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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093745
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/12 20060101AFI20240702BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20240702BHJP
   H01L 23/15 20060101ALI20240702BHJP
   H01L 23/32 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
H01L23/12 N
H05K3/46 B
H01L23/14 C
H01L23/32 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210311
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100209048
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 元嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100212705
【弁理士】
【氏名又は名称】矢頭 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(72)【発明者】
【氏名】中村 司
【テーマコード(参考)】
5E316
【Fターム(参考)】
5E316AA33
5E316AA35
5E316AA38
5E316AA43
5E316CC08
5E316CC18
5E316CC31
5E316CC32
5E316CC34
5E316CC35
5E316CC36
5E316CC37
5E316CC38
5E316DD17
5E316DD23
5E316DD24
5E316EE31
5E316FF04
5E316GG15
5E316GG17
5E316GG28
5E316HH33
5E316JJ14
(57)【要約】
【課題】ガラス基板へのダメージを抑制しつつ、安定的にガラス基板から支持体を剥離する。
【解決手段】配線基板の製造方法は、互いに対向する第1面S1と第2面S2とを有し、第1導体層が形成される第1領域IRと、第1領域を囲む第2領域ORと、第2領域を囲み且つ第1面の端部を含む第3領域ERとを含むガラス基板10の第2面側に第1支持体12を貼り合わせることと、第1面側に第1導体層を形成することと、ガラス基板及び第1支持体の側面の少なくとも一部に堆積され、第1導体層を含む第1堆積物200を除去することと、ガラス基板から第1支持体を分離することとを備える。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する第1面と第2面とを有し、第1導体層が形成される第1領域と、前記第1領域を囲む第2領域と、前記第2領域を囲み且つ前記第1面の端部を含む第3領域とを含むガラス基板の前記第2面側に第1支持体を貼り合わせることと、
前記第1面側に前記第1導体層を形成することと、
前記ガラス基板及び前記第1支持体の側面の少なくとも一部に堆積され、前記第1導体層を含む第1堆積物を除去することと、
前記ガラス基板から前記第1支持体を分離することと
を備える、
配線基板の製造方法。
【請求項2】
前記第1堆積物を除去することにおいて、前記第1堆積物及び前記ガラス基板の第3領域が除去される、
請求項1記載の配線基板の製造方法。
【請求項3】
前記ガラス基板の前記第3領域は、ダイシング処理により除去される、
請求項2記載の配線基板の製造方法。
【請求項4】
前記ガラス基板の前記第3領域は、レーザ光照射により除去される、
請求項2記載の配線基板の製造方法。
【請求項5】
前記ガラス基板の前記第3領域は、スクライブ処理及びブレイク処理により除去される、
請求項2記載の配線基板の製造方法。
【請求項6】
前記第3領域の幅は0mmより大きく1mm以下である、
請求項2記載の配線基板の製造方法。
【請求項7】
前記第1堆積物を除去することにおいて、前記第1堆積物は、レーザ光照射により除去される、
請求項1記載の配線基板の製造方法。
【請求項8】
前記第1堆積物を除去することにおいて、前記第1堆積物及び前記ガラス基板の第3領域が除去され、前記第1支持体は除去されない、
請求項1記載の配線基板の製造方法。
【請求項9】
前記第1面上に第1絶縁層を形成することを更に備え、
前記第1堆積物は、前記第1絶縁層を更に含む、
請求項1記載の配線基板の製造方法。
【請求項10】
前記第1支持体が貼り合わせられた前記ガラス基板にレーザを照射し、前記ガラス基板に改質部を形成することと、
前記改質部にエッチング処理を行い、前記ガラス基板に貫通孔を形成することと
を更に備える、
請求項1記載の配線基板の製造方法。
【請求項11】
前記ガラス基板の前記第1面側に第2支持体を貼り合わせることと、
前記第2面側に第2導体層を形成することと、
前記ガラス基板及び前記第2支持体の側面の少なくとも一部に堆積され、前記第2導体層を含む第2堆積物を除去することと、
前記ガラス基板から前記第2支持体を分離することと
を備える、
請求項1記載の配線基板の製造方法。
【請求項12】
前記ガラス基板は、前記第2領域と前記第3領域との間に設けられた第4領域を更に含み、
前記第2堆積物を除去することにおいて、前記第2堆積物及び前記ガラス基板の第4領域が除去される、
請求項11記載の配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の高機能化及び小型化が進んでいる。これに伴い、インターポーザのような、電子機器に搭載される多層配線基板にも、更なる高精度化が求められている。インターポーザは、コア材を貫通する貫通電極が設けられた多層配線基板である。インターポーザは、配線のデザインルールが互いに異なる集積回路(IC:Integrated Circuit)チップ及びプリント基板のように、端子間距離が異なる部品を、貫通電極を介して中継する機能を有する。
【0003】
近年、コア材にガラス基板を採用したガラスインターポーザが注目されている。ガラスインターポーザは、安価で大面積のガラス基板に貫通電極等を形成し、これを個片化することによって得られるため、製造コストが低い。一方、ガラス基板の厚さが100μm程度に薄くなると、ガラス基板には、製造中に割れ等の障害が発生しやすい。このような障害を防ぐために、ガラス基板を支持体で補強する方法が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1では、ガラス基板に剥離層を介して支持体を接着し、配線の形成後に支持体を剥離除去する方法が記載されている。具体的には、まず、ガラス基板の第1面上に第1の配線を形成する。次に、第1の配線が形成されたガラス基板の第1の配線側を支持体でサポートする。そして、ガラス基板に対して、貫通孔形成の起点となるレーザ改質部を、第1面とは反対側の面から照射するレーザで形成する。次に、ガラス基板の第1面とは反対側の面から第1面に向けて、弗酸を用いたエッチングを施して、ガラス基板の薄板化を行いつつ貫通孔を形成する。次いで、貫通孔形成後に、貫通孔の内部に貫通電極を形成すると共に、ガラス基板の第1面とは反対側の面に第2の配線を形成して、貫通電極を介して第1の配線と第2の配線を接続する。そして、第2の配線の形成後に、ガラス基板から支持体を外す。このようにして、製造中におけるガラス基板の割れ等の障害が抑制される。
【0005】
特許文献2では、支持体をガラス基板に積層する工程が記載されている。一方、特許文献2には、支持体をガラス基板から剥離する工程については記載されていない。
【0006】
特許文献3では、支持体をガラス基板から剥離する工程が記載されている。一方、特許文献3には、支持体の剥離方法、及び剥離の際の懸念点等については記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2019/235617号
【特許文献2】特許第7011215号公報
【特許文献3】特許第6176253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ガラス基板から支持体を剥離させる際には、ガラス基板と樹脂層、または、支持体の積層体の側面における剥離性については検討されていない。そのため、ガラス基板に意図しない欠けや割れ等が発生する可能性がある。このため、ガラス基板を傷つけずに安定的に支持体を剥離することは、困難である。
【0009】
本発明は、ガラス基板へのダメージを抑制しつつ、安定的にガラス基板から支持体を剥離し得る技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面によると、互いに対向する第1面と第2面とを有し、第1導体層が形成される第1領域と、前記第1領域を囲む第2領域と、前記第2領域を囲み且つ前記第1面の端部を含む第3領域とを含むガラス基板の前記第2面側に第1支持体を貼り合わせることと、前記第1面側に前記第1導体層を形成することと、前記ガラス基板及び前記第1支持体の側面の少なくとも一部に堆積され、前記第1導体層を含む第1堆積物を除去することと、前記ガラス基板から前記第1支持体を分離することとを備える配線基板の製造方法が提供される。
【0011】
本発明の更に他の側面によると、前記第1堆積物を除去することにおいて、前記第1堆積物及び前記ガラス基板の第3領域が除去される、上記側面に係る配線基板の製造方法が提供される。
【0012】
本発明の更に他の側面によると、前記ガラス基板の前記第3領域は、ダイシング処理により除去される、上記側面に係る配線基板の製造方法が提供される。
【0013】
本発明の更に他の側面によると、前記ガラス基板の前記第3領域は、レーザ光照射により除去される、上記側面に係る配線基板の製造方法が提供される。
【0014】
本発明の更に他の側面によると、前記ガラス基板の前記第3領域は、スクライブ処理及びブレイク処理により除去される、上記側面に係る配線基板の製造方法が提供される。
【0015】
本発明の更に他の側面によると、前記第3領域の幅は0mmより大きく1mm以下である、上記側面に係る配線基板の製造方法が提供される。
【0016】
本発明の更に他の側面によると、前記第1堆積物を除去することにおいて、前記第1堆積物は、レーザ光照射により除去される、上記側面に係る配線基板の製造方法が提供される。
【0017】
本発明の更に他の側面によると、前記第1堆積物を除去することにおいて、前記第1堆積物及び前記ガラス基板の第3領域が除去され、前記第1支持体は除去されない、上記側面に係る配線基板の製造方法が提供される。
【0018】
本発明の更に他の側面によると、前記第1面上に第1絶縁層を形成することを更に備え、前記第1堆積物は、前記第1絶縁層を更に含む、上記側面に係る配線基板の製造方法が提供される。
【0019】
本発明の更に他の側面によると、前記第1支持体が貼り合わせられた前記ガラス基板にレーザを照射し、前記ガラス基板に改質部を形成することと、前記改質部にエッチング処理を行い、前記ガラス基板に貫通孔を形成することとを更に備える、上記側面に係る配線基板の製造方法が提供される。
【0020】
本発明の更に他の側面によると、前記ガラス基板の前記第1面側に第2支持体を貼り合わせることと、前記第2面側に第2導体層を形成することと、前記ガラス基板及び前記第2支持体の側面の少なくとも一部に堆積され、前記第2導体層を含む第2堆積物を除去することと、前記ガラス基板から前記第2支持体を分離することとを備える、上記側面に係る配線基板の製造方法が提供される。
【0021】
本発明の更に他の側面によると、前記ガラス基板は、前記第2領域と前記第3領域との間に設けられた第4領域を更に含み、前記第2堆積物を除去することにおいて、前記第2堆積物及び前記ガラス基板の第4領域が除去される、上記側面に係る配線基板の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ガラス基板から支持体を剥離する際にガラス基板の割れや欠けなどの発生を抑制し、安定的に支持体を剥離することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、第1実施形態に係る配線基板の断面図である。
図2図2は、図1に示す配線基板の一部を拡大して示す断面図である。
図3図3は、第1実施形態に係る配線基板の製造に用いられるガラス基板を示す平面図である。
図4図4は、第1実施形態に係る配線基板の製造方法における一工程を示す断面図である。
図5図5は、第1実施形態に係る配線基板の製造方法における一工程を示す断面図である。
図6図6は、第1実施形態に係るガラス基板の平面図である。
図7図7は、第1実施形態に係る配線基板の製造方法における一工程を示す断面図である。
図8図8は、第1実施形態に係る配線基板の製造方法における一工程を示す断面図である。
図9図9は、第1実施形態に係る配線基板の製造方法における一工程を示す複合体の端部の断面図である。
図10図10は、第1実施形態に係る配線基板の製造方法における一工程を示す複合体の端部の断面図である。
図11図11は、第1実施形態に係る配線基板の製造方法における一工程を示す断面図である。
図12図12は、第1実施形態に係る配線基板の製造方法における一工程を示す断面図である。
図13図13は、第1実施形態に係る配線基板の製造方法における一工程を示す断面図である。
図14図14は、第1実施形態に係る配線基板の製造方法における一工程を示す断面図である。
図15図16は、第1実施形態に係る配線基板の製造方法における一工程を示す断面図である。
図16図16は、第1実施形態に係る配線基板の製造方法における一工程を示す断面図である。
図17図17は、第1実施形態の第1変形例に係る配線基板の製造方法における一工程を示す複合体の端部の断面図である。
図18図18は、第1実施形態の第2変形例に係る配線基板の製造方法における一工程を示す複合体の端部の断面図である。
図19図19は、第2実施形態に係るガラス基板の平面図である。
図20図20は、第2実施形態に係る配線基板の製造方法における一工程を示す複合体の端部の断面図である。
図21図21は、第2実施形態に係る配線基板の製造方法における一工程を示す複合体の端部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施形態は、上記側面の何れかをより具体化したものである。以下に記載する事項は、単独でまたは複数を組み合わせて、上記側面の各々に組み入れることができる。
【0025】
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、下記の構成部材の材質、形状、及び構造等によって限定されるものではない。本発明の技術的思想には、請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0026】
なお、同様または類似した機能を有する要素については、以下で参照する図面において同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面は模式的なものであり、或る方向の寸法と別の方向の寸法との関係、及び、或る部材の寸法と他の部材の寸法との関係等は、現実のものとは異なり得る。
【0027】
なお、本開示において、「面」とは、板状部材の面のみならず、板状部材に含まれる層について、板状部材の面と略平行な層の界面も指すことがある。また、「上面」、「下面」とは、板状部材や板状部材に含まれる層を図示した場合の、図面上の上方または下方に示される面を意味する。なお、「上面」、「下面」については、「第1面」、「第2面」と称することもある。
【0028】
また、「側面」とは、板状部材や板状部材に含まれる層における面や層の厚さの部分を意味する。更に、面の一部および側面を合わせて「端部」ということがある。
【0029】
また、「上方」とは、板状部材または層を水平に載置した場合の垂直上方の方向を意味する。更に、「上方」およびこれと反対の「下方」については、これらを「Z軸プラス方向」、「Z軸マイナス方向」ということがあり、水平方向については、「X軸方向」、「Y軸方向」ということがある。
【0030】
<1>第1実施形態
<1.1>配線基板の構成
まず、図1及び図2を参照して、配線基板1の構成の一例について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る配線基板の断面図である。図2は、図1に示す配線基板における領域R1の拡大図である。以下の説明において、参照符号の末尾に「s」が付与されている場合、当該材料が配線基板1のサイズに合わせて切断されている状態を示す。例えば、後述するガラス基板10sは、ガラス基板10が配線基板1のサイズに切断されている状態を示す。
【0031】
図1及び図2に示すように、配線基板1は、ガラス基板を用いたガラスコア配線基板である。配線基板1は、例えば、図示しないプリント配線基板やシリコンチップ等に接続される。図1の例では、配線基板1が、インターポーザとして使用する配線基板、すなわち、ガラスインターポーザである場合が示される。
【0032】
配線基板1は、ガラス基板10s、第1導体層20、誘電体層31、上部電極32、層間絶縁膜40s、ビルドアップ層50、絶縁層60s、導体層70、第2導体層80、層間絶縁膜90s、ビルドアップ層100、絶縁層110s、及び導体層120を含む。第1導体層20、誘電体層31、及び上部電極32により、キャパシタ30が構成される。すなわち、配線基板1は、キャパシタ30を含む。なお、配線基板1は、図示せぬインダクタを含んでいてもよい。
【0033】
ガラス基板10sは、光透過性を有する透明のガラス材料である。ガラス基板10sの成分、及び成分の配合比率は、限定されない。ガラス基板10sの例としては、珪酸塩を主成分とするガラス材料が挙げられるが、その他のガラス材料であってもよい。ガラス基板10sの具体例としては、無アルカリガラス、アルカリガラス、ホウ珪酸ガラス、石英ガラス、サファイアガラス、あるいは感光性ガラス等が挙げられるが、無アルカリガラスがより好ましい。
【0034】
ガラス基板10sの厚さは、50μm以上、150μm以下の範囲内にあることが好ましい。配線基板1をシリコンチップと接続する場合、ガラス基板10sの線膨張係数は、シリコンチップとの線膨張係数差を考慮して決定される。この場合、ガラス基板10sの線膨張係数は、0.5ppm/K以上、8.0ppm/K以下の範囲内にあることが好ましく、1.0ppm/K以上、4.0ppm/K以下の範囲内にあることがより好ましい。
【0035】
ガラス基板10sは、互いに向き合う第1面S1及び第2面S2を有する。第1面S1と第2面S2とは、略平行である。以下では、第1面S1及び第2面S2と平行な面をXY平面とする。XY平面内で互いに交差する方向をX方向及びY方向とする。XY平面と交差する方向をZ方向とする。Z方向のうち、第2面S2から第1面S1に向かう方向を上方向とも表記する。Z方向のうち、第1面S1から第2面S2に向かう方向を下方向とも表記する。また、第1面S1は、ガラス基板10sの表面または上面とも表記する。第2面S2は、ガラス基板10sの裏面または下面とも表記する。また、ガラス基板10sのXY方向を向いた面を側面と表記する。
【0036】
ガラス基板10sには、各々が第1面S1から第2面S2まで達する1以上の貫通孔HRが設けられている。換言すれば、ガラス基板10sには、ガラス基板10をZ方向に貫通する1以上の貫通孔HRが設けられている。図1の例では、5個の貫通孔HRが示されているが、貫通孔HRの個数は任意である。図2に示すように、貫通孔HRは、第2面S2から第1面S1へ向けて先細りしている。より具体的には、例えば、貫通孔HRは、テーパ形状を有する。そして、貫通孔HRの第1面S1側の開口径(または断面積)は、貫通孔HRの第2面S2側の開口径(または断面積)よりも小さい。
【0037】
まず、ガラス基板10sの第1面側(「配線基板1の表側」とも表記する)の構造について説明する。
【0038】
第1導体層20は、第1面S1上に設けられている。第1導体層20は、第1配線層として機能する。例えば、第1導体層20は、ランド部と、配線部と、後述するキャパシタ30の下部電極部とを含む。例えば、第1導体層20のランド部は、貫通孔HRの第1面S1側の開口部を囲む領域であり、且つキャパシタ30の下部電極として機能しない領域である。下部電極部は、キャパシタ30の下部電極として機能する領域である。第1導体層20の配線部は、例えば、第1導体層20のランド部と下部電極部とを結ぶ配線として機能する。
【0039】
第1導体層20は、多層構造を有する。具体的には、第1導体層20は、耐弗酸金属層21と、金属層22とを含む。
【0040】
耐弗酸金属層21は、ガラス基板10の第1面S1上に設けられている。換言すると、耐弗酸金属層21は、第1面S1に接している。耐弗酸金属層21は、ガラス基板10sと比較して、弗酸によるエッチング耐性に優れた金属材料からなる。すなわち、耐弗酸金属層21は、ガラス基板10sよりも弗酸によるエッチングレートが低い。耐弗酸金属層21は、例えば、Cr及びNiからなる群より得られる合金層である。耐弗酸金属層21の厚さは、10nm以上1000nm以下の範囲内にあることが好ましい。
【0041】
金属層22は、耐弗酸金属層21上に設けられる。金属層22は、例えば、シード層及び銅層を含む。例えば、シード層及び銅層は、耐弗酸金属層21上に、この順に積層される。シード層の材料は、例えば、Cu、Ni、Al、Ti、Cr、Mo、W、Ta、Au、Ir、Ru、Pd、Pt、AlSi、AlSiCu、AlCu、NiFe、ITO、IZO、AZO、ZnO、PZT、TiN、及びCuからなる群から適宜選ばれる。シード層の厚さは、100nm以上1000nm以下の範囲内にあることが好ましく、100nm以上500nm以下の範囲内にあることがより好ましい。銅層の厚さは、2μm以上20μm以下の範囲内にあることが好ましい。シード層は、銅層を電解めっきによって形成する場合に設けられる。銅層が無電解めっきやスパッタリング等の他の方法を利用して形成される場合、シード層は省略されてもよい。
【0042】
誘電体層31及び上部電極32は、第1導体層20の下部電極部の上に、この順に積層される。上部電極32と誘電体層31と第1導体層20の下部電極部とにより、キャパシタ30が構成される。より具体的には、キャパシタ30として、MIM(Metal-Insulator-Metal)コンデンサが構成される。
【0043】
誘電体層31は、絶縁性及び比誘電率の観点から、アルミナ、シリカ、シリコンナイトライド、タンタルオキサイド、酸化チタン、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、及びチタン酸ストロンチウムから選択される少なくとも1つの材料を用いることができる。誘電体層31の厚さは、10nm(0.01μm)以上、5μm以下の範囲内であることが好ましく、50nm(0.05μm)以上、1μm以下の範囲内であることがより好ましい。誘電体層31の厚さが10nm(0.01μm)未満である場合、絶縁性を保つことが困難であり、キャパシタとしての機能が発現しない場合がある。誘電体層31の厚さが5μmより大きい場合、後述する製造工程に時間がかかり、量産性に欠ける。
【0044】
上部電極32は、例えば、シード層及び金属層を含む。シード層及び金属層は、誘電体層31の上に、この順に積層される。上部電極32の金属層には、銅、ニッケル、クロム、パラジウム、金、ロジウム、イリジウム等が適用可能である。上部電極32の金属層は、電気伝導性及び価格の観点から、銅が好ましい。
【0045】
図1に示す例では、第1導体層20の下部電極部は、貫通孔HRの第1面S1側の開口部を覆う。すなわち、下部電極部は、貫通孔HRの上に設けられている。なお、下部電極部は、貫通孔HRから離間されてもよい。下部電極部を貫通孔HRの第1面S1側の開口部を覆うように設ける場合、キャパシタ30と後述する第2導体層80とを接続する配線に起因した電気抵抗の低減、あるいは、配線長の短縮が可能になる。
【0046】
なお、本実施形態では、第1面S1側にキャパシタ30が設けられているが、第2面S2側にキャパシタが設けられてもよい。また、第1面S1側及び第2面S2側にキャパシタがそれぞれ設けられてもよい。また、キャパシタ30は、省略されてもよい。
【0047】
層間絶縁膜40sは、多層構造を有する。例えば、層間絶縁膜40sは、層間絶縁膜41s及び42sを含む。例えば、層間絶縁膜41s及び42sは、第1面S1上に、この順に積層される。
【0048】
ビルドアップ層50は、1層以上の配線構造を有する。図1の例では、ビルドアップ層50は、2層の配線構造を有する。例えば、ビルドアップ層50は、導体層51及び52を含む。
【0049】
層間絶縁膜41sは、第1面S1上に設けられる。層間絶縁膜41sは、第1導体層20、誘電体層31及び上部電極32を被覆する。層間絶縁膜41sには、XY平面において、第1導体層20のランド部及び上部電極32の位置に、貫通孔が設けられる。例えば、層間絶縁膜41sは、絶縁樹脂層である。例えば、絶縁樹脂層としては、熱硬化性樹脂にフィラーが充填された液状樹脂またはフィルム状樹脂が主に使用される。熱硬化性樹脂としては、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、及びポリアミド系樹脂の少なくとも1種類の材料を含むことが好ましい。フィラーとしては、シリカ、酸化チタン、及びウレタン等の材料を含むことが好ましい。
【0050】
導体層51は、層間絶縁膜41s上に設けられる。導体層51は、層間絶縁膜41sのZ方向を向いた面上に設けられたランド部及び配線部と、層間絶縁膜41sに設けられた貫通孔の側壁を被覆したビア部と、を含む。導体層51のランド部は、例えば、層間絶縁膜41sに設けられた貫通孔の開口部を囲む領域である。導体層51の配線部は、例えば、導体層51の複数のランド部の間、または導体層51のランド部と導体層52とを接続する配線として機能する。導体層51のビア部は、例えば、第1導体層20のランド部または上部電極32と、導体層51のランド部とを接続する。
【0051】
導体層51は、シード層及び銅層を含む。導体層51のシード層及び銅層は、層間絶縁膜41s上に、この順に積層される。導体層51のシード層には、前述した第1導体層20のシード層について例示した材料を使用することができる。
【0052】
層間絶縁膜42sは、層間絶縁膜41s上に設けられる。層間絶縁膜42sは、導体層51のランド部及び配線部を被覆する。層間絶縁膜42sには、XY平面において、導体層51のランド部の位置に、貫通孔が設けられる。例えば、層間絶縁膜42sは、絶縁樹脂層である。例えば、層間絶縁膜42sに含まれる絶縁樹脂層には、前述した層間絶縁膜41sに含まれる絶縁樹脂層について例示した材料を使用することができる。
【0053】
導体層52は、層間絶縁膜42s上に設けられる。導体層52は、層間絶縁膜42sのZ方向を向いた面上に設けられたパッド部及び配線部と、層間絶縁膜42sに設けられた貫通孔の側壁を被覆したビア部と、を含む。導体層52のパッド部は、例えば、層間絶縁膜42sに設けられた貫通孔の開口部を囲む領域である。導体層52の配線部は、例えば、導体層52の複数のパッド部の間、または導体層52のパッド部と導体層70とを接続する配線として機能する。導体層52のビア部は、例えば、導体層51のランド部と、導体層52のパッド部とを接続する。
【0054】
導体層52は、シード層及び銅層を含む。導体層52のシード層及び銅層は、層間絶縁膜42s上に、この順に積層される。導体層52のシード層には、前述した第1導体層20のシード層について例示した材料を使用することができる。
【0055】
絶縁層60sは、層間絶縁膜42s(層間絶縁膜40s)上に設けられる。絶縁層60sは、導体層52のパッド部及び配線部を被覆する。絶縁層60sには、XY平面において、導体層52のパッド部の位置に貫通孔が設けられる。絶縁層60sは、例えば、ソルダーレジストからなる。
【0056】
導体層70は、配線基板1の表側を外部のプリント配線基板と接続するためのバンプである。導体層70は、絶縁層60sの貫通孔を埋め込む。導体層70は、導体層52のパッド部に接続される。導体層70は、絶縁層60sから突出した部分を有する。導体層70は、例えば、はんだからなる。
【0057】
次に、ガラス基板10sの貫通孔HR及び第2面側(「配線基板1の裏側」とも表記する)の構造について説明する。
【0058】
第2導体層80は、第2面S2上に設けられた部分と、貫通孔HR内に設けられた部分とを含む。第2導体層80の第2面S2上に設けられた部分は、第2配線層として機能する。第2導体層80の第2面S2上に設けられた部分は、ランド部及び配線部を含む。第2導体層80のランド部は、例えば、貫通孔HRの第2面S2側の開口部を囲む領域である。第2導体層80の配線部は、例えば、第2導体層80の複数のランド部を接続する配線として機能する。第2導体層80の貫通孔HR内に設けられた部分は、貫通孔HRの側面に接する。また、第2導体層80の貫通孔HR内に設けられた部分は、貫通孔HRの第1面S1の開口部において、耐弗酸金属層21(第1導体層20)に接する。第2導体層80の貫通孔HR内に設けられた部分は、第2導体層80のビア部として機能する。第2導体層80のビア部は、例えば、第1導体層20と第2導体層80のランド部とを接続する。
【0059】
例えば、第2導体層80は、貫通孔HRの側面及び底面(第1面S1側の耐弗酸金属層21に接する面)並びに第2面S2上にコンフォーマルに形成され得る。換言すれば、第2導体層80は、貫通孔HRの側面及び底面並びに第2面S2上における膜厚差が比較的小さくなるように形成され得る。なお、貫通孔HR内は、第2導体層80により埋め込まれていてもよい。
【0060】
第2導体層80は、多層構造を有する。例えば、第2導体層80は、シード層及び銅層を含む。例えば、第2導体層80のシード層及び銅層は、ガラス基板10s上に、この順に積層される。第2導体層80のシード層には、前述した第1導体層20のシード層について例示した材料を使用することができる。
【0061】
層間絶縁膜90sは、多層構造を有する。例えば、層間絶縁膜90sは、層間絶縁膜91s及び92sを含む。例えば、層間絶縁膜91s及び92sは、層間絶縁膜90s上に、この順に積層される。
【0062】
ビルドアップ層100は、1層以上の配線構造を有する。図1の例では、ビルドアップ層100は、2層の配線構造を有する。例えば、ビルドアップ層100は、導体層101及び102を含む。
【0063】
層間絶縁膜91sは、第2面S2上に設けられる。層間絶縁膜91sは、第2導体層80を被覆する。層間絶縁膜91sには、XY平面において、第2導体層80のランド部の位置に、貫通孔が設けられる。例えば、層間絶縁膜91sは、絶縁樹脂層である。層間絶縁膜91sに含まれる絶縁樹脂層には、前述した層間絶縁膜41sに含まれる絶縁樹脂層について例示した材料を使用することができる。
【0064】
導体層101は、層間絶縁膜91s上に設けられる。導体層101は、層間絶縁膜91sのZ方向を向いた面に設けられたランド部及び配線部と、層間絶縁膜91sに設けられた貫通孔の側壁を被覆したビア部と、を含む。導体層101のランド部は、例えば、層間絶縁膜91sに設けられた貫通孔の開口部を囲む領域である。導体層101の配線部は、例えば、導体層101の複数のランド部の間、または導体層101のランド部と導体層102とを接続する配線として機能する。導体層101のビア部は、例えば、第2導体層80のランド部または配線部と、導体層101のランド部とを接続する。
【0065】
導体層101は、シード層及び銅層を含む。導体層101のシード層及び銅層は、層間絶縁膜91s上に、この順に積層される。導体層101のシード層には、前述した第1導体層20のシード層について例示した材料を使用することができる。
【0066】
層間絶縁膜92sは、層間絶縁膜91s上に設けられる。層間絶縁膜92sは、導体層101のランド部及び配線部を被覆する。層間絶縁膜92sには、XY平面において、導体層101のランド部の位置に、貫通孔が設けられる。例えば、層間絶縁膜92sは、絶縁樹脂層である。層間絶縁膜92sに含まれる絶縁樹脂層には、前述した層間絶縁膜41sに含まれる絶縁樹脂層について例示した材料を使用することができる。
【0067】
導体層102は、層間絶縁膜92s上に設けられる。導体層102は、層間絶縁膜92sのZ方向を向いた面上に設けられたパッド部及び配線部と、層間絶縁膜92sに設けられた貫通孔の側壁を被覆したビア部と、を含む。導体層102のパッド部は、例えば、層間絶縁膜92sに設けられた貫通孔の開口部を囲む領域である。導体層102の配線部は、例えば、導体層102の複数のパッド部の間、または導体層102のパッド部と導体層120とを接続する配線として機能する。導体層102のビア部は、例えば、導体層101のランド部と、導体層102のパッド部とを接続する。
【0068】
導体層102は、シード層及び銅層を含む。導体層102のシード層及び銅層は、層間絶縁膜92s上に、この順に積層される。導体層102のシード層には、前述した第1導体層20のシード層について例示した材料を使用することができる。
【0069】
絶縁層110sは、層間絶縁膜92s(層間絶縁膜90s)上に設けられる。絶縁層110sは、導体層102のパッド部及び配線部を被覆する。絶縁層110sには、XY平面において、導体層102のパッド部の位置に貫通孔が設けられる。絶縁層110sは、例えば、ソルダーレジストからなる。
【0070】
導体層120は、配線基板1の裏側を外部のプリント配線基板と接続するためのバンプである。導体層120は、絶縁層110sの貫通孔を埋め込む。導体層120は、導体層102のパッド部に接続される。導体層120は、絶縁層110sから突出した部分を有する。導体層120は、例えば、はんだからなる。
【0071】
<1.2>配線基板の製造方法
次に、図3乃至図16を参照して、配線基板1の製造方法の一例について説明する。配線基板1の製造工程において、後述する第1乃至第14工程が実施される。図3は、配線基板1の製造に用いられるガラス基板10を示す平面図である。図4乃至図16は、配線基板1の製造方法における一工程を示す断面図である。このうち、図4図5図7、及び図8、並びに図11乃至図16は、図3のA-A線に沿った断面図である。図6は、ガラス基板10の平面図である。図9及び図10は、配線基板1の製造方法における一工程を示す複合体の端部の断面図である。
【0072】
<1.2.1>第1工程
まず、表面である第1面S1と、裏面である第2面S2とを有するガラス基板10を準備する。例えば、無アルカリガラス板の表面から、超音波洗浄などで汚染物を除去して、ガラス基板10を得る。
【0073】
ガラス基板10の製造方法は、特に限定されない。ガラス基板10の製造方法の例としては、フロート法、ダウンドロー法、フュージョン法、アップドロー法、ロールアウト法等が挙げられる。
【0074】
図3に示すように、ガラス基板10は、ガラス基板10sと比較して、X方向及びY方向の寸法がより大きな大判のガラス基板である。ガラス基板10は、XY平面視において(Z方向に見て)、中央部IRと、外周部ORと、端部ERとを有する。中央部IRは、複数のガラス基板10sがマトリクス状に配置される領域である。外周部ORは、中央部IRを囲む外側の領域である。端部ERは、外周部ORを囲む領域であり、ガラス基板10の端部を含む。ガラス基板10の厚さは、75μm以上、200μm以下の範囲内であることが好ましい。
【0075】
<1.2.2>第2工程
次に、図4に示すように、第2面S2に、接着層11を介して支持体12を貼り合わせる。ガラス基板10に支持体12を貼り合わせるためには、例えば、ラミネータ、真空加圧プレス、減圧貼り合わせ機等を使用することができる。なお、図4の例では、中央部IRは、1つの配線基板1のガラス基板10sを抜粋して示している。図5乃至図8並びに図11乃至図16も同様である。
【0076】
接着層11は、ガラス基板10に支持体12を仮固定するための接着層である。接着層11は、例えば、第2面S2上に形成される官能基である。接着層11として用いられる官能基としては、例えば、水酸基(ヒドロキシル基)が挙げられる。
【0077】
なお、図4乃至図16では、説明の便宜上、接着層11を、厚さを有する層状に図示している。しかしながら、接着層11として第2面S2上に形成された官能基が用いられる場合、接着層11の厚さは、ガラス基板10及び支持体12と比較して無視できるほど小さい。このため、接着層11は、ガラス基板10と支持体12との間の界面と表現することもできる。
【0078】
支持体12は、第1支持体であり、薄板状のキャリアである。接着性の観点から、支持体12は、ガラス基板10と同一の材料で構成されることが望ましい。すなわち、ガラス基板10が無アルカリガラスである場合、支持体12も無アルカリガラスであることが好ましい。支持体12の厚さは、ガラス基板10の厚さに応じて適宜設定して構わない。支持体12の厚さは、ガラス基板10の搬送性を鑑み、300μm以上、1500μm以下の範囲内にあることが好ましい。
【0079】
<1.2.3>第3工程
次に、図5に示すように、ガラス基板10にレーザ光を照射して、ガラス基板10内に1以上の改質部13を形成する。レーザ光の照射方向は、第1面S1から第2面S2へ向けた方向でもよいし、第2面S2から第1面S1へ向けた方向でもよい。図5に示すように、第1面S1から第2面S2に向かって形成される場合、改質部13は、接着層11及び支持体12まで到達するように形成されてもよい。
【0080】
改質部13は、例えば、レーザ光照射によって加熱されることにより、レーザ光未照射部との間で結晶性等に相違を生じた部分である。図6に示すように、改質部13は、ガラス基板10に形成される予定の貫通孔に対応した位置に形成される。改質部13は、例えば、Z方向に延びる。
【0081】
改質部13の形成に用いられるレーザ光の波長は、535nm以下である。レーザ光の好ましい波長は、355nm以上、535nm以下である。レーザ光の波長を355nm未満とすると、十分なレーザ出力を得ることが難しく、安定的なレーザ改質が難しくなるおそれがある。一方、レーザ光の波長を535nmより大きくすると、照射スポットが大きくなり、小範囲のレーザ改質が難しくなる。また、レーザ光の波長を535nmより大きくすると、熱の影響により、マイクロクラックが発生し、ガラス基板10が割れやすくなる。
【0082】
パルスレーザを用いる場合、レーザパルス幅はピコ秒からフェムト秒の範囲内にあることが望ましい。レーザパルス幅がナノ秒以上になると、1パルス当たりのエネルギー量の制御が困難となり、マイクロクラックが発生して、ガラス基板10が割れやすくなる。
【0083】
レーザパルスのエネルギーは、ガラス基板10の組成や、どのようなレーザ改質を生じさせるかに応じて好ましい値が選択され、5μJ以上、150μJ以下の範囲内にあることが好ましい。レーザパルスのエネルギーを増加させることで、それに比例するように改質部の長さを大きくすることが可能となる。
【0084】
<1.2.4>第4工程
次に、図7に示すように、改質部13を覆うように、第1面S1上に第1導体層20が形成される。すなわち、XY平面において、改質部13が形成されている位置に、第1導体層20が形成される。
【0085】
より具体的には、例えば、まず、第1面S1上に、耐弗酸金属層21、及び金属層22のシード層が、この順に形成される。すなわち、耐弗酸金属層21上に、シード層が形成される。耐弗酸金属層21は、例えば、スパッタリングにより形成される。シード層は、例えば、スパッタリングまたは無電解めっきにより形成される。
【0086】
次に、例えば、セミアディティブ工法(SAP:Semi-Additive Process)によって、第1導体層20が形成される。より具体的には、まず、シード層上に、金属層22の銅層に対応する位置で開口したマスクパターンを形成する。マスクパターンは、例えば、シード層上にフォトレジスト層を設け、このフォトレジスト層へのパターン露光及び現像を行うことにより形成される。一例によれば、昭和電工マテリアルズ社製のドライフォトレジストであるRD1225をシード層上にラミネートする。そして、このドライフォトレジストのパターン露光及び現像を順次行うことにより、マスクパターンを形成する。なお、マスクパターンは、液体のレジストを用いて形成されてもよい。
【0087】
続いて、シード層を給電層として用いた電解銅めっきを行う。これにより、マスクパターンの開口部の位置でシード層上に銅が堆積されて、銅層が形成される。
【0088】
その後、マスクパターンを除去する。例えば、ドライフィルムレジストを溶解剥離する。
【0089】
次いで、銅層とガラス基板10とを含んだ複合体の銅層側の面全体を、シード層の露出部(銅層が設けられていない部分)において、シード層及び耐弗酸金属層21が除去されるまでエッチングする。
【0090】
なお、第4工程により、ガラス基板10、接着層11、及び支持体12の側面の少なくとも一部に、耐弗酸金属層21及び金属層22が堆積される。
【0091】
<1.2.5>第5工程
次に、第1導体層20の下部電極上に、誘電体層31及び上部電極32をこの順に形成する。これにより、図7に示すキャパシタ30が形成される。上部電極32は、例えば、第1導体層20のシード層及び銅層と同様の方法により形成することができる。
【0092】
その後、ガラス基板10の第1面S1側に、層間絶縁膜41を形成する。このとき、キャパシタ30と第1導体層20とは、層間絶縁膜41に覆われる。換言すれば、キャパシタ30と第1導体層20とガラス基板10とを含んだ複合体のキャパシタ30側の面に、層間絶縁膜41を設ける。以下の説明において、ガラス基板10と、ガラス基板10に形成されている他の部材(材料)とを合わせて「複合体」と表記する。複合体の構造は、配線基板1の製造工程により異なる。
【0093】
層間絶縁膜41が液状樹脂である場合、層間絶縁膜41は、スピンコート法により形成される。層間絶縁膜41がフィルム状樹脂である場合、層間絶縁膜41は、真空ラミネータを用いて真空下で加熱及び加圧することにより形成される。一例によれば、層間絶縁膜41として、味の素ファインテクノ社製の絶縁樹脂フィルムであるABF-GXT31(32.5μm厚)を複合体にラミネートし、これをプリキュアする。
【0094】
なお、第5工程により、ガラス基板10、接着層11、及び支持体12の側面の少なくとも一部に、誘電体層31、上部電極32、及び層間絶縁膜41が堆積される。
【0095】
<1.2.6>第6工程
次に、図8に示すように、ガラス基板10と層間絶縁膜41とを含んだ複合体を、支持体15に支持させる。より具体的には、複合体の層間絶縁膜41が支持体15と向き合うように、層間絶縁膜41と支持体15とを接着層14を介して貼り合わせる。
【0096】
接着層14には、樹脂、または支持体15に形成された官能基が用いられる。樹脂としては、UV光等の光を吸収して発熱、昇華、または変質することにより剥離可能となる樹脂、熱によって発泡することにより剥離可能となる樹脂、温度によって密着力が変化する樹脂、粘着性樹脂等が挙げられる。一例によれば、接着層14として、日東電工社製のリバアルファ(登録商標)が使用される。
【0097】
支持体15は、第2支持体であり、薄板状のキャリアである。支持体15は、ガラス基板10と同一の材料で構成されることが望ましい。すなわち、ガラス基板10が無アルカリガラスである場合、支持体15も無アルカリガラスであることが好ましい。支持体15の厚さは、ガラス基板10の厚さに応じて適宜設定して構わない。支持体15の厚さは、ガラス基板10の搬送性を鑑み、300μm以上、1500μm以下の範囲内にあることが好ましい。
【0098】
<1.2.7>第7工程
次に、図9に示すように、ガラス基板10の端部ER、すなわち、ガラス基板10の側面を含む端部4辺を除去(切断)する。以下、ガラス基板10の4辺の断裁処理とも表記する。より具体的には、ガラス基板10、接着層11及び14、支持体12及び15、並びに層間絶縁膜41を含む複合体の端部ER及び複合体の側面に堆積した堆積物200を除去する。第6工程完了後、ガラス基板10、接着層11、及び支持体12の側面の少なくとも一部に、第4工程及び第5工程による堆積物200が堆積されている。例えば、堆積物200は、耐弗酸金属層21、金属層22、誘電体層31、上部電極32、及び層間絶縁膜41を含む。なお、ガラス基板10、接着層11、及び支持体12の側面の全体を被覆するように、堆積物200が堆積されていてもよい。
【0099】
例えば、第4工程において、第1面S1上に、耐弗酸金属層21及び金属層22のシード層を形成する際に、耐弗酸金属層21及び金属層22のシード層が、ガラス基板10、接着層11、及び支持体12の側面の少なくとも一部にも堆積される。また、シード層を給電層として用いた電解銅めっきを行った際にマスクパターンの開口部の位置でシード層上に銅が堆積されるが、端部ERのマスクしきれない部分でも銅が堆積する。このため、ガラス基板10、接着層11、及び支持体12の側面の少なくとも一部に銅が堆積される。すなわち、耐弗酸金属層21及び金属層22が、ガラス基板10、接着層11、及び支持体12の側面の少なくとも一部に堆積される。また、第5工程において、誘電体層31及び上部電極32を形成する際に、第4工程と同様に、誘電体層31及び上部電極32が、耐弗酸金属層21及び金属層22を被覆するように、ガラス基板10、接着層11、及び支持体12の側面の少なくとも一部に堆積される。更に、層間絶縁膜41を形成する際に、層間絶縁膜41が、上部電極32を被覆するように、ガラス基板10、接着層11、及び支持体12の側面の少なくとも一部に堆積される。
【0100】
ガラス基板10、接着層11、及び支持体12の側面、すなわち、ガラス基板10と支持体12との貼合面を被覆するように堆積物200が堆積されていると、次の第8工程において、ガラス基板10と支持体12とを剥離させる際に、剥離途中のガラス基板10の端部の引っ掛かりによるガラスのワレまたは欠け等が発生しやすくなる。そこで、第7工程では、複合体の端部ERを切断することにより、ガラス基板10、接着層11、及び支持体12の側面の堆積物200を除去する。堆積物200を除去することにより、次の支持体12の剥離工程にて、ガラスのワレまたは欠けの発生が抑制できる。これにより、安定的にガラス基板10と支持体12との剥離が可能となる。すなわち、配線基板1の製造歩留まりの低下を抑制できる。
【0101】
端部ERの幅は、0mmより大きく10mmよりも小さくする。端部ERの幅が10mm以上になると、ガラス基板10内の有効パターン、すなわち、中央部IRにかかる可能性がある。好ましくは、端部ERの幅が0mmより大きく1mm以下の範囲内で切除を行う。1mm以下の範囲で切除を行うことで有効面(中央部IR)の確保が十分にできる。
端部ERの除去は、具体的には、ダイヤモンドブレードを使用したダイシング処理を行う。ガラス基板10の4辺すべての処理を実施することで端部の覆われた部分をすべて除去できる。他の方法として、レーザ光照射による処理や、スクライブ処理により端部ERを除去できる。
【0102】
なお、図9の例では、ガラス基板10の大きさが支持体12の大きさと同じ場合を示しているが、ガラス基板10の大きさと支持体12の大きさとは、異なっていてもよい。
【0103】
<1.2.8>第8工程
次に、ガラス基板10から接着層11及び支持体12を分離させる。図10に示すように、例えば、複合体の側面において、接着層11、すなわちガラス基板10と支持体12との貼合面付近を、剥離起点Nとする。そして、剥離起点Nから中央部IRに向かって機械荷重を加えることによって、剥離起点Nを物理的な起点とした剥離を進行させることができる。これにより、図11に示すように、支持体12が除去される。
【0104】
より具体的には、剥離起点Nに対して、けがき処理が施される。けがき処理は、カミソリ刃等の先細りした先端を有する治具を、当該先端が剥離起点N内に位置するように押し当てる処理を含む。そして、治具が剥離起点N内に押し当てられた状態で、ガラス基板10と支持体12とを互いに引き離す方向に力を加える。または、治具が剥離起点N内に押し当てられた状態で、剥離起点Nの位置からガラス基板10と支持体12との間に液体及び気体等の流体を導入してもよい。これにより、より円滑にガラス基板10から支持体12を分離することができる。
【0105】
接着層11及び支持体12の剥離処理後に、ガラス基板10に接着層11の残渣が生じる場合、プラズマ洗浄、超音波洗浄、水洗浄、及びアルコールを使用した溶剤洗浄等を行ってもよい。
【0106】
<1.2.9>第9工程
次に、接着層11及び支持体12を剥離させたガラス基板10の第2面S2を、弗化水素を含んだエッチング液でエッチングする。これにより、図12に示すように、第2面S2を後退させるとともに、改質部13の位置に貫通孔HRをそれぞれ形成する。ガラス基板10のうち、改質部13は、他の部分と比較して、エッチングレートが高い。従って、当該エッチング処理によって、ガラス基板10の薄板化と貫通孔HRの形成とを同時に達成できる。
【0107】
当該エッチング処理によるエッチング量は、ガラス基板10の厚さに応じて、適宜設定される。例えば、エッチング処理前のガラス基板10の厚さが200μmである場合、ガラス基板10のエッチング量は、50μm以上、150μm以下の範囲内であることが好ましい。これにより、エッチング処理後のガラス基板10の厚さは、50μm以上、150μm以下の範囲内とすることができる。
【0108】
なお、当該エッチング処理において、耐弗酸金属層21は、エッチングストッパ膜としての役割を果たす。また、上記のエッチングによって得られる貫通孔HRは、図12では、第2面S2側の開口径(または断面積)が第1面S1側の開口径(または断面積)よりも大きい円錐台形状を有している。
【0109】
弗化水素を含んだエッチング液は、例えば、弗化水素水溶液である。エッチング液は、硝酸、塩酸、及び硫酸からなる群から選ばれる1種以上の無機酸を更に含むことができる。
【0110】
エッチング液の弗化水素濃度は、例えば1.0質量%以上6.0質量%以下の範囲内にあり、好ましくは2.0質量%以上5.0質量%以下の範囲内にある。無機酸濃度は、例えば1.0質量%以上20.0質量%以下の範囲内にあり、好ましくは3.0質量%以上16.0質量%以下の範囲内にある。各成分の濃度を上記範囲内に設定したエッチング液を使用して、1.0μm/min以下のエッチングレートでエッチング処理を行うことが望ましい。エッチング処理の際のエッチング液の温度は、10℃以上40℃以下の範囲内とすることが望ましい。
【0111】
<1.2.10>第10工程
次に、貫通孔HRを覆うように、第2導体層80が形成される。
【0112】
具体的には、まず、第2導体層80のシード層が、貫通孔HRの側壁、エッチング処理によって露出した耐弗酸金属層21の面、及び第2面S2を被覆した連続膜として形成される。シード層は、例えば、スパッタリングまたは無電解めっきによって形成される。
【0113】
次に、例えば、セミアディティブ工法によって、図13に示されるような第2導体層80を得る。
【0114】
具体的には、まず、シード層上に、第2導体層80に含まれる銅層に対応する位置で開口したマスクパターンを形成する。マスクパターンは、例えば、シード層上にフォトレジスト層を設け、このフォトレジスト層へのパターン露光及び現像を行うことにより形成する。一例によれば、昭和電工マテリアルズ社製のドライフォトレジストであるRD1225をシード層へラミネートし、このドライフォトレジストへのパターン露光及び現像を順次行うことにより、樹脂からなるマスクパターンを得る。マスクパターンの形成には、液体のレジストを用いてもよい。
【0115】
続いて、シード層を給電層として用いた電解銅めっきを行う。これにより、マスクパターンの開口部の位置でシード層上に銅を堆積させて、銅層を得る。
【0116】
その後、マスクパターンを除去する。例えば、ドライフィルムレジストを溶解剥離する。次いで、銅層とガラス基板10とを含んだ複合体の銅層側の面全体を、シード層の露出部が除去されるまでエッチングする。
【0117】
以上のようにして、第2導体層80を得る。なお、第2導体層80は、上記の通り、ランド部、及び配線部を含む。
【0118】
次いで、第1導体層20、第2導体層80、及びガラス基板10を含んだ複合体の第2導体層80側の面に対して、第5工程における層間絶縁膜41の形成処理と同様の処理を実施して、層間絶縁膜91を設ける。なお、層間絶縁膜91は、層間絶縁膜41と異なる材料で形成されてもよい。
【0119】
<1.2.11>第11工程
次に、図14に示すように、ガラス基板10、第1導体層20及び第2導体層80等を含んだ複合体から、接着層14及び支持体15を分離させる。接着層14及び支持体15の分離に際しては、接着層14の材料に応じて、UV光の照射、加熱処理、物理剥離等の剥離方式が適宜選択される。
【0120】
接着層14及び支持体15の剥離処理後に、層間絶縁膜41に接着層14の残渣が生じる場合、プラズマ洗浄、超音波洗浄、水洗浄、及びアルコールを使用した溶剤洗浄等を行ってもよい。
【0121】
<1.2.12>第12工程
次に、図15に示すように、第1面S1側にビルドアップ層50が設けられ、第2面S2側にビルドアップ層100が設けられる。
【0122】
ビルドアップ層50及びビルドアップ層100の形成順は任意である。また、ビルドアップ層50及びビルドアップ層100の形成工程は、形成される面が異なる点を除いて、同等である。ここでは、一例として、ビルドアップ層50の形成について説明する。
【0123】
まず、レーザ加工によって層間絶縁膜41にブラインドビアを形成する。その後、デスミア処理を実施して、レーザ加工によって発生した残渣を除去する。これにより、第1導体層20のランド部及び上部電極32が露出する。なお、ブラインドビアの形成に用いられるレーザは、改質部13の形成に用いられるレーザとは異なっていてもよい。例えば、ブラインドビアの形成には、炭酸ガスレーザ、UV-YAGレーザ等のパルスレーザを用いることが好ましい。パルスレーザを用いる場合、レーザパルス幅は、マイクロ秒の範囲内にあることが好ましい。
【0124】
次いで、スパッタリングまたは無電解めっきにより、第1導体層20、第2導体層80、及びガラス基板10を含んだ複合体の第1導体層20側の面上に、導体層51に含まれるシード層を連続膜として形成する。
【0125】
次に、例えば、セミアディティブ工法によって、導体層51を得る。
【0126】
具体的には、まず、シード層上に、導体層51に含まれる銅層に対応する位置で開口したマスクパターンを形成する。マスクパターンは、例えば、シード層上にフォトレジスト層を設け、このフォトレジスト層へのパターン露光及び現像を行うことにより形成する。一例によれば、昭和電工マテリアルズ社製のドライフォトレジストであるRD1225をシード層へラミネートし、このドライフォトレジストへのパターン露光及び現像を順次行うことにより、樹脂からなるマスクパターンを得る。マスクパターンの形成には、液体のレジストが用いられてもよい。
【0127】
続いて、シード層を給電層として用いた電解銅めっきを行う。これにより、マスクパターンの開口部の位置でシード層上に銅を堆積させて、銅層を得る。
【0128】
その後、マスクパターンを除去する。例えば、ドライフィルムレジストを溶解剥離する。次いで、第1導体層20、第2導体層80、及びガラス基板10を含んだ複合体の第1導体層20側の面全体を、シード層の露出部が除去されるまでエッチングする。以上のようにして、導体層51を得る。
【0129】
次いで、層間絶縁膜41上に、層間絶縁膜42を設けた後、レーザ加工によって層間絶縁膜42にブラインドビアを形成する。その後、デスミア処理を実施して、レーザ加工によって発生した残渣を除去する。これにより、導体層51のランド部が露出する。なお、ブラインドビアの形成に用いられるレーザは、改質部13の形成に用いられるレーザとは異なっていてもよい。例えば、ブラインドビアの形成には、炭酸ガスレーザ、UV-YAGレーザ等のパルスレーザを用いることが好ましい。パルスレーザを用いる場合、レーザパルス幅は、マイクロ秒の範囲内にあることが好ましい。
【0130】
次いで、スパッタリングまたは無電解めっきにより、第1導体層20、第2導体層80、及びガラス基板10を含んだ複合体の第1導体層20側の面上に、導体層52に含まれるシード層を連続膜として形成する。
【0131】
次に、例えば、セミアディティブ工法によって、導体層52を得る。
【0132】
具体的には、まず、シード層上に、導体層52に含まれる銅層に対応する位置で開口したマスクパターンを形成する。マスクパターンは、例えば、シード層上にフォトレジスト層を設け、このフォトレジスト層へのパターン露光及び現像を行うことにより形成する。一例によれば、昭和電工マテリアルズ社製のドライフォトレジストであるRD1225をシード層へラミネートし、このドライフォトレジストへのパターン露光及び現像を順次行うことにより、樹脂からなるマスクパターンを得る。マスクパターンの形成には、液体のレジストが用いられてもよい。
【0133】
続いて、シード層を給電層として用いた電解銅めっきを行う。これにより、マスクパターンの開口部の位置でシード層上に銅を堆積させて、銅層を得る。
【0134】
その後、マスクパターンを除去する。例えば、ドライフィルムレジストを溶解剥離する。次いで、第1導体層20、第2導体層80、及びガラス基板10を含んだ複合体の第1導体層20側の面全体を、シード層の露出部が除去されるまでエッチングする。以上のようにして、導体層52が形成され、ビルドアップ層50を得る。
【0135】
また、第1導体層20、第2導体層80、及びガラス基板10を含んだ複合体の第2導体層80側の面に対して、上述したビルドアップ層50の形成処理と同様の処理を実施して、ビルドアップ層100を得る。
【0136】
<1.2.13>第13工程
次に、層間絶縁膜42上に、絶縁層60を設ける。例えば、層間絶縁膜42上にソルダーレジストを設け、フォトリソグラフィ法などを用いてこれをパターニングする。これにより、導体層52のパッド部が露出する。その後、露出した導体層52のパッド部上に、表面処理を施した後、導体層70が設けられる。
【0137】
同様に、層間絶縁膜92上に、絶縁層110を設ける。例えば、層間絶縁膜92上にソルダーレジストを設け、フォトリソグラフィ法などを用いてこれをパターニングする。これにより、導体層102のパッド部が露出する。その後、露出した導体層102のパッド部上に、表面処理を施した後、導体層120が設けられる。
【0138】
表面処理としては、ニッケル及び金を用いた処理、ニッケル、パラジウム、及び金のいずれかを用いた処理、置換スズ(IT:immersion tin plating)めっき、並びに水溶性プリフラックス(OSP:organic solderability preservative)等が挙げられる。
【0139】
以上のようにして、図16の構造を得る。
【0140】
<1.2.14>第14工程
その後、得られた複合体から外周部ORを分離すると共に、中央部IR内を複数のガラス基板10sに対応する領域毎に個片化する。
【0141】
以上のようにして、図1に示す配線基板1を得る。
【0142】
<1.3>効果
上述した技術は、例えば、以下に記載する効果を奏する。
【0143】
<1.3.1>ハンドリング性
上述した製造方法によると、ガラス基板10の破損を生じ難く、優れたハンドリング性を実現し得る。これについて、以下に説明する。
【0144】
ガラス基板に貫通孔を形成すると、その機械的強度が低下する可能性がある。また、比較的薄いガラス基板、例えば、厚さが100μm以下であるガラス基板は、ガラス基板に回路など導電部を形成するための搬送時などに割れを生じ易く、取扱いが困難である。
【0145】
上述した製造方法によれば、第1導体層20等が形成される前に、ガラス基板10の第2面S2側に、支持体12が貼り合わされる。これにより、ガラス基板10と支持体12とを含んだ複合体は、高い強度を有することができる。また、支持体12を剥離する前に、第1導体層20等が形成された第1面S1側に、支持体15が貼り合わされる。これにより、複合体の強度は、更に高められる。このため、複合体から支持体12を剥離した後であっても、ガラス基板10の破損は生じ難い。従って、上述した製造方法によると、ガラス基板10の破損を生じ難く、その取扱いが容易である。
【0146】
<1.3.2>生産性
また、上述した製造方法によると、以下に説明するように、高い生産性を達成可能である。
【0147】
改質部13を形成する際、レーザ光によってガラス基板10に対して過度なエネルギーが加わると、ガラス基板10にマイクロクラックが発生する可能性がある。このため、レーザ光の波長やレーザパルス幅等の照射条件(process window)、及びレーザの照射位置に、制約が課される場合がある。
【0148】
上述した製造方法によると、支持体12を貼り合わせたガラス基板10に対して、改質部13を形成するためのレーザ光を照射する。これにより、支持体12を貼り合わせていないガラス基板10に対してレーザ光を照射する場合よりも、レーザ光の照射に際して、ガラス基板10の機械的強度を高くできる。このため、レーザ光照射の処理条件を緩和することが可能となる。加えて、ガラス基板10に対して所望の位置に改質部13を形成することが可能となる。従って、上述した製造方法によると、高い生産性を達成可能である。
【0149】
<1.3.3>歩留まり
更に、上述した製造方法によると、支持体12をガラス基板10から剥離する際に、ガラス基板10へのダメージを抑制することができ、高い歩留まりを達成することができる。これについて、以下に説明する。
【0150】
ガラス基板10から支持体12を剥離する際に、ガラス基板10に割れや欠け等のダメージが発生する可能性がある。すなわち、ガラス基板10から支持体12を剥離する工程でガラス基板10に発生するダメージが、歩留まりを低下させる可能性がある。
【0151】
上述した製造方法によると、支持体12及び15を貼り合わせた状態のガラス基板10の端部ERを除去する。これにより、ガラス基板10、接着層11、及び支持体12の側面の堆積物200を除去できる。このため、ガラス基板10と支持体12とを剥離させる際に、剥離途中のガラス基板10の端部の引っ掛かりによるガラスのワレまたは欠け等の発生を抑制できる。これにより、安定的にガラス基板10と支持体12との剥離が可能となる。従って、上述した製造方法によると、高い製造歩留まりを達成可能である。
【0152】
<1.4>変形例
上述した配線基板1の製造方法は、様々な変形が可能である。以下、3つの変形例について説明する。
【0153】
<1.4.1>第1変形例
まず、図17を参照して、第1変形例について説明する。図17は、配線基板1の製造方法における一工程を示す複合体の端部の断面図である。第1変形例では、支持体12のサイズがガラス基板10のサイズよりも大きい場合に、ガラス基板10の側面の堆積物200を除去する方法の一例について説明する。
【0154】
図17に示すように、第1実施形態の第7工程において、ガラス基板10及び接着層11の側面の堆積物200のみを除去してもよい。すなわち、ガラス基板10及び接着層11の側面に堆積している耐弗酸金属層21、金属層22、誘電体層31、上部電極32、及び層間絶縁膜41を除去する。第1変形例では、ガラス基板10、接着層11及び14、並びに支持体12及び15は切断しない。支持体12を切断しないことにより、第1実施形態の第8工程において、支持体12が、けがきを入れる際のガイドの役割を果たし得る。これにより、安定的に支持体12を剥離できるようになる。堆積物200の除去には、レーザ光照射による処理が用いられてもよいし、エッチング処理が用いられてもよい。
【0155】
<1.4.2>第2変形例
次に、図18を参照して、第2変形例について説明する。図18は、配線基板1の製造方法における一工程を示す複合体の端部の断面図である。第2変形例では、第1変形例とは異なる、ガラス基板10の側面の堆積物200を除去する方法の一例について説明する。
【0156】
図18に示すように、第1実施形態の第7工程において、支持体12のサイズがガラス基板10のサイズよりも大きい場合に、支持体12を切断しなくてもよい。すなわち、支持体15からガラス基板10(接着層11)までを除去する。第1変形例と同様に、支持体12を切断しないことにより、第1実施形態の第8工程において、支持体12が、けがきを入れる際のガイドの役割を果たし得る。これにより、安定的に支持体12を剥離できるようになる。ガラス基板10の切断には、ダイシング処理が好ましい。
【0157】
<1.4.3>第3変形例
次に、第3変形例について説明する。第3変形例では、第7工程において端部ERの除去にスクライブ処理を適用した場合について説明する。スクライブ処理は被断裁物の表面に傷を入れる処理である。このため、支持体12とガラス基板10と支持体15とが貼り合わされている複合体の場合、複合体の両面にスクライブ処理を行う方が好ましい。複合体の両面にスクライブ処理をした後に、ブレイク処理が実施される。このため、処理が他の方法より1工程増えてしまうが、他の方法と同様に、端部の切除は可能で安定的に支持体を剥離することができる。
【0158】
<2>第2実施形態
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態では、第1実施形態の第11工程の前に、第7工程と同様にガラス基板10の端部を除去する工程を追加する場合について説明する。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0159】
<2.1>ガラス基板の平面構成
まず、図19を参照して、ガラス基板の平面構成について説明する。図19は、配線基板1の製造に用いられるガラス基板10を示す平面図である。
【0160】
図19に示すように、ガラス基板10は、XY平面視において(Z方向に見て)、中央部IRと、外周部ORと、端部ER1及びER2とを有する。端部ER2は、外周部ORを囲む領域である。端部ER1は、端部ER2を囲む領域であり、ガラス基板10の端部を含む。
【0161】
<2.2>配線基板の製造方法
次に、図20及び図21を参照して、配線基板1の製造方法の一例について説明する。図20及び図21は、配線基板1の製造方法における一工程を示す複合体の端部の断面図である。
【0162】
図20に示すように、第1実施形態の第7工程において、堆積物200及び端部ER1が除去される。
【0163】
図21に示すように、第1実施形態の第10工程を実施した後、第11工程を実施する前に、第7工程と同様の手順で、ガラス基板10の端部ER2、すなわち、側面を含む端部4辺を除去(切断)する。より具体的には、ガラス基板10、接着層14、支持体15、並びに層間絶縁膜41及び91を含む複合体の端部ER2及び複合体の側面に堆積し堆積物210を除去する。例えば、第10工程完了後、ガラス基板10の側面、層間絶縁膜41の側面、接着層14の側面、及び支持体15の側面の一部に、第10工程による堆積物210が堆積されている。例えば、堆積物210は、第2導体層80及び層間絶縁膜91を含む。なお、ガラス基板10、層間絶縁膜41、接着層14、及び支持体15の側面の全体を被覆するように、堆積物210が堆積されていてもよい。
【0164】
第7工程と同様の方法でガラス基板10の端部を処理することにより、第11工程において、支持体15が安定的に剥離できるようになる。
【0165】
なお、第2実施形態のガラス基板10の端部の処理に、第1実施形態の第1乃至第3変形例を適用してもよい。
【実施例0166】
以下に、本発明に関連して行った試験について記載する。
【0167】
(実施例1)
第1実施形態の第1乃至第8工程を実施し、支持体12を剥離したガラス基板10を20個製造した。第7工程におけるガラス基板10の4辺の断裁処理は、ダイシングブレードによるダイシング処理を用いた。
【0168】
ここでは、ガラス基板10のサイズは、厚さ150μm、X方向の長さ200mm、及びY方向の長さ200mmとした。支持体12のサイズは、厚さ500μmとし、X方向及びY方向の寸法はガラス基板10と同じとした。ガラス基板10及び支持体12の材料は、いずれも無アルカリガラスとした。
【0169】
剥離処理後のガラス基板10の端部における割れ、欠けの有無を光学顕微鏡にて観察し、NGとなるガラス基板10の枚数(NG数)を算出した。NG数の算出に際しては、1カ所でも割れ、また、欠けが確認されたガラス基板10は、NGであるとした。
【0170】
(実施例2)
ガラス基板10のX方向長さ及びY方向長さをそれぞれ320mm及び400mmへ変更したこと以外は、実施例1において製造したのと同様のガラス基板10を20個製造した。これらのガラス基板10についても、実施例1と同様の方法により、NG数の算出を行った。
【0171】
(比較例1)
第7工程におけるガラス基板10の4辺の断裁処理を省略したこと以外は、実施例1において製造したのと同様のガラス基板を20個製造した。これらガラス基板についても、実施例1と同様の方法により、NG数の算出を行った。
【0172】
(比較例2)
第7工程におけるガラス基板10の4辺の断裁処理を省略したこと以外は、実施例2において製造したのと同様のガラス基板を20個製造した。これらガラス基板についても、実施例2と同様の方法によりNG数の算出を行った。
【0173】
(結果)
以下の表1に結果を示す。
【0174】
【表1】
【0175】
表1に示すように、ガラス基板10の4辺の断裁処理を実施した場合、ガラス基板10のサイズによらず、断裁処理を実施しない比較例1及び2よりも少ないNG数を達成できた。比較例1及び2では、剥離途中に引っ掛かりが生じ、そこが起点となって、比較的高い頻度でNGが発生していた。これに対し、断裁処理を実施した実施例1及び2では、ガラス基板10のサイズによらず、NG数0枚を達成できた。
【0176】
以上、本発明を実施することで、ガラス基板の欠け、割れ等を低減し、安定的に、支持体からガラス基板を剥離することが可能となる。
【符号の説明】
【0177】
1…配線基板、10、10s…ガラス基板、11…接着層、12…支持体、13…改質部、14…接着層、15…支持体、20…第1導体層、21…耐弗酸金属層、22…金属層、30…キャパシタ、31…誘電体層、32…上部電極、40、40s、41、41s、42、42s…層間絶縁膜、50…ビルドアップ層、51、52…導体層、60、60s…絶縁層、70…導体層、80…第2導体層、90、90s、91、91s、92、92s…層間絶縁膜、100…ビルドアップ層、101、102…導体層、110、110s…絶縁層、120…導体層、200、210…堆積物、S1…第1面、S2…第2面、IR…中央部、OR…外周部、ER、ER1、ER2…端部、N…剥離起点、HR…貫通孔。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21