IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーエプソン株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-画像読取装置および画像読取方法 図1
  • 特開-画像読取装置および画像読取方法 図2
  • 特開-画像読取装置および画像読取方法 図3
  • 特開-画像読取装置および画像読取方法 図4
  • 特開-画像読取装置および画像読取方法 図5
  • 特開-画像読取装置および画像読取方法 図6
  • 特開-画像読取装置および画像読取方法 図7
  • 特開-画像読取装置および画像読取方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093660
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】画像読取装置および画像読取方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/04 20060101AFI20240702BHJP
   H04N 1/00 20060101ALI20240702BHJP
   B65H 7/14 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
H04N1/12 Z
H04N1/00 567H
B65H7/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210181
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096703
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 俊之
(72)【発明者】
【氏名】別府 航
(72)【発明者】
【氏名】筒井 黎
(72)【発明者】
【氏名】小柳 紀幸
(72)【発明者】
【氏名】有森 和彦
(72)【発明者】
【氏名】福枡 恵一郎
【テーマコード(参考)】
3F048
5C062
5C072
【Fターム(参考)】
3F048AA08
3F048AB02
3F048CC03
3F048CC04
3F048DA06
3F048DB11
3F048DC12
3F048EB23
5C062AA05
5C062AB02
5C062AB20
5C062AB25
5C062AB32
5C062AB33
5C062AB35
5C062AB41
5C062AB43
5C062AB44
5C062AC09
5C062AC27
5C062AC61
5C062AC63
5C062AC68
5C062AE01
5C062AE15
5C062AF10
5C072AA01
5C072BA17
5C072CA02
5C072EA04
5C072FB23
5C072FB25
5C072NA01
5C072NA04
5C072RA03
5C072RA04
5C072UA09
5C072UA11
5C072UA13
5C072VA06
5C072WA02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】原稿の先端と読取部との位置関係が安定しなくとも、指定原稿サイズ領域を特定する画像読取装置及び画像読取方法を提供する。
【解決手段】画像読取処理において、原稿検知部は、搬送方向の第1搬送ローラーと第2搬送ローラーとの間、かつ、幅方向において読取部の原点から第1距離の第1位置に設ける。制御部は、原稿検知部による検知に基づいて読取を開始しS130、原稿のサイズが指定されていない場合は、読取結果として生成された画像データに対して、原稿のエッジを検出することにより原稿の領域を特定する第1特定処理を実行しS190、原稿のサイズが指定されている場合は、画像データに対して、幅方向における第1位置を含む第1範囲内で、原稿の下流側の端を探索により特定しS170、特定した原稿の下流側の端の位置に基づき、指定された原稿のサイズに相当する領域を原稿の領域として特定する第2特定処理を実行するS180。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を所定の搬送方向へ搬送する第1搬送ローラーと、
前記第1搬送ローラーよりも前記搬送方向の下流に設けられて、前記原稿を前記搬送方向へ搬送する第2搬送ローラーと、
前記第2搬送ローラーよりも前記下流に設けられて、搬送される前記原稿を読み取る読取部と、
前記搬送方向において、前記第1搬送ローラーが前記原稿と接触する位置と前記第2搬送ローラーが前記原稿と接触する位置との間に設けられて、前記原稿を検知する原稿検知部と、
制御部と、を備える画像読取装置であって、
前記原稿検知部は、前記搬送方向と交差する幅方向において、前記読取部の原点から第1距離の位置である第1位置に在り、
前記制御部は、
前記原稿検知部による前記原稿の検知に基づいて、前記読取部による読取を開始し、
前記原稿のサイズが指定されていない場合は、前記読取部による読取結果として生成された画像データに対して、前記原稿のエッジを検出することにより前記原稿の領域を特定する第1特定処理を実行し、
前記原稿のサイズが指定されている場合は、前記画像データに対して、前記幅方向における前記第1位置を含む第1範囲内の位置で、前記画像データの前記下流側の端から前記搬送方向の上流に向かって前記原稿の前記下流側の端を探索し、前記探索により特定した前記原稿の前記下流側の端の位置に基づいて、指定された前記原稿のサイズに相当する領域を前記原稿の領域として特定する第2特定処理を実行する、ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記第2搬送ローラーは、前記幅方向において間を空けて配置された一方側のローラーと他方側のローラーとを有し、
前記第1範囲は、前記一方側のローラーと前記他方側のローラーとの間に含まれる、ことを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第2特定処理では、前記画像データに対して前記第1位置で前記原稿の前記下流側の端の探索を行う、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記原稿を前記原稿検知部から前記読取部まで搬送するために要する規定の時間よりも短い所定の時間を第1時間とし、
前記規定の時間よりも長い所定の時間を第2時間としたとき、
前記原稿検知部により前記原稿が検知されてから前記第1時間が経過したタイミングで前記読取部による読取を開始し、
前記第2特定処理では、前記読取部による読取を開始してから前記第2時間-前記第1時間が経過するまでの期間の前記読取により生成された前記画像データを用いて、前記原稿の前記下流側の端の探索を行う、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記第2時間は、前記原稿の前記下流側の端から前記上流側へ40mm以上50mm以下の位置までを読み取り可能な長さの時間である、ことを特徴とする請求項4に記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第2特定処理では、前記画像データの前記下流側の端から前記上流に向かって前記原稿の前記下流側の端を探索するとき、前記原稿の色に該当する画素が所定数連続する場合に、所定数連続する前記原稿の色に該当する画素の中で最も前記下流側の画素の位置を前記原稿の前記下流側の端として特定する、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記第2特定処理では、前記画像データに対して前記第1範囲内の複数位置のそれぞれで前記原稿の前記下流側の端を探索し、前記複数位置それぞれにおける前記探索により特定した前記原稿の前記下流側の端の中で最も前記下流側の位置を、前記原稿の前記下流側の端として特定する、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記画像データに対して前記第1位置で前記原稿の前記下流側の端を探索し、前記第1位置における前記探索により前記原稿の前記下流側の端を特定できなかった場合、前記第1範囲内であって前記第1位置と異なる第2位置で前記原稿の前記下流側の端を探索する、ことを特徴とする請求項3に記載の画像読取装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記画像データに対して前記第2位置で前記原稿の前記下流側の端を探索し、前記第2位置における前記探索により前記原稿の前記下流側の端を特定できなかった場合、前記第1範囲内であって前記第1位置を基準にして前記第2位置と反対側の第3位置で前記原稿の前記下流側の端を探索する、ことを特徴とする請求項8に記載の画像読取装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記第2特定処理では、前記探索により前記原稿の前記下流側の端を特定できなかった場合、前記画像データの前記下流側の端から前記上流側に向かって予め設定された固定距離の位置を、前記原稿の前記下流側の端として特定する、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項11】
原稿を所定の搬送方向へ搬送する第1搬送ローラーと、
前記第1搬送ローラーよりも前記搬送方向の下流に設けられて、前記原稿を前記搬送方向へ搬送する第2搬送ローラーと、
前記第2搬送ローラーよりも前記下流に設けられて、搬送される前記原稿を読み取る読取部と、
前記搬送方向において、前記第1搬送ローラーが前記原稿と接触する位置と前記第2搬送ローラーが前記原稿と接触する位置との間に設けられて、前記原稿を検知する原稿検知部と、を備える画像読取装置が実行する画像読取方法であって、
前記原稿検知部は、前記搬送方向と交差する幅方向において、前記読取部の原点から第1距離の位置である第1位置に在り、
前記原稿検知部による前記原稿の検知に基づいて、前記読取部による読取を開始し、
前記原稿のサイズが指定されていない場合は、前記読取部による読取結果として生成された画像データに対して、前記原稿のエッジを検出することにより前記原稿の領域を特定する第1特定処理を実行し、
前記原稿のサイズが指定されている場合は、前記画像データに対して、前記幅方向における前記第1位置を含む第1範囲内の位置で、前記画像データの前記下流側の端から前記搬送方向の上流に向かって前記原稿の前記下流側の端を探索し、前記探索により特定した前記原稿の前記下流側の端の位置に基づいて、指定された前記原稿のサイズに相当する領域を前記原稿の領域として特定する第2特定処理を実行する、ことを特徴とする画像読取方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取装置および画像読取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
読取対象の原稿を搬送しながらイメージセンサーにより読み取るスキャナーは、読取前の原稿を検知するセンサーを有する。
関連技術として、画像読取装置であって、原稿を搬送するフィードローラーと、フィードローラーよりも搬送方向下流に配置された原稿検知センサーと、原稿検知センサーよりも搬送方向下流に配置された読取部と、を備えた構成が開示されている(特許文献1参照)。
【0003】
画像読取装置は、原稿先端が原稿検知センサーにより検知された場合、さらに原稿検知センサーから読取部までの距離に相当する時間の搬送後に読取を開始することができる。ただし、前記文献1のように、フィードローラーよりも下流に原稿検知センサーが配置されており、原稿検知センサーから読取部までの距離が比較的近い構成では、原稿の一部を読み取ることができないことがあった。具体的には、原稿が搬送方向に対して傾いた状態では、原稿検知センサーが原稿先端を検知した後の所定タイミングで読取を開始すると、既に原稿先端の一部が読取部を通過しており、原稿の読取結果において当該一部の画像が欠落することがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015‐195442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような原稿検知センサーから読取部までの距離が近い構成に起因する不都合を回避するために、原稿検知センサーをフィードローラーよりも搬送方向上流に配置することが考えられる。
【0006】
しかしながら、原稿検知センサーをフィードローラーよりも上流に配置すると、原稿は、先端が原稿検知センサーを通過してフィードローラーに到達するまでは、より上流に在るローラーにより搬送され、原稿先端がフィードローラーに到達したら、フィードローラーによる搬送が加わる。そのため、原稿検知センサーから読取部までの距離が比較的遠いことも影響して、原稿検知センサーから読取部に至るまでの原稿の搬送精度がばらつき易くなる。従って、原稿検知センサーにより原稿が検知されたタイミングを基準にして、その後の読取開始のタイミングを決定しても、読取開始時点での原稿先端と読取部との位置関係が安定せず、原稿を先端から読み取ろうとしても、読取結果において原稿の先端が欠落する虞があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
原稿を所定の搬送方向へ搬送する第1搬送ローラーと、前記第1搬送ローラーよりも前記搬送方向の下流に設けられて、前記原稿を前記搬送方向へ搬送する第2搬送ローラーと、前記第2搬送ローラーよりも前記下流に設けられて、搬送される前記原稿を読み取る読取部と、前記搬送方向において、前記第1搬送ローラーが前記原稿と接触する位置と前記第2搬送ローラーが前記原稿と接触する位置との間に設けられて、前記原稿を検知する原稿検知部と、制御部と、を備える画像読取装置であって、前記原稿検知部は、前記搬送方向と交差する幅方向において、前記読取部の原点から第1距離の位置である第1位置に在り、前記制御部は、前記原稿検知部による前記原稿の検知に基づいて、前記読取部による読取を開始し、前記原稿のサイズが指定されていない場合は、前記読取部による読取結果として生成された画像データに対して、前記原稿のエッジを検出することにより前記原稿の領域を特定する第1特定処理を実行し、前記原稿のサイズが指定されている場合は、前記画像データに対して、前記幅方向における前記第1位置を含む第1範囲内の位置で、前記画像データの前記下流側の端から前記搬送方向の上流に向かって前記原稿の前記下流側の端を探索し、前記探索により特定した前記原稿の前記下流側の端の位置に基づいて、指定された前記原稿のサイズに相当する領域を前記原稿の領域として特定する第2特定処理を実行する。
【0008】
原稿を所定の搬送方向へ搬送する第1搬送ローラーと、前記第1搬送ローラーよりも前記搬送方向の下流に設けられて、前記原稿を前記搬送方向へ搬送する第2搬送ローラーと、前記第2搬送ローラーよりも前記下流に設けられて、搬送される前記原稿を読み取る読取部と、前記搬送方向において、前記第1搬送ローラーが前記原稿と接触する位置と前記第2搬送ローラーが前記原稿と接触する位置との間に設けられて、前記原稿を検知する原稿検知部と、を備える画像読取装置が実行する画像読取方法であって、前記原稿検知部は、前記搬送方向と交差する幅方向において、前記読取部の原点から第1距離の位置である第1位置に在り、前記原稿検知部による前記原稿の検知に基づいて、前記読取部による読取を開始し、前記原稿のサイズが指定されていない場合は、前記読取部による読取結果として生成された画像データに対して、前記原稿のエッジを検出することにより前記原稿の領域を特定する第1特定処理を実行し、前記原稿のサイズが指定されている場合は、前記画像データに対して、前記幅方向における前記第1位置を含む第1範囲内の位置で、前記画像データの前記下流側の端から前記搬送方向の上流に向かって前記原稿の前記下流側の端を探索し、前記探索により特定した前記原稿の前記下流側の端の位置に基づいて、指定された前記原稿のサイズに相当する領域を前記原稿の領域として特定する第2特定処理を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】装置構成を簡易的に示す図。
図2】画像読取装置の内部構成を側方からの視点により簡易的に示す図。
図3】ロードローラー、搬送ローラー対、読取部等の配置を簡易的に示す図。
図4】画像読取処理を示すフローチャート。
図5】解析用画像データの一例を示す図。
図6】ステップS170の詳細を示すフローチャート。
図7】画像データの一例を示す図。
図8】第2変形例を説明するための解析用画像データの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、各図を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお各図は、本実施形態を説明するための例示に過ぎない。各図は例示であるため、比率や形状や濃淡が正確でなかったり、互いに整合していなかったり、一部が省略されていたりする場合がある。
【0011】
1.装置構成の概略説明:
図1は、本実施形態にかかる画像読取装置10の構成を簡易的に示している。画像読取装置10は、画像読取方法を実行する。画像読取装置10は、シートフィードタイプのスキャナーであり、制御部11、表示部13、操作受付部14、記憶部15、通信IF16、搬送部17、読取部18、原稿検知部19等を備える。原稿検知部19は、例えば、光学センサーである。IFはインターフェイスの略である。制御部11は、プロセッサーとしてのCPU11a、ROM11b、RAM11c等を有する一つ又は複数のICや、その他の不揮発性メモリー等を含んで構成される。
【0012】
制御部11では、プロセッサーつまりCPU11aが、ROM11bや、その他のメモリー等に保存されたプログラム12に従った演算処理を、RAM11c等をワークエリアとして用いて実行することにより、本実施形態にかかる処理を実現する。プロセッサーは、一つのCPUに限られることなく、複数のCPUや、ASIC等のハードウェア回路により処理を行う構成としてもよいし、CPUとハードウェア回路とが協働して処理を行う構成としてもよい。
【0013】
表示部13は、視覚情報を表示するための手段であり、例えば、液晶ディスプレイや、有機ELディスプレイ等により構成される。表示部13は、ディスプレイと、ディスプレイを駆動するための駆動回路と、を含む構成であってもよい。
操作受付部14は、ユーザーによる操作や入力を受け付けるための手段であり、例えば、物理的なボタンや、タッチパネルや、マウスや、キーボード等によって実現される。タッチパネルとしての操作受付部14は、表示部13の一機能として実現される。
表示部13や操作受付部14は、画像読取装置10に対して外付けされた周辺機器であってもよい。
【0014】
記憶部15は、例えば、ハードディスクドライブや、ソリッドステートドライブや、その他のメモリーによる記憶手段である。制御部11が有するメモリーの一部を記憶部15と捉えてもよい。記憶部15を、制御部11の一部と捉えてもよい。
通信IF16は、公知の通信規格を含む所定の通信プロトコルに準拠して有線又は無線で不図示の外部装置と通信を実行するための一つまたは複数のIFの総称である。外部装置は、例えば、パーソナルコンピューター、サーバー、スマートフォン、タブレット型端末等といった各種端末である。
【0015】
搬送部17は、読取対象となる原稿を所定の搬送経路に沿って搬送するための手段である。搬送部17は、例えば、回転して原稿を搬送するローラーや、回転の動力源としてのモーター等を備える。搬送部17は、原稿トレイに置かれた複数枚の原稿を一枚単位で順次搬送可能な、いわゆるADF(Auto Document Feeder)の機能を兼ね備えている。
【0016】
読取部18は、搬送部17が搬送する原稿を光学的に読み取る手段である。読取部18は、原稿を照射する光源、原稿からの反射光や透過光を受光して光電変換により読取結果としての電気信号を生成し出力するイメージセンサー、イメージセンサーからの出力をデジタル信号に変換等して画像データとするアナログフロントエンド等、スキャナーとして一般的な構成を有する。読取部18のイメージセンサーは、後述の搬送方向D1と交差する幅方向D2に沿って並ぶ複数の撮像素子によるラインセンサーであり、1回の読取動作で幅方向D2に長尺な1ラインの画像を読み取る。搬送方向D1と幅方向D2との交差は、直交或いはほぼ直交と解してよい。読取部18は、1ライン分の読み取りを所定の頻度で繰り返すことにより2次元の画像データを得る。幅方向D2を主走査方向と呼び、搬送方向D1を副走査方向と呼んでもよい。
【0017】
図2は、画像読取装置10の主に内部構成を側方からの視点により簡易的に示している。画像読取装置10は、原稿2を載置する載置部3を有する。載置部3は原稿トレイである。搬送部17は、載置部3に載置された原稿2を所定の搬送経路で搬送する。搬送部17は、ロードローラー17cや、搬送経路を挟み込むように対向配置されたローラー17b1,17b2からなる搬送ローラー対17bや、同じく対向配置されたローラー17a1,17a2からなる排紙ローラー対17aを備える。例えば、搬送経路の下側に配置されるロードローラー17cと、ローラー17b1と、ローラー17a1とが、不図示のモーターに連結されており、モーターから与えられる動力で回転する。
【0018】
搬送経路に沿う方向が搬送方向D1である。搬送部17は、搬送方向D1へ原稿2を搬送する。搬送方向D1の上流、下流を、単に上流、下流と言う。搬送ローラー対17bは、読取部18よりも上流に配置されており、原稿2を下流へ搬送する。排紙ローラー対17aは、読取部18よりも下流に配置されており、読取部18に読み取られた原稿2を下流へ搬送して排出する。ロードローラー17cは、搬送ローラー対17bよりも上流の載置部3に近い位置に配置されている。ロードローラー17cは、載置部3から原稿2を一枚単位で搬送経路へ引き込む。
【0019】
ロードローラー17cは、原稿2を搬送方向D1へ搬送する「第1搬送ローラー」の例に該当する。むろん、ロードローラー17cも、実態としてローラー同士が搬送経路を挟み込むように対向するローラー対であってもよい。搬送ローラー対17bや、これを構成するローラー17b1,17b2は、第1搬送ローラーよりも下流に設けられて原稿2を搬送方向D1へ搬送する「第2搬送ローラー」の例に該当する。
【0020】
ロードローラー17cの下流かつ搬送ローラー対17bの上流には、原稿2を検知する原稿検知部19が配置されている。詳細には、原稿検知部19は、搬送方向D1において、ロードローラー17cが原稿2と接触する位置と搬送ローラー対17bが原稿2と接触する位置との間に設けられている。搬送ローラー対17bが原稿2と接触する位置とは、搬送ローラー対17bが原稿2を挟持する位置である。原稿検知部19は、原稿2を検知できている状態では、原稿有りを意味するオン信号を出力し、原稿2を検知できていない状態では、原稿無しを意味するオフ信号を出力する。
【0021】
図2の例では、読取部18は、搬送経路を挟むようにして搬送経路の上下に備えられており、原稿2の両面を同時に読み取り可能である。つまり、読取部18は、搬送経路の上方に設けられたイメージセンサーにより原稿2の上面を読み取り、かつ、搬送経路の下方に設けられたイメージセンサーにより原稿2の下面を読み取る。ただし、画像読取装置10が原稿2の両面を同時に読み取り可能な製品であることは必須ではない。画像読取装置10は、例えば、読取部18が搬送経路の下方に設けられたイメージセンサーにより搬送中の原稿2の下方を向く面を読み取り、搬送部17が原稿2をUターンさせて結果的に原稿2の両面を読取部18に読み取らせることが可能な製品であってもよい。あるいは、画像読取装置10は、原稿2の両面のうち一方の面のみを読み取り可能な製品であってもよい。
【0022】
図3は、搬送方向D1および幅方向D2に直交する上方からの視点によりロードローラー17c、搬送ローラー対17b、読取部18等の各構成の配置を簡易的に示している。図3では、搬送部17により原稿2が搬送される搬送経路20の一部を破線で簡易的に示している。なお図2は、幅方向D2を向く視点による図と言える。図3の符号17b‐L,17b‐Rは、それぞれが搬送ローラー対17bを示している。つまり、図3の例では、搬送ローラー対17bは幅方向D2において間を空けて少なくとも2か所に配置されている。搬送ローラー対17b‐Lは、第2搬送ローラーとしての、幅方向D2において間を空けて配置された一方側のローラーの例であり、搬送ローラー対17b‐Rは、第2搬送ローラーとしての、幅方向D2において間を空けて配置された他方側のローラーの例である。搬送ローラー対17b‐Lと、搬送ローラー対17b‐Rとは、搬送経路20内において、幅方向D2の中央位置を挟んで対称配置されていると解してよい。図2に描かれている搬送ローラー対17bは、搬送ローラー対17b‐Lに該当する。
【0023】
原稿検知部19は、幅方向D2において、読取部18の原点1から第1距離X1の位置である「第1位置」に在る。第1位置は、概ね搬送経路20内の幅方向D2における中央位置か中央位置の近傍である。読取部18の原点1は、図3の例では、幅方向D2における読取部18の一端位置であるが、画像読取装置10内で決められた何らかの基準点であればよい。いずれにしても、原稿検知部19は、幅方向D2において原点1から第1距離X1の位置である第1位置に在り、それが結果的に搬送経路20内の幅方向D2における中央位置近傍となっている。
【0024】
さらに、第1位置を定義すると、第1位置は、幅方向D2において「第1範囲」に含まれている。図3では、第1範囲を範囲Wにより示している。範囲Wは、幅方向D2における搬送ローラー対17b‐Lと搬送ローラー対17b‐Rとの隙間に該当する。第1範囲は、範囲Wの全てであってもよいし、範囲Wの一部であってもよいが、いずれにしても幅方向D2において第1範囲は第1位置を含む範囲である。
図3では、搬送方向D1における、原稿検出部19と読取部18による読取位置との距離を、第2距離Y1として示している。
【0025】
2.画像読取処理:
図4は、制御部11がプログラム12に従って実行する画像読取処理を、フローチャートにより示している。フローチャートの説明が画像読取方法の説明となる。
ユーザーは、操作受付部14や外部装置を操作して、画像読取装置10に原稿2のスキャン開始を指示する。スキャン開始の指示を受けた制御部11は、ステップS100において、載置部3から原稿2を一枚搬送する処理を搬送部17に開始させる。
【0026】
ステップS110では、制御部11は、原稿2の下流側の端である先端が原稿検知部19により検知されたか否かを継続的に判定する。本実施形態では、原稿2や、読取結果としての画像データや、それらの一部に関して、下流側の端を“先端”と呼び、上流側の端を“後端”と呼ぶ。原稿2の先端が原稿検知部19に到達したときに、原稿検知部19は出力をそれまでのオフ信号からオン信号へ切り替える。制御部11は、ステップS100による搬送開始後、原稿検知部19からの出力がオフ信号からオン信号に切り替わったときに、ステップS110で“Yes”と判定してステップS120へ進めばよい。
【0027】
ステップS120では、制御部11は、原稿検知部19により原稿2が検知されてから、つまりステップS110で“Yes”と判定してから「第1時間」が経過したか否かを判定し、第1時間が経過したとき、ステップS120で“Yes”と判定してステップS130へ進む。第1時間は、搬送部17が原稿2を原稿検知部19から読取部18まで搬送するために要する「規定の時間」よりも短い所定の時間である。原稿検知部19から読取部18までの距離は、図3に示す第2距離Y1と解してよい。第2距離Y1の搬送に要する時間は設計上既知であり、これを規定の時間と呼んでいる。
【0028】
搬送部17による各ローラーを用いた搬送には、誤差が生じ得る。そのため、ステップS110で“Yes”と判定した時点から規定の時間が経過したとき、原稿2の先端が原稿検知部19から正確に第2距離Y1だけ下流へ進んでいるとは限らない。しかし、規定の時間よりも短い第1時間を予め定義しておき、ステップS120の判定に用いることで、ステップS120で“Yes”と判定した時点で原稿2の先端が読取部18に到達していない状態を実現することができる。第1時間は、例えば、原稿2の先端が原稿検知部19を通過してから搬送ローラー対17b‐L,17b‐Rに到達しない、または到達する程度の時間である。また例えば、第1時間=0であってもよい。
【0029】
ステップS130では、制御部11は、読取部18に読取を開始させる。
ステップS140では、原稿2のサイズが指定されているか否かを判定する。ユーザーは、画像読取装置10に原稿2のスキャン開始を指示するに際し、併せて原稿2のサイズを指定することができる。ユーザーは、例えば、操作受付部14を操作して、表示部13に表示されたUI画面において「A4」、「B5」、「はがき」等といった何れかの定型サイズを原稿2のサイズとして指定可能である。UIはユーザーインターフェイスの略である。
【0030】
一方で、ユーザーは、原稿2のサイズを指定せずに画像読取装置10にスキャン開始を指示することも可能である。ユーザーは、例えば、操作受付部14を操作してUI画面において、原稿サイズは「自動」という選択肢を指定する。この「自動」は、画像読取装置10に原稿サイズを自動検知させるという意味であり、ユーザーが原稿サイズを指定しないことに該当する。従って、制御部11は、ユーザーによって予め「自動」が指定されていれば、ステップS140において“Nо”と判定してステップS190へ進む。一方、ユーザーによって予め何れかの定型サイズが指定されていれば、ステップS140において“Yes”と判定してステップS150へ進む。
【0031】
ステップS190は「第1特定処理」を含んでいる。一方、ステップS150~S180は「第2特定処理」を含んでいる。従って、ステップS140は、第1特定処理または第2特定処理への分岐のための判定である。
先ず、第2特定処理について説明する。ステップS150では、制御部11は、原稿検知部19により原稿2が検知されてから、つまりステップS110で“Yes”と判定してから「第2時間」が経過したか否かを判定し、第2時間が経過したとき、ステップS150で“Yes”と判定してステップS160へ進む。第2時間は、上述した規定の時間よりも長い所定の時間である。規定の時間よりも長い第2時間を予め定義しておき、ステップS150の判定に用いることで、ステップS150で“Yes”と判定した時点では原稿2の先端を含む原稿2の一部が読取部18により読取済みの状態を実現できる。ただし、第2時間は、原稿2の先端が原稿検知部19に検知されてから原稿2の後端が読取部18まで搬送されるために要する時間よりも、短い所定の時間である。従って、ステップS150で“Yes”と判定した時点では、原稿2は読取部18により途中まで読み取られている。
【0032】
ステップS160では、制御部11は、ステップS130で読取部18が読取を開始してから現在までに生成された画像データを、解析用画像データとして取得する。解析用画像データは、これまでの説明から解るように、ステップS130で読取部18による読取を開始してから「第2時間-第1時間」が経過するまでの期間の読取により、生成された画像データである。言うまでもなく、制御部11は、ステップS150の“Yes”の後も、搬送部17による原稿2の搬送と読取部18による読取とを継続させる。
【0033】
ステップS170では、制御部11は、ステップS160で取得した解析用画像データを用いて、原稿2の先端を特定する。解析用画像データは、読取部18により生成された画像データのままであってもよいが、制御部11は、原稿2の先端を探索し易いように解析用画像データを2値化してもよい。具体的には、制御部11は、解析用画像データを構成する各画素について、いわゆる背景板の色の画素を黒画素に変換し、背景板の色以外の色の画素を白画素に変換することで2値化する。背景板は、搬送経路において読取部18と対向するように原稿2の背景として備えられており、読取部18は、原稿2の外では背景板を読み取る。背景板の色は既知であるため、制御部11は、背景板の色に該当すると判断できる所定の色域の画素を黒画素に変換し、それ以外の色の画素を白画素に変換すればよい。これにより、解析用画像データのうち原稿2の読取結果に相当する領域は白画素となる。
【0034】
図5は、解析用画像データ31の一例を示している。図5では、方向D1,D2と解析用画像データ31の向きとの対応関係も併せて示している。解析用画像データ31のうち、グレー色の領域は上述の黒画素が集合した領域であり、白色の領域は上述の白画素が集合した領域である。ステップS170では、制御部11は、幅方向D2における第1位置を含む第1範囲内の位置で、画像データの先端から上流に向かって原稿2の先端を探索する。第1範囲内で前記探索を行う位置を、以下では「探索位置」とも呼ぶ。探索位置は、第1位置であっても、第1位置から幅方向D2にずれていてもよいが、図5の例では探索位置は第1位置であるとする。
【0035】
図5において1点鎖線で示す探索ラインL1は、読取により生成された画像データにおける、第1位置に相当する位置を示す。第1位置や、第1位置を含む第1範囲は、物としての画像読取装置10内における所定の位置や範囲であるが、画像データに関する説明では、画像データにおける、第1位置に相当する位置や第1範囲に相当する範囲も、単純に第1位置や第1範囲と呼ぶ。
【0036】
図6は、ステップS170の詳細をフローチャートにより示している。
ステップS171では、制御部11は、解析用画像データ31における探索ラインL1を通る位置の画素であって解析用画像データ31の先端の画素P1を探索のスタート位置とし、解析用画像データ31の先端からの距離nを0にセットする。画素P1については、図5を参照のこと。
【0037】
ステップS172では、制御部11は、距離nの位置の画素が原稿2に該当するか否かを判定する。上述の例によれば、解析用画像データ31では、原稿2に該当する画素は白画素であるため、制御部11は、距離nの位置の画素が白画素であれば“Yes”、黒画素であれば“Nо”と判定する。ステップS172の“Yes”からはステップS173へ進み、ステップ172の“Nо”からはステップS174へ進む。
【0038】
ステップS174では、制御部11は、距離nが解析用画像データ31の後端に到達したか否かを判定し、到達したのであれば“Yes”の判定からステップS176へ進む。距離nが解析用画像データ31の後端に到達した場合は、それ以上は原稿2の先端を探索できない。一方、距離nが解析用画像データ31の後端に到達していなければ、ステップS174の“Nо”の判定からステップS175へ進む。
【0039】
ステップS175では、制御部11は、距離nをインクリメントする。つまり、現在の距離nに1を加えて距離nを更新する。距離nの単位は画素である。ステップS175の結果、距離nが探索ラインに沿って上流側へ1画素増える。ステップS175を経て、制御部11は、ステップS172以下を繰り返す。
【0040】
ステップS173では、制御部11は、距離nの位置の画素を原稿2の先端として特定する。図5の例では、画素P1から探索ラインL1に沿って上流側へ原稿2の先端の探索を行った結果、黒画素から白画素へ切り替わった位置の画素P2が、原稿2の先端として特定される。
【0041】
ステップS176は、探索により原稿2の先端を特定できなかった場合に該当する。この場合、制御部11は、画素P1から上流側に向かって予め設定された固定距離の位置を、原稿2の先端として特定する。固定距離は、ステップS130で読取部18が読取を開始してから原稿2の先端が読取部18へ到達するまでの設計上の搬送時間に相当する距離である。例えば、原稿2の色が背景板の色と偶然同じであったり類似していたりするとき、ステップS174の“Yes”からステップS176へ至ることがある。制御部11は、ステップS170を、ステップS173またはステップS176を経て終え、ステップS180へ進む。
【0042】
ステップS180では、制御部11は、ステップS170で特定した原稿2の先端の位置に基づいて、上述のようにユーザーに指定された原稿2のサイズ(以下、指定サイズ)に相当する領域を原稿領域として特定し、出力する。つまり、制御部11は、読取部18により生成された画像データを対象として、原稿2の先端から上流側の領域であって指定サイズ分の領域を原稿領域として特定し、この原稿領域の画像データを出力する。ここで言う出力とは、例えば、記憶部15や画像読取装置10内外のその他のメモリーへの保存、通信IF16を介しての外部装置への転送、不図示の印刷装置による印刷等である。ステップS180またはステップS190を経て図4のフローチャートを終える。
【0043】
図7は、ステップS180の処理対象とする画像データ30を例示している。画像データ30は、ステップS130で開始した読取部18による読取の結果として得られた、原稿2の1ページを含む画像データである。図7の見方は、図5の見方と同じである。解析用画像データ31は、画像データ30の一部と捉えることができる。ただし、画像データ30の各画素に対して2値化はしない。制御部11は、指定サイズつまり搬送方向D1および幅方向D2における原稿2の長さを認識している。また、搬送経路を搬送される原稿2の幅方向D2における位置も製品規格上、概ね解っている。そのため、制御部11は、画像データ30のうち、原稿2の先端である例えば画素P2を含み、そこから上流側の領域であって指定サイズ分の矩形領域を原稿領域として特定し、切り出せばよい。図7では原稿領域を2点鎖線により示している。
【0044】
図4のフローチャートでは特に示していないが、制御部11は当然に、ステップS100で搬送部17に開始させた搬送や、ステップS130で読取部18に開始させた読取を、適切なタイミングで終了させる。制御部11は、原稿2の後端が読取部18を通過したと判断できるタイミングで読取を終了させる。制御部11は、例えば、原稿検知部19によって原稿2の後端が検知されてから、つまり原稿検知部19の出力がオン信号からオフ信号に切り替わってから、前記規定の時間が経過した後の所定タイミングで読取部18による読取を終了させればよい。また、制御部11は、原稿2が搬送経路の下流へ排出されたら搬送部17による搬送を終了させる。むろん、載置部3に次の原稿2が載置されていれば、制御部11は、次の原稿2の搬送を搬送部17に開始させる。
【0045】
ステップS180について説明を補足する。図5図7の例では、解析用画像データ31や画像データ30は、幅方向D2における一端側と他端側とに背景板の色の領域を含んでいる。しかし、制御部11は、指定サイズを認識している場合は、このような幅方向D2における一端側と他端側とで読取部18に背景板を読み取らせなくてもよい。例えば、指定サイズがA4サイズであれば、制御部11は、ステップS130で開始する読取では、幅方向D2における読取部18のイメージセンサーの範囲のうち、A4サイズの幅に相当する範囲のみ読取を有効にしてもよい。このようにすれば、そもそも解析用画像データ31や画像データ30は、幅方向D2における一端側と他端側とに背景板の色の領域を含まない画像データとなり、ステップS180では、画像データ30に対して上流側および下流側のみで切り出しを行えばよいことになる。
【0046】
第1特定処理は公知であるため簡単に説明する。ステップS190では、制御部11は、ステップS130からの読取部18による読取の結果として生成された画像データに対して、原稿2のエッジを検出することにより原稿の領域を特定し、出力する。出力の意味は上述した通りである。原稿2のサイズが指定されていない状況においては、制御部11は、基本的に、幅方向D2における読取部18のイメージセンサーの全範囲を有効化して読取を実行させる。そのような読取の結果として生成された原稿2の1ページを含む画像データに対してエッジ検出を行う。一般に画像のエッジは色や明るさが急激に変化する位置である。画像データにおいては、背景板の色から原稿2自体の色に変化した位置の画素が原稿領域の内外を区切るエッジとなる。エッジ検出の方法は公知であるため詳しい説明は省略する。エッジ検出の結果、4辺の直線状のエッジが検出され、制御部11は、4辺の直線状のエッジにより囲われた矩形を、原稿領域として特定し、切り出せばよい。
【0047】
3.まとめ:
このように本実施形態によれば、画像読取装置10は、原稿2を所定の搬送方向D1へ搬送する第1搬送ローラーと、第1搬送ローラーよりも搬送方向D1の下流に設けられて、原稿2を搬送方向D1へ搬送する第2搬送ローラーと、第2搬送ローラーよりも下流に設けられて、搬送される原稿2を読み取る読取部18と、搬送方向D1において、第1搬送ローラーが原稿2と接触する位置と第2搬送ローラーが原稿2と接触する位置との間に設けられて、原稿2を検知する原稿検知部19と、制御部11と、を備える。原稿検知部19は、搬送方向D1と交差する幅方向D2において、読取部18の原点から第1距離の位置である第1位置に在る。制御部11は、原稿検知部19による原稿2の検知に基づいて、読取部18による読取を開始し、原稿のサイズが指定されていない場合は、読取部18による読取結果として生成された画像データに対して、原稿2のエッジを検出することにより原稿2の領域を特定する第1特定処理を実行し、原稿2のサイズが指定されている場合は、画像データに対して、幅方向D2における第1位置を含む第1範囲内の位置で、画像データの下流側の端から搬送方向D1の上流に向かって原稿2の下流側の端を探索し、探索により特定した原稿2の下流側の端の位置に基づいて、指定された原稿2のサイズに相当する領域を原稿2の領域として特定する第2特定処理を実行する。
【0048】
前記構成によれば、制御部11は、原稿2のサイズが指定された状態で読取を実行する場合は、画像データにおいて、第1位置を含む第1範囲内の探索位置で下流側から上流側に沿って原稿2の先端を探索して特定する。そのため、原稿検知部19が第2搬送ローラーよりも上流に配置されていても、画像データにおいて原稿2の先端を適切に特定して、当該先端の欠落の無い画像を得ることが可能となる。
【0049】
また、本実施形態によれば、第2搬送ローラーは、幅方向D2において間を空けて配置された一方側のローラーと他方側のローラーとを有し、第1範囲は、前記一方側のローラーと前記他方側のローラーとの間に含まれる、としてもよい。
前記構成によれば、第1範囲は幅方向D2における中央を含む範囲であり、制御部11は、この範囲に含まれる探索位置で原稿2の先端を探索する。そのため、画像データにおいて原稿2の先端を適切に特定して、当該先端の欠落の無い読取結果としての画像を得ることが可能となる。
【0050】
また、本実施形態によれば、制御部11は、第2特定処理では、画像データに対して第1位置で原稿2の下流側の端の探索を行うとしてもよい。
前記構成によれば、幅方向D2における原稿検知部19の位置である第1位置で原稿2の先端を探索するため、画像データにおいて原稿2の先端を正確に特定することができる。
【0051】
また、本実施形態によれば、制御部11は、原稿2を原稿検知部19から読取部18まで搬送するために要する規定の時間よりも短い所定の時間を第1時間とし、規定の時間よりも長い所定の時間を第2時間としたとき、原稿検知部19により原稿2が検知されてから第1時間が経過したタイミングで読取部18による読取を開始し、第2特定処理では、読取部18による読取を開始してから第2時間-第1時間が経過するまでの期間の読取により生成された画像データを用いて、原稿2の下流側の端の探索を行うとしてもよい。
前記構成によれば、原稿2の先端の読取結果を確実に含み且つデータ量が抑えられた画像データを解析用画像データとして取得して、原稿2の先端の探索を実行する。そのため、解析用画像データに要するメモリー消費を抑制することができる。
ただし、解析用画像データは、原稿2の1ページを含んだサイズの画像データであってもよい。
【0052】
一つの例として、第2時間は、原稿2の下流側の端から上流側へ40mm以上50mm以下の位置までを読み取り可能な長さの時間である、としてもよい。つまり、第2時間は、図5の解析用画像データ31に示すような、搬送方向D1における原稿2の先端から解析用画像データ31の後端までの距離Hが、ミリメートルに換算して40mm以上50mm以下程度に確保されるような長さの時間である。
【0053】
また、本実施形態によれば、制御部11は、第2特定処理では、探索により原稿2の下流側の端を特定できなかった場合、画像データの下流側の端から上流側に向かって予め設定された固定距離の位置を、原稿2の下流側の端として特定するとしてもよい。
前記構成によれば、画像データにおいて、原稿2の色次第で前記探索により原稿2の先端を特定できない場合でも、固定距離を代用して原稿2の先端を特定し、原稿2の領域を特定することが可能となる。
【0054】
図2,3の例によれば、搬送ローラー対17bよりも下流かつ読取部18よりも上流の位置には、原稿2を検知可能なセンサーは配置されていない。
原稿検知部19とは別に、搬送ローラー対17bよりも下流かつ読取部18よりも上流の位置に原稿2を検知可能なセンサーが配置されていてもよいが、このセンサーは少なくとも本実施形態で説明した処理には使用しない。
【0055】
特許請求の範囲においては、請求項同士の組み合わせの一部のみを記載しているが、本実施形態は、独立請求項と従属請求項との一対一の組み合わせだけでなく、当然に複数の従属請求項の各種組み合わせを開示範囲に含める。
【0056】
本実施形態は、画像読取装置10以外にも、画像読取方法や、当該方法をプロセッサーと協働して実現するためのプログラム12を開示する。
つまり、原稿2を所定の搬送方向D1へ搬送する第1搬送ローラーと、第1搬送ローラーよりも搬送方向D1の下流に設けられて、原稿2を搬送方向D1へ搬送する第2搬送ローラーと、第2搬送ローラーよりも下流に設けられて、搬送される原稿2を読み取る読取部18と、搬送方向D1において、第1搬送ローラーが原稿2と接触する位置と第2搬送ローラーが原稿2と接触する位置との間に設けられて、原稿2を検知する原稿検知部19と、を備える画像読取装置10が実行する画像読取方法では、原稿検知部19は、搬送方向D1と交差する幅方向D2において、読取部18の原点から第1距離の位置である第1位置に在り、原稿検知部19による原稿2の検知に基づいて、読取部18による読取を開始し、原稿2のサイズが指定されていない場合は、読取部18による読取結果として生成された画像データに対して、原稿2のエッジを検出することにより原稿2の領域を特定する第1特定処理を実行し、原稿2のサイズが指定されている場合は、画像データに対して、幅方向D2における第1位置を含む第1範囲内の位置で、画像データの下流側の端から搬送方向D1の上流に向かって原稿2の下流側の端を探索し、探索により特定した原稿2の下流側の端の位置に基づいて、指定された原稿2のサイズに相当する領域を原稿2の領域として特定する第2特定処理を実行する。
【0057】
4.第1変形例:
本実施形態に含まれる変形例を幾つか説明する。
第1変形例によれば、制御部11は、第2特定処理では、画像データの下流側の端から上流に向かって原稿2の下流側の端を探索するとき、原稿2の色に該当する画素が所定数連続する場合に、所定数連続する原稿2の色に該当する画素の中で最も下流側の画素の位置を原稿2の下流側の端として特定する。
【0058】
例えば、所定数を4とする。この場合、制御部11は、ステップS172において距離nの位置の画素が原稿2に該当すると4画素連続で判定した場合に、ステップS172からステップS173へ進む。言い換えると、ステップS172において距離nの位置の画素が原稿2に該当しないと判定した場合だけでなく、距離nの位置の画素が原稿2に該当すると1回判定した場合や、該当すると2画素連続で判定した場合や、該当すると3画素連続で判定した場合は、ステップS174へ進む。そして、制御部11は、ステップS173では、上述のように所定数連続で原稿2に該当すると判定した画素のうち最も下流側の画素の位置を、原稿2の先端として特定する。
【0059】
このような第1変形例によれば、読取部18が背景板を読み取った領域にゴミが含まれていたとき、このゴミを原稿2と誤認して原稿2の先端を特定するといった事態を避け、原稿先端の特定精度を向上させることができる。ユーザーは、第1変形例における所定数を、ゴミの大きさ等を考慮して任意に設定可能である。また、第1変形例は、後述の各変形例のいずれとも組み合わせることができる。
【0060】
5.第2変形例:
制御部11は、第2特定処理では、画像データに対して第1範囲内の複数位置のそれぞれで原稿2の下流側の端を探索し、複数位置それぞれにおける探索により特定した原稿2の下流側の端の中で最も下流側の位置を、原稿2の下流側の端として特定する。
【0061】
図8は、第2変形例を説明するための図であり、解析用画像データ31の一例を示している。図8の見方は、図5の見方と同じであるため、図5と共通の説明は省略する。探索ラインL1と平行な探索ラインL2,L3はそれぞれ、探索ラインL1による探索位置とは異なる探索位置であって第1範囲内の探索位置を示している。制御部11は、このような複数の探索ラインL1,L2,L3を対象として、図6のフローチャートを複数回実行する。この結果、図8の例では、探索ラインL2を対象とした探索により画素P3が原稿2の先端として特定され、探索ラインL3を対象とした探索により画素P4が原稿2の先端として特定される。制御部11は、図8の例では、探索ラインL1,L2,L3それぞれにおける探索により特定した原稿2の先端である画素P2,P3,P4の中で最も下流側である画素P3を、原稿2の先端として特定する。
【0062】
このような第2変形例によれば、第1範囲内の複数位置のそれぞれで原稿2の先端を探索することで、原稿2の先端を特定できる可能性を高めることができる。また、図8の例では、解析用画像データ31内で原稿2に対応する領域が傾いていることが解る。第2変形例では、複数位置それぞれにおける探索により特定した原稿2の先端の中で最も下流側の位置を原稿2の先端として特定することで、出力する原稿領域の画像データにおいて、実際の原稿先端の画像が欠落することを出来るだけ抑制することができる。第2変形例では、複数位置それぞれにおける探索の全てで原稿2の先端を特定できなかった場合に、上述した固定距離を採用して原稿2の先端を特定すればよい。
【0063】
6.第3変形例:
制御部11は、画像データに対して第1位置で原稿2の下流側の端を探索し、第1位置における探索により原稿2の下流側の端を特定できなかった場合、第1範囲内であって第1位置と異なる第2位置で原稿2の下流側の端を探索する。つまり、第3変形例では、第1範囲内の1つの位置で探索を行い、探索に失敗したら第1範囲内の他の位置で探索を行う。第3変形例は、第2変形例のように第1範囲内の複数位置で原稿2の先端を探索することを前提としないため、ステップS170の処理を第2変形例と比べて短時間で終える可能性が高い。
【0064】
第3変形例についても図8を適宜参照する。制御部11は、探索ラインL1を対象として図6のフローチャートを実行したとき、ステップS174で“Yes”と判定したら、ステップS176の実行は保留し、例えば、探索ラインL2を対象として再び図6のフローチャートを実行する。つまり、幅方向D2における探索ラインL2の位置が第2位置の具体例である。仮に、探索ラインL2を対象として図6のフローチャートを実行したときもステップS174で“Yes”と判定したら、ステップS176を実行すればよい。
【0065】
さらに第3変形例では、制御部11は、画像データに対して第2位置で原稿2の下流側の端を探索し、第2位置における探索により原稿2の下流側の端を特定できなかった場合、第1範囲内であって第1位置を基準にして第2位置と反対側の第3位置で原稿2の下流側の端を探索するとしてもよい。ここでも図8を適宜参照する。制御部11は、上述のように探索ラインL2を対象として図6のフローチャートを実行したとき、ステップS174で“Yes”と判定したら、ステップS176の実行は保留し、探索ラインL3を対象として再び図6のフローチャートを実行する。つまり、幅方向D2における探索ラインL3の位置が、第3位置の具体例である。仮に、探索ラインL3を対象として図6のフローチャートを実行したときもステップS174で“Yes”と判定したら、ステップS176を実行すればよい。
このような第3変形例によれば、第1範囲内の1つの位置で原稿2の先端を探索し、探索に失敗したら第1範囲内の他の位置で探索を行うことで、原稿2の先端を特定できる可能性を高めることができる。
【符号の説明】
【0066】
2…原稿、3…載置部、10…画像読取装置、11…制御部、12…プログラム、17…搬送部、17b…搬送ローラー対、17c…ロードローラー、18…読取部、19…原稿検知部、20…搬送経路、30…画像データ、31…解析用画像データ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8