(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093711
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】分析方法
(51)【国際特許分類】
G01N 30/88 20060101AFI20240702BHJP
G01N 30/06 20060101ALI20240702BHJP
B01J 20/288 20060101ALI20240702BHJP
G01N 30/54 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
G01N30/88 C
G01N30/06 E
G01N30/06 Z
B01J20/288
G01N30/54 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210254
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000165284
【氏名又は名称】月島食品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】益田 庄子
(72)【発明者】
【氏名】溝部 帆洋
(57)【要約】 (修正有)
【課題】遊離脂肪酸、及び脂肪酸エステルを含む脂質の遊離脂肪酸由来の脂肪酸組成及び、脂肪酸エステル由来の脂肪酸組成を、同時に分析できる方法を提供する。
【解決手段】脂質を疎水性溶媒に溶解する溶解工程S1と、溶解液に、水酸化アルカリ金属物、水酸化アルカリ土類金属物及びアルカリ金属アルコキシドから選ばれるアルカリ性触媒、及び炭素数1~4のアルコール溶液を添加して混合液を調製し、混合液を疎水性溶媒層と親水性溶媒層の二層に分離するとともに、遊離脂肪酸を脂肪酸アルカリ塩として親水性溶媒層に抽出し、脂肪酸エステルを低級アルキルエステル化して疎水性溶媒層に抽出する第一抽出工程S2と、混合液に酸性水溶液をさらに添加して、脂肪酸アルカリ塩を中和して遊離脂肪酸として疎水性溶媒層に抽出する第二抽出工程S3と、疎水性溶媒層を採取する分離工程S4と、ガスクロマトグラフィーに供するGC工程S5と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊離脂肪酸(a)と、脂肪酸エステル(b)とを含む脂質の分析方法であって、
前記脂質を疎水性溶媒に溶解し、溶解液を得る溶解工程と、
当該溶解液に、水酸化アルカリ金属物、水酸化アルカリ土類金属物及びアルカリ金属アルコキシドから選ばれる1つ以上のアルカリ性触媒、及び炭素数1~4のアルコール溶液を添加して混合液を調製し、当該混合液を疎水性溶媒層と親水性溶媒層の二層に分離するとともに、前記遊離脂肪酸(a)を脂肪酸アルカリ塩(a’)として当該親水性溶媒層に抽出し、前記脂肪酸エステル(b)を低級アルキルエステル化して脂肪酸低級アルキルエステル(b’)として当該疎水性溶媒層に抽出する第一抽出工程と、
前記混合液に酸性水溶液をさらに添加して、前記脂肪酸アルカリ塩(a’)を中和して遊離脂肪酸(a)として前記疎水性溶媒層に抽出する第二抽出工程と、
前記疎水性溶媒層を採取して、前記遊離脂肪酸(a)及び前記脂肪酸低級アルキルエステル(b’)を含む抽出溶液を得る分離工程と、
前記抽出溶液をガスクロマトグラフィーに供するGC工程と、
を含み、
前記GC工程において、前記遊離脂肪酸(a)を構成する脂肪酸、及び前記脂肪酸エステル(b)を構成する脂肪酸を同時に分析する、分析方法。
【請求項2】
請求項1に記載の分析方法であって、
前記炭素数1~4のアルコール溶液はメタノール溶液である、分析方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の分析方法であって、
前記疎水性溶媒は、脂肪族炭化水素溶媒、脂環式炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒、エーテル溶媒、及び有機酸アルキルエステル溶媒からなる群から選択される1種又は2種以上である、分析方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の分析方法であって、
前記酸性水溶液は、硫酸、塩酸、硝酸、及びリン酸からなる群から選択される1種又は2種以上を含む水溶液である、分析方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の分析方法であって、
前記ガスクロマトグラフィーは、固定相としてニトロテレフタル酸により修飾されたポリエチレングリコールを用いる、分析方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の分析方法であって、
前記GC工程において、前記抽出溶液を前記ガスクロマトグラフィーにインジェクションした後に、以下の段階1及び段階2を連続に備える、分析方法。
段階1:カラム温度を上昇する
段階2:段階1で到達した温度を保持する
【請求項7】
請求項6に記載の分析方法であって、
前記段階1及び段階2の後に、以下の段階3及び段階4を連続に備えることを特徴とする、分析方法。
段階3:前の段階の温度からさらに温度を上昇する
段階4:段階3で到達した温度を保持する
【請求項8】
請求項7に記載の分析方法であって、
段階3及び段階4を続けて2以上繰り返す、分析方法。
【請求項9】
請求項6に記載の分析方法であって、
前記遊離脂肪酸(a)に由来する成分と、前記脂肪酸エステル(b)に由来する成分とのリテンションタイムの差が0.8分以上となるように、段階1及び/又は段階2のカラム温度及び/又は昇温速度を調整する、分析方法。
【請求項10】
請求項7に記載の分析方法であって、
前記遊離脂肪酸(a)に由来する成分と、前記脂肪酸エステル(b)に由来する成分とのリテンションタイムの差が0.8分以上となるように、段階1~段階4から選ばれる1又は2以上の段階の、カラム温度及び/又は昇温速度を調整する、分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析方法に関する。より詳細には、遊離脂肪酸と、脂肪酸エステルとを含む脂質の遊離脂肪酸を構成する脂肪酸、及び脂肪酸エステルを構成する脂肪酸を同時に分析する分析方法に関する
【背景技術】
【0002】
油脂に含有される脂肪酸は、通常、トリアシルグリセロールに代表される脂肪酸エステル、又は遊離脂肪酸の形態で存在する。
食用に供される精製動植物油脂はアシルグリセロールが大半を占め、遊離脂肪酸はわずかに存在するに過ぎないが、特に未精製の動植物油脂には遊離脂肪酸が多く含まれる場合があり、また、水の存在下で加熱されるなど化学的な要因、酵素や微生物の存在など生物学的な要因でアシルグリセロールが加水分解され、遊離脂肪酸が増加する場合もある。
【0003】
ところで、脂肪酸組成を分析する方法としてはガスクロマトグラフィーが使用される。その場合には、脂肪酸の飽和蒸気圧を上げる目的で、ガスクロマトグラフィーによる分析に先立ち、脂肪酸を低級アルキルエステル化する方法が一般的である。例えば特許文献1の実施例には、脂質組成物の脂肪酸をメチルエステル化して得た試料をGC-FID(水素炎イオン化型検出器を用いたガスクロマトグラフィー)により分析したことが開示されている。詳細には、脂質を濃縮乾固し、メタノールと1規定水酸化ナトリウム水溶液を加えて脂肪酸成分をメチルエステルへと変換し、その後、1規定の塩酸により中和した後、クロロホルムにより脂肪酸メチルエステルを抽出し、GC-FIDにより分析している。
【0004】
一方、脂肪酸エステル由来の脂肪酸組成、遊離脂肪酸由来の脂肪酸組成のそれぞれを分析する方法としては、薄層クロマトグラフィーやカラムクロマトグラフィーなどで脂肪酸エステルと遊離脂肪酸を分画した後に、それぞれを低級アルキルエステル化し、それぞれをガスクロマトグラフィー分析に供することで分析を行うのが一般的であった。例えば非特許文献1では、牛肉試料からFolch法で総脂質を抽出し、これをシリカゲルを充てんしたガラスカラムにて、コレステロールエステル画分、トリアシルグリセロール画分、遊離脂肪酸画分を順次溶出させた後、各脂質クラスから三フッ化ホウ素-メタノール法で脂肪酸メチルエステルを調整し、ガスクロマトグラフで脂肪酸組成分析を行っている。
【0005】
非特許文献2では、粗米油中の遊離脂肪酸を触媒縮合により脂肪酸N,N-ジメチルアミドに選択的に誘導化した後に、脂肪酸エステルをアルカリ金属アルコキシドとメタノールで脂肪酸メチルエステルに誘導化し、得られた脂肪酸N,N-ジメチルアミドと脂肪酸メチルエステルを同時にガスクロマトグラフィーにて分析することにより、粗米油中の遊離脂肪酸の脂肪酸組成及び脂肪酸エステル由来の脂肪酸組成それぞれを求めることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】平成23年度 食肉に関する助成研究調査成果報告書(Vol.30)公益財団法人伊藤記念財団:p68-75
【非特許文献2】Journal of American Oil Chemists’Society(2021)98:p.149-155
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示されるような技術は、アルカリ性触媒を用いて低級アルキルエステル化をするものであるため、脂肪酸エステル由来の脂肪酸のみが低級アルキルエステル化され、遊離脂肪酸由来の脂肪酸組成を特定することはできなかった。また一方で、酸触媒を用いて遊離脂肪酸を低級アルキルエステル化する方法も一般的に行われるが、この場合も、遊離脂肪酸由来の脂肪酸組成を特定するためには、脂肪酸エステルと遊離脂肪酸を事前に分離する必要があった。
また、非特許文献1に開示される方法では、操作が煩雑である上に、特に鎖長差のある脂肪酸が混在する組成の場合には脂質クラス間での分画の精度が問題となる。また非特許文献2に開示される方法では、誘導体化を2回に分けて行うため、操作が煩雑であり、それ故、定量値の正確性において改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、脂肪酸エステルと遊離脂肪酸とを含む脂質の脂肪酸分析を同時に行いつつ、分析精度を向上すべく、鋭意検討を行った。その結果、脂肪酸のアルキルエステル化に用いる試薬として特定のアルカリ性触媒及び炭素数1~4のアルコール溶液を用いることで脂肪酸エステル由来の脂肪酸のみを低級アルキルエステル化し、その後、酸により中和して遊離脂肪酸を疎水性溶媒層に回収し、脂肪酸エステル由来の低級アルキルエステル及び遊離脂肪酸を同時にガスクロマトグラフィーにより分離、定量することが有効であるという知見を得、本発明を完成させた。
【0010】
本発明は、以下の遊離脂肪酸と、脂肪酸エステルとを含む脂質を構成する脂肪酸の分析方法を提供する。
【0011】
[1] 遊離脂肪酸(a)と、脂肪酸エステル(b)とを含む脂質の分析方法であって、
前記脂質を疎水性溶媒に溶解し、溶解液を得る溶解工程と、
当該溶解液に、水酸化アルカリ金属物、水酸化アルカリ土類金属物及びアルカリ金属アルコキシドから選ばれる1つ以上のアルカリ性触媒、及び炭素数1~4のアルコール溶液を添加して混合液を調製し、当該混合液を疎水性溶媒層と親水性溶媒層の二層に分離するとともに、前記遊離脂肪酸(a)を脂肪酸アルカリ塩(a’)として当該親水性溶媒層に抽出し、前記脂肪酸エステル(b)を低級アルキルエステル化して脂肪酸低級アルキルエステル(b’)として当該疎水性溶媒層に抽出する第一抽出工程と、
前記混合液に酸性水溶液をさらに添加して、前記脂肪酸アルカリ塩(a’)を中和して遊離脂肪酸(a)として前記疎水性溶媒層に抽出する第二抽出工程と、
前記疎水性溶媒層を採取して、前記遊離脂肪酸(a)及び前記脂肪酸低級アルキルエステル(b’)を含む抽出溶液を得る分離工程と、
前記抽出溶液をガスクロマトグラフィーに供するGC工程と、
を含み、
前記GC工程において、前記遊離脂肪酸(a)を構成する脂肪酸、及び前記脂肪酸エステル(b)を構成する脂肪酸を同時に分析する、分析方法。
[2] [1]に記載の分析方法であって、
前記炭素数1~4のアルコール溶液はメタノール溶液である、分析方法。
[3] [1]又は[2]に記載の分析方法であって、
前記疎水性溶媒は、脂肪族炭化水素溶媒、脂環式炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒、エーテル溶媒、及び有機酸アルキルエステル溶媒からなる群から選択される1種又は2種以上である、分析方法。
[4] [1]乃至[3]いずれか一つに記載の分析方法であって、
前記酸性水溶液は、硫酸、塩酸、硝酸、及びリン酸からなる群から選択される1種又は2種以上を含む水溶液である、分析方法。
[5] [1]乃至[4]いずれか一つに記載の分析方法であって、
前記ガスクロマトグラフィーは、固定相としてニトロテレフタル酸により修飾されたポリエチレングリコールを用いる、分析方法。
[6] [1]乃至[5]いずれか一つに記載の分析方法であって、
前記GC工程において、前記抽出溶液を前記ガスクロマトグラフィーにインジェクションした後に、以下の段階1及び段階2を連続に備える、分析方法。
段階1:カラム温度を上昇する
段階2:段階1で到達した温度を保持する
[7] [6]に記載の分析方法であって、
前記段階1及び段階2の後に、以下の段階3及び段階4を連続に備えることを特徴とする、分析方法。
段階3:前の段階の温度からさらに温度を上昇する
段階4:段階3で到達した温度を保持する
[8] [7]に記載の分析方法であって、
段階3及び段階4を続けて2以上繰り返す、分析方法。
[9] [6]又は[7]に記載の分析方法であって、
前記遊離脂肪酸(a)に由来する成分と、前記脂肪酸エステル(b)に由来する成分とのリテンションタイムの差が0.8分以上となるように、段階1及び/又は段階2のカラム温度及び/又は昇温速度を調整する、分析方法。
[10] [7]又は[8]に記載の分析方法であって、
前記遊離脂肪酸(a)に由来する成分と、前記脂肪酸エステル(b)に由来する成分とのリテンションタイムの差が0.8分以上となるように、段階1~段階4から選ばれる1又は2以上の段階の、カラム温度及び/又は昇温速度を調整する、分析方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、遊離脂肪酸、及び脂肪酸エステルを含む脂質の遊離脂肪酸由来の脂肪酸組成及び、脂肪酸エステル由来の脂肪酸組成を、同時に精度よく分析できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態における分析方法の手順を示すフローチャートである。
【
図2】実施例におけるガスクロマトグラフィー分析結果を示すクロマトグラフである。
【
図3】実施例におけるガスクロマトグラフィー分析結果を示すクロマトグラフである。
【
図4】実施例におけるガスクロマトグラフィー分析結果を示すクロマトグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下のことを表す。例えば、「1~5質量%」とは「1質量%以上5質量%以下」を意味する。また、数値範囲の下限値及び上限値は、それぞれ他の数値範囲の下限値及び上限値と任意に組み合わせられる。
【0015】
本明細書に例示する各成分及び材料は、特に断らない限り、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0016】
本実施形態において「脂質」は遊離脂肪酸(a)と、脂肪酸エステル(b)とを含むものであれば特に限定されないが、具体的には、例えば植物性油脂や動物性油脂、生体から抽出された脂質、乳化剤として用いられるグリセリン脂肪酸エステル類やショ糖脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類等を含む製剤類が挙げられる。植物性油脂や動物性油脂としては、パーム油、ラード、牛脂、乳脂肪、ヤシ油、パーム核油、なたね油、大豆油、コーン油、米油、綿実油、ひまわり油、ごま油、オリーブ油、及び、それらの分別油、水素添加油、エステル交換油などが挙げられ、特に植物性油脂や動物性油脂に好適に用いられる。
【0017】
本実施形態において「脂肪酸」とは、炭素数12以上の長鎖脂肪酸ではパルミチン酸、ステアリン酸等の飽和脂肪酸、パルミトレイン酸、オレイン酸等の一価不飽和脂肪酸、リノール酸、ドコサヘキサエン酸等の多価不飽和脂肪酸、炭素数5~11の中鎖脂肪酸、及び炭素数2~4の短鎖脂肪酸等の鎖状モノカルボン酸のことをいう。これらの脂肪酸はアシルグリセロール等のエステル型として「脂肪酸エステル」を構成したり、遊離型として「遊離脂肪酸」を構成し、脂質に存在することができる。
【0018】
上記の「脂肪酸エステル」は、詳細には、トリアシルグリセロールの他、ジアシルグリセロール、モノアシルグリセロール、ワックスエステル、ステロールエステル、グリセロリン脂質、スフィンゴリン脂質、グリセロ糖脂質、スフィンゴ糖脂質、ポリグリセリン脂肪酸エステル、糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等、脂肪酸のカルボキシル基とグリセリン、高級アルコール、ステロール、スフィンゴイド、ポリグリセリン、糖、ソルビタン等の水酸基が脱水縮合して生じるエステル結合を含む化合物又はそのような化合物を含む組成物のことをいう。
【0019】
上記の「遊離脂肪酸」は、詳細には、遊離型の非エステル化脂肪酸又はその塩のことをいう。
【0020】
図1は、本実施形態の脂質の分析手順を示すフローチャートである。
図1に示すように、本実施形態の遊離脂肪酸(a)と、脂肪酸エステル(b)とを含む脂質を構成する脂肪酸の分析方法は、GC工程において、前記遊離脂肪酸(a)を構成する脂肪酸、及び前記脂肪酸エステル(b)を構成する脂肪酸を同時に分析するものであり、以下の工程を含む。
前記脂質を疎水性溶媒に溶解し、溶解液を得る溶解工程(S1)と、
当該溶解液に、水酸化アルカリ金属物、水酸化アルカリ土類金属物及びアルカリ金属アルコキシドから選ばれる1つ以上のアルカリ性触媒、及び炭素数1~4のアルコール溶液を添加して混合液を調製し、当該混合液を疎水性溶媒層と親水性溶媒層の二層に分離するとともに、前記遊離脂肪酸(a)を脂肪酸アルカリ塩(a’)として当該親水性溶媒層に抽出し、前記脂肪酸エステル(b)を低級アルキルエステル化して脂肪酸低級アルキルエステル(b’)として当該疎水性溶媒層に抽出する第一抽出工程(S2)と、
前記混合液に酸性水溶液をさらに添加して、前記脂肪酸アルカリ塩(a’)を中和して遊離脂肪酸(a)として前記疎水性溶媒層に抽出する第二抽出工程(S3)と、
前記疎水性溶媒層を採取して、前記遊離脂肪酸(a)及び前記脂肪酸低級アルキルエステル(b’)を含む抽出溶液を得る分離工程(S4)と、
前記抽出溶液をガスクロマトグラフィーに供するGC工程(S5)。
これら工程は、大気下で行うことができる。
以下、各工程について詳細な説明を行う。
【0021】
[S1:溶解工程]
試料となる遊離脂肪酸(a)と、脂肪酸エステル(b)とを含む脂質を、疎水性溶媒に溶解し、溶解液を得る。
【0022】
疎水性溶媒に添加する試料の量は特に限定されないが、例えば、疎水性溶媒1mlに対し、試料が2mg~1gとなるように調整されることが好ましい。
【0023】
溶解工程は、例えば、10~80℃の温度で、1~60分行うことがよい。温度及び時間を上記上限値以下とすることで、試料の分解や酸化が促進されること抑制できる。
また、溶解を促進させるため、攪拌装置等を用いてもよい。
【0024】
上記疎水性溶媒は、遊離脂肪酸(a)と、脂肪酸エステル(b)とを溶解できるものであればよい。また、疎水性溶媒は、親水性溶媒と混和せず、混合液を二層に分離できる溶媒であり、後述する疎水性溶媒層となるものである。
【0025】
疎水性溶媒は、脂肪族炭化水素溶媒、脂環式炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒、エーテル溶媒及び有機酸アルキルエステル溶媒からなる群から選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
疎水性溶媒として、具体的には、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、及びデカン等の脂肪族炭化水素溶媒;シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂環式炭化水素溶媒;四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、及び1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒;ベンゼン、トルエン、及びキシレン等の芳香族炭化水素溶媒;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、及びt-ブチルメチルエーテル等のエーテル溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、及びプロピオン酸メチル等の有機酸アルキルエステル溶媒等が挙げられる。
【0026】
[S2:第一抽出工程]
当該溶解液に、水酸化アルカリ金属物、水酸化アルカリ土類金属物及びアルカリ金属アルコキシドから選ばれる1つ以上のアルカリ性触媒、及び炭素数1~4のアルコール溶液を添加して混合液を調製する。これにより、当該混合液を疎水性溶媒層と親水性溶媒層の二層に分離するとともに、前記遊離脂肪酸(a)を脂肪酸アルカリ塩(a’)として当該親水性溶媒層に抽出し、前記脂肪酸エステル(b)を低級アルキルエステル化して脂肪酸低級アルキルエステル(b’)として当該疎水性溶媒層に抽出する。
【0027】
アルカリ性触媒は、溶解液をアルカリ性にすることで、遊離脂肪酸(a)を脂肪酸アルカリ塩(a’)とするとともに、脂肪酸エステル(b)の低級アルキルエステル化を促進させることができる。
アルカリ性触媒としては、具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、及びカリウムエトキシド等が挙げられる。
【0028】
アルカリ性触媒の添加量は、試料1mgあたり、0.000025mmol~0.25mmolが好ましく、0.00025mmol~0.025mmolがより好ましい。上記下限値以上とすることで、十分に低級アルキルエステル化を行えるようになる。また、上記上限値以下とすることで、のちに低級アルキルエステル化を停止するための酸の添加量が過剰になることを抑制できる。
【0029】
炭素数1~4の低級アルコールは、親水性溶媒層を形成するものであり、試料中の脂質等を溶解する溶媒となるとともに、低級アルキルエステル化のためのアルキル基の供与体となる。
炭素数1~4のアルコール溶液としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール及びブタノールの中から選ばれる1種又は2種以上が挙げられ、中でもメタノールが好ましい。
炭素数1~4の低級アルコールの添加量は、特に限定されず、試料に対して過剰量とすればよい。
【0030】
第一抽出工程は、例えば、10~80℃の温度で、1秒~30分行うことがよい。温度及び時間を上記上限値以下とすることで、試料の分解や酸化が促進されること抑制できる。
【0031】
また、第一抽出工程において、加水分解が生じることを抑制するため水が含まれないようにすることが好適である。例えば、炭素数1~4の低級アルコールは、蒸留して精製したものを用いてもよく、モレキュラーシーブを加える等して乾燥させることが好ましい。
【0032】
[S3:第二抽出工程]
混合液に酸性水溶液をさらに添加して、前記脂肪酸アルカリ塩(a’)を中和して遊離脂肪酸(a)として前記疎水性溶媒層に抽出する。すなわち、酸性水溶液が親水性溶媒層中に溶け込み、親水性溶媒中の脂肪酸アルカリ塩(a’)に作用し、これを中和して、遊離脂肪酸(a)とするとともに、遊離脂肪酸(a)は親水性溶媒層から疎水性溶媒層へ移動する。その結果、遊離脂肪酸(a)と脂肪酸低級アルキルエステル(b’)を含む疎水性溶媒層が得られる。また、酸性水溶液により、混合液を酸性にして、低級アルキルエステル化を停止させることができる。
【0033】
混合液に添加する酸性水溶液の量は特に限定されないが、例えば、試料1mgに対し、酸性水溶液の酸が0.003mmol~6mmolとなるように調整されることが好ましく、0.03mmol~0.6mmolとなるように調整されることがより好ましい。酸性水溶液の添加後の溶液が、酸性となるように調整されることが好ましい。
【0034】
第二抽出工程は、例えば、10~80℃の温度で、30秒~30分行うことがよい。温度及び時間を上記上限値以下とすることで、試料の分解や酸化が促進されることを抑制できる。
【0035】
酸性水溶液は、硫酸、塩酸、硝酸、及びリン酸からなる群から選択される1種又は2種以上を含む水溶液であることが好ましく、なかでも、硫酸、塩酸がより好ましい。
また、酸性水溶液の酸の濃度は、0.01M~15Mであることが好ましく、0.1M~10Mであることがより好ましく、0.3M~6Mであることがさらに好ましい。
【0036】
[S4:分離工程]
疎水性溶媒層を採取して、前記遊離脂肪酸(a)及び前記脂肪酸低級アルキルエステル(b’)を含む抽出溶液を得る。
採取の方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、疎水性溶媒をさらに加えて採取する方法や、採取後、さらに疎水性溶媒を加えて再抽出して抽出用液を得て採取してもよい。また、分離のために遠心分離機を用いてもよい。
【0037】
[S5:GC工程]
抽出溶液をガスクロマトグラフィーに供する。また、抽出溶液中の試料濃度や、ガスクロマトグラフィーにおける目的成分の検出限界に応じて、抽出溶液を希釈したのちにガスクロマトグラフィーに供してもよいし、抽出溶液を濃縮した後にガスクロマトグラフィーに供してもよいし、濃縮、希釈の工程を組み合わせてもよい。ガスクロマトグラフィーに供する抽出溶液中の試料濃度としては、10mg/ml~1g/mlとなるように調整するのが好ましい。
遊離脂肪酸(a)と脂肪酸低級アルキルエステル(b’)とでは、飽和蒸気圧等の物性の違いにより保持時間が異なるため、ガスクロマトグラフィーに供することで、脂肪酸部分の構造が同じであっても、脂肪酸の由来が遊離脂肪酸(a)であるのか、脂肪酸エステル(b)であるのかを識別できる。
【0038】
ガスクロマトグラフィーは、固定相としてニトロテレフタル酸により修飾されたポリエチレングリコールを用いることが好ましい。
従来、遊離脂肪酸を誘導体化せずに脂肪酸組成分析を行う方法として、固定相としてポリエチレングリコールを用いたガスクロマトグラフィーを用いた技術が知られていた。しかしながら、この場合、膜厚を1μm程度にすることにより、遊離脂肪酸を定量することが可能であるが、定量が可能であるのは鎖長の短い脂肪酸に限られ、鎖長の長い脂肪酸は液膜に強く保持されるため定量性が得られないという問題があった。一方で膜厚を薄くすると、遊離脂肪酸ピークのテーリングが起こり、定量性が得られない傾向があった。
これに対し、本実施形態の分析方法においては、固定相としてニトロテレフタル酸により修飾されたポリエチレングリコールを用いることができる。その結果、短鎖から長鎖まで広い鎖長の脂肪酸を定量することができる。
【0039】
本実施形態のガスクロマトグラフィーにおいて、ニトロテレフタル酸により修飾されたポリエチレングリコールを固定相とするカラムは、たとえば、内径0.25~0.53mm、長さ50mm~150mm、固定相の膜厚0.25~0.5μmとしてもよい。キャリアガスはヘリウム、窒素、水素、アルゴンなどを用いることができるが、ヘリウム、窒素が好ましく、中でもヘリウムを用いることがより好ましい。
キャリアガスの線速度は、カラムの内径に応じで適宜設定されるが、好ましくは15~120cm/秒、より好ましくは30~100cm/秒である。線速度が好ましい範囲よりも小さいとカラム効率が小さくなると同時に分析時間が長くかかる。線速度が大きい場合には分析時間が短くなるメリットがあるが、好ましい範囲よりも大きい場合にはカラム効率が小さくなることがある。
【0040】
本実施形態のGC工程において、前記抽出溶液を前記ガスクロマトグラフィーにインジェクションした後に、カラムの温度を以下の段階を連続して行うことが好ましい。
段階1:インジェクション後にカラム温度を上昇する
段階2:段階1で到達した温度を保持する
段階3:段階2の温度からさらに温度を上昇する
段階4:段階3で到達した温度を保持する
段階5:段階4の温度からさらに温度を上昇する
段階6:段階5で到達した温度を保持する
以下、各段階の詳細について説明する。
【0041】
(段階1)
段階1において、カラム温度を、好ましくは40~130℃、より好ましくは60~120℃、さらに好ましくは80~110℃とする。
【0042】
(段階2)
段階2において、保持時間は、好ましくは5~30分間、より好ましくは10~20分間である。段階2は、段階1で上昇した温度が下がらないよう段階1のあと連続して行われる。
【0043】
(段階3)
段階3において、カラム温度を、好ましくは130~180℃、より好ましくは140~160℃とする。また、昇温速度は0.1~7℃/分であることが好ましく、0.5~5℃/分であることがより好ましく、1~3℃/分であることがさらに好ましい。
段階3は、段階2で保持された温度が下がらないよう段階2のあと連続して行われる。また、段階3、段階4が繰り返し行われる場合も同様に、前の段階で上昇し、保持された温度が下がらないよう連続して行われる。
【0044】
(段階4)
段階4において、保持時間は、好ましくは30~90分間、より好ましくは50~70分間である。
段階4は、段階3で上昇した温度が下がらないよう段階3のあと連続して行われる。
【0045】
(段階5)
段階5は、段階3と同様に、前の段階4で上昇した温度が下がらないよう段階4のあと連続して行われる。また、段階5は、段階3と昇温速度を同じにしてもよく異なるものとしてもよい。
段階5において、カラム温度を、好ましくは180~260℃、より好ましくは200~250℃、さらに好ましくは210~240℃とする。また、昇温速度は0.1~7℃/分であることが好ましく、0.3~5℃/分であることがより好ましく、0.5~3℃/分であることがさらに好ましい。
【0046】
(段階6)
段階6は、段階4と同様に、前の段階5で上昇した温度が下がらないよう段階5のあと連続して行われる。
段階6において、保持時間は、好ましくは40~120分間、より好ましくは50~100分間、さらに好ましくは60~80分間である。
【0047】
また、本実施形態のGC工程は、遊離脂肪酸(a)に由来する成分と、脂肪酸エステル(b)に由来する成分とのリテンションタイムの差が0.8分以上となるように、段階1~段階6から選ばれる1又は2以上の段階の、カラム温度及び/又は昇温速度を調整し、昇温速度を調整してもよい。
リテンションタイムの差を0.8分以上とすることで精度よく分析を行うことができる。一方、リテンションタイムの差の上限は特に限定されないが、効率よく分析を行う点から、10分以下であることが好ましい。
【0048】
以上のような手順により、脂肪酸組成を分析することができる。脂肪酸組成を分析することにより、例えば、食品原材料の品質管理や製造管理を効果的に行うことができる。
本発明の分析方法は、植物性油脂や動物性油脂が化学的・生物学的に加水分解されたものにも好適に適用される。中でも、脂肪酸エステルとして、アシルグリセロール(トリアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、モノアシルグリセロール)を主に含有する脂質に対して、好適に用いることができる。特に、炭素数4から炭素数22の遊離脂肪酸及び脂肪酸エステル由来の脂肪酸低級アルキルエステルを分離、定量することができる。
【0049】
なお、本実施形態では、段階3および段階4を繰り返し、段階4のあとに、さらに段階5および段階6を行う例を挙げて説明したが、本実施形態のGC工程はこれに限られない。例えば、段階3および段階4を3以上繰り返してもよい。
【0050】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0051】
次に、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限られるものではない。
【0052】
・実施例1
以下の手順で、試料の分析を行った。
<試料の準備>
キャノーラサラダ油(日清オイリオ社製)約100mgを試験管に秤量した。
<S1:溶解工程>
秤量した試料に0.5mlのn-ヘキサンを加えて溶解し、試料溶解液を得た。
<S2:第一抽出工程>
試料溶解液に0.5Mの水酸化ナトリウムメタノール溶液を0.5ml加え、室温で30秒撹拌し、混合液を得た。
<S3:第二抽出工程>
混合液に3Mの硫酸水溶液を1ml加え、室温で30秒撹拌した。
<S4:分離工程>
混合液に酢酸エチル1mlを加え、上層(疎水性溶媒層)をパスツールピペットで分離した。残った残渣にさらに酢酸エチル1mlを加え、同様に上層を分離し、先に分離して得られた上記の疎水性溶媒層と合わせた。さらに、残った残渣に酢酸エチル1mlを加え、同様に上層を分離し、先に分離して得られた上記の疎水性溶媒層と合わせた。
【0053】
<S5:GC工程>
(標準品クロロホルム溶液)
表1に示す脂肪酸をすべて溶解し、それぞれの濃度を約20mg/mlとする脂肪酸標準品クロロホルム溶液、及び同じく表1に示す脂肪酸メチルエステルをすべて溶解し、それぞれの濃度を20mg/mlとする脂肪酸メチルエステル標準品クロロホルム溶液を用意した。脂肪酸標準品クロロホルム溶液及び脂肪酸メチルエステル標準品クロロホルム溶液を等量ずつ混合し、脂肪酸及び脂肪酸メチルエステル標準品クロロホルム溶液を用意して、以下の測定条件1で、ガスクロマトグラフィーにより試験を行い、各脂肪酸及び脂肪酸メチルエステルが分離することを確認した。各脂肪酸及び脂肪酸メチルエステルのリテンションタイムを表2に示した。
【0054】
【0055】
[測定条件1]
GC-FID
機器 :「8866GC System」Agilent社製
カラム :Inert Cap FFAP (内径0.25mm 長さ30m 膜厚0.25μm)
カラム温度 :100℃(15分保持)→ 昇温2℃/分→150℃(60分保持)→昇温1℃/分→230℃(70分保持)
気化室温度 :100℃
キャリアガス :ヘリウム
流量 :2.5mL/分
スプリット比 :50:1
検出器 :FID
検出器温度 :230℃
試料注入量 :1μL
【0056】
【0057】
(検量線の作成)
上記の脂肪酸標準品クロロホルム溶液にクロロホルムを加えることにより希釈し、各脂肪酸の濃度が約0.010~20mg/mlである脂肪酸標準品クロロホルム溶液を作製し、これらを上記測定条件1で、ガスクロマトグラフィーにより試験を行い、検量線を得た。
【0058】
(キャノーラサラダ油)
S4分離工程で得られた抽出溶液について、溶媒を窒素気流下で留去し、試料を乾固させたのち、クロロホルムに溶解し1mlに定容した。これを注入用試料とし、上記の測定条件1で、ガスクロマトグラフィーにより試験を行い、クロマトグラムを得た(
図2に示す)。特定された脂肪酸について上記の検量線により定量した結果を表3に示した。なお、C4~C14は定量限界値未満であった。
【0059】
【0060】
本実施例は、遊離脂肪酸の定量を目的としたものである。キャノーラサラダ油中の脂肪酸エステルに由来する脂肪酸と比べて遊離脂肪酸の量が少ないため、インジェクション量を多くしており、脂肪酸メチルエステルの定量を行わなかった。
【0061】
・実施例2
以下の手順で、試料の分析を行った。
<試料の準備>
水75mlにリパーゼMY-30(名糖産業社製)0.5gを加えて攪拌し、酵素液を作製した。キャノーラサラダ油(日清オイリオ社製)30gを三角フラスコに入れ、上記酵素液を加えて、往復形式振とう器で40℃、150rpmの条件で一晩撹拌し、酸価81のキャノーラサラダ油加水分解物を得た。
上記加水分解物を100mg秤量し、実施例1同様にS1~S4工程を経て抽出液を得た。
【0062】
<S5:GC工程>
実施例1同様に脂肪酸及び脂肪酸メチルエステル標準品クロロホルム溶液を用意し、以下の測定条件2で、ガスクロマトグラフィーにより試験を行い、各脂肪酸及び脂肪酸メチルエステルが分離することを確認した(
図3に示す)。各脂肪酸及び脂肪酸メチルエステルのリテンションタイムを表4に示した。
【0063】
[測定条件2]
GC-FID
機器 :「8866GC System」Agilent社製
カラム :Inert Cap FFAP (内径0.25mm 長さ30m 膜厚0.25μm)
カラム温度、流量:80℃、流量1mL/分(3分保持)→ 昇温50℃/分、以降流量2.5mL/分→100℃(11.6分保持)→昇温2℃/分→150℃(60分保持)→昇温1℃/分→230℃(70分保持)
気化室温度 :100℃
キャリアガス :ヘリウム
スプリット比 :50:1
検出器 :FID
検出器温度 :230℃
試料注入量 :1μL
【0064】
【0065】
(検量線の作成)
上記の脂肪酸標準品クロロホルム溶液にクロロホルムを加えることにより希釈し、各脂肪酸の濃度が約0.010~20mg/mlである脂肪酸標準品クロロホルム溶液を作製し、これらを上記測定条件2で、ガスクロマトグラフィーにより試験を行い、検量線を得た。同様に脂肪酸メチルエステル標準品クロロホルム溶液にクロロホルムを加えることにより希釈し、各脂肪酸メチルエステルの濃度が約0.010~20mg/mlである脂肪酸メチルエステル標準品クロロホルム溶液を作製し、脂肪酸同様に検量線を作製した。
【0066】
(キャノーラサラダ油加水分解物)
S4分離工程で得られた抽出溶液について、溶媒を窒素気流下で留去し、試料を乾固させたのち、クロロホルムに溶解し1mlに定容した。これを注入用試料とし、上記の測定条件2で、ガスクロマトグラフィーにより試験を行い、クロマトグラムを得た(
図4に示す)。特定された脂肪酸及び脂肪酸メチルエステルについて上記の検量線により定量した結果を表5に示した。なお、C4~C14の遊離脂肪酸及び脂肪酸メチルエステル、並びにC22及びC22:1の遊離脂肪酸については、検出限界値未満、又は定量限界値未満であった。
【0067】