(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093655
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】通信ケーブルおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01B 11/06 20060101AFI20240702BHJP
H01B 11/04 20060101ALI20240702BHJP
H01B 7/18 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
H01B11/06
H01B11/04
H01B7/18 C
H01B7/18 E
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210174
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000238049
【氏名又は名称】冨士電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】河田 正義
【テーマコード(参考)】
5G313
5G319
【Fターム(参考)】
5G313AC04
5G313AC05
5G313AD01
5G313AE01
5G319DA01
5G319DC05
5G319DC07
5G319DC12
5G319EA02
5G319EB04
5G319EC04
(57)【要約】
【課題】電気特性が良好な、高品質な通信ケーブルを提供する。
【解決手段】上記課題を解決する通信ケーブルは、2本の絶縁電線を所定の対ピッチ長で撚り合わせた対撚線を複数本、所定の集合ピッチ長で撚り合わせたケーブル心を備え、各前記対撚線を構成する前記絶縁電線の一方が、単色の絶縁体で、導体を被覆した単色絶縁電線であり、他方が、長さ方向に延在する色帯をn本有する絶縁体で、導体を被覆した色帯付絶縁電線であり、各前記対撚線の撚り返し率が、各前記対撚線の前記対ピッチ長の7倍以上8倍以下であり、前記集合ピッチ長が、複数の前記撚り返し率のうちの最小値に対して1.3倍以上1.5倍以下、かつ100mm未満である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2本の絶縁電線を所定の対ピッチ長で撚り合わせた対撚線を複数本、所定の集合ピッチ長で撚り合わせたケーブル心を備え、
各前記対撚線を構成する前記絶縁電線の一方が、単色の絶縁体で、複数の素線を撚り合わせた導体を被覆した単色絶縁電線であり、他方が、長さ方向に延在する色帯をn本(nは1以上の整数)有する絶縁体で、複数の素線を撚り合わせた導体を被覆した色帯付絶縁電線であり、
各前記対撚線の下記式(1)で表される撚り返し率が、各前記対撚線の前記対ピッチ長の7倍以上8倍以下であり、
前記集合ピッチ長が、複数の前記撚り返し率のうちの最小値に対して1.3倍以上1.5倍以下(ただし、100mm未満)である、通信ケーブル。
撚り返し率[%]=100-x/n・・・(1)
(xは、各前記対撚線の前記色帯付絶縁電線を正面視したとき、前記対ピッチ長の100倍の長さ範囲に確認される、前記色帯付絶縁電線を幅方向に横切る前記色帯の数を表す)
【請求項2】
導体を絶縁体で被覆した絶縁電線を複数本準備する工程と、
2本の前記絶縁電線を所定の方向に回転させて撚り返しながら、2本の前記絶縁電線を前記絶縁電線の撚り返し方向と反対方向に回転させて所定の対ピッチ長で対撚りし、対撚線を形成する工程と、
前記絶縁電線の準備工程および前記対撚線の形成工程を繰り返して複数の前記対撚線を準備し、複数の前記対撚線を所定の集合ピッチ長で撚り合わせてケーブル心を形成する工程とを、備え、
前記対撚線の形成工程では、下記式(2)で表される撚り返し回転率を、各前記対撚線の前記対ピッチ長の7倍以上8倍以下とし、
前記ケーブル心の形成工程では、前記集合ピッチ長を、複数の前記撚り返し回転率のうちの最小値に対して1.3倍以上1.5倍以下(ただし、100mm未満)とする、通信ケーブルの製造方法。
撚り返し回転率(%)=(撚り返し時の回転数)/(対撚り時の回転数)×100・・・(2)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は通信ケーブルおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LAN(Local Area Network)ケーブル等の通信ケーブルは、サーバどうしの間や、サーバとスイッチとの間、サーバとパーソナルコンピュータとの間等、様々な機器の接続に使用されている。このような通信ケーブルとして、
図1に示すように、導体2を絶縁体4で絶縁した絶縁電線6を2本撚り合わせた対撚線8を、複数本撚り合わせたケーブル心10を有し、当該ケーブル心10を押巻き20や遮蔽層30、外被層40で被覆した構造を有する通信ケーブル1が知られている(例えば、特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、LANケーブルは、より幅広い分野で使用されるようになっており、電気特性がさらに安定した、高品質な通信ケーブルの提供が望まれている。特に250MHzまたは500MHzの周波数に対応のCat.6製品およびCat.6A製品に対する需要が高まっており、電気特性が良好な当該通信ケーブルが求められている。
そこで、本発明の主な目的は、電気特性が良好な高品質な通信ケーブル、およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明の一態様によれば、
2本の絶縁電線を所定の対ピッチ長で撚り合わせた対撚線を複数本、所定の集合ピッチ長で撚り合わせたケーブル心を備え、
各前記対撚線を構成する前記絶縁電線の一方が、単色の絶縁体で、複数の素線を撚り合わせた導体を被覆した単色絶縁電線であり、他方が、長さ方向に延在する色帯をn本(nは1以上の整数)有する絶縁体で、複数の素線を撚り合わせた導体を被覆した色帯付絶縁電線であり、
各前記対撚線の下記式(1)で表される撚り返し率が、各前記対撚線の前記対ピッチ長の7倍以上8倍以下であり、
前記集合ピッチ長が、複数の前記撚り返し率のうちの最小値に対して1.3倍以上1.5倍以下(ただし、100mm未満)である、
通信ケーブルが提供される。
撚り返し率[%]=100-x/n・・・(1)
(xは、各前記対撚線の前記色帯付絶縁電線を正面視したとき、前記対ピッチ長の100倍の長さ範囲に確認される、前記色帯付絶縁電線を幅方向に横切る前記色帯の数を表す)
【0006】
本発明の他の態様によれば、
導体を絶縁体で被覆した絶縁電線を複数本準備する工程と、
2本の前記絶縁電線を所定の方向に回転させて撚り返しながら、2本の前記絶縁電線を前記絶縁電線の撚り返し方向と反対方向に回転させて所定の対ピッチ長で対撚りし、対撚線を形成する工程と、
前記絶縁電線の準備工程および前記対撚線の形成工程を繰り返して複数の前記対撚線を準備し、複数の前記対撚線を所定の集合ピッチ長で撚り合わせてケーブル心を形成する工程とを、備え、
前記対撚線の形成工程では、下記式(2)で表される撚り返し回転率を、各前記対撚線の前記対ピッチ長の7倍以上8倍以下とし、
前記ケーブル心の形成工程では、前記集合ピッチ長を、複数の前記撚り返し回転率のうちの最小値に対して1.3倍以上1.5倍以下(ただし、100mm未満)とする、通信ケーブルの製造方法が提供される。
撚り返し回転率(%)=(撚り返し時の回転数)/(対撚り時の回転数)×100・・・(2)
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電気特性が良好な、高品質な通信ケーブルおよびその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】
図3A~
図3Cは、対撚線を構成する単色絶縁電線および色帯付絶縁電線、ならびに撚り返し率を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好ましい実施形態にかかる通信ケーブルについて説明する。
当該通信ケーブルはいわゆるLAN(Local Area Network)用ツイストペアケーブルから構成された通信ケーブルである。
【0010】
本実施形態の通信ケーブルは、2本の絶縁電線を撚り合わせた対撚線を複数本、所定の集合ピッチ長で撚り合わせたケーブル心を備えていればよい。以下、
図1に示すように、ケーブル心10、押巻き20、遮蔽層30、および外被層40を有する通信ケーブル1を例に説明する。ただし、本実施形態に係る通信ケーブルは、当該構造に限定されない。
【0011】
ケーブル心10は、2本の絶縁電線6を所定の対ピッチ長で撚り合わせた複数(ここでは4対)の対撚線8と、当該複数の対撚線8を互いに隔離するための十字介在9とで構成されている。十字介在9および対撚線8は、後述の集合ピッチ長で撚り合わせられている(本明細書では、当該撚り合わせを「集合撚り」とも称する)。
各対撚線8は、2本の絶縁電線6から構成されており、これらは一定方向に、後述の対ピッチ長で撚り合わせられている(本明細書では、当該撚り合わせを「対撚り」とも称する)。
対撚線8中の各絶縁電線6は、
図1に示すように、導体2および絶縁体4から構成され、導体2の周囲が、絶縁体4によって被覆されている。
導体2は
図2に示すように単線で構成されている。導体2(単線)は、例えば銅合金等からなる軟銅線である。
一方、絶縁体4はポリエチレン等の樹脂で構成されている。
また、十字介在9はポリエチレン等の樹脂で構成されている。十字介在9は通信ケーブル1の長さ方向に延在し、対撚線8同士を非接触状態で分離するための部材である。
【0012】
本実施形態では、上記ケーブル心10の周囲に、押巻き20が形成されている。押巻き20は厚み0.3mm以上0.4mm以下の不織布テープから構成されている。押巻き20を有すると、ケーブル心10と後述の遮蔽層30との距離が一定になりやすく、通信ケーブル1の高周波電気特性等が良好になりやすい。
【0013】
押巻き20の周囲には、遮蔽層30が配置されている。当該遮蔽層30は一層からなるものであってもよく、二層以上で構成されていてもよい。本実施形態では、遮蔽テープで構成されている。遮蔽テープは、例えばアルミニウム箔(Al)をポリエチレンテレフタレート(PET)基板に貼り付けたAl/PETテープから構成されており、遮蔽テープはケーブル心10の長さ方向に沿って横巻きされ、押巻き20の外周を被覆している。
本明細書において、「横巻き」とは、長尺なテープをケーブル心10や押巻き20の長さ方向に沿ってらせん状に巻き付ける意であって、テープの側縁部を先に巻き付けたテープに重ねながら巻き付ける、という意である。
【0014】
遮蔽層30の周囲には、外被層40が配置されている。当該外被層40は、上述の遮蔽層30を覆うように配置された層であり、通信ケーブル1の最外層となる層である。外被層40の材料は、通信ケーブル1の用途や使用環境、所望の硬さに応じて適宜選択され、例えばポリ塩化ビニル、ポリエチレン等から選択される。
【0015】
ここで、本実施形態では、ANSI/TIA-568.2規格に則り、上述の対撚線8を構成する2本の絶縁電線6のうちの一方が、
図3Aに示すように、単色(例えば、青色、橙色、緑色、茶色)の絶縁体4aで導体2を被覆した単色絶縁電線6aである。また、他方が、白地4wに色帯4sがn本(nは1以上)配置された絶縁体4bで導体を被覆した色帯付絶縁電線6bである。上記絶縁体4bにおいて、色帯4sは、色帯付絶縁電線6bの長さ方向に延在するように配置されている。また、各色帯付絶縁電線6b中の色帯4sの数(n)は1以上であればよいが、通常1または2である。例えば、色帯付絶縁電線6bの表側と裏側とに1本ずつ計2本(n=2)の色帯4sが配置されていてもよく、色帯付絶縁電線6bの表側または裏側のいずれかに1本(n=1)のみ色帯4sが配置されていてもよい。
【0016】
また、上記各対撚線8は、絶縁電線6(単色絶縁電線6aおよび色帯付絶縁電線6b)をそれぞれ個別に、所定の方向に撚り返しながら、これらをまとめて対撚りした構造を有し、ケーブル心10は、対撚線8をさらに集合撚りした構造を有する。当該対撚り時および集合撚り時の絶縁電線6や対撚線8の状態について、
図4A~
図4Cを用いて説明する。
本実施形態では、
図4Aに示すように、対撚線8の作製時、個々の絶縁電線6(単色絶縁電線6aおよび色帯付絶縁電線6b)を正規の撚り方向とは反対方向(
図4AではC方向)に回転させて撚り返す。その後、この状態の2本の絶縁電線6を撚り返し方向Cとは反対方向(
図4BではD方向)に対撚りする。その後、4対の対撚線8を介在9に沿って対撚り方向Dと同じ方向(
図4CではE方向)に集合撚りする。
【0017】
ここで、対撚線8において、撚り返しが対撚りに対して、どの程度行われているかは、下記式(1)で表される撚り返し率によって特定できる。
撚り返し率[%]=100-x/n・・・(1)
上記式(1)において、nは、各色帯付絶縁電線6bが有する、色帯の数を表す。xは、各対撚線の色帯付絶縁電線6bを正面視したとき、対撚線8の対ピッチ長の100倍の長さ範囲に確認される、色帯付絶縁電線6bを幅方向に横切る色帯の数を表す。なお、本明細書において、「対ピッチ長」とは、対撚りの1ピッチ分の長さをいう。また、色帯付絶縁電線6bの正面視には、単色絶縁電線6aの背面側にある色帯付絶縁電線6bを正面側から見たときの状態も含む。
図3Bおよび
図3Cに、対撚線8の色帯付絶縁電線6bを正面視したときの模式図を示す。
図3Bは、撚り返し率が100%未満であるときの模式図である。また
図3Cは、撚り返し率が100%の場合の模式図である。上記繰り返し率を算出する際、色帯付絶縁電線6bを幅方向に横切る色帯4sの数をカウントする。例えば、
図3Bでは、矢印を付した箇所に、色帯付絶縁電線6bを幅方向に横切る色帯4sが確認されるため、これらの数をカウントする。一方、
図3Cでは、色帯4sは視認されるものの、色帯付絶縁電線6bを幅方向に横切る色帯4sが確認されない。したがって、この場合の色帯4sの数は0となる。
【0018】
本発明者らが検討したところ、当該撚り返し率と、対撚線8の対ピッチ長、および集合ピッチ長と、通信ケーブルの電気特性の安定性には、密接な関係があることが明らかとなった。一般的な通信ケーブルでは、対撚線8の対ピッチ長はそれの対撚線8ごとに異なる値に設定するものの、撚り返し率はいずれの対撚線8においても一定とすることが一般的である。
これに対し、本実施形態では、各対撚線8の撚り返し率を、それぞれの対撚線8の対ピッチ長の7倍以上8倍以下、好ましくは7.6倍以上7.9倍以下、より好ましくは7.63倍以上7.90倍以下とする。さらに、対撚線8を集合撚りする際の集合ピッチ長を、複数の撚り返し率のうちの最小値に対して1.3倍以上1.5倍以下とする。ただし、集合ピッチ長は、100mm未満の範囲で設定する。また、本明細書において、「集合ピッチ長」とは、集合撚りの1ピッチ分の長さをいう。
撚り返し率および集合ピッチ長を上記のように設定することで、通信ケーブル1の電気特性が良好になる理由は定かではないが、下記のように考えられる。例えば、対ピッチ長が長い対撚線8は、対ピッチ長が短い対撚線8と比較して、対撚りが解け易く、安定し難い。このような対ピッチ長が長い対撚線8の撚り返し率を、対ピッチ長が短い他の対撚線8と同等に設定すると、対ピッチ長が長い対撚線8に負荷がかかりやすく、電気特性の低下につながることがある。これに対し、撚り返し率を対ピッチ長に合わせて設定することで、例えば対ピッチ長が長い対撚線等、特定の対撚線8に過度な負荷がかかることを抑制でき、電気特性が安定すると考えられる。
【0019】
次に通信ケーブル1の製造方法について説明する。
【0020】
当該通信ケーブル1の製造方法では、導体2として、軟銅線(単線)を準備する。
その後、導体2を長さ方向に搬送しながらポリエチレン樹脂を押出機のダイスから押し出し、導体2を絶縁体4で被覆し、絶縁電線6を形成する。このとき、絶縁体6を着色して、対となる絶縁電線6のうちの、一方を、上述の単色絶縁電線6aとし、他方を色帯付絶縁電線6bとする。
その後、各絶縁電線6(単色絶縁電線6aおよび色帯付絶縁電線6b)をそれぞれ個別に、所定の方向に所定回数撚り返しながら、2本の絶縁電線6をまとめて、所定の方向に所定回数対撚りし、対撚線8を形成する。
かかる工程では、汎用の対撚機を使用し、サプライ側では各絶縁電線6を正規の撚り合わせ方向の反対方向に所定回数撚り返し、巻取り側では2本の絶縁電線6を正規の撚り合わせ方向に所定回数撚り合わせる。
上記絶縁電線の準備、および対撚線の形成を繰り返し、複数の対撚線(ここでは4対)を準備する。そして、当該複数の対撚線8を十字介在9に沿わせて、所定の集合ピッチ長で集合撚りし、ケーブル心10を構成する。
【0021】
続いて、当該ケーブル心10を長さ方向に搬送しながら、その周囲に不織布テープを横巻きして、ケーブル心10の周囲に押巻き20を形成する。
その後、押巻き20の周囲に、Al/PETテープを横巻きし、遮蔽層30を形成する。
さらに、押巻き20および遮蔽層30を周囲に形成したケーブル心10を長さ方向に搬送しながら、その周囲にポリエチレンやポリ塩化ビニルなどを押し出して外被層40を形成し、上述の通信ケーブル1を製造する。
【0022】
本実施形態では、上述の対撚線を作製する工程における撚り返し回転数と、対撚り回転数とから、下記式(2)で表される撚り返し回転率を求める。当該撚り返し回転率は、上述の式(1)で表される撚り返し率と同等の技術的意味を有している。
撚り返し回転率[%]=(各絶縁電線6の撚り返し回転数)/(2本の絶縁電線6の対撚り回転数)×100・・・(2)
そして、上述の対撚線を作製する工程において、撚り返し回転率が、所望の対ピッチ長(出来上がりの対ピッチ長)の7倍以上8倍以下、好ましくは7.6倍以上7.9倍以下、より好ましくは7.63倍以上7.90倍以下となるように、各対撚線8作製時の撚り返し回転数や対撚り回転数を調整する。なお、各絶縁電線6を撚り返し回転数、および対撚り回転数の絶対値は、通信ケーブル1の種類や、対撚線8の種類に応じて適宜選択される。
さらに、本実施形態では、複数対の対撚線を集合撚りする際の集合ピッチ長を、複数の撚り返し回転率のうちの最小値に対して1.3倍以上1.5倍以下(ただし100mm未満)となるように調整する。
このように、上記撚り返し回転率や、集合ピッチ長を設定することで、電気特性が良好な通信ケーブル1が得られやすくなる。
【実施例0023】
(1)サンプルの準備
(1.1)サンプル1(比較例)
導体として外径0.565mmの軟銅線(単線)を準備した。
その後、絶縁体の樹脂として高密度ポリエチレン(青色)を準備し、これを押出機のダイスから押し出して導体を絶縁体で被覆し、外径1.020~1.080mmの青色絶縁電線を形成した。同様に導体を準備し、絶縁体の樹脂として、高密度ポリエチレン(白色および青色)を準備し、これを押し出し機のダイスから押し出して導体を被覆し、白地に青色の色帯が1本長さ方向に延在するように配置された、外径1.020~1.080mmの色帯付絶縁電線を形成した。
続いて、2本の当該絶縁電線をそれぞれ、右方向に一定の回転数で回転させて撚り返しながら、2本の絶縁電線を左方向に所定の対ピッチ長で対撚りし、対撚線を形成した。同様の工程を繰り返し、合計4対の対撚線を形成した(青対、緑対、橙対、茶対)。いずれの対撚線においても、撚り返し率は75%とした。
その後、4対の対撚線を右方向に所定の集合ピッチ長で集合撚りした。
各対撚線の撚り返し率、対ピッチ長、集合ピッチ長などを表1に示す。
【0024】
押巻きとして厚み0.35mmの不織布テープを準備し、これをケーブル心の周囲に横巻きした。続いて、遮蔽テープを準備し、これを押巻きに横巻きした。
その後、外被層の材料として難燃性ポリエチレンおよびポリ塩化ビニル(PVC)の混合物を準備し、これを押出機のダイスから押し出して遮蔽層の周囲に厚み0.4mmの外被層を形成した。
【0025】
(1.2)サンプル2~4
対ピッチ長、撚り返し率、集合撚り方向および集合ピッチ長を表1に示すように変更した以外は、サンプル1と同様に通信ケーブルを製造した。
【0026】
(2)サンプルの電気的特性試験
各サンプルを200m切り出し、各切出し片について対撚線ごとにすべて反射減衰量(RL)および近端漏話減衰量(NEXT)を測定した。測定結果を表1に示す。
【0027】
【0028】
(3)まとめ
表1に示すように、対撚線の撚り返し率が、各対撚線の対ピッチ長の7倍以上8倍以下に収まり、かつ集合ピッチ長が、対撚線の最小撚り返し率に対して1.3倍以上1.5倍以下に収まると、撚り返し率が一定(75%)である場合(サンプル1)と比較して、反射減衰量(RL)および近端漏話減衰量(NEXT)ともに良好な値を示した(サンプル2および3)。
一方、対撚線の撚り返し率が、各対撚線の対ピッチ長の7倍以上8倍以下に収まり、かつ集合ピッチ長が、対撚線の最小撚り返し率に対して1.3倍以上1.5倍以下に収まったとしても、集合ピッチ長が100mm以上である場合には、反射減衰量が低かった(サンプル4)。