剤及びそれを用いた超臨界流体処理装置の洗浄方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
繊維製品に対して、染色加工による着色及び機能加工による機能付加を行う方法は、染料及び機能剤を含む水溶液又は有機溶剤に繊維製品を浸すことで行うのが一般的である。しかし、水資源が貴重な地域では大量の水を得にくいという問題がある。加えて、処理後の汚染された排水及び有機溶剤の排出による環境破壊等の問題もある。したがって、環境規制が厳しい地域では、このような染色加工及び機能加工の作業が困難であった。そこで、大量の水及び有機溶剤を使用しない超臨界流体を用いた染色加工及び機能加工が注目されてきている。
【0003】
超臨界流体処理装置を用いた染色の場合であっても、装置の処理槽及び流路に染料などの汚れが付着する。したがって、装置を洗浄する必要がある。洗浄方法についても、水資源の節約、及び廃液処理の問題等から環境に対する負荷がより少ない技術の開発が求められている。したがって、水及び有機溶媒を使用しない洗浄方法が望ましい。
【0004】
超臨界流体処理装置の洗浄剤として、例えば、特許文献1の請求項2には、ポリアルキレンオキシド単位と、前記ポリアルキレンオキシド単位にエーテル結合を介して結合している、炭素数が8~22の炭化水素基と、を有しており、重量平均分子量が、300以上、1100未満である、超臨界流体処理装置の洗浄剤が記載されている。
【0005】
特許文献2には、超臨界二酸化炭素流体を用いて繊維に染色加工や機能加工等を行う超臨界流体処理装置の処理槽内部や流体の通路内の洗浄に用いる洗浄剤が記載されている。具体的には、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドを単位ユニットとする、分子量1,000~20,000の重合体、又は分子量1,000~20,000の糖鎖化合物を有する親水部と、炭素数が8から20までの炭化水素鎖又はこの一部にフェニル基、ナフチル基を含む化合物を有する疎水部とを有することを特徴とする、超臨界流体処理装置の洗浄剤、及びフェニル基又はナフチル基とエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド又は炭素数8から20の炭素水素鎖を単位ユニットとする分子量が20,000以上の高分子化合物を含む高分子吸着剤を有すること特徴とする、超臨界流体処理装置の洗浄剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-104834号公報
【特許文献2】特開2017-125145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
超臨界流体を用いた染色では、染料が温度及び圧力の変化によって超臨界流体中に析出しやすいため、染色後も染色釜に残る染料が多く、染色釜の汚れの原因となっている。染色工程における被染色物の染色度合いの安定化のためには、染色工程を所定の回数行うごとに染色釜を洗浄することが必要である。染色釜の洗浄は、染色の色変えを行う際にも行う必要がある。そのため、洗浄時間が長時間であることが課題となっている。
【0008】
本発明者等が超臨界流体処理装置の洗浄剤について検討を重ねたところ、特許文献1及び2に開示された洗浄剤は、洗浄能力が不十分であることが明らかとなった。
【0009】
本発明は、改善された洗浄性を有する超臨界流体処理装置の洗浄剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願は上記課題を解決するための手段の一つとして、炭素数が10~16の第2級又は第3級アルコ-ルのアルキレンオキサイド付加物で、重量平均分子量が200以上700以下である超臨界流体処理装置の洗浄剤を開示する。
【0011】
本発明は以下の事項に関する。
態様1
炭素数が10~16の第2級又は第3級アルコ-ルのアルキレンオキサイド付加物で、重量平均分子量が200以上700以下である超臨界流体処理装置の洗浄剤。
態様2
融点が-60℃以上20℃以下である上記態様1に記載の洗浄剤。
態様3
超臨界流体及び上記態様1又は2に記載の洗浄剤を用いた超臨界流体処理装置の洗浄方法であって、
前記超臨界流体処理装置は、染色釜を備え、
前記洗浄方法は、
前記染色釜に前記洗浄剤を投入し、第1の温度及び圧力にて、洗浄剤を超臨界流体に溶解させる第1の工程と、
前記染色釜を前記第1の温度よりも高い第2の温度に昇温し、その温度を所定時間保持して洗浄を行う第2の工程と、
前記染色釜を前記第2の温度よりも低い第3の温度に降温し、染料を含む前記洗浄剤を超臨界流体に溶解させる第3の工程と、
を含む、超臨界流体処理装置の洗浄方法。
態様4
前記第1の温度が45℃以上135℃以下である、上記態様3に記載の洗浄方法。
態様5
前記第2の温度が50℃以上150℃以下である、上記態様3又は4に記載の洗浄方法。
態様6
前記第1の圧力が10MPa以上28MPa以下である、上記態様3~5のいずれかに記載の洗浄方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、超臨界流体処理装置の洗浄剤として優れた洗浄能力を発揮する新規な洗浄剤を提供することができる。また、本発明によれば、当該洗浄剤を用いた、超臨界流体処理装置の洗浄方法を提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】超臨界流体染色装置の構成を模式的に示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<洗浄剤>
一実施形態の洗浄剤は、超臨界流体処理装置の洗浄剤であり、具体的には、超臨界流体処理装置の処理槽、流路などの内面に付着した汚れなどを洗浄するために用いられる洗浄剤である。
【0015】
洗浄剤は、超臨界流体と共に、超臨界流体処理装置の洗浄に使用することが好ましい。超臨界流体としては、超臨界流体処理装置に用いられるものであれば特に制限されない。好ましくは、超臨界二酸化炭素である。
【0016】
洗浄剤による洗浄機構については、限定的な解釈を望むものではないが、洗浄剤が、染料などの汚れを吸着する機能と、超臨界流体に汚れを溶解又は分散させる機能とを発揮することにより、超臨界流体処理装置から汚れを好適に除去していると考えられる。超臨界流体に溶解又は分散した汚れは、処理槽、流路などから排出される。洗浄剤に吸着した汚れは、超臨界流体に溶解した状態でそのまま排出してもよいし、洗浄剤をフィルター(ガラスフィルタ-など)などにトラップすることにより、フィルターと共に取り除いてもよい。
【0017】
一実施形態の洗浄剤は、炭素数が10~16の第2級又は第3級アルコ-ルのアルキレンオキサイド付加物で、重量平均分子量が200以上700以下である。上記のアルキレンオキサイド付加物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0018】
炭素数が10~16の第2級アルコ-ルとしては、直鎖又は分岐の飽和アルコールが好ましく、洗浄性の観点から直鎖飽和アルコールが好ましい。その具体例としては、例えば2-デカノール、2-ウンデカノール、2-ドデカノール、2-トリデカノール、2-テトラデカノール、2-ヘキサデカノール、3-デカノール、3-ウンデカノール、3-トリデカノール、3-テトラデカノール、3-ヘキサデカノール、4-デカノール、4-ウンデカノール、4-ドデカノール、4-トリデカノール、4-テトラデカノール、5-デカノール、5-ウンデカノール、5-トリデカノール、5-テトラデカノール、5-ヘキサデカノール、6-ウンデカノール、6-トリデカノール、6-テトラデカノール、7-トリデカノール、7-テトラデカノール、8-ヘキサデカノール等が挙げられる。第2級アルコ-ルは、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0019】
炭素数が10~16の第3級アルコ-ルの具体例としては、例えば3,7-ジメチル-3-オクタノール、3-メチル-3-デカノールなどの飽和アルコール;5,8-ジメチル-6-ドデシン-5,8-ジオール、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、4,7-ジメチル-5-デシン-4,7-ジオール、2,3,6,7-テトラメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、3,6-ジエチル-4-オクチン-3,6-ジオール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール等の不飽和アルコールが挙げられる。第3級アルコ-ルは、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0020】
炭素数が10~16の第2級又は第3級アルコ-ルに付加させるアルキレンオキサイドは、特に制限されるものではないが、炭素数2~4のアルキレンオキサイドが好ましい。具体的には、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、イソブチレンオキサイドなどが挙げられるが、これらの中では洗浄性の観点からエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、及びブチレンオキサイドが好ましく、エチレンオキサイド、及びプロピレンオキサイドがより好ましい。アルキレンオキサイドは単独で用いても複数のアルキレンオキサイドを併用してもよい。アルキレンオキサイドの付加は、ランダム付加、ブロック付加、及び交互付加等のいずれの形態であってもよい。
【0021】
炭素数が10~16の第2級アルコ-ルのエチレンオキサイド付加物としては、市販品を用いてもよく、例えば日華化学株式会社製のニッカサンクリーナDE-30が挙げられる。なお、炭素数が10~16の第2級アルコ-ルのエチレンオキサイド付加物は、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0022】
炭素数が10~16の第3級アルコ-ルのエチレンオキサイド付加物としては、市販品を用いてもよく、例えば日信化学工業株式会社製のサーフィノール400シリ-ズが挙げられる。より具体的には、サーフィノール420、サーフィノール440などが挙げられる。なお、炭素数が10~16の第3級アルコ-ルのエチレンオキサイド付加物は、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0023】
洗浄剤の重量平均分子量は200以上700以下であり、洗浄性及び超臨界流体への溶解性の観点から、250以上680以下が好ましく、270以上670以下がより好ましい。重量平均分子量が200未満の場合、洗浄性が低くなる。一方で、重量平均分子量が700より大きい場合、洗浄剤の融点が高くなるため配管詰まりが発生しやすくなり、洗浄性も低くなる。
【0024】
本開示において重量平均分子量は、以下の条件でゲルパーミッションクロマトグラフィ(GPC)により決定した値である。
装置:東ソー HLC-8320GPC 分析装置 (東ソー株式会社製)
検出器:示差屈折計検出器 RI(東ソー株式会社製)
使用カラム:
TSKgel SuperHZ2000
TSKgel SuperHZ3000
TSKgel SuperHZ4000
(いずれも東ソー株式会社製)
移動相:テトラヒドロフラン(THF)
流量:0.2mL/min
カラム温度:40℃
試料濃度:0.2%(w/v)
注入量:2μL
分子量標準物質:ポリエチレングリコール
【0025】
洗浄剤の融点は、良好な洗浄性及び配管の閉塞を防止する観点から、-60℃以上20℃以下であることが好ましく、-60℃以上10℃以下であることがより好ましく、-60℃以上0℃以下であることがさらに好ましい。
【0026】
本開示において融点は、JIS K 0064:1992に記載の方法にて測定した値である。
【0027】
<超臨界流体処理装置>
洗浄する超臨界流体処理装置は、特に制限されない。洗浄剤は、染色、分離又は分画、乾燥、メッキ、塗装、及び合成等に用いられる超臨界流体処理装置の処理槽及び流路の洗浄、特に、染色に用いられる超臨界流体処理装置(超臨界流体染色装置)の染色釜及び流路の洗浄に好適である。例示的な超臨界流体染色装置について、図1を参照しながら詳細に説明する。図1において、超臨界流体染色装置は、二酸化炭素貯蔵タンクと、供給ポンプと、循環ポンプと、溶解槽と、染色釜と、分離回収装置とを備える。図1中のLは液体状態を意味し、Gは気体状態を意味し、Scは超臨界状態を意味する。
【0028】
供給ポンプは、管系にて二酸化炭素貯蔵タンクの流出口と、循環ポンプの流入口に連絡され、二酸化炭素貯蔵タンクから循環ポンプに向けて二酸化炭素を供給する。二酸化炭素貯蔵タンクは、二酸化炭素を液体状態で貯蔵しており、供給ポンプを駆動することによって、二酸化炭素を連続的に供給することができる。
【0029】
供給ポンプと循環ポンプとの間には、図示しない加熱部が設けられており、加熱部は、供給ポンプを通過した二酸化炭素を超臨界状態にすることができる。
【0030】
循環ポンプは、供給ポンプの流出口に連絡され、染色釜の流出口から溶解槽を経て染色釜の流入口に至る循環経路上に設けられている。具体的には、循環ポンプは染色釜の第1の流出口と、溶解槽の流入口に連絡されている。循環ポンプは、循環経路及び染色釜内に存在する超臨界流体を循環させる。これにより、染色工程において染色釜の対流を作り出すことができる。加えて、洗浄工程において、超臨界流体による洗浄効果を向上させることができる。
【0031】
溶解槽は、循環ポンプの流出口と、染色釜の流入口に連絡される。溶解槽において染料を投入し、これを染色釜に導入し、超臨界流体に溶解させる。
【0032】
染色釜は、溶解槽の流出口に連絡された流入口と、循環ポンプの流入口に連絡された第1の流出口と、分離回収装置の流入口に連絡された第2の流出口とを備える。染色釜において、被染色物である繊維製品は、ボビンに巻き付けた状態で染色することができる。この場合、染色釜は、繊維製品をボビンごと内部に収容して保持できるように構成される。染色釜の流入口から染色釜に流入した超臨界流体は、ボビンの中心軸部から外側に向けて径方向に流れて、第1の流出口から流れ出る。染色工程では、この状態で被染色物の染色及び均染を行う。
【0033】
繊維製品は、例えば織テ-プであって、例えばポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、及びポリプロピレン繊維からなる群から選ばれる少なくとも1つを含む織テ-プである。
【0034】
分離回収装置は、染色釜の第2の流出口と、二酸化炭素貯蔵タンクの流入口に連絡され、二酸化炭素から染料及びその他の不純物を分離する。気化した二酸化炭素は、分離回収装置に設けられた、図示しない排出弁を介して排出される。これにより、二酸化炭素のみを効率的に回収でき、染色に使用した二酸化炭素を再利用することが可能となる。回収した二酸化炭素は、二酸化炭素貯蔵タンクに収容される。
【0035】
供給ポンプが、循環経路とは別途に配された管路に設けられていることにより、染色釜内での繊維製品の染色処理が終了した後に、循環ポンプで染色釜及び循環経路に超臨界流体を循環させながら、供給ポンプで染料を含まない新たな純粋の超臨界流体を染色釜に連続的に供給することができる。これにより、後述する染色釜の洗浄工程を染色工程から引き続いて連続的に行なうことが可能となる。
【0036】
なお、超臨界流体染色装置は、上述の構成に限定されるものではなく、実質的に同一な構成を有し、かつ、同様な作用効果を奏しさえすれば、多様な変更が可能である。
【0037】
<染料>
超臨界流体染色装置で使用される染料は、例えば、直接染料、活性染料、カチオン性染料、分散染料、油溶性染料、バット染料、アゾ染料、及び硫黄染料からなる群から選ばれる少なくとも1つである。洗浄剤は、特に分散染料を用いて染色を行った超臨界流体染色装置の洗浄に好適である。分散染料の種類に特に制限はなく、アゾ系、及びキノン系のいずれであってもよい。分散染料としては、例えば、C.I.Disperse Blackに分類される化合物、C.I.Disperse Blueに分類される化合物、C.I.Disperse Redに分類される化合物、C.I.Disperse Orangeに分類される化合物、C.I.Disperse Yellowに分類される化合物,C.I.Disperse Greenに分類される化合物、C.I.Disperse Violetに分類される化合物、C.I.Disperse Brownに分類される化合物等が挙げられる。
【0038】
<超臨界流体処理装置の洗浄方法>
超臨界流体処理装置は、洗浄剤、及び超臨界流体を用いて洗浄することができる。超臨界流体処理装置の洗浄は、例えば、染色釜を備える超臨界流体処理装置において、超臨界流体と染料を用いて繊維製品等の染色を行った後、当該染色に用いたものと同様の超臨界流体を溶媒として用いて行うことができる。超臨界流体は、超臨界流体処理装置で用いられるものであれば特に制限されない。好ましくは、超臨界二酸化炭素である。
【0039】
超臨界流体処理装置の洗浄は、染色工程が終了した直後に、引き続いて連続的に行なうことができる。以下、例示的な洗浄方法の工程について記載する。
【0040】
(第1の工程)
まず、染色釜に洗浄剤を投入し、第1の温度及び圧力にて、洗浄剤を超臨界流体に溶解させる第1の工程を実行する。第1の工程において、洗浄剤は超臨界流体に溶解し、染色釜の内部全体に満たされる。
【0041】
第1の温度及び圧力は、使用する超臨界流体の種類に応じて適宜設定することができる。温度が低過ぎる場合は、超臨界流体への洗浄剤の溶解性が低い。圧力が低過ぎる場合、超臨界状態にならず、洗浄できない。
【0042】
例えば、超臨界流体として超臨界二酸化炭素を用いる場合、好ましい第1の温度及び圧力は、45℃以上135℃以下及び10MPa以上28MPa以下である。第1の温度は、好ましくは45℃以上135℃以下であり、より好ましくは50℃以上130℃以下である。上記の範囲であれば、二酸化炭素は超臨界流体となり、洗浄剤は超臨界二酸化炭素に溶解し、染色釜の内部全体に満たされる。
【0043】
超臨界流体として超臨界二酸化炭素を用いる場合の具体的な第1の温度及び第1の圧力は、例えば、60℃及び25MPaである。
【0044】
(第2の工程)
次に、染色釜を第1の温度よりも高い第2の温度に昇温し、その温度を所定時間保持して洗浄を行う第2の工程を実行する。第2の工程において、洗浄剤は、染色工程にて超臨界流体とともに染色釜の内部に残留した染料、水分、油分等の汚れを超臨界流体から捕集し、洗浄剤は、染料を含んだ状態で超臨界流体から分離される。
【0045】
第2の温度及び圧力は、使用する超臨界流体の種類に応じて適宜設定することができる。温度が低過ぎる場合は、洗浄性が低い。一方で、温度が高過ぎる場合も、洗浄性が低くなる。圧力が低過ぎる場合、超臨界状態にならず、洗浄できない。圧力が高過ぎる場合、洗浄性が低くなる。
【0046】
例えば、超臨界流体として超臨界二酸化炭素を用いる場合、好ましい第2の温度及び圧力は、50℃以上150℃以下及び10MPa以上28MPa以下である。第2の温度は、好ましくは50℃以上150℃以下であり、より好ましくは55℃以上140℃以下である。
【0047】
第2の温度に到達してからの保持時間は、特に限定されるものではなく、例えば10分以上300分以下であってよい。保持時間によって洗浄の度合いが変化し得ることから、目的とする洗浄の度合いに応じて、保持時間を適宜決定すればよい。保持時間が短過ぎる場合、十分な洗浄性が得られない。保持時間が長過ぎる場合、染色釜などへの再付着等が起こり、洗浄性が低くなる。
【0048】
超臨界流体として超臨界二酸化炭素を用いる場合の具体的な第2の温度及び第2の圧力は、例えば、120℃及び25MPaである。
【0049】
(第3の工程)
さらに、染色釜を第2の温度よりも低い第3の温度に降温し、染料を含む洗浄剤を超臨界流体に溶解させる第3の工程を実行する。第3の工程において、染料を含む洗浄剤を超臨界流体に溶解させる。
【0050】
第3の温度及び圧力は、使用する超臨界流体の種類に応じて適宜設定することができる。温度が低過ぎる場合は、超臨界流体への洗浄剤の溶解性が低い。圧力が低過ぎる場合、超臨界状態にならず、洗浄できない。
【0051】
第3の温度は、第1の工程における第1の温度と同等であることが好ましい。超臨界流体として超臨界二酸化炭素を用いる場合、第3の温度は、好ましくは45℃以上135℃以下であり、より好ましくは50℃以上130℃以下であり、例えば、60℃である。
【0052】
第3の圧力は、第1の工程における第1の圧力と同等であることが好ましい。超臨界流体として超臨界二酸化炭素を用いる場合、第3の圧力は、好ましくは10MPa以上28MPa以下であり、より好ましくは8MPa以上27MPa以下であり、例えば、25MPaである。
【0053】
(第4の工程)
その後、超臨界流体を分離回収装置に運搬し、二酸化炭素と洗浄剤とを分離させて取り出す第4の工程を実行することができる。
【0054】
(洗浄剤の質量と染色釜の容積との比率)
洗浄剤の質量と染色釜の容積との比率は、特に限定されるものではないが、例えば洗浄剤の質量:染色釜の容積=1kg:200Lとしてよい。好ましい比率は、洗浄剤の質量:染色釜の容積=1kg:7.5L以上、1kg:500L以下である。比率が小さ過ぎると、十分な洗浄性が得られない。一方で、比率が大き過ぎると、洗浄剤が染色釜に残留し、次の工程に影響を与える。
【実施例0055】
以下、実施例を示しつつ本開示の技術による効果についてより詳細に説明するが、本開示の技術は以下の具体例に限定されるものではない。
【0056】
<試験方法>
(融点)
洗浄剤の融点は、JIS K 0064:1992に記載の方法にて測定した。
【0057】
(色濃度)
染色工程及び洗浄工程後、染色釜のボビンに被染色物である繊維製品を巻き付けた状態で超臨界二酸化炭素に曝露した。被染色物として、ポリエチレンテレフタレ-ト(PET)からなる未染色の織テ-プを使用した。被染色物の投入量は3kgとした。曝露は、125℃、25MPaで30分間行った。その後、染色された織テ-プを回収し、その色濃度を評価した。
【0058】
色濃度は、ト-タルK/S(T・K/S)又は目視により評価した。
【0059】
≪ト-タルK/S(T・K/S)≫
染色された織テープの反射率を、分光光度計を用いて繊維製品の内周側と外周側のそれぞれについて2個所で測定した。その測定結果から内周側と外周側のそれぞれについてのト-タルK/Sの平均値を算出し、その平均値を繊維製品のト-タルK/Sとして決定した。ここで、ト-タルK/Sとは、400~700nmの測定範囲の各測定波長において測定した反射率から、KubeLuka-Munkの式:K/S=(1-R)/2R(Kは吸収係数、Sは散乱係数、Rは反射率を表す)を用いて各測定波長におけるK/S値を求め、求めた各K/Sの値を400~700nmの測定範囲にわたって合計したものである。このト-タルK/S値が大きいほど濃色であることを示し、ト-タルK/S値が小さいほど薄色であることを示す。すなわち、ト-タルK/S値が大きいほど、染色釜の残留汚れが多いことを示す。
【0060】
≪目視による色濃度の評価基準≫
目視による色濃度の評価は、汚染用グレースケール(JIS L0805:2005)を用いて行った。具体的には、以下の基準に基づいて内周側と外周側のそれぞれの評点を決定し、内周側と外周側の評点の平均値が3である場合を最良、1超3未満である場合を良、1である場合を不良として評価した。
グレースケール 1-2級以上 : 3
グレースケール 1級以上1-2級未満 : 2
グレースケール 1級未満 : 1
【0061】
<実施例1>
1Lオートクレーブに2-デカノール(東京化成工業株式会社製)200g、及び苛性カリ0.37gを仕込み密閉した。窒素置換を行った後160℃まで加熱し、エチレンオキサイド158.3gを注入し、120分間熟成した後に120℃まで冷却を行った。120℃に到達後脱気を行った。脱気終了後、80℃まで冷却して酢酸(80%)0.19gを加え、30分間攪拌を行うことで洗浄剤(ポリオキシエチレン(3)2-デカノールエーテル)を作製した。洗浄剤の重量平均分子量及び融点を表1に示す。
【0062】
(洗浄性評価)
150Lの染色釜を備える超臨界流体染色装置を用い、超臨界流体として超臨界二酸化炭素、染料としてC.I. Disperse Blue 301を使用して染色を行った。続いて染色釜に洗浄剤(ポリオキシエチレン(3)2-デカノールエーテル)を投入し、60℃及び25MPaの条件で洗浄剤を超臨界二酸化炭素に溶解させた。次に、圧力を25MPaで維持したまま温度を120℃まで上げ、30分間保持した。次に、圧力を25MPaで維持したまま温度を60℃まで下げた。次に、超臨界二酸化炭素を分離回収装置に運搬し、二酸化炭素と洗浄剤とを分離させて取り出した。その後、未染色の織テ-プ(PET製)3kgをボビンに巻き付けた状態で、125℃及び25MPaの条件で染色釜の超臨界二酸化炭素に30分間曝露し、染色された織テ-プを回収し、その色濃度を評価する工程を1セットとして、試験を連続して2回行った。洗浄剤の質量と染色釜の容積との比率は、洗浄剤の質量:染色釜の容積=1kg:200Lとした。色濃度の評価はト-タルK/S及び目視により行った。
【0063】
1回目のト-タルK/S値は57.0であり、2回目のト-タルK/S値は25.5であった。1回目の目視による色濃度の評価は最良であった。
【0064】
<実施例2>
1Lオートクレーブに4-ドデカノール(東京化成工業株式会社製)200g、及び苛性カリ0.37gを仕込み密閉した。窒素置換を行った後160℃まで加熱し、エチレンオキサイド155.8gを注入し、120分間熟成した後に120℃まで冷却を行った。120℃に到達後脱気を行った。脱気終了後、80℃まで冷却して酢酸(80%)0.19gを加え、30分間攪拌を行うことで洗浄剤(ポリオキシエチレン(3)4-ドデカノールエーテル)を作製した。洗浄剤の重量平均分子量及び融点を表1に示す。
(洗浄性評価)
洗浄剤としてポリオキシエチレン(3)4-ドデカノールエーテルを用い、色濃度の評価を目視で行い、試験の回数を2回から1回に変更したこと以外は実施例1と同様の手順で洗浄性評価を行った。結果を表1に示す。
【0065】
<実施例3>
1Lオートクレーブに2-テトラデカノール(東京化成工業株式会社製)200g、及び苛性カリ0.35gを仕込み密閉した。窒素置換を行った後160℃まで加熱し、エチレンオキサイド135.5gを注入し、120分間熟成した後に120℃まで冷却を行った。120℃に到達後脱気を行った。脱気終了後、80℃まで冷却して酢酸(80%)0.18gを加え、30分間攪拌を行うことで洗浄剤(ポリオキシエチレン(3)2-テトラデカノールエーテル)を作製した。洗浄剤の重量平均分子量及び融点を表1に示す。
(洗浄性評価)
洗浄剤としてポリオキシエチレン(3)2-テトラデカノールエーテルを用い、色濃度の評価を目視で行い、試験の回数を2回から1回に変更したこと以外は実施例1と同様の手順で洗浄性評価を行った。結果を表1に示す。
【0066】
<実施例4>
1Lオートクレーブに2-ヘキサデカノール(東京化成工業株式会社製)200g、及び苛性カリ0.37gを仕込み密閉した。窒素置換を行った後160℃まで加熱し、エチレンオキサイド119.8gを注入し、120分間熟成した後に120℃まで冷却を行った。120℃に到達後脱気を行った。脱気終了後、80℃まで冷却して酢酸(80%)0.19gを加え、30分間攪拌を行うことで洗浄剤(ポリオキシエチレン(3)2-ヘキサデカノールエーテル)を作製した。洗浄剤の重量平均分子量及び融点を表1に示す。
(洗浄性評価)
洗浄剤としてポリオキシエチレン(3)2-ヘキサデカノールエーテルを用い、色濃度の評価を目視で行い、試験の回数を2回から1回に変更したこと以外は実施例1と同様の手順で洗浄性評価を行った。結果を表1に示す。
【0067】
<実施例5>
(洗浄性評価)
洗浄剤として、日信化学工業株式会社製サーフィノール420(2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールのエチレンオキサイド付加物、重量平均分子量316、融点-20℃)を用い、色濃度の評価を目視で行い、試験の回数を2回から1回に変更したこと以外は実施例1と同様の手順で洗浄性評価を行った。結果を表1に示す。
【0068】
<実施例6>
1Lオートクレーブに2-テトラデカノール(東京化成工業株式会社製)200g、及び苛性カリ0.44gを仕込み密閉した。窒素置換を行った後160℃まで加熱し、エチレンオキサイド225.8gを注入し、120分間熟成した後に120℃まで冷却を行った。120℃に到達後脱気を行った。脱気終了後、80℃まで冷却して酢酸(80%)0.23gを加え、30分間攪拌を行うことで洗浄剤(ポリオキシエチレン(5)2-テトラデカノールエーテル)を作製した。洗浄剤の重量平均分子量及び融点を表1に示す。
(洗浄性評価)
洗浄剤としてポリオキシエチレン(5)2-テトラデカノールエーテルを用い、色濃度の評価を目視で行い、試験の回数を2回から1回に変更したこと以外は実施例1と同様の手順で洗浄性評価を行った。結果を表1に示す。
【0069】
<実施例7>
1Lオートクレーブに2-テトラデカノール(東京化成工業株式会社製)200g、及び苛性カリ0.55gを仕込み密閉した。窒素置換を行った後160℃まで加熱し、エチレンオキサイド328.4gを注入し、120分間熟成した後に140℃まで冷却を行った。140℃到達後、プロピレンオキサイド162.6gを注入し、120分間熟成した後に120℃まで冷却を行った。120℃到達後脱気を行った。脱気終了後、80℃まで冷却して酢酸(80%)0.28gを加え、30分間攪拌を行うことで洗浄剤(ポリオキシエチレン(7)ポリオキシプロピレン(2.5)2-テトラデカノールエーテル)を作製した。洗浄剤の重量平均分子量及び融点を表1に示す。
(洗浄性評価)
洗浄剤としてポリオキシエチレン(7)ポリオキシプロピレン(2.5)2-テトラデカノールエーテルを用い、色濃度の評価を目視で行い、試験の回数を2回から1回に変更したこと以外は実施例1と同様の手順で洗浄性評価を行った。結果を表1に示す。
【0070】
<実施例8>
1Lオートクレーブに2-テトラデカノール(東京化成工業株式会社製)200g、及び苛性カリ0.68gを仕込み密閉した。窒素置換を行った後160℃まで加熱し、エチレンオキサイド451.5gを注入し、120分間熟成した後に120℃まで冷却を行った。120℃に到達後脱気を行った。脱気終了後、80℃まで冷却して酢酸(80%)0.35gを加え、30分間攪拌を行うことで洗浄剤(ポリオキシエチレン(9)2-テトラデカノールエーテル)を作製した。洗浄剤の重量平均分子量及び融点を表1に示す。
(洗浄性評価)
洗浄剤としてポリオキシエチレン(9)2-テトラデカノールエーテルを用い、色濃度の評価を目視で行い、試験の回数を2回から1回に変更したこと以外は実施例1と同様の手順で洗浄性評価を行った。結果を表1に示す。
【0071】
<比較例1>
(洗浄性評価)
洗浄剤を用いず、試験の回数を2回から5回に変更したこと以外は実施例1と同様の手順で洗浄性評価を行った。
【0072】
1回目のト-タルK/S値は95.5であり、2回目のト-タルK/S値は52.0であり、3回目のト-タルK/S値は36.0であり、4回目のト-タルK/S値は29.0であり、5回目のト-タルK/S値は19.5であった。1回目の目視による色濃度の評価は不良であった。
【0073】
<比較例2>
1Lオートクレーブに1-ドデカノール(東京化成工業株式会社製)200g、及び苛性カリ0.37gを仕込み密閉した。窒素置換を行った後160℃まで加熱し、エチレンオキサイド155.8gを注入し、120分間熟成した後に120℃まで冷却を行った。120℃に到達後脱気を行った。脱気終了後、80℃まで冷却して酢酸(80%)0.19gを加え、30分間攪拌を行うことで洗浄剤(ポリオキシエチレン(3)1-ドデカノールエーテル)を作製した。洗浄剤の重量平均分子量及び融点を表1に示す。
(洗浄性評価)
洗浄剤としてポリオキシエチレン(3)1-ドデカノールエーテルを用い、色濃度の評価を目視で行い、試験の回数を2回から1回に変更したこと以外は実施例1と同様の手順で洗浄性評価を行った。結果を表1に示す。
【0074】
<比較例3>
1Lオートクレーブに2-テトラデカノール(東京化成工業株式会社製)200g、及び苛性カリ0.85gを仕込み密閉した。窒素置換を行った後160℃まで加熱し、エチレンオキサイド615.7gを注入し、120分間熟成した後に120℃まで冷却を行った。120℃に到達後脱気を行った。脱気終了後、80℃まで冷却して酢酸(80%)0.44gを加え、30分間攪拌を行うことで洗浄剤(ポリオキシエチレン(12)2-テトラデカノールエーテル)を作製した。洗浄剤の重量平均分子量及び融点を表1に示す。
(洗浄性評価)
洗浄剤としてポリオキシエチレン(12)2-テトラデカノールエーテルを用い、色濃度の評価を目視で行い、試験の回数を2回から1回に変更したこと以外は実施例1と同様の手順で洗浄性評価を行った。結果を表1に示す。
【0075】
<比較例4>
1Lオートクレーブに2-テトラデカノール(東京化成工業株式会社製)200g、及び苛性カリ1.28gを仕込み密閉した。窒素置換を行った後160℃まで加熱し、エチレンオキサイド1026.2gを注入し、120分間熟成した後に120℃まで冷却を行った。120℃に到達後脱気を行った。脱気終了後、80℃まで冷却して酢酸(80%)0.66gを加え、30分間攪拌を行うことで洗浄剤(ポリオキシエチレン(23)2-テトラデカノールエーテル)を作製した。洗浄剤の重量平均分子量及び融点を表1に示す。
(洗浄性評価)
洗浄剤としてポリオキシエチレン(23)2-テトラデカノールエーテルを用い、色濃度の評価を目視で行い、試験の回数を2回から1回に変更したこと以外は実施例1と同様の手順で洗浄性評価を行った。結果を表1に示す。
【0076】
<比較例5>
1Lオートクレーブに1-ペンタノール(東京化成工業株式会社製)200g、及び苛性カリ0.60gを仕込み密閉した。窒素置換を行った後140℃まで加熱し、プロピレンオキサイド395.5gを注入し、120分間熟成した後に120℃まで冷却を行った。120℃に到達後脱気を行った。脱気終了後、80℃まで冷却して酢酸(80%)0.31gを加え、30分間攪拌を行うことで洗浄剤(ポリオキシプロピレン(3)1-ペンタノールエーテル)を作製した。洗浄剤の重量平均分子量及び融点を表1に示す。
(洗浄性評価)
洗浄剤としてポリオキシプロピレン(3)1-ペンタノールエーテルを用い、色濃度の評価を目視で行い、試験の回数を2回から1回に変更したこと以外は実施例1と同様の手順で洗浄性評価を行った。結果を表1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
比較例1から、洗浄性の試験を繰り返すことにより、染色釜の残留汚れが少なくなっていくことがわかる。一方で、洗浄性の試験を所定の回数以上行うと徐々に色濃度の変化が少なくなり、有効な効果が得られなくなることが分かる。
【0079】
比較例1の1回目のト-タルK/S値が95.5であったのに対して、実施例1の1回目のト-タルK/S値は57.0であった。ト-タルK/S値は、1回目の試験から低い方が望ましい。実施例1ではわずか2回の試験回数でもって比較例1における4回の試験を超える色濃度を達成している。すなわち、実施例1の洗浄剤を使用した場合、洗浄剤を使用しない場合と比べて洗浄時間を短くすることができ、洗浄工程を効率化できるという効果がある。
【0080】
<考察>
目視による色濃度の評価について、実施例1~4は最良、実施例5~8は良、比較例1~5は不良であった。実施例1~8と比較例2~5から、炭素数が10~16の第2級又は第3級アルコ-ルのアルキレンオキサイド付加物で、重量平均分子量が200以上700以下である洗浄剤は、染色釜に残留した染料を洗浄する効果が高いことがわかる。これは、このような洗浄剤は、超臨界流体への溶解性が高いためであると考えられる。以下で、洗浄剤の物性を各工程の観点から考察する。
【0081】
実施例1~4については、重量平均分子量が428以下かつ融点が-40℃以下であるため、洗浄剤が超臨界二酸化炭素に溶解しやすく、第1の工程及び第3の工程において理想的な処理がなされ、色濃度の結果が最良となると考えられる。加えて、融点が-40℃以下であり、第4の工程にて分離回収装置において二酸化炭素を減圧した際に断熱膨張が起きても洗浄剤が凝固しないため、配管詰まりが発生し難く、洗浄剤として好適である。
【0082】
比較例3及び4については、重量平均分子量が700超であるため、第1の工程及び第3の工程における洗浄剤の超臨界二酸化炭素に対する溶解性が不十分であり、色濃度の結果が不良であったと考えられる。比較例2及び5については、重量平均分子量について問題はないが、化学構造が不適であり第2の工程での洗浄効果が不十分であるため、色濃度の結果が不良であったと考えられる。
【0083】
実施例5~8については、重量平均分子量が700以下であって、融点が20℃以下であり、最良の条件には及ばないものの洗浄剤が超臨界二酸化炭素に溶解しやすく、第1及び第3の工程において適切な処理がなされるため、色濃度の結果が良であったと考えられる。
【0084】
なお、上述の洗浄剤を用いた超臨界流体処理装置の洗浄方法において、染色釜に洗浄剤を投入し、第1の温度及び圧力にて洗浄剤を超臨界流体に溶解し、染色釜の内部全体に満たす第1の工程と、染色釜を第1の温度よりも高い第2の温度に昇温し、その温度を所定時間保持して洗浄を行う第2の工程と、染色釜を第2の温度よりも低い第3の温度に降温し、染料を含む洗浄剤を超臨界流体に溶解させる第3の工程の3工程をこの順番で行うことにより、そうでない場合(例えば、第2の工程のみを行う場合)と比較してより洗浄剤の洗浄能力を向上させることができることが分かっている。
図1