(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093722
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】衣服
(51)【国際特許分類】
A41D 13/05 20060101AFI20240702BHJP
A61B 5/256 20210101ALI20240702BHJP
A41D 13/12 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
A41D13/05 131
A61B5/256 210
A41D13/12 145
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210273
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000310
【氏名又は名称】株式会社アシックス
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】越田 まなみ
(72)【発明者】
【氏名】田川 武弘
(72)【発明者】
【氏名】松本 竜文
【テーマコード(参考)】
3B011
3B211
4C127
【Fターム(参考)】
3B011AB08
3B011AB09
3B011AC17
3B011AC22
3B211AB08
3B211AB09
3B211AC17
3B211AC22
4C127LL13
4C127LL22
(57)【要約】
【課題】生体情報を取得するために設けられた電極が着用者の肌から離れにくい衣服を得ること。
【解決手段】衣服は、着用者の腹側に位置する前身頃部と、着用者の背中側に位置する後身頃部3と、を有する身頃本体と、後身頃部3のうち着用者の背中と対向する背部内面31aに設けられた複数の電極11,12,13と、背部内面31aに設けられて、複数の電極11,12,13のそれぞれから延びる配線21,22,23と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の腹側に位置する前身頃部と、着用者の背中側に位置する後身頃部と、を有する身頃本体と、
前記後身頃部のうち着用者の背中と対向する背部内面に設けられた複数の電極と、
前記背部内面に設けられて、複数の前記電極のそれぞれから延びる配線と、を備える衣服。
【請求項2】
前記身頃本体は、右側上部に配置された右側アームホールおよび左側上部に配置された左側アームホールを有し、
前記身頃本体の着丈方向を上下方向とし、襟側を上方、裾側を下方とそれぞれした場合に、
複数の前記電極は、前記右側アームホールの最下端と前記左側アームホールの最下端を結ぶ第1ラインよりも上方に設けられる上部電極および前記第1ラインよりも下方に設けられる第1下部電極および第2下部電極を含む請求項1に記載の衣服。
【請求項3】
前記右側アームホールの最上端と前記左側アームホールの最上端を結ぶラインを第2ラインとしたときに、
前記上部電極は、前記第1ラインと前記第2ラインとの間の領域を前記上下方向に3等分したうちの、上方の1/3から2/3の領域である上方領域に設けられている請求項2に記載の衣服。
【請求項4】
前記後身頃部の後ろ着丈裾のラインを第3ラインとしたときに、
前記第1、第2下部電極は、前記第1ラインと前記第3ラインとの間の領域を前記上下方向に4等分したうちの、2/4から3/4の領域である下方領域に設けられている請求項3に記載の衣服。
【請求項5】
前記下方領域を左右方向に5等分したときに、前記第1下部電極は、前記下方領域のうち、左側の1/5から2/5の領域に配置され、
前記第2下部電極は、前記下方領域のうち、右側の4/5から5/5の領域に配置されている請求項4に記載の衣服。
【請求項6】
前記後身頃部に設けられ、かつ複数の前記配線と接続されたコネクタ部をさらに備え、
前記コネクタ部は、外部装置を接続可能な端子部を有し、前記端子部を前記後身頃部の外面に露出させて設けられている請求項1に記載の衣服。
【請求項7】
前記身頃本体は、右側上部に配置された右側アームホールおよび左側上部に配置された左側アームホールを有し、
前記身頃本体の着丈方向を上下方向とし、襟側を上方、裾側を下方とそれぞれし、
前記右側アームホールの最下端と前記左側アームホールの最下端を結ぶ第1ラインと、前記右側アームホールの最上端と前記左側アームホールの最上端を結ぶ第2ラインと、の間の領域を前記上下方向に3等分したうちの、上方の1/3から2/3の領域を上方領域とし、
前記後身頃部の後ろ着丈裾のラインである第3ラインと前記第1ラインと、の間の領域を前記上下方向に4等分したうちの、2/4から3/4の領域を下方領域とした場合に、
前記コネクタ部は、前記上方領域と前記下方領域との間の領域である中間領域に配置されている請求項6に記載の衣服。
【請求項8】
複数の前記電極は、前記第1ラインよりも上方に設けられる上部電極をさらに備え、
前記コネクタ部は前記上部電極の直下に配置されており、
前記コネクタ部と前記上部電極とを接続する前記配線は直線状である請求項7に記載の衣服。
【請求項9】
前記後身頃部は、前記背部内面を有する第1の生地と、前記第1の生地の外側に設けられる第2の生地とを有する請求項1から8のいずれか1つに記載の衣服。
【請求項10】
前記第2の生地よりも前記第1の生地のほうが、伸長率が高い請求項9に記載の衣服。
【請求項11】
前記第1の生地は、上下方向への伸長率と胴囲方向への伸長率が同じであり、
前記第2の生地は、上下方向への伸長率よりも胴囲方向への伸長率のほうが大きい請求項9に記載の衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極が設けられた衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
衣服に設けた電極を着用者の肌に接触させて、着用者の心拍数等の生体情報を取得することが行われている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の電極が設けられた衣服では、電極を設ける位置によっては着用者が動作したときに電極が肌から離れて生体情報を取得できない場合があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、生体情報を取得するために設けられた電極が着用者の肌から離れにくい衣服を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る衣服は、着用者の腹側に位置する前身頃部と、着用者の背中側に位置する後身頃部と、を有する身頃本体と、後身頃部のうち着用者の背中と対向する背部内面に設けられた複数の電極と、背部内面に設けられて、複数の電極のそれぞれから延びる配線と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る衣服は、生体情報を取得するために設けられた電極を着用者の肌から離れにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態1に係る衣服の正面図である。
【
図3】
図3は、実施の形態1における後身頃部を正面から見た図である。
【
図4】
図4は、実施の形態1における第1の生地を正面から見た図である。
【
図5】
図5は、実施の形態1における第2の生地を正面から見た図である。
【
図6】
図6は、実施の形態1における外部装置の概略構成を示す図である。
【
図7】
図7は、実施の形態1における後身頃部を正面から見た図であって、電極の他の配置例を示す図である。
【
図8】
図8は、実施の形態1における後身頃部を正面から見た図であって、配線経路の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明に係る衣服の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。本発明に係る衣服は、着用者の心拍数等の生体情報を取得するための衣服であり、より具体的には乗用車やバスなどの自動車において、ハンドルを操作する人が着用し、運転中の心拍数等の生体情報を取得するための衣服である。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。以下の説明において、同一の部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0010】
図1は、本発明の実施の形態1に係る衣服の正面図である。衣服1は、着用者の上半身を覆う。
図2は、
図1に示した衣服の背面図である。衣服1は、着用者の腹側に位置する前身頃部2と、着用者の背中側に位置する後身頃部3と、を有する身頃本体10を備える。
【0011】
身頃本体10には、着用者の右腕を通す右側アームホール41と、着用者の左腕を通す左側アームホール42と、着用者の首を通すネックホール5とが形成されている。以下の説明に置いて、身頃本体10の着丈方向を上下方向とし、襟側を上方とし、裾側を下方とする。また、身幅方向を左右方向とし、右側アームホール41側を右方とし、左側アームホール42側を左方とする。そのため、衣服1等を正面視した図では、図面上の右方と本実施の形態1の説明での右方とが一致しない。また、右側アームホール41と左側アームホールとを区別せずに単にアームホール4と称する場合もある。
【0012】
右側アームホール41は、身頃本体10の右側上部に配置されている。左側アームホール42は、身頃本体10の左側上部に配置されている。本実施の形態1では、袖を有していない衣服1を例示しているが、アームホール4から袖が延びるように設けられていてもよい。
【0013】
図3は、実施の形態1における後身頃部を正面から見た図である。
図4は、実施の形態1における第1の生地を正面から見た図である。
図5は、実施の形態1における第2の生地を正面から見た図である。
【0014】
図3から
図5に示すように、後身頃部3は第1の生地31と第2の生地32とが重ねて形成されている。第1の生地31は着用者側となる内側に設けられ、第2の生地32は第1の生地31の外側に設けられている。すなわち、第1の生地31のほうが第2の生地32よりも着用者の体に近い位置に設けられている。第1の生地31および第2の生地32は布で形成されている。第2の生地32よりも第1の生地31のほうが布の伸縮性が高くなっている。伸縮性の高さは、伸縮率の大きさで表される。伸縮率は、例えば引っ張り試験機を用いて測定される。5cm×20cmに切り取られた試料(第1の生地31または第2の生地32)を、長手方向に沿って引っ張り試験機(インストロン製、型番:5565)で引っ張り速度200mm/minで引っ張る。試料が100%に伸長したときの長手方向の長さをL1とし、引っ張る前の試料の長手方向の長さをL0とすると、伸長率は{(L1-L0)/L0}×100%で表される。
【0015】
また、第1の生地31は、同じ荷重で引っ張った場合の上下方向への伸長率と左右方向への伸長率が等しい。また、第2の生地32は、同じ荷重で引っ張った場合の上下方向への伸長率よりも左右方向への伸長率のほうが10%以上大きくなっている。
【0016】
例えば、第1の生地31は、ポリエステルとポリウレタンを用いた2wayトリコットである。例えば、第2の生地32は、ポリエステルとポリウレタンとレーヨンとを用いた2wayトリコットである。なお、前身頃部2も第2の生地32と同じ素材で形成されている。
【0017】
第1の生地31は、着用者の背中と対向する背部内面31aを有する。背部内面31aには、複数の電極が設けられている。本実施の形態1における複数の電極は、上部電極11と、第1下部電極12と、第2下部電極13と、を含む。複数の電極は、例えば、導電性繊維、導電性素材、導電性フィルムを縫製、接着等によって第1の生地31の背部内面31aに取り付けることで設けられる。導電性繊維、導電性素材、導電性フィルムの接着には、例えば、導電性接着剤が用いられる。導電性素材は、例えば銀製のテープに銀-塩化銀が加工されたものである。
【0018】
次に、上部電極11と、第1下部電極12と、第2下部電極13の位置を説明する。ここで、右側アームホール41の最下端41aと、左側アームホール42の最下端42aと、を結ぶラインを第1ラインHL1とする。また、右側アームホール41の最上端41bと、左側アームホール42の最上端42bと、を結ぶラインを第2ラインHL2とする。また、後身頃部3の後ろ着丈裾6から左右に延びるラインを第3ラインHL3とする。
【0019】
上部電極11は、第1ラインHL1よりも上方に設けられる。より好ましくは、上部電極11は、第1ラインHL1と第2ラインHL2との間の領域を3等分したうちの、上方の1/3から2/3の領域である第1の領域(上方領域)R1に設けられる。また、上部電極11は、右側アームホール41よりも左側アームホール42に近い位置に設けられる。上部電極11の位置はこれに限られず、左側アームホール42よりも右側アームホール41に近い位置に設けられてもよい。
【0020】
第1下部電極12と第2下部電極13は、第1ラインHL1よりも下方に設けられている。より好ましくは、第1下部電極12と第2下部電極13は、第1ラインHL1と第3ラインとの間の領域を上下方向に4等分したうちの、2/4から3/4の領域である第2の領域(下方領域)R2に配置されている。
【0021】
第1下部電極12は、第2の領域R2を左右方向に5等分したときに、左側の1/5から2/5の領域である第3の領域R3に配置されている。第2下部電極13は、下方領域のうち、右側の4/5から5/5の領域である第4の領域R4に配置されている。換言すれば、第1下部電極12と第2下部電極13は、第3の領域R3と第4の領域R4との間の領域(第2の領域R2の左右方向の中央1/5の幅分だけの領域)には配置されていない。このように第1下部電極12と第2下部電極13とを離して配置することによって、第1下部電極12と第2下部電極13との間で電気的な信号の緩衝が生じるのを抑制し、取得する電気信号のノイズを少なくすることができる。また、より好ましくは、第1下部電極12と第2下部電極13とは、左右対称となる位置に配置されている。
【0022】
上部電極11、第1下部電極12、第2下部電極13は、それぞれ、グランド、正極、負極となる。例えば、上部電極11が負極となり、第1下部電極12が正極となり、第2下部電極13がグランドとなる。
【0023】
背部内面31aには、コネクタ部14が設けられている。コネクタ部14は、
図2に示すように後身頃部3の外面に露出させた端子部14aを有する。端子部14aには、後述する外部装置を接続可能となっている。コネクタ部14は、第1の領域R1と第2の領域R2との間の領域である第5の領域(中間領域)R5に設けられている。また、コネクタ部14は、第2下部電極13の上方に設けられている。
【0024】
後身頃部3には、上部電極11、第1下部電極12、第2下部電極13のそれぞれから延びる配線21,22,23が設けられている。配線21は、上部電極11とコネクタ部14とを電気的に接続させる。配線22は、第1下部電極12とコネクタ部14とを電気的に接続させる。配線23は、第2下部電極13とコネクタ部14とを電気的に接続させる。
【0025】
配線21,22,23は、例えば導電性塗料を第1の生地31に塗布して形成される。また、配線21,22,23は、例えば導電性素材によって形成される。衣服1では、着用者の肌に接触した電極11,12,13を通じて着用者の心臓の電位変化等の情報が取得される。
【0026】
配線21は、第1の領域R1において上部電極11から右方に向けて直線状に延びる。右方に向けて延びた配線21は、第2下部電極13の上方となる箇所から下方に向けて直線状に延びてコネクタ部14に接続される。配線22は、第1下部電極12からコネクタ部14に向けて直線状に延びてコネクタ部14に接続される。配線23は、第2下部電極13から上方に向けて直線状に延びてコネクタ部14に接続される。
【0027】
図6は、実施の形態1における外部装置の概略構成を示す図である。外部装置51には、先端にコネクタ部53が設けられた配線52が接続されている。コネクタ部53は、身頃本体10に設けられた端子部14a(
図2参照)と接続可能とされている。コネクタ部53が端子部14aに接続されることで、外部装置51は第1の生地31に設けられた電極11,12,13と電気的に接続される。
【0028】
外部装置51は、電極11,12,13が取得した情報を、コネクタ部53および配線52を介して取得する。外部装置51は、取得した情報を、図示を省略したコンピュータ等の外部機器に向けて出力する。外部装置51は、例えば取得した情報を無線通信で外部機器に送信する。外部装置51は、例えば取得した情報を内部に蓄積し、外部機器に有線接続された際に外部機器に送信する。外部機器への有線接続は、例えば配線52とコネクタ部53で行われる。電極11,12,13が取得した情報を解析することで、心拍数、心電図、ストレス度、消費エネルギー等の着用者の生体情報を取得することができる。
【0029】
図1に戻って、前身頃部2の外側にはポケット7が形成されている。外部装置51は、前身頃部2に形成されたポケット7に収容可能となっている。
【0030】
以上説明した衣服1によれば、着用者の背面側に設けた3つの電極11,12,13を通じて情報を取得することで、様々な生体情報を取得することができる。
【0031】
電極11,12,13を通じて情報を取得するためには、電極11,12,13が着用者の肌に触れている必要がある。着用者は衣服1の着用中に様々に姿勢を変化させる。着用者の姿勢の変化に応じて、電極11,12,13が接触する背中が屈曲したり、背中の皮膚が伸びたり縮んだりする。電極11,12,13が着用者の背中側に設けられているので、座位のように背中を背もたれに押し付けている姿勢の場合に、電極11,12,13が着用者の肌に接触した状態が維持されやすくなる。
【0032】
また、着用者の背中の皮膚の伸び(皮膚ひずみ)が大きい部分では、その部分を覆う衣服1に伸びに対応する余裕を設ける必要があるため、衣服1にしわが生じやすい。着用者の背中の皮膚の伸びが大きい部分では、電極11,12,13と皮膚との間にすき間が生じやすくなる。
【0033】
本実施の形態1では、着用者の姿勢が変化しても皮膚に伸びが生じにくい部分を覆う第1の領域R1に上部電極11が設けられている。第1の領域R1は、概ね肩甲棘と対応する領域である。すなわち、第1の領域R1は、皮膚の伸びの少なさに加えて、肩甲棘の隆起によって衣服1と肌とが密着しやすい領域であるといえる。
【0034】
また、着用者の姿勢が変化しても皮膚に伸びが生じにくい部分を覆う第2の領域R2に第1下部電極12および第2下部電極13が設けられている。第2の領域R2は、概ね腰椎に対応する領域である。
【0035】
このように、皮膚に伸びが生じにくい部分を覆う領域に電極11,12,13が設けられているので、着用者の皮膚と電極11,12,13とにすき間が生じにくく、安定して生体情報を取得することができる。
【0036】
また、第1下部電極12と第2下部電極13とが左右に離れた第3領域R3と第4の領域R4とに配置されているため、正面視において上部電極11と合わせて3つの電極11,12,13が着用者の心臓を囲むように配置されている。これにより、取得される生体情報の精度の向上が図られる。
【0037】
着用者の姿勢の変化によって生じる皮膚の伸びの方向が、上下方向の伸びよりも左右の伸びのほうが大きくなりやすい場合がある。例えば、着用者が自動車のハンドルを握った座位にあるときがこれに該当する。着用者が自動車のハンドルを握った状態を想定し、被験者の腕を前側に伸ばした状態で被験者の背中の皮膚ひずみについて、非接触三次元変形解析システム(GOM社製)を用いて調べた。この調査結果から、肩甲棘に対応する領域および腰椎に対応する領域において、皮膚の伸びが他の領域に比べて小さく、肩甲棘と第1腰椎との間の領域で皮膚の伸びが比較的大きくなることがわかった。すなわち、着用者が自動車のハンドルを握って座った状態においては、第1の領域R1と第2の領域R2において皮膚の伸びが比較的小さく、第5領域において皮膚の伸びが比較的大きい。また、着用者が自動車のハンドルを握った状態では、皮膚の伸びる方向は背中全体で概ね横方である。そこで、本実施の形態1では、皮膚の伸びが少ない第1の領域R1では、配線21を左右方向に延ばし、第1の領域R1および第2の領域R2よりも皮膚の伸びが大きくなりやすい第5の領域R5では、配線21を上下に延ばしている。着用者が自動車のハンドルを握った状態では、第5の領域R5において横方向への皮膚の伸びは比較的大きいものの上下方向への伸びは比較的小さい。そのため、第5領域R5において配線21を上下方向に延びるように形成しても、配線21が断線することを抑制することができる。また、配線23も配線21と同様に上下に直線状に延ばして設けることで断線の防止が図られている。このように、衣服1は座位でいる時間が長い自動車の運転者の生体情報の取得に適している。
【0038】
なお、着用者の生体情報を取得する観点からは、配線21,22,23の経路は例示した経路に限られず、コネクタ部14と電極11,12,13とが配線21,22,23によって電気的に接続されていればよい。
【0039】
また、衣服1を着用したり脱いだりするときに、衣服1の胴回りは着用者の肩を通過させるために左右方向への伸びが大きくなる。本実施の形態1では、後身頃部3において、第2の生地32は上下方向への伸長率よりも左右方向への伸長率が10%以上大きくなっているので、衣服1を着用したり脱いだりするときに胴回りに肩が引っ掛かりにくい。したがって、第2の生地32は上下方向への伸長率よりも左右方向への伸長率を大きくすることで、着用したり脱いだりしやすい衣服1とすることができる。
【0040】
また、着用者の肌に接触する第1の生地31は、上下方向への伸長率と左右方向への伸長率が等しくなっている。これにより、着用者の姿勢の変化による皮膚の様々な方向への伸びに対する追従性の向上を図ることができる。したがって、着用者の姿勢の変化によって皮膚が様々な方向へ伸びた場合にも、第2の生地32の背部内面31aが着用者の肌に密着しやすくなる。すなわち、背部内面31aに設けられた電極11,12,13を着用者の肌に接触させることができ、安定して着用者の生体情報を取得することができる。
【0041】
また、コネクタ部14の端子部14aが後身頃部3の外面に露出しているので、外部装置51に着脱が容易である。
【0042】
また、後身頃部3が第1の生地31と第2の生地32との二重に形成されているので、肌に接触する生地と外面に露出する生地とで求められる機能に応じて仕様を異ならせることができる。本実施の形態1では、肌に触れる第1の生地31のほうが、第2の生地32よりも伸縮性が高くなっている。また、例えば、第1の生地31は肌触りのよい生地を使用し、第2の生地32は通気性の高い生地を使用してもよい。
【0043】
図7は、実施の形態1における後身頃を正面から見た図であって、電極の他の配置例を示す図である。上部電極11に代えて第3下部電極15を設けて、
図7に示すように3つの電極12,13,15が第1ラインよりも下方に配置されてもよい。より好ましくは、3つの電極12,13,15が
図3に示した第2領域R2に配置されてもよい。
【0044】
図8は、実施の形態1における後身頃部を正面から見た図であって、配線経路の他の例を示す図である。
図8に示す例では、コネクタ部14が上部電極11の直下に配置されている。そのため、上部電極11とコネクタ部14とを接続する配線21を第5の領域R5で上下に直線状に延びるように形成することができる。
【0045】
これにより、上部電極11とコネクタ部14とを最短距離で電気的に接続させることができる。また、第5の領域R5で上下に直線状に延びるように形成されるので、座位であるときのように着用者の皮膚が左右方向に伸びが大きい場合であっても、配線21の断線の防止を図ることができる。
【0046】
また、コネクタ部14と第2下部電極13とを接続させる配線23は、第2の領域R2を左方に向けて延びてから、上方に向けて折り曲げられてコネクタ部14に向けられている。このように、左右方向に延びる配線はなるべく皮膚の伸びが小さい部分を覆う第1の領域R1や第2の領域R2に配置し、皮膚の伸びが大きい第5の領域R5を通る配線の長さを短くするとともに上下方向と平行な角度に近づけて配置することで、断線の防止を図ることができる。また、配線23を途中で折り曲げるように設けることで、配線23自体にも伸縮性を持たせて断線の防止を図ることができる。
【0047】
以下、本発明の諸態様を記載する。
【0048】
第1の態様に係る衣服は、着用者の腹側に位置する前身頃部と、着用者の背中側に位置する後身頃部と、を有する身頃本体と、前記後身頃部のうち着用者の背中と対向する背部内面に設けられた複数の電極と、前記背部内面に設けられて、複数の前記電極のそれぞれから延びる配線と、を備える。
【0049】
第2の態様に係る衣服は、第1の態様に係る衣服において、前記身頃本体は、右側上部に配置された右側アームホールおよび左側上部に配置された左側アームホールを有し、前記身頃本体の着丈方向を上下方向とし、襟側を上方、裾側を下方とそれぞれした場合に、複数の前記電極は、前記右側アームホールの最下端と前記左側アームホールの最下端を結ぶ第1ラインよりも上方に設けられる上部電極および前記第1ラインよりも下方に設けられる第1下部電極および第2下部電極を含む。
【0050】
第3の態様に係る衣服は、第1の態様に係る衣服において、前記右側アームホールの最上端と前記左側アームホールの最上端を結ぶラインを第2ラインとしたときに、前記上部電極は、前記第1ラインと前記第2ラインとの間の領域を前記上下方向に3等分したうちの、上方の1/3から2/3の領域である上方領域に設けられている。
【0051】
第4の態様に係る衣服は、第2または第3の態様に係る衣服において、前記後身頃部の後ろ着丈裾のラインを第3ラインとしたときに、前記第1、第2下部電極は、前記第1ラインと前記第3ラインとの間の領域を前記上下方向に4等分したうちの、2/4から3/4の領域である下方領域に設けられている。
【0052】
第5の態様に係る衣服は、第4の態様に係る衣服において、前記下方領域を左右方向に5等分したときに、前記第1下部電極は、前記下方領域のうち、左側の1/5から2/5の領域に配置され、前記第2下部電極は、前記下方領域のうち、右側の4/5から5/5の領域に配置されている。
【0053】
第6の態様に係る衣服は、第1から第5のいずれかの態様に係る衣服において、前記後身頃部に設けられ、かつ複数の前記配線と接続されたコネクタ部をさらに備え、前記コネクタ部は、外部装置を接続可能な端子部を有し、前記端子部を前記後身頃部の外面に露出させて設けられている。
【0054】
第7の態様に係る衣服は、第2から第6のいずれかの態様に係る衣服において、前記身頃本体が、右側上部に配置された右側アームホールおよび左側上部に配置された左側アームホールを有し、前記身頃本体の着丈方向を上下方向とし、襟側を上方、裾側を下方とそれぞれし、前記右側アームホールの最下端と前記左側アームホールの最下端を結ぶ第1ラインと、前記右側アームホールの最上端と前記左側アームホールの最上端を結ぶ第2ラインと、の間の領域を前記上下方向に3等分したうちの、上方の1/3から2/3の領域を上方領域とし、前記後身頃部の後ろ着丈裾のラインである第3ラインと前記第1ラインと、の間の領域を前記上下方向に4等分したうちの、2/4から3/4の領域を下方領域とした場合に、前記コネクタ部は、前記上方領域と前記下方領域との間の領域である中間領域に配置されている。
【0055】
第8の態様に係る衣服は、第2から第7のいずれかの態様に係る衣服において、複数の前記電極は、前記第1ラインよりも上方に設けられる上部電極をさらに備え、前記コネクタ部は前記上部電極の直下に配置されており、前記コネクタ部と前記上部電極とを接続する前記配線は直線状である。
【0056】
第9の態様に係る衣服は、第1または第8のいずれかの態様に係る衣服において、前記後身頃部は、前記背部内面を有する第1の生地と、前記第1の生地の外側に設けられる第2の生地とを有する。
【0057】
第10の態様に係る衣服は、第9の態様に係る衣服において、前記第2の生地よりも前記第1の生地のほうが、伸長率が高い。
【0058】
第10の態様に係る衣服は、第9の態様に係る衣服において、前記第1の生地は、上下方向への伸長率と胴囲方向への伸長率が同じであり、前記第2の生地は、上下方向への伸長率よりも胴囲方向への伸長率のほうが大きい。
【符号の説明】
【0059】
1 衣服、2 前身頃部、3 後身頃部、4 アームホール、41 右側アームホール、42 左側アームホール、41a,42a 最下端、41b,42b 最上端、5 ネックホール、6 後ろ着丈裾、10 身頃本体、11 上部電極、12 第1下部電極、13 第2下部電極、14 コネクタ部、14a 端子部、15 第3下部電極、21,22,23 配線、31 第1の生地、31a 背部内面、32 第2の生地、51 外部装置、52 配線、53 コネクタ部。