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  • 特開-ゴム組成物、積層体及びホース 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093719
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】ゴム組成物、積層体及びホース
(51)【国際特許分類】
   C08L 11/00 20060101AFI20240702BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240702BHJP
   C08K 3/06 20060101ALI20240702BHJP
   C08K 5/405 20060101ALI20240702BHJP
   C08K 5/053 20060101ALI20240702BHJP
   C08L 9/06 20060101ALI20240702BHJP
   F16L 11/08 20060101ALI20240702BHJP
   B32B 15/06 20060101ALI20240702BHJP
   B32B 1/08 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
C08L11/00
C08K3/36
C08K3/06
C08K5/405
C08K5/053
C08L9/06
F16L11/08 A
B32B15/06 Z
B32B1/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210270
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100181179
【弁理士】
【氏名又は名称】町田 洋一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197295
【弁理士】
【氏名又は名称】武藤 三千代
(72)【発明者】
【氏名】杉原 孝樹
(72)【発明者】
【氏名】水谷 祐貴
【テーマコード(参考)】
3H111
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
3H111BA12
3H111BA13
3H111CC07
3H111DA26
4F100AA20A
4F100AA20H
4F100AB01B
4F100AK28A
4F100AK73A
4F100AN02A
4F100BA02
4F100DA02
4F100EH71B
4F100EJ062
4F100EJ06A
4F100EJ422
4F100EJ912
4F100JK06
4F100JK09
4J002AC08X
4J002AC09W
4J002DA047
4J002DJ016
4J002EC049
4J002EC059
4J002EV128
4J002FD010
4J002FD016
4J002FD030
4J002FD070
4J002FD100
4J002FD130
4J002FD147
4J002FD150
4J002FD208
4J002FD209
4J002GF00
4J002GM00
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】得られる加硫ゴムの、金属表面を有する補強層との接着性、耐摩耗性が優れるゴム組成物、並びに、金属表面を有する補強層と上記ゴム組成物の加硫ゴムであるゴム層とを有する積層体、及び、ホースを提供する。
【解決手段】クロロプレンゴムを含むゴム成分100質量部に対して、シリカを5質量部以上、14質量部以下と、硫黄を1.0質量部以下と、エチレンチオウレアとを含有する、ゴム組成物、並びに、金属表面を有する補強層と上記ゴム組成物の加硫ゴムであるゴム層とを有する積層体、及び、ホース。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロロプレンゴムを含むゴム成分100質量部に対して、
シリカを5質量部以上、14質量部以下と、
硫黄を1.0質量部以下と、
エチレンチオウレアとを含有する、ゴム組成物。
【請求項2】
前記エチレンチオウレアの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、0.5~1.0質量部である、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記シリカの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、10質量部以上である、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項4】
更に、分子量が300以下である多価アルコールを含有し、
前記多価アルコールの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、1質量部以上である、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記硫黄の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、0.5~0.8質量部である、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記クロロプレンゴムの含有量が、前記ゴム成分中の、40~100質量%である、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項7】
前記ゴム成分が、更に、スチレンブタジエンゴムを含む、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項8】
金属表面を有する補強層と、前記金属表面の上に設けられたゴム層とを有し、前記ゴム層が、請求項1~7のいずれか1項に記載のゴム組成物の加硫ゴムである、積層体。
【請求項9】
前記金属表面が、ブラスめっきされた金属表面である、請求項8に記載の積層体。
【請求項10】
前記補強層が、ブラスめっきワイヤで形成されている、請求項8に記載の積層体。
【請求項11】
金属表面を有する補強層と、前記金属表面の上に設けられたゴム層とを有し、前記ゴム層が、請求項1~7のいずれか1項に記載のゴム組成物の加硫ゴムである、ホース。
【請求項12】
油圧用ホースである、請求項11に記載のホース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物、積層体及びホースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建設機械等に用いられる油圧用ホースとして、例えば、補強層にブラスメッキワイヤーを使用し、上記ブラスメッキワイヤーとカバーゴム層とが直接接着するホースが挙げられる。
油圧ホース等に使用できる金属接着性ゴム組成物が提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-214189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
油圧用ホース等のホースにおいて、上記のように金属表面を有する補強層とゴム層とを直接接着させる場合、上記補強層とゴム層との接着性や、ゴム層の耐摩耗性が優れることが要求される。
このようななか、本発明者らは特許文献1を参考にして、クロロプレンゴムと硫黄とを含有するゴム組成物を調製しこれを評価したところ、このようなゴム組成物から得られる加硫ゴムは、金属表面を有する補強層との接着性、耐摩耗性のうちの少なくともいずれかが悪い場合があることが分かった。
【0005】
そこで、本発明は、得られる加硫ゴムの、金属表面を有する補強層との接着性、耐摩耗性が優れるゴム組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、積層体、及び、ホースを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、クロロプレンゴムを含むゴム成分100質量部に対して、シリカを5質量部以上、14質量部以下と、硫黄を1.0質量部以下と、エチレンチオウレアとを含有する、ゴム組成物によれば、所望の効果が得られることを見出し、本発明に至った。
本発明は上記知見等に基づくものであり、具体的には以下の構成により上記課題を解決するものである。
【0007】
[1] クロロプレンゴムを含むゴム成分100質量部に対して、
シリカを5質量部以上、14質量部以下と、
硫黄を1.0質量部以下と、
エチレンチオウレアとを含有する、ゴム組成物。
[2] 上記エチレンチオウレアの含有量が、上記ゴム成分100質量部に対して、0.5~1.0質量部である、[1]に記載のゴム組成物。
[3] 上記シリカの含有量が、上記ゴム成分100質量部に対して、10質量部以上である、[1]又は[2]に記載のゴム組成物。
[4] 更に、分子量が300以下である多価アルコールを含有し、
上記多価アルコールの含有量が、上記ゴム成分100質量部に対して、1質量部以上である、[1]~[3]のいずれか1つに記載のゴム組成物。
[5] 上記硫黄の含有量が、上記ゴム成分100質量部に対して、0.5~0.8質量部である、[1]~[4]のいずれか1つに記載のゴム組成物。
[6] 上記クロロプレンゴムの含有量が、上記ゴム成分中の、40~100質量%である、[1]~[5]のいずれか1つに記載のゴム組成物。
[7] 上記ゴム成分が、更に、スチレンブタジエンゴムを含む、[1]~[6]のいずれか1つに記載のゴム組成物。
[8] 金属表面を有する補強層と、上記金属表面の上に設けられたゴム層とを有し、上記ゴム層が、[1]~[7]のいずれか1つに記載のゴム組成物の加硫ゴムである、積層体。
[9] 上記金属表面が、ブラスめっきされた金属表面である、[8]に記載の積層体。
[10] 上記補強層が、ブラスめっきワイヤで形成されている、[8]又は[9]に記載の積層体。
[11] 金属表面を有する補強層と、上記金属表面の上に設けられたゴム層とを有し、上記ゴム層が、[1]~[7]のいずれか1つに記載のゴム組成物の加硫ゴムである、ホース。
[12] 油圧用ホースである、[11]に記載のホース。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、得られる加硫ゴムの、金属表面を有する補強層との接着性、耐摩耗性が優れるゴム組成物を提供することができる。
また、本発明は、積層体、及び、ホースを提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明のホースの一実施形態の一部破断斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明について以下詳細に説明する。
本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を含む範囲を意味する。
本明細書において、特に断りのない限り、各成分はその成分に該当する物質をそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。成分が2種以上の物質を含む場合、成分の含有量は、2種以上の物質の合計の含有量を意味する。
本明細書において、得られる加硫ゴムの、金属表面を有する補強層との接着性、及び、耐摩耗性のうちの少なくとも1つがより優れることを、「本発明の効果がより優れる」ということがある。
【0011】
[ゴム組成物]
本発明のゴム組成物は、
クロロプレンゴムを含むゴム成分100質量部に対して、
シリカを5質量部以上、14質量部以下と、
硫黄を1.0質量部以下と、
エチレンチオウレアとを含有する、ゴム組成物である。
以下、本発明のゴム組成物に含有される各成分について詳述する。
【0012】
[ゴム成分]
本発明のゴム組成物において、ゴム成分はクロロプレンゴムを含む。
【0013】
[クロロプレンゴム]
本発明のゴム組成物において、ゴム成分として含まれるクロロプレンゴム(CR)は、2-クロロブタジエンを含むモノマーによって形成されたポリマーであれば特に制限されない。例えば、従来公知のクロロプレンゴムが挙げられる。
【0014】
(クロロプレンゴムの含有量)
クロロプレンゴムの含有量は、本発明の効果がより優れるという観点から、ゴム成分(全量)中の、40~100質量%であることが好ましく、40~70質量%がより好ましい。
【0015】
(その他のゴム成分)
ゴム成分は、更に、クロロプレンゴム以外のゴム成分(その他のゴム成分)を含んでいてもよい。
その他のゴム成分としては、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(Br-IIR、Cl-IIR)のようなジエン系ゴムが挙げられる。
【0016】
ゴム成分は、本発明の効果がより優れる観点から、更に、スチレンブタジエンゴム(SBR)を含むことが好ましい。
スチレンブタジエンゴムは、スチレンとブタジエンとを含むモノマーによって形成されたポリマーであれば特に制限されない。例えば、従来公知のSBRが挙げられる。
スチレンブタジエンゴム中のスチレン単位の含有量(スチレン含有量)は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、10~50質量%であることが好ましく、15~40質量%であることがより好ましい。
【0017】
ゴム成分中のその他のゴム成分(特にスチレンブタジエンゴム)の含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、ゴム成分(全量)中の0~60質量%であることが好ましく、30~60質量%がより好ましい。
【0018】
[シリカ]
本発明のゴム組成物は、シリカを含有する。
シリカは特に制限されない。シリカとしては、例えば、結晶性シリカ、沈殿シリカ、非晶質シリカ(例えば、高温処理シリカ)、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、及び溶融シリカなどが挙げられる。
シリカは、本発明の効果がより優れるという観点から、pHが7より小さい酸性シリカを含むことが好ましい。本発明において、シリカのpHは、JIS K5101-17-2:2004に準じて測定できる。
【0019】
[シリカの含有量]
本発明のゴム組成物において、シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、5質量部以上、14質量部以下である。
シリカの含有量は、本発明の効果(特に補強層との接着性)がより優れるという観点から、ゴム成分100質量部に対して、10質量部以上、14質量部以下であることが好ましい。
【0020】
[硫黄]
本発明のゴム組成物は、硫黄を含有する。
硫黄は、加硫剤として機能することができる。
硫黄は、加硫剤として使用できるものであれば特に制限されない。硫黄としては、例えば、粉末硫黄、沈降性硫黄、高分散性硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄が挙げられる。
【0021】
[硫黄の含有量]
本発明のゴム組成物において、硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、1.0質量部以下である。本発明において、硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0質量部超、1.0質量部以下であればよい。本発明において、硫黄の含有量がゴム成分100質量部に対して1.0質量部以下であることによって、耐熱性に優れる加硫ゴムを得ることができる。
ゴム成分100質量部に対する硫黄の含有量が1.0質量部を超える場合、得られる加硫ゴムの耐熱性が劣る。
硫黄の含有量は、本発明の効果がより優れ、耐熱性が優れるという観点から、ゴム成分100質量部に対して、0.5~0.8質量部であることが好ましい。
【0022】
[エチレンチオウレア]
本発明のゴム組成物は、エチレンチオウレアを含有する。
エチレンチオウレア(2-メルカプト-2-イミダゾリン)は、下記構造を有する化合物である。
【化1】
【0023】
(エチレンチオウレアの含有量)
エチレンチオウレアの含有量は、本発明の効果(特に補強層との接着性)がより優れるという観点から、ゴム成分100質量部に対して、0.5~1.0質量部であることが好ましい。
【0024】
(多価アルコール)
本発明のゴム組成物は、本発明の効果(特に補強層との接着性)がより優れるという観点から、更に、分子量が300以下である多価アルコールを含有することが好ましい。
本発明のゴム組成物に含有されうる多価アルコールは、分子量が300以下であり、2以上の水酸基を有するアルコールである。
【0025】
多価アルコールは、接着性がより優れる理由から、下記一般式(1)で表される化合物及びペンタエリスリトールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0026】
【化2】
【0027】
一般式(1)中、Rは、水素原子、ヒドロキシ基、又は、モノ若しくはポリヒドロキシアルキル基を表し、Rは、水素原子、又は、モノ若しくはポリヒドロキシアルキル基を表す。ただし、R及びRのうちの少なくとも一方がヒドロキシ基を有する。なお、本明細書において、Rがヒドロキシ基を有するという場合、Rは、ヒドロキシ基、又は、上記モノ若しくはポリヒドロキシアルキル基のいずれであってもよい。また、Rがヒドロキシ基を有するという場合、Rは、上記モノ又はポリヒドロキシアルキル基のいずれであってもよい。
としてのモノ又はポリヒドロキシアルキル基は、ヒドロキシ基を1個又は複数有する脂肪族炭化水素基である。上記モノ又はポリヒドロキシアルキル基を構成する脂肪族炭化水素基は、例えば、直鎖状、分岐状のいずれであってもよい。上記脂肪族炭化水素基の炭素数としては、例えば、1~5が挙げられる。上記脂肪族炭化水素基はエーテル結合を形成してもよい。上記脂肪族炭化水素基はエーテル結合を形成する場合、上記エーテル結合としては、例えば、上記脂肪族炭化水素基と一般式(1)で表される構造の主骨格とをエーテル結合で結合する構造、上記脂肪族炭化水素基を複数、エーテル結合で結合する構造が挙げられる。Rとしてのモノ又はポリヒドロキシアルキル基は、上記Rとしてのモノ又はポリヒドロキシアルキル基と同様である。
【0028】
一般式(1)中、Rは、水素原子、ヒドロキシ基、又は、上記モノ若しくはポリヒドロキシアルキル基を表す。
上記一般式(1)において、Rにおける「モノ又はポリヒドロキシアルキル基」としては、例えば、
ヒドロキシメチル基、1-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシエチル基、ジヒドロキシエチル基、1-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシプロピル基、3-ヒドロキシプロピル基、ジヒドロキシプロピル基、トリヒドロキシプロピル基、1-ヒドロキシブチル基、2-ヒドロキシブチル基、3-ヒドロキシブチル基、4-ヒドロキシブチル基、ジヒドロキシブチル基、トリヒドロキシブチル基、テトラヒドロキシブチル基、ペンタヒドロキシブチル基、1-ヒドロキシペンチル基、2-ヒドロキシペンチル基、3-ヒドロキシペンチル基、4-ヒドロキシペンチル基、5-ヒドロキシペンチル基、ジヒドロキシペンチル基、トリヒドロキシペンチル基、テトラヒドロキシペンチル基、ペンタヒドロキシペンチル基、ヒドロキシメトキシメチル基、ヒドロキシエトキシエチル基、ジヒドロキシプロポキシメチル基、ジヒドロキシプロポキシエチル基、トリヒドロキシプロポキシメチル基、及びトリヒドロキシプロポキシエチル基などが挙げられる。上記のモノ又はポリヒドロキシアルキル基は、酸素原子を介して、一般式(1)で表される構造の主骨格とを結合してもよい。
【0029】
一般式(1)中、Rは、水素原子、又は、上記モノ若しくはポリヒドロキシアルキル基を表す。なお、Rが水素原子である場合、Rがヒドロキシ基を有する(つまり、上記の場合、Rは、ヒドロキシ基、又は、上記モノ若しくはポリヒドロキシアルキル基であればよい)。
上記一般式(1)において、Rにおける「モノ又はポリヒドロキシアルキル基」としては、例えば、Rにおける「モノ又はポリヒドロキシアルキル基」と同様に例示することができる。
【0030】
上記一般式(1)で表される化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、1,2,6-トリヒドロキシヘキサン、ジグリセリン、トリメチロールプロパン、ソルビトール及びヘキサントリオールなどが挙げられる。
【0031】
多価アルコールは、本発明の効果(特に補強層との接着性)がより優れる理由から、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ヘキサントリオール、ジグリセリン及びソルビトールからなる群から選ばれる少なくとも1つを含むことが好ましく、グリセリンを含むことがより好ましい。
【0032】
上記多価アルコールの分子量は、本発明の効果がより優れる理由から、50~300であることが好ましく、70~300であることがより好ましい。
【0033】
多価アルコールの沸点は特に制限されないが、100~400℃であることが好ましく、100~300℃であることがより好ましい。なお、上記沸点は1atmの条件下における値を指すものとする。
【0034】
本発明のゴム組成物が更に上記多価アルコールを含有する場合、上記多価アルコールの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、1質量部以上であることが好ましく、1.0~4.0質量部がより好ましい。
【0035】
(任意成分)
本発明のゴム組成物は、更に添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、例えば、シリカ以外の充填材;酸化亜鉛;ステアリン酸のような架橋促進助剤;酸化マグネシウムのような受酸剤;N-イソプロピル-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン(IPPD)のような老化防止剤;ワックス;加工助剤;オイル;含硫黄系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤のような加硫促進剤;帯電防止剤、難燃剤、加硫遅延剤が挙げられる。各添加剤の種類及び含有量は適宜選択することができる。
【0036】
シリカ以外の充填材としては、例えば、カーボンブラックが挙げられる。本発明のゴム組成物が更にカーボンブラックを含有する場合、上記カーボンブラックは、ISAFカーボンブラック及び/又はFEFカーボンブラックを含むことが好ましい。
本発明のゴム組成物が更にカーボンブラックを含有する場合、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、例えば、30~150質量部とすることができる。
【0037】
(ゴム組成物の調製方法)
本発明のゴム組成物は、従来公知の製造方法により製造できる。例えば、上述した各成分を、バンバリーミキサー、及びニーダーなどの密閉式混合機、ロールなどの混練ロール機、押出し機、及び二軸押出機などを用いて混合する方法が挙げられる。
【0038】
(加硫ゴム)
本発明のゴム組成物を加硫することによって、本発明のゴム組成物の加硫ゴム(硬化物)を得ることができる。
【0039】
(ゴム組成物の加硫)
本発明のゴム組成物を加硫する方法及び条件は特に制限されない。加硫温度としては、130~180℃が好ましい。加硫時間としては、例えば、30分以上240分以下とできる。
本発明のゴム組成物を加硫する方法としては、例えば、スチーム加硫(高圧容器内に封入して蒸気缶内で架橋する方法)、オーブン加硫(ナイロン布などで覆ったものを熱風乾燥炉内で加硫する方法)、プレス加硫、蒸気加硫、及び温水加硫が挙げられる。
本発明のゴム組成物を加硫する方法は、生産性の観点から、連続式処理であるオーブン加硫が好ましい。
【0040】
[積層体]
本発明の積層体は、金属表面を有する補強層と、上記金属表面の上に設けられたゴム層とを有し、上記ゴム層が、本発明のゴム組成物の加硫ゴムである、積層体である。
本発明の積層体において、上記補強層と上記ゴム層とは隣接し、補強層(補強層が有する金属表面)はゴム層と直接接着する。
【0041】
[金属表面を有する補強層]
本発明の積層体は、金属表面を有する補強層を有する。
上記金属表面は、本発明の効果がより優れるという観点から、ブラスめっきされた金属表面であることが好ましい。
また、上記補強層は、本発明の効果がより優れるという観点から、ブラスめっきワイヤで形成されていることが好ましい。
補強層に使用される材料(例えばブラスめっきワイヤ)の形態としては、例えば、スパイラル構造又はブレード構造に編組されたものが挙げられる。
【0042】
[ゴム層]
本発明の積層体は、ゴム層を有する。
本発明の積層体において、ゴム層は、補強層が有する金属表面の上(つまり補強層の上)に設けられている。
上記ゴム層は本発明のゴム組成物の加硫ゴムの層であれば特に制限されない。
【0043】
(別の層)
本発明の積層体は、上記補強層及び上記ゴム層とは別の層を更に有することができる。上記の別の層としては、例えば、上記補強層において、上記ゴム層(本発明のゴム組成物の加硫ゴムの層。便宜上これを第1のゴム層とも称する)とは反対側に配置された別のゴム層(便宜上これを第2のゴム層とも称する)が挙げられる。第2のゴム層は特に制限されない。例えば、本発明のゴム組成物の加硫ゴムが挙げられる。第2のゴム層は、第1のゴム層と同じであっても異なってもよい。
【0044】
(積層体の製造方法)
本発明の積層体の製造方法としては、例えば、補強層及び本発明のゴム組成物をこの順に重ね、重ねた状態で加硫することによって、本発明の積層体を製造する方法が挙げられる。積層体を製造する際の加硫は、上述の「(ゴム組成物の加硫)」と同様とすることができる。
本発明の積層体が、上記補強層及び上記ゴム層とは別の層を更に有する場合、上記別の層に対応する材料を更に使用して積層体を製造すればよい。別の層が第2のゴム層である場合、第2のゴム層を形成するために使用されるゴム組成物は特に制限されない。例えば、本発明のゴム組成物が挙げられる。なお、第2のゴム層を形成するために使用されるゴム組成物は、第1のゴム層を形成するために使用されるゴム組成物と同じでも異なってもよい。
【0045】
本発明の積層体は、例えば、ホースに適用することができ、具体的には例えば高圧用又は油圧用のホースに適用することができる。
本発明の積層体を、例えば、ホースの少なくとも一部として使用することができる。
【0046】
[ホース]
本発明のホースは、金属表面を有する補強層と、上記金属表面の上に設けられたゴム層とを有し、上記ゴム層が、本発明のゴム組成物の加硫ゴムである、ホースである。
本発明のホースにおいて、上記補強層と上記ゴム層とは隣接し、補強層(補強層が有する金属表面)はゴム層と直接接着する。
【0047】
[金属表面を有する補強層]
本発明のホースは、金属表面を有する補強層を有する。
本発明のホースにおける補強層は、本発明の積層体における補強層に対応し、これと同様である。
補強層の厚さは、特に制限されないが、例えば、0.3~1mmとできる。
【0048】
[ゴム層]
本発明のホースは、ゴム層を有する。
本発明のホースにおいて、ゴム層は、補強層が有する金属表面の上(つまり補強層の上)に設けられている。
上記ゴム層は本発明のゴム組成物の加硫ゴムの層であれば特に制限されない。
本発明のホースにおけるゴム層は、本発明の積層体におけるゴム層に対応し、これと同様である。
ゴム層の厚さは、特に制限されないが、例えば、0.2~3mmとできる。
本発明のホースにおけるゴム層は、ホースにおける内部ゴム層又は外部ゴム層となることができる。本発明のホースにおけるゴム層が、例えば、ホースの少なくとも外部ゴム層となることが好ましい態様として挙げられる。
【0049】
(別の層)
本発明のホースは、上記補強層及び上記ゴム層とは別の層を更に有することができる。上記の別の層としては、例えば、上記補強層において、上記ゴム層(便宜上これを外部ゴム層とも称する)とは反対側に配置された別のゴム層(便宜上これを内部ゴム層とも称する)が挙げられる。内部ゴム層は特に制限されない。例えば、本発明のゴム組成物の加硫ゴムが挙げられる。外部ゴム層と内部ゴム層とは、同じであっても異なってもよい。
本発明のホースが更に内部ゴム層を有する場合、内部ゴム層の厚さは、特に制限されないが、例えば、0.2~3mmとできる。
なお、本発明のホースが更に内部ゴム層を有する場合、上記外部ゴム層は本発明の積層体における第1のゴム層に対応し、上記内部ゴム層は本発明の積層体における第2のゴム層に対応する。
【0050】
(ホースの製造方法)
本発明のホースの製造方法としては、例えば、補強層及び本発明のゴム組成物をこの順に重ね、重ねた状態で加硫することによって、本発明のホースを製造する方法が挙げられる。ホースを製造する際の加硫は、上述の「(ゴム組成物の加硫)」と同様とすることができる。
本発明のホースが、上記補強層及び上記ゴム層とは別の層(例えば内部ゴム層)を更に有する場合、上記別の層に対応する材料を更に使用してホースを製造すればよい。別の層が内部ゴム層である場合、内部ゴム層を形成するために使用されるゴム組成物は特に制限されない。例えば、本発明のゴム組成物が挙げられる。なお、外部ゴム層及び内部ゴム層を形成するために使用されるゴム組成物は、同じでも異なってもよい。
【0051】
本発明のホースは、例えば、高圧用又は油圧用のホースに適用することができる。
【0052】
本発明のホースの構成を添付の図を用いて説明する。本発明は添付の図面に限定されない。
図1は、本発明のホースの一実施態様の一部破断斜視図である。
図1において、ホース1は、円筒状に形成され、内部を流体が通過する内部ゴム層11と、内部ゴム層11の外側に設けられる補強層12と、補強層12の外側に設けられる外部ゴム層13とを有する。ここで、補強層12は金属表面を有する。また、内部ゴム層11及び/又は外部ゴム層13は上述した本発明の組成物を用いて形成される。補強層12は、内部ゴム層11と外部ゴム層13との間に挟みこまれるように配設されている。内部ゴム層11、補強層12、及び外部ゴム層13は、内部ゴム層11及び外部ゴム層13の加硫により接着し固定される。
【実施例0053】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし本発明はこれらに限定されない。
【0054】
<ゴム組成物の製造>
下記第1表の各成分を同表に示す組成(質量部)で用いて、これらを撹拌機で混合し、各ゴム組成物を製造した。
なお、第1表において、エチレンチオウレアの量は、エチレンチオウレアの正味の量である。また、第1表において、硫黄の量は、硫黄の正味の量である。
【0055】
<ホースの作製>
まず、外径34mmのマンドレル上に、ブラスめっきワイヤをブレード状に巻き付けて金属表面を有する補強層を形成した。次に、補強層の金属表面上に、得られた各ゴム組成物から調製した厚さ2.5mmの未加硫シートを貼り合わせた。さらに、未加硫シートの外側を覆うようにナイロン66製のキュアリングテープ(保護布)を巻きつけ、オーブン加硫方式(150℃の常圧オーブン内、135分間)で加硫を行った。このようにして、金属表面を有する補強層と補強層の金属表面上に設けられたゴム層(外側ゴム層)とを備えるホースを得た。
【0056】
<接着性の評価>
得られたホースについて接着力(kN/m)及びゴム付き(%)を評価した。結果を表1に示す(湿熱老化試験前)。
ここで、接着力(kN/m)とは、補強層から外側ゴム層を剥離(剥離速度50mm/分)するときに要する、単位幅(m)あたりの力の大きさ(kN)である。
また、ゴム付きとは、外側ゴム層を剥離したときに外側ゴム層が補強層表面に残留している割合であって、補強層表面積全体に対する残留ゴム層の面積比率を百分率で表したものである。
接着力(kN/m)及びゴム付き(%)の数値は、10回測定した平均値である。
【0057】
・加硫ゴムと金属表面を有する補強層との接着性の評価基準
本発明において、接着力が3.5kN/m以上であり、かつ、ゴム付きが60%以上であった場合、加硫ゴムと金属表面を有する補強層との接着性が優れると評価した。接着力が3.5kN/mより大きい場合、及び/又は、ゴム付きが60%より大きい場合、加硫ゴムと金属表面を有する補強層との接着性がより優れる。
一方、接着力が3.5kN/m未満であった場合、又は、ゴム付きが60%未満であった場合、加硫ゴムと金属表面を有する補強層との接着性が悪いと評価した。
【0058】
<耐摩耗性>
・試験片の作製
上記のとおり製造された各ゴム組成物を、プレス成型機を用い、148℃、面圧3.0MPaの条件下で45分間加硫して、直径63.5±0.5mm、厚さ12.7±0.5mmで、中心孔12.7±0.1mmの円盤状試験片を作製した。
・摩耗試験
上記円盤状試験片を用い、JIS K6264-2:2005(アクロン摩耗試験A法、付加力27N、傾斜15度、試験回転数1,000回)に準じて、摩耗量(ml)を測定した。
【0059】
・耐摩耗性の評価基準
上記のとおり測定された摩耗量が0~0.14mlであった場合、得られた加硫ゴムの耐摩耗性が優れると評価して、これを「〇」と表示した。
一方、摩耗量が0.14mlを超えた場合、得られた加硫ゴムの耐摩耗性が悪いと評価して、これを「×」と表示した。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
【表3】
【0063】
第1表に示した各成分の詳細は以下のとおりである。
(ゴム成分)
・SBR:商品名「Nipol 1502」、日本ゼオン社製、乳化重合SBR、結合スチレン含有量23.5質量%、ムーニー粘度(ML1+4,100℃)52、非油添タイプ
・CR:商品名「デンカクロロプレンS-41」、電気化学工業社製、非硫黄変性クロロプレンゴム、ムーニー粘度(ML1+4,100℃)48
【0064】
・FEFカーボンブラック:商品名「HTC#100」、新日化カーボン社製
【0065】
(シリカ)
・シリカ:商品名「ニップシールAQ」、東ソーシリカ社製、pH6.4
【0066】
・クレー:商品名「Suprex Clay」、ケンタッキーテネシークレイカンパニー社製
・タルク:商品名「ミストロンベーパー」、イメリス社製
・炭酸カルシウム:重質炭酸カルシウム、丸尾カルシウム社製
【0067】
・酸化亜鉛:酸化亜鉛3種、正同化学工業社製
・ステアリン酸:日本油脂社製
【0068】
・酸化マグネシウム:商品名「キョーワマグ150」、協和化学工業社製。受酸剤
【0069】
・老防6C:オゾン劣化防止剤(老化防止剤)。商品名「オゾンノン6C」、精工化学社製
【0070】
(硫黄)
・硫黄:細井化学工業社製
【0071】
・オイル(VIVATEC500):T-DAEオイル、H&R社
【0072】
(多価アルコール)
・グリセリン:分子量:92、沸点:290℃、精製グリセリン、阪本薬品工業社製
【0073】
(エチレンチオウレア)
・エチレンチオウレア:商品名「サンミックス 22-80E」三新化学工業社製。上記商品中のエチレンチオウレアの濃度80質量%。なお、第1表の「エチレンチオウレア」欄にはエチレンチオウレアの正味量を記載した。
【0074】
・加硫促進剤CZ:N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド。大内新興化学工業株式会社製 ノクセラーCZ-G
・加硫促進剤DPG:1,3-ジメチルグアニジン。住友化学社製 ソクシノールD-G
・加硫促進剤TS:テトラメチルチウラムモノスルフィド、三新化学工業社製 サンセラーTS-G
【0075】
第1表に示す結果から、シリカを含有しない比較例1~5、10は、得られる加硫ゴムと補強層との接着性が悪かった。
シリカの含有量が所定の量に該当しない比較例6は、得られる加硫ゴムの耐摩耗性が悪かった。
シリカを含有せず、代わりにクレー、タルク又は炭酸カルシウムを含有する比較例7~9は、得られる加硫ゴムの耐摩耗性が悪かった。
エチレンチオウレアを含有しない比較例11、14は、得られる加硫ゴムと補強層との接着性が悪かった。
シリカ及びエチレンチオウレアを含有しない比較例12、13は、得られる加硫ゴムと補強層との接着性が悪かった。
シリカを含有せず代わりにクレーを含有し、エチレンチオウレアを含有しない比較例15は、得られる加硫ゴムと補強層との接着性、得られる加硫ゴムの耐摩耗性が悪かった。
【0076】
これらに対して、本発明のゴム組成物は、得られる加硫ゴムの、金属表面を有する補強層との接着性、耐摩耗性が優れた。
また、本発明の積層体は、加硫ゴムと金属表面を有する補強層との接着性、耐摩耗性が優れた。
本発明のホースは、加硫ゴムと金属表面を有する補強層との接着性、耐摩耗性が優れた。
【0077】
(シリカとエチレンチオウレアとの併用による接着性の相乗効果、優れた耐摩耗性の維持)
比較例12を基準とする実施例1のゴム付きの向上(85-5=80%)は、比較例12を基準とする比較例1、11のゴム付きの効果を足し合わせた値(25-5+10-5=25%)をはるかに上回った。また、実施例1は、比較例12と比較して、比較例12の優れた耐摩耗性を維持することができた。
比較例13を基準とする実施例12のゴム付きの向上、耐摩耗性の維持についても上記と同様の結果が得られた。
このように本発明のゴム組成物は、シリカとエチレンチオウレアとの併用による接着性の相乗効果が顕著であり、かつ、シリカとエチレンチオウレアとを併用しても優れた耐摩耗性を維持することができた。
一方、クレーとエチレンチオウレアとを併用する比較例7は、比較例13と比較して、比較例13が有する優れた耐摩耗性を維持することができなかった。
【符号の説明】
【0078】
1 ホース
11 内部ゴム層
12 補強層
13 外部ゴム層
図1