(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093651
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】クレーンの操作装置及びクレーン
(51)【国際特許分類】
B66C 13/56 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
B66C13/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210168
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】503032946
【氏名又は名称】住友重機械建機クレーン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】船渡 孝次
(57)【要約】
【課題】旋回レバーが中立状態にある場合において、旋回体の向きを操作者に正しく報知できるクレーンの操作装置を提供する。
【解決手段】旋回体(103)を操作する操作部(221)を備えたクレーンの操作装置であって、操作部(221)が中立状態であり、かつ、旋回体(103)が旋回している場合に、旋回体(103)の旋回方向を報知する報知部(120,231)を備えた、ことを特徴とする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回体を操作する操作部を備えたクレーンの操作装置であって、
前記操作部が中立状態であり、かつ、前記旋回体が旋回している場合に、前記旋回体の旋回方向を報知する報知部を備えた、ことを特徴とするクレーンの操作装置。
【請求項2】
請求項1に記載のクレーンの操作装置において、
前記操作部が操作状態であり、かつ、前記旋回体が旋回している場合にも、前記報知部は、前記旋回体の旋回方向を報知する、ことを特徴とするクレーンの操作装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のクレーンの操作装置において、
前記報知部は、前記操作部に設けられた振動部を含む、ことを特徴とするクレーンの操作装置。
【請求項4】
請求項3に記載のクレーンの操作装置において、
前記報知部は、表示部を含み、
前記旋回体の旋回方向を前記表示部が報知し、前記旋回体が旋回していることを前記振動部が報知する、ことを特徴とするクレーンの操作装置。
【請求項5】
請求項4に記載のクレーンの操作装置において、
前記表示部は、前記クレーンの吊り荷を含む映像を表示可能である、ことを特徴とするクレーンの操作装置。
【請求項6】
請求項3に記載のクレーンの操作装置において、
前記振動部が前記操作部に複数設けられ、
前記旋回体の旋回方向によって前記振動部が異なる、ことを特徴とするクレーンの操作装置。
【請求項7】
請求項6に記載のクレーンの操作装置において、
複数の前記振動部のうち1つは、前記操作部の第1位置に設けられ、
複数の前記振動部のうち他の1つは、前記操作部の第2位置に設けられ、
前記第1位置と前記第2位置とは、前記操作部の操作方向の両側に位置している、ことを特徴とするクレーンの操作装置。
【請求項8】
請求項1に記載のクレーンの操作装置と、旋回する旋回体と、を備えたクレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンの操作装置及びクレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、例えば特許文献1には、「旋回体の実際の回転方向を検出する第一検出部と、旋回体の回転方向を指示するための操作入力に関する情報を検出する第二検出部と、第一検出部の検出値と第二検出部の検出値とに基づいて、操作入力により指示された回転方向と、第一検出部により検出された回転方向とが対応しているか否かを判定する判定部と、判定部の判定結果に対応する情報を報知する報知部と、を備える報知装置」が記載されている。そして、この報知装置によれば、旋回体が旋回していることを作業者に報知できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、旋回レバーが中立状態にある場合において、傾斜地や風による旋回流れが生じた場合には、旋回体がどちらの方向に向いているかを報知できないといった課題がある。
【0005】
そこで、本発明は、旋回レバーが中立状態にある場合において、旋回体の向きを操作者に正しく報知できるクレーンの操作装置及びクレーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、代表的な本発明は、旋回体を操作する操作部を備えたクレーンの操作装置であって、前記操作部が中立状態であり、かつ、前記旋回体が旋回している場合に、前記旋回体の旋回方向を報知する報知部を備えた、ことを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、旋回レバーが中立状態にある場合において、旋回体の向きを操作者に正しく報知できる。なお、上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】(a)旋回レバーの詳細を示す正面図、(b)旋回レバーの詳細を示す側面図である。
【
図5】クレーンの電気的構成を示すブロック図である。
【
図7】(a)旋回レバーの詳細を示す正面図、(b)旋回レバーの詳細を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係るクレーンの実施形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
(第1実施形態)
図1は本発明の実施形態に係るクレーン100の側面図である。クレーン100は、クローラクレーンであり、走行体101と、旋回輪102を介して走行体上に旋回可能に設けられた旋回体103と、旋回体103に回動可能に軸支されたブーム104とを有する。走行体101は、トラックフレーム101aと、トラックフレーム101aに取り付けられるクローラ101bとを有する。
【0011】
旋回体103には運転室109が設けられ、原動機であるエンジン107のほか、ウインチ装置である巻上ドラム105及びリヤウインチドラム106が搭載されている。巻上ドラム105には巻上ロープ105aが巻回され、巻上ドラム105の駆動により巻上ロープ105aが巻き取りまたは繰り出され、フック110が昇降する。リヤウインチドラム106には起伏ロープ106aが巻回され、リヤウインチドラム106の駆動により起伏ロープ106aが巻き取りまたは繰り出され、ブーム104が起伏する。
【0012】
旋回体103は旋回輪102を介して旋回用油圧モータ(不図示)により旋回駆動され、巻上ドラム105は巻上用油圧モータ(不図示)により駆動され、リヤウインチドラム106はリヤウインチ用油圧モータ(不図示)により駆動される。
【0013】
図2は運転室109の全体を示す斜視図である。
図2に示すように、運転室109には、オペレータが着座する運転席201と、運転席201に着座したオペレータが右手で操作する右側レバー群(走行レバー、ウインチ操作レバーなど)210と、運転席201に着座したオペレータが左手で操作する、本実施形態に係る操作装置である左側レバー装置220と、が設けられている。また、運転席201の左前方には、表示装置231(表示部)が設けられており、クレーン100の運転状態や警告などの各種情報が表示される(詳細後述)。
【0014】
運転室109の床には、巻上ドラム105を制動するための巻上ドラムブレーキペダル251と、リヤウインチドラム106を制動するためのリヤドラムブレーキペダル252と、エンジン107の回転速度を増減させるためのアクセルペダル261と、旋回体103を制動するための旋回ブレーキペダル262とが設けられている。
【0015】
左側レバー装置220は、旋回レバー221(操作部)を備えている。旋回レバー221は、前後方向(操作方向)に揺動させることで旋回体103を旋回駆動するための操作レバーである。
図3は、旋回レバー221の斜視図である。
図3に示すように、旋回レバー221は、運転席201に着座するオペレータによって把持される把持部221dを有している。旋回レバー221は、アクセルグリップ221aと、旋回ブレーキスイッチ221bとを備えるほか、各種スイッチ221cと、ホーン221eとを備えている(
図4参照)。
【0016】
アクセルグリップ221aは、オペレータが左手で把持部221dを握った状態で、上から見たときに時計方向または反時計方向に回転させることでエンジン107の回転速度を増減するための操作装置である。アクセルグリップ221aは旋回レバー221と一体化されており、オペレータは片手でアクセルグリップ221aを操作しながら旋回レバー221を操作できる。なお、本実施形態では、アクセルグリップ221aを操作する以外に、アクセルペダル261を操作してもエンジン107の回転速度を増減できる構成となっている。
【0017】
旋回ブレーキスイッチ221bは、旋回体103が旋回しないように保持する旋回ブレーキを掛けるか否かを選択するためのスイッチである。なお、各種スイッチ221cの一例を挙げるならば、運転モードを通常モードとエコモードとに切り換える切換スイッチである。また、ホーン221eは、警告音を発するためのボタンである。
【0018】
次に、旋回レバー221の詳細構造について説明する。
図4は旋回レバー221の詳細図であって、(a)は旋回レバー221の一部を切り欠いて内部構成を示す正面図、(b)は旋回レバー221の右側面図である。
【0019】
本実施形態では、オペレータが左手で旋回レバー221を把持した際に、オペレータの左手親指の付け根部分が当たる領域に、振動部120が設けられている。この振動部120は、例えば直動ソレノイドで構成され、振動体121と、コイル122と、可動鉄心123とを含む。振動部120は、概ね旋回レバー221に内蔵されており、振動体121の先端が少し旋回レバー221の把持部221dから突出している。そして、コイル122に電流を流すことで、可動鉄心123が軸方向に移動し、可動鉄心123の先端に設けられた振動体121が旋回レバー221の周面から出没する。
【0020】
この構成により、オペレータは、旋回レバー221を把持しておくだけで、振動体121が振動した場合に、その振動を感知できる。なお、本発明において、振動部120は直動ソレノイドに限定されない。ロータリーソレノイドでも良いし、振動モータ等も採用できる。つまり、オペレータの手指に振動が伝わる構成であれば、その形式は問わない。
【0021】
次に、クレーン100の電気的構成の概要について説明する。
図5は、クレーン100の電気的構成を示すブロック図である。
図5に示すように、クレーン100は、コントローラ150を備えている。コントローラ150は、詳しくは図示しないが、CPUや記憶装置であるROM及びRAM、その他の周辺回路などを有する演算処理装置を含んで構成されている。コントローラ150の入力側には、旋回角度計108、吊り荷監視カメラ130、及び各種スイッチ221cが電気的に接続されている。また、コントローラ150の出力側には、ソレノイド(コイル)122及び表示装置231が電気的に接続されている。
【0022】
旋回角度計108は、旋回輪102の近傍に設けられており(
図1参照)、旋回体103の旋回角度及び旋回方向を検出する。吊り荷監視カメラ130は、フック110に設けられており、吊り荷Lの映像(吊り荷Lを含む映像)がコントローラ150に入力される。そして、コントローラ150は、入力された吊り荷Lの映像を表示装置231に表示する。また、各種スイッチ221cからの検出信号もコントローラ150に入力され、クレーン100の制御が行われる。
【0023】
このように構成されたクレーン100において、オペレータが旋回レバー221を前方に倒すと旋回体103が左旋回し、後方に倒すと旋回体103が右旋回する。また、
図3に示すように、旋回レバー221が中立状態にある場合(旋回レバー221が中立位置にある場合)には、旋回体103は慣性回転可能なフリー状態(中立フリー)となる。よって、フリー状態では、旋回ブレーキペダル262あるいは旋回ブレーキスイッチ221bを作動させて、旋回体103への制動力を発生させることで旋回体103の旋回を停止することができる。言い換えると、旋回レバー221が中立状態の場合には、旋回ブレーキペダル262あるいは旋回ブレーキスイッチ221bを作動させない限り、旋回体103は外的環境(傾斜地や風の影響)によって慣性力により旋回する場合がある(旋回流れ)。
【0024】
振動部120は、旋回レバー221の操作位置に関わらず(即ち、旋回レバー221が中立状態の場合と操作状態の場合とに関わらず)、旋回体103が旋回していることが検出されると、コントローラ150からの指令により振動する。具体的には、旋回角度計108が旋回体103の旋回を検出すると、コントローラ150は、旋回角度計108からの信号に基づいて、振動部120である直動ソレノイドを制御し、振動体121を出没させる(振動させる)。こうして、旋回レバー221を把持しているオペレータの手指に振動を伝達させる。オペレータは、手指、特に左手親指の付け根に振動を感じることで、旋回体103が旋回している事実を知ることができる。このように、振動部120は、旋回体103が旋回していることを報知する報知部として機能する。
【0025】
さらに、コントローラ150は、旋回角度計108から入力された旋回体103の旋回方向の情報に基づいて、表示装置231に旋回体103の旋回方向を表示する。
図6に表示装置231の表示例を示す。
図6に示すように、表示装置231には、吊り荷監視カメラ130からの吊り荷Lの映像が表示されており、その映像を避けた上部に、旋回体103の旋回方向を矢印A1,A2で表示している。
図6では、旋回体103が矢印A1の方向(左旋回)に旋回している例を示しているが、旋回体103が矢印A2の方向(右旋回)に旋回している場合には、矢印A1が消え、矢印A2が表示される。なお、矢印A1,A2を、吊り荷Lの映像に重ねて表示しても良い。
【0026】
以上のように構成された第1実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
【0027】
オペレータは、旋回レバー221に内蔵された振動部120からの振動により、旋回体103が旋回していることを認識できる。特に、作業現場では騒音が大きいため、音声による報知ではオペレータが気付かない可能性もあるが、本実施形態では、振動によりオペレータに直接報知するので、より確実にオペレータに旋回体103が旋回していることを報知できる。
【0028】
また、旋回レバー221が中立状態にある場合において、振動部120が振動した場合には、オペレータは、傾斜地や強風等により旋回体103の旋回流れが発生していることを認識できる。そのため、オペレータは、旋回ブレーキ操作をするなど、適切な操作を行うことができる。
【0029】
さらに、表示装置231にて旋回体103の旋回方向が表示されるので、オペレータは、旋回レバー221の操作方向と旋回体103の実際の旋回方向とが一致しているか否かを目視で簡単に確認できる。しかも、旋回体103の旋回方向が吊り荷Lの映像と共に表示装置231に表示されるため、オペレータは、目線を変えることなく吊り荷Lの状態と旋回体103の旋回方向とを瞬時に確認でき、使い勝手が良い。しかも、本実施形態では、旋回体103が旋回していること自体の事実は、振動によってオペレータに直接報知する。よって、オペレータは、振動を感じた際に、表示装置231の旋回方向の表示を確認すればよいので、クレーンの操作に集中しやすい。また、表示装置231の旋回方向は、視覚的に表示することになるので感覚的に分かりやすい。
【0030】
また、旋回レバー221を操作方向に倒している状態であって、表示装置231に表示される旋回体103の旋回方向と、旋回レバー221の操作方向とが矛盾している場合には、オペレータの意図とは異なる旋回動作が実際に行われているため、オペレータはその矛盾を認識して、適切な操作を行うことができる。
【0031】
なお、クレーン100が大型の場合、傾斜地や風の影響により旋回体103が流れると、その慣性力が大きいため、オペレータの意図する操作方向と逆方向に旋回体103が旋回する場合は起こり得る。このような事態が生じた場合であっても、本実施形態のように振動部120が旋回体103の旋回を報知し、かつ、表示装置231が旋回体103の旋回方向を報知する構成としたので、オペレータは適切に作業を行うことができる。
【0032】
(変形例)
上記した実施形態では、旋回レバー221の操作位置に関わらず、旋回体103が旋回したことを振動部120によりオペレータに報知する構成を説明した。しかし、この例に替えて、旋回レバー221が中立状態にある場合に限って、コントローラ150が振動部120を作動するようにし、オペレータが旋回操作を行っている場合、即ち、旋回レバー221を前方または後方に倒しているときには、振動部120の作動を停止するようにしても良い。
【0033】
このように構成しても、オペレータは、表示装置231にて旋回体103の旋回方向の矢印A1,A2を確認すれば、自身の操作と実際の旋回方向とが矛盾しているか否かを認識できるので、上記した実施形態と比べて利便性はさほど損なわれない。
【0034】
また、旋回方向の矢印A1,A2を表示装置231に表示する例を説明したが、この例に替えて、例えば、運転室109内の前窓の枠に左右に1つずつランプ等の表示灯を設けておき、旋回方向に対応する表示灯が点灯するような構成としても良い。
【0035】
また、コントローラ150は、直動ソレノイドの励磁間隔(通電間隔)を旋回体103の旋回方向に基づいて変化させ、振動部120の振動パターンの違いによりオペレータに旋回体103の旋回方向を報知しても良い。例えば、左旋回の場合に右旋回の場合より振動の周期が長くなるように直動ソレノイドの通電を制御することで、1つの振動部120により、旋回体103の旋回方向もオペレータに報知できる。この場合、表示装置231による旋回体103の旋回方向の表示をしなくても良い。
【0036】
また、クレーン100が、外部ウェイトを積載した搭載台を備えた構成(例えば、特開2011-136797号公報)の場合には、旋回体103の旋回動作と連動して積載台も移動する。この構成の場合には、旋回体103の旋回方向を検出する手段として、旋回角度計108に替えて、積載台の車輪の回転を検出する回転検出センサ(ロータリーエンコーダ等)を設け、回転検出センサで検出される車輪の回転方向に基づいて、旋回体103の旋回方向を検出しても良い。
【0037】
(第2実施形態)
図7は第2実施形態に係る旋回レバー321の詳細図であって、(a)は旋回レバー321の正面図、(b)は旋回レバー321の右側面図である。
図7に示すように、第2実施形態に係る旋回レバー321は、第1実施形態に係る旋回レバー221と比べて、振動部の構成が異なる点に特徴がある。そこで、以下では、特に振動部の構成について詳しく説明し、第1実施形態と重複する説明は省略する。
【0038】
第2実施形態では、2つの振動部320A,320Bを旋回レバー321に設けており、振動部320A,320Bが、それぞれ別個に振動する点が第1実施形態と相違する。具体的には、振動部320Aは、振動モータ321Aと、振動モータ321Aの振動をオペレータに伝達するための凸部322Aと、を含む。そして、振動モータ321Aは、コントローラ150からの指令に従い駆動される。なお、振動部320Bも同様に構成される。
【0039】
さらに、第2実施形態では、振動部320A,320Bの配置についても工夫がなされている。具体的には、振動部320Aと振動部320Bが、旋回レバー321の操作方向(
図3における前後方向/
図7(a)において紙面に直交する方向)の両側の位置に設けられている。より詳細には、旋回レバー321をオペレータが左手で把持した際、左手の掌、または、親指の付け根部分に一方の振動部320Aの凸部322Aが当たる位置(第1位置)に振動部320Aが設けられ、左手の親指以外の指(付け根を含む)に他方の振動部320Bの凸部322Bが当たる位置(第2位置)に振動部320Bが設けられている。
【0040】
第2実施形態では、旋回角度計108にて検出された旋回体103の旋回方向に基づいて、異なる振動部320A,320Bが振動するようコントローラ150が振動部320A,320Bの動作を制御する。具体的には、旋回体103が左旋回している場合には、予め対応付けられた旋回レバー321の左側の振動部320Aが振動し、旋回体103が右旋回している場合には、予め対応付けられた旋回レバー321の右側の振動部320Bが振動するように、コントローラ150が振動モータ321A,321Bの駆動を制御する。この構成により、オペレータは左手の感触によって、旋回体103が左旋回しているのか、右旋回しているのかを認識できる。
【0041】
以上のように構成された第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。さらに、第2実施形態では、振動部320A,320Bを備えており、旋回方向に応じて一方の振動部を振動させる構成としたので、オペレータは旋回レバー321を把持しているだけで、旋回体103の旋回方向を認識できる。そのため、表示装置231に旋回体103の旋回方向を表示しなくて済む。また、振動部320Aと振動部320Bとが旋回レバー321の操作方向の両側の位置に配置されているため、オペレータは手に感じる振動により、旋回体103の旋回方向を直感的に把握できる。しかも、振動部320Aと振動部320Bとが間隔を空けて対向配置されているため、どちらの振動部が振動したのかを十分に感覚として捉えることができる。このことは、特に、騒音が大きい作業環境下では非常に有利である。
【0042】
(その他の実施形態への言及)
なお、本発明は前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。前記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者ならば、本明細書に開示の内容から、各種の代替例、修正例、変形例あるいは改良例を実現することができ、これらは添付の特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【0043】
例えば、コントローラ150と通信してクレーン100の遠隔操作の指令を出す遠隔操作端末においても、旋回体103の旋回及びその方向を振動により報知する構成とすることもできる。この場合も、上記と同様の作用効果を奏することができる。また、遠隔操作を行う管理室においても、同様に旋回方向を振動で報知する構成とすることができる。即ち、本発明は、運転室109内に設けた旋回レバー221,321だけでなく、遠隔操作端末における旋回ダイヤル、遠隔の管理室に設置された旋回ダイヤルなど、あらゆるクレーンの操作装置に対して適用できる。
【0044】
また、本発明に係る報知部は、旋回体103の旋回方向を報知できればあらゆる装置であって良い。特に本発明の報知部は、視覚や振動で提示するので、現場の騒音などに関係なくオペレータに報知でき、オペレータが認識しやすい。なお、クレーン100の運転状態や警告などの各種情報が表示される表示装置231でなく、例えば、運転室109(キャブ)前方に位置する前方を見るための窓の上方にヘッドアップディスプレイを設けておき、そこに旋回方向を表示しても良い。また、さらに、音声による報知を加えても良い。
【0045】
また、クレーンの一例として、クローラクレーンを例示したが、本発明は、これに限らず、ホイールクレーン、トラッククレーン、ラフテレーンクレーン、オールテレーンクレーン等の他の移動式クレーンに加えて、タワークレーン、天井クレーン、ジブクレーン、引込みクレーン、スタッカークレーン、門型クレーン、アンローダ、アースドリル等の基礎機械等のあらゆるクレーンに適用可能である。
【符号の説明】
【0046】
100 クレーン
101 走行体
102 旋回輪
103 旋回体
104 ブーム
105 巻上ドラム
106 リヤウインチドラム
107 エンジン
108 旋回角度計
109 運転室
110 フック
120 振動部
121 振動体
121 可動鉄心
122 ソレノイド
130 吊り荷監視カメラ
150 コントローラ
220 左側レバー装置(操作装置)
221,321 旋回レバー(操作部)
221a アクセルグリップ
221b 旋回ブレーキスイッチ
221c 各種スイッチ
221d 把持部
221e ホーン
231 表示装置(報知部/表示部)
251 巻上ドラムブレーキペダル
252 リヤドラムブレーキペダル
261 アクセルペダル
262 旋回ブレーキペダル
320A,320B 振動部
321A,321B 振動モータ
322A,322B 凸部
A1,A2 旋回方向を示す矢印
L 吊り荷