(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093642
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】平行型フラックスゲートセンサ
(51)【国際特許分類】
G01R 33/04 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
G01R33/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210156
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000110952
【氏名又は名称】ニッカ電測株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】豊田 一実
【テーマコード(参考)】
2G017
【Fターム(参考)】
2G017AA02
2G017AD02
2G017AD42
2G017AD47
2G017AD48
2G017BA03
2G017BA05
(57)【要約】
【課題】センサのノイズレベルを低いままに保ちつつ、磁界検出能力を向上させ、微小磁界の検出を可能とする平行型フラックスゲートを提供する。
【解決手段】本発明の平行型フラックスゲートセンサ10Aは、対をなす平行なコア12A,12Bのそれぞれに励磁コイルeA,eBと検出コイルpA1,pA2,pA3,pA4,pB1,pB2,pB3,pB4を設け、前記励磁コイルを各々逆極性で駆動し、前記検出コイルを並列もしくは直列接続してなる平行型フラックスゲートセンサ10において、
前記対をなす平行なコアを構成する1つの前記コアに設けた前記検出コイルは、複数個に分割されており、前記励磁コイルを間に挟んだ両側に前記検出コイルを設けたことを特徴としている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対をなす平行なコアのそれぞれに励磁コイルと検出コイルを設け、前記励磁コイルを各々逆極性で駆動し、前記検出コイルを並列もしくは直列接続してなる平行型フラックスゲートセンサにおいて、
前記対をなす平行なコアを構成する1つの前記コアに設けた前記検出コイルは、複数個に分割されており、前記励磁コイルを間に挟んだ両側に前記検出コイルを設けたことを特徴とする平行型フラックスゲートセンサ。
【請求項2】
請求項1に記載された平行型フラックスゲートセンサであって、
前記検出コイルは、前記励磁コイルを間に挟んだ両側に同数設けたことを特徴とする平行型フラックスゲートセンサ。
【請求項3】
請求項1に記載された平行型フラックスゲートセンサであって、
前記検出コイルは、前記対をなす平行なコアを構成する1つの前記コアに2個設けたことを特徴とする平行型フラックスゲートセンサ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1に記載された平行型フラックスゲートセンサであって、
前記対をなす平行なコアを構成する1つの前記コアに設けた前記励磁コイルは、前記コアの長手方向中心から前記コアの端部までの距離の7割以下の範囲に設けたことを特徴とする平行型フラックスゲートセンサ。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれか1に記載された平行型フラックスゲートセンサであって、
前記コアに取り付けられる前記励磁コイルと、複数存在する前記検出コイルのうち最も前記励磁コイルに近い前記検出コイルの位置は、前記コアの全長の1/10以下の距離に設置されていることを特徴とする平行型フラックスゲートセンサ。
【請求項6】
請求項1ないし3のいずれか1に記載された平行型フラックスゲートセンサであって、
前記対を成す平行なコアを構成する1つの前記コアに設けた複数の前記検出コイルは、互いに直列又は並列接続されていることを特徴とする平行型フラックスゲートセンサ。
【請求項7】
請求項1ないし3のいずれか1に記載された平行型フラックスゲートセンサであって、
前記励磁コイルと前記検出コイルは、同一方向で巻き回されていること、又は同一回数で巻き回されていること、又はすべて同一形状であることのいずれか1つ以上であることを特徴とする平行型フラックスゲートセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類、食品、電子部品材料などに混入する金属片を検出できる平行型フラックスゲートセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衣類、食品、電子部品材料などに混入する金属異物片を検出できる種々の金属検出器が利用されている。このうち本出願人による特許文献1の平行型フラックスゲートセンサを用いた磁気検出回路は、対をなすそれぞれの磁性体から成るコアに励磁コイルと検出コイルを設け、検出コイルを並列または直列接続して、励磁コイルから発生する励磁磁界による励磁を行い、また、検出コイルに発生する誘導起電力の検波を行い、2個のコアに設置した検出コイルに生じる磁束変化による誘導起電力に重畳する同相ノイズ成分を減少させて、S/N比を向上させている。また、励磁されたコアの磁束変化によって発生する誘導起電力の検波は、検波開始遅れ時間調整手段と検波終了時間調整手段を備えた磁気検出回路を用いて行い、磁性体より成るコアのBH特性の正と負の残留磁束密度±Br間の領域を使用せず、飽和磁束密度Bsと残留磁束密度Brの間の領域を使用することができ、バルクハウゼンノイズの影響を避けてS/N比を向上させた平行型フラックスゲートセンサを実現している。
これらによってフラックスゲートセンサは高S/N比および高感度が実現でき、その結果、衣類、食品、電子部品材料などに混入する金属異物片を精度良く検出できる。
【0003】
一方、昨今、衣類、食品、電子部品材料等における品質の向上への要求は著しく厳しくなってきている。
特に金属異物の混入に関して、衣類、食品では金属異物による人体への影響を鑑み、また、電子部品材料等では金属異物の影響が致命欠陥となり得ることから、これまでよりさらに微小な金属異物の検出が要求されている。そのため微小な金属異物が発する微弱磁界を検出するためにフラックスゲートセンサのS/N比ないし感度はさらに高めることが必須となっている。
しかしながら、これまでのフラックスゲートセンサでは磁気検出回路の回路定数や2個のコアそれぞれに設置した励磁コイルおよび検出コイルの配置と接続方法を工夫しても、フラックスゲートセンサに外部磁界が印加されていないときに残留ノイズNと、磁界が印加されたときの出力Sの比率が微小磁界を検出するセンサスペックの一例としてS/N>5000を超えるのは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、上記従来技術の問題点に鑑み、センサのノイズレベルを低いままに保ちつつ、磁界検出能力を向上させ、微小磁界の検出を可能とする平行型フラックスゲートセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するための第1の手段として、対をなす平行なコアのそれぞれに励磁コイルと検出コイルを設け、前記励磁コイルを各々逆極性で駆動し、前記検出コイルを並列もしくは直列接続してなる平行型フラックスゲートセンサにおいて、
前記対をなす平行なコアを構成する1つの前記コアに設けた前記検出コイルは、複数個に分割されており前記励磁コイルを間に挟んだ両側に前記検出コイルを設けたことを特徴とする平行型フラックスゲートセンサを提供することにある。
上記第1の手段によれば、励磁コイルの両サイドから発生する励磁磁界による誘導起電力を効率良く検出することができる。理論上、検出コイルが1個の場合の2倍の検出効率にできる。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するための第2の手段として、第1の手段において、前記検出コイルは、前記励磁コイルを間に挟んだ両側に同数設けたことを特徴とする平行型フラックスゲートセンサを提供することにある。
上記第2の手段によれば、1つのコアに、励磁コイルを挟んだ両側に同数の検出コイルを設けることにより、励磁コイルの両サイドから発生する励磁磁界による誘導起電力を効率良く検出しつつ、コアの形状は左右対称となり、センサ製造時の工程管理が容易となる。したがって、センサの磁界検出能力向上とコストダウン及び品質の安定化が期待できる。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するための第3の手段として、第1の手段において、前記検出コイルは、前記対をなす平行なコアを構成する1つの前記コアに2個設けたことを特徴とする平行型フラックスゲートセンサを提供することにある。
上記第3の手段によれば、費用対効果の点で特に望ましい。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するための第4の手段として、第1ないし3のいずれか1の手段において、前記対をなす平行なコアを構成する1つの前記コアに設けた前記励磁コイルは、前記コアの長手方向中心から前記コアの端部までの距離の7割以下の範囲に設けたことを特徴とする平行型フラックスゲートセンサを提供することにある。
上記第4の手段によれば、検出コイルに発生する誘導起電力を大きくできる。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するための第5の手段として、第1ないし3のいずれか1の手段において、前記コアに取り付けられる前記励磁コイルと、複数存在する前記検出コイルのうち最も前記励磁コイルに近い前記検出コイルの位置は、前記コアの全長の1/10以下の距離に設置されていることを特徴とする平行型フラックスゲートセンサを提供することにある。
上記第5の手段によれば、磁気損失の影響が小さく、検出コイルに発生する誘導起電力を大きくできる。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するための第6の手段として、第1ないし3のいずれか1の手段において、前記対を成す平行なコアを構成する1つの前記コアに設けた複数の前記検出コイルは、互いに直列又は並列接続されていることを特徴とする平行型フラックスゲートセンサを提供することにある。
上記第6の手段によれば、直列接続することにより両検出コイルによって検出される誘導起電力が加算されて、誘導起電力の検出効率が増大できる。また並列接続することにより両検出コイルに接続される磁気検出回路への電流供給能力が増えるため、磁気検出回路において電流検出アンプ等を使用した場合は、誘導起電力の検出効率が増大できる。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するための第7の手段として、第1ないし3のいずれか1の手段において、前記励磁コイルと前記検出コイルは、同一方向で巻き回されていること、又は同一回数で巻き回されていること、又はすべて同一形状であることのいずれか1つ以上であることを特徴とする平行型フラックスゲートセンサを提供することにある。
上記第7の手段によれば、部品の共通化によりその種類を増やすことがなく、コイルの生産効率が良くなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、励磁コイルから発生する励磁磁界による誘導起電力を効率良く検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例1の平行型フラックスゲートセンサの説明図である。
【
図2】実施例2の平行型フラックスゲートセンサの説明図である。
【
図3】実施例3の平行型フラックスゲートセンサの説明図である。
【
図4】実施例4の平行型フラックスゲートセンサの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の平行型フラックスゲートセンサの実施形態について、図面を参照しながら、以下詳細に説明する。
【0016】
[実施例1]
図1は実施例1の平行型フラックスゲートセンサの説明図である。
対を成す平行なコア12A,12Bのそれぞれに励磁コイルeA,eBと検出コイルを設け、励磁コイルeA,eBを励磁回路30により各々逆極性で交流駆動して、検出コイルを並列若しくは直列接続して成る平行型フラックスゲートセンサ10Aでは、1個のコア12Aに注目すると、コア12Aに設置した1個の励磁コイルeAに励磁電流を通電して、励磁電流によって発生した励磁磁界でコア12Aを励磁、磁化し、コア12Aの磁束変化によって励磁コイルeAの近傍に設置した1個の検出コイルに発生する誘導起電力を磁気検出回路20で検出している。しかしながら、励磁コイルeAが発生する励磁磁界によるコア12Aの磁化は、励磁コイルeAの近傍に設置した第1の検出コイルの方向のみに起きるばかりでなく、第1の検出コイルの方向とは逆方向にも起きる。
【0017】
そこで励磁コイルeAの近傍に設置した第1の検出コイルpA1とは励磁コイルeAを間に挟んで逆方向に第2の検出コイルpA2を設けることによって、励磁コイルeAの両サイドから発生する励磁磁界による誘導起電力を効率良く検出することができる。
実施例1の平行型フラックスゲートセンサ10Aは、対を成す平行なコア12A,12Bを構成する1つのコア12Aに設けた検出コイルpA1は既出願の1個に対して、複数個に分割されており、その配置は励磁コイルeAを挟んだ両側に同数(実施例1では計4個)の検出コイルpA1,pA2,pA3,pA4を設けている(コア12Bも同様)。検出コイルは、同一のものを複数配置する形態の他、1個の検出コイルを分割(1/2とは限らない)して間を伸ばして配置する形態であっても良い。
【0018】
[実施例2]
図2は、実施例2の平行型フラックスゲートセンサの説明図である。実施例2の平行型フラックスゲートセンサ10Bは、対をなす平行なコアを構成する1つのコア(12A又は12B)に設けた複数個に分割された検出コイル(pA1,pA2、又はpB1,pB2)が、2個の場合が費用対効果の点で望ましい。
【0019】
[実施例3]
図3は実施例3の平行型フラックスゲートセンサの説明図である。実施例3の平行型フラックスゲートセンサ10Cは、対をなす平行なコアを構成する1つのコア(12A又は12B)に設けた励磁コイル(eA又はeB)は、コア(12A又は12B)の長手方向の中心からコア(12A又は12B)の端部までの距離の7割以下の範囲が好ましい。
例えば、励磁コイルeAから発生する励磁磁界によるコア12Aの磁化強化において、コア12Aの長短に反磁界が発生するが、コア12Aの端部に近づくほど反磁界の影響が大きく、励磁磁界によるコア12Aの磁化は弱くなり、結果として検出コイルに発生する誘導起電力は小さくなる。
【0020】
そこで励磁磁界によって発生する反磁界の影響を避けるためには、反磁界の影響を受けにくいコア12A端部以外に励磁コイルeAと検出コイルpA1,pA2を配置することが望ましい。発明者の鋭意研究の結果、励磁コイルeAはコア12Aの長手方向中心を基点として、コア12Aの端部までの距離(Lc/2)の7割以下の範囲Leに配置した場合、コア12Aの端部に生じる励磁コイルeAによる反磁界の効果に影響されることなく、検出コイルpA1,pA2における励磁磁界による誘導起電力の発生効率を高く保つことができ、外部印加磁界を十分な精度で検出できる(コア12Bも同様)。
【0021】
[実施例4]
図4は実施例4の平行型フラックスゲートセンサの説明図である。実施例4の平行型フラックスゲートセンサ10Dは、コア12Aに取り付けられた励磁コイルeAと、複数存在する検出コイルpA1,pA2のうち最も励磁コイルeAに近い検出コイル(pA1又はpA2)の位置は、コア12A全長の1/10以下の距離に設置されている(コア12Bも同様)。
平行型フラックスゲートセンサの動作過程において、励磁コイルから発生する励磁磁界はコアを磁化して、コアの磁束変化により検出コイルに誘導起電力が発生するが、励磁コイルと検出コイルの距離が遠くなれば磁気損失が増えて検出コイルに発生する誘導起電力は小さくなる。これとは逆に励磁コイルと検出コイルの距離が近くなれば磁気損失の影響は小さく、検出コイルに発生する誘導起電力は大きくなる。
そこで励磁コイルから発生する励磁磁界により検出コイルに誘導起電力が発生するが、コアの磁気損失の影響を小さくするために、励磁コイルと検出コイルは近づけた方が望ましい。発明者の鋭意研究の結果、励磁コイルeAと検出コイル(pA1又はpA2)の間の距離Lepとコア12Aの全長Lcとの比率をコア12A全長のLcの1/10以下とすると、検出コイルpA1,pA2における励磁磁界による誘導起電力の発生効率が高くなり、外部印加磁界を十分な精度で検出することができる。
【0022】
この他、本発明の平行型フラックスゲートセンサ10A~10Dは、第1の検出コイルと第2の検出コイルに発生した誘導起電力を磁気検出回路20で検出している。1つのコアに設けた複数個の検出コイルは、互いに直列又は並列接続されている。このとき第1の検出コイルと第2の検出コイルを直列接続すると、両検出コイルによって検出される誘導起電力が加算されて、その結果、誘導起電力の検出効率が増大する。一方、第1の検出コイルと第2の検出コイルを並列接続すると、両検出コイルに接続される磁気検出回路20への電流供給能力が増えるため、磁気検出回路20において電流検出アンプ等を使用した場合は、誘導起電力の検出効率が増大する。
【0023】
本発明の平行型フラックスゲートセンサ10A~10Dは、励磁コイル及び検出コイルの総数が少なくとも6個必要となる。
本発明に用いるコイルは、励磁コイルと検出コイルは同一方向で巻き回されている。
また本発明に用いるコイルは、励磁コイルと検出コイルは同一回数巻き回されている。
また本発明に用いる検出コイルはすべて同一形状である。
また本発明の検出コイルに加え、励磁コイルも複数個に分割されていても良い。
これによりコイルの生産効率を上げ、センサを構成する部品点数を増やすことなく製造することができる。その結果、コイルが増えることによるコストの上昇に比較して、検出コイルを分割することによる感度およびS/N比の向上による効果の方がはるかに有益となる。
【0024】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明した。しかしながら、本発明は、上記実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の変更が可能である。
また、本発明は、実施形態において示された組み合わせに限定されることなく、種々の組み合わせによって実施可能である。
【符号の説明】
【0025】
10A,10B,10C,10D 平行型フラックスゲートセンサ
12A,12B コア
eA,eB 励磁コイル
pA1,pA2,pA3,pA4,pB1,pB2,pB3,pB4 検出コイル
20 磁気検出回路