(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009372
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】超接合半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20240112BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20240112BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240112BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
H01L29/78 652H
H01L29/78 652N
H01L29/78 652P
H01L29/06 301F
H01L29/06 301G
H01L29/06 301V
H01L29/06 301D
H01L29/78 652F
H01L29/78 658E
H01L29/78 658A
H01L29/78 652T
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023204281
(22)【出願日】2023-12-01
(62)【分割の表示】P 2019173822の分割
【原出願日】2019-09-25
(31)【優先権主張番号】P 2019076689
(32)【優先日】2019-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】坂田 敏明
(57)【要約】
【課題】製造ばらつきに対する耐圧低下を抑制することができる超接合半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置は、電流が流れる活性領域30と、終端構造部40と、を有する。半導体基板のおもて面上に第1導電型の第1半導体層2が設けられる。活性領域30の第1半導体層2の上面に、第2半導体領域5が設けられる。終端構造部40の第1半導体層2内に、第1導電型の第3カラム3bと第2導電型の第4カラム4bにより構成された第2並列pn構造が設けられる。第4カラム4bの表面は第2半導体領域5の下面より半導体基板側に設けられる。第1半導体層2の表面と第2並列pn構造の間に、第2導電型の第1半導体領域17が設けられる。第1半導体領域17は、活性領域30側の第1領域17aと第1領域17aの外側に離して設けられる第2領域17bと、を有し、複数の第4カラム4bが第1領域17aと接する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流が流れる活性領域と、前記活性領域の外側に配置され、前記活性領域の周囲を囲む耐圧構造が形成された終端構造部と、を有する超接合半導体装置であって、
第1導電型の半導体基板と、
前記半導体基板のおもて面上に設けられた前記半導体基板より低不純物濃度の第1導電型の第1半導体層と、
前記第1半導体層の上面に設けられた、第1導電型の第1カラムと第2導電型の第2カラムとが前記おもて面に平行な面において繰り返し交互に配置され、前記活性領域に設けられる第1並列pn構造と、
前記第1半導体層内に設けられた、第1導電型の第3カラムと第2導電型の第4カラムとが前記おもて面に平行な面において繰り返し交互に配置され、前記終端構造部に設けられる第2並列pn構造と、を有し、
前記第1半導体層の表面と前記第2並列pn構造の間に設けられ、前記活性領域の側から第1領域と該第1領域の外側に離して設けられる第2領域と、を有する第2導電型の第1半導体領域と、
前記活性領域の前記第1並列pn構造の前記第2導電型の第2カラムの表面に設けられた、第2導電型の第2半導体領域と、
前記第2半導体領域の、前記半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に設けられた第1導電型の第3半導体領域と、
前記第2半導体領域に接触するゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜の前記第2半導体領域と接触する面と反対側の表面に設けられたゲート電極と、を備え、
前記第2導電型の第4カラムの表面は、前記第2半導体領域の下面より前記半導体基板側に設けられ、
前記第1半導体領域の前記第1領域の下面は、前記第2導電型の第4カラムの複数と接することを特徴とする超接合半導体装置。
【請求項2】
前記第1半導体領域の前記第2領域の下面は、前記活性領域から離れるほど前記半導体基板から離れることを特徴とする請求項1に記載の超接合半導体装置。
【請求項3】
前記第1半導体領域の前記第2領域の下面は、前記活性領域の側の端部が前記第1半導体領域の前記第1領域の下面の深さと等しいことを特徴とする請求項2に記載の超接合半導体装置。
【請求項4】
前記第1半導体領域の前記第2領域において、前記活性領域から離れた外側の領域は前記第2導電型の第4カラムと接しないことを特徴とする請求項3に記載の超接合半導体装置。
【請求項5】
前記第1半導体領域の前記第1領域および前記第2領域は、前記第1領域の幅と前記第2領域の幅との比が、3:7~5:5であることを特徴とする請求項1に記載の超接合半導体装置。
【請求項6】
前記第1半導体領域の前記第1領域および前記第2領域の平面形状は環状であることを特徴とする請求項1または2に記載の超接合半導体装置。
【請求項7】
前記活性領域の前記第1並列pn構造の前記第1カラムの幅および前記第2カラムの幅は、前記終端構造部の前記第2並列pn構造の前記第3カラムの幅および前記第4カラムの幅より広いことを特徴とする請求項1に記載の超接合半導体装置。
【請求項8】
前記第1半導体領域の、前記半導体基板と反対側の表面に第1導電型の第4半導体領域を備えることを特徴とする請求項1に記載の超接合半導体装置。
【請求項9】
前記第4半導体領域は、前記第2領域の前記半導体基板と反対側の表面全面に設けられることを特徴とする請求項8に記載の超接合半導体装置。
【請求項10】
前記第1半導体領域の前記第2領域は、前記活性領域に近いほど不純物濃度が高くなっていることを特徴とする請求項1に記載の超接合半導体装置。
【請求項11】
前記第1半導体領域の前記第2領域は前記第4カラムの複数と接することを特徴とする請求項1に記載の超接合半導体装置。
【請求項12】
前記第1半導体領域の前記第1領域と前記第2領域の間に、前記第1領域と前記第2領域に接しない前記第4カラムを有することを特徴とする請求項11に記載の超接合半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、超接合半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常のn型チャネル縦型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:絶縁ゲート型電解効果トランジスタ)では、半導体基板内に形成される複数の半導体層のうち、n型伝導層(ドリフト層)が最も高抵抗の半導体層である。このn型ドリフト層の電気抵抗が縦型MOSFET全体のオン抵抗に大きく影響を与えている。縦型MOSFET全体のオン抵抗の低減は、n型ドリフト層の厚みを薄くし電流経路を短くすることで実現できる。
【0003】
しかし、縦型MOSFETは、オフ状態において空乏層が高抵抗のn型ドリフト層まで広がることで、耐圧を保持する機能も有している。このため、オン抵抗低減のためにn型ドリフト層を薄くした場合、オフ状態における空乏層の広がる距離が短くなるため、低い印加電圧で破壊電界強度に達しやすくなり、耐圧が低下する。一方、縦型MOSFETの耐圧を高くするためには、n型ドリフト層の厚みを増加させる必要があり、オン抵抗が増加する。このようなオン抵抗と耐圧の関係をトレードオフ関係と呼び、トレードオフ関係にある両者をともに向上させることは一般的に難しい。このオン抵抗と耐圧とのトレードオフ関係は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)やバイポーラトランジスタ、ダイオード等の半導体装置においても同様に成立することが知られている。
【0004】
上述のような問題を解決する半導体装置の構造として、超接合(SJ:Super Junction:スーパージャンクション)構造が知られている。例えば、超接合構造を有するMOSFET(以下、SJ-MOSFET)が知られている。
図19は、従来のSJ-MOSFETの構造を示す断面図である。
【0005】
図19に示すように、SJ-MOSFET150は、高不純物濃度のn
+型半導体基板101にn型ドリフト層102を成長させたウエハを材料とする。このウエハ表面からn型ドリフト層102を貫きn
+型半導体基板101に到達するp型カラム領域104が設けられている。
【0006】
また、n型ドリフト層102中に、基板主面に垂直な方向に延び、かつ基板主面に平行な面において狭い幅を有するp型領域(p型カラム領域104)とn型領域(隣り合うp型カラム領域104に挟まれたn型ドリフト層102の部分、以下n型カラム領域103と称する)とを基板主面に平行な面において交互に繰り返し並べた並列構造(以降、並列pn領域と称する)を有している。並列pn領域を構成するp型カラム領域104およびn型カラム領域103は、n型ドリフト層102に対応して不純物濃度を高めた領域である。並列pn領域では、p型カラム領域104およびn型カラム領域103に含まれる不純物濃度を略等しくすることで、オフ状態において擬似的にノンドープ層を作り出して高耐圧化を図ることができる。
【0007】
SJ-MOSFET150の、素子が形成されオン状態のときに電流が流れる活性領域130側の並列pn領域上には、p型ベース領域105が設けられる。p型ベース領域105の内部に、n+型ソース領域106が設けられている。また、p型ベース領域105およびn型カラム領域103の表面にわたってゲート絶縁膜107が設けられている。ゲート絶縁膜107の表面上には、ゲート電極108が設けられており、ゲート電極108を覆うように絶縁膜113が設けられている。また、n+型ソース領域106上にソース電極110が設けられ、n+型半導体基板101の裏面にドレイン電極114が設けられている。
【0008】
SJ-MOSFET150の、活性領域130の周囲を囲むエッジ終端領域140には、n型ドリフト層102中に、活性領域130同様に並列pn領域および絶縁膜113が設けられ、n+型半導体基板101の裏面にドレイン電極114が設けられている。
【0009】
また、パワー半導体素子においては、活性領域130と同様に、エッジ終端領域140も耐圧を保持しなければならない。エッジ終端領域140において高耐圧を得るために、公知の技術として、フィールドプレート、リサーフ(RESURF)、ガードリングなどを形成した構造が知られている。
図19は、リサーフ構造を有するSJ-MOSFET150を示している。SJ-MOSFET150では、耐圧保持する時にはリサーフ領域117が部分的に、もしくは完全に空乏化することでエッジ終端領域140の電界集中を緩和することができる。また、リサーフ領域117を並列pn領域と接続してもよい。この場合、リサーフ領域117に接続される並列pn領域の接合部から空乏層が伸張して、低電圧でドリフト層が完全空乏化する。電圧が上昇するとともに並列pn領域はガードリング効果を果たし、隣接する並列pn領域から更に空乏層が伸張し、空乏層同士が結合して完全空乏化の際の空乏層が形成されることで高耐圧を確保する。
【0010】
例えば、素子部にn型ピラー層2及びp型ピラー層3を備え、素子終端部にn型ピラー層10およびp型ピラー層11を備えたSJ-MOSFETにおいて、素子終端部のn型ピラー層10およびp型ピラー層11の上面に高抵抗n-型層12が設けられ、素子部のn型ピラー層2と高抵抗n-型層12との間に最外部p型ピラー層14を備え、また、素子部と素子終端部との境界にはp型ベース層4が設けられ、p型ベース層4に隣接してRESURF層13が設けられている半導体装置が公知である(例えば、下記特許文献1参照)。
【0011】
また、素子活性部1の中央部の第1の並列pn層12の繰り返しピッチP1より素子周縁部3の第2の並列pn層15の繰り返しピッチP2が狭いSJ-MOSFETにおいて、第1の並列pn層12と第2の並列pn層15の境目に複数の第1のp型領域14と第2のp型領域17にわたってpベース領域5を備え、第2の並列pn層15と第1主面との間には第1の並列pn層12を囲むn-表面領域19が設けられ、また、n-表面領域19の第1主面側には2本以上のp型ガードリング領域20が互いに離れて設けられている半導体装置が公知である(例えば、下記特許文献2参照)。
【0012】
また、周辺領域120のp型ピラー領域6がp型接続領域17に接し、p型接続領域17はボディ領域5’を介してソース電極10とオーミックコンタクトし、p型接続領域17と第1主面101との間にはn型空乏化可能半導体領域18を備え、n型空乏化可能半導体領域18はpnカラムの終端と最外周に設けられたフィールドストッパ領域8との間の低ドープ半導体領域2より高いドーピング濃度を有する半導体装置が公知である(例えば、下記特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2006-5275号公報
【特許文献2】特開2013-149761号公報
【特許文献3】米国特許第9281392号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
並列pn領域において、n型カラム領域103の不純物量がp型カラム領域104の不純物量とほぼ等しいとき(チャージバランスが”1”の状態)、SJ-MOSFET150の耐圧が最大値となる。しかしながら、半導体装置の製造ばらつきにより、並列pn領域の不純物量はばらつきやすい。これにより、チャージバランスが片寄り、耐圧低下が生じやすい。さらに、リサーフ領域117の不純物量および不純物の拡散深さのばらつきも加わることで、さらに耐圧低下が生じやすい。これにより、素子耐圧の低い個体が発生しやすいという問題点がある。
【0015】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、製造ばらつきに対する耐圧低下を抑制することができる超接合半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる超接合半導体装置は、次の特徴を有する。電流が流れる活性領域と、前記活性領域の外側に配置され、前記活性領域の周囲を囲む耐圧構造が形成された終端構造部と、を有する超接合半導体装置である。第1導電型の半導体基板と、前記半導体基板のおもて面上に設けられた前記半導体基板より低不純物濃度の第1導電型の第1半導体層と、前記第1半導体層の上面に設けられた、第1導電型の第1カラムと第2導電型の第2カラムとが前記おもて面に平行な面において繰り返し交互に配置され、前記活性領域に設けられる第1並列pn構造と、前記第1半導体層内に設けられた、第1導電型の第3カラムと第2導電型の第4カラムとが前記おもて面に平行な面において繰り返し交互に配置され、前記終端構造部に設けられる第2並列pn構造と、を有し、前記第1半導体層の表面と前記第2並列pn構造の間に設けられ、前記活性領域の側から第1領域と該第1領域の外側に離して設けられる第2領域と、を有する第2導電型の第1半導体領域と、前記活性領域の前記第1並列pn構造の前記第2導電型の第2カラムの表面に設けられた、第2導電型の第2半導体領域と、前記第2半導体領域の、前記半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に設けられた第1導電型の第3半導体領域と、前記第2半導体領域に接触するゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜の前記第2半導体領域と接触する面と反対側の表面に設けられたゲート電極と、を備える。前記第2導電型の第4カラムの表面は、前記第2半導体領域の下面より前記半導体基板側に設けられ、前記第1半導体領域の前記第1領域の下面は、前記第2導電型の第4カラムの複数と接する。
【0017】
また、この発明にかかる超接合半導体装置は、上述した発明において、前記第1半導体領域の前記第2領域の下面は、前記活性領域から離れるほど前記半導体基板から離れることを特徴とする。
【0018】
また、この発明にかかる超接合半導体装置は、上述した発明において、前記第1半導体領域の前記第2領域の下面は、前記活性領域の側の端部が前記第1半導体領域の前記第1領域の下面の深さと等しいことを特徴とする。
【0019】
また、この発明にかかる超接合半導体装置は、上述した発明において、前記第1半導体領域の前記第2領域において、前記活性領域から離れた外側の領域は前記第2導電型の第4カラムと接しないことを特徴とすることを特徴とする。
【0020】
また、この発明にかかる超接合半導体装置は、上述した発明において、前記第1半導体領域の前記第1領域および前記第2領域は、前記第1領域の幅と前記第2領域の幅との比が、3:7~5:5であることを特徴とする。
【0021】
また、この発明にかかる超接合半導体装置は、上述した発明において、前記第1半導体領域の前記第1領域および前記第2領域の平面形状は環状であることを特徴とする。
【0022】
また、この発明にかかる超接合半導体装置は、上述した発明において、前記活性領域の前記第1並列pn構造の前記第1カラムの幅および前記第2カラムの幅は、前記終端構造部の前記第2並列pn構造の前記第3カラムの幅および前記第4カラムの幅より広いことを特徴とする。
【0023】
また、この発明にかかる超接合半導体装置は、上述した発明において、前記第1半導体領域の、前記半導体基板と反対側の表面に第1導電型の第4半導体領域を備えることを特徴とする。
【0024】
また、この発明にかかる超接合半導体装置は、上述した発明において、前記第4半導体領域は、前記第2領域の前記半導体基板と反対側の表面全面に設けられることを特徴とする。
【0025】
また、この発明にかかる超接合半導体装置は、上述した発明において、前記第1半導体領域の前記第2領域は、前記活性領域に近いほど不純物濃度が高くなっていることを特徴とする。
【0026】
また、この発明にかかる超接合半導体装置は、上述した発明において、前記第1半導体領域の前記第2領域は前記第4カラムの複数と接することを特徴とする。
【0027】
また、この発明にかかる超接合半導体装置は、上述した発明において、前記第1半導体領域の前記第1領域と前記第2領域の間に、前記第1領域と前記第2領域に接しない前記第4カラムを有することを特徴とする。
【0028】
上述した発明によれば、リサーフ領域(第2導電型の第1半導体領域)は、2つ以上に分割されている。これにより、ストッパー電極に近い側のリサーフ領域が緩衝となり、急峻な耐圧低下を緩和することができる。このため、製造ばらつきに対する耐圧低下を抑制することが可能となる。また、保護膜上に電荷が蓄積された場合に、リサーフ領域が分割された点で等電位線の移動が停止し、電荷の影響が局所化される。このため、半導体装置の保護膜上に電荷が蓄積された場合の耐圧変動を抑制することができる。
【0029】
また、等電位線の移動が、リサーフ領域が分割された点で停止するため、リサーフ領域を4つに分割することで、リサーフ領域を2つに分割した形態よりも電荷の影響を局所化でき、半導体装置の保護膜上に電荷が蓄積された場合の耐圧変動をより抑制することができる。また、リサーフ領域を、素子外側に行くほど、幅が狭く、不純物濃度が低くなる形状にすることで、半導体装置の保護膜上に電荷が蓄積された場合の耐圧変動をより抑制することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明にかかる超接合半導体装置によれば、製造ばらつきに対する耐圧低下を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】実施の形態1にかかるSJ-MOSFETの構造を示す断面図である。
【
図2】実施の形態1にかかるSJ-MOSFETの構造を示す
図1のA-A’部分の平面図である。
【
図3】実施の形態1にかかるSJ-MOSFETの構造を示す
図1のB-B’部分の平面図である。
【
図4】実施の形態1にかかるSJ-MOSFETの構造を示す
図1のB-B’部分の他の平面図である。
【
図5】実施の形態2にかかるSJ-MOSFETの構造を示す断面図である。
【
図6】比較例のSJ-MOSFETの電位分布の内部状態を示す断面図である。
【
図7A】実施の形態1にかかるSJ-MOSFETの電位分布の内部状態を示す断面図である。
【
図7B】実施の形態2にかかるSJ-MOSFETの電位分布の内部状態を示す断面図である。
【
図8】実施の形態1および2にかかるSJ-MOSFETの製造途中の状態を示す断面図である(その1)。
【
図9】実施の形態1および2にかかるSJ-MOSFETの製造途中の状態を示す断面図である(その2)。
【
図10】実施の形態1および2にかかるSJ-MOSFETの製造途中の状態を示す断面図である(その3)。
【
図11】実施の形態1および2にかかるSJ-MOSFETの製造途中の状態を示す断面図である(その4)。
【
図12】実施の形態1および2にかかるSJ-MOSFETの製造途中の状態を示す断面図である(その5)。
【
図13】実施の形態1および2にかかるSJ-MOSFETの製造途中の状態を示す断面図である(その6)。
【
図14】実施の形態3にかかるSJ-MOSFETの構造を示す断面図である。
【
図15】実施の形態4にかかるSJ-MOSFETの構造を示す断面図である。
【
図16】実施の形態4にかかるSJ-MOSFETのリサーフ層の詳細構造を示す断面図である。
【
図17】実施の形態1、3、4にかかるSJ-MOSFETおよび比較例のSJ-MOSFETにおけるチャージバランスと耐圧との関係を示すグラフである。
【
図18】実施の形態1、3、4にかかるSJ-MOSFETおよび比較例のSJ-MOSFETにおける表面電荷と耐圧との関係を示すグラフである。
【
図19】従来のSJ-MOSFETの構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる超接合半導体装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nやpに付す+および-は、それぞれそれが付されていない層や領域よりも高不純物濃度および低不純物濃度であることを意味する。+および-を含めたnやpの表記が同じ場合は近い濃度であることを示し濃度が同じとは限らない。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0033】
(実施の形態1)
本発明にかかる超接合半導体装置について、SJ-MOSFETを例に説明する。
図1は、実施の形態1にかかるSJ-MOSFETの構造を示す断面図である。
図2は、実施の形態1にかかるSJ-MOSFETの構造を示す
図1のA-A’部分の平面図である。また、
図3は、実施の形態1にかかるSJ-MOSFETの構造を示す
図1のB-B’部分の平面図である。また、
図4は、実施の形態1にかかるSJ-MOSFETの構造を示す
図1のB-B’部分の他の平面図である。
図1は、
図2~
図4のa-a’部分の断面図である。
【0034】
図1に示すSJ-MOSFET50は、シリコン(Si)からなる半導体基体(シリコン基体:半導体チップ)のおもて面(後述するp型ベース領域5側の面)側にMOS(Metal Oxide Semiconductor)ゲートを備えたSJ-MOSFET50である。このSJ-MOSFET50は、活性領域30と、活性領域30の周囲を囲むエッジ終端領域40とを備える。活性領域30は、オン状態のときに電流が流れる領域である。エッジ終端領域40は、ドリフト領域の基体おもて面側の電界を緩和し耐圧を保持する領域である。
図1の活性領域30には、1つの単位セル(素子の機能単位)のみを示し、これらに隣接する他の単位セルを図示省略する。なお、活性領域30とエッジ終端領域40の境界はp型ベース領域5の端部とする。
【0035】
n+型半導体基板(第1導電型の半導体基板)1は、例えばリン(P)がドーピングされたシリコン単結晶基板である。n型ドリフト層(第1導電型の第1半導体層)2は、n+型半導体基板よりも低い不純物濃度で、例えばリンがドーピングされている低濃度n型ドリフト層である。以下、n+型半導体基板1とn型ドリフト層2とを併せて半導体基体とする。半導体基体のおもて面側には、MOSゲート構造(素子構造)が形成されている。また、半導体基体の裏面には、ドレイン電極14が設けられている。
【0036】
SJ-MOSFET50の活性領域30側には、第1並列pn領域が設けられている。第1並列pn領域は、n型カラム領域3aとp型カラム領域4aとが交互に繰り返し配置されている。p型カラム領域4aは、n型ドリフト層2の表面からn
+型半導体基板層1の表面に達しないように設けられている。
図2~
図4に示すように、活性領域30におけるn型カラム領域3aとp型カラム領域4aの平面形状は、ストライプ形状である。
【0037】
また、n型ドリフト層2の表面層中にp型カラム領域4aと接して、選択的にp型ベース領域(第2導電型の第2半導体領域)5が設けられ、p型ベース領域5の表面層中には、n+型ソース領域(第1導電型の第3半導体領域)6が選択的に設けられている。p型ベース領域5の、n+型ソース領域6とn型カラム領域3aとに挟まれた部分の表面には、ゲート絶縁膜7を介してゲート電極8が設けられている。ゲート電極8は、ゲート絶縁膜7を介して、n型カラム領域3aの表面上に設けられていてもよい。
【0038】
絶縁膜13は、半導体基体のおもて面側に、ゲート電極8を覆うように設けられている。ソース電極10は、層間絶縁膜(不図示)に開口されたコンタクトホールを介して、n+型ソース領域6およびp型ベース領域5に接し、n+型ソース領域6およびp型ベース領域5と電気的に接続される。
【0039】
ソース電極10は、絶縁膜13によって、ゲート電極8と電気的に絶縁されている。ソース電極10上には、選択的に例えばポリイミドからなるパッシベーション膜などの保護膜(不図示)が設けられている。
【0040】
ソース電極10よりも外側(エッジ終端領域40側)にソース電極10と離して、フィールドプレート電極15が配置されている。また、フィールドプレート電極15は、活性領域30とエッジ終端領域40との境界に沿った略環状に設けられる。フィールドプレート電極15は、ゲート電極8に電気的に接続されるゲート配線の役割をしてもよい。
【0041】
SJ-MOSFET50のエッジ終端領域40側にも、第2並列pn領域が設けられている。
図3に示すように、エッジ終端領域40におけるn型カラム領域3bとp型カラム領域4bの平面形状は、ストライプ形状であってもよく、
図4に示すように、エッジ終端領域40におけるn型カラム領域3bとp型カラム領域4bの平面形状は、矩形形状であってもよい。
【0042】
また、
図1~
図4に示すように、活性領域30におけるn型カラム領域3aの幅とp型カラム領域4aの幅は、それぞれエッジ終端領域40におけるn型カラム領域3bの幅とp型カラム領域4bの幅より広くなっている。これにより、エッジ終端領域40における第2並列pn構造の不純物濃度を、活性領域30における第1並列pn領域の不純物濃度よりも低くすることができる。このため、エッジ終端領域40の耐圧を活性領域30の耐圧よりも高くすることができる。
【0043】
第2並列pn領域の外側には、n型ドリフト層2が第2並列pn領域を取り囲むように設けられ、n型ドリフト層2の表面にチャネルストッパーとして機能するn+型領域(不図示)が設けられてもよい。第2並列pn領域の表面にリサーフ領域(第2導電型の第1半導体領域)17が設けられている。リサーフ領域17およびn型ドリフト層2の表面に絶縁膜13が設けられている。また、n+型領域の表面にストッパー電極16が設けられている。
【0044】
図1および
図2に示すように、実施の形態1では、リサーフ領域17は、フィールドプレート電極15の外端部に平面視で重なるように、ストッパー電極16の方向へ延び、2つ以上に分割されている。
図1の例では、リサーフ領域17は、活性領域30に近い第1リサーフ領域17aと、活性領域30からは離れた第2リサーフ領域17bの2つに分割されている。
【0045】
図2に示すように第1リサーフ領域17aおよび第2リサーフ領域17bの平面形状は環状に設けられている。また、第1リサーフ領域17aおよび第2リサーフ領域17bは、第2並列pn領域のp型カラム領域4aに電気的に接続している。さらに
図1に示すように第1リサーフ領域17aと第2リサーフ領域17bとの間には、第1リサーフ領域17aおよび第2リサーフ領域17bに接続していないp型カラム領域4bが配置されてもよい。
【0046】
また、第1リサーフ領域17aおよび第2リサーフ領域17bとその上部の絶縁膜13との間には、n型領域18が設けられている。なお、活性領域30側の第1リサーフ領域17aの端部25は絶縁膜13に接していてもよい。また、第1リサーフ領域17aの端部25は、フィールドプレート電極15に電気的に接続されてもよい。第1リサーフ領域17aの端部25は、環状に設けられてもよい。
【0047】
上述したように、耐圧保持する時にリサーフ領域17が部分的に、または完全に空乏化することでエッジ終端領域40の電界集中を緩和することができる。リサーフ領域17を分割することで、リサーフ領域17内の電位を互いに分担することができ、電界強度が部分的に上昇する。このため、製造ばらつきにより、第2並列pn領域においてp型の不純物が多いチャージバランスとなった場合、または、リサーフ領域17のp型の不純物の濃度が上昇した場合でもストッパー電極16に近い側のリサーフ領域17bが緩衝となり、急峻な耐圧低下を緩和することができる。このため、製造ばらつきに対する耐圧低下を抑制することが可能となる。
【0048】
(実施の形態2)
図5は、実施の形態2にかかるSJ-MOSFETの構造を示す断面図である。
図5のA-A’部分は、実施の形態1にかかるSJ-MOSFETの構造を示す
図2の平面図と同じである。また、実施の形態2にかかるSJ-MOSFETの構造を示す
図5のB-B’部分は、実施の形態1にかかる実施の形態1にかかるSJ-MOSFETの構造を示す
図3の平面図と同じである。また、実施の形態2にかかるSJ-MOSFETの構造を示す
図5のB-B’部分の他の平面図は、
図4の平面図と同じである。
【0049】
実施の形態2は、第1リサーフ領域17aと第2リサーフ領域17bとの間に第1リサーフ領域17aおよび第2リサーフ領域17bに接続していないp型カラム領域4bが配置されていない点が異なる。
【0050】
実施の形態2は、第1リサーフ領域17aと第2リサーフ領域17bとの間に第1リサーフ領域17aおよび第2リサーフ領域17bに接続していないp型カラム領域4bが配置されていなくても、実施の形態1と同じ効果を得ることができる。
【0051】
また、1つのSJ-MOSFET50内に、
図1に示す第1リサーフ領域17aと第2リサーフ領域17bとの間に第1リサーフ領域17aおよび第2リサーフ領域17bに接続していないp型カラム領域4bが配置されている部分と、
図5に示す第1リサーフ領域17aと第2リサーフ領域17bとの間に第1リサーフ領域17aおよび第2リサーフ領域17bに接続していないp型カラム領域4bが配置されていない部分が混在してもよい。
【0052】
ただし、混在する場合は、第1リサーフ領域17aと第2リサーフ領域17bとの間が分離されている。また、第1リサーフ領域17aの幅w1と活性領域30から離れた第2リサーフ領域17bの幅w2が後述する関係を満たす。
【0053】
また、
図1に示すSJ-MOSFET50は、モールド樹脂等の封止樹脂で封止された形態で使用される。封止樹脂とSJ-MOSFET50の密着性が十分でない場合、封止樹脂とSJ-MOSFET50との間に、水分等のイオン性の物質が侵入する場合がある。この場合、SJ-MOSFET50の保護膜上に電荷が蓄積された状態となる。
【0054】
図6は、比較例のSJ-MOSFETの電位分布の内部状態を示す断面図である。比較例のSJ-MOSFETは、リサーフ領域117が第1リサーフ領域17aと第2リサーフ領域17bに分割されていない点が実施の形態1にかかるSJ-MOSFETと異なる。
図6に示すように、リサーフ領域117が分割されないと、リサーフ領域117上に等電位線60がほぼ均等に並んでいる。このような状態に、表面保護膜70上に電荷が蓄積されると、等電位線60が内側(活性領域30側)または外側(ストッパー電極16側)に移動する。例えば、正の電荷が蓄積されると内側に移動し、負の電荷が蓄積されると外側に移動する。この場合、リサーフ領域117の端部に等電位線60が密の箇所が発生して、耐圧が変動してしまう。
【0055】
図7Aは、実施の形態1にかかるSJ-MOSFETの電位分布の内部状態を示す断面図である。
図7Aに示すように、リサーフ領域17が分割されると、分割された点で等電位線60の間隔が広くなっている。このような状態で表面保護膜70上に電荷が蓄積されると、等電位線60が内側または外側に移動しても、分割された点で等電位線60の移動が停止する。これにより、電荷による影響を局所的にすることができる。このため、半導体装置の保護膜上に電荷が蓄積された場合の耐圧変動を抑制することができる。また、分割された点で等電位線60の移動が停止するため、リサーフ領域17の分割が多いほど、電荷が蓄積された場合の耐圧変動を抑制することができる。
【0056】
図7Bは、実施の形態2にかかるSJ-MOSFETの電位分布の内部状態を示す図である。
図7Bは、
図7Aと同じ効果を得ることができる。
【0057】
また、
図1および
図5のようにリサーフ領域17を2つに分割する場合、活性領域30に近い第1リサーフ領域17aの幅w1と活性領域30から離れた第2リサーフ領域17bの幅w2との比は、3:7~5:5の範囲であることが好ましい。ここで、第1リサーフ領域17aの幅w1とは、第1リサーフ領域17aの内側から外側への長さのことである。第2リサーフ領域17bの幅w2も同様である。つまり、第1リサーフ領域17aの幅w1が3であり、第2リサーフ領域17bの幅w2が7である場合から、第1リサーフ領域17aの幅w1が5であり第2リサーフ領域17bの幅w2が5である場合までの範囲が好ましい。
【0058】
耐圧を保持するためにはリサーフ領域が完全に空乏化することが望ましいが、リサーフ領域が部分的に空乏化することでも耐圧を保持することができる。
図7Aおよび
図7Bに示すように活性領域30側にある第1リサーフ領域17aが部分的に空乏化する場合、
図6に示すようにリサーフ領域117が完全に空乏化する場合と比べて全体的に等電位線60の間隔が広くなる傾向がある。また、第1リサーフ領域17aと第2リサーフ領域17bに挟まれた領域では等電位線60の間隔が狭くなる(密になる)。これにより、第2リサーフ領域17bの等電位線60の間隔が広くなるため電界が緩和される。ストッパー電極16に近い側で電界が緩和されることで、表面電荷による耐圧の低下を抑えることができる。
【0059】
さらに、リサーフ領域17を2つに分割する場合、表面電荷による耐圧の低下を少なくさせるため、活性領域30に近い第1リサーフ領域17aの幅w1が、活性領域30から離れた第2リサーフ領域17bの幅w2より短いことが好ましい。また、リサーフ領域17を3つ以上に分割する場合は、表面電荷による耐圧の低下を少なくさせるため、ストッパー電極16に近い側のリサーフ領域の幅を最も長くすることが好ましい。
【0060】
また、リサーフ領域17と絶縁膜13との間にn型領域18を設けることで、表面電荷によるエッジ終端領域40の耐圧の変動をより安定させることができる。また、n型領域18により、絶縁膜13にホール(正孔)が侵入することを減少させることができる。
【0061】
(実施の形態1および2にかかる超接合半導体装置の製造方法)
次に、実施の形態1および2にかかる超接合半導体装置の製造方法について説明する。
図8~
図13は、実施の形態1および2にかかるSJ-MOSFET50の製造途中の状態を示す断面図である。まず、シリコンからなりn
+型ドレイン層となるn
+型半導体基板1を用意する。次に、n
+型半導体基板1のおもて面上に、n
+型半導体基板1より不純物濃度の低いn型層2aをエピタキシャル成長させる。ここまでの状態が
図8に記載される。
【0062】
n型層2aの不純物濃度は、例えば、1.0×1014/cm3以上1.0×1017/cm3以下となるようにn型不純物をドーピングさせてエピタキシャル成長させてもよい。
【0063】
次に、n型層2aの表面上に、フォトリソグラフィ技術によって所定の開口幅を有するイオン注入用マスク20aを例えばフォトレジストで形成する。この際、活性領域の開口幅w11および開口部のピッチP1をエッジ終端領域の開口幅w12および開口部のピッチP2よりも広くする。このイオン注入用マスク20aをマスクとして、p型不純物、例えばホウ素(B)のイオン注入21を行い、n型層2aの表面層に、p型領域19を形成する。ここまでの状態が
図9に記載される。次に、イオン注入用マスク20aを除去する。
【0064】
次に、n型層2aのおもて面側に、n型層2aと同程度の不純物濃度のn型層2bをエピタキシャル成長させる。次に、n型層2bの表面上に、フォトリソグラフィ技術によって所定の開口幅を有するイオン注入用マスク20aを例えばフォトレジストで形成する。この際、活性領域の開口幅w11および開口部のピッチP1をエッジ終端領域の開口幅w12および開口部のピッチP2よりも広くする。このイオン注入用マスク20aをマスクとして、p型不純物、例えばホウ素(B)のイオン注入21を行い、n型層2bの表面層に、p型領域19を形成する。次に、イオン注入用マスク20aを除去する。
【0065】
次に、n型層2bのおもて面側に、n型層2bと同程度の不純物濃度のn型層2cをエピタキシャル成長させる。次に、n型層2cの表面上に、フォトリソグラフィ技術によって所定の開口幅を有するイオン注入用マスク20aを例えばフォトレジストで形成する。この際、活性領域の開口幅w11および開口部のピッチP1をエッジ終端領域の開口幅w12および開口部のピッチP2よりも広くする。このイオン注入用マスク20aをマスクとして、p型不純物、例えばホウ素(B)のイオン注入21を行い、n型層2cの表面層に、p型領域19を形成する。次に、イオン注入用マスク20aを除去する。
【0066】
次に、n型層2cのおもて面側に、n型層2cと同程度の不純物濃度のn型層2dをエピタキシャル成長させる。次に、n型層2dの表面上に、フォトリソグラフィ技術によって所定の開口幅を有するイオン注入用マスク20aを例えばフォトレジストで形成する。この際、活性領域の開口幅w11および開口部のピッチP1をエッジ終端領域の開口幅w12および開口部のピッチP2よりも広くする。このイオン注入用マスク20aをマスクとして、p型不純物、例えばホウ素(B)のイオン注入21を行い、n型層2dの表面層に、p型領域19を形成する。これにより、n型層2a~n型層2dとp型領域19からなる下部の第1および第2並列pn領域が形成される。ここまでの状態が
図10に記載される。
【0067】
図10の例では、イオン注入、エピタキシャル成長を4回繰り返した例を示すが、これに限定されるものではなく、イオン注入、エピタキシャル成長の回数は、耐圧等の目標特性に応じて適宜変更できる。
【0068】
次に、イオン注入用マスク20aを除去する。次に、n型層2dのおもて面側に、n型層2dと不純物濃度が同程度のn型層2eをエピタキシャル成長させる。次に、n型層2eの表面上に、フォトリソグラフィ技術によって所定の開口幅を有するイオン注入用マスク20bを例えばフォトレジストで形成する。この際、エッジ終端領域の開口幅w13および開口部のピッチP3をn型層2a~n型層2d上に形成したマスクのエッジ終端領域の開口幅w12および開口部のピッチP2よりも狭くする。また、リサーフ領域17が第1リサーフ領域17aと第2リサーフ領域17bに分けられる箇所のフォトレジスト幅w15は、エッジ終端領域のフォトレジスト幅w14(=P3-w13)より広くする。このイオン注入用マスク20bをマスクとして、p型不純物、例えばホウ素(B)のイオン注入21を行い、n型層2eの表面層に、p型領域19を形成する。これにより活性領域30にn型層2eとp型領域19からなる上部の第1および第2並列pn領域が形成され、エッジ終端領域40にリサーフ領域17が形成される。ここまでの状態が
図11に記載される。次に、イオン注入用マスク20bを除去する。
【0069】
次に、n型層2eのおもて面側に、n型層2eと不純物濃度が同程度のn型層2fをエピタキシャル成長させる。ここまでの状態が
図12に記載される。
【0070】
次に、p型領域19を活性化させるための熱処理(アニール)を行う。この熱処理により、注入された不純物が拡散され、拡散された不純物が縦方向につながることで、p型カラム領域4a、4bが形成される。また、n型層2eに形成されたp型領域19は互いの間隔が狭いため、拡散された不純物が横方向につながり、リサーフ領域17が形成される。
【0071】
ここで、エッジ終端領域40では、活性領域30よりもマスクの開口幅が狭いため、1つの箇所に注入される不純物量が少なく、拡散量が少ない。このため、熱処理時に不純物がn型領域2fの表面に到達しない。このため、リサーフ領域17の上部にn型領域18が形成された状態になる。一方、活性領域30では、不純物量が多く、拡散量が多いため、不純物がn型領域2fの表面に到達し、p型カラム領域4aが表面に露出する。不純物量により活性領域30でも、不純物がn型領域2fの表面に到達しない場合があるが、p型ベース領域5を形成する際に、イオン注入を行うため、活性領域30では、p型カラム領域4aとp型ベース領域5が連結して、p型領域が表面に露出する。ここまでの状態が
図13に記載される。
【0072】
次に、活性領域30側のn型カラム領域3aおよびp型カラム領域4aの表面上に、フォトリソグラフィ技術によって所望の開口部を有するマスクを、例えばレジストで形成する。そして、このレジストマスクをマスクとしてイオン注入法によってp型の不純物をイオン注入する。それによって、p型カラム領域4aの表面領域全体およびn型カラム領域3aの表面領域の一部に、p型ベース領域5が形成される。次に、p型ベース領域5を形成するためのイオン注入時に用いたマスクを除去する。
【0073】
次に、p型ベース領域5の表面上に、フォトリソグラフィ技術によって所望の開口部を有するマスクを、例えばレジストで形成する。そして、このレジストマスクをマスクとしてイオン注入法によってn型の不純物をイオン注入する。それによって、p型ベース領域5の表面領域の一部に、n+型ソース領域6が形成される。次に、n+型ソース領域6を形成するためのイオン注入時に用いたマスクを除去する。
【0074】
次に、p型ベース領域5およびn+型ソース領域6を活性化させるための熱処理(アニール)を行う。また、p型ベース領域5およびn+型ソース領域6を形成する順序は種々変更可能である。
【0075】
次に、半導体基体のおもて面側を熱酸化し、ゲート絶縁膜7を形成する。次に、ゲート絶縁膜7上に、ゲート電極8として、例えばリンがドープされた多結晶シリコン層を形成する。次に、多結晶シリコン層をパターニングして選択的に除去し、p型ベース領域5のn+型ソース領域6とn型カラム領域3aに挟まれた部分上に多結晶シリコン層を残す。このとき、n型カラム領域3a上に多結晶シリコン層を残してもよい。
【0076】
次に、ゲート電極8を覆うように、絶縁膜13として、例えば、リンガラス(PSG:Phospho Silicate Glass)を成膜する。次に、絶縁膜13およびゲート絶縁膜7をパターニングして選択的に除去する。例えば、n+型ソース領域6上の絶縁膜13およびゲート絶縁膜7を除去することによって、コンタクトホールを形成し、n+型ソース領域6を露出させる。次に、層間絶縁膜9の平担化を行うために熱処理(リフロー)を行う。
【0077】
次に、スパッタによりソース電極10、フィールドプレート電極15およびストッパー電極16を成膜し、フォトリソグラフィおよびエッチングによりソース電極10、フィールドプレート電極15およびストッパー電極16をパターニングする。このとき、コンタクトホール内にソース電極10を埋め込み、n+型ソース領域6とソース電極10とを電気的に接続させる。なお、コンタクトホール内にはバリアメタルを介してタングステンプラグなどを埋め込んでもよい。
【0078】
次に、n
+型半導体基板1の表面(半導体基体の裏面)に、ドレイン電極14として、例えばニッケル膜を成膜する。そして、熱処理し、n
+型半導体基板1とドレイン電極14とのオーミック接合を形成する。これにより、
図1に示したSJ-MOSFET50が完成する。
【0079】
以上、説明したように、実施の形態1および2によれば、リサーフ領域は、2つ以上に分割されている。これにより、ストッパー電極に近い側のリサーフ領域が緩衝となり、急峻な耐圧低下を緩和することができる。このため、製造ばらつきに対する耐圧低下を抑制することが可能となる。また、保護膜上に電荷が蓄積された場合に、リサーフ領域が分割された点で等電位線の移動が停止し、電荷の影響が局所化される。このため、半導体装置の保護膜上に電荷が蓄積された場合の耐圧変動を抑制することができる。
【0080】
(実施の形態3)
図14は、実施の形態3にかかるSJ-MOSFETの構造を示す断面図である。実施の形態3は、リサーフ領域17を第1リサーフ領域17a、第2リサーフ領域17b、第3リサーフ領域17cおよび第4リサーフ領域17dの4つに分割した点で、実施の形態1および実施の形態2と異なる。
【0081】
実施の形態3において、第1リサーフ領域17aの幅w1、第2リサーフ領域17bの幅w2、第3リサーフ領域17cの幅w3および第4リサーフ領域17dの幅w4は、w1≦w2≦w3≦w4の関係性を有することが好ましい。
図14において、第1リサーフ領域17aの端部25はp型ベース領域5の一部であり、第1リサーフ領域17aは、p型ベース領域5を介してフィールドプレート電極15aに接続されてもよい。同様に、第2リサーフ領域17b、第3リサーフ領域17cおよび第4リサーフ領域17dは、それぞれp型ベース領域5を介してフィールドプレート電極15b、フィールドプレート電極15c、フィールドプレート電極15dに接続されてもよい。
【0082】
フィールドプレート電極15aは、ゲート電極8に電気的に接続されるゲート電極の役割をしてもよい。ただし、フィールドプレート電極15b、15c、15dがゲート電極8に電気的に接続されるとゲート電極8と同電位になり耐圧が維持できなくなる。よって、フィールドプレート電極15b、15c、15dは、ゲート電極8には電気的に接続されない。
【0083】
なお、第3リサーフ領域17cの両端に配置されるp型カラム領域4c、p型カラム領域4dは、第3リサーフ領域17cに接していてもよく、接していなくてもよい。
【0084】
以上、説明したように、実施の形態3では、リサーフ領域を4つに分割している。これにより、実施の形態1および2と同様に、急峻な耐圧低下を緩和することができ、製造ばらつきに対する耐圧低下を抑制することが可能となる。さらに、等電位線の移動が、リサーフ領域が分割された点で停止するため、実施の形態3は、リサーフ領域を2つに分割した実施の形態1および2よりも電荷の影響を局所化できる。このため、実施の形態3は、半導体装置の保護膜上に電荷が蓄積された場合の耐圧変動を実施の形態1および2よりも抑制することができる。
【0085】
(実施の形態4)
図15は、実施の形態4にかかるSJ-MOSFETの構造を示す断面図である。実施の形態4は、第4リサーフ領域17dの不純物濃度および外側のp型カラム領域4bの長さが実施の形態3と異なる。実施の形態4においても、実施の形態3と同様に、第1リサーフ領域17aの幅w1、第2リサーフ領域17bの幅w2、第3リサーフ領域17cの幅w3および第4リサーフ領域17dの幅w4は、w1≦w2≦w3≦w4の関係性を有することが好ましい。
【0086】
図15に示すように実施の形態4において、エッジ終端領域40における第2並列pn構造は、素子内側(活性領域30側)の内側構造S1と、内側構造S1より活性領域30から離れている、素子外側(ストッパー電極16側)の外側構造S2とから構成されている。外側構造S2のp型カラム領域4bのn型ドリフト層の表面からの長さt2は、内側構造S1のp型カラム領域4bのn型ドリフト層の表面からの長さt1より短くなっていてもよく、同じ長さでもよい(長さt2は長さt1以下であればよい(t2≦t1))。なお、第3リサーフ領域17cの両端に配置されるp型カラム領域4c、p型カラム領域4dは、第3リサーフ領域17cに接していてもよく、接していなくてもよい。
【0087】
図16は、実施の形態4にかかるSJ-MOSFETのリサーフ層の詳細構造を示す断面図である。
図16は、第4リサーフ領域17dの拡大図である。
図16に示すように、第4リサーフ領域17dは、素子外側に行くほど、幅が狭くなっている。また、第4リサーフ領域17dは、素子外側に行くほど、不純物濃度が低くなっている。第4リサーフ領域17dは、素子内側(活性領域30に近い側)の第1部分17d1と、第1部分17d1より活性領域30から離れた第2部分17d2と、第2部分17d2より活性領域30から離れた、素子外側の第3部分17d3とを有する。第1部分17d1のリサーフ領域中心深さt3から表面までの(拡散)距離をd1、不純物濃度をD1、第2部分17d2のリサーフ領域中心深さt3から表面までの(拡散)距離をd2、不純物濃度をD2、第3部分17d3のリサーフ領域中心深さt3から表面までの(拡散)距離をd3、不純物濃度をD3とする。この場合、d1>d2>d3およびD1:D2=1.5:1~1.2:1、D2:D3=1:0.75~1:0.5となることが好ましい。
【0088】
実施の形態4では、第4リサーフ領域17dのみを、素子外側に行くほど、幅が狭く、不純物濃度が低くなる形状にしているが、内側の第1リサーフ領域17a、第2リサーフ領域17b、第3リサーフ領域17cを同様の形状にしてもよい。
【0089】
以上、説明したように、実施の形態4では、第4リサーフ領域を、素子外側に行くほど、幅が狭く、不純物濃度が低くなる形状にしている。これにより、実施の形態4は、半導体装置の保護膜上に電荷が蓄積された場合の耐圧変動を実施の形態1~3よりも抑制することができる。
【0090】
図17は、実施の形態1、3、4にかかるSJ-MOSFETおよび比較例のSJ-MOSFETにおけるチャージバランスと耐圧との関係を示すグラフである。比較例のSJ-MOSFETは、
図6に示すようにリサーフ領域117が第1リサーフ領域17aと第2リサーフ領域17bに分割されていない点が実施の形態1にかかるSJ-MOSFETと異なる。
図17において、縦軸はSJ-MOSFETの耐圧を示し、単位はVである。横軸はチャージバランスを示し、チャージバランス”1”が第1および第2並列pn領域において、n型カラム領域3a、3bの不純物量がp型カラム領域4a、4bの不純物量とほぼ等しいときの状態を示し、チャージバランス”1”より原点に近い方((nリッチ)側)がn型の不純物量がより多い状態を示し、チャージバランス”1”より原点から遠い方((pリッチ)側)がp型の不純物量がより多い状態を示す。
【0091】
図17に示すように、チャージバランス”1”の場合、実施の形態1、3、4にかかるSJ-MOSFETは比較例のSJ-MOSFETと同等の耐圧である。また、実施の形態1、3、4にかかるSJ-MOSFETは、チャージバランスが片寄った状態(n型/p型の不純物量のいずれかがより多くなった状態)でも、比較例のSJ-MOSFETよりも耐圧の低下が少なくなっている。また、実施の形態3、4にかかるSJ-MOSFETは、チャージバランスが片寄った状態で、実施の形態1のSJ-MOSFETよりも耐圧の低下が少なくなっている。
【0092】
なお、実施の形態2にかかるSJ-MOSFETにおいても同じ効果が得られる。また、1つのSJ-MOSFET内に、実施の形態1にかかる
図1に示す断面形状と実施の形態2にかかる
図5に示す断面形状とが混在していても同じ効果が得られる。
【0093】
図18は、実施の形態1、3、4にかかるSJ-MOSFETおよび比較例SJ-MOSFETにおける表面電荷と耐圧との関係を示すグラフである。
図18において、縦軸はSJ-MOSFETの耐圧を示し、単位はVである。横軸は表面電荷を示す。横軸において、0の場所が表面電荷ゼロの状態を示し、0の場所より原点に近い方(マイナス(-)側)が負の電荷がより多い状態を示し、0の場所より原点から遠い方(プラス(+)側)が正の電荷がより多い状態を示す。また、
図18は、チャージバランス”1”の場合での表面電荷と耐圧との関係を示している。表面電荷とは、超接合半導体装置(SJ-MOFET)の最表面に配置される表面保護膜(例えば、
図6、
図7Aおよび
図7Bに示す表面保護膜70等)に蓄積される電荷である。
【0094】
図18に示すように、表面電荷ゼロの状態の場合、実施の形態1、3、4にかかるSJ-MOSFETは比較例のSJ-MOSFETと同等の耐圧である。実施の形態1にかかるSJ-MOSFETは、負の電荷がより多い状態でも、比較例のSJ-MOSFETと同等の耐圧である。一方、実施の形態1にかかるSJ-MOSFETは、正の電荷がより多い状態では、比較例のSJ-MOSFETよりも耐圧の低下が少なくなっている。
【0095】
実施の形態3、4にかかるSJ-MOSFETは、負の電荷がより多い状態でも、正の電荷がより多い状態でも、比較例のSJ-MOSFETよりも耐圧の低下が少なくなっている。また、実施の形態3にかかるSJ-MOSFETは、正の電荷がより多い状態では、もっとも耐圧の低下が少なくなっている。実施の形態4にかかるSJ-MOSFETは、負の電荷がより多い状態では、もっとも耐圧の低下が少なくなっている。
【0096】
なお、実施の形態2にかかるSJ-MOSFETにおいても同じ効果が得られる。また、1つのSJ-MOSFET内に、実施の形態1にかかる
図1に示す断面形状と実施の形態2にかかる
図5に示す断面形状とが混在していても同じ効果が得られる。
【0097】
以上において本発明では、シリコン基板の第1主面上にMOSゲート構造を構成した場合を例に説明したが、これに限らず、半導体の種類(例えば、炭化珪素(SiC)など)、基板主面の面方位などを種々変更可能である。また、本発明では、各実施の形態では第1導電型をp型とし、第2導電型をn型としたが、本発明は第1導電型をn型とし、第2導電型をp型としても同様に成り立つ。
【産業上の利用可能性】
【0098】
以上のように、本発明にかかる超接合半導体装置は、電力変換装置や種々の産業用機械などの電源装置などに使用される高耐圧半導体装置に有用である。
【符号の説明】
【0099】
1、101 n+型半導体基板
2、102 n型ドリフト層
2a~2f n型層
3a、3b、103 n型カラム領域
4a、4b、4c、4d104 p型カラム領域
5、105 p型ベース領域
6、106 n+型ソース領域
7、107 ゲート絶縁膜
8、108 ゲート電極
10、110 ソース電極
13、113 絶縁膜
14、114 ドレイン電極
15 フィールドプレート電極
15a フィールドプレート電極
15b フィールドプレート電極
15c フィールドプレート電極
15d フィールドプレート電極
16 ストッパー電極
17、117 リサーフ領域
17a 第1リサーフ領域
17b 第2リサーフ領域
17c 第3リサーフ領域
17d 第4リサーフ領域
18 n型領域
19 p型領域
20a、20b イオン注入用マスク
21 イオン注入
25 第1リサーフ領域の端部
30、130 活性領域
40、140 エッジ終端領域
50、150 SJ-MOSFET
60 等電位線
70 表面保護膜
w1 第1リサーフ領域の幅
w2 第2リサーフ領域の幅
w3 第3リサーフ領域の幅
w4 第4リサーフ領域の幅
w11 活性領域の開口幅
w12 エッジ終端領域の開口幅
w13 エッジ終端領域の開口幅
w14 エッジ終端領域のフォトレジスト幅
w15 第1リサーフ領域17aと第2リサーフ領域17bに分けられる箇所のフォトレジスト幅
P1 開口部のピッチ(活性領域)
P2 開口部のピッチ(エッジ終端領域)
P3 開口部のピッチ(エッジ終端領域)