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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093731
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】作業機械の表示装置及び作業機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/26 20060101AFI20240702BHJP
   G06T 19/00 20110101ALI20240702BHJP
【FI】
E02F9/26 C
G06T19/00 600
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210287
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 啓介
(72)【発明者】
【氏名】階戸 文乃
(72)【発明者】
【氏名】柴田 誉
【テーマコード(参考)】
2D015
5B050
【Fターム(参考)】
2D015EB01
2D015GB07
2D015HA03
5B050BA11
5B050DA01
5B050EA06
5B050EA07
5B050EA19
5B050EA20
5B050EA27
5B050FA02
(57)【要約】
【課題】作業機械について適正な運用を行う。
【解決手段】作業機械100の位置情報を取得する位置情報取得部43と、作業機械の位置情報が示す位置の周辺における既存の構造物、地形又は区画の境界を示す周辺情報を取得する周辺情報取得部31と、既存の構造物、地形又は区画の境界を作業機械に対する所定の視点から見た拡張画像を生成する拡張画像生成部32と、作業機械に対する所定の視点E1からの視界又は当該視界の画像R1に重ねて、既存の構造物、地形又は区画の境界の拡張画像AR1を表示させる表示処理部33とを備えている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械の位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記作業機械の位置情報が示す位置の周辺における既存の構造物、地形又は区画の境界を示す周辺情報を取得する周辺情報取得部と、
前記既存の構造物、地形又は区画の境界を前記作業機械に対する所定の視点から見た拡張画像を生成する拡張画像生成部と、
前記作業機械に対する所定の視点からの視界又は当該視界の画像に重ねて、前記既存の構造物、地形又は区画の境界の拡張画像を表示させる表示処理部と、
を備える作業機械の表示装置。
【請求項2】
前記表示処理部は、前記拡張画像と共に、前記既存の構造物、地形又は区画の境界の名称を表示させる
請求項1に記載の作業機械の表示装置。
【請求項3】
前記作業機械の運転席の窓の透明板に画像表示を行う投影装置を備え、
前記表示処理部は、前記投影装置を通じて、前記作業機械の運転席の窓の透明板に前記拡張画像を表示させる
請求項1に記載の作業機械の表示装置。
【請求項4】
前記作業機械に対する所定の視点からの視界の画像を表示する画像表示装置を備え、
前記表示処理部は、前記画像表示装置に、前記視界の画像に重ねて前記拡張画像を表示させる
請求項1に記載の作業機械の表示装置。
【請求項5】
前記視界の画像は、前記作業機械に対する俯瞰画像である
請求項4に記載の作業機械の表示装置。
【請求項6】
前記画像表示装置は、前記作業機械の遠隔操縦用の画像表示装置である
請求項4に記載の作業機械の表示装置。
【請求項7】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の作業機械の表示装置
を備える作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械の表示装置及び作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
ショベルやモータグレーダ等を含む作業機械は、安全に運用することはきわめて重要である。このため、近年は、AR(Augmented Reality)といわれる拡張現実の表示技術の利用が提案されている。
例えば、ショベルのバケットがキャビンの視界から見えないに位置に移動した場合に表示装置にてバケットのAR表示を行い、バケットの位置認識の支援が行われていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2014/0188333号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術は、作業機械の一部を拡張表示するものであって、作業機械の周囲の物体等が遮蔽されている場合にこれを視覚的に支援することはできなかった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、作業機械をより安全面を考慮して適正に運用することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る作業機械の表示装置は、
作業機械の位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記作業機械の位置情報が示す位置の周辺における既存の構造物、地形又は区画の境界を示す周辺情報を取得する周辺情報取得部と、
前記既存の構造物、地形又は区画の境界を前記作業機械に対する所定の視点から見た拡張画像を生成する拡張画像生成部と、
前記作業機械に対する所定の視点からの視界又は当該視界の画像に重ねて、前記既存の構造物、地形又は区画の境界の拡張画像を表示させる表示処理部と、
を備える構成である。
【0006】
また、本発明に係る作業機械は、上記構成の表示装置を備える構成である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、作業機械をより適正に運用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係るショベルの側面図である。
図2】ショベルの概略構成を示すブロック図である。
図3】ショベルの座標系を示す説明図である。
図4】拡張画像を実画像に重ねた表示画面を示す図である。
図5】表示位置に誤差が生じた拡張画像と校正部が行う誤差を校正する処理の概念とを示した説明図である。
図6】俯瞰画像生成部による俯瞰画像化された実画像及び拡張画像を表示させた表示画面の一例である。
図7】拡張画像に関する表示処理を示すフローチャートである。
図8】キャビンの前窓の窓ガラスに拡張画像を投影する表示形態を示した図である。
図9】ショベルの遠隔操縦システムの概略構成を示すブロック図である。
図10】遠隔操縦装置における遠隔操縦座標系を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
本実施形態では、表示装置を備える作業機械としてのショベルについて例示する。
【0010】
[ショベルの構成]
図1は、本実施形態に係るショベル100の側面図である。
図示のように、ショベル100は、下部走行体1と、旋回機構2を介して旋回可能に下部走行体1に搭載される上部旋回体3と、アタッチメント11としてのブーム4、アーム5及びバケット6と、オペレータが搭乗する運転席としてのキャビン10とを備える。アタッチメント11は、作業要素(例えば、バケット、クラッシャー、クレーン装置等)が設けられていれば、これに限られない。
【0011】
下部走行体1は、例えば、左右一対のクローラを含み、それぞれのクローラが走行油圧モータ(不図示)で油圧駆動されることにより、ショベル100を走行させる。
上部旋回体3は、旋回油圧モータ或いは電動機(共に不図示)等で駆動されることにより、下部走行体1に対して旋回する。
【0012】
ブーム4は、上部旋回体3の前部中央に俯仰可能に枢着され、ブーム4の先端には、アーム5が上下回動可能に枢着され、アーム5の先端には、バケット6が上下回動可能に枢着される。ブーム4、アーム5及びバケット6は、それぞれ、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9により油圧駆動される。
キャビン10は、オペレータが搭乗する操縦室であり、例えば上部旋回体3の前部左側に搭載される。ショベル100は、キャビン10に搭乗するオペレータの操作に応じて、アクチュエータを動作させ、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5及びバケット6等の被駆動要素を駆動する。
【0013】
図2は、ショベル100の概略構成を示すブロック図である。
この図に示すように、ショベル100は、管理装置200とネットワークNWを通じて通信可能である。
【0014】
ショベル100は、上記構成のほか、撮像装置40と、距離センサ41と、動作・姿勢状態センサ42と、位置センサ43と、方位センサ44と、操作装置45と、画像表示装置50と、音声出力装置60と、通信機器80と、コントローラ30と、記憶部46とを備える。
【0015】
撮像装置40は、ショベル100の周辺を撮影してその画像をコントローラ30に出力する。撮像装置40は、例えば、ショベル100の前方を撮影する前方カメラ、後方を撮影する後方カメラ、左方を撮影する左方カメラ、右方を撮影する右方カメラを含む。各撮像装置40は、光軸が斜め下方に向くように設置され、ショベル100近傍の地面からショベル100の遠方までを含む上下方向の撮像範囲(画角)を有する。
【0016】
距離センサ41は、ショベル100の周辺の物体までの距離を測定してその情報(二次元又は三次元の距離情報)を取得する測距手段であり、取得した情報をコントローラ30に出力する。距離センサ41は、例えば、撮像装置40に対応してショベル100の前方、後方、左方、右方の3方の計測が可能なように設けられている。
【0017】
動作・姿勢状態センサ42は、ショベル100の動作状態や姿勢状態を検出するセンサであり、検出結果をコントローラ30に出力する。動作・姿勢状態センサ42は、ブーム角度センサと、アーム角度センサと、バケット角度センサと、三軸慣性センサ(IMU:Inertial Measurement Unit)と、旋回角度センサと、加速度センサとを含む。
これらのセンサは、ブーム等のシリンダのストロークセンサ、ロータリーエンコーダ等の回転情報を取得するセンサで構成されてもよく、IMUで取得される加速度(速度、位置も含んでもよい)により代替されてもよい。
ブーム角度センサは、上部旋回体3に対する所定角度を基準とするブーム4の回動角度(以下、「ブーム角度」と称する)を検出する。
アーム角度センサは、ブーム4を基準とするアーム5の回動角度(以下、「アーム角度」と称する)を検出する。
バケット角度センサは、アーム5を基準とするバケット6の回動角度(以下、「バケット角度」と称する)を検出する。
IMUは、ブーム4、アーム5の各々と上部旋回体3(アタッチメント11以外の箇所)に取り付けられている。そして、所定の三軸に沿ったブーム4、アーム5及び上部旋回体3の加速度、及び、所定の三軸廻りのブーム4、アーム5及び上部旋回体3の角加速度を検出する。また、上部旋回体3に設けられたIMUは、絶対的な水平面に対する上部旋回体3の傾斜角度を検出する。
旋回角度センサは、上部旋回体3の所定の角度方向を基準とする旋回角度を検出する。ただし、これに限られず、上部旋回体3に設けられたGPSやIMUセンサに基づいて旋回角度が検出されてもよい。
加速度センサは、上部旋回体3の旋回軸から離れた位置に取り付けられ、上部旋回体3の当該位置における加速度を検出する。これにより、加速度センサの検出結果に基づき、上部旋回体3が旋回しているのか、或いは、下部走行体1が走行しているのか等が判別されうる。
【0018】
位置センサ43は、作業機械の位置情報を取得する位置情報取得部として機能し、例えば、上部旋回体3に装備される。
位置センサ43は、ショベル100の位置(現在位置)の情報を取得するセンサであり、本実施形態ではGNSS(Global Navigation Satellite System)受信機である。位置センサ43は、ショベル100の位置の情報を含む信号をGNSS衛星から受信し、取得したショベル100の位置情報をコントローラ30に出力する。なお、位置センサ43は、ショベル100の位置の情報を取得できるものであればGNSS受信機でなくともよく、例えばGNSS以外の衛星測位システムを利用するものであってもよい。また、位置センサ43は、下部走行体1に設けられていてもよい。
【0019】
方位センサ44は、上部旋回体3に設けられ、上部旋回体3が向いている方位(方向)の情報を取得するセンサであり、例えば地磁気センサである。方位センサ44は、上部旋回体3の方位の情報を取得して、コントローラ30に出力する。なお、方位センサ44は、上部旋回体3の方位の情報を取得できればよく、そのセンサ種別等は特に限定されない。例えばGNSS受信機を2つ設け、その位置情報の差異から方位情報を取得してもよい。
【0020】
操作装置45は、キャビン10の操縦席付近に設けられ、オペレータが各動作要素(下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5及びバケット6等)の操作を行う操作手段である。換言すれば、操作装置45は、各動作要素を駆動するそれぞれの油圧アクチュエータの操作を行う操作手段である。操作装置45は、例えばレバーやペダル、各種ボタン等を含み、これらの操作内容に応じた操作信号をコントローラ30に出力する。
また、操作装置45は、撮像装置40、距離センサ41、動作・姿勢状態センサ42、位置センサ43、画像表示装置50、音声出力装置60、通信機器80等の操作を行う操作手段でもあり、これら各部に対する操作指令をコントローラ30に出力する。
【0021】
画像表示装置50は、キャビン10内の操縦席の周辺に設けられ、コントローラ30による制御の下、オペレータに通知する各種画像情報を表示する。画像表示装置50は、例えば液晶ディスプレイや有機EL(Electroluminescence)ディスプレイであり、操作装置45の少なくとも一部を兼ねるタッチパネル式であってもよい。
また、画像表示装置50は、撮像装置40による撮像画像や当該撮像画像を加工した画像、さらには、後述する拡張画像を表示する画像表示装置として機能する。
【0022】
音声出力装置60は、キャビン10内の操縦席の周辺に設けられ、コントローラ30による制御の下、オペレータに通知する各種音声情報を出力する。音声出力装置60は、例えば、スピーカやブザー等である。
【0023】
記憶部46は、各種のデータ等の情報を書き込み及び読み出し可能に記憶する不揮発性メモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等の記憶部である。
【0024】
通信機器80は、所定の無線通信規格に基づき、所定の通信ネットワークNWを通じて遠隔の外部機器である管理装置200や他のショベル100等と各種情報を送受信する通信デバイスである。通信ネットワークNWには、例えば、基地局を末端とする移動体通信網、上空の通信衛星を利用する衛星通信網、WiFiやブルートゥース(登録商標)等のプロトコルに準拠する近距離通信網、インターネット通信網等を含んでもよい。
【0025】
コントローラ30は、ショベル100各部の動作を制御してショベル100の駆動制御を行う制御装置である。コントローラ30は、キャビン10内に搭載される。コントローラ30は、その機能が任意のハードウェア、ソフトウェア、或いはその組み合わせにより実現されてよい。コントローラ30は、例えば、CPU,RAM,ROM,I/O等を含むマイクロコンピュータを中心に構成される。コントローラ30は、これらの他にも、例えばFPGAやASICなどを含んで構成されてもよい。
【0026】
また、コントローラ30は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等の内部メモリに規定される記憶領域を含む。
この記憶領域部には、画像処理を含むショベル100の各部を動作させるための各種プログラムや各種データ等を格納するほか、コントローラ30の作業領域としても機能する。
【0027】
また、ショベル100のコントローラ30は、所定の通信ネットワークNWを通じて、外部の管理装置200と相互に通信を行うことができる。コントローラ30は、通信により、管理装置200から後述する周辺情報を取得することができる。コントローラ30は、取得した周辺情報を上述した記憶領域に保存する。
【0028】
また、コントローラ30は、図2に示すように、機能ブロックとして、周辺情報取得部31、拡張画像生成部32、表示処理部33、校正部34及び俯瞰画像生成部35を有する。これらの機能的構成は、コントローラ30が各種のプログラムを実行することで実現する構成だが、これらの機能的構成をハードウェアで実現させてもよい。
【0029】
上記各機能的構成の機能の内容の詳細については、後述する。
なお、本実施形態としての作業機械の表示装置は、ショベル100の位置センサ43、周辺情報取得部31、拡張画像生成部32、表示処理部33、校正部34及び俯瞰画像生成部35と前述した画像表示装置50とによって構成される。
【0030】
[管理装置及び周辺情報について]
管理装置200(情報処理装置の一例)は、ショベル100と地理的に離れた位置に配置される。管理装置200は、例えば、ショベル100が作業する作業現場外に設けられる管理センタ等に設置され、一又は複数のサーバコンピュータ等を中心に構成されるサーバ装置である。この場合、サーバ装置は、ショベル100(複数であってもよい)とによって構築されるシステムを運用する事業者或いは当該事業者に関連する関連事業者が運営する自社サーバであってもよいし、レンタルサーバであってもよい。また、このサーバ装置は、いわゆるクラウドサーバであってもよい。また、管理装置200は、ショベル100の作業現場内の管理事務所等に配置されるサーバ装置(いわゆるエッジサーバ)であってもよいし、定置型或いは携帯型の汎用のコンピュータ端末であってもよい。
【0031】
管理装置200は、上述の如く、通信ネットワークNWを通じて、ショベル100と相互に通信を行うことができる。これにより、管理装置200は、ショベル100からアップロードされる各種情報を受信し、記憶(蓄積)しておくことができる。
【0032】
管理装置200は、制御部210と記憶部220を備える。制御部210は、記憶部220に予め記憶されているプログラムを展開し、展開されたプログラムと協働して各種処理を実行する。例えば、制御部210は、ショベル100のコントローラ30から作業機械の位置情報を受信すると、当該位置情報が示す位置周辺の周辺情報をコントローラ30に対して送信する。
記憶部220は、ショベル100に上記の周辺情報を提供するためのプログラムと各地の周辺情報を含むデータを記憶するとともに、制御部210の作業領域としても機能する。
【0033】
記憶部220が用意している周辺情報は、管理装置200の把握する範囲内の各地区における既存の構造物、地形又は区画の境界を示す情報である。
既存の構造物としては、ショベル100(作業車両)が通行又は進入し得る箇所又は作業の現場となる箇所の地表又は地中に存在し得るあらゆる構造物が含まれる。例えば、道路の両脇に設けられた縁石、地中の埋設物(水道管、下水管、ガス管、地中ケーブル管路等)、ガードレール、道路標識、横断歩道等、電柱、送電鉄塔等が挙げられる。
地形は、ショベル100(作業車両)が通行又は進入し得る箇所又は作業の現場となる箇所の地形である。例えば、坂、傾斜面、断崖、土手、水路、河川、湖沼、農作地、山林等が挙げられる。
区画の境界は、ショベル100(作業車両)が通行又は進入し得る箇所又は作業の現場となる箇所において、何らかの設定に基づく区画の境界が含まれる。例えば、道路とそれ以外の土地の境界、土地の種別による境界、前述した地形の種別による境界、道路と施設の境界、施設同士の境界、所有の異なる土地と土地の境界等である。
【0034】
上記周辺情報には、例えば、原点の位置を示す情報(例えば、緯度、経度、高さ)と当該原点に基づく三次元座標系(「周辺情報座標系」とする)で表された既存の構造物、地形又は区画の境界(以下、「既定の構造物等」という)の外縁に沿った各位置の周辺情報座標系の座標値とが含まれる。なお、既存の構造物等の外縁が、直線又は曲線で近似できる場合には、周辺情報座標系における直線又は曲線を示す関数であってもよい。
また、周辺情報座標系の各座標軸は、既存の構造物等の向き(方位)の特定を容易にするために、東西方向、南北方向、鉛直上下方向のそれぞれに平行としてもよい。
【0035】
また、周辺情報は、一部または全部を既存の構造物、地形又は区画の境界を平面視で表した二次元座標系の位置情報としてもよい。その場合、直交する二軸はいずれも水平軸とし、例えば、東西方向と南北方向に平行としてもよい。
さらに、既存の構造物、地形又は区画の境界の内、立体的なものは三次元座標系で示し、平面的なものは二次元座標で示してもよい。
【0036】
[周辺情報取得部]
次に、前述したコントローラ30の各機能的構成の機能の内容について詳細に説明する。
周辺情報取得部31は、位置センサ43の検出に基づいてショベル100の現在の位置情報を取得する。
さらに、周辺情報取得部31は、通信機器80を通じてショベル100の現在の位置情報を管理装置200に送信する。そして、管理装置200から返信されるショベル100の現在位置周辺の周辺情報を取得する。
なお、現在位置周辺の周辺情報とは、現在位置に対して、予め設定された距離範囲内に原点を有する周辺情報座標系の周辺情報をいう。
【0037】
なお、周辺情報取得部31は、オペレータが周辺情報の取得の要求を入力した場合のみ取得する構成としてもよい。また、周辺情報取得部31は、管理装置200から周辺情報を取得しない構成としてもよい。例えば、記憶部46に、複数の周辺情報を記憶させておき、位置センサ43によってショベル100の現在位置が検出されると、周辺情報取得部31が現在位置に対応する周辺情報を読み出す構成としてもよい。
また、操作装置45からショベル100が向かう予定の位置を入力すると、周辺情報取得部31が、現在位置から目的の位置までの経路を決定し、当該経路上の各位置の周辺情報を管理装置200から全て取得して記憶部46に用意しておく構成としてもよい。
【0038】
[拡張画像生成部]
拡張画像生成部32は、周辺情報取得部31によって取得されたショベル100の現在位置に対応する周辺情報に基づいて、既定の構造物等をショベル100に対する所定の視点E1から見た画像に基づく拡張画像を表示するための拡張画像データを生成する。
【0039】
ここで、図3に基づいてショベル100の座標系について説明する。以下、ショベル100の座標系をショベル座標系という。
ショベル座標系は、上部旋回体3上の基準点O1を原点とする3次元XYZ直交座標系であり、上部旋回体3の前後方向に平行に伸びるX軸、上部旋回体3の左右方向に平行に伸びるY軸、及び、X軸とY軸に直交するZ軸を有する。図3の例では、原点O1は上部旋回体3の旋回軸上にあり、高さは任意の値に設定することができる。図3の例では、ショベル100が水平面上に位置する場合、X軸とY軸は水平となり、Z軸は鉛直方向となる。
【0040】
所定の視点E1は、ショベル100のキャビン10の操縦席に座るオペレータの目の位置である。厳密には、二つの目の中間位置である。
視点E1は、平均的な体格の人間がショベル100のキャビン10の操縦席に座って前を向いた状態における二つの目の中間となる固定位置に定めてもよい。
また、視点E1は、ショベル100のキャビン10の操縦席に座っているオペレータに対して、カメラの撮像等により、左右の目の位置を検出し、その中間点を求めてもよい。
カメラを使用する場合には、視点E1の位置は、逐次検出してもよい。
また、視点E1を固定位置とする場合には、ショベル座標系の位置座標で記憶部46又はコントローラ30の記憶領域に記憶してもよい。
【0041】
周辺情報は、既定の構造物等の外縁を周辺情報座標系で示した位置座標を含む。また、周辺情報座標系は、三次元座標であり、個々の周辺情報ごとに個別に設定されている。周辺情報には、周辺情報座標系の原点の絶対的な位置を示す情報(緯度、経度、標高等)と三軸の方位を示す情報が含まれている。
【0042】
拡張画像生成部32は、ショベル100の現在位置の周辺の周辺情報に含まれる既定の構造物等の外縁を示す座標値をショベル座標系の座標値に変換する処理を行う。
位置センサ43のショベル座標系における位置座標は予め計測により求められ、記憶部46に記憶されている。さらに、位置センサ43の現在位置を示す緯度、経度及び標高は、当該位置センサ43により検出可能である。
そして、絶対的な水平面に対する上部旋回体3の傾きとショベル座標系のX軸とY軸の方位は、動作・姿勢状態センサ42と方位センサ44により取得することが可能である。
これらにより、拡張画像生成部32は、既定の構造物等の外縁を周辺情報座標系で示した座標値を、ショベル座標系における位置座標に変換することが可能である。
【0043】
さらに、拡張画像生成部32は、ショベル座標系に変換された既定の構造物等の外縁の位置座標に基づいて、視点E1から見た既定の構造物等の拡張画像の拡張画像データを生成する。
この拡張画像は、後述する表示処理部33によって生成された、視点E1からの視界の実画像(撮像装置40の撮像に基づく画像)に重ねて画像表示装置50に表示される。このため、拡張画像は、実画像内で識別が容易となるように、目立つ色彩の半透明画像やワイヤフレーム画像としてもよい。
【0044】
また、周辺情報が、平面視の構造物等を示す二次元座標の位置座標である場合には、ショベル座標系に変換した上で、ショベル100が現在位置する地面に投影した拡張画像を生成してもよい。
【0045】
[表示処理部]
表示処理部33は、ショベル100の視点E1からの視界の実画像に、拡張画像生成部32が生成した既存の構造物等の拡張画像を重ねて画像表示装置50に表示させる。
【0046】
表示処理部33は、視点E1からの視界の実画像データを生成する。実画像データは、撮像装置40の前方カメラによる撮像画像データを視点E1から見た撮像画像データに変換する処理によって生成される。
なお、視点E1からの視界の実画像をより広範囲で表示する場合には、前方カメラだけでなく、左方カメラと右方カメラの撮像画像データも利用してもよい。その場合、左方と右方のカメラの撮像画像データを視点E1からの撮像画像データに変換し、前方カメラの変換後の撮像画像データと合成して一つの実画像データを生成する。
【0047】
表示処理部33は、逐次、実画像データを生成すると共に、拡張画像生成部32が生成する拡張画像データの拡張画像を実画像に重ねて画像表示装置50に表示する処理を実行する。
【0048】
図4は表示処理部33が画像表示装置50に表示させた拡張画像AR1を実画像R1に重ねた表示画面G1の一例である。図4では、拡張画像AR1を点線からなるワイヤフレームで表示する表示画面G1を例示している。
この表示画面G1では、既定の構造物として、道路の両脇に設けられた縁石を拡張画像AR1で表示している。
【0049】
既存の構造物、地形又は区画の境界は、外的要因による地面や路面の環境変化、例えば、落石、土砂崩れ、積雪、事故による破壊等によって遮蔽状態等の視認不能となる場合がある。また、降雨や水没、その他、経年劣化等によって視認性が低下する場合もある。
既存の構造物である縁石も上記の例に該当する。
図4の表示画面G1は、縁石の一部が土砂MDにより覆われて視認不能となった状態を示している。このように、縁石の一部が遮蔽され、実画像で視認不能な場合でも、縁石の拡張画像AR1が本来の縁石と同じ場所に重畳的に表示されるので、適正に視認することができる。
【0050】
また、周辺情報には、既存の構造物やその周辺物に対して、それぞれの名称を示す情報を含んでもよい。
その場合、表示処理部33は、周辺情報から既存の構造物等の各部の名称の情報を読み取り、拡張画像AR1の一部として各部の名称を表示する処理を行ってもよい。図4の表示画面G1では、名称をタグTG1のような形態で表示する例を示している。
【0051】
また、表示処理部33は、実画像の表示範囲内にショベル100の一部、例えば、バケット6が映り込む場合がある。そのような場合に、当該バケット6と縁石との距離情報DTを拡張画像AR1の一部として表示する処理を行ってもよい。
図4の表示画面G1では、距離情報DTとして、バケット6から縁石までの距離を上下方向と左右方向とについてそれぞれ数値にて表示している。また、距離情報DTとして、バケット6から縁石の上下方向の距離を示す上下ラインとバケット6から縁石の左右方向の距離を示す左右ラインも同時に表示している。
【0052】
この場合、表示処理部33は、動作・姿勢状態センサ42の検出出力からショベル座標系におけるバケット6の位置を算出する。さらに、ショベル座標系に変換された縁石の位置座標とバケット6の位置座標から、上下方向と左右方向の距離をそれぞれ算出する。そして、これらの算出結果に基づいて、距離情報DTを拡張画像AR1の一部として表示する。
【0053】
[校正部]
校正部34は、拡張画像AR1の表示位置に何らかの要因により誤差が生じた場合に、当該誤差を校正して表示させる処理を行う。
図5は表示位置に誤差が生じた拡張画像AR1と校正部34が行う誤差を校正する処理の概念とを示した説明図である。
【0054】
校正部34は、縁石(既定の構造物等)の拡張画像AR1の拡張画像データから当該縁石の輪郭形状パターンPA1を生成する。さらに、表示処理部33が生成した視点E1からの視界の実画像データから輪郭形状パターンPA1と同一又は近似するパターンPR1を探索する処理を実行する。
そして、校正部34は、探索によって実画像データ内で検出されたパターンPR1と拡張画像データの輪郭形状パターンPA1との距離差を算出する。
さらに、校正部34は、当該距離差があらかじめ設定された閾値を超えるか否かを判定する。閾値を超える場合には、校正部34は、輪郭形状パターンPA1の全体の位置をパターンPR1の位置に補正する処理を行う(図5中の白矢印を参照)。
【0055】
これにより、画像表示装置50において、実画像内に拡張画像AR1を適正な位置に表示することが可能となる。
また、校正部34は、輪郭形状パターンPA1とパターンPR1の同一又は近似の判定は部分的な一致でも「同一又は近似」と判定している。このため、図4のように、縁石の一部が遮蔽された状態であっても、拡張画像AR1の縁石を正しい位置に補正して表示させることが可能である。
【0056】
なお、校正部34による上記の処理は、後述する俯瞰画像生成部35によって生成される俯瞰視画像変換後の拡張画像データ及び俯瞰視画像の実画像データに対しても実行することが可能である。
【0057】
[俯瞰画像生成部]
俯瞰画像生成部35は、ショベル100周辺の俯瞰画像化された実画像R2と拡張画像生成部32による縁石(既存の構造物等)の俯瞰画像化された拡張画像AR2とを重ねて画像表示装置50に表示させる処理を行う。
図6は俯瞰画像生成部35による俯瞰画像化された実画像R2及び拡張画像AR2を表示させた表示画面G2の一例である。
俯瞰画像生成部35により俯瞰画像化された実画像R2と拡張画像AR2の表示は、オペレータが操作装置45から表示切替を入力した場合に実施する構成としてもよい。
【0058】
俯瞰画像生成部35は、ショベル座標系の原点O1の鉛直上方の所定高さの点からの視界の実画像R2を表示するための実画像データを生成する。
俯瞰画像生成部35は、撮像装置40の前方カメラと左方カメラと右方カメラと後方カメラとによる撮像画像データを、鉛直上方の所定高さの点からの視界から見た撮像画像データに変換する。
さらに、四方のカメラのそれぞれの変換後の撮像画像データを合成して一体化し、俯瞰画像の実画像データを生成する。この場合、各カメラの配置によっては、ショベル100そのものの俯瞰画像が得られない場合がある。そのような場合には、予め用意されたショベル100の俯瞰画像又は俯瞰視のアイコンを嵌め込んで合成してもよい。
【0059】
さらに、俯瞰画像生成部35は、拡張画像生成部32によって生成された視点E1からの縁石の拡張画像データを、鉛直上方の所定高さの点からの視界から見た画像に変換する処理を行う。これにより、俯瞰画像化された縁石の拡張画像データを生成する。
【0060】
そして、俯瞰画像生成部35は、俯瞰画像の実画像データによる俯瞰画像化された実画像R2と俯瞰画像の拡張画像データによる拡張画像AR2とを重ねて画像表示装置50に表示させる。
【0061】
図6の表示画面G2も、縁石の一部が土砂MDにより覆われて視認不能となった状態を示している。このように、縁石の一部が遮蔽され、実画像でも視認不能な場合でも縁石の拡張画像AR2が本来の縁石の位置を表示して適正に認識することができる。
さらに、実画像R2と拡張画像AR2とが俯瞰画像であるため、ショベル100と土砂MDに隠れた周囲の縁石との位置関係を容易に把握することが可能である。
【0062】
また、俯瞰画像生成部35が、俯瞰画像の実画像データとして、ショベル100の現在位置を含む広範囲の地図画像や航空写真画像等からなる実画像データを外部から取得する構成としてもよい。
その場合、俯瞰画像生成部35は、広範囲の地図画像や航空写真画像内にショベル100の現在位置を示すアイコンを嵌め込んで実画像として表示する処理を行う。
また、俯瞰画像生成部35は、広範囲の地図画像や航空写真画像からなる実画像内に、ショベル100の現在位置周辺の周辺情報に基づく既存の構造物等の俯瞰画像を重ねて表示する。
【0063】
[拡張画像に関する表示処理]
コントローラ30の上述した各機能的構成によって実行される拡張画像に関する表示処理について図7のフローチャートに基づいて説明する。
本実施形態では、オペレータが操作装置から表示処理の開始の要求を操作装置45から入力した場合に、表示処理が開始される場合を例示する。但し、表示処理の開始は、これに限定されず、ショベル100の操作の開始と共に表示処理が開始される構成としてもよい。また、他のトリガー、例えば、走行やその他の動作の開始と共に表示処理が開始される構成としてもよい。
【0064】
まず、周辺情報取得部31が位置センサ43の検出に基づいてショベル100の現在の位置情報を取得する(ステップS1)。
次いで、周辺情報取得部31は、通信機器80を通じてショベル100の現在の位置情報を管理装置200に送信し、管理装置200から現在位置周辺の周辺情報を取得する(ステップS3)。
【0065】
次いで、拡張画像生成部32が、周辺情報に基づいて、既定の構造物等の拡張画像を表示するための拡張画像データを生成する(ステップS5)。
【0066】
次いで、俯瞰画像生成部35が、オペレータによる操作装置45からの俯瞰画像表示への表示切替が入力されているか否かの判定を行う(ステップS7)。
【0067】
俯瞰画像表示への表示切替が入力されていない場合には、表示処理部33がショベル100の視点E1からの視界の実画像を表示するための実画像データを生成し(ステップS9)、ステップS13に処理を進める。
【0068】
また、俯瞰画像表示への表示切替が入力されている場合には、俯瞰画像生成部35が、俯瞰視の実画像を表示させる実画像データを生成する(ステップS11)。
また、この時、俯瞰画像生成部35は、拡張画像データの拡張画像を俯瞰視画像に変換する処理を実行する。
そして、ステップS13に処理を進める。
【0069】
ステップS13では、校正部34が、拡張画像データ(俯瞰視画像変換後の拡張画像データを含む)から既定の構造物等の輪郭形状パターンPA1を生成し、実画像データ(俯瞰視画像の実画像データを含む)から輪郭形状パターンPA1と同一又は近似するパターンPR1を探索する(ステップS13)。
さらに、校正部34は、実画像データ内で検出されたパターンPR1と拡張画像データの輪郭形状パターンPA1との距離差を求め、誤差と判定すべき閾値を超えるか否かを判定する(ステップS15)。
その結果、閾値を超えて誤差ありと認められる場合には、校正部34は、拡張画像の表示位置をパターンPR1の位置に補正する処理を行う(ステップS17:図5参照)。
【0070】
閾値を超えない場合又は拡張画像の表示位置の補正完了後には、表示処理部33が実画像データ(俯瞰視画像の実画像データを含む)に基づく視界の実画像R1又はR2と拡張画像データ(俯瞰視画像変換後の拡張画像データを含む)に基づく既定の構造物等の拡張画像AR1又はAR2を画像表示装置50に重ねて表示させる(ステップS19:図4又は図6参照)。
そして、処理を終了する。
なお、上記ステップS1~S19の処理は、短周期的に繰り返し実行される。
【0071】
[本実施形態の技術的効果]
以上のように、ショベル100(作業機械)の表示装置は、表示処理部33を備えている。そして、表示処理部33は、視点E1からの視界の実画像R1に重ねて既存の構造物等の拡張画像AR1を画像表示装置50に表示させている。
このため、環境変化等の何らかの外的要因により既存の構造物等の視認不良又は視認不能状態となった場合でも、実画像R1内に拡張画像AR1が適正な位置で表示される。
従って、視認不良又は視認不能状態の既存の構造物等の認識が可能となり、表示装置を搭載することにより、ショベル100のさらなる安全面を考慮した適正な運用が可能となる。
また、上記表示装置を搭載した、ショベル100は、さらなる安全面を考慮した適正な運用を行うことが可能となる。
【0072】
特に、既存の構造物は、ショベル100との接触による相互の破壊、破損の発生を抑止、抑制を図ることが可能となる。
【0073】
また、表示処理部33は、既存の構造物等の拡張画像AR1と共に、既存の構造物等の名称を表示する処理を行っている。
このため、ショベル100の視界の範囲内に存在する既存の構造物等が何であるかを速やかに認識することが可能である。
【0074】
また、表示処理部33は、実画像R1に重ねて拡張画像AR1を画像表示装置50に表示させている。
従って、ショベル100のオペレータは、キャビン10からの視界によりショベル100を操縦しつつ、必要に応じて画像表示装置50から既存の構造物等の拡張画像AR1を認識することができる。
このため、ショベル100について、従来の操縦性を維持しつつ、既存の構造物等の認識が可能となり、ショベル100のさらなる安全面を考慮した適正な運用が可能となる。
【0075】
また、ショベル100は、俯瞰画像生成部35を備えるので、俯瞰画像からなる実画像R2及び拡張画像AR2を画像表示装置50に表示することができる。
これにより、ショベル100とその周囲の既存の構造物等との位置関係を容易に把握することが可能である。さらに、拡張画像に関する表示制御が視認不能または視認不良である場合でも、拡張画像に関する表示制御とショベル100との位置関係を容易に把握することが可能である。
【0076】
[拡張画像の他の表示形態(1)]
上記実施形態の表示装置では、既存の構造物等の拡張画像を画像表示装置50に行う構成を例示したが、これに限定されない。
図8は、キャビン10の前窓の透明板としての窓ガラスWPの内側面に投影装置51により画像を投影してその投影画像が既存の構造物等の拡張画像AR1となる表示形態を示している。
【0077】
この構成の場合、キャビン10の前窓からの視界そのものに拡張画像AR1を重ねるので、表示処理部33は、ショベル100の視点E1からの視界の実画像データを生成しない。
また、表示処理部33は、視点E1から見た既存の構造物等の拡張画像を窓ガラスWPの内側面に投影した状態の画像に変換し、さらに、窓ガラスWPに表示されている画像を投影装置51を視点とする画像に変換する。これにより、表示処理部33は、投影画像データを生成する。
これにより、投影装置51から投影画像データに基づく投影画像を窓ガラスWPの内側面に投影することで、キャビン10のオペレータが視点E1から前窓を通して見る視界の像に対して、窓ガラスWPを通じて既存の構造物等の拡張画像AR1を重ねて表示することができる。
【0078】
上記表示形態の構成によれば、キャビン10内のオペレータは、画像表示装置50を見ることなく、前窓から見た視界の範囲内で既存の構造物等の拡張画像AR1を視認することが可能となる。
【0079】
[拡張画像の他の表示形態(2)]
ショベルの表示装置は、ショベルの遠隔操縦システム1000に適用してもよい。
図9はショベル100と遠隔操縦装置400とを有するショベルの遠隔操縦システム1000の概略構成を示すブロック図である。
【0080】
遠隔操縦装置400は、ショベル100と地理的に離れた位置に配置される。
遠隔操縦装置400は、オペレータOPが座る運転席DSと、ショベル100の操縦及びその他の操作を行う操作装置404と、キャビン10からの視界の画像である実画像を表示する画像表示装置403とを備える。
さらに、遠隔操縦装置400は、各種の処理を行うコントローラ410と、記憶部402と、通信機器401とを備えている。
【0081】
操作装置404は、ショベル100の操作装置45と同じ構成からなり、ショベル100の各動作要素を駆動するそれぞれの油圧アクチュエータの操作を行う操作手段である。
【0082】
画像表示装置403は、運転席DSの正面に設けられ、コントローラ410による制御の下、各種画像を表示する液晶ディスプレイや有機ELディスプレイである。
【0083】
記憶部402は、各種のデータ等の情報を書き込み及び読み出し可能に記憶する不揮発性メモリ、HDD、SSD等の記憶部である。
【0084】
通信機器401は、所定の無線通信規格に基づき、所定の通信ネットワークNWを通じて遠隔の外部機器である管理装置200やショベル100等と各種情報を送受信する通信デバイスである。
【0085】
コントローラ410は、ショベル100のコントローラ30を通じてショベル100各部の動作を制御してショベル100の駆動制御を行う制御装置である。コントローラ410は、例えば、CPU,RAM,ROM,I/O等を含むマイクロコンピュータを中心に構成され、これらの他にも、例えばFPGAやASICなどを含んで構成されてもよい。
【0086】
また、コントローラ410は、機能ブロックとして、周辺情報取得部411、拡張画像生成部412、表示処理部413、校正部414及び俯瞰画像生成部415を有する。これらの機能的構成は、コントローラ410が各種のプログラムを実行することで実現する構成だが、これらの機能的構成をハードウェアで実現させてもよい。これらの機能的構成については、後述する。
【0087】
なお、遠隔操縦システム1000に適用された作業機械の表示装置は、ショベル100の位置センサ43、周辺情報取得部411、拡張画像生成部412、表示処理部413、校正部414及び俯瞰画像生成部415と前述した画像表示装置403とによって構成される。
【0088】
図10は遠隔操縦装置400における所定の位置を原点O2とする遠隔操縦座標系を示す説明図である。
遠隔操縦座標系は、3次元UVW直交座標系であり、運転席DSの前後方向に平行に伸びるU軸、運転席DSの左右方向に平行に伸びるV軸、及び、U軸とV軸に直交するW軸を有する。
ショベル座標系のX軸は遠隔操縦座標系のU軸に対応し、Y軸は遠隔操縦座標系のV軸に対応し、Z軸は遠隔操縦座標系のW軸に対応している。
【0089】
本実施形態では、遠隔操縦座標系における各三次元座標は、ショベル座標系における三次元座標の1つに予め対応付けられている。そのため、遠隔操縦装置400におけるオペレータOPの目の位置である視点E1の遠隔操縦座標系の三次元座標が決まれば、ショベル座標系における視点E1の三次元座標は一意に決まる。なお、オペレータOPの視点E1の位置は、運転席DSに座るオペレータOPの左目と右目の位置をカメラの撮像により検出してその中点から視点E1を求めてもよい。
【0090】
次に、前述したコントローラ410の各機能的構成の機能の内容について詳細に説明する。
周辺情報取得部411は、通信機器401を通じてショベル100の現在の位置情報を取得する。
それ以外については、周辺情報取得部411は、前述したショベル100の周辺情報取得部31と同一の処理を実行する。
これにより、周辺情報取得部411は、ショベル100の現在位置周辺の周辺情報を取得する。
【0091】
拡張画像生成部412は、前述したショベル100の拡張画像生成部32と同一の処理を実行する。
これにより、拡張画像生成部412は、ショベル100の視点E1から見た既定の構造物等の拡張画像の拡張画像データを生成する。
【0092】
表示処理部413は、前述したショベル100の表示処理部33と同一の処理を実行する。
これにより、ショベル100の視点E1からの視界の実画像に、拡張画像生成部412が生成した既存の構造物等の拡張画像を重ねた画像(図4の表示画面G1参照)を画像表示装置403に表示することができる。
また、表示処理部413の場合も、既存の構造物等の各部の名称、ショベル100の一部(バケット6等)と既存の構造物等との距離情報DT等を拡張画像AR1の一部として表示してもよい。
【0093】
校正部414は、前述したショベル100の校正部34と同一の処理を実行する。
これにより、校正部414は、拡張画像AR1の表示位置に誤差が生じた場合に、当該誤差を校正して適正な位置となるように画像表示装置403に表示させることができる。
【0094】
俯瞰画像生成部415は、前述したショベル100の俯瞰画像生成部35と同一の処理を実行する。
これにより、俯瞰画像生成部415は、俯瞰画像の実画像データによる俯瞰画像化された実画像R2と俯瞰画像の拡張画像データによる拡張画像AR2とを重ねた画像(図6の表示画面G2参照)を画像表示装置403に表示させることができる。
【0095】
このように、ショベル100の遠隔操縦システム1000にショベルの表示装置を適用した場合も、ショベル100のキャビン10の視点E1からの視界の実画像R1に重ねて、既存の構造物等の拡張画像AR1を遠隔操縦装置400の画像表示装置403に表示することができる。
このため、ショベル100の遠隔地から操縦を行う場合でも、キャビン10の視点E1からの視界の実画像R1を見ながら操縦を行うことが可能である。
さらに、外的要因により既存の構造物等の視認不良又は視認不能状態となった場合でも、拡張画像AR1により視認不良又は視認不能状態の既存の構造物等の認識が可能となる。
このため、表示装置を搭載することにより、遠隔操縦が行われるショベル100のさらなる安全面を考慮した適正な運用が可能となる。
【0096】
なお、この遠隔操縦システム1000では、ショベル100のキャビン10にオペレータOPが搭乗して操縦を行うための構成も備えている。しかしながら、ショベル100の操縦を専ら遠隔操縦装置400から行う運用がなされる場合には、キャビン10と操作装置45と画像表示装置50をショベル100の構成から除いてもよい。
【0097】
また、ショベル100のコントローラ30と遠隔操縦装置400のコントローラ410とは、共通する機能構成である周辺情報取得部31,411、拡張画像生成部32,412、表示処理部33,413、校正部34,414及び俯瞰画像生成部35,415を有している。
これらの機能構成は、コントローラ30,410のいずれか一方のみが有する構成としてもよい。
また、上記五つの機能構成の一部をコントローラ30が実施し、残りの一部をコントローラ410が実施する構成としてもよい。
【0098】
また、遠隔操縦装置400にあっては、図9に示すように、画像表示装置403に替えて、オペレータOPが着用可能な画像表示装置としてのヘッドマウントディスプレイ420を利用してもよい。
ヘッドマウントディスプレイ420は、有線又は無線通信によって、コントローラ410との間で各種の情報を送受信できるように構成されている。
このヘッドマウントディスプレイ420は、透過型又は非透過型であってもよい。また、ヘッドマウントディスプレイ420は、片眼型又は両眼型であってもよい。
【0099】
ヘッドマウントディスプレイ420を利用する場合には、遠隔操縦座標系におけるオペレータOPの目の位置である視点E1は、固定点に定めてもよい。
また、ヘッドマウントディスプレイ420と遠隔操縦装置400の可動しない所定の固定位置との双方に、GNSS受信機等のような位置センサを設けてもよい。その場合、遠隔操縦座標系におけるヘッドマウントディスプレイ420の位置座標を取得することが可能となり、ヘッドマウントディスプレイ420の位置を遠隔操縦座標系におけるオペレータOPの視点E1に定めることができる。
【0100】
また、ヘッドマウントディスプレイ420に地磁気センサ等の方位センサを搭載し、オペレータOPの視線の方向を検出可能に構成してもよい。
ヘッドマウントディスプレイ420には、キャビン10の視点E1からの視界の実画像R1に重ねて既存の構造物等の拡張画像AR1を表示することができる。
そして、方位センサを搭載した場合には、検出されるオペレータOPの視線の方向に応じて、実画像R1及び拡張画像AR1の表示範囲を移動させる処理を行うことで、オペレータOPが見たい方向に顔を向けることで、見たい方向の画像を見ることができる。
【0101】
[その他]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態やその変形例に限られない。
例えば、ショベル100が管理装置200から周辺情報を取得する構成を例示したが、これに限定されない。例えば、ショベル100の記憶部46に周辺情報を予め用意する。そして、周辺情報取得部31がショベル100の周辺情報を記憶部46から読み出す構成としてもよい。
その場合、ショベル100は、通信機器80を保有しない構成としてもよい。また、管理装置200を用意しなくともよい。
【0102】
また、周辺情報は、ショベル100の作業目的地やその移動経路の全てに用意されていなくともよい。
例えば、周辺情報取得部31は、ショベル100が予め定められた位置の周辺情報のみを取得する構成としてもよい。その場合、周辺情報が取得された場合にのみ、拡張画像生成部32が拡張画像データを生成し、表示処理部33が拡張画像を表示する構成としてもよい。
【0103】
上記実施形態では、既存の構造物、地形又は区画の境界の具体例として、縁石を挙げているが、これに限定されないことは当然である。
即ち、既存の構造物としての地中の埋設物、ガードレール、道路標識、横断歩道等、電柱、送電鉄塔、既定の地形としての坂、傾斜面、断崖、土手、水路、河川、湖沼、農作地、山林、既定の区画の境界としての道路とそれ以外の土地の境界、土地の種別による境界、前述した地形の種別による境界、道路と施設の境界、施設同士の境界、所有の異なる土地と土地の境界等の区画の境界を拡張画像として表示してもよい。
これらの内、立体物は、簡略化した拡張画像を表示してもよい。また、立体的ではない地形、区画の境界等は、それらの範囲の境界線の線画となる拡張画像として表示してもよい。
上述した既存の構造物等を拡張画像として表示した場合にも、ショベル100との接触等による損傷、破壊の抑止、抑制を図ることが可能となる。また、ショベル100の進入を回避したい箇所への進入の抑止、抑制を図ることが可能となる。
さらに、地中の埋設物について拡張画像を表示する場合には、常に視覚的に認識不能な埋設物の視覚認識が可能となる。この場合、地中の埋設物の埋設箇所へのショベル100の進入を回避したい箇所への進入の抑止、抑制を図ることが可能となる。また、地中の埋設物に対する作業を目的とする場合に、地中の埋設物の視覚認識が可能となるので、ショベル100の作業性の向上を図ることが可能となる。
【0104】
また、周辺情報には、当該周辺情報に含まれる既存の構造物等に対する破損や進入等の事故発生時における通報先又は連絡先情報(電話番号等)を含む構成としてもよい。
その場合、表示処理部33,413は、拡張画像の表示に連絡先情報を含ませて表示してもよい。
【0105】
また、本発明に係る作業機械は、ショベルに限定されず、作業機械全般(建設機械も含む)に適用可能である。例えば、本発明に係る作業機械の表示装置は、ホイールローダ、ブルドーザ、モータグレーダ、スキッドステアローダ、コンパクトトラックローダ、自走式クレーン等にも適用可能である。
その他、実施の形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0106】
1 下部走行体
2 旋回機構
3 上部旋回体
4 ブーム
5 アーム
6 バケット
10 キャビン
11 アタッチメント
30,410 コントローラ
31,411 周辺情報取得部
32,412 拡張画像生成部
33,413 表示処理部
34,414 校正部
35,415 俯瞰画像生成部
40 撮像装置
43 位置センサ(位置情報取得部)
44 方位センサ
45 操作装置
46 記憶部
50,403 画像表示装置
51 投影装置
100 ショベル(作業機械)
400 遠隔操縦装置
404 操作装置
410 コントローラ
420 ヘッドマウントディスプレイ(画像表示装置)
1000 遠隔操縦システム
AR1,AR2 拡張画像
DS 運転席
DT 距離情報
E1 視点
G1,G2 表示画面
MD 土砂
NW ネットワーク
OP オペレータ
R1,R2 実画像
TG1 タグ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10