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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093742
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】制御システム、及び、制御装置
(51)【国際特許分類】
   H04J 99/00 20090101AFI20240702BHJP
【FI】
H04J99/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210306
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 英作
(57)【要約】
【課題】OAMモード多重伝送の受信側から送信側へのフィードバックを実現する、制御システム及び制御装置を提供する。
【解決手段】制御装置40は、OAM通信装置30に、第1フィードバック信号を、UCAアンテナ31の複数のアンテナ素子31-1~31-4のうちの一のアンテナ素子31以外のアンテナ素子31を用いず、該一のアンテナ素子31から送信させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1OAM(Orbital Angular Momentum)モード多重通信装置と第2OAMモード多重通信装置との間の通信を制御する制御システムであって、
前記第1OAMモード多重通信装置は、
回転対称状に且つ回転対称中心からの距離が等しい位置に配列されたN(Nは4以上の整数)個のアンテナ素子を含む第1UCA(Uniform Circular Array)と、
前記第1UCAのN個のアンテナ素子からそれぞれ送信される複数(N以下)のOAM(Orbital Angular Momentum)モード多重信号を形成する固定ウェイトの第1OAM送信処理部と、
前記第1UCAのN個のアンテナ素子と前記第1OAM送信処理部との間に設けられ且つ前記複数のOAMモード多重信号の位相を調整する第1位相調整部と、
を具備し、
前記第2OAMモード多重通信装置は、
回転対称状に且つ回転対称中心からの距離が等しい位置に配列されたN(Nは4以上の整数)個のアンテナ素子を含む第2UCAと、
前記第2UCAのN個のアンテナ素子にそれぞれ対応する複数の受信信号に対して、一のOAMモードに対応する適応制御の結果として得られたOAM受信ウェイトベクトルを乗算することによって、該一のOAMモードに対応する受信信号を抽出する適応制御化された第1OAM受信処理部と、
を具備し、
前記制御システムは、第1制御部と、第2制御部とを具備し、
前記第1制御部は、前記第1UCAの基準面に対する前記第1UCAのアレー面の偏移である第1の軸ずれを補償する第1補償手順において、前記第1OAMモード多重通信装置に、前記第1UCAのN個のアンテナ素子のそれぞれからOAMモード多重信号を送信させ、
前記第2制御部は、前記第1補償手順において、前記第1OAM受信処理部におけるOAM受信ウェイトベクトルに含まれるOAM受信ウェイト振幅成分に基づいて、前記第1の軸ずれに対応した情報を特定し、該第1の軸ずれに対応した情報に基づく第1フィードバック信号を形成し、前記第2OAMモード多重通信装置に、前記形成された第1フィードバック信号を、前記第2UCAのN個のアンテナ素子のうちの一のアンテナ素子以外のアンテナ素子を用いず、該一のアンテナ素子から送信させ、
前記第1制御部は、前記第1補償手順において、前記第1UCAのN個のアンテナ素子を介して前記第1フィードバック信号を取得し、前記取得された第1フィードバック信号に基づいて、前記第1位相調整部の位相値を制御する、
制御システム。
【請求項2】
前記第1制御部は、
前記第1補償手順において、前記第1OAMモード多重通信装置に、前記第1UCAのN個のアンテナ素子のそれぞれからOAMモード多重信号を送信させる第1送信制御部と、
前記第1補償手順において、前記第1UCAのN個のアンテナ素子を介して前記第1フィードバック信号を取得する第1取得部と、
前記第1補償手順において、前記取得された第1フィードバック信号に基づいて、前記第1位相調整部の位相値を制御する第1ビーム制御部と、
を具備し、
前記第2制御部は、
前記第1補償手順において、前記第1OAM受信処理部におけるOAM受信ウェイトベクトルに含まれるOAM受信ウェイト振幅成分に基づいて、前記第1の軸ずれに対応した情報を特定し、該第1の軸ずれに対応した情報に基づく第1フィードバック信号を形成する第1形成部と、
前記第1補償手順において、前記第2OAMモード多重通信装置に、前記形成された第1フィードバック信号を、前記第2UCAのN個のアンテナ素子のうちの一のアンテナ素子以外のアンテナ素子を用いず、該一のアンテナ素子から送信させる第2送信制御部と、
を具備する、
請求項1記載の制御システム。
【請求項3】
前記第1取得部は、前記第1UCAのN個のアンテナ素子にそれぞれ対応する複数の受信信号に対してOAMモード「ゼロ」に対応するOAM受信ウェイトベクトルを乗算することによって得られた受信信号から前記第1フィードバック信号を抽出する、
請求項2記載の制御システム。
【請求項4】
前記第2送信制御部は、前記第2OAMモード多重通信装置に、前記第1フィードバック信号をフレームのオーバヘッド部分を用いて送信させる、
請求項2記載の制御システム。
【請求項5】
前記第2送信制御部は、前記第2OAMモード多重通信装置に、前記第1フィードバック信号をフレームのペイロード部分を用いて送信させる、
請求項2記載の制御システム。
【請求項6】
前記第2OAMモード多重通信装置は、
前記第2UCAのN個のアンテナ素子からそれぞれ送信される複数(N以下)のOAMモード多重信号を形成する固定ウェイトの第2OAM送信処理部と、
前記第2UCAのN個のアンテナ素子と前記第2OAM送信処理部との間に設けられ且つ前記複数のOAMモード多重信号の位相を調整する第2位相調整部と、
を具備し、
前記第1OAMモード多重通信装置は、前記第1UCAのN個のアンテナ素子にそれぞれ対応する複数の受信信号に対して、一のOAMモードに対応する適応制御の結果として得られたOAM受信ウェイトベクトルを乗算することによって、該一のOAMモードに対応する受信信号を抽出する適応制御化された第2OAM受信処理部を具備し、
前記第2制御部は、前記第1補償手順の後に実行される手順であって、前記第2UCAの基準面に対する前記第2UCAのアレー面の偏移である第2の軸ずれを補償する手順である第2補償手順において、前記第2OAMモード多重通信装置に、前記第2UCAのN個のアンテナ素子のそれぞれからOAMモード多重信号を送信させ、
前記第1制御部は、前記第2補償手順において、前記第2OAM受信処理部におけるOAM受信ウェイトベクトルに含まれるOAM受信ウェイト振幅成分に基づいて、前記第2の軸ずれに対応した情報を特定し、該第2の軸ずれに対応した情報に基づく第2フィードバック信号を形成し、前記第1OAMモード多重通信装置に、前記形成された第2フィードバック信号を、前記第1UCAのN個のアンテナ素子のうちの一のアンテナ素子以外のアンテナ素子を用いず、該一のアンテナ素子から送信させ、
前記第2制御部は、前記第2補償手順において、前記第2UCAのN個のアンテナ素子を介して前記第2フィードバック信号を取得し、前記取得された第2フィードバック信号に基づいて、前記第2位相調整部の位相値を制御する、
請求項1記載の制御システム。
【請求項7】
前記第1補償手順及び前記第2補償手順は、前記第1OAMモード多重通信装置と前記第2OAMモード多重通信装置との間のリンクを確立するリンク確立手順の一部として実行される、
請求項6記載の制御システム。
【請求項8】
第1OAM(Orbital Angular Momentum)モード多重通信装置と第2OAMモード多重通信装置との間の通信を制御する制御システムにおける第1制御装置であって、
前記第1OAMモード多重通信装置は、
回転対称状に且つ回転対称中心からの距離が等しい位置に配列されたN(Nは4以上の整数)個のアンテナ素子を含む第1UCA(Uniform Circular Array)と、
前記第1UCAのN個のアンテナ素子からそれぞれ送信される複数(N以下)のOAM(Orbital Angular Momentum)モード多重信号を形成する固定ウェイトのOAM送信処理部と、
前記第1UCAのN個のアンテナ素子と前記OAM送信処理部との間に設けられ且つ前記複数のOAMモード多重信号の位相を調整する位相調整部と、
を具備し、
前記第2OAMモード多重通信装置は、
回転対称状に且つ回転対称中心からの距離が等しい位置に配列されたN(Nは4以上の整数)個のアンテナ素子を含む第2UCAと、
前記第2UCAのN個のアンテナ素子にそれぞれ対応する複数の受信信号に対して、一のOAMモードに対応する適応制御の結果として得られたOAM受信ウェイトベクトルを乗算することによって、該一のOAMモードに対応する受信信号を抽出する適応制御化されたOAM受信処理部と、
を具備し、
前記第1制御装置は、
前記第1UCAの基準面に対する前記第1UCAのアレー面の偏移である軸ずれを補償する補償手順において、前記第1OAMモード多重通信装置に、前記第1UCAのN個のアンテナ素子のそれぞれからOAMモード多重信号を送信させる送信制御部と、
前記補償手順において、前記第1UCAのN個のアンテナ素子を介してフィードバック信号を取得する取得部と、
前記補償手順において、前記取得されたフィードバック信号に基づいて、前記位相調整部の位相値を制御するビーム制御部と、
を具備し、
前記フィードバック信号は、前記制御システムの第2制御装置において、前記OAM受信処理部におけるOAM受信ウェイトベクトルに含まれるOAM受信ウェイト振幅成分に基づいて特定される軸ずれに対応した情報に基づいて形成され、前記第2UCAのN個のアンテナ素子のうちの一のアンテナ素子以外のアンテナ素子を用いず該一のアンテナ素子から送信される、
第1制御装置。
【請求項9】
前記取得部は、前記第1UCAのN個のアンテナ素子にそれぞれ対応する複数の受信信号に対してOAMモード「ゼロ」に対応するOAM受信ウェイトベクトルを乗算することによって得られた受信信号から前記フィードバック信号を抽出する、
請求項8記載の第1制御装置。
【請求項10】
第1OAM(Orbital Angular Momentum)モード多重通信装置と第2OAMモード多重通信装置との間の通信を制御する制御システムにおける第2制御装置であって、
前記第1OAMモード多重通信装置は、
回転対称状に且つ回転対称中心からの距離が等しい位置に配列されたN(Nは4以上の整数)個のアンテナ素子を含む第1UCA(Uniform Circular Array)と、
前記第1UCAのN個のアンテナ素子からそれぞれ送信される複数(N以下)のOAM(Orbital Angular Momentum)モード多重信号を形成する固定ウェイトのOAM送信処理部と、
前記第1UCAのN個のアンテナ素子と前記OAM送信処理部との間に設けられ且つ前記複数のOAMモード多重信号の位相を調整する位相調整部と、
を具備し、
前記第2OAMモード多重通信装置は、
回転対称状に且つ回転対称中心からの距離が等しい位置に配列されたN(Nは4以上の整数)個のアンテナ素子を含む第2UCAと、
前記第2UCAのN個のアンテナ素子にそれぞれ対応する複数の受信信号に対して、一のOAMモードに対応する適応制御の結果として得られたOAM受信ウェイトベクトルを乗算することによって、該一のOAMモードに対応する受信信号を抽出する適応制御化されたOAM受信処理部と、
を具備し、
前記第2制御装置は、
前記第1UCAの基準面に対する前記第1UCAのアレー面の偏移である軸ずれを補償する補償手順において、前記OAM受信処理部におけるOAM受信ウェイトベクトルに含まれるOAM受信ウェイト振幅成分に基づいて、前記軸ずれに対応した情報を特定し、該軸ずれに対応した情報に基づくフィードバック信号を形成する形成部と、
前記補償手順において、前記第2OAMモード多重通信装置に、前記形成されたフィードバック信号を、前記第2UCAのN個のアンテナ素子のうちの一のアンテナ素子以外のアンテナ素子を用いず、該一のアンテナ素子から送信させる送信制御部と、
を具備する、
第2制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御システム、及び、制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、軌道角運動量(OAM:orbital angular momentum)を持つ電磁波を用いた無線伝送方式(つまり、OAMモード多重伝送方式)が注目されている(例えば、非特許文献1)。非特許文献1では、OAMモード多重伝送に用いられる送信側UCA(Uniform Circular Array)のアレー面と受信側UCAのアレー面との角度を持ったずれ(軸ずれ)によってOAMモード多重伝送の特性が劣化することが指摘されている。そして、非特許文献1では、この特性劣化を補償する方法の一例として、送信ビーム制御(BS:Beam Steering)が挙げられている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】櫻谷信彦・西村寿彦・大鐘武雄(北大)・旦代智哉・内田大輔(東芝),”OAMビーム制御によるUCA軸ずれ補償の検討”, IEICE Technical Report, RCS2020-260、2021年3月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、軸ずれによるOAMモード多重伝送の特性劣化をビーム制御で補償するためには、OAMモード多重伝送の受信側からフィードバック信号を送信側に送信する必要があると考えられる。
【0005】
しかしながら、非特許文献1では、OAMモード多重伝送の受信側から送信側にフィードバック信号を伝送する手法について何ら検討されていない。
【0006】
本開示の目的は、OAMモード多重伝送の受信側から送信側へのフィードバックを実現する、制御システム及び制御装置を提供することにある。なお、この目的は、本明細書に開示される複数の実施形態が達成しようとする複数の目的の1つに過ぎないことに留意されるべきである。その他の目的又は課題と新規な特徴は、本明細書の記述又は添付図面から明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの態様では、制御システムは、
第1OAM(Orbital Angular Momentum)モード多重通信装置と第2OAMモード多重通信装置との間の通信を制御する制御システムであって、
前記第1OAMモード多重通信装置は、
回転対称状に且つ回転対称中心からの距離が等しい位置に配列されたN(Nは4以上の整数)個のアンテナ素子を含む第1UCA(Uniform Circular Array)と、
前記第1UCAのN個のアンテナ素子からそれぞれ送信される複数(N以下)のOAM(Orbital Angular Momentum)モード多重信号を形成する固定ウェイトの第1OAM送信処理部と、
前記第1UCAのN個のアンテナ素子と前記第1OAM送信処理部との間に設けられ且つ前記複数のOAMモード多重信号の位相を調整する第1位相調整部と、
を具備し、
前記第2OAMモード多重通信装置は、
回転対称状に且つ回転対称中心からの距離が等しい位置に配列されたN(Nは4以上の整数)個のアンテナ素子を含む第2UCAと、
前記第2UCAのN個のアンテナ素子にそれぞれ対応する複数の受信信号に対して、一のOAMモードに対応する適応制御の結果として得られたOAM受信ウェイトベクトルを乗算することによって、該一のOAMモードに対応する受信信号を抽出する適応制御化された第1OAM受信処理部と、
を具備し、
前記制御システムは、第1制御部と、第2制御部とを具備し、
前記第1制御部は、前記第1UCAの基準面に対する前記第1UCAのアレー面の偏移である第1の軸ずれを補償する第1補償手順において、前記第1OAMモード多重通信装置に、前記第1UCAのN個のアンテナ素子のそれぞれからOAMモード多重信号を送信させ、
前記第2制御部は、前記第1補償手順において、前記第1OAM受信処理部におけるOAM受信ウェイトベクトルに含まれるOAM受信ウェイト振幅成分に基づいて、前記第1の軸ずれに対応した情報を特定し、該第1の軸ずれに対応した情報に基づく第1フィードバック信号を形成し、前記第2OAMモード多重通信装置に、前記形成された第1フィードバック信号を、前記第2UCAのN個のアンテナ素子のうちの一のアンテナ素子以外のアンテナ素子を用いず、該一のアンテナ素子から送信させ、
前記第1制御部は、前記第1補償手順において、前記第1UCAのN個のアンテナ素子を介して前記第1フィードバック信号を取得し、前記取得された第1フィードバック信号に基づいて、前記第1位相調整部の位相値を制御する。
【0008】
他の態様では、第1制御装置は、
第1OAM(Orbital Angular Momentum)モード多重通信装置と第2OAMモード多重通信装置との間の通信を制御する制御システムにおける第1制御装置であって、
前記第1OAMモード多重通信装置は、
回転対称状に且つ回転対称中心からの距離が等しい位置に配列されたN(Nは4以上の整数)個のアンテナ素子を含む第1UCA(Uniform Circular Array)と、
前記第1UCAのN個のアンテナ素子からそれぞれ送信される複数(N以下)のOAM(Orbital Angular Momentum)モード多重信号を形成する固定ウェイトのOAM送信処理部と、
前記第1UCAのN個のアンテナ素子と前記OAM送信処理部との間に設けられ且つ前記複数のOAMモード多重信号の位相を調整する位相調整部と、
を具備し、
前記第2OAMモード多重通信装置は、
回転対称状に且つ回転対称中心からの距離が等しい位置に配列されたN(Nは4以上の整数)個のアンテナ素子を含む第2UCAと、
前記第2UCAのN個のアンテナ素子にそれぞれ対応する複数の受信信号に対して、一のOAMモードに対応する適応制御の結果として得られたOAM受信ウェイトベクトルを乗算することによって、該一のOAMモードに対応する受信信号を抽出する適応制御化されたOAM受信処理部と、
を具備し、
前記第1制御装置は、
前記第1UCAの基準面に対する前記第1UCAのアレー面の偏移である軸ずれを補償する補償手順において、前記第1OAMモード多重通信装置に、前記第1UCAのN個のアンテナ素子のそれぞれからOAMモード多重信号を送信させる送信制御部と、
前記補償手順において、前記第1UCAのN個のアンテナ素子を介してフィードバック信号を取得する取得部と、
前記補償手順において、前記取得されたフィードバック信号に基づいて、前記位相調整部の位相値を制御するビーム制御部と、
を具備し、
前記フィードバック信号は、前記制御システムの第2制御装置において、前記OAM受信処理部におけるOAM受信ウェイトベクトルに含まれるOAM受信ウェイト振幅成分に基づいて特定される軸ずれに対応した情報に基づいて形成され、前記第2UCAのN個のアンテナ素子のうちの一のアンテナ素子以外のアンテナ素子を用いず該一のアンテナ素子から送信される。
【0009】
他の態様では、第2制御装置は、
第1OAM(Orbital Angular Momentum)モード多重通信装置と第2OAMモード多重通信装置との間の通信を制御する制御システムにおける第2制御装置であって、
前記第1OAMモード多重通信装置は、
回転対称状に且つ回転対称中心からの距離が等しい位置に配列されたN(Nは4以上の整数)個のアンテナ素子を含む第1UCA(Uniform Circular Array)と、
前記第1UCAのN個のアンテナ素子からそれぞれ送信される複数(N以下)のOAM(Orbital Angular Momentum)モード多重信号を形成する固定ウェイトのOAM送信処理部と、
前記第1UCAのN個のアンテナ素子と前記OAM送信処理部との間に設けられ且つ前記複数のOAMモード多重信号の位相を調整する位相調整部と、
を具備し、
前記第2OAMモード多重通信装置は、
回転対称状に且つ回転対称中心からの距離が等しい位置に配列されたN(Nは4以上の整数)個のアンテナ素子を含む第2UCAと、
前記第2UCAのN個のアンテナ素子にそれぞれ対応する複数の受信信号に対して、一のOAMモードに対応する適応制御の結果として得られたOAM受信ウェイトベクトルを乗算することによって、該一のOAMモードに対応する受信信号を抽出する適応制御化されたOAM受信処理部と、
を具備し、
前記第2制御装置は、
前記第1UCAの基準面に対する前記第1UCAのアレー面の偏移である軸ずれを補償する補償手順において、前記OAM受信処理部におけるOAM受信ウェイトベクトルに含まれるOAM受信ウェイト振幅成分に基づいて、前記軸ずれに対応した情報を特定し、該軸ずれに対応した情報に基づくフィードバック信号を形成する形成部と、
前記補償手順において、前記第2OAMモード多重通信装置に、前記形成されたフィードバック信号を、前記第2UCAのN個のアンテナ素子のうちの一のアンテナ素子以外のアンテナ素子を用いず、該一のアンテナ素子から送信させる送信制御部と、
を具備する。
【発明の効果】
【0010】
本開示により、OAMモード多重伝送の受信側から送信側へのフィードバックを実現する、制御システム及び制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態における通信システムの一例を示す図である。
図2】送信軸ずれによる特性劣化の一例を示す図である。
図3】第1実施形態における第1OAM通信装置及び第1制御装置の一例を示すブロック図である。
図4】第1実施形態における第2OAM通信装置及び第2制御装置の一例を示すブロック図である。
図5】第1実施形態における通信システム1の処理動作の説明に供する図である。
図6】第2実施形態における第2制御装置の形成部の一例を示すブロック図である。
図7】第2実施形態の第1制御装置のビーム制御部の一例を示すブロック図である。
図8】制御装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、実施形態について説明する。なお、実施形態において、同一又は同等の要素には、同一の符号を付し、重複する説明は省略される。
【0013】
<第1実施形態>
<通信システムの概要>
図1は、第1実施形態における通信システムの一例を示す図である。図1において通信システム1は、OAMモード多重通信装置10,30と、制御システム50とを有している。制御システム50は、制御部(制御装置)20,40を有している。以下では、OAMモード多重通信装置を単に「OAM通信装置」と呼ぶことがある。また、以下では、OAM通信装置10を「第1OAM通信装置」を呼び、OAM通信装置30を「第2OAM通信装置」と呼ぶことがある。また、以下では、制御部(制御装置)20を「第1制御部(第1制御装置)」と呼び、制御部(制御装置)40を「第2制御部(第2制御装置)」と呼ぶことがある。なお、ここでは、制御装置20がOAM通信装置10と別体の装置として説明するが、制御装置20はOAM通信装置10に含まれていてもよい。また、制御装置40がOAM通信装置30と別体の装置として説明するが、制御装置40はOAM通信装置30に含まれていてもよい。
【0014】
OAM通信装置10は、信号処理部11と、UCA(Uniform Circular Array)アンテナ12とを有している。
【0015】
UCAアンテナ12は、複数のアンテナ素子12-1~12-Nを有している。UCAアンテナ12は、中心CNを中心とする円上にN個のアンテナ素子12-1~12-Nが配置されたアレーアンテナである。そして、各アンテナ素子12が1つの平面であるアレー面を形成する。Nは、4以上の整数である。実際に検討されているNとしては2のべき乗である8、16が一般的であるが、以下では説明を簡単にするために、一例としてN=4の場合について説明する。なお、以下では、アンテナ素子12-1~12-4を区別しない場合、単にアンテナ素子12と呼ぶことがある。
【0016】
信号処理部11は、アンテナ素子12から送信されるOAMモード多重信号を形成する。そして、信号処理部11は、形成したOAMモード多重信号から無線信号を形成し、形成した無線信号をアンテナ素子12に出力する。これにより、無線信号がアンテナ素子12を介して送信される。
【0017】
OAM通信装置30は、UCAアンテナ31と、信号処理部32とを有している。すなわち、ここでは、OAM通信装置10及びOAM通信装置30は、同じ構成を有している。
【0018】
UCAアンテナ31は、複数のアンテナ素子31-1~31-Nを有している。UCAアンテナ31は、アレー中心CNを中心とする円上にN個のアンテナ素子31-1~31-Nが配置されたアレーアンテナである。Nは、4以上の整数である。以下では、説明を簡単にするために、一例としてN=4の場合について説明する。なお、以下では、アンテナ素子31-1~31-4を区別しない場合、単にアンテナ素子31と呼ぶことがある。
【0019】
ここで、第1アンテナペアの2つのアンテナ素子12-1,12-3は、回転対称中心を挟んで反対側に位置し、垂直方向に配設され、「第1軸(軸AX1)」上に位置する。第2アンテナペアのアンテナ素子12-2,12-4は、回転対称中心を挟んで反対側に位置し、水平方向に配設され、上記の第1軸に交わる「第2軸(軸AX2)」上に位置する。また、第3アンテナペアの2つのアンテナ素子31-1,31-3は、第1アンテナペアに対応し且つ「第3軸(軸AX3)」上に位置する。第4アンテナペアの他の2つのアンテナ素子31-2,31-4は、第2アンテナペアに対応し且つ第3軸に交わる「第4軸(軸AX4)」上に位置する。
【0020】
信号処理部32は、アンテナ素子31を介して受信した無線信号に受信無線処理を施して、受信信号を得る。そして、信号処理部32は、この受信信号に対して、OAM受信処理を実行する。
【0021】
制御部20は、「第1補償手順」において、OAM通信装置10に、UCAアンテナ12のアンテナ素子12-1~12-4のそれぞれからOAMモード多重信号を送信させる。「第1補償手順」は、UCAアンテナ12の基準面に対するUCAアンテナ12のアレー面の偏移である軸ずれ(以下では、「第1の軸ずれ」又は「第1の送信側軸ずれ」と呼ばれることがある)を補償するための手順である。
【0022】
そして、制御部40は、「第1補償手順」において、信号処理部32のOAM受信処理にて用いられるOAM受信ウェイトベクトルに含まれるOAM受信ウェイト振幅成分に基づいて、第1の軸ずれに対応した情報を特定する。そして、制御部40は、該第1の軸ずれに対応した情報に基づくフィードバック信号(以下では、「第1フィードバック信号」と呼ばれることがある)を形成する。そして、制御部40は、OAM通信装置30に、第1フィードバック信号を、UCAアンテナ31のアンテナ素子31-1~31-4のうちの一のアンテナ素子31以外のアンテナ素子31を用いず、該一のアンテナ素子31から送信させる。例えば、制御部40は、OAM通信装置30に、第1フィードバック信号を、アンテナ素子31-1を用いて送信させる。
【0023】
そして、制御部20は、「第1補償手順」において、UCAアンテナ12のアンテナ素子12-1~12-4を介して第1フィードバック信号を取得する。そして、制御部20は、取得された第1フィードバック信号に基づいて、OAMモード多重信号の位相を調整するための位相値を制御する。これにより、OAM通信装置10のビーム方向が調整され、この結果として、第1の軸ずれが補償される。
【0024】
ここで、上記の通り、制御部40は、OAM通信装置30に、第1フィードバック信号を、一のアンテナ素子31から送信させている。これにより、制御部20が第1フィードバック信号を取得できる確率を高めている。すなわち、受信側軸ずれによる特性劣化は、受信信号処理の適応制御化によって補償される。また、送信側軸ずれによる特性劣化も、最適距離(あるUCA径及びRF周波数の組み合わせに対し、伝送容量が最大化されるリンク距離)の近傍では、受信信号処理の適応制御化によってほぼ補償される。しかし、遠距離(例えば、最適距離の数倍の距離)での特性は、微小な軸ずれがあると、SVD(Singular Value Decomposition)特性から大きく劣化する。送信側軸ずれ角の許容範囲は、(条件によるが)0.1deg以下といった微小な値である。このため、OAM通信装置10,30の初期設置時の方向調整を厳密に行ったとしても、例えば風によるUCAの振動によって容易に許容値を超える。従って、リンク確立時の受信側からのフィードバック信号の伝送は、送信側軸ずれがある場合の特性を想定しなければならない。フィードバック制御が成立するためには、送信側軸ずれ角によらず、所定レベルのCN比(CNR:Carrier-to-Noise Ratio)を確保できていることが必要である。この所定レベルのCN比は、最も特性が良いいずれかのOAMモードにおいて、変調方式としてQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)を用いて、前方誤り訂正(FEC:前方誤り訂正)を用いることなく、ほぼ誤りなしに伝送可能なレベルのCN比である。図2に示す計算結果から、例えばOAM通信装置10とOAM通信装置30との拒理が最適距離の3倍程度の場合、上記の所定レベルを満足できない送信軸ずれの範囲(アジマス(AZ)角及びエレベーション(EL)角の2次元平面における範囲)がかなり存在する。このため、OAM通信装置10及びOAM通信装置30の双方の送信ビーム制御が実現される前に、OAM通信装置10及びOAM通信装置30の双方がN個のアンテナ素子を用いて送信を行ってしまうと、OAM通信装置10及びOAM通信装置30の双方の送信ビーム制御を実現できない可能性が高い。これに対して、上記のとおり、制御部40が、OAM通信装置30に、第1フィードバック信号を、一のアンテナ素子31から送信させることにより、制御部20が第1フィードバック信号を取得できる確率を高めることができる。これにより、まず、OAM通信装置10の送信ビーム調整が実現される可能性を高めることができる。図2は、送信軸ずれによる特性劣化の一例を示す図である。図2における2つの横軸は、それぞれ、水平(AZ)方向の軸ずれ角と垂直(EL)方向の軸ずれ角(単位は、度(°)である。)を表す。縦軸は、受信信号のCN比を示している。
【0025】
制御部40は、第1補償手順の後に「第2補償手順」を実行する。「第2補償手順」は、UCAアンテナ31の基準面に対するUCAアンテナ31のアレー面の偏移である軸ずれ(以下では、「第2の軸ずれ」又は「第2の送信側軸ずれ」と呼ばれることがある)を補償する手順である。なお、制御部20は、「第1補償手順の終了条件」が満たされたときに、OAM通信装置10に、第1補償手順が終了したことを示す通知信号(以下では、「第1終了通知信号」と呼ばれることがある)を送信させてもよい。この第1終了通知信号は、例えば、アンテナ素子12-1~12-4のうちの一のアンテナ素子12以外のアンテナ素子12を用いず、該一のアンテナ素子12から送信される。そして、この第1終了通知信号は、OAM通信装置30を介して制御部40によって取得される。そして、制御部40は、第1終了通知信号を取得することをトリガとして、「第2補償手順」を開始してもよい。また、制御部40は、OAM通信装置30に、「第2補償手順」を開始することを示す通知信号(以下では、「開始通知信号」と呼ばれることがある)を送信させてもよい。この開始通知信号は、例えば、UCAアンテナ31のアンテナ素子31-1~31-4のうちの一のアンテナ素子31以外のアンテナ素子31を用いず、該一のアンテナ素子31から送信される。そして、この開始通知信号は、OAM通信装置10を介して制御部20によって取得される。
【0026】
例えば、制御部40は、「第2補償手順」において、OAM通信装置30に、UCAアンテナ31のアンテナ素子31-1~31-4のそれぞれからOAMモード多重信号を送信させる。
【0027】
そして、制御部20は、「第2補償手順」において、信号処理部11のOAM受信処理にて用いられるOAM受信ウェイトベクトルに含まれるOAM受信ウェイト振幅成分に基づいて、第2の軸ずれに対応した情報を特定する。そして、制御部20は、該第2の軸ずれに対応した情報に基づくフィードバック信号(以下では、「第2フィードバック信号」と呼ばれることがある)を形成する。そして、制御部20は、OAM通信装置10に、第2フィードバック信号を、UCAアンテナ12のアンテナ素子12-1~12-4のうちの一のアンテナ素子12以外のアンテナ素子12を用いず、該一のアンテナ素子12から送信させる。例えば、制御部20は、OAM通信装置10に、第2フィードバック信号を、アンテナ素子12-1を用いて送信させる。
【0028】
そして、制御部40は、「第2補償手順」において、UCAアンテナ31のアンテナ素子31-1~31-4を介して第2フィードバック信号を取得する。そして、制御部40は、取得された第2フィードバック信号に基づいて、OAMモード多重信号の位相を調整するための位相値を制御する。これにより、OAM通信装置30のビーム方向が調整され、この結果として、第2の軸ずれが補償される。
【0029】
以上のように、「第1補償手順」によって第1の送信軸ずれが補償され、「第2補償手順」によって第2の送信軸ずれが補償される。「第1補償手順」及び「第2補償手順」が完了した後には、OAM通信装置10とOAM通信装置30との間で、双方向のOAMモード多重通信が行われることになる。このOAMモード多重通信の間も、送信軸ずれの補償手順が実行されてもよい。この送信軸ずれの補償手順の間も基本的には送信軸ずれが補償されているので、フィードバック信号は、アンテナ素子12-1~12-4の全て、及び、アンテナ素子31-1~31-4の全てを用いた、OAMモード多重通信によって伝送されてもよい。なお、フィードバック信号は、常に、1つのOAMモード(例えば、OAMモード「ゼロ」)を用いて伝送されてもよい。また、フィードバック信号、及び、終了通知信号等は、フレーム内のオーバヘッド(OH:Over Head)部分を用いて伝送されてもよい。オーバヘッド部分は、誤り訂正無しのQPSKで伝送されるため、伝送遅延が最少である。また、遅延が大きな影響を及ぼさない場合(例えば、変調速度が非常に高い場合)、第1フィードバック信号、第2フィードバック信号、第1終了通知信号、及び、第2終了通知信号等は、誤り訂正の対象であるペイロード(PL:Pay Load)部分で伝送されてもよい。
【0030】
上記の「第1補償手順」及び「第2補償手順」は、例えば、OAM通信装置10とOAM通信装置30との間のリンク確立時(例えば、初期設定時)に実行される。また、上記の「第1補償手順」及び「第2補償手順」は、OAM通信装置10とOAM通信装置30との間のOAMモード多重通信が瞬断して復旧が必要となった場合に実行されてもよい。
【0031】
<通信システムの構成例>
(第1OAM通信装置及び第1制御装置の構成例)
図3は、第1実施形態における第1OAM通信装置及び第1制御装置の一例を示すブロック図である。
【0032】
図3に示すように、OAM通信装置10は、UCAアンテナ12と、OAM送信処理部13と、位相調整部14と、送信無線部15と、受信無線部16と、OAM受信処理部17とを有している。OAM送信処理部13と、位相調整部14と、送信無線部15と、受信無線部16と、OAM受信処理部17とは、信号処理部11に対応する。
【0033】
OAM送信処理部13は、アンテナ素子12-1~12-4からそれぞれ送信される複数のOAMモード多重信号を形成する。
【0034】
例えば、OAM送信処理部13は、互いに独立なM個(Mは2以上N以下の整数)のデータシンボルSI11~SI1Mを受け取る。Mは、モード多重数である。いま、N=4としているため、一例としてM=4として、説明する。そして、OAM送信処理部13は、受け取ったデータシンボルSI11~SI14に対して、固定のDFT(Discrete Fourier Transform)行列もしくはIDFT(Inverse Discrete Fourier Transform)行列である「OAM送信ウェイト行列」を乗算することによって、アンテナ素子12-1~12-4にそれぞれ対応する4個のOAMモード多重信号SO11~SO14を形成する。そして、OAM送信処理部13は、形成した4個のOAMモード多重信号SO11~SO14をアンテナ素子12-1~12-4に出力する。この4個のOAMモード多重信号SO11~SO14は、アンテナ素子12-1~12-4からそれぞれ送信されることになる。
【0035】
ここで、「OAM送信ウェイト行列」における4個の行ベクトルは、上記の4個のアンテナ素子12-1~12-4にそれぞれ対応する。また、「OAM送信ウェイト行列」における4個の列ベクトルは、互いに異なる4個の「OAMモード」にそれぞれ対応する。すなわち、「OAM送信ウェイト行列」における4個の列ベクトルは、列ベクトル内における4個のベクトル要素の値の間のズレ量(位相変化量)に関して、互いに異なっている。この「OAM送信ウェイト行列」によって、4個のデータシンボルSI11~SI14は、それぞれ異なる「OAMモード」によって送信されることになる。具体的には、「OAM送信ウェイト行列」の一の行ベクトルとデータシンボルSI11~SI14を要素とする列ベクトルとの積によって、一のアンテナ素子14から送信されるOAMモード多重信号が形成される。
【0036】
位相調整部14は、送信無線部15とOAM送信処理部13との間に設けられている。位相調整部14は、OAM送信処理部13から出力されたOAMモード多重信号SO11~SO14の位相を調整する。
【0037】
送信無線部15は、位相が調整された多重信号SO11~SO14のそれぞれに対して送信無線処理(つまり、デジタルアナログ変換、アップコンバート等)を施して、4つの無線信号を得る。この4つの無線信号は、アンテナ素子12-1~12-4からそれぞれ送信される。
【0038】
受信無線部16は、アンテナ素子12-1~12-4にてそれぞれ受信された4つの受信無線信号に対して受信無線処理(つまり、ダウンコンバート、アナログデジタル変換等)を施すことにより、4つの受信信号を得る。この4つの受信信号は、OAM受信処理部17に入力される。この4つの受信信号は、OAM通信装置30から送信された4つのOAMモード多重信号が空間多重された信号である。
【0039】
OAM受信処理部17は、4つの受信信号SI21~SI24に対して「OAM受信ウェイト行列」を乗算することによって、OAM受信処理(信号分離処理)を実行する。この信号分離処理によって、データシンボルSO21~SO24が得られる。このデータシンボルSO21~SO24は、理想的には、送信側のデータシンボルSI11~SI14と一致する。また、OAM受信処理部17は、信号分離精度の向上のために、データシンボルSO21~SO24とコンスタレーション上のシンボルとの誤差ベクトル(つまり、受信誤差)を最小化するように、「OAM受信ウェイト行列」を適応的に修正する。なお、「OAM受信ウェイト行列」の初期値は、例えば、「OAM送信ウェイト行列」の共役転置行列である。
【0040】
また、図3に示すように、制御装置20は、送信制御部21と、取得部22と、ビーム制御部23と、形成部24と、送信制御部25とを有している。送信制御部21と、取得部22と、ビーム制御部23とは、主に、上記の「第1補償手順」に関わる構成要素であり、形成部24と、送信制御部25とは、主に、上記の「第2補償手順」に関わる構成要素である。
【0041】
送信制御部21は、「第1補償手順」において、OAM通信装置10に、UCAアンテナ12のアンテナ素子12-1~12-4のそれぞれからOAMモード多重信号を送信させる。
【0042】
取得部22は、「第1補償手順」において、UCAアンテナ12のアンテナ素子12-1~12-4を介して、第1フィードバック信号を取得する。例えば、取得部22は、UCAアンテナ12のアンテナ素子12-1~12-4にそれぞれ対応する複数の受信信号に対してOAMモード「ゼロ」に対応するOAM受信ウェイトベクトルを乗算することによって得られた受信信号(データシンボル列)から、第1フィードバック信号を抽出する。
【0043】
ビーム制御部23は、「第1補償手順」において、取得部22にて取得された第1フィードバック信号に基づいて、OAMモード多重信号の位相を調整するための位相値を制御する。
【0044】
形成部24は、「第2補償手順」において、OAM受信処理部17のOAM受信処理にて用いられるOAM受信ウェイトベクトルに含まれるOAM受信ウェイト振幅成分に基づいて、第2の軸ずれに対応した情報を特定する。そして、形成部24は、該第2の軸ずれに対応した情報に基づく第2フィードバック信号を形成する。
【0045】
送信制御部25は、「第2補償手順」において、OAM通信装置10に、第2フィードバック信号を、一のアンテナ素子12から送信させる。例えば、送信制御部25は、OAM通信装置10に、第2フィードバック信号を、アンテナ素子12-1を用いて送信させる。このとき、第2フィードバック信号は、必然的に、OAMモード「ゼロ」によって送信されることになる。
【0046】
(第2OAM通信装置及び第2制御装置の構成例)
図4は、第1実施形態における第2OAM通信装置及び第2制御装置の一例を示すブロック図である。
【0047】
図4に示すように、OAM通信装置30は、UCAアンテナ31と、受信無線部33と、OAM受信処理部34と、OAM送信処理部35と、位相調整部36と、送信無線部37とを有している。受信無線部33と、OAM受信処理部34と、OAM送信処理部35と、位相調整部36と、送信無線部37とは、信号処理部32に対応する。なお、受信無線部33、OAM受信処理部34、OAM送信処理部35、位相調整部36、及び、送信無線部37は、OAM送信処理部13、位相調整部14、送信無線部15、受信無線部16、及び、OAM受信処理部17と基本的に同じなので、これらの説明は省略される。
【0048】
また、図4に示すように、制御装置40は、形成部41と、送信制御部42と、送信制御部43と、取得部44と、ビーム制御部45とを有している。
【0049】
形成部41は、「第1補償手順」において、OAM受信処理部34のOAM受信処理にて用いられるOAM受信ウェイトベクトルに含まれるOAM受信ウェイト振幅成分に基づいて、第1の軸ずれに対応した情報を特定する。そして、形成部41は、該第1の軸ずれに対応した情報に基づく第1フィードバック信号を形成する。
【0050】
送信制御部42は、「第1補償手順」において、OAM通信装置30に、第1フィードバック信号を、一のアンテナ素子31から送信させる。例えば、送信制御部42は、OAM通信装置30に、第1フィードバック信号を、アンテナ素子31-1を用いて送信させる。このとき、第1フィードバック信号は、必然的に、OAMモード「ゼロ」によって送信されることになる。
【0051】
送信制御部43は、「第2補償手順」において、OAM通信装置30に、UCAアンテナ31のアンテナ素子31-1~31-4のそれぞれからOAMモード多重信号を送信させる。
【0052】
取得部44は、「第2補償手順」において、UCAアンテナ31のアンテナ素子31-1~31-4を介して、第2フィードバック信号を取得する。例えば、取得部44は、UCAアンテナ31のアンテナ素子31-1~31-4にそれぞれ対応する複数の受信信号に対してOAMモード「ゼロ」に対応するOAM受信ウェイトベクトルを乗算することによって得られた受信信号(データシンボル列)から、第2フィードバック信号を抽出する。
【0053】
ビーム制御部45は、「第2補償手順」において、取得部44にて取得された第2フィードバック信号に基づいて、OAMモード多重信号の位相を調整するための位相値を制御する。
<通信システムの動作例>
図5は、第1実施形態における通信システム1の処理動作の説明に供する図である。図5では、OAM通信装置10,30の図示が省略されている。すなわち、図5では、特に、制御システム50の処理動作の一例が示されている。
【0054】
制御装置20は、OAM通信装置10に、UCAアンテナ12のアンテナ素子12-1~12-4のそれぞれからOAMモード多重信号を送信させる(ステップS11)。
【0055】
制御装置40は、信号処理部32のOAM受信処理にて用いられるOAM受信ウェイトベクトルに含まれるOAM受信ウェイト振幅成分に基づいて、第1の軸ずれに対応した情報を特定する(ステップS12)。
【0056】
制御装置40は、第1の軸ずれに対応した情報に基づく第1フィードバック信号を形成する(ステップS13)。
【0057】
制御装置40は、第1フィードバック信号を、UCAアンテナ31のアンテナ素子31-1~31-4のうちの一のアンテナ素子31以外のアンテナ素子31を用いず、該一のアンテナ素子31から送信させる(ステップS14)。
【0058】
制御装置20は、UCAアンテナ12のアンテナ素子12-1~12-4を介して第1フィードバック信号を取得する(ステップS15)。
【0059】
制御装置20は、取得された第1フィードバック信号に基づいて、OAMモード多重信号の位相を調整するための位相値を制御する(ステップS16)。
【0060】
ここで、ステップS11~S16は、第1補償手順の終了条件が満たされるまで繰り返し実行されてもよい。そして、制御装置20は、ステップS11~S16の繰り返しによって得られる位相値の平均値を保持しておいてもよい。そして、制御装置20は、「第1補償手順」及び「第2補償手順」の完了後に実行されるOAM通信装置10とOAM通信装置30との間のOAMモード多重通信において、保持しておいた位相値の平均値を用いてもよい。
【0061】
制御装置20は、第1補償手順の終了条件が満たされると、OAM通信装置10に、第1終了通知を送信させる(ステップS17)。この第1終了通知信号は、例えば、アンテナ素子12-1~12-4のうちの一のアンテナ素子12以外のアンテナ素子12を用いず、該一のアンテナ素子12から送信される。この第1終了通知は、OAM通信装置30を介して制御装置40によって取得される。
【0062】
制御装置40は、OAM通信装置30に、UCAアンテナ31のアンテナ素子31-1~31-4のそれぞれからOAMモード多重信号を送信させる(ステップS21)。
【0063】
制御装置20は、信号処理部11のOAM受信処理にて用いられるOAM受信ウェイトベクトルに含まれるOAM受信ウェイト振幅成分に基づいて、第2の軸ずれに対応した情報を特定する(ステップS22)。
【0064】
制御装置20は、第2の軸ずれに対応した情報に基づく第2フィードバック信号を形成する(ステップS23)。
【0065】
制御装置20は、第2フィードバック信号を、UCAアンテナ12のアンテナ素子12-1~12-4のうちの一のアンテナ素子12以外のアンテナ素子12を用いず、該一のアンテナ素子12から送信させる(ステップS24)。
【0066】
制御装置40は、UCAアンテナ31のアンテナ素子31-1~31-4を介して第2フィードバック信号を取得する(ステップS25)。
【0067】
制御装置40は、取得された第2フィードバック信号に基づいて、OAMモード多重信号の位相を調整するための位相値を制御する(ステップS26)。
【0068】
ここで、ステップS21~S26は、第2補償手順の終了条件が満たされるまで繰り返し実行されてもよい。そして、制御装置40は、ステップS21~S26の繰り返しによって得られる位相値の平均値を保持しておいてもよい。そして、制御装置40は、「第1補償手順」及び「第2補償手順」の完了後に実行されるOAM通信装置10とOAM通信装置30との間のOAMモード多重通信において、保持しておいた位相値の平均値を用いてもよい。
【0069】
制御装置40は、第2補償手順の終了条件が満たされると、OAM通信装置30に、第2終了通知を送信させる(ステップS27)。この第2終了通知信号は、例えば、アンテナ素子31-1~31-4のうちの一のアンテナ素子31以外のアンテナ素子31を用いず、該一のアンテナ素子31から送信されてもよい。この第2終了通知は、OAM通信装置10を介して制御装置20によって取得される。
【0070】
「第1補償手順」及び「第2補償手順」が完了した後には、OAM通信装置10とOAM通信装置30との間で、保持しておいた位相値の平均値を初期値として用いて、双方向のOAMモード多重通信が行われることになる。
【0071】
ここで、軸ずれは、完全に固定されているのではなく、周囲の振動に応じて僅かながら時間的に変動している。しかし、ステップS21~S26の繰り返しによって得られる位相値の平均値は、初期の第1の軸ずれを補償する値となっていると考えてよい。軸ずれによる特性劣化は、軸ずれ角に対し急峻ではあるが、ある範囲内では一定の特性を維持している(図2の中央部分参照)。第2の軸ずれの補償に要する時間経過、瞬時的な時間変動を考慮しても、ステップS21~S26の繰り返しによって得られる位相値の平均値を初期値とする制御を適用すれば、劣化量はQPSK伝送に対し十分小さいと考えられる。従って、「第2補償手順」が完了した後においても、送信軸ずれの制御は成立する。
【0072】
以上のように第1実施形態によれば、制御装置40は、OAM通信装置30に、第1フィードバック信号を、UCAアンテナ31のアンテナ素子31-1~31-4のうちの一のアンテナ素子31以外のアンテナ素子31を用いず、該一のアンテナ素子31から送信させる。
【0073】
この制御装置40の構成により、第1フィードバック信号が一のアンテナ素子31から送信されることによって、第2の軸ずれの影響を排除することができる。これにより、制御装置20が第1フィードバック信号を取得できる確率を高めることができる。すなわち、軸ずれは、UCAの複数のアンテナ素子が面(2次元)上に配列されるため発生する。アンテナ素子が2個の場合には、2個のアンテナ素子が直線(1次元)上に配列される。このとき、軸ずれの対象となる軸数は1つとなるが、軸ずれは存在する。これに対して、アンテナ素子の数が1個になると、0次元となり、軸ずれの対象となる軸がなくなる。このため、第1フィードバック信号が一のアンテナ素子31から送信されることによって、第2の軸ずれの影響を排除することができる。これにより、OAM通信装置10の送信ビーム調整が実現される可能性を高めることができる。
【0074】
また、制御装置40は、OAM通信装置30に、第1フィードバック信号をOAMモード「ゼロ」を用いて送信させてもよい。1つのアンテナ素子でのOAMモード「ゼロ」の送信電力は、N個のアンテナ素子を用いた送信に比べて、N倍に上げることができる。すなわち、N個のアンテナ素子でのN個のOAMモードの多重化の場合、各OAMモードの電力を均等とすると、1つのOAMモードの電力は、全体の1/Nになる。このため、1つのアンテナ素子でのOAMモード「ゼロ」の送信電力をN倍にしたとしても、N個のアンテナ素子でのN個のOAMモードの多重化の場合の送信電力と等しい。つまり、1つのアンテナ素子でのOAMモード「ゼロ」の送信電力は、N個のアンテナ素子を用いた送信に比べて、N倍に上げたとしても、デメリットは生じない。
【0075】
<第2実施形態>
第2実施形態は、「軸ずれに対応した情報」の具体例、「位相値の制御」の具体例等に関する。なお、第2実施形態における第1OAM通信装置、第1制御装置、第2OAM通信装置、及び第2制御装置の基本構成は、第1実施形態のOAM通信装置10、制御装置20、OAM通信装置30、及び、制御装置40と同じなので、図3,4を参照する。
【0076】
まず、「第1補償手順」に関わる第1制御装置の構成及び第2制御装置の構成について説明する。
【0077】
制御装置40は、図4に示すように、形成部41と、送信制御部42とを有している。
【0078】
形成部41は、「第4アンテナペア(アンテナ素子31-2,31-4)」に対応する2つのOAM受信ウェイトの振幅成分の差を算出し、該差の極性(正負)を特定する。この特定された極性を「第1の極性値」と呼ぶ。また、形成部41は、「第3アンテナペア(アンテナ素子31-1,31-3)」に対応する他の2つのOAM受信ウェイトの振幅成分の差を算出し、該差の極性(正負)を特定する。この特定された極性を「第2の極性値」と呼ぶ。そして、形成部41は、各処理タイミングで特定された「第1の極性値」に「修正ステップ値」を乗じて得られた値を積分(累積加算)することによって、「第1の移相器位相値」を得る。また、形成部41は、各処理タイミングで特定された「第2の極性値」に「修正ステップ値」を乗じて得られた値を積分(累積加算)することによって、「第2の移相器位相値」を得る。なお、「第1の極性値」及び「第2の極性値」は、第1実施形態の「第1の軸ずれに対応した情報」に対応する。「第1の極性値」は、送信アンテナ素子12-1,12-3の位置を結ぶ方向の軸AX1(第1軸)の回りの軸ずれの方向を示す。また、「第2の極性値」は、送信アンテナ素子12-2,12-4の位置を結ぶ方向の軸AX2(第2軸)の回りの軸ずれの方向を示す。
【0079】
図6は、第2実施形態における第2制御装置の形成部の一例を示すブロック図である。図6において形成部41は、算出部41Aと、特定部41Bと、乗算部41Cと、積分部41Dと、フィードバック信号形成部41Eとを有している。
【0080】
算出部41Aは、「第4アンテナペア(アンテナ素子31-2,31-4)」に対応する2つのOAM受信ウェイトの振幅成分の差を算出する。そして、特定部41Bは、算出部41Aにて算出されたこの差の極性(つまり、「第1の極性値」)を特定する。
【0081】
また、算出部41Aは、「第3アンテナペア(アンテナ素子31-1,31-3)」に対応する他の2つのOAM受信ウェイトの振幅成分の差を算出する。そして、特定部41Bは、算出部41Aにて算出されたこの差の極性(つまり、「第2の極性値」)を特定する。
【0082】
乗算部41Cは、上記の第1の極性値に「修正ステップ値」を乗算する。そして、積分部41Dは、乗算部41Cにて得られた値を積分(累積加算)して、「第1の移相器位相情報の値」を得る。
【0083】
例えば、乗算部41C及び積分部41Dは、「第1の移相器位相情報の値」を次の式(1)に基づいて、一定の時間間隔で更新する。
【数1】
【0084】
式(1)において、φAZ t-1は、更新前の「第1の移相器位相情報の値」であり、φAZ tは、更新後の「第1の移相器位相情報の値」である。Δは、固定の調整ステップ幅である。CAZは、「第1の極性値(例えば、+1又は-1)」である。
【0085】
ここで、第1の極性値がマイナス値の場合、(-Δ×C)はプラスの値になる。すなわち、第1の極性値がマイナス方向の送信側軸ずれを示している場合、その送信側軸ずれを相殺するために、現在の「第1の移相器位相情報の値」にプラスの値の(-Δ×C)を加算することによって現在の「第1の移相器位相情報の値」を更新している。
【0086】
また、乗算部41Cは、上記の第2の極性値に「修正ステップ値」を乗算する。そして、積分部41Dは、乗算部41Cにて得られた値を積分(累積加算)して、「第2の移相器位相情報の値」を得る。
【0087】
例えば、乗算部41C及び積分部41Dは、「第2の移相器位相情報の値」を次の式(2)に基づいて、一定の時間間隔で更新する。
【数2】
式(2)において、φEL t-1は、更新前の「第2の移相器位相情報の値」であり、φEL tは、更新後の「第2の移相器位相情報の値」である。Δは、固定の調整ステップ幅である。CELは、「第2の極性値(例えば、+1又は-1)」である。
【0088】
フィードバック信号形成部41Eは、「第1の移相器位相情報の値」及び「第2の移相器位相情報の値」を含む第1フィードバック信号を形成する。
【0089】
送信制御部42は、OAM通信装置30に、第1フィードバック信号を、一のアンテナ素子31から送信させる。
【0090】
制御装置20は、図3に示すように、送信制御部21と、取得部22と、ビーム制御部23とを有している。
【0091】
送信制御部21は、「第1補償手順」において、OAM通信装置10に、UCAアンテナ12のアンテナ素子12-1~12-4のそれぞれからOAMモード多重信号を送信させる。
【0092】
取得部22は、UCAアンテナ12のアンテナ素子12-1~12-4を介して、第1フィードバック信号を取得する。そして、取得部22は、第1フィードバック信号から、「第1の移相器位相情報の値」及び「第2の移相器位相情報の値」を取得する。
【0093】
ここで、取得部22にて取得された「第1の移相器位相情報の値」は、アンテナ素子12-2についての第1の移相器位相情報の値であると見なすことができる。また、取得部22にて取得された「第2の移相器位相情報の値」は、アンテナ素子12-1についての第2の移相器位相情報の値と見なすことができる。その他のアンテナ素子12についての第1の移相器位相情報の値及び第2の移相器位相情報の値は、アンテナ素子12-2,12-1の位置と他のアンテナ素子12の位置とが線形関係にあることから、換算によって算出することができる。
【0094】
ビーム制御部23は、取得部22にて取得された「第1の移相器位相情報の値」から、各アンテナ素子12についての「第1の移相器位相情報の値」を算出する。また、ビーム制御部23は、取得部22にて取得された「第2の移相器位相情報の値」から、各アンテナ素子12についての「第2の移相器位相情報の値」を算出する。そして、ビーム制御部23は、各アンテナ素子12に対応する位相調整部14の移相器について、各アンテナ素子12についての「第1の移相器位相情報の値」と「第2の移相器位相情報の値」とを加算することによって「移相器位相値」を得る。
【0095】
図7は、第2実施形態の第1制御装置のビーム制御部の一例を示すブロック図である。図7においてビーム制御部23は、換算部23Aと、加算部23Bとを有している。
【0096】
換算部23Aは、取得部22にて取得された「第1の移相器位相情報の値」から、各アンテナ素子12についての「第1の移相器位相情報の値」を算出する。換算部23Aは、取得部22にて取得された「第2の移相器位相情報の値」から、各アンテナ素子12についての「第2の移相器位相情報の値」を算出する。
【0097】
例えば、取得部22にて取得された「第1の移相器位相情報の値」を送信アンテナ素子12-2に対する制御値であるとすると、送信アンテナ素子12-1及び送信アンテナ素子12-3に対する制御値は、送信アンテナ素子12-2と送信アンテナ素子12-1(送信アンテナ素子12-3)との位置関係から、送信アンテナ素子12-2の「第1の移相器位相情報の値」を0倍したものである。同様に、送信アンテナ素子12-4に対する制御値は、送信アンテナ素子12-2の「第1の移相器位相情報の値」を-1倍したものである。
【0098】
同様に、取得部22にて取得された「第2の移相器位相情報の値」を送信アンテナ素子12-1に対する制御値であるとすると、送信アンテナ素子12-2及び送信アンテナ素子12-4に対する制御値は、送信アンテナ素子12-1と送信アンテナ素子12-2(送信アンテナ素子12-4)との位置関係から、送信アンテナ素子12-1の「第2の移相器位相情報の値」を0倍したものである。同様に、送信アンテナ素子12-3に対する制御値は、送信アンテナ素子12-1の「第2の移相器位相情報の値」を-1倍したものである。
【0099】
このように、換算部23Aは、各々1つのアンテナ素子12に対する「第1の移相器位相情報の値」及び「第2の移相器位相情報の値」を、残りの各アンテナ素子12の位置関係に基づいて換算することで、全アンテナ素子12に対する「第1の移相器位相情報の値」及び「第2の移相器位相情報の値」を算出する。なお、これは、素子数Nが4より大きい場合でも同じである。2つの直交軸上に存在しないアンテナ素子が存在するN=8の場合、1/√2倍等の演算を行うことになるが、乗算器で換算が可能である。送信アンテナ素子12-2に対する「第1の移相器位相情報の値」及び送信アンテナ素子12-1に対する「第2の移相器位相情報の値」は、換算が不要である。
【0100】
加算部23Bは、各アンテナ素子12に対応する位相調整部14の移相器について、各アンテナ素子12についての「第1の移相器位相情報の値」と「第2の移相器位相情報の値」とを加算することによって「移相器位相値」を得る。すなわち、下記の式(3)に示すように、アンテナ素子12-iについての「第1の移相器位相情報の値」と「第2の移相器位相情報の値」とを加算することによって、アンテナ素子12-iに対応する位相調整部14の移相器についての移相器位相値φが得られる。
【数3】
【0101】
なお、「第2補償手順」に関わる第1制御装置の構成は、「第1補償手順」に関わる第2制御装置の構成と基本的に同じなので、その説明は省略される。すなわち、形成部24及び送信制御部25の基本構成は、形成部41及び送信制御部42の基本構成と同じである。また、「第2補償手順」に関わる第2制御装置の構成は、「第1補償手順」に関わる第1制御装置の構成と基本的に同じなので、その説明は省略される。すなわち、送信制御部43、取得部44、及びビーム制御部45の基本構成は、送信制御部21、取得部22、及びビーム制御部23の基本構成と同じである。
【0102】
<他の実施形態>
以上の第1実施形態及び第2実施形態の制御装置20,40は、それぞれ、図8に示した構成を有することができる。図8は、制御装置の構成例を示す図である。図8において制御装置100は、プロセッサ101と、メモリ102とを有している。プロセッサ101は、例えば、マイクロプロセッサ、MPU(Micro Processing Unit)、又はCPU(Central Processing Unit)であってもよい。プロセッサ101は、複数のプロセッサを含んでもよい。メモリ102は、揮発性メモリ及び不揮発性メモリの組み合わせによって構成される。メモリ102は、プロセッサ101から離れて配置されたストレージを含んでもよい。この場合、プロセッサ101は、図示されていないI/O(Input/Output)インタフェースを介してメモリ102にアクセスしてもよい。第1実施形態及び第2実施形態の制御装置20,40の送信制御部21,43と、取得部22,44と、ビーム制御部23,45と、形成部24,41と、送信制御部25,42とは、プロセッサ101がメモリ102に記憶されたプログラムを読み込んで実行することにより実現されてもよい。すなわち、第1実施形態及び第2実施形態の制御装置20,40は、ソフトウェアで実現可能である。プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、制御装置20,40に供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)を含む。さらに、非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、CD(Compact Disc)-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/Wを含む。さらに、非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、半導体メモリを含む。半導体メモリは、例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory)を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によって制御装置20,40に供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムを制御装置20,40に供給できる。
【0103】
ただし、第1実施形態及び第2実施形態で説明した制御装置20,40は、ハードウェア(回路)によっても実現できる。すなわち、第1実施形態及び第2実施形態の制御装置20,40の送信制御部21,43と、取得部22,44と、ビーム制御部23,45と、形成部24,41と、送信制御部25,42とを、回路で実現してもよい。
【0104】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記によって限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0105】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
第1OAM(Orbital Angular Momentum)モード多重通信装置と第2OAMモード多重通信装置との間の通信を制御する制御システムであって、
前記第1OAMモード多重通信装置は、
回転対称状に且つ回転対称中心からの距離が等しい位置に配列されたN(Nは4以上の整数)個のアンテナ素子を含む第1UCA(Uniform Circular Array)と、
前記第1UCAのN個のアンテナ素子からそれぞれ送信される複数(N以下)のOAM(Orbital Angular Momentum)モード多重信号を形成する固定ウェイトの第1OAM送信処理部と、
前記第1UCAのN個のアンテナ素子と前記第1OAM送信処理部との間に設けられ且つ前記複数のOAMモード多重信号の位相を調整する第1位相調整部と、
を具備し、
前記第2OAMモード多重通信装置は、
回転対称状に且つ回転対称中心からの距離が等しい位置に配列されたN(Nは4以上の整数)個のアンテナ素子を含む第2UCAと、
前記第2UCAのN個のアンテナ素子にそれぞれ対応する複数の受信信号に対して、一のOAMモードに対応する適応制御の結果として得られたOAM受信ウェイトベクトルを乗算することによって、該一のOAMモードに対応する受信信号を抽出する適応制御化された第1OAM受信処理部と、
を具備し、
前記制御システムは、第1制御部と、第2制御部とを具備し、
前記第1制御部は、前記第1UCAの基準面に対する前記第1UCAのアレー面の偏移である第1の軸ずれを補償する第1補償手順において、前記第1OAMモード多重通信装置に、前記第1UCAのN個のアンテナ素子のそれぞれからOAMモード多重信号を送信させ、
前記第2制御部は、前記第1補償手順において、前記第1OAM受信処理部におけるOAM受信ウェイトベクトルに含まれるOAM受信ウェイト振幅成分に基づいて、前記第1の軸ずれに対応した情報を特定し、該第1の軸ずれに対応した情報に基づく第1フィードバック信号を形成し、前記第2OAMモード多重通信装置に、前記形成された第1フィードバック信号を、前記第2UCAのN個のアンテナ素子のうちの一のアンテナ素子以外のアンテナ素子を用いず、該一のアンテナ素子から送信させ、
前記第1制御部は、前記第1補償手順において、前記第1UCAのN個のアンテナ素子を介して前記第1フィードバック信号を取得し、前記取得された第1フィードバック信号に基づいて、前記第1位相調整部の位相値を制御する、
制御システム。
(付記2)
前記第1制御部は、
前記第1補償手順において、前記第1OAMモード多重通信装置に、前記第1UCAのN個のアンテナ素子のそれぞれからOAMモード多重信号を送信させる第1送信制御部と、
前記第1補償手順において、前記第1UCAのN個のアンテナ素子を介して前記第1フィードバック信号を取得する第1取得部と、
前記第1補償手順において、前記取得された第1フィードバック信号に基づいて、前記第1位相調整部の位相値を制御する第1ビーム制御部と、
を具備し、
前記第2制御部は、
前記第1補償手順において、前記第1OAM受信処理部におけるOAM受信ウェイトベクトルに含まれるOAM受信ウェイト振幅成分に基づいて、前記第1の軸ずれに対応した情報を特定し、該第1の軸ずれに対応した情報に基づく第1フィードバック信号を形成する第1形成部と、
前記第1補償手順において、前記第2OAMモード多重通信装置に、前記形成された第1フィードバック信号を、前記第2UCAのN個のアンテナ素子のうちの一のアンテナ素子以外のアンテナ素子を用いず、該一のアンテナ素子から送信させる第2送信制御部と、
を具備する、
付記1記載の制御システム。
(付記3)
前記第1取得部は、前記第1UCAのN個のアンテナ素子にそれぞれ対応する複数の受信信号に対してOAMモード「ゼロ」に対応するOAM受信ウェイトベクトルを乗算することによって得られた受信信号から前記第1フィードバック信号を抽出する、
付記2記載の制御システム。
(付記4)
前記第2送信制御部は、前記第2OAMモード多重通信装置に、前記第1フィードバック信号をフレームのオーバヘッド部分を用いて送信させる、
付記2記載の制御システム。
(付記5)
前記第2送信制御部は、前記第2OAMモード多重通信装置に、前記第1フィードバック信号をフレームのペイロード部分を用いて送信させる、
付記2記載の制御システム。
(付記6)
前記第2OAMモード多重通信装置は、
前記第2UCAのN個のアンテナ素子からそれぞれ送信される複数(N以下)のOAMモード多重信号を形成する固定ウェイトの第2OAM送信処理部と、
前記第2UCAのN個のアンテナ素子と前記第2OAM送信処理部との間に設けられ且つ前記複数のOAMモード多重信号の位相を調整する第2位相調整部と、
を具備し、
前記第1OAMモード多重通信装置は、前記第1UCAのN個のアンテナ素子にそれぞれ対応する複数の受信信号に対して、一のOAMモードに対応する適応制御の結果として得られたOAM受信ウェイトベクトルを乗算することによって、該一のOAMモードに対応する受信信号を抽出する適応制御化された第2OAM受信処理部を具備し、
前記第2制御部は、前記第1補償手順の後に実行される手順であって、前記第2UCAの基準面に対する前記第2UCAのアレー面の偏移である第2の軸ずれを補償する手順である第2補償手順において、前記第2OAMモード多重通信装置に、前記第2UCAのN個のアンテナ素子のそれぞれからOAMモード多重信号を送信させ、
前記第1制御部は、前記第2補償手順において、前記第2OAM受信処理部におけるOAM受信ウェイトベクトルに含まれるOAM受信ウェイト振幅成分に基づいて、前記第2の軸ずれに対応した情報を特定し、該第2の軸ずれに対応した情報に基づく第2フィードバック信号を形成し、前記第1OAMモード多重通信装置に、前記形成された第2フィードバック信号を、前記第1UCAのN個のアンテナ素子のうちの一のアンテナ素子以外のアンテナ素子を用いず、該一のアンテナ素子から送信させ、
前記第2制御部は、前記第2補償手順において、前記第2UCAのN個のアンテナ素子を介して前記第2フィードバック信号を取得し、前記取得された第2フィードバック信号に基づいて、前記第2位相調整部の位相値を制御する、
付記1記載の制御システム。
(付記7)
前記第2制御部は、
前記第1補償手順の後に実行される手順であって、前記第2UCAの基準面に対する前記第2UCAのアレー面の偏移である第2の軸ずれを補償する手順である第2補償手順において、前記第2OAMモード多重通信装置に、前記第2UCAのN個のアンテナ素子のそれぞれからOAMモード多重信号を送信させる第3送信制御部と、
前記第2補償手順において、前記第2UCAのN個のアンテナ素子を介して前記第2フィードバック信号を取得する第2取得部と、
前記第2補償手順において、前記取得された第2フィードバック信号に基づいて、前記第2位相調整部の位相値を制御する第2ビーム制御部と、
を具備し、
前記第1制御部は、
前記第2補償手順において、前記第2OAM受信処理部におけるOAM受信ウェイトベクトルに含まれるOAM受信ウェイト振幅成分に基づいて、前記第2の軸ずれに対応した情報を特定し、該第2の軸ずれに対応した情報に基づく第2フィードバック信号を形成する第2形成部と、
前記第2補償手順において、前記第1OAMモード多重通信装置に、前記形成された第2フィードバック信号を、前記第1UCAのN個のアンテナ素子のうちの一のアンテナ素子以外のアンテナ素子を用いず、該一のアンテナ素子から送信させる第4送信制御部と、
を具備する、
付記6記載の制御システム。
(付記8)
前記第1補償手順及び前記第2補償手順は、前記第1OAMモード多重通信装置と前記第2OAMモード多重通信装置との間のリンクを確立するリンク確立手順の一部として実行される、
付記6記載の制御システム。
(付記9)
前記リンク確立手順は、前記第1OAMモード多重通信装置及び前記第2OAMモード多重通信装置の起動したとき、又は、前記リンクが瞬断したときに、実行される、
付記8記載の制御システム。
(付記10)
第1OAM(Orbital Angular Momentum)モード多重通信装置と第2OAMモード多重通信装置との間の通信を制御する制御システムにおける第1制御装置であって、
前記第1OAMモード多重通信装置は、
回転対称状に且つ回転対称中心からの距離が等しい位置に配列されたN(Nは4以上の整数)個のアンテナ素子を含む第1UCA(Uniform Circular Array)と、
前記第1UCAのN個のアンテナ素子からそれぞれ送信される複数(N以下)のOAM(Orbital Angular Momentum)モード多重信号を形成する固定ウェイトのOAM送信処理部と、
前記第1UCAのN個のアンテナ素子と前記OAM送信処理部との間に設けられ且つ前記複数のOAMモード多重信号の位相を調整する位相調整部と、
を具備し、
前記第2OAMモード多重通信装置は、
回転対称状に且つ回転対称中心からの距離が等しい位置に配列されたN(Nは4以上の整数)個のアンテナ素子を含む第2UCAと、
前記第2UCAのN個のアンテナ素子にそれぞれ対応する複数の受信信号に対して、一のOAMモードに対応する適応制御の結果として得られたOAM受信ウェイトベクトルを乗算することによって、該一のOAMモードに対応する受信信号を抽出する適応制御化されたOAM受信処理部と、
を具備し、
前記第1制御装置は、
前記第1UCAの基準面に対する前記第1UCAのアレー面の偏移である軸ずれを補償する補償手順において、前記第1OAMモード多重通信装置に、前記第1UCAのN個のアンテナ素子のそれぞれからOAMモード多重信号を送信させる送信制御部と、
前記補償手順において、前記第1UCAのN個のアンテナ素子を介してフィードバック信号を取得する取得部と、
前記補償手順において、前記取得されたフィードバック信号に基づいて、前記位相調整部の位相値を制御するビーム制御部と、
を具備し、
前記フィードバック信号は、前記制御システムの第2制御装置において、前記OAM受信処理部におけるOAM受信ウェイトベクトルに含まれるOAM受信ウェイト振幅成分に基づいて特定される軸ずれに対応した情報に基づいて形成され、前記第2UCAのN個のアンテナ素子のうちの一のアンテナ素子以外のアンテナ素子を用いず該一のアンテナ素子から送信される、
第1制御装置。
(付記11)
前記取得部は、前記第1UCAのN個のアンテナ素子にそれぞれ対応する複数の受信信号に対してOAMモード「ゼロ」に対応するOAM受信ウェイトベクトルを乗算することによって得られた受信信号から前記フィードバック信号を抽出する、
付記10記載の第1制御装置。
(付記12)
第1OAM(Orbital Angular Momentum)モード多重通信装置と第2OAMモード多重通信装置との間の通信を制御する制御システムにおける第2制御装置であって、
前記第1OAMモード多重通信装置は、
回転対称状に且つ回転対称中心からの距離が等しい位置に配列されたN(Nは4以上の整数)個のアンテナ素子を含む第1UCA(Uniform Circular Array)と、
前記第1UCAのN個のアンテナ素子からそれぞれ送信される複数(N以下)のOAM(Orbital Angular Momentum)モード多重信号を形成する固定ウェイトのOAM送信処理部と、
前記第1UCAのN個のアンテナ素子と前記OAM送信処理部との間に設けられ且つ前記複数のOAMモード多重信号の位相を調整する位相調整部と、
を具備し、
前記第2OAMモード多重通信装置は、
回転対称状に且つ回転対称中心からの距離が等しい位置に配列されたN(Nは4以上の整数)個のアンテナ素子を含む第2UCAと、
前記第2UCAのN個のアンテナ素子にそれぞれ対応する複数の受信信号に対して、一のOAMモードに対応する適応制御の結果として得られたOAM受信ウェイトベクトルを乗算することによって、該一のOAMモードに対応する受信信号を抽出する適応制御化されたOAM受信処理部と、
を具備し、
前記第2制御装置は、
前記第1UCAの基準面に対する前記第1UCAのアレー面の偏移である軸ずれを補償する補償手順において、前記OAM受信処理部におけるOAM受信ウェイトベクトルに含まれるOAM受信ウェイト振幅成分に基づいて、前記軸ずれに対応した情報を特定し、該軸ずれに対応した情報に基づくフィードバック信号を形成する形成部と、
前記補償手順において、前記第2OAMモード多重通信装置に、前記形成されたフィードバック信号を、前記第2UCAのN個のアンテナ素子のうちの一のアンテナ素子以外のアンテナ素子を用いず、該一のアンテナ素子から送信させる送信制御部と、
を具備する、
第2制御装置。
(付記13)
前記送信制御部は、前記第2OAMモード多重通信装置に、前記フィードバック信号をフレームのオーバヘッド部分を用いて送信させる、
付記12記載の第2制御装置。
(付記14)
前記送信制御部は、前記第2OAMモード多重通信装置に、前記フィードバック信号をフレームのペイロード部分を用いて送信させる、
付記12に記載の第2制御装置。
(付記15)
第1OAM(Orbital Angular Momentum)モード多重通信装置と第2OAMモード多重通信装置との間の通信を制御する制御システムにおける第1制御装置によって実行される方法であって、
前記第1OAMモード多重通信装置は、
回転対称状に且つ回転対称中心からの距離が等しい位置に配列されたN(Nは4以上の整数)個のアンテナ素子を含む第1UCA(Uniform Circular Array)と、
前記第1UCAのN個のアンテナ素子からそれぞれ送信される複数(N以下)のOAM(Orbital Angular Momentum)モード多重信号を形成する固定ウェイトのOAM送信処理部と、
前記第1UCAのN個のアンテナ素子と前記OAM送信処理部との間に設けられ且つ前記複数のOAMモード多重信号の位相を調整する位相調整部と、
を具備し、
前記第2OAMモード多重通信装置は、
回転対称状に且つ回転対称中心からの距離が等しい位置に配列されたN(Nは4以上の整数)個のアンテナ素子を含む第2UCAと、
前記第2UCAのN個のアンテナ素子にそれぞれ対応する複数の受信信号に対して、一のOAMモードに対応する適応制御の結果として得られたOAM受信ウェイトベクトルを乗算することによって、該一のOAMモードに対応する受信信号を抽出する適応制御化されたOAM受信処理部と、
を具備し、
前記方法は、
前記第1UCAの基準面に対する前記第1UCAのアレー面の偏移である軸ずれを補償する補償手順において、前記第1OAMモード多重通信装置に、前記第1UCAのN個のアンテナ素子のそれぞれからOAMモード多重信号を送信させることと、
前記補償手順において、前記第1UCAのN個のアンテナ素子を介してフィードバック信号を取得することと、
前記補償手順において、前記取得されたフィードバック信号に基づいて、前記位相調整部の位相値を制御することと、
を含み、
前記フィードバック信号は、前記制御システムの第2制御装置において、前記OAM受信処理部におけるOAM受信ウェイトベクトルに含まれるOAM受信ウェイト振幅成分に基づいて特定される軸ずれに対応した情報に基づいて形成され、前記第2UCAのN個のアンテナ素子のうちの一のアンテナ素子以外のアンテナ素子を用いず該一のアンテナ素子から送信される、
方法。
(付記16)
前記取得することは、前記第1UCAのN個のアンテナ素子にそれぞれ対応する複数の受信信号に対してOAMモード「ゼロ」に対応するOAM受信ウェイトベクトルを乗算することによって得られた受信信号から前記フィードバック信号を抽出することを含む、
付記15記載の方法。
(付記17)
第1OAM(Orbital Angular Momentum)モード多重通信装置と第2OAMモード多重通信装置との間の通信を制御する制御システムにおける第2制御装置によって実行される方法であって、
前記第1OAMモード多重通信装置は、
回転対称状に且つ回転対称中心からの距離が等しい位置に配列されたN(Nは4以上の整数)個のアンテナ素子を含む第1UCA(Uniform Circular Array)と、
前記第1UCAのN個のアンテナ素子からそれぞれ送信される複数(N以下)のOAM(Orbital Angular Momentum)モード多重信号を形成する固定ウェイトのOAM送信処理部と、
前記第1UCAのN個のアンテナ素子と前記OAM送信処理部との間に設けられ且つ前記複数のOAMモード多重信号の位相を調整する位相調整部と、
を具備し、
前記第2OAMモード多重通信装置は、
回転対称状に且つ回転対称中心からの距離が等しい位置に配列されたN(Nは4以上の整数)個のアンテナ素子を含む第2UCAと、
前記第2UCAのN個のアンテナ素子にそれぞれ対応する複数の受信信号に対して、一のOAMモードに対応する適応制御の結果として得られたOAM受信ウェイトベクトルを乗算することによって、該一のOAMモードに対応する受信信号を抽出する適応制御化されたOAM受信処理部と、
を具備し、
前記方法は、
前記第1UCAの基準面に対する前記第1UCAのアレー面の偏移である軸ずれを補償する補償手順において、前記OAM受信処理部におけるOAM受信ウェイトベクトルに含まれるOAM受信ウェイト振幅成分に基づいて、前記軸ずれに対応した情報を特定し、該軸ずれに対応した情報に基づくフィードバック信号を形成することと、
前記補償手順において、前記第2OAMモード多重通信装置に、前記形成されたフィードバック信号を、前記第2UCAのN個のアンテナ素子のうちの一のアンテナ素子以外のアンテナ素子を用いず、該一のアンテナ素子から送信させることと、
を含む、
方法。
(付記18)
前記形成されたフィードバック信号を送信させることは、前記第2OAMモード多重通信装置に、前記フィードバック信号をフレームのオーバヘッド部分を用いて送信させることを含む、
付記17記載の方法。
(付記19)
前記形成されたフィードバック信号を送信させることは、前記第2OAMモード多重通信装置に、前記フィードバック信号をフレームのペイロード部分を用いて送信させることを含む、
付記17に記載の方法。
(付記20)
第1OAM(Orbital Angular Momentum)モード多重通信装置と第2OAMモード多重通信装置との間の通信を制御する制御システムにおける第1制御装置に処理を実行させるプログラムであって、
前記第1OAMモード多重通信装置は、
回転対称状に且つ回転対称中心からの距離が等しい位置に配列されたN(Nは4以上の整数)個のアンテナ素子を含む第1UCA(Uniform Circular Array)と、
前記第1UCAのN個のアンテナ素子からそれぞれ送信される複数(N以下)のOAM(Orbital Angular Momentum)モード多重信号を形成する固定ウェイトのOAM送信処理部と、
前記第1UCAのN個のアンテナ素子と前記OAM送信処理部との間に設けられ且つ前記複数のOAMモード多重信号の位相を調整する位相調整部と、
を具備し、
前記第2OAMモード多重通信装置は、
回転対称状に且つ回転対称中心からの距離が等しい位置に配列されたN(Nは4以上の整数)個のアンテナ素子を含む第2UCAと、
前記第2UCAのN個のアンテナ素子にそれぞれ対応する複数の受信信号に対して、一のOAMモードに対応する適応制御の結果として得られたOAM受信ウェイトベクトルを乗算することによって、該一のOAMモードに対応する受信信号を抽出する適応制御化されたOAM受信処理部と、
を具備し、
前記処理は、
前記第1UCAの基準面に対する前記第1UCAのアレー面の偏移である軸ずれを補償する補償手順において、前記第1OAMモード多重通信装置に、前記第1UCAのN個のアンテナ素子のそれぞれからOAMモード多重信号を送信させることと、
前記補償手順において、前記第1UCAのN個のアンテナ素子を介してフィードバック信号を取得することと、
前記補償手順において、前記取得されたフィードバック信号に基づいて、前記位相調整部の位相値を制御することと、
を含み、
前記フィードバック信号は、前記制御システムの第2制御装置において、前記OAM受信処理部におけるOAM受信ウェイトベクトルに含まれるOAM受信ウェイト振幅成分に基づいて特定される軸ずれに対応した情報に基づいて形成され、前記第2UCAのN個のアンテナ素子のうちの一のアンテナ素子以外のアンテナ素子を用いず該一のアンテナ素子から送信される、
プログラム。
(付記21)
前記取得することは、前記第1UCAのN個のアンテナ素子にそれぞれ対応する複数の受信信号に対してOAMモード「ゼロ」に対応するOAM受信ウェイトベクトルを乗算することによって得られた受信信号から前記フィードバック信号を抽出することを含む、
付記20記載のプログラム。
(付記22)
第1OAM(Orbital Angular Momentum)モード多重通信装置と第2OAMモード多重通信装置との間の通信を制御する制御システムにおける第2制御装置に処理を実行させるプログラムであって、
前記第1OAMモード多重通信装置は、
回転対称状に且つ回転対称中心からの距離が等しい位置に配列されたN(Nは4以上の整数)個のアンテナ素子を含む第1UCA(Uniform Circular Array)と、
前記第1UCAのN個のアンテナ素子からそれぞれ送信される複数(N以下)のOAM(Orbital Angular Momentum)モード多重信号を形成する固定ウェイトのOAM送信処理部と、
前記第1UCAのN個のアンテナ素子と前記OAM送信処理部との間に設けられ且つ前記複数のOAMモード多重信号の位相を調整する位相調整部と、
を具備し、
前記第2OAMモード多重通信装置は、
回転対称状に且つ回転対称中心からの距離が等しい位置に配列されたN(Nは4以上の整数)個のアンテナ素子を含む第2UCAと、
前記第2UCAのN個のアンテナ素子にそれぞれ対応する複数の受信信号に対して、一のOAMモードに対応する適応制御の結果として得られたOAM受信ウェイトベクトルを乗算することによって、該一のOAMモードに対応する受信信号を抽出する適応制御化されたOAM受信処理部と、
を具備し、
前記処理は、
前記第1UCAの基準面に対する前記第1UCAのアレー面の偏移である軸ずれを補償する補償手順において、前記OAM受信処理部におけるOAM受信ウェイトベクトルに含まれるOAM受信ウェイト振幅成分に基づいて、前記軸ずれに対応した情報を特定し、該軸ずれに対応した情報に基づくフィードバック信号を形成することと、
前記補償手順において、前記第2OAMモード多重通信装置に、前記形成されたフィードバック信号を、前記第2UCAのN個のアンテナ素子のうちの一のアンテナ素子以外のアンテナ素子を用いず、該一のアンテナ素子から送信させることと、
を含む、
プログラム。
(付記23)
前記形成されたフィードバック信号を送信させることは、前記第2OAMモード多重通信装置に、前記フィードバック信号をフレームのオーバヘッド部分を用いて送信させることを含む、
付記22記載のプログラム。
(付記24)
前記形成されたフィードバック信号を送信させることは、前記第2OAMモード多重通信装置に、前記フィードバック信号をフレームのペイロード部分を用いて送信させることを含む、
付記22に記載のプログラム。
【符号の説明】
【0106】
1 通信システム
10 OAMモード多重通信装置(第1OAM通信装置)
11 信号処理部
12 UCAアンテナ
13 OAM送信処理部
14 位相調整部
15 送信無線部
16 受信無線部
17 OAM受信処理部
20 制御部(第1制御装置)
21 送信制御部
22 取得部
23 ビーム制御部
23A 換算部
23B 加算部
24 形成部
25 送信制御部
30 OAMモード多重通信装置(第2OAM通信装置)
31 UCAアンテナ
32 信号処理部
33 受信無線部
34 OAM受信処理部
35 OAM送信処理部
36 位相調整部
37 送信無線部
40 制御部(第2制御装置)
41 形成部
41A 算出部
41B 特定部
41C 乗算部
41D 積分部
41E フィードバック信号形成部
42 送信制御部
43 送信制御部
44 取得部
45 ビーム制御部
50 制御システム
図1
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