(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093661
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】油圧制御用バルブ装置
(51)【国際特許分類】
F16H 61/00 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
F16H61/00
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210182
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【弁理士】
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】梶田 大介
(72)【発明者】
【氏名】三森 拓
(72)【発明者】
【氏名】嶋本 雅夫
(72)【発明者】
【氏名】井上 真也
【テーマコード(参考)】
3J552
【Fターム(参考)】
3J552PA54
3J552PA58
3J552QA13B
3J552QA32B
3J552QA41B
(57)【要約】 (修正有)
【課題】精度の良い制御が可能であり、耐久性の向上が可能な油圧制御用バルブ装置を提供する。
【解決手段】油圧制御用バルブ装置1は、ダンパ室10と、ダンパ室10の内部において移動可能なスプール20と、ダンパ室10の内部に配された弾性部材40と、スプール20及び弾性部材40の間に介在し、弾性部材40による付勢力をスプール20に伝達する間座30とを備え、間座30に対して弾性部材40による付勢力が作用する領域よりもスプール20の軸心側の領域において、スプール20及び間座30が当接することを特徴とする。スプール20は、間座30に向けて突出する突起部22を有し、間座30は、スプール20に向けて開口する凹部31を有し、突起部22は、凹部31に収容されると共に、凹部31の内部における底面31Aと当接可能であることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧制御用バルブ装置であって、
ダンパ室と、
前記ダンパ室の内部において移動可能なスプールと、
前記ダンパ室の内部に配された弾性部材と、
前記スプール及び前記弾性部材の間に介在し、前記弾性部材による付勢力を前記スプールに伝達する間座と、
を備え、
前記間座に対して前記弾性部材による付勢力が作用する領域よりも前記スプールの軸心側の領域において、前記スプール及び前記間座が当接すること、を特徴とする油圧制御用バルブ装置。
【請求項2】
前記スプールが、前記間座に向けて突出する突起部を有しており、
前記間座が、前記スプールに向けて開口する凹部を有しており、
前記突起部が、前記凹部に収容されると共に、前記凹部の内部における底面と当接可能であること、を特徴とする請求項1に記載の油圧制御用バルブ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動変速機等に用いられる油圧制御用バルブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の車両に例えば、自動変速機(AT:Automatic Transmission)や無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)が搭載されている。上述した自動変速機や無段変速機には、油圧により変速を制御する油圧制御用バルブ装置(油圧制御装置)が搭載されている(例えば、特許文献1)。油圧制御用バルブ装置は、油圧回路が形成されたバルブボデー内に収容され、当該油圧回路に連なるオイル流路の開閉を制御するものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した油圧制御用バルブ装置は、ダンパ室に収容されたスプリングの付勢力と、ダンパ室に供給される油圧とで、スプールを摺動させることにより、オイル流路の切り替えを行うものとされている。また、上述した特許文献1に記載の油圧制御用バルブ装置は、スプールに対してスプリングの上端部分が当接することで付勢力をスプールに付与している。
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の油圧制御用バルブ装置は、例えば、スプールとスプリングとの当接位置のずれや、スプリングの端面の不均一などにより、スプールに伝達される荷重にばらつきが生じる問題があった。かかる場合は、スプールが、ハウジングと接触して、スプールやハウジングが摩耗する問題がある。その結果、油圧制御用バルブ装置においてオイルリークが発生し、制御性能が低下したり、変速できなくなったりする懸念がある。
【0006】
そこで、本発明は、精度の良い制御が可能であり、耐久性の向上が可能な油圧制御用バルブ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上述した課題を解決すべく提供される本発明の油圧制御用バルブ装置は、油圧制御用バルブ装置であって、ダンパ室と、前記ダンパ室の内部において移動可能なスプールと、前記ダンパ室の内部に配された弾性部材と、前記スプール及び前記弾性部材の間に介在し、前記弾性部材による付勢力を前記スプールに伝達する間座と、を備え、前記間座に対して前記弾性部材による付勢力が作用する領域よりも前記スプールの軸心側の領域において、前記スプール及び前記間座が当接すること、を特徴とするものである。
【0008】
上述した油圧制御用バルブ装置は、弾性部材による付勢力が、間座を介して間接的にスプールに伝達される。また、上述した油圧制御用バルブ装置は、間座に対して弾性部材による付勢力が作用する領域よりもスプールの軸心側の領域において、スプール及び間座が当接するものとされている。すなわち、上述した油圧制御用バルブ装置では、スプールの軸心側の領域が間座を介して弾性部材によって付勢される。そのため、上述した油圧制御用バルブ装置は、スプールの移動時に当該スプールが傾くことを抑制できる。これにより、上述した油圧制御用バルブ装置は、スプールを円滑に移動できるので、スプールやダンパ室の摩耗を低減できる。したがって、上述した油圧制御用バルブ装置によれば、油圧応答性及び制御性が向上すると共に、油圧制御用バルブ装置の耐久性が向上する。ここで、弾性部材は、例えば、コイルスプリング等の各種のバネを好ましく利用できる。
【0009】
(2)上述した本発明の油圧制御用バルブ装置は、前記スプールが、前記間座に向けて突出する突起部を有しており、前記間座が、前記スプールに向けて開口する凹部を有しており、前記突起部が、前記凹部に収容されると共に、前記凹部の内部における底面と当接可能であること、を特徴とするとよい。
【0010】
上述した油圧制御用バルブ装置は、かかる構成とすることにより、スプールの突起部が間座の凹部を介して弾性部材により付勢される。これにより、上述した油圧制御用バルブ装置は、弾性部材による付勢力を、間座(凹部)を介してスプールの突起部に伝達することができる。そのため、上述した油圧制御用バルブ装置は、より円滑にスプールを移動させることができる。
【0011】
ここで、弾性部材は、間座に対して付勢力が作用する領域において、モーメントの偏りが発生する懸念がある。例えば、弾性部材がコイルスプリングである場合は、間座と当接する領域(コイルスプリングの先端側)が、傾斜する懸念がある。かかる場合は、間座が傾斜した状態で、当該間座とスプールとが当接する。そのため、スプールが、傾斜する懸念がある。
【0012】
(3)そこで、上述した懸念を解消すべく、上述した本発明の油圧制御用バルブ装置は、前記突起部の先端側が、前記間座に向けて円弧状に突出形成されていること、を特徴とするとよい。
【0013】
上述した油圧制御用バルブ装置は、かかる構成とすることにより、突起部が間座に当接した際に、間座を回動させることができる。これにより、弾性部材の伸縮度合が均一化されるので、間座内での付勢力とモーメントとのつり合いが取れる。そのため、上述した油圧制御用バルブ装置は、スプールの突起部周辺に付勢力を集中させることができ、スプールを円滑に移動させることができる。
【0014】
(4)上述した本発明の油圧制御用バルブ装置は、前記弾性部材及び前記間座が、一体的に形成されていること、を特徴とするとよい。
【0015】
上述した油圧制御用バルブ装置は、かかる構成とすることにより、弾性部材及び間座を容易に組み込むことができる。これにより、上述した油圧制御用バルブ装置の製造コストの低減やメンテナンス性の向上が期待できる。
【0016】
(5)上述した本発明の油圧制御用バルブ装置は、前記間座が、前記弾性部材における付勢力を前記間座における中心側に集中可能に構成されていること、を特徴とするとよい。
【0017】
上述した油圧制御用バルブ装置は、かかる構成とすることにより、ダンパ室の内部において、スプールをより精度良く、円滑に移動させることができる。
【0018】
(6)上述した本発明の油圧制御用バルブ装置は、前記間座及び前記スプールが、前記スプールの軸心上において当接すること、を特徴とするとよい。
【0019】
上述した油圧制御用バルブ装置は、かかる構成とすることにより、弾性部材による付勢力をスプールの軸心に作用させることができる。これにより、上述した油圧制御用バルブ装置は、ダンパ室の内部において、スプールをより精度良く、円滑に移動させることができる。
【0020】
(7)上述した本発明の油圧制御用バルブ装置は、前記間座が、外周に鍔部を有しており、前記鍔部が、前記弾性部材により付勢されること、を特徴とするとよい。
【0021】
上述した油圧制御用バルブ装置は、間座の外周に設けられた鍔部により、弾性部材による付勢力を受け止めることができるので、付勢力をロスなく確実に間座に伝達できる。また、上述した油圧制御用バルブ装置は、間座の鍔部で受けた付勢力を、鍔部よりもスプールの軸心側の領域に作用させることができる。これにより、上述した油圧制御用バルブ装置は、ダンパ室の内部において、スプールをより精度良く、円滑に移動させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、精度の良い制御が可能であり、耐久性の向上が可能な油圧制御用バルブ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態に係る油圧制御用バルブ装置の断面図であり、スプールに油圧が掛かっていない状態を表すものである。
【
図2】本発明の一実施形態に係る油圧制御用バルブ装置の断面図であり、スプールに油圧が掛かった状態を表すものである。
【
図3】本発明の一実施形態に係る油圧制御用バルブ装置の要部拡大断面図であり、スプールに油圧が掛かっていない状態を表すものである。
【
図4】(a)は、弾性部材の付勢力に偏りがない場合の概略説明図であり、(b)は、弾性部材の付勢力に偏りがある場合の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態に係る油圧制御用バルブ装置1の詳細を説明する。これらの図は模式図であって、必ずしも大きさを正確な比率で記したものではない。また、図中、同様の構成部品は、同様の符号を付して示す。また、本実施形態では、油圧制御用バルブ装置1が、例えば、自動変速機に用いられる場合を例として説明する。また、
図4(a)及び
図4(b)は、理解を容易にするため、大きさや傾き等を誇張して描いていることに留意されたい。
【0025】
図1は、油圧制御用バルブ装置1の縦方向断面図であり、スプール20に油圧が掛かっていない状態を表すものであり、
図2は、油圧制御用バルブ装置1の縦方向断面図であり、スプール20に油圧が掛かった状態を表すものである。油圧制御用バルブ装置1は、ダンパ室10と、スプール20と、間座30と、弾性部材40等を備えている。
【0026】
ダンパ室10は、油圧制御用バルブ装置1を覆うハウジング2の内部に形成された円筒状の空間である。ダンパ室10は、上端部分に油圧を供給するための油圧供給口4が設けられている。また、ダンパ室10は、複数個所において、オイルの流通が可能なオイル流路3が連通している。オイル流路3は、例えば、油圧回路が形成されたバルブボデー(図示せず)の油路に接続されている。油圧制御用バルブ装置1は、油圧を制御して、スプール20を移動させることで、対応するオイル流路3を開閉することができる。これにより、油圧制御用バルブ装置1は、油圧回路における油圧を制御できる。ダンパ室10は、内部にスプール20と、弾性部材40とが収容されている。
【0027】
スプール20は、円筒状に形成され、複数のスプール20が、上下の軸心方向(軸心C)に沿って連結された構造を呈する。スプール20は、ダンパ室10における内壁11に沿って(本実施形態では、上下方向)、移動可能である。複数のスプール20が、内壁11に沿って移動することで、各オイル流路3の開閉を行うことができる。また、スプール20は、一端側(図示下方側)に突起部22を有している。突起部22は、間座30(本実施形態では、下方側)に向けて突出するように形成されている。
【0028】
図3に示すように、突起部22は、スプール20における軸心C上に配されている。また、突起部22は、先端側が、後述する間座30に向けて円弧状(本実施形態では、球面状)に突出形成されている。詳細は後述するが、突起部22は、間座30の凹部31に収容されると共に、凹部31の内部における底面31Aと当接することができる。
【0029】
間座30は、例えば、金属を素材とした板状部材で形成され、中央部に凹部31が形成されている。また、間座30は、凹部31の外周に鍔部32が設けられている。言い換えれば、間座30は、逆ハット状に形成されている。間座30は、スプール20及び後述の弾性部材40の間に配されている。言い換えれば、スプール20及び弾性部材40の間は、間座30により仕切られている。間座30は、スプール20及び弾性部材40の間に介在し、弾性部材40による付勢力をスプール20に伝達するものとされている。
【0030】
凹部31は、スプール20に向けて開口している。凹部31は、突起部22よりも大径に形成されており、内部に突起部22を収容できる。また、凹部31の底面31Aは、平坦状に形成されており、スプール20の突起部22と当接することができる。すなわち、スプール20及び間座30は、間座30に対して弾性部材40による付勢力が作用する領域よりもスプール20の軸心C側の領域において、当接するものとされている。また、間座30は、突起部22の先端と当接することにより、突起部22の先端を中心として回動することができる。
【0031】
鍔部32は、凹部31の周囲を取り囲むように、凹部31の外周に設けられている。鍔部32は、ダンパ室10の内壁11に向けて突出形成されており、下面側が弾性部材40の上端部と当接している。すなわち、鍔部32は、弾性部材40による付勢力が作用する領域とされている。また、鍔部32は、傾動しても内壁11と接触しないよう、内壁11よりも小さい径に形成されている。
【0032】
図1及び
図2に示すように、弾性部材40は、本実施形態ではコイルスプリングとして形成されている。弾性部材40は、ダンパ室10の内部に収容されると共に、ダンパ室10の下方に立設された規制ピン13が挿し通されることで、水平方向への移動が制限されている。弾性部材40は、一端側(下端側)が、ダンパ室10の底部12と当接すると共に、他端側(上端側)が、上述のように鍔部32の下面側に当接している。したがって、弾性部材40は、鍔部32を上方側に向けて付勢することができる。これにより、間座30が、弾性部材40により付勢され、スプール20が、間座30を介して弾性部材40により付勢される。
【0033】
このように、上述した油圧制御用バルブ装置1は、鍔部32により、弾性部材40による付勢力を受け止めることができるので、付勢力をロスなく確実に間座30に伝達できる。また、上述した油圧制御用バルブ装置1は、鍔部32で受けた付勢力を、鍔部32よりもスプール20の軸心側の領域に作用させることができる。これにより、上述した油圧制御用バルブ装置1は、ダンパ室10の内部において、スプール20をより精度良く、円滑に移動させることができる。
【0034】
規制ピン13は、ダンパ室10の底部12に立設されている。規制ピン13は、上端側が間座30における凹部31の裏面と向き合うように配されている。規制ピン13は、ダンパ室10の油圧供給口4から油圧が供給されることで、間座30と当接するものとされている。
【0035】
ここで、スプール20及び間座30は、スプール20の軸心C上において当接するものとされている。具体的には、
図3示すように、スプール20の軸心C上に配された突起部22が、間座30における凹部31の底面31Aと当接するものとされている。言い換えれば、上述した油圧制御用バルブ装置1は、間座30が、弾性部材40における付勢力を間座30における中心側(軸心側又は付勢中心とも称する)に集中可能に構成されている。そのため、スプール20は、スプール20及び間座30の当接部位となる突起部22を通じて、間接的に弾性部材40により付勢される。
【0036】
以上が、本発明の一実施形態に係る油圧制御用バルブ装置1の構成であり、次に油圧制御用バルブ装置1の動作について、以下に説明する。
【0037】
図1に示すように、油圧制御用バルブ装置1は、油圧が掛かっていない状態において、スプール20が、弾性部材40によって上方側に付勢される。これにより、規制ピン13と、間座30との間に隙間が形成される。
【0038】
図2に示すように、油圧制御用バルブ装置1は、上方側から油圧が掛かっている状態において、スプール20及び間座30が当接しながら下方側に移動する。
【0039】
このとき、
図4(a)に示すように、スプール20及び間座30は、弾性部材40の付勢力に抗して下方側に移動する。ここで、弾性部材40による付勢力は、間座30の外周における鍔部32に作用し、前記付勢力が作用する領域よりもスプール20の軸心側の領域である突起部22に伝達される。このように、上述した油圧制御用バルブ装置1は、弾性部材40における付勢力を、間座30における中心側(軸心側、付勢中心)に集中させることができる。これにより、上述した油圧制御用バルブ装置1は、ダンパ室10の内部において、スプール20をより精度良く、円滑に移動させることができる。
【0040】
スプール20が下降すると、
図2に示すように、間座30における凹部31の下面側が、規制ピン13の上端側と当接し、スプール20及び間座30の下方への移動が制限される。このように、油圧制御用バルブ装置1は、スプール20の油圧による移動に伴い、各オイル流路3が開閉され、各オイル流路3へのオイル流入状態が切り替えられる。
【0041】
ここで、弾性部材40は、付勢力が作用する領域の高さのバラツキ等により、
図4(b)に示すように、弾性部材40と間座30との当接状態に偏りが生じることがある。かかる場合は、間座30に加わるモーメントの不均一化により、間座30が傾動する。このとき、上述した油圧制御用バルブ装置1は、突起部22の先端が円弧状(球状)に形成されているので、間座30は、突起部22を中心として回動できる。これにより、弾性部材40の伸縮度合(付勢力が作用する領域の高さのバラツキ)が均一化されるので、間座内での付勢力とモーメントとのつり合いが取れる。そのため、上述した油圧制御用バルブ装置1は、スプール20の突起部22周辺に付勢力を集中させることができ、スプール20を円滑に移動させることができる。
【0042】
このように、上述した油圧制御用バルブ装置1は、弾性部材40による付勢力を間座30における外周側の領域(鍔部32)から、スプール20の軸心C上(径方向内側)に位置する突起部22に伝達することができる。すなわち、上述した油圧制御用バルブ装置1は、弾性部材40が、直接的にスプール20に当接しない構成であるため、弾性部材40の付勢力のバラツキが、スプール20に直接的に作用しない。また、上述した油圧制御用バルブ装置1は、弾性部材40による付勢力のバラツキを間座30により均一化した上で、付勢力をスプール20の軸心に集中させて作用させることができる。これにより、上述した油圧制御用バルブ装置1は、ダンパ室10の内部において、スプール20をより精度良く、円滑に移動させることができる。
【0043】
以上が、本発明の一実施形態に係る油圧制御用バルブ装置1の構成であり、次に油圧制御用バルブ装置1の作用効果について説明する。
【0044】
上述した油圧制御用バルブ装置1は、弾性部材40による付勢力が、間座30を介して間接的にスプール20に伝達される。また、上述した油圧制御用バルブ装置1は、間座30に対して弾性部材40による付勢力が作用する領域よりもスプール20の軸心側の領域において、スプール20及び間座30が当接するものとされている。すなわち、上述した油圧制御用バルブ装置1では、スプール20の軸心側の領域が間座30を介して弾性部材40によって付勢される。そのため、上述した油圧制御用バルブ装置1は、スプール20の移動時にスプール20が傾くことを抑制できる。これにより、上述した油圧制御用バルブ装置1は、スプール20を円滑に移動できるので、スプール20やダンパ室10の摩耗を低減できる。したがって、上述した油圧制御用バルブ装置1によれば、油圧応答性及び制御性が向上すると共に、油圧制御用バルブ装置1の耐久性が向上する。
【0045】
また、上述した油圧制御用バルブ装置1は、スプール20が、間座30に向けて突出する突起部22を有しており、間座30が、スプール20に向けて開口する凹部31を有しており、突起部22が、凹部31に収容されると共に、凹部31の内部における底面31Aと当接可能なものとされている。
【0046】
したがって、上述した油圧制御用バルブ装置1は、弾性部材40による付勢力を、間座30(凹部31)を介してスプール20の突起部22に伝達することができる。そのため、上述した油圧制御用バルブ装置1は、より円滑にスプール20を移動させることができる。
【0047】
以上が、本発明の一実施形態及に係る油圧制御用バルブ装置1の構成及び作用効果であるが、本発明の油圧制御用バルブ装置1は、上述した実施形態には限定されず、各種の変形を行うことができる。
【0048】
本実施形態では、油圧制御用バルブ装置1が、自動変速機に用いられる場合を例示したが、油圧制御用バルブ装置1は、自動変速機に用いられるものだけではなく、各種の装置等の油圧制御に利用できる。また、ダンパ室10及びスプール20は、各種の形状や大きさに形成することができる。また、本実施形態では、弾性部材40としてコイルスプリングが用いられているが、弾性部材40は、これには限定されず、各種の形態のものが利用できる。
【0049】
本実施形態では、間座30が、スプール20に向けて開口する凹部31を有しており、突起部22が、凹部31に収容されると共に、凹部31の内部における底面31Aと当接可能に構成されているが、間座30は、これには限定されず、各種の形状や大きさに形成することができる。また、本実施形態では、間座30が逆ハット状に配されているが、間座30が、例えば、ハット状に配されていてもよい。
【0050】
また、本実施形態では、間座30が、外周に鍔部32を有するものとしたが、間座30は、これには限定されず、各種の形状や大きさに形成することができる。また、本実施形態では、鍔部32が、弾性部材40により付勢されるものとしたが、弾性部材40により付勢する領域は、鍔部32だけではなく、間座30の構造に応じて、適宜変更することができる。また、本実施形態では、間座30が金属を素材として形成されているが、使用環境に応じて各種の素材で形成することができる。
【0051】
本実施形態では、突起部22の先端側が、間座30に向けて円弧状(球状)に突出形成されているが、突起部22は、これには限定されず、各種の形状や大きさに形成できる。また、突起部22は、必要に応じて設ければよく、突起部22を有しない構成とすることもできる。また、突起部22は、間座30に対して弾性部材40の付勢力が作用する領域よりもスプール20の軸心側の領域であれば、各種の位置の配することができる。
【0052】
また、本実施形態では、弾性部材40及び間座30が、それぞれ独立した部材として形成されているが、弾性部材40及び間座30が、一体的に形成されていてもよい。上述した油圧制御用バルブ装置1は、かかる構成とすることにより、弾性部材40及び間座30を容易に組み込むことができる。これにより、上述した油圧制御用バルブ装置1の製造コストの低減やメンテナンス性の向上が期待できる。
【0053】
また、本実施形態では、間座30及びスプール20が、スプール20の軸心C上において当接するものとしたが、間座30及びスプール20が当接する部位は、間座30の形状や大きさに合わせて、各種の部位に変更できる。かかる場合は、間座30及びスプール20が当接する部位が軸心Cに近接するように構成することが望ましい。すなわち、間座30は、弾性部材40における付勢力を間座30における中心側に集中可能に構成されている各種のものが利用できる。
【0054】
以上が、本発明に係る油圧制御用バルブ装置の各種の実施形態や変形例であるが、本発明は上述した実施形態や変形例において例示したものに限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲でその教示及び精神から他の実施形態があり得ることは当業者に容易に理解できよう。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の油圧制御用バルブ装置は、自動変速機(AT)や無段変速機(CVT)等の油圧制御に利用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 :油圧制御用バルブ装置
10 :ダンパ室
20 :スプール
22 :突起部
30 :間座
31 :凹部
31A:底面
32 :鍔部
40 :弾性部材(スプリング)
C :軸心