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特開2024-93659複合粒子の製造方法、複合粒子、複合材料の製造方法、及び複合材料
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  • 特開-複合粒子の製造方法、複合粒子、複合材料の製造方法、及び複合材料 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093659
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】複合粒子の製造方法、複合粒子、複合材料の製造方法、及び複合材料
(51)【国際特許分類】
   B22F 1/148 20220101AFI20240702BHJP
   B22F 1/18 20220101ALI20240702BHJP
   C22C 1/08 20060101ALI20240702BHJP
   C22C 1/10 20230101ALI20240702BHJP
   B01J 2/00 20060101ALI20240702BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240702BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20240702BHJP
【FI】
B22F1/148
B22F1/18
C22C1/08 D
C22C1/10 Z
B01J2/00 A
C08L101/00
C08K3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210180
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100163463
【弁理士】
【氏名又は名称】西尾 光彦
(72)【発明者】
【氏名】加藤 智也
(72)【発明者】
【氏名】小谷 泰暢
【テーマコード(参考)】
4G004
4J002
4K018
4K020
【Fターム(参考)】
4G004AA01
4J002AA00W
4J002AE05W
4J002BB03W
4J002BD12X
4J002BE02W
4J002BF02W
4J002BG00W
4J002CH01W
4J002CK02W
4J002CP03W
4J002DA016
4J002DA026
4J002DA076
4J002DA096
4J002DE076
4J002DE106
4J002DE116
4J002DE146
4J002DE236
4J002DF016
4J002DJ016
4J002DK006
4J002HA09
4K018AA02
4K018AA03
4K018AA14
4K018BA01
4K018BA02
4K018BA08
4K018BB01
4K018BB04
4K018BC11
4K018BC26
4K018BD10
4K018CA09
4K018KA22
4K020AA21
4K020AC01
4K020AC04
4K020AC07
4K020BB29
(57)【要約】
【課題】多くの固体粒子を含有する中空構造を有する複合粒子を得る観点から有利な複合粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】複合粒子1bは、液滴10の表面を複数の固体粒子20で被覆することによって製造される。液滴10は、第一成分11と液体12との混合物を含んでいる。第一成分11は、ポリマー及びポリマー前駆体からなる群より選ばれる少なくとも1つである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー及びポリマー前駆体からなる群より選ばれる少なくとも1つの第一成分と液体との混合物を含む液滴の表面を複数の固体粒子で被覆することを含む、
複合粒子の製造方法。
【請求項2】
前記液滴をなしている前記混合物から前記液体を除去することをさらに含む、
請求項1に記載の複合粒子の製造方法。
【請求項3】
前記液滴をなしている前記混合物から前記液体を除去し、かつ、前記ポリマー及び前記ポリマー前駆体の重合体からなる群より選ばれる少なくとも1つによって前記複数の固体粒子を固定させて中空構造を形成することをさらに含む、
請求項1に記載の複合粒子の製造方法。
【請求項4】
前記中空構造は、前記複数の固体粒子を含むシェルによって覆われた内部空間を有し、
前記複合粒子の断面において、前記複合粒子全体の断面積に対する前記内部空間の断面積の比は、0.99以下である、
請求項3に記載の複合粒子の製造方法。
【請求項5】
前記複数の固体粒子によって形成された表面に前記混合物の液滴を付着させたときに、前記液滴の前記表面への付着から30秒間経過した時点での前記表面に対する前記液滴の接触角は、50°以上である、
請求項1に記載の複合粒子の製造方法。
【請求項6】
前記固体粒子は、窒化ホウ素、グラファイト、酸化マグネシウム、二酸化ケイ素、アルミナ、窒化アルミニウム、酸化亜鉛、金、銀、銅、ダイヤモンド、酸化鉄、アルミニウム、フッ素系樹脂、炭酸カルシウム、疎水化処理がなされた表面を有する粒子、及び親水化処理がなされた表面を有する粒子からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む、
請求項1に記載の複合粒子の製造方法。
【請求項7】
前記ポリマーは、シリコーン樹脂、ポリ酢酸ビニル、(メタ)アクリル系樹脂、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、パラフィン、及びシリコーンオイルからなる群より選ばれる少なくとも1つを含む、
請求項1に記載の複合粒子の製造方法。
【請求項8】
前記ポリマー前駆体は、シリコーン前駆体、酢酸ビニル、(メタ)アクリルモノマー、及びポリウレタン前駆体からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む、
請求項1に記載の複合粒子の製造方法。
【請求項9】
ポリマー及びポリマー前駆体からなる群より選ばれる少なくとも1つの第一成分と液体とを含み、液滴をなしている混合物と、
前記液滴の表面を被覆している複数の固体粒子と、を備えた、
複合粒子。
【請求項10】
前記複数の固体粒子によって形成された表面に前記混合物の液滴を付着させたときに、前記液滴の前記表面への付着から30秒間経過した時点での前記表面に対する前記液滴の接触角は、50°以上である、
請求項9に記載の複合粒子。
【請求項11】
複合粒子であって、
複数の固体粒子を含むシェルによって覆われた内部空間を有する中空構造を備え、
前記複合粒子の断面において、前記複合粒子全体の断面積に対する前記内部空間の断面積の比は、0.99以下である、
複合粒子。
【請求項12】
複数の複合粒子の間にバインダー前駆体を存在させた状態で前記バインダー前駆体を固化させて前記複数の複合粒子を結着させることを含み、
前記複数の複合粒子のそれぞれは、ポリマー及びポリマー前駆体からなる群より選ばれる少なくとも1つの第一成分と液体とを含む混合物を含む液滴の表面が複数の固体粒子によって被覆されている状態において、前記混合物から前記液体を除去することによって得られる、
複合材料の製造方法。
【請求項13】
複数の固体粒子を含むシェルによって覆われた内部空間を有する中空構造を備えた、複数の複合粒子と、
前記複数の複合粒子を結着しているバインダーと、を備え、
前記複合粒子の断面において、前記複合粒子全体の断面積に対する前記内部空間の断面積の比は、0.99以下である、
複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合粒子の製造方法、複合粒子、複合材料の製造方法、及び複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固体粒子を含む複合粒子が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、コアシェル粒子を含む造粒粉が記載されている。このコアシェル粒子は、コア部と、コア部を被覆するシェル部とを有する。シェル部は、鱗片状の窒化ホウ素粒子と、結着樹脂とを含む。
【0004】
特許文献2には、コア-シェル型熱伝導性ビーズが記載されている。このコア-シェル型熱伝導性ビーズは、電気伝導性を有する物質を含むコア部と、コア部を覆い表面に露出したシェル層とを有し、球状を呈する。シェル層は、樹脂部と、充填材とを含んでいる。樹脂部は、硬化性ポリマーの硬化物からなり電気絶縁性を有する。充填材は、樹脂部よりも熱伝導率が高く、形状異方性及び電気絶縁性を有し、樹脂部に保持されている。
【0005】
特許文献3には、有機粒子と、有機粒子の表面を覆う被覆層を有する複合粒子が記載されている。被覆層は、金属アルコキシドの重合物を有する。
【0006】
特許文献4には、生体触媒を含有する液滴と、液滴の表面を被覆する複合粒子とを有する生体触媒含有物が記載されている。複合粒子は、疎水性固体粒子Aの表面上に疎水性固体粒子Bを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016-192474号公報
【特許文献2】特開2020-164591号公報
【特許文献3】特開2018-172531号公報
【特許文献4】特開2021-24777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1から4に記載の技術では、固体粒子を含む中空構造を有する複合粒子を得ることは想定されていない。例えば、このような中空構造を有する複合粒子における固体粒子の含有量を多くすることができれば、複合粒子の価値が高まりうる。
【0009】
そこで、本発明は、多くの固体粒子を含有する中空構造を有する複合粒子を得る観点から有利な複合粒子の製造方法を提供する。
【0010】
また、本発明は、多くの固体粒子を含有する中空構造を得る観点から有利な液滴を含む複合粒子を提供する。
【0011】
また、本発明は、多くの固体粒子を含有する観点から有利な中空構造を有する複合粒子を提供する。
【0012】
また、本発明は、多くの固体粒子を含有する観点から有利な中空構造を有する複合粒子を含む複合材料の製造方法を提供する。
【0013】
また、本発明は、多くの固体粒子を含有する観点から有利な中空構造を有する複合粒子を含む複合材料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、
ポリマー及びポリマー前駆体からなる群より選ばれる少なくとも1つの第一成分と液体との混合物を含む液滴の表面を複数の固体粒子で被覆することを含む、
複合粒子の製造方法を提供する。
【0015】
また、本発明は、
ポリマー及びポリマー前駆体からなる群より選ばれる少なくとも1つの第一成分と液体とを含み、液滴をなしている混合物と、
前記液滴の表面を被覆していている複数の固体粒子と、を備えた、
複合粒子を提供する。
【0016】
また、本発明は、
複合粒子であって、
複数の固体粒子を含むシェルによって覆われた内部空間を有する中空構造を備え、
前記複合粒子の断面において、前記複合粒子全体の断面積に対する前記内部空間の断面積の比は、0.99以下である、
複合粒子を提供する。
【0017】
また、本発明は、
複数の複合粒子を含む集合体において前記複合粒子同士の間にバインダー前駆体を供給し、前記バインダーを固化させて前記複数の複合粒子を結着させることを含み、
前記複数の複合粒子のそれぞれは、ポリマー及びポリマー前駆体からなる群より選ばれる少なくとも1つの第一成分と液体とを含む混合物を含む液滴の表面が複数の固体粒子によって被覆されている状態において、前記混合物から前記液体を除去することによって得られる、
複合材料の製造方法を提供する。
【0018】
また、本発明は、
複数の固体粒子を含むシェルによって覆われた内部空間を有する中空構造を備えた、複数の複合粒子と、
前記複数の複合粒子を結着しているバインダーと、を備え、
前記複合粒子の断面において、前記複合粒子全体の断面積に対する前記内部空間の断面積の比は、0.99以下である、
複合材料を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、多くの固体粒子を含有する中空構造を有する複合粒子を得る観点から有利な複合粒子の製造方法を提供できる。また、多くの固体粒子を含有する中空構造を得る観点から有利な液滴を含む複合粒子を提供できる。また、多くの固体粒子を含有する観点から有利な中空構造を有する複合粒子を提供できる。また、多くの固体粒子を含有する観点から有利な中空構造を有する複合粒子を含む複合材料の製造方法を提供できる。また、多くの固体粒子を含有する観点から有利な中空構造を有する複合粒子を含む複合材料を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、複合粒子の製造方法の一例を模式的に示す図である。
図2図2は、図1のII-II線を切断線とする複合粒子の断面図である。
図3図3は、図1のIII-III線を切断線とする複合粒子の断面図である。
図4図4は、接触角の測定方法を模式的に示す図である。
図5図5は、複合材料の一例を示す断面図である。
図6図6は、複合材料の製造方法の一例を模式的に示す図である。
図7図7は、複合材料の製造方法の別の一例を模式的に示す図である。
図8A図8Aは、実施例5に係る複合粒子の外観を示す写真である。
図8B図8Bは、実施例5に係る複合粒子をスライスすることによって露出した中空構造の内部を示す写真である。
図8C図8Cは、実施例9に係る複合粒子の外観を示す写真である。
図8D図8Dは、実施例9に係る複合粒子スライスすることによって露出した中空構造の内部を示す写真である。
図8E図8Eは、実施例9に係る複合粒子のシェル断面の詳細な構造を示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。以下の説明は、本発明の例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0022】
図1に示す通り、複合粒子1bは、液滴10の表面を複数の固体粒子20で被覆することによって製造される。液滴10は、第一成分11と液体12との混合物を含んでいる。第一成分11は、ポリマー及びポリマー前駆体からなる群より選ばれる少なくとも1つである。液滴10は、第一成分11及び液体12以外の成分を含んでいてもよい。
【0023】
例えば、複数の固体粒子20が平らな表面上に広げられることによって形成されたパウダーベッドの上に液滴10が供給される。パウダーベッドへの液滴10を供給する方法は、特定の方法に限定されず、滴下であってもよいし、噴霧であってもよい。液滴10は、パウダーベッド上で回転するように動かされる。例えば、パウダーベッドが定点を中心に旋回することによって、液滴10がパウダーベッド上で回転する。これにより、液滴10の表面が複数の固体粒子20で被覆され、複合粒子1aが得られる。図2に示す通り、複合粒子1aは、第一成分11及び液体12を含み、液滴10をなしている混合物と、液滴10の表面を被覆している複数の固体粒子20とを備えている。
【0024】
複合粒子1bを製造する方法は、例えば、複合粒子1aにおいて液滴10をなしている第一成分11と液体12との混合物から液体12を除去することをさらに含んでいる。例えば、複合粒子1aを加熱すること、又は、複合粒子1aの周囲の空間を減圧することによって、混合物から液体12が除去される。
【0025】
複合粒子1bを製造する方法は、例えば、複合粒子1aにおいて液滴10をなしている第一成分11と液体12との混合物から液体12を除去し、かつ、複数の固体粒子20を固定させて中空構造を形成することを含む。これにより、図3に示す通り、中空構造を有する複合粒子1bが得られる。複数の固体粒子20は、第一成分11に由来するポリマー及びポリマー前駆体の重合体からなる群より選ばれる少なくとも1つによって固定される。
【0026】
図3に示す通り、複合粒子1bは、複数の固体粒子20を含むシェル25によって覆われた内部空間30を有する中空構造を備えている。複合粒子1bにおいて、複数の固体粒子20同士の間にポリマー11aが存在している。これにより、複数の固体粒子20が固定されている。ポリマー11aは第一成分11に由来している。
【0027】
複合粒子1aにおいて第一成分11と液体12との混合物から液体12を除去するときに、液滴12が気化して複数の固体粒子20同士の隙間を通過して複合粒子1aの外部に導かれる。この場合、液体12の気化物が複数の固体粒子20同士の隙間を通過することに伴い、第一成分11が複数の固体粒子20同士の間に移動する。これにより、複合粒子1aにおいて液滴10の表面を覆っていた複数の固体粒子20が固定される。第一成分11がポリマー前駆体である場合、ポリマー前駆体の重合によりポリマー11aが生成される。
【0028】
複合粒子1bの上記の製造方法によれば、液滴10に第一成分11が含まれていることにより、複合粒子1bにおいてポリマー11aによって複数の固体粒子20が固定され、複合粒子1bが中空構造を有しうる。仮に、液滴10に第一成分11が含まれていないと、液体12を除去することによっては複数の固体粒子20を固定することが難しく、中空構造を得ることが難しい。加えて、このような製造方法によれば、複合粒子1bのシェル25における複数の固体粒子20の量が多くなりやすい。なぜなら、複合粒子1aにおいて液体12を除去するときに、複数の固体粒子20同士の間に第一成分11が行き渡りやすく、多くの量の固体粒子20がポリマー11aによって固定されうるからである。このため、例えば、複合粒子1bのシェル25の厚さが大きくなりやすく、複合粒子1bの価値が高まりうる。複合粒子1bの上記の製造方法は、複合粒子1aにおいて第一成分11と液体12との混合物から液体12を除去するという処理のみによって中空構造を有する複合粒子1bを製造でき、簡素である。
【0029】
複数の固体粒子で覆われた液滴を有する複合粒子に対して、複合粒子の外部から複数の固体粒子を固定されるための成分を供給することも考えられる。しかし、この場合、固定されるべき複数の複合粒子が複合粒子の外部に露出していなければならず、多くの固体粒子を含むシェルを有する中空構造を得ることは難しい。加えて、複合粒子の表面に複数の固体粒子を固定されるための成分の大部分が存在しやすく、複合粒子が所望の特性を有しにくい。一方、複合粒子1bの上記の製造方法によれば、複合粒子1bの表面にポリマー11aの大部分が存在する可能性が低く、複合粒子1bが所望の特性を有しやすい。
【0030】
複合粒子1bの粒子径は特定の値に限定されない。複合粒子の粒子径は、例えば、0.01mm~10mmであり、0.2mm~5mmであってもよく、0.5mm~5mmであってもよく、1mm~5mmであってもよい。
【0031】
複合粒子1bにおけるシェル25の厚さt1は特定の値に限定されない。上記の通り、複合粒子1bのシェル25における複数の固体粒子20の量が多くなりやすい。例えば、複合粒子1bの断面において、複合粒子1b全体の断面積に対する内部空間30の断面積の比である断面積比RCSは、0.99以下である。この場合、複合粒子1bのシェル25における複数の固体粒子20の量が多くなりやすく、複合粒子1bが所望の特性を有しやすい。断面積比RCSは、0.96以下であってもよく、0.8以下であってもよく、0.7以下であってもよく、0.5以下であってもよく、0.4以下であってもよい。断面積比RCSは、例えば、0.2以上である。
【0032】
図4は、接触角θの測定方法を模式的に示す図である。図4に示す通り、複数の固体粒子20によって形成された表面に液滴を付着させる。液滴10の表面への付着から30秒間経過した時点でのその表面に対する液滴10の接触角θが測定される。液滴10の表面への付着から30秒間経過するまで数の固体粒子20によって形成された表面上において液滴10は静止している。接触角θの測定は、例えば、20~25℃の温度で行われる。
【0033】
複合粒子1bの上記の製造方法において、第一成分11と液体12との混合物が液滴の状態を保ったまま複数の固体粒子20で被覆される限り、上記の接触角θは特定の値に限定されない。接触角θは、例えば、50°以上である。この場合、複合粒子1bの上記の製造方法において、複合粒子1aが所望の状態に形成されやすい。例えば、複合粒子1aの液滴10が球状又は球状に近い形状を有しやすい。
【0034】
接触角θは、60°以上であってもよく、70°以上であってもよく、80°以上であってよく、90°以上であってもよく、100°以上であってもよく、110°以上であってもよく、120°以上であってもよい。
【0035】
液滴10に含まれる液体12は、複合粒子1bを製造できる限り、特定の液体に限定されない。液体12は、例えば、水である。この場合、複合粒子1bの製造コストが低くなりやすい。液体12は、有機溶剤であってもよい。有機溶剤は、エタノール等のアルコールであってもよいし、アセトン等のケトンであってもよいし、トルエン等の芳香族炭化水素等であってもよいし、ハイドロフルオロエーテル等のフッ素系液体であってもよい。
【0036】
液滴10に含まれる第一成分11は、複合粒子1bを製造できる限り、特定の成分に限定されない。第一成分11がポリマーである場合、ポリマーは、例えば、シリコーン樹脂、ポリ酢酸ビニル、(メタ)アクリル系樹脂、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、パラフィン、及びシリコーンオイルからなる群より選ばれる少なくとも1つを含む。この場合、複合粒子1bのシェル25に多くの量の固体粒子20がより含まれやすい。(メタ)アクリルは、アクリル及びメタクリルの両者を包含する。
【0037】
第一成分11がポリマー前駆体である場合、ポリマー前駆体は、例えば、シリコーン前駆体、酢酸ビニル、(メタ)アクリルモノマー、及びポリウレタン前駆体からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む。この場合、複合粒子1bのシェル25に多くの量の固体粒子20がより含まれやすい。ポリウレタン前駆体は、イソシアネート及びポリオールを含んでいる。ポリマー前駆体の重合反応させるための反応触媒又は反応開始剤が含まれていてもよい。
【0038】
液滴10をなす混合物における第一成分11の含有量は特定の値に限定されない。その含有量は、質量基準で、例えば0.1~60%であり、1~50%であり、2~40%であってもよい。この場合、複数の固体粒子20同士の間に第一成分11がより行き渡りやすく、複合粒子1bのシェル25に多くの量の固体粒子20がより含まれやすい。
【0039】
液滴10をなす混合物において、第一成分11は、液体12において溶解していてもよいし、分散していてもよい。液滴10をなす混合物において第一成分11が分散しているとき、第一成分11の分散径は特定の値に限定されず、例えば10nm~10000nmであり、50nm~5000nmであってもよく、100nm~1000nmであってもよい。この場合、複数の固体粒子20同士の間に第一成分11がより行き渡りやすく、複合粒子1bのシェル25に多くの量の固体粒子20がより含まれやすい。第一成分11の分散径は、例えば、動的光散乱法に従って測定されうる。
【0040】
液滴10をなす混合物は、溶液であってもよいし、エマルションであってもよいし、サスペンションであってもよい。液滴10をなす混合物がエマルション又はサスペンションである場合、分散質の分散状態を安定させるために界面活性剤又は分散剤が含まれていてもよい。
【0041】
複合粒子1bの上記の製造方法において、液滴10の体積は特定の値に限定されない。液滴10の体積は、例えば0.1マイクロリットル(μL)以上であり、0.2μL以上であってもよく、0.5μL以上であってもよく、1μL以上であってもよい。液滴10の体積は、例えば100μL以下であり、90μL以下であってもよく、80μL以下であってもよく、70μL以下であってもよい。
【0042】
液滴10をなす混合物の表面張力は、特定の値に限定されない。20℃における液滴10の表面張力は、例えば20mN/m以上であり、30mN/m以上であってもよく、40mN/m以上であってもよい。20℃における液滴10の表面張力は、例えば80mN/m以下である。
【0043】
複合粒子1bを製造できる限り、固体粒子20は、特定の固体粒子に限定されない。固体粒子20は、無機粒子であってもよいし、有機粒子であってもよいし、有機無機ハイブリッド材料の粒子であってもよい。固体粒子20は、例えば、窒化ホウ素、グラファイト、酸化マグネシウム、二酸化ケイ素、アルミナ、窒化アルミニウム、酸化亜鉛、金、銀、銅、ダイヤモンド、酸化鉄、アルミニウム、フッ素系樹脂、炭酸カルシウム、疎水化処理がなされた表面を有する粒子、及び親水化処理がなされた表面を有する粒子からなる群より選ばれる少なくとも1つを含んでいる。この場合、所望の状態の複合粒子1bが得られやすく、複合粒子1bが伝熱性等の所望の特性を発揮しうる。固体粒子20は、1つの種類の固体粒子を含んでいてもよいし、複数種類の固体粒子を含んでいてもよい。上記のフッ素系樹脂の例は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、及びエチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー(ECTFE)である。上記の、疎水化処理がなされた表面を有する粒子及び親水化処理がなされた表面を有する粒子は、未処理の状態では目的の構造の複合粒子1bを得られない任意の固体粒子の表面に対して、疎水化処理又は親水化処理が施された粒子である。疎水化処理及び親水化処理の方法は特定の方法に限定されない。疎水化処理及び親水化処理の例は、コロナ処理、UV処理、オゾン処理、シランカップリング処理、ポリマーコーティング、ポリマーグラフト、エッチング、熱処理、スパッタリング、及びメッキである。
【0044】
固体粒子20の形状は、特定の形状に限定されない。固体粒子20は、球状であってもよいし、フレーク状であってもよいし、ロッド状であってもよいし、繊維状であってもよい。固体粒子20は、望ましくは、フレーク状である。この場合、複合粒子1bのシェル25において固体粒子20が重なった状態で存在しやすく、シェル25に多くの量の固体粒子20がより含まれやすい。
【0045】
固体粒子20の熱伝導率は特定の値に限定されない。固体粒子20の熱伝導率は、例えば、ポリマー11aの熱伝導率より高い。この場合、複合粒子1bが高い熱伝導性を有しやすい。加えて、上記の通り、シェル25に多くの量の固体粒子20が含まれやすい。このことも、複合粒子1bの熱伝導性を高める観点から有利である。
【0046】
上記の通り、複合粒子1bの製造において、複数の固体粒子20が平らな表面上に広げられることによってパウダーベッドが形成されうる。例えば、パウダーベッドの表面に液滴10を付着させてから30秒間経過した時点でのその表面に対する液滴10の接触角は、50°以上となるようにパウダーベッドが形成される。この接触角については、接触角θの記載を参照できる。
【0047】
図5に示す通り、複数の複合粒子1bを備えた複合材料3aを提供できる。複合材料1bは、例えば、複数の複合粒子1bと、バインダー2とを備えている。上記の通り、複合粒子1bは、複数の固体粒子20を含むシェル25によって覆われた内部空間30を有する中空構造を備えている。バインダー2は、複数の複合粒子1bを結着している。上記の通り、例えば、複合粒子1bの断面において、複合粒子1b全体の断面積に対する内部空間30の断面積の比である断面積比RCSは、0.99以下である。このような構成によれば、複合粒子1bのシェル25に含まれる固体粒子20の量が多くなりやすく、複合材料3aが所望の特性を発揮しやすい。例えば、複合粒子1bの中空構造により複合材料3aが軽量になりやすく、かつ、固体粒子20によって所望の特性が発揮されやすい。加えて、バインダー2が含まれていることにより、複合材料3aがフレキシブルになりやすい。
【0048】
固体粒子20の熱伝導率は、例えば、バインダー2の熱伝導率より高い。この場合、複合材料3aが高い熱伝導率を有しやすい。
【0049】
図5に示す通り、複合材料3aにおいて、複合粒子1b同士が接触していてもよい。この場合、接触する一対の複合粒子1bにおける固体粒子20同士が接触していてもよい。この場合、接触する一対の複合粒子1bの外面に沿って複数の固体粒子20によって経路40が形成されうる。経路40は、伝熱のための経路であってもよいし、導電のための経路であってもよいし、その他の経路であってもよい。経路40は、特定方向における複合材料3aの特定方向における一端から他端まで連続的に延びていてもよいし、特定方向における複合材料3aの両端の少なくとも1つから離れて延びていてもよい。図5の断面において孤立しているように見える複合粒子1bは、断面に垂直な方向においてこの断面に現れていない複合粒子1bと接触していてもよい。
【0050】
内部空間30には、シェル25から剥離した固体粒子20が存在していてもよい。内部空間30には、例えば、固体粒子20以外の固体は存在していない。
【0051】
複合材料3aの外面において、シェル25の内面が露出していてもよいし、シェル25の内面が露出していなくてもよい。例えば、複合材料3aの外面全体においてシェル25の内面が露出していなくてもよい。
【0052】
バインダー2の材料は、特定の材料に限定されない。バインダー2は、例えば、熱硬化性樹脂を含んでいる。熱硬化性樹脂の例は、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アニリン樹脂、シリコーン樹脂、フラン樹脂、ポリウレタン樹脂、アルキルベンゼン樹脂、グアナミン樹脂、キシレン樹脂、及びイミド樹脂である。
【0053】
複合材料3aの形状は特定の形状に限定されない。複合材料3aは、シート状であってもよいし、板状であってもよいし、筒状であってもよい。
【0054】
複合材料3aは、例えば、複数の複合粒子1bの間にバインダー前駆体2pを存在させた状態でバインダー前駆体2pを固化させて複数の複合粒子1bを結着させることを含む。
【0055】
複合材料3aの製造方法の一例を説明する。図6に示す通り、例えば、複数の複合粒子1bが互いに接触するように型Mに充填される。この状態で、バインダー前駆体2pが型Mの内部に供給される。バインダー前駆体2pは流動性を有し、複合粒子1b同士の隙間がバインダー前駆体2pによって充填される。その後、バインダー前駆体2pを固化させることにより、複合材料3aが得られる。複合材料3aは型Mから取り出され、必要に応じてスライス等の加工がなされて板状の部材が得られる。バインダー前駆体2pの固化は、型Mの内部を所定の温度に加熱することによってなされうる。これにより、バインダー前駆体2pにおいて架橋反応が進行し、バインダー前駆体2pが固化してバインダー2が生成される。
【0056】
複数の複合粒子1aが互いに接触するように型Mに充填された後に、複合粒子1aにおける液滴10から液体12が除去されることによって、型Mにおいて互いに接触している複数の複合粒子1bが得られてもよい。
【0057】
複合材料3aの製造方法の別の一例を説明する。図7に示す通り、例えば、複合粒子1b及びバインダー前駆体2pを含む流動体1kが調製される。流動体1kが製造装置50を通過することによってシート状の複合材料3aが得られる。図7に示す通り、製造装置50は、一対の部材52を備えている。一対の部材52は、所定の間隔で配置されている。複合材料3aの製造において、流動体1kは、一対の部材52の間に挟まれることによって所定の厚みを有するように成形される。一対の部材52の間隔は、一定であってもよいし、一定でなくてもよい。一対の部材52の間隔は、流動体1kの通過に伴って狭まってもよいし、広がってもよい。
【0058】
流動体1kは、例えば、一対の部材52の間で流動体1kの面内において流動可能な状態で所定の厚みを有するように成形される。このような構成によれば、流動体1kの面内において流動体1kが流動しつつ流動体1kの厚みが小さくなるので、複合粒子1bが複合材料3aの表層において平坦面に沿って凝集した状態になりやすい。
【0059】
図7に示す通り、製造装置100は、例えば、搬送装置54を備えている。搬送装置54は、流動体1kが一対の部材52の間を通過するように流動体1kを搬送する。これにより、複合材料3aの製造において、流動体1kは一対の部材52の間を搬送されながら所定の厚みを有するように成形される。
【0060】
製造装置50は、例えば、加熱器53を備えている。加熱器53は、流動体1kが一対の部材52の間にあるとき又は流動体1kが一対の部材52の間を通過した後に流動体1kを加熱する。これにより、流動体1kが加熱され、バインダー前駆体2pが固化してバインダー2が生成される。
【0061】
図7に示す通り、一対の部材52は、例えば、搬送用のベルトである。このような構成によれば、複合材料3aの厚みが均一になりやすい。流動体1kは、例えば、一対の部材52によって加熱される。例えば、加熱器53は、部材52に接して配置されている。加熱器53によって部材52が加熱され、部材52がさらに流動体1kを加熱する。加熱器53は、例えば、部材52の内側に配置されている。部材52は、金属製であってもよいし、樹脂製であってもよい。
【0062】
製造装置50において、部材52を含む成形機は、例えば、ダブルベルトプレス機である。ダブルベルトプレス機は、スライディングシュー式のダブルベルトプレス機であってもよいし、ローラー式のダブルベルトプレス機であってもよい。スライディングシュー式のダブルベルトプレス機では、例えば、ベルトの内側にヒータ内蔵の加圧ブロックが配置されている。これにより、ベルトが加圧及び加熱される。加圧ブロックは固定されており、ベルトが加圧ブロックを摺動する。スライディングシュー式のダブルベルトプレス機において、ベルトの内側に複数の加圧ブロックが配置されていてもよい。複数の加圧ブロックの温度は、同じ温度であってもよいし、互いに異なる温度であってもよい。例えば、一部の加圧ブロックが冷却のために用いられてもよい。ローラー式のダブルベルトプレス機では、複数のローラーでベルトの内側から加圧がなされる。この場合、ローラー自体にヒータが内蔵されていてもよいし、別のヒータによってベルトが間接的に加熱されてもよい。
【0063】
図7に示す通り、製造装置50は、例えば、供給器51を備えている。供給器51は、流動体1kを供給する。複合材料3aの製造において、例えば、流動体1kが基材5b上に配置される。流動体1kは、基材5bとともに一対の部材52の間に搬送される。例えば、供給器51は、流動体1kを基材5bに向かって供給し、流動体1kが基材5b上に配置される。
【0064】
複合材料3aの製造において、巻回体(図示省略)から繰り出された基材5b上に流動体1kが連続的に配置される。これにより、複合材料3aの連続的な製造が可能である。
【0065】
図7に示す通り、例えば、複合材料3aの製造において、基材5bとはく離シート5aとの間に流動体1kを配置して積層体5が形成されてもよい。積層体5が一対の部材52の間に搬送される。この場合、基材5b及びはく離シート5aによって複合材料3aが保護される。
【0066】
複合材料3aの製造において、基材5bのみが用いられてもよいし、基材5b及びはく離シート5aの両方が用いられなくてもよい。この場合、流動体1kは、一対の部材52の少なくとも一方に接触した状態で一対の部材52の間に配置されうる。
【0067】
供給器51は、流動体1kを供給できる限り、特定の供給器に限定されない。供給器51は、例えば、ダイコーターである。この場合、複合材料3aの製造において、流動体1kはダイコーティングによって基材5b上に配置される。このような構成によれば、流動体1kが均一な厚みで基材5b上に配置される。
【実施例0068】
実施例により、本発明をより詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。まず、実施例及び比較例に関する評価方法を説明する。
【0069】
(接触角θの測定)
各実施例又は各比較例で用いた固体粒子によって形成された表面における混合物の液滴の接触角を以下のようにして測定した。ステンレス製の板の上に63mmの内径を有するシリコーンゴムシートの枠を置いた。この枠の中に5cm3の嵩体積の固体粒子を入れた。固体粒子の上方から62mmの直径を有するガラス製シャーレの底面で押さえつけ、ガラス製のシャーレを数回回転させて固体粒子の粉体の表面を均した。このとき、固体粒子の粉体の表面にかかる荷重が200gを超えないようにした。次に、ガラス製のシャーレの上に1000gの錘を載せた。1000gの錘、ガラス製のシャーレ、及びシリコーンゴムの枠を取り外して、平滑な粉体表面を有するパウダーベッドが得られた。
【0070】
マイクロピペットを用いて各実施例又は各比較例に係る混合物の液滴を滴下し、パウダーベッドの平滑な表面に付着させた。パウダーベッドの平滑な表面に付着してから30秒間経過したときのその表面に対する液滴の接触角θを測定した。接触角θの測定には、協和界面科学社製の全自動接触角計DM-701を用いた。加えて、接触角θの測定は、20~25℃の温度で行われた。結果を表1又は2に示す。
【0071】
(表面張力)
協和界面科学社製の全自動接触角計DM-701を用いて、ペンダントドロップ法に従って、20℃における各実施例及び各比較例に係る混合物の表面張力を測定した。結果を表1又は2に示す。
【0072】
(中空構造の評価)
中空構造が得られた各実施例に係る複合粒子を真っ二つに切断して得られた試料を光学顕微鏡で観察した。シェルの厚みが光学顕微鏡の分解能よりも十分に大きい場合、複合粒子の中空構造における断面全体の断面積S1及び内部空間の断面積S2を画像解析により決定した。下記の式により断面積比RCSを決定した。
断面積比RCS=内部空間の断面積S2/断面全体の断面積S1
【0073】
複合粒子のシェルの厚みが小さく光学顕微鏡によってシェルを適切に評価することが困難である場合以下の手順によって断面積比を決定した。まず、複合粒子を真っ二つに切断して得られた試料を光学顕微鏡で観察し、断面全体の断面積S3及び周囲長L1を画像解析により決定した。続いて、中空構造のシェルをSEMにて観察し、無作為に選んだ10箇所以上のシェルの厚みを計測し平均値を算出することでシェルの厚みt1を決定した。そのうえで、下記の式により断面積比RCSを決定した。
断面積比RCS=1-{(周囲長L1)×(シェルの厚みt1)/(断面全体の断面積S3)}
【0074】
<実施例1>
実施例1に係る固体粒子としての昭和電工社製の窒化ホウ素UHP-1Kを105mmの直径を有するシャーレの内部に入れた。固体粒子の嵩体積は80cm3であった。窒化ホウ素の平均粒子径d50は、8μmであった。次に、直径98mmのガラス製のシャーレの底面で窒化ホウ素を押さえつけて均し、窒化ホウ素をシャーレの内部に敷き詰めた。このようにして、窒化ホウ素のパウダーベッドを得た。
【0075】
コーニング社製の旋回シェーカー6780-NPを用いて、パウダーベッドが形成されたシャーレを200rotations per minute(rpm)で旋回させた。信越化学工業社製のシリコーンエマルションPOLON-MF-56を純水によって質量基準で10倍に希釈して、実施例1に係る混合物を得た。実施例1に係る混合物におけるシリコーンの濃度は4質量%であった。実施例1に係る混合物5μLをマイクロピペットで採り、旋回運動をしているシャーレにおけるパウダーベッドに向かって滴下した。パウダーベッド上で実施例1に係る混合物の液滴を30秒間転がすことにより、液滴が窒化ホウ素で被覆された複合粒子が得られた。
【0076】
シャーレを旋回シェーカーから取り出し、シャーレを傾けて複合粒子をPTFE製メッシュの上に取り出した。PTFE製メッシュのメッシュは43であった。PTFE製メッシュ上に取り出された複合粒子をPTFE製メッシュに載せたまま、恒温槽に入れ、80℃で1時間加熱した。これにより、中空構造を有する実施例1に係る複合粒子が得られた。実施例1に係る複合粒子の粒子径は約2mmであった。
【0077】
<実施例2>
信越化学工業社製のシリコーンエマルションPOLON-MF-56を純水によって質量基準で5倍に希釈して、実施例2に係る混合物を得た。実施例2に係る混合物におけるシリコーンの濃度は8質量%であった。実施例1に係る混合物の代わりに実施例2に係る混合物を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2に係る複合粒子を作製した。実施例2に係る複合粒子の粒子径は約2mmであった。
【0078】
<実施例3>
信越化学工業社製のシリコーンエマルションPOLON-MF-56を純水によって質量基準で3倍に希釈して、実施例3に係る混合物を得た。実施例3に係る混合物におけるシリコーンの濃度は13質量%であった。実施例1に係る混合物の代わりに実施例3に係る混合物を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例3に係る複合粒子を作製した。実施例3に係る複合粒子の粒子径は約2mmであった。
【0079】
<実施例4>
信越化学工業社製のシリコーンエマルションPOLON-MF-56を純水によって質量基準で2倍に希釈して、実施例4に係る混合物を得た。実施例4に係る混合物におけるシリコーンの濃度は20質量%であった。実施例1に係る混合物の代わりに実施例4に係る混合物を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例4に係る複合粒子を作製した。実施例4に係る複合粒子の粒子径は約2mmであった。
【0080】
<実施例5>
信越化学工業社製のシリコーンエマルションPOLON-MF-56を希釈せずに、実施例5に係る混合物を得た。実施例5に係る混合物におけるシリコーンの濃度は40質量%であった。実施例1に係る混合物の代わりに実施例5に係る混合物を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例5に係る複合粒子を作製した。実施例5に係る複合粒子の粒子径は約2mmであった。図8Aは、実施例5に係る複合粒子の外観を示す写真であり、図8Bは、実施例5に係る複合粒子をスライスすることによって露出した中空構造の内部を示す写真である。
【0081】
<実施例6>
固体粒子として窒化ホウ素UHP-1Kの代わりに、デンカ社製の窒化ホウ素SGPを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例6に係る複合粒子を作製した。窒化ホウ素SGPの平均粒子径d50は18μmであった。実施例6に係る複合粒子の粒子径は約2mmであった。
【0082】
<実施例7>
固体粒子として窒化ホウ素UHP-1Kの代わりに、Dandong Chemical Engineering Institute Co.の窒化ホウ素HSPを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例7に係る複合粒子を作製した。窒化ホウ素HSPの平均粒子径d50は40μmであった。実施例7に係る複合粒子の粒子径は約2mmであった。
【0083】
<実施例8>
固体粒子として窒化ホウ素UHP-1Kの代わりに、日本黒鉛工業社製のグラファイトCPBを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例8に係る複合粒子を作製した。グラファイトCPBの平均粒子径d50は22μmであった。実施例8に係る複合粒子の粒子径は約2mmであった。
【0084】
<実施例9>
固体粒子として窒化ホウ素UHP-1Kの代わりに、神島化学工業社製の酸化マグネシウムPSF-WRを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例9に係る複合粒子を作製した。酸化マグネシウムPSF-WRの平均粒子径d50は1.1μmであった。実施例8に係る複合粒子の粒子径は約2mmであった。図8Cは、実施例9に係る複合粒子の外観を示す写真である。図8Dは、実施例9に係る複合粒子をスライスすることによって露出した中空構造の内部を示す写真である。図8Eは、実施例9に係る複合粒子のシェル断面の詳細な構造を示すSEM写真である。
【0085】
<実施例10>
酢酸ビニル樹脂エマルションであるコニシ社製の木工用ボンド#10122を純水によって質量基準で20倍に希釈して、実施例10に係る混合物を得た。実施例10に係る混合物における酢酸ビニル樹脂の濃度は2質量%であった。実施例1に係る混合物の代わりに実施例10に係る混合物を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例10に係る複合粒子を作製した。実施例10に係る複合粒子の粒子径は約2mmであった。
【0086】
<実施例11>
アクリル樹脂エマルションである日本ペイント社製の水性ケンエースを純水によって質量基準で10倍に希釈して、実施例11に係る混合物を得た。実施例11に係る混合物におけるアクリル樹脂の濃度は7質量%であった。実施例1に係る混合物の代わりに実施例11に係る混合物を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例11に係る複合粒子を作製した。実施例11に係る複合粒子の粒子径は約2mmであった。
【0087】
<実施例12>
アクリル樹脂エマルションであるエスケー化研社製のエコファインを純水によって質量基準で10倍に希釈して、実施例12に係る混合物を得た。実施例12に係る混合物におけるアクリル樹脂の濃度は6質量%であった。実施例1に係る混合物の代わりに実施例12に係る混合物を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例12に係る複合粒子を作製した。実施例12に係る複合粒子の粒子径は約2mmであった。
【0088】
<実施例13>
アクリルシリコーン樹脂エマルションである菊水化学工業社製の水系ファインコートシリコンを純水によって質量基準で10倍に希釈して、実施例13に係る混合物を得た。実施例13に係る混合物における樹脂の濃度は6質量%であった。実施例1に係る混合物の代わりに実施例13に係る混合物を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例13に係る複合粒子を作製した。実施例13に係る複合粒子の粒子径は約2mmであった。
【0089】
<実施例14>
パウダーベッド上で混合物の液滴を転がす時間を30秒間から600秒間に変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例14に係る複合粒子を作製した。実施例14に係る複合粒子の粒子径は約2mmであった。
【0090】
<比較例1>
実施例1に係る混合物の代わりに純水を用いて液滴が窒化ホウ素で被覆された複合粒子を得た。この複合粒子を実施例1と同様にして恒温槽で加熱した。中空構造の複合粒子は得られなかった。
【0091】
<比較例2>
固体粒子として窒化ホウ素UHP-1Kの代わりに、燃焼合成社製の窒化アルミニウムAN-HF30LG-HTZを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、液滴が固体粒子で被覆された複合粒子を得ようと試みた。しかし、そのような複合粒子を得ることはできなかった。窒化アルミニウムAN-HF30LG-HTZの平均粒子径d50は30μmであった。
【0092】
<比較例3>
固体粒子として窒化ホウ素UHP-1Kの代わりに、昭和電工社製のアルミナCB-P05を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、液滴が固体粒子で被覆された複合粒子を得ようと試みた。しかし、そのような複合粒子を得ることはできなかった。アルミナCB-P05の平均粒子径d50は4μmであった。
【0093】
表1又は2に示す通り、各実施例において液滴が固体粒子で被覆された複合粒子が得られた。一方、比較例2及び3では、液滴が固体粒子で被覆された複合粒子が得られなかった。比較例2及び3によれば、接触角θが小さいことが固体粒子で液滴が被覆された複合粒子を得られなかったことと関係していると考えられる。
【0094】
比較例1では、固体粒子で液滴が被覆された複合粒子を得ることができたものの、中空構造を有する複合粒子を得ることはできなかった。一方、実施例によれば、ポリマー又はポリマー前駆体を含む液体を用いることにより、中空構造を有する複合粒子を得ることができると理解される。
【0095】
【表1】
【0096】
【表2】
【0097】
本発明の第1側面は、
ポリマー及びポリマー前駆体からなる群より選ばれる少なくとも1つの第一成分と液体との混合物を含む液滴の表面を複数の固体粒子で被覆することを含む、
複合粒子の製造方法を提供する。
【0098】
本発明の第2側面は、
前記液滴をなしている前記混合物から前記液体を除去することをさらに含む、
第1側面に記載の複合粒子の製造方法を提供する。
【0099】
本発明の第3側面は、
前記液滴をなしている前記混合物から前記液体を除去し、かつ、前記ポリマー及び前記ポリマー前駆体の重合体からなる群より選ばれる少なくとも1つによって前記複数の固体粒子を固定させて中空構造を形成することをさらに含む、
第1側面に記載の複合粒子の製造方法を提供する。
【0100】
本発明の第4側面は、
前記中空構造は、前記複数の固体粒子を含むシェルによって覆われた内部空間を有し、
前記複合粒子の断面において、前記複合粒子全体の断面積に対する前記内部空間の断面積の比は、0.99以下である、
第1~第3側面のいずれか1つに記載の複合粒子の製造方法を提供する。
【0101】
本発明の第5側面は、
前記複数の固体粒子によって形成された表面に前記混合物の液滴を付着させたときに、前記液滴の前記表面への付着から30秒間経過した時点での前記表面に対する前記液滴の接触角は、50°以上である、
第1~第4側面のいずれか1つに記載の複合粒子の製造方法を提供する。
【0102】
本発明の第6側面は、
前記固体粒子は、窒化ホウ素、グラファイト、酸化マグネシウム、二酸化ケイ素、アルミナ、窒化アルミニウム、酸化亜鉛、金、銀、銅、ダイヤモンド、酸化鉄、アルミニウム、フッ素系樹脂、炭酸カルシウム、疎水化処理がなされた表面を有する粒子、及び親水化処理がなされた表面を有する粒子からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む、
第1~第5側面のいずれか1つに記載の複合粒子の製造方法を提供する。
【0103】
本発明の第7側面は、
前記ポリマーは、シリコーン樹脂、ポリ酢酸ビニル、(メタ)アクリル系樹脂、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、パラフィン、及びシリコーンオイルからなる群より選ばれる少なくとも1つを含む、
第1~第6側面のいずれか1つに記載の複合粒子の製造方法を提供する。
【0104】
本発明の第8側面は、
前記ポリマー前駆体は、シリコーン前駆体、酢酸ビニル、(メタ)アクリルモノマー、及びポリウレタン前駆体からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む、
第1~第7側面のいずれか1つに記載の複合粒子の製造方法を提供する。
【0105】
本発明の第9側面は、
ポリマー及びポリマー前駆体からなる群より選ばれる少なくとも1つの第一成分と液体とを含み、液滴をなしている混合物と、
前記液滴の表面を被覆している複数の固体粒子と、を備えた、
複合粒子を提供する。
【0106】
本発明の第10側面は、
前記複数の固体粒子によって形成された表面に前記混合物の液滴を付着させたときに、前記液滴の前記表面への付着から30秒間経過した時点での前記表面に対する前記液滴の接触角は、50°以上である、
第9側面に記載の複合粒子を提供する。
【0107】
本発明の第11側面は、
複合粒子であって、
複数の固体粒子を含むシェルによって覆われた内部空間を有する中空構造を備え、
前記複合粒子の断面において、前記複合粒子全体の断面積に対する前記内部空間の断面積比は、0.99以下である、
複合粒子を提供する。
【0108】
本発明の第12側面は、
複数の複合粒子の間にバインダー前駆体を存在させた状態で前記バインダー前駆体を固化させて前記複数の複合粒子を結着させることを含み、
前記複数の複合粒子のそれぞれは、ポリマー及びポリマー前駆体からなる群より選ばれる少なくとも1つの第一成分と液体とを含む混合物を含む液滴の表面が複数の固体粒子によって被覆されている状態において、前記混合物から前記液体を除去することによって得られる、
複合材料の製造方法を提供する。
【0109】
本発明の第13側面は、
複数の固体粒子を含むシェルによって覆われた内部空間を有する中空構造を備えた、複数の複合粒子と、
前記複数の複合粒子を結着しているバインダーと、を備え、
前記複合粒子の断面において、前記複合粒子全体の断面積に対する前記内部空間の断面積比は、0.99以下である、
複合材料を提供する。
【符号の説明】
【0110】
1a 複合粒子
1b 複合粒子
3a 複合材料
10 液滴
11 第一成分
11a ポリマー
12 液体
20 固体粒子
25 シェル
30 内部空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E