(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093716
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】自律移動体の制御システム、制御方法及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G05D 1/43 20240101AFI20240702BHJP
【FI】
G05D1/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210264
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹中 健二
(72)【発明者】
【氏名】廣上 達也
(72)【発明者】
【氏名】原 純哉
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA02
5H301BB05
5H301DD01
5H301DD07
5H301DD17
5H301GG07
5H301GG08
5H301GG09
5H301GG14
5H301GG28
5H301GG29
(57)【要約】
【課題】自律移動体が適切な音又は光を出力できるようにする。
【解決手段】自律移動体の制御システムは、処理回路を備える。前記処理回路は、前記自律移動体の位置情報を取得することと、現在時刻を取得することと、前記位置情報及び前記現在時刻に基づいて、前記自律移動体の出力器に出力させるべき音又は光の特性を決定することと、前記決定された特性にて、前記出力器に前記音又は前記光を出力させることと、を行うように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音又は光を外界に出力する出力器を備える自律移動体、を制御するシステムであって、
処理回路を備え、前記処理回路は、
前記自律移動体の位置情報を取得することと、
現在時刻を取得することと、
前記位置情報及び前記現在時刻に基づいて、前記出力器に出力させるべき前記音又は前記光の特性を決定することと、
前記決定された特性にて、前記出力器に前記音又は前記光を出力させることと、を行うように構成されている、自律移動体の制御システム。
【請求項2】
前記処理回路は、前記自律移動体の周囲における人間の混雑度を示す混雑関連値を取得するように構成されており、
前記特性を決定することは、前記混雑関連値に基づいて前記特性を決定することを含む、請求項1に記載の自律移動体の制御システム。
【請求項3】
前記処理回路は、イベント発生情報を取得するように構成されており、
前記特性を決定することは、前記イベント発生情報に基づいて前記特性を決定することを含む、請求項1又は2に記載の自律移動体の制御システム。
【請求項4】
前記位置情報を取得することは、病院における前記自律移動体の位置情報を取得することを含み、
前記イベント発生情報は、前記病院における救急搬入の発生を示す情報を含み、
前記特性を決定することは、前記イベント発生情報を取得したときに、前記位置情報が示す位置が少なくとも救急エリアに入ると、前記音又は前記光の刺激度を減少させるように前記特性を決定することを含む、請求項3に記載の自律移動体の制御システム。
【請求項5】
前記位置情報を取得することは、病院内における前記自律移動体の位置情報を取得することを含み、
前記特性を決定することは、前記位置情報が示す位置が前記病院の外来診療部門の存在するエリアに入ったときに、前記音又は前記光の刺激度を増加させるように前記特性を決定することを含む、請求項1又は2に記載の自律移動体の制御システム。
【請求項6】
前記特性を決定することは、複数のエリア及び複数の時間帯に夫々対応して前記音又は前記光の特性を定義する少なくとも1つのマップに従って、前記位置情報が示す位置の属するエリア及び前記現在時刻の属する時間帯に対応する前記特性を決定することを含む、請求項1に記載の自律移動体の制御システム。
【請求項7】
前記処理回路は、前記自律移動体の周囲における人間の混雑度を示す混雑関連値を取得するように構成されており、
前記特性を決定することは、前記位置情報が示す位置の属するエリア及び前記現在時刻の属する時間帯に対応する特性を前記マップから取得し、その取得された特性を前記混雑関連値に基づいて補正することを含む、請求項6に記載の自律移動体の制御システム。
【請求項8】
音又は光を外界に出力する出力器を備える自律移動体、を制御する方法であって、
前記自律移動体の位置情報を取得することと、
現在時刻を取得することと、
前記位置情報及び前記現在時刻に基づいて、前記出力器に出力させるべき前記音又は前記光の特性を決定することと、
前記決定された特性にて、前記出力器に前記音又は前記光を出力させることと、を含む、自律移動体の制御方法。
【請求項9】
請求項8に記載された制御方法を少なくとも1つのプロセッサに実行させる、自律移動体の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自律移動体の制御システム、制御方法及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、入力された目的地まで障害物の検出及び回避動作を行いながら自律移動する自律移動体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自律移動体は、周囲の人間に知らせるために外界に音を出力できるものがある。しかし、自律移動体が走行する場所によって、周囲の人間にとって、音が煩わしいと感じられる場合や音が十分に認識されない場合がある。また、自律移動体が外界に光を出力する場合にも同様に、自律移動体が走行する場所によって、周囲の人間にとって、光が煩わしいと感じられる場合や光が十分に認識されない場合がある。
【0005】
そこで本開示の一態様は、自律移動体が適切な音又は光を出力できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る自律移動体の制御システムは、音又は光を外界に出力する出力器を備える自律移動体、を制御するシステムであって、処理回路を備える。前記処理回路は、前記自律移動体の位置情報を取得することと、現在時刻を取得することと、前記位置情報及び前記現在時刻に基づいて、前記出力器に出力させるべき前記音又は前記光の特性を決定することと、前記決定された特性にて、前記出力器に前記音又は前記光を出力させることと、を行うように構成されている。
【0007】
本開示の一態様に係る自律移動体の制御方法は、音又は光を外界に出力する出力器を備える自律移動体、を制御する方法であって、前記自律移動体の位置情報を取得することと、現在時刻を取得することと、前記位置情報及び前記現在時刻に基づいて、前記出力器に出力させるべき前記音又は前記光の特性を決定することと、前記決定された特性にて、前記出力器に前記音又は前記光を出力させることと、を含む。
【0008】
本開示の一態様に係る自律移動体の制御プログラムは、前記制御方法を少なくとも1つのプロセッサに実行させる。前記制御プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶され得る。前記記憶媒体は、非一時的(non-transitory)で有形(tangible)な媒体である。前記記憶媒体は、コンピュータ(例えば、携帯情報端末、パーソナルコンピュータ、サーバ等)に内蔵又は外付けされ得る。前記記憶媒体は、RAM、ROM、EEPROM、ストレージ等を含み、例えば、ハードディスク、フラッシュメモリ、光ディスク等とし得る。前記記憶媒体に記憶された制御プログラムは、前記記憶媒体が直接接続されるコンピュータにおいて実行されてもよいし、前記記憶媒体とネットワーク(例えば、インターネット)を介して接続されたコンピュータにおいて実行されてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様によれば、自律移動体が自律走行する場所及び時刻に応じて、出力器から出力される音又は光の特性が自動的に変わる。よって、自律移動体が走行する場所及び時刻に適した特性で音又は光を外界に出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態に係る自律移動体の制御システムの全体図である。
【
図4】
図4は、
図3のサーバの制御プログラムが参照する音量基本マップである。
【
図5】
図5は、
図3のサーバの制御プログラムが参照する音量補正マップである。
【
図6】
図6は、
図1の制御システムの処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0012】
図1は、実施形態に係る自律移動体の制御システム1の全体図である。
図1に示すように、制御システム1は、自律移動体2と、自律移動体2にネットワーク4を介して通信可能なサーバ3と、を備える。ネットワーク4は、例えば、インターネットとし得るが、イントラネット等であってもよい。自律移動体2は、例えば、病院内の各フロアを自律移動する。自律移動体2は、複数の車輪11、ボディ12、キャリア13、タッチパネルディスプレイ14、三次元測距アッセンブリ15等を備える。
【0013】
車輪11は、駆動輪であり操舵可能に構成されている。ボディ12は、車輪11に支持されている。ボディ12には、キャリア13が設けられている。キャリア13には、例えば、病院内を移動する物資が積載される。当該物資は、例えば、血液、尿、組織等のような検体でもよいし、点滴袋、包袋、ガーゼ、薬剤等のような治療用品でもよいし、カルテ等のような書類でもよい。
【0014】
ボディ12には、タッチパネルディスプレイ14が設けられている。タッチパネルディスプレイ14は、ユーザインターフェースの一例である。即ち、タッチパネルディスプレイ14は、ユーザ入力インターフェース及びユーザ出力インターフェースを兼ねる。なお、ユーザ入力インターフェースとしてキーボード、マウス等が用いられてもよく、ユーザ出力インターフェースとして非タッチパネル式のディスプレイが用いられてもよい。
【0015】
ボディ12の上部には、自律移動体2の周囲を三次元的に測距する測距センサ17が設けられている。測距センサ17は、例えば、LIDAR(Light Detection and Ranging)センサを含む。測距センサ17は、自律移動体2を基準として水平方向の全方位を測距し得る。例えば、測距センサ17は、前方に向いたLIDARセンサ、後方に向いたLIDARセンサ、左方に向いたLIDARセンサ、及び、右方に向いたLIDARセンサを含んでもよい。測距センサ17は、上方に向いたLIDARセンサを更に含んでもよい。
【0016】
図2は、
図1の自律移動体2のブロック図である。
図2に示すように、自律移動体2は、処理回路20を備える。処理回路20は、プロセッサ21、システムメモリ22及びストレージメモリ23を含む。プロセッサ21は、CPU(中央演算処理装置)を含み得る。システムメモリ22は、RAMを含み得る。ストレージメモリ23は、ハードディスク、フラッシュメモリ又はその組合せを含み得る。ストレージメモリ23は、制御プログラムP1を記憶している。ストレージメモリ23からシステムメモリ22に読み出された制御プログラムP1をプロセッサ21が実行する構成は、処理回路の一例である。
【0017】
自律移動体2は、測距センサ17、速度センサ24、操舵角センサ25、カメラ26、マイク27、タッチパネルディスプレイ14、スピーカ28、ライト29、走行アクチュエータ30、操舵アクチュエータ31、制動アクチュエータ32、及び、通信機33を備える。
【0018】
測距センサ17は、前述したように自律移動体2の周囲を三次元的に測距することで、自律移動体2の周囲の形状を三次元的に検出することができる。その検出された周囲の形状を、後述するエリアマップMの形状とマッチングさせることで、エリアマップM上における自律移動体2の位置が特定される。即ち、測距センサ17による検出形状をエリアマップMにマッチングさせるソフトウェアと測距センサ17との組合せによって、測位センサが実現されている。
【0019】
なお、自律移動体2の位置情報を取得するための手段として、測距センサ17の代わりに他の測位センサが用いられてもよい。例えば、測位センサは、衛星測位センサでもよい。測位センサは、地上に設置された複数のロケータと電波、音波、光又は磁気により無線通信して位置座標を取得するものでもよい。当該ロケータを用いた測位原理としては、例えば、AOA(Angle Of Arrival)方式、RSSI(Received Signal Strength Indicator)方式、TOA(Time Of Arrival)方式、又は、TDOA(Time Difference Of Arrival)方式を用い得る。
【0020】
速度センサ24は、自律移動体2の走行速度を検出する。速度センサ24は、例えば、車輪11の回転数を検出する。操舵角センサ25は、車輪11の操舵角を検出する。カメラ26は、自律移動体2の周囲を撮影する。カメラ26は、自律移動体2の周囲を撮影するために複数台のカメラであってもよいし、1台の360度カメラであってもよい。マイク27は、自律移動体2の周囲の音を収集する。
【0021】
タッチパネルディスプレイ14は、前述したようにユーザ入力インターフェース及びユーザ出力インターフェースを兼ねる。スピーカ28は、自律移動体2の周囲に音を出力する。即ち、スピーカ28は、音を外界に出力する出力器の例である。ライト29は、自律移動体2の周囲に光を出力する。即ち、ライト29は、光を外界に出力する出力器の例である。
【0022】
走行アクチュエータ30は、車輪11を回転するように駆動する駆動源であり、例えば、電気モータである。操舵アクチュエータ31は、車輪11を操舵するように駆動する駆動源であり、例えば、電気モータである。制動アクチュエータ32は、車輪11を制動するブレーキを駆動する駆動源であり、例えば、電気モータである。通信機33は、ネットワーク4に無線接続する通信インターフェースである。
【0023】
ストレージメモリ23からシステムメモリ22に読み出された制御プログラムP1を実行するプロセッサ21は、測距センサ17、速度センサ24、操舵角センサ25、カメラ26、マイク27、タッチパネルディスプレイ14及び通信機33の少なくとも1つから入力される情報に基づいて、タッチパネルディスプレイ14、スピーカ28、ライト29、走行アクチュエータ30、操舵アクチュエータ31及び制動アクチュエータ32の少なくとも1つを制御する。
【0024】
図3は、
図1のサーバ3のブロック図である。
図3に示すように、サーバ3は、処理回路40及び通信機44を備える。処理回路40は、プロセッサ41、システムメモリ42及びストレージメモリ43を含む。通信機44は、ネットワーク4に有線又は無線で接続する通信インターフェースである。プロセッサ41は、CPU(中央演算処理装置)を含み得る。システムメモリ42は、RAMを含み得る。ストレージメモリ43は、ハードディスク、フラッシュメモリ又はその組合せを含み得る。ストレージメモリ43は、制御プログラムP2を記憶している。ストレージメモリ43からシステムメモリ42に読み出された制御プログラムP2をプロセッサ41が実行する構成は、処理回路の一例である。
【0025】
ストレージメモリ43は、エリアマップMを予め記憶している。エリアマップMは、自律移動体2が走行可能なエリアの形状を特定している。例えば、エリアマップMは、病院内の各フロアの形状を特定している。具体的には、エリアマップMは、各エリアにおいて自律移動体2が走行可能な領域の輪郭形状を特定している。ストレージメモリ43は、音量基本マップS1及び音量補正マップS2を予め記憶している。
【0026】
図4は、
図3のサーバ3の制御プログラムP2が参照する音量基本マップS1である。
図4に示すように、音量基本マップS1は、自律移動体2のスピーカ28が出力する音の音量レベルを定義している。音量は、スピーカ28に出力させるべき音の特性の一例である。なお、音量基本マップS1の音量レベルの数字は、値が大きくなると音量が大きくなることを意味している。
【0027】
音量基本マップS1は、区分けされた各エリア及び区分けされた各時間帯に対応する音量レベルを定義している。一例として、区分けされた各エリアは、それぞれ病院の各フロア(例えば、1F~5F)に対応している。一例として、区分けされた各時間帯は、24時間を3時間ごとに分割されたものである。音量基本マップS1は、低層階フロアの方が高層階フロアよりも音量レベルが高くなる傾向で、日中の方が夜間よりも音量レベルが高くなる傾向に設定されている。
【0028】
1Fフロアは、病院における待合室及び診察室前の廊下を含む外来診療部門が存在するエリアである。例えば、自律移動体2が9~12時の時間帯に2Fフロアから1Fフロアに移動した場合には、スピーカ28の音量レベルが「3」から「5」に増加するように決定される。これにより、病院内において多数の人間が行き交う外来診療部門のあるフロアで自律移動体2の存在を周囲に適切に知らせることができる。
【0029】
図5は、
図3のサーバ3の制御プログラムP2が参照する音量補正マップS2である。
図5に示すように、音量補正マップS2は、音量基本マップS1によって決まる音量レベルを補正するための補正係数を定義している。音量基本マップS1によって決まる音量レベルに音量補正マップS2によって決まる補正係数が乗算されることで、最終的な音量レベルが決定される。
【0030】
音量補正マップS2は、自律移動体2の周囲における人間の混雑度に応じて補正係数を定義している。音量補正マップS2は、混雑度が高いほど音量が大きくなり、混雑度が低いほど音量が小さくなるように設定されている。例えば、病院の1Fを9~12時の時間帯に自律移動体2が走行するときに混雑度が「4」である場合は、音量基本マップS1から取得される音量レベル「5」に補正係数「0.8」を乗算することで、スピーカ28の音量レベルが「4」に決定される。
【0031】
図6は、
図1の制御システム1の処理を説明するフローチャートである。以下、
図1~5の構成を適宜参照しながら
図6のフローに沿って説明する。自律移動体2の処理は処理回路20により実行され、サーバ3の処理は処理回路40により実行される。自律移動体2は、サーバ3とネットワーク4を介して通信しながら動作する。サーバ3は、自律移動体2の目的地を決定する(ステップS1)。目的地は、予め制御プログラムP2に入力されていてもよい。目的地は、外部から通信機44を介してサーバ3に入力されてもよい。タッチパネルディスプレイ14を介してユーザから自律移動体2に入力された目的地がネットワーク4を介してサーバ3に入力されてもよい。
【0032】
サーバ3は、自律移動体2の位置情報を取得する(ステップS2)。サーバ3は、測距センサ17によって検出された自律移動体2の周囲の形状をエリアマップMの形状とマッチングさせることで、エリアマップM上における自律移動体2の位置を特定する。
【0033】
なお、サーバ3は、衛星測位システムを利用して衛星測位センサを備えた自律移動体2の位置情報を取得してもよい。サーバ3は、病院内に設置された複数のロケータと自律移動体2が無線通信して得られる位置座標を、ネットワーク4を介して取得してもよい。サーバ3は、速度センサ24が検出する車輪11の回転数に車輪11の外周長を乗算して得られる自律移動体2の移動量と、操舵角センサ25が検出する操舵角によって得られる自律移動体2の移動方向とによって、自律移動体2の位置を特定してもよい。また、前述した種々の位置特定方法を互いに組み合わせて位置精度を高めてもよい。
【0034】
サーバ3は、現在時刻を取得する(ステップS3)。サーバ3は、自己が有する時計から現在時刻を取得してもよいし、ネットワーク4を介して外部から現在時刻を取得してもよい。
【0035】
サーバ3は、自律移動体2の周囲における人間の混雑度を算出する(ステップS4)。混雑度の算出には種々の方法が考えられる。例えば、サーバ3は、自律移動体2のカメラ26が撮影した映像を画像処理して人間を特定し、自律移動体2の周囲の人間の数を混雑関連値とし、その混雑関連値に所定の係数を掛けたものを混雑度として求めてもよい。なお、混雑関連値は、そのまま混雑度として利用されてもよい。混雑関連値と混雑度とを必ずしも区別しなくてもよいことは、後述の他の例でも同様である。
【0036】
サーバ3は、病院の各フロアに設置された監視カメラが撮影した映像をリアルタイムでネットワーク4から取得し、その取得した映像を画像処理して人間を特定し、自律移動体2の周囲の人間の数を混雑関連値とし、その混雑関連値に所定の係数を掛けたものを混雑度として求めてもよい。サーバ3は、自律移動体2の測距センサ17による検出形状とエリアマップMが示す対応する形状との間の相違部分を特定し、その相違部分の形状から自律移動体2の周囲の人間の数を混雑関連値として推定し、その混雑関連値に所定の係数を掛けたものを混雑度として求めてもよい。
【0037】
サーバ3は、自律移動体2のマイク27から得られる雑音量を混雑関連値とし、その混雑関連値に所定の係数を掛けたものを混雑度として求めてもよい。サーバ3は、自律移動体2に搭載されたCO2センサで検出されるCO2量を混雑関連値とし、その混雑関連値に所定の係数を掛けたものを混雑度として求めてもよい。
【0038】
サーバ3は、音量基本マップS1及び音量補正マップS2を参照し、ステップS2~S4で得られた情報に基づいて、自律移動体2のスピーカ28に設定される音量レベルを決定する(ステップS5)。具体的には、サーバ3は、ステップS2で取得した自律移動体2の位置情報が示す位置が属するエリアと、ステップS3で取得した現在時刻が属する時間帯と、に対応する音量レベルを音量基本マップS1から取得する。
【0039】
サーバ3は、ステップS4で算出した混雑度に対応する補正係数を音量補正マップS2から取得する。そして、サーバ3は、音量基本マップS1から取得した音量レベルに補正マップS2から取得した補正係数を乗算して得られる値をスピーカ28に設定する音量レベルとして決定する。
【0040】
なお、補正係数は、混雑度に応じて段階的に決められる代わりに、混雑度に応じて連続的又は比例的に決められてもよい。また、音量補正マップS2を用いずに、エリア、時間帯及び混雑度に応じて音量が定義された3次元マップが用いられてもよい。エリアに応じて音量が定義されたマップを、時間帯に応じて補正係数が定義されたマップを使って補正してもよい。音量決定のためにマップを用いずに、エリア、時間帯及び混雑度に応じて音量が定義された数式が用いられてもよい。即ち、スピーカ28が出力する音の特性(例えば、音量)は、エリア、時間帯及び混雑度に夫々対応して音の特性を定義する所定の規則に従って決定されればよい。また、スピーカ28が出力する音の特性(例えば、音量)の決定のために、混雑度は用いられなくてもよい。その場合、ステップS4は省略し得る。
【0041】
自律移動体2は、サーバ3から目的地に向けた自律走行の指示を受け、自律走行を行う(ステップS6)。自律移動体2は、サーバ3からエリアマップMを取得し、サーバ3から取得した自律移動体2の位置をエリアマップM上で認識して目的地までの経路を特定し、当該経路に従って走行する。なお、自律移動体2が走行する経路及び目的地は、予め決められていてもよい。
【0042】
自律移動体2は、自律走行中にはスピーカ28から所定の音を外界に出力する。自律移動体2の周囲にいる人は、この音によって自律移動体2の存在を知ることができる。この際、スピーカ28は、ステップS5で決定された音量レベルに従った音量で音を出力する。このような構成によって、自律移動体2が自律走行する場所及び時刻に応じて、スピーカ28から出力される音の音量が自動的に変わる。よって、自律移動体2が走行する場所及び時刻に適した音量で音を外界に出力することができる。また、自律移動体2の周囲における人間の混雑度に応じた適切な音量にて音を外界に出力することができる。
【0043】
なお、前述したステップS2~S4の順番は、これに限られず、同時に実行されてもよいし、逆順に実行されてもよい。また、前述したステップS2~S5の一連の工程は、ステップS6と同時でもよいし、逆順でもよい。
【0044】
サーバ3は、外部からイベント発生情報を取得したか否かを判定する(ステップS7)。イベント発生情報は、例えば、病院における救急搬入の発生を示す情報を含む。例えば、サーバ3は、病院での救急搬入の発生を示す信号を発生させる病院システムから当該信号をイベント発生情報として受信し得る。サーバ3は、イベント発生情報を受信していないと判定したとき(ステップS7:N)、自律移動体2が目的地に到着したか否かを判定する(ステップS10)。自律移動体2が目的地に到着したと判定されたとき(ステップS10:Y)、自律移動体2及びサーバ3は処理を終了する。自律移動体2が目的地に到着していないと判定されたとき(ステップS10:N)、ステップS2に戻る。
【0045】
サーバ3は、イベント発生情報を受信していると判定したとき(ステップS7:Y)、自律移動体2がイベントエリアに入ったか否かを判定する(ステップS8)。イベント発生情報が病院における救急搬入の発生を示す情報である場合には、イベントエリアは所定の救急エリアである。サーバ3は、自律移動体2がイベントエリアに入っていないと判定したとき(ステップS8:N)、ステップS10に進む。
【0046】
サーバ3は、自律移動体2がイベントエリアに入ったと判定したとき(ステップS8:Y)、走行を一時停止して且つスピーカ28の音量をゼロにするように自律移動体2に指令する(ステップS9)。これにより、病院内で救急搬入のイベントが発生するときに救急エリアに大きい音が出力されることが防がれ、病院業務における人と自律移動体2との共存が促進される。なお、サーバ3は、自律移動体2がイベントエリアに入ったと判定したとき、走行を継続しつつスピーカ28が出力する音の音量をゼロよりも大きい値に減少させてもよい。
【0047】
なお、本開示の技術は、前述した実施形態に限定されるものではない。例えば、自律移動体2は、病院以外の設備内を自律移動するようにしてもよい。自律移動体2は、エリア分けされた屋外を自律移動するようにしてもよい。自律移動体2は、無人航空機であってもよい。サーバ3の制御プログラムP2の一部又は全部は、自律移動体2によって実行されてもよい。自律移動体2の制御プログラムP1の一部又は全部は、サーバ3によって実行されてもよい。前述した実施形態では、各フロアの各々をエリアとして定義したが、1つのフロアを複数のエリアに分割してもよい。
【0048】
エリア、時間帯及び混雑度に応じて決定される音の特性は、音量に限られず、音周波数でもよいし、音量変動ピッチでもよい。音量の減少、音周波数の減少、及び、音量変動ピッチの増加は、音の特性の刺激度を下げることに相当する。エリア、時間帯及び混雑度に応じてスピーカ28が出力する音の特性を決める代わりに、エリア、時間帯及び混雑度に応じてライト29が出力する光の特性を決めてもよい。その場合、エリア、時間帯及び混雑度に応じて決定される光の特性は、光量に限られず、光の色温度でもよく、光の点滅周波数でもよい。光量の減少、光の色温度の増加、及び、光の点滅周波数の減少は、光の特性の刺激度を下げることに相当する。
【0049】
自律移動体2は、自律移動体2の周囲に存在する光の照度を検出する照度センサを備えていてもよい。処理回路20は、照度センサで検出される照度に基づいて音又は光の特性を決定してもよい。例えば、検出される照度が小さいほど音量を小さくするようにスピーカ28から出力される音の特性が決められてもよい。例えば、検出される照度が小さいほど光量を小さくするようにライト29から出力される光の特性が決められてもよい。
【0050】
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかし、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施形態にも適用可能である。また、前記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施形態とすることも可能である。例えば、実施形態中の一部の構成は、その実施形態中の他の構成から分離して任意に抽出可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれる。
【0051】
本明細書で開示する要素の機能は、開示された機能を実行するよう構成またはプログラムされた、汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、従来の回路、及び/又は、それらの組み合わせ、を含む回路又は処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路又は回路と見なされる。本開示において、回路、ユニット若しくは手段は、列挙された機能を実行するハードウェアであるか、又は、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されているハードウェアであってもよいし、又は、列挙された機能を実行するようにプログラム若しくは構成されているその他の既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、手段若しくはユニットは、ハードウェア及びソフトウェアの組み合わせであり、ソフトウェアはハードウェア及び/又はプロセッサの構成に使用される。
【0052】
以下の項目のそれぞれは、好ましい実施形態の開示である。
【0053】
[項目1]
音又は光を外界に出力する出力器を備える自律移動体、を制御するシステムであって、
処理回路を備え、前記処理回路は、
前記自律移動体の位置情報を取得することと、
現在時刻を取得することと、
前記位置情報及び前記現在時刻に基づいて、前記出力器に出力させるべき前記音又は前記光の特性を決定することと、
前記決定された特性にて、前記出力器に前記音又は前記光を出力させることと、を行うように構成されている、自律移動体の制御システム。
【0054】
この構成によれば、自律移動体が自律走行する場所及び時刻に応じて、出力器から出力される音又は光の特性が自動的に変わる。よって、自律移動体が走行する場所及び時刻に適した特性で音又は光を外界に出力することができる。
【0055】
[項目2]
前記処理回路は、前記自律移動体の周囲における人間の混雑度を示す混雑関連値を取得するように構成されており、
前記特性を決定することは、前記混雑関連値に基づいて前記特性を決定することを含む、項目1に記載の自律移動体の制御システム。
【0056】
この構成によれば、自律移動体の周囲における人間の混雑度に応じた適切な特性にて音又は光を外界に出力することができる。
【0057】
[項目3]
前記処理回路は、イベント発生情報を取得するように構成されており、
前記特性を決定することは、前記イベント発生情報に基づいて前記特性を決定することを含む、項目1又は2に記載の自律移動体の制御システム。
【0058】
この構成によれば、イベント発生に応じた適切な特性にて音又は光を外界に出力することができる。
【0059】
[項目4]
前記位置情報を取得することは、病院内における前記自律移動体の位置情報を取得することを含み、
前記イベント発生情報は、前記病院における救急搬入の発生を示す情報を含み、
前記特性を決定することは、前記イベント発生情報を取得したときに、前記位置情報が示す位置が少なくとも救急エリアに入ると、前記音又は前記光の刺激度を減少させるように前記特性を決定することを含む、項目3に記載の自律移動体の制御システム。
【0060】
この構成によれば、救急搬入のイベントが発生するときに救急エリアに大きい音又は強い光が出力されることが防がれ、病院業務における人と自律移動体との共存を促進できる。
【0061】
[項目5]
前記位置情報を取得することは、病院内における前記自律移動体の位置情報を取得することを含み、
前記特性を決定することは、前記位置情報が示す位置が前記病院の外来診療部門の存在するエリアに入ったときに、前記音又は前記光の刺激度を増加させるように前記特性を決定することを含む、項目1乃至4のいずれかに記載の自律移動体の制御システム。
【0062】
この構成によれば、病院内で多数の人間が行き交う外来診療部門で自律移動体の存在を周囲に適切に知らせることができる。
【0063】
[項目6]
前記特性を決定することは、複数のエリア及び複数の時間帯に夫々対応して前記音又は前記光の特性を定義する少なくとも1つのマップに従って、前記位置情報が示す位置の属するエリア及び前記現在時刻の属する時間帯に対応する前記特性を決定することを含む、項目1、3乃至5のいずれかに記載の自律移動体の制御システム。
【0064】
この構成によれば、エリア及び時間帯ごとの特性をマップによって簡易に定義することができる。
【0065】
[項目7]
前記処理回路は、前記自律移動体の周囲における人間の混雑度を示す混雑関連値を取得するように構成されており、
前記特性を決定することは、前記位置情報が示す位置の属するエリア及び前記現在時刻の属する時間帯に対応する特性を前記マップから取得し、その取得された特性を前記混雑関連値に基づいて補正することを含む、項目6に記載の自律移動体の制御システム。
【0066】
この構成によれば、自律移動体の周囲における人間の混雑度に応じた適切な特性にて音又は光を外界に出力することができる。
【0067】
[項目8]
音又は光を外界に出力する出力器を備える自律移動体、を制御する方法であって、
前記自律移動体の位置情報を取得することと、
現在時刻を取得することと、
前記位置情報及び前記現在時刻に基づいて、前記出力器に出力させるべき前記音又は前記光の特性を決定することと、
前記決定された特性にて、前記出力器に前記音又は前記光を出力させることと、を含む、自律移動体の制御方法。
【0068】
[項目9]
項目8に記載された制御方法を少なくとも1つのプロセッサに実行させる、自律移動体の制御プログラム。
【符号の説明】
【0069】
1 制御システム
2 自律移動体
3 サーバ
4 ネットワーク
20 処理回路
21 プロセッサ
28 スピーカ
29 ライト
40 処理回路
41 プロセッサ
M エリアマップ
P1,P2 制御プログラム
S1 音量基本マップ
S2 音量補正マップ