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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093671
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】切断装置
(51)【国際特許分類】
   B23D 29/02 20060101AFI20240702BHJP
   B26B 15/00 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
B23D29/02 A
B26B15/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210196
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006301
【氏名又は名称】マックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】吉村 和信
(72)【発明者】
【氏名】佐野 翔麻
【テーマコード(参考)】
3C039
3C065
【Fターム(参考)】
3C039FA03
3C065BA21
3C065EA02
3C065EA08
3C065EA11
3C065FA06
3C065FA07
3C065GA13
(57)【要約】
【課題】ガイドプレートにより切断刃を保護しながらも、壁等の近くにある被切断物を切断することのできる切断装置、を提供する。
【解決手段】切断装置10は、回転動作することにより、被切断物を挟み込んで切断する一対の切断刃111と、切断刃111の動作に必要な駆動力を発生させる電動モーター400と、被切断物を収容しておくための凹部710が、所定方向に沿って後退するように形成されたガイドプレート700と、を備える。凹部710の縁は、互いに平行であり且つ間隔Wを空けて対向している一対の直線部711を含む。ガイドプレート700のうち最も先端となる位置を第1位置P1とし、切断刃111の動作範囲のうち最も先端となる位置を第2位置P2としたときに、第1位置P1と第2位置P2との間の距離Lが、間隔Wの1/4以下である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動式の切断装置であって、
回転中心軸の周りで回転動作することにより、被切断物を挟み込んで切断する一対の切断刃と、
前記切断刃の動作に必要な駆動力を発生させる電動モーターと、
一対の前記切断刃で前記被切断物を切断する際に当該被切断物を収容しておくための凹部が、所定方向に沿って後退するように形成されたガイドプレートと、を備え、
前記凹部の縁は、互いに平行であり且つ所定間隔を空けて対向している一対の直線部を含み、
前記ガイドプレートのうち、前記所定方向に沿って最も先端となる位置を第1位置とし、
前記切断刃の動作範囲のうち、前記所定方向に沿って最も先端となる位置を第2位置としたときに、
前記所定方向に沿った前記第1位置と前記第2位置との間の距離が、前記所定間隔の1/4以下である、切断装置。
【請求項2】
前記ガイドプレートを前記所定方向に沿って伸縮させる伸縮機構、が設けられている、請求項1に記載の切断装置。
【請求項3】
前記ガイドプレートのうち前記第1位置を含む部分には、前記回転中心軸に沿って見た場合の外形が円弧状である円弧部、が設けられている、請求項1に記載の切断装置。
【請求項4】
前記円弧部の曲率中心は前記回転中心軸上にある、請求項3に記載の切断装置。
【請求項5】
前記ガイドプレートのうち前記第1位置を含む部分には、前記所定方向に対して垂直な平坦面が設けられている、請求項1に記載の切断装置。
【請求項6】
電動式の切断装置であって、
回転中心軸の周りで回転動作することにより、被切断物を挟み込んで切断する一対の切断刃と、
前記切断刃の動作に必要な駆動力を発生させる電動モーターと、
一対の前記切断刃で前記被切断物を切断する際に当該被切断物を収容しておくための凹部が形成されたガイドプレートと、を備え、
前記ガイドプレートを所定方向に伸縮させる伸縮機構が設けられている、切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動式の切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動式の切断装置としては、例えば下記特許文献1に記載されているようなものが知られている。電動式の切断装置においては、使用者の把持力に替えて、電動モーターの駆動力によって切断刃を動作させ、一対の切断刃で挟み込むことによって被切断物を切断する。下記特許文献1に記載されている切断装置には、切断刃を外側から挟み込むように、一対のガイドプレートが設けられている。ガイドプレートには、切断時において予め被切断物を受け入れて、所定位置まで案内するための凹部が形成されている。被切断物を切断する際には、上記の所定位置に被切断物を配置した状態で、切断刃を閉じるように動作させる。
【0003】
このようなガイドプレートを設けておくことで、切断前に、被切断物と切断刃との位置関係を予め適切にしておくことが容易となる。また、切断装置が待機状態のときに、ガイドプレートによって切断刃を覆い保護することもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-171580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば被切断物の近くに床や壁が存在する場合には、ガイドプレートの凹部において十分に深い位置まで被切断物を入り込ませることができず、被切断物を切断できないような場合も生じ得る。
【0006】
本発明は、ガイドプレートにより切断刃を保護しながらも、壁等の近くにある被切断物を切断することのできる切断装置、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る切断装置は、電動式の切断装置であって、回転中心軸の周りで回転動作することにより、被切断物を挟み込んで切断する一対の切断刃と、切断刃の動作に必要な駆動力を発生させる電動モーターと、一対の切断刃で被切断物を切断する際に当該被切断物を収容しておくための凹部が、所定方向に沿って後退するように形成されたガイドプレートと、を備える。凹部の縁は、互いに平行であり且つ所定間隔を空けて対向している一対の直線部を含む。ガイドプレートのうち、所定方向に沿って最も先端となる位置を第1位置とし、切断刃の動作範囲のうち、所定方向に沿って最も先端となる位置を第2位置としたときに、この切断装置では、所定方向に沿った第1位置と第2位置との間の距離が、所定間隔の1/4以下である。
【0008】
上記構成の切断装置では、ガイドプレートの先端である第1位置と、切断刃の動作範囲の先端である第2位置と、の間の距離が、凹部の幅(上記の所定間隔)の1/4以下となるように小さく抑えられている。
【0009】
多くの場合、凹部の幅と同程度の直径を有する被切断物が切断対象とされる。このため、上記構成の切断装置では、被切断物が床や壁と接している状況であっても、切断刃の可動範囲と十分に重なる位置まで被切断物を入り込ませて、当該位置で被切断物を切断することができる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、ガイドプレートにより切断刃を保護しながらも、壁等の近くにある被切断物を切断することのできる切断装置、が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、第1実施形態に係る切断装置の構成を示す図である。
図2図2は、第1実施形態に係る切断装置が備えるガイドプレートの構成を示す図である。
図3図3は、第1実施形態に係る切断装置が備えるガイドプレートの構成を示す図である。
図4図4は、床に設置された被切断物を切断する場合について説明するための図である。
図5図5は、第2実施形態に係る切断装置が備えるガイドプレートの構成を示す図である。
図6図6は、第3実施形態に係る切断装置が備えるガイドプレートの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0013】
第1実施形態について説明する。本実施形態に係る切断装置10は、電動式の切断装置であって、建設現場等において鉄筋を切断するための装置として構成されている。図1を主に参照しながら、切断装置10の構成について説明する。切断装置10は、ハウジング11と、トリガスイッチ12と、切断機構100と、ボール螺子200と、減速機300と、電動モーター400と、制御基板500と、蓄電池600と、を備えている。
【0014】
ハウジング11は、切断装置10の外形を区画する容器であって、例えば樹脂により形成されている。ハウジング11の内部には、後述のボール螺子200や減速機300等が収容されている。図1においては、ハウジング11のうち紙面手前側の部分が除去されており、切断装置10の内部構成が断面図として示されている。
【0015】
トリガスイッチ12は、使用者の指によって操作されるスイッチである。使用者は、トリガスイッチ12に指をかけて手前側に引き込む操作を行うことにより、トリガスイッチ12をオン状態にすることができる。使用者が指の力を緩めると、トリガスイッチ12はばねの力によって元の位置に戻り、オフ状態となる。トリガスイッチ12がオン状態とオフ状態との間で切り替えられると、それに対応する信号が後述の制御基板500に送信される。使用者がトリガスイッチ12をオン状態に切り替える操作を行うと、鉄筋の切断が開始される。
【0016】
切断機構100は、被切断物である鉄筋を切断する部分である。切断機構100は、一対の刃部材110と、一対のリンク部材120と、を有している。
【0017】
それぞれの刃部材110には、被切断物を挟み込んで切断する切断刃111が形成されている。刃部材110は、ハウジング11に対し固定された軸101の回りにおいて、回動自在な状態で保持されている。本実施形態では、切断刃111の刃先の稜線が、概ね同一の平面を通る軌道で動作するように、それぞれの刃部材110が対向配置されている。これにより、それぞれの切断刃111が互いに離間した開状態と、それぞれの切断刃111が互いに当接(又は近接)した閉状態と、を切り換えることが可能となっている。図1の例では、一対の切断刃111が閉状態となっている。
【0018】
リンク部材120は棒状の部材であって、一端が軸102を介して刃部材110に接続されており、他端が軸231を介して後述の連結部材230に接続されている。リンク部材120及び刃部材110は、軸102の周りにおいて互いに回動自在な状態で接続されている。同様に、リンク部材120及び連結部材230は、軸231の周りにおいて互いに回動自在な状態で接続されている。後に説明するように、連結部材230は、電動モーター400の駆動力によって、図1の左右方向に移動する。
【0019】
図1の状態から、連結部材230が左方向に移動すると、図1の上側にある刃部材110は反時計回り方向に回転し、図1の下側にある刃部材110は時計回り方向に回転する。これにより、一対の切断刃111は閉状態から開状態になる。一方、一対の切断刃111が開状態となっているときに、連結部材230が図1の右方向に移動すると、図1の上側にある刃部材110は時計回り方向に回転し、図1の下側にある刃部材110は反時計回り方向に回転する。これにより、一対の切断刃111は閉状態に戻る。このように、一対の刃部材110、一対のリンク部材120、及び連結部材230の全体は、所謂「トグルリンク機構」を構成している。
【0020】
刃部材110の近傍には、一対のガイドプレート700が設けられている。ガイドプレート700は、金属により形成された板状の部材であって、図1における紙面手前側及び奥側の両方から刃部材110を挟み込むように配置されている。一対のガイドプレート700の形状は互いに同一である。図2に示されるように、それぞれのガイドプレート700には凹部710が形成されている。凹部710は、切断刃111により鉄筋を切断する際に、予め当該鉄筋を収容しておくためのものである。
【0021】
説明の便宜上、図1における右側のことを以下では「先端側」とも称し、同図における左側のことを以下では「後端側」とも称する。凹部710は、ガイドプレート700の先端側から後端側に向かって後退するように形成されている。図1図2のように切断装置10を側面側から見た場合においては、それぞれの凹部710は、閉じた状態における切断刃111を含む位置に形成されている。切断刃111が全開となっている待機状態においては、図3のように、それぞれの切断刃111は凹部710の外側に退避した状態となり、ガイドプレート700によって刃部材110の略全体が隠れた状態となる。
【0022】
ガイドプレート700は、待機状態の切断刃111を覆い保護する機能と、被切断物である鉄筋を、凹部710に沿って一対の切断刃111の間へと導く機能と、の両方を有している。ガイドプレート700は更に、凹部710において鉄筋を挟み込むことで、切断前後における切断装置10の姿勢を安定させる機能をも有している。ガイドプレート700の具体的な構成については後に説明する。
【0023】
図1に戻って説明を続ける。ボール螺子200は、電動モーター400の回転運動を、連結部材230の直線運動に変換し、これにより切断機構100を動作させるための装置である。ボール螺子200は、螺子軸210と、ナット220と、連結部材230と、を有している。
【0024】
螺子軸210は、後端側から先端側に向かって直線状に伸びる棒状の部材である。螺子軸210の外周面には雄螺子が形成されている。電動モーター400が駆動されると、螺子軸210はその中心軸回りにおいて回転する。
【0025】
ナット220は、螺子軸210を外周側から囲むように配置された略円筒形状の部材である。ナット220の内周面には雌螺子が形成されており、螺子軸210の外周面に形成された雄螺子に対し螺合している。ナット220は、螺子軸210の長手方向に沿った移動は許容されている一方で、螺子軸210の中心軸回りにおける回転は規制されている。このため、螺子軸210がその中心軸回りにおいて回転すると、ナット220は、当該中心軸に沿って図1の左右方向に移動する。
【0026】
連結部材230は、ナット220に対し取り付けられた部材であって、ナット220と共に螺子軸210に沿って移動する部材である。連結部材230は、ナット220から先端側に向けて突出するように取り付けられている。連結部材230のうち先端側の端部近傍となる部分には、先に述べた軸231を介して一対のリンク部材120が接続されている。
【0027】
連結部材230の外周面には磁石241が取り付けられている。また、連結部材230の近傍となる位置には、ホールセンサ242がハウジング11に対して取り付けられている。ホールセンサ242が取り付けられている位置は、図1の状態からナット220が後端に移動して切断刃111が全開となったときに、連結部材230の磁石241と対向する位置となっている。切断刃111が全開になると、磁石241と対向することによってホールセンサ242から信号が発信され、当該信号が制御基板500に入力される。
【0028】
減速機300は、電動モーター400の出力軸410の回転を、減速した上でボール螺子200の螺子軸210に伝達する装置である。
【0029】
電動モーター400は、切断刃111の動作に必要な駆動力を発生させるための回転電機であって、例えばブラシレスDCモーターである。電動モーター400は出力軸410を有している。出力軸410は略円柱形状の部材であって、その中心軸は螺子軸210の中心軸と一致している。出力軸410の一部は減速機300に向けて突出しており、減速機300に接続されている。
【0030】
電動モーター400のコイルに電流が供給されると、出力軸410がその中心軸周りに回転する。出力軸410の回転は減速機300を介して螺子軸210に伝達され、ナット220を先端側もしくは後端側に向けて移動させる。これにより、先に述べたように切断機構100の切断刃111を開閉動作させる。
【0031】
電動モーター400の内部には、回転センサ420が設けられている。回転センサ420は、出力軸410が所定角度だけ回転する毎にパルス信号を発信するセンサであって、電動モーター400が有する基板430の上に設けられている。回転センサ420からのパルス信号は制御基板500に送信される。制御基板500は、パルス信号の数をカウントすることにより、特定のタイミング以降における出力軸410の回転角度を把握することができる。また、制御基板500は、単位時間あたりに入力されるパルス信号の数に基づいて、出力軸410の回転速度をも把握することができる。回転センサ420は、出力軸410の回転角度及び回転速度を測定できるものであれば、本実施形態とは異なる種類のセンサであってもよく、電動モーター400とは異なる位置に別途設けられたセンサであってもよい。
【0032】
制御基板500は、電動モーター400を含む切断装置10の全体の動作を制御するために設けられた回路基板である。制御基板500は、電動モーター400に供給される電流を調整するためのインバーター回路や、インバーター回路におけるスイッチング動作等を制御するためのマイコン等を含む。
【0033】
蓄電池600は、電動モーター400や制御基板500の動作に必要な電力を蓄えておくものであり、例えばリチウムイオンバッテリーである。切断装置10のうち蓄電池600が内蔵されている部分は、バッテリーパックとしてハウジング11から着脱することが可能となっており、外部の充電器に接続して充電を行うことができる。このような態様に換えて、蓄電池600がハウジング11に取り付けられている状態のまま、蓄電池600の充電を行うことが可能な構成としてもよい。
【0034】
使用者がトリガスイッチ12をオン状態に切り替える操作を行うと、制御基板500はこれを検知し、切断刃111を閉方向に動作させて鉄筋を切断させる。このような制御を行うために、制御基板500は、連結部材230の現在位置を取得しながら、電動モーター400の動作を制御する。
【0035】
本実施形態では、磁石241とホールセンサ242が対向したときを基準とした、回転センサ420から入力されるパルス信号のカウント値が、連結部材230の「現在位置」として制御基板500により算出され取得される。
【0036】
連結部材230の現在位置の取得を可能とするために、切断装置10が起動された際等においてリセット動作を行うこととすればよい。リセット動作では、例えば、一対の切断刃111が閉状態から開状態になる方向に電動モーター400を駆動させ、ホールセンサ242からの検知信号が入力された時点で電動モーター400を停止させればよい。この時点からパルス信号のカウントを開始すれば、以降における連結部材230の現在位置を正確に取得することができる。
【0037】
制御基板500は、電動モーター400に供給される電流の大きさを例えばPWM制御により調整することで、切断刃111の開閉動作を制御する。また、制御基板500は、電動モーター400が備える複数のコイルの一部を周期的に又は連続的に短絡させる、所謂「ショートブレーキ」を行うことで、切断刃111の制動動作をも制御する。
【0038】
尚、以上のような制御はあくまで一例である。制御基板500による制御は、トリガスイッチ12の状態に応じて切断刃111を動作させるものであればよく、公知となっている種々の制御を採用することができる。
【0039】
ガイドプレート700の具体的な構成について説明する。図2に示されるように、被切断物である鉄筋を収容するための凹部710は、ガイドプレート700の先端から、所定方向に沿って後退するように形成されている。ここでいう「所定方向」とは、先端側から後端側に向かう方向であって、螺子軸210の中心軸と平行な方向のことである。
【0040】
図2図3に示される凹部710の縁には、互いに平行であり且つ所定間隔を空けて対向している一対の直線部711が含まれる。それぞれの直線部711が伸びる方向は、上記の所定方向と同じである。
【0041】
図3に示されるように、一対の直線部711同士の間隔(上記の所定間隔)はWとなっている。このWのことを、以下では「間隔W」とも表記する。間隔Wは、凹部710の幅といってもよい。間隔Wの寸法は、切断装置10が切断対象とする鉄筋の代表的な直径に概ね等しくなるように設定されている。
【0042】
図3に示される「C1」は、紙面奥行き方向に沿って伸びる軸101の中心軸を表している。刃部材110や切断刃111は、このC1の周りで回転動作する。つまり、C1で示される中心軸は、刃部材110や切断刃111の回転中心軸に該当する。C1で示される中心軸のことを、以下では「回転中心軸C1」とも表記する。
【0043】
図3において点線DL2で示される円は、回転中心軸C1を中心とし且つガイドプレート700の先端を通る円である。図3のように回転中心軸C1に沿って見た場合において、ガイドプレート700の先端部分の外形は、一部が点線DL2と一致するような円弧状となっている。換言すれば、当該部分の曲率中心は回転中心軸C1上にある。このように円弧状に形成された先端部分のことを、以下では「円弧部701」とも表記する。
【0044】
図3に示される点線DL1は、回転中心軸C1を通り、且つ、螺子軸210の中心軸と平行な線である。この点線DL1と点線DL2との交点であるP1は、円弧部701上の位置にあり、ガイドプレート700のうち、上記の「所定方向」に沿って最も先端側の位置にある。当該位置のことを、以下では「第1位置P1」とも表記する。
【0045】
図3において点線DL3で示される円は、回転中心軸C1を中心とし且つ切断刃111の先端を通る円である。点線DL3は、切断刃111の先端が動作する軌道を示すものということもできる。尚、図3においては、凹部710の上方側部分についてのみ点線DL1、DL2、DL3等が示されているが、切断装置10のうち図3に示されている部分の構成は、凹部710の上下において対称となっている。
【0046】
点線DL1と点線DL3との交点であるP2は、切断刃111の動作範囲のうち、上記の「所定方向」に沿って最も先端側の位置を表している。当該位置のことを、以下では「第2位置P2」とも表記する。本実施形態では、上記の所定方向に沿った第1位置P1と第2位置P2との間の距離Lが、間隔Wの1/4以下となるように、ガイドプレート700が構成されている。
【0047】
このような構成としたことの利点について説明する。建築現場等においては、図4のように床FLの上に設置された状態の鉄筋RBを、当該状態のまま持ち上げることなく、切断装置によって切断したい場合がある。しかしながら、切断装置にガイドプレートが設けられている場合には、ガイドプレートが切断刃よりも先に床FLに当たるので、ガイドプレートの凹部において十分に深い位置まで鉄筋RBを入り込ませることができず、鉄筋RBを切断できないような場合も生じ得る。
【0048】
そこで、本実施形態では、上記のようにL≦1/4×Wとなるよう、ガイドプレート700の突出量を小さく抑えることとしている。
【0049】
このような構成の切断装置10を用いて、床FLの上に設置された状態の鉄筋RBを切断する際には、使用者は図4のように、ガイドプレート700の円弧部701を床FLに当接させた状態で切断刃111を閉方向に動作させる。切断刃111は、その先端が図4の点線DL3を通るような軌道で動作する。
【0050】
図4の点線DL4は、閉状態となったときにおける切断刃111の位置を表している。点P3は、点線DL4と点線DL3との交点である。
【0051】
切断刃111が閉方向に動作しているときには、切断刃111の先端は、第2位置P2を通過する際において最も床FLに近くなる。その後は、切断刃111の先端は床FLから僅かに遠ざかり、最終的には点P3に到達する。
【0052】
多くの場合、鉄筋RBの直径は、凹部710の幅である間隔Wに概ね等しい。この場合、上記のように動作する切断刃111の先端は、図4のように概ね鉄筋RBの中心近くを通ることとなる。それぞれの切断刃111が上記のような軌道で移動し、鉄筋RBの一部を切断しながら通過すると、鉄筋RBのうち切断刃111が通過しない領域も、塑性変形に伴って破断する。このため、当該位置で鉄筋RBを切断することができる。鉄筋RBが、床に対して垂直な壁等の近傍にある場合でも同様である。
【0053】
このように、本実施形態に係る切断装置10では、ガイドプレート700により切断刃111を保護しながらも、床FL等の近くにある鉄筋RBを切断することができる。
【0054】
本実施形態のガイドプレート700には、その先端に円弧部701が設けられている。図3を参照しながら説明したように、円弧部701の曲率中心は、回転中心軸C1上にある。このため、例えば床FLに凹凸がある場合等において、円弧部701のうち第1位置P1以外の部分を床FLに当接させた場合であっても、切断刃111の先端と床FLとの間に必要最低限の距離を確保することができる。
【0055】
第2実施形態について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点について主に説明し、第1実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。本実施形態では、ガイドプレート700の形状において第1実施形態と異なっている。
【0056】
図5に示されるように、本実施形態では、ガイドプレート700の先端部分の形状が円弧状とはなっておらず、ガイドプレート700の先端に平坦面702が設けられている。平坦面702は、螺子軸210の中心軸に対して垂直な面である。
【0057】
図5の点線DL1は、図3に示される点線DL1と同じものである。点線DL1と平坦面702との交点が、本実施形態における第1位置P1となっている。平坦面702は、ガイドプレート700のうち最も先端の位置である第1位置P1、を含む面ということができる。
【0058】
図示は省略するが、本実施形態でも、第1実施形態と同じ「第2位置P2」を定義することができる。本実施形態でも第1実施形態と同様に、所定方向に沿った第1位置P1と第2位置P2との間の距離Lが、間隔Wの1/4以下となるように、ガイドプレート700における平坦面702の位置が調整されている。このような態様でも、第1実施形態で説明したものと同様の効果を奏する。
【0059】
図4と同様に、床FLの上に設置された状態の鉄筋RBを切断する際には、使用者は、ガイドプレート700の平坦面702を床FLに当接させた状態で切断刃111を閉方向に動作させる。平坦面702の全体が床FLに当たることとなるので、切断時における切断装置10の姿勢を更に安定させることが可能となる。
【0060】
第3実施形態について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点について主に説明し、第1実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。本実施形態では、ガイドプレート700の構成において第1実施形態と異なっている。
【0061】
図6に示されるように、本実施形態におけるそれそれのガイドプレート700は、軸101と重なる部分であるベース部700Aと、先端側の部分である先端部700Bとに分かれている。ベース部700Aと先端部700Bとの間は、スライド軸751及び螺子軸752によって接続されている。
【0062】
スライド軸751は、螺子軸210の中心軸と平行な方向に直線状に伸びる棒状の部材である。スライド軸751のうち先端側の端部は先端部700Bに固定されている。スライド軸751のうち後端側の部分は、螺子軸210の中心軸と平行な方向にスライド可能な状態で、ベース部700Aによって支持されている。スライド軸751は、1つの先端部700Bについて2つ設けられているが、スライド軸751の数はこれとは異なっていてもよい。
【0063】
螺子軸752は、螺子軸210の中心軸と平行な方向に直線状に伸びる棒状の部材であって、その外周面には不図示の雄螺子が形成されている。螺子軸752のうち先端側の端部は先端部700Bに固定されている。螺子軸752は、ベース部700Aに設けられた調整ナット753の内側に挿通されている。
【0064】
調整ナット753には不図示の貫通穴が形成されており、螺子軸752は当該貫通穴に挿通されている。調整ナット753の貫通穴の内面には雌螺子が形成されており、螺子軸752の外周面にある雄螺子と螺合している。
【0065】
調整ナット753は、その中心軸周りに回転可能な状態で、ベース部700Aに対し固定されている。使用者が調整ナット753を回転させると、螺子軸752がその長手方向に沿って移動し、螺子軸210と共に先端部700Bも移動する。つまり、ベース部700A及び先端部700Bからなるガイドプレート700の全体が、螺子軸752の長手方向に沿って伸縮する。尚、このような操作を行いやすくするために、調整ナット753の一部または全部が、ベース部700Aに設けられた開口を通じて外部に露出していることとしてもよい。
【0066】
このように、使用者は、調整ナット753を回転させることによってガイドプレート700を伸縮させ、切断刃111からのガイドプレート700の突出量(図3における距離Lに相当する)を調整することができる。スライド軸751、螺子軸752、及び調整ナット753は、ガイドプレート700を伸縮させるための「伸縮機構」に該当する。上記の突出量がマイナスとなるように調整できる構成としてもよい。つまり、ガイドプレート700よりも切断刃111の方が先端側に突出するよう、調整可能な構成としてもよい。
【0067】
尚、伸縮機構の具体的な構成は、本実施形態と異なっていてもよい。例えば、調整ナット753に替えてウォームギヤを有する構成としてもよい。
【0068】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0069】
10:切断装置
111:切断刃
400:電動モーター
700:ガイドプレート
701:円弧部
702:平坦面
710:凹部
711:直線部
751:スライド軸
752:螺子軸
753:調整ナット
C1:回転中心軸
L:距離
P1:第1位置
P2:第2位置
W:間隔
図1
図2
図3
図4
図5
図6