(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093746
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】脱臭装置
(51)【国際特許分類】
A61L 9/00 20060101AFI20240702BHJP
B01J 35/39 20240101ALI20240702BHJP
B01J 21/06 20060101ALI20240702BHJP
A61L 9/20 20060101ALI20240702BHJP
A61L 9/18 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
A61L9/00 C
B01J35/02 J
B01J21/06 M
A61L9/20
A61L9/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210312
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000104652
【氏名又は名称】キヤノン電子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 佳菜
【テーマコード(参考)】
4C180
4G169
【Fターム(参考)】
4C180AA02
4C180AA07
4C180CC03
4C180CC16
4C180DD03
4C180DD04
4C180EA02X
4C180EA04Y
4C180EA05Y
4C180EA06X
4C180EA07X
4C180EA34X
4C180HH05
4C180HH15
4C180HH17
4C180HH19
4G169AA03
4G169BA04B
4G169BA14B
4G169BA48A
4G169CA02
4G169CA10
4G169CA17
4G169EA09
4G169EA18
4G169EB07
4G169EB14Y
4G169HA13
4G169HB01
4G169HD10
4G169HE03
4G169HF01
4G169HF03
4G169HF05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】フィルタと光源の配置によっては、光源の光が外部に漏れやすかった。本発明は、光源の光が外部に漏れにくい脱臭装置を提供する。
【解決手段】上記課題を解決するために、本発明の脱臭装置は、取込口から取り込んだ気体を光触媒により脱臭して排出口から排出する脱臭装置であって、光触媒に対して光を照射する光源と、光源と排出口との間に設けられ、光触媒を担持した第一のフィルタ1aと、第一のフィルタ1aよりも排出口側に設けられた第二のフィルタ1bと、を備え、第一のフィルタ1aと第二のフィルタ1bには光を遮る遮蔽部4が設けられ、第二のフィルタ1bの遮蔽部4は、第一のフィルタ1aの遮蔽部4の間の孔と対応する位置に設けられたことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
取込口から取り込んだ気体を光触媒により脱臭して排出口から排出する脱臭装置であって、
前記光触媒に対して光を照射する光源と、
前記光源と前記排出口との間に設けられ、前記光触媒を担持した第一のフィルタと、
前記第一のフィルタよりも前記排出口側に設けられた第二のフィルタと、を備え、
前記第一のフィルタと第二のフィルタには光を遮る遮蔽部が設けられ、
前記第二のフィルタの遮蔽部は、前記第一のフィルタの遮蔽部の間の孔と対応する位置に設けられたことを特徴とする脱臭装置。
【請求項2】
前記光源から照射された光の光通過方向において、前記第一のフィルタの遮蔽部の間の孔と、前記第二のフィルタの遮蔽部とが重なる位置に設けられ、
前記第一のフィルタと、前記第二のフィルタとは、所定の間隔をおいて配置されたことを特徴とする請求項1に記載の脱臭装置。
【請求項3】
前記第一のフィルタと、前記第二のフィルタは、同一形状であり、異なる高さに取り付けられたことを特徴とする請求項2に記載の脱臭装置。
【請求項4】
前記第二のフィルタに光触媒を担持したことを特徴とする請求項1に記載の脱臭装置。
【請求項5】
前記光源は、紫外線光源であり、
前記第一のフィルタに紫外線応答型光触媒を担持し、
前記第二のフィルタの前記排出口側に、可視光線応答型の光触媒を担持したことを特徴とする請求項1に記載の脱臭装置。
【請求項6】
取込口から取り込んだ気体を光触媒により脱臭して排出口から排出する脱臭装置であって、
前記光触媒に対して光を照射する光源と、
前記光源と前記取込口との間に設けられ、前記光触媒を担持した第一のフィルタと、
前記第一のフィルタよりも前記取込口側に設けられた第二のフィルタと、を備え、
前記第一のフィルタと第二のフィルタには光を遮る遮蔽部が設けられ、
前記第二のフィルタの遮蔽部は、前記第一のフィルタの遮蔽部の間の孔と対応する位置に設けられたことを特徴とする脱臭装置。
【請求項7】
前記第二のフィルタよりも前記排出口側に、第三のフィルタと、を備え、
前記第三のフィルタの遮蔽部の間の孔の大きさは、前記第二のフィルタの遮蔽部の間の孔の大きさよりも小さいことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の脱臭装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒を利用した光触媒フィルタを用いた脱臭装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光触媒フィルタと光源を組み合わせた脱臭装置が実用化されている。
光触媒フィルタには、臭気成分を吸着する吸着剤に光触媒を練込みハニカム状に形成したものや、繊維に光触媒を担持したものなどが用いられている。
【0003】
光源には、紫外線ライト等が一般的に用いられ、紫外線を直視すると目に好ましくないため、外部に漏れないよう脱臭装置のハニカム構造体光触媒フィルタの通気孔に対し励起光源の光束が斜め方向から入射する様に励起光源を配置すること知られている。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1について、フィルタと光源の配置によっては、光源の光が外部に漏れやすかった。本発明は、光源の光が外部に漏れにくい脱臭装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の脱臭装置は、取込口から取り込んだ気体を光触媒により脱臭して排出口から排出する脱臭装置であって、
前記光触媒に対して光を照射する光源と、
前記光源と前記排出口との間に設けられ、前記光触媒を担持した第一のフィルタと、
前記第一のフィルタよりも前記排出口側に設けられた第二のフィルタと、を備え、
前記第一のフィルタと第二のフィルタには光を遮る遮蔽部が設けられ、
前記第二のフィルタの遮蔽部は、前記第一のフィルタの遮蔽部の間の孔と対応する位置に設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、第一のフィルタを貫通した光源の光が第二のフィルタの遮蔽部に遮られ外部に漏れにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】実施例1における光触媒フィルタの断面構造の模式図
【
図4】実施例2における光触媒フィルタの断面構造の模式図
【
図6】実施例3における光触媒フィルタの断面構造の模式図
【
図7】実施例3における光触媒フィルタおよび脱臭装置の模式図
【
図9】実施例4における光触媒フィルタの断面構造の模式図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明を実施の形態に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する本発明の実施の形態は、本発明の上位概念、中位概念および下位概念など種々の概念を説明するための一例である。今回はガラス繊維クロスを一例として構成を例示して説明するが、光触媒の基材になるものであれば他にも応用でき、例えば、強化繊維、金属繊維、ガラス繊維、ロックウール、セラミックス、活性炭繊維、黒鉛化繊維、耐熱ガラス繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、SiC繊維、ハニカム構造を有したハニカム活性炭、アルミハニカム等などへの応用が可能である。したがって、本発明の技術的範囲は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0010】
<実施形態>
(光触媒フィルタおよび脱臭装置)
本発明の実施例に係る脱臭装置は、装置左側に気体を取り込む取込口が配置され右側に気体を脱臭して排出する排出口が設けられている。装置左側には、左側から右側に向かって紫外線を照射する紫外線応答光触媒に対して励起光源である紫外線ライトを有する。紫外線が照射される第一のフィルタは、複数の通気孔が設けられ、遮蔽部には光触媒が担持されている。光源は、第一のフィルタに担持された光触媒の励起光源となるのであれば、可視光など他の波長の光源を用いてもよい。紫外線ライトから照射された紫外線が第一の光触媒フィルタの通気孔を貫通した第二のフィルタの遮蔽部に照射されることによって、脱臭装置の外部に紫外線が漏れ出るのを低減している。
【0011】
光触媒を担持する基材においては、紫外線により劣化しない材質や光触媒をより多く担持することのできる材料が好ましく、ガラス繊維、強化繊維、金属繊維、ロックウール、セラミックス、活性炭繊維、黒鉛化繊維、耐熱ガラス繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、SiC繊維、ハニカム構造を有したハニカム活性炭、アルミハニカム等が挙げられる。
【0012】
光触媒を担持させる基材にガラス繊維クロスを用いた場合、紫外線ライトからの紫外線光がガラス繊維クロスによって影を作り、厚み方向の奥まで届かなくなることを防止することができ、光触媒フィルタの全体に対し光量を十分確保することができ、光触媒を効果的に励起することができる。
【0013】
さらに、本発明の脱臭装置等において、ガラス繊維を整然と束ねた横糸群と、ガラス繊維を乱雑に束ねた縦糸群とを織物状に織込んだものを光触媒フィルタとすることにより、光触媒の粒子がガラス繊維クロスの繊維と繊維の間により絡まっていき、ガラスへの密着力が強くなる。
【0014】
また、一般的に光触媒材料の触媒活性が触媒粒子の粒度の減少と共に高まることが知られているが、ガラス繊維を直径1μm 以下の孔を持つ多孔質ガラスとすることにより、触媒活性の高い1μm 以下の光触媒粒子を、ガラス繊維に存在する直径1μm 以下の孔にトラップし、光触媒粒子のガラス密着力が強められる。
【0015】
ガラス繊維は、溶かしたガラスを引き伸ばし繊維状にしたもので、生産された無機繊維である。
【0016】
主な特徴として、寸法安定性の良さや、引張強度と弾性率が共に高いことが挙げられ、加えて良好な電気絶縁性と電波透過性、またその種類ごとに異なる得意分野をもち、多方面に渡って優れた能力を発揮することができる。高い強度と安定性を持ちながら他の素材よりも安価で手に入るため、工業用にとどまらず、織物や紙製品などの日用品にも幅広く使用されている非常に汎用性の高い素材である。ガラス繊維に使用されるガラスにもいくつか種類があり、例えば以下のようなものが挙げられる。
【0017】
Eガラス繊維は、アルカリ成分が1%以下とほとんど含まれておらず、溶融温度を下げる働きのあるアルカリ成分が少なくその分耐熱性に優れたホウ素を使用しているため、熱膨張率が低く急激な温度変化に対応することができる。
【0018】
比較的安価であることや高い電気絶縁性から、FRP(繊維強化プラスチック)として幅広く使用されている。Sガラス繊維は、高強度、高弾性を求めて開発製造され、弾性を向上させるアルミナ(Al2O3)がEガラスよりも含まれているため、引張弾性で約20%、引張強度では約35%も向上している。また、融点の高いアルミナに加えて酸化マグネシウムも多く含まれているため、耐熱性が向上し熱膨張係数が小さい。他にも、耐酸性能力を持つCガラス繊維やECRガラス繊維、ARガラス繊維などが挙げられる。
【0019】
本発明に用いるガラス繊維クロスは、工業的規模で生産され、通常入手できるものが適用できる。具体的には、例えば、ユニチカ株式会社の生機クロス、ガラスロービングクロス、ガラスヤーンクロス、加工クロス、断熱クロス、株式会社イセオリのガラスロービングクロス、断熱クロス、株式会社コシバのガラス繊維クロスなどが挙げられる。
【0020】
また、ガラス繊維クロスなどの織物は、一般的に三原組織という基本的な織り方で織り込まれていることが多い。一つ目は、平織りで、経糸1本と緯糸1本を交互に交差させて作られた、三原組織の中で最も単純な織り方である。糸の交差する点(組織点)が多いので、やや硬く、ハリがあり耐久性の高い織物に用いられる。
【0021】
二つ目は、綾織り・斜文織で、経糸と緯糸を2本ずつ抜かすなどして、交差させて作られた組織である。平織りに比べ、経糸が長く表面にあらわれる(糸を浮かせる部分が多い)のが特徴であり、組織点が少ないため、隣り合う複数の糸が接近しようとするので、隙間が少なく、糸と糸との密度を高めて織ることができる。
【0022】
三つ目は、朱子・繻子織で、経糸または緯糸が4本飛んで下に潜り交差するものである。組織点が少ないだけでなく、緯経のどちらかがほとんど表面にあらわれず、綾織りのように綾目も目立たない。また、滑らかで滑りがよく、光沢に富んでいることが特徴であるが、糸が浮いている距離が長いため、摩擦に弱く引っ掛かりやすい。以上に上げた織り方は例の一部であり、それ以外の織り方で織り込まれた織物でも基材として用いることができ、これに限定されるものではない。
【0023】
本発明で使用する具体的なガラス繊維クロスの繊維太さは6~9μm であり、質量は300~400g/m2であり、機械的性質として優れた性質を持っている。また、1000℃以上の温度で焼成して製造されるため、熱安定性にも優れている上に化学安定性にも優れている。
【0024】
ガラス繊維クロスの目付けにおいては、除去対象物質の濃度・種類、その濃度の経時変化の大小等により異なるため一義的ではないが、通常、1g/m2~500g/m2、好ましくは 300g/m2 ~ 400g/m2 である。目付けが 300g/m2 より少ない場合、ガラス繊維クロスの空隙は大きくなり、一定空間内に占める繊維量が少なすぎることとなる。そして、繊維の表面に光触媒をコーティングされることを考慮すると、繊維量が少なすぎることで、通気性は良いが、一定空間内に占める光触媒の担持量が充分ではなく、光触媒機能を充分に発揮することが困難となり、十分な除去性能を有する光触媒担持ガラス繊維クロスが得られない場合がある。
【0025】
一方、目付けが 400g/m2 より多い場合、光触媒をコーティングすることで担持量も増えるが、ガラス繊維間の密度が高いため空隙が小さく、空気抵抗が大きくなりすぎて空気が通過することが困難となり、通気性、通液性等が低下する恐れがある。また、光触媒を担持した際に光触媒が目詰まりしやすくなり、有害物質(被分解物質)と光触媒とが接触し難くなる。
【0026】
ガラス繊維に使用されている糸は6μm または9μm の太さのバルキーヤーンを主体とした厚地のクロスを使用している。バルキーヤーンとは、合成繊維の熱可塑性を利用してつくる嵩高糸をいい、嵩高紡績糸と嵩高加工フィラメント糸に分類される。バルキーヤーンを製造するバルキー加工には次のような方法がある。嵩高紡績糸は、短繊維に切断する前に熱延伸したものと、延伸しないものとからつくった短繊維を混紡して紡績糸とし、これを熱水または蒸気で処理して得られるもので、熱延伸した繊維だけが縮むため、延伸しない繊維が浮き上がり、嵩高な糸となる。
【0027】
ガラス繊維クロスの密度は、経糸、緯糸の25mm 又は10mm 間のガラス繊維糸の本数で表している。経糸、緯糸のそれぞれ密度が異なるものを使用していて、除去対象物質の濃度・種類、その濃度の経時変化の大小等により異なるため一義的ではないが、通常、経糸の密度は10 本/25mm ~ 100 本/25mm であり、好ましくは、40 本/25mm ~ 60 本/25mm である。一方緯糸は、通常 10 本/25mm ~ 100 本/25mm であり、好ましくは、25 本/25mm ~ 35 本/25mm である。
【0028】
ガラス繊維クロスの引張強さは、25mm 幅の強度で表す。引張強さについては、除去対象物質の濃度・種類、その濃度の経時変化の大小等により異なるため一義的ではないが、通常、経糸は1000 n/25mm ~ 2500 n/25mm、緯糸は800 n/25mm ~ 2000 n/25mmであり、好ましくは、経糸が1300n/25mm ~ 2200 n/25mm、緯糸が 900n/25mm ~ 1800 n/25mmである。
【0029】
(光触媒)
光触媒粒子としては、二酸化チタンや酸化亜鉛、酸化タングステン、酸化カドミウム、酸化インジウム、酸化銀、酸化マンガン、酸化銅、酸化鉄、酸化スズ、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化ジルコニウム等の金属酸化物半導体、硫化カドミウム、硫化亜鉛、硫化インジウム、硫化鉛、硫化銅、硫化モリブデン、硫化タングステン、硫化アンチモン、硫化ビスマス等の金属硫化物半導体、チタン酸ストロンチウム、セレン化カドミウム、タンタル酸カリウムおよびこれらの混合物を使用することができる。中でも、二酸化チタンは安価であり、化学的安定性に優れ、かつ高い触媒活性を有しているので好ましい。
【0030】
二酸化チタンには、結晶構造の違いによりアナターゼ(Anatase)型やルチル(Rutile)型、ブルッカイト型等が存在するが、結晶構造は特に限定されず、一方のみを用いてもよいし、これらの混合物を用いてもよい。尚、光触媒機能を重視する場合にはアナターゼ型の二酸化チタンを使用することが好ましく、コスト面を重視する場合にはルチル型の二酸化チタンを使用することが好ましい。
二酸化チタン光触媒は、紫外線により励起されて水や酸素が・O H や・O 2- となり、強い酸化作用で有機物を、水とニ酸化炭素等に分解し、消臭するものである。また、酸化チタン光触媒の触媒活性を高めるため、白金、パラジウム、ロジウムなどの白金族金属を担持させたものや、銀、銅、亜鉛などの殺菌性のある金属を担持させたものを使用することもできる。
【0031】
光触媒分散液の基材へのコーティング方法としては、ディップコーティング法、スプレーコーティング法、スピナーコーティング法、ブレードコーティング法、ローラーコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、リバースロールコーティング法などが挙げられる。既知の方法で少なくとも1回以上担持体上に塗布し、必要に応じて室温~200℃、常圧あるいは減圧下で予備乾燥後、200~800℃ で焼成し酸化チタン粒子を担持体上に固着させる。
【0032】
また、予備乾燥は室温~200℃、常圧あるいは減圧下あるいは乾燥気流下で、特に好ましくは室温~200℃、乾燥気流下で行うのが好ましい。焼成温度は、200℃~800℃ 、好ましくは 300~600℃ の温度で行う。焼成温度が200℃ より低いと支持体との接着性が低下するため好ましくない。上限は使用する用途により一概には決められないが、800℃ より高いと焼成後の酸化チタン粒子の結晶成長が大きくなってしまう場合や、酸化チタン膜の比表面積が小さくなるため好ましくない。以上のようにして、本発明の酸化チタン膜が得られる。
【0033】
本発明の光触媒フィルタの使用に際しては、例えば、光触媒フィルタに除去対象物質を含む被処理液又は被処理気体を接触させ、ライトを用いて光触媒フィルタに光線を照射すればよい。光を照射する光源としては、紫外線を発光するブラックライト、紫外線LEDランプ、可視光LEDランプ、蛍光灯、白熱電灯、冷陰極管(CCFL:Cold Cathode Fluorescent Lamp)等が挙げられる。
【0034】
紫外線光源としては、例えば360~380nm程度の波長の紫外線を放射するランプを用いることができる。また、光触媒効率を高めるには、紫外線照射手段と光触媒との距離が離れすぎると紫外線強度が低下する点および近づきすぎると光触媒の面積が低減する点を考慮する必要がある。また、可視光光源は、例えば380~410nm程度の波長の可視光ランプを用いることができる。
【0035】
本発明の光触媒フィルタの応用例としては、臭気の分解、ガス類の酸化分解、並びに、脱色、または、花粉、カビ、生菌、並びに、ウイルス等の滅菌駆除に大きな効果が得られる。
【0036】
(表面処理剤の処理方法)
一般的にガラス繊維などの繊維材料には、表面上に表面処理剤(サイジング剤)がコーティングされていることが多い。コーティングされている表面処理剤は、有機系またはでんぷん系の薬品が使用されている場合が多く、熱処理を施すことによって表面処理剤を除去させることができる。本発明での表面処理剤とは、繊維の表面に塗布されているものをいい、それによって繊維の強度、耐摩耗性、平滑性が向上するものをいう。表面処理剤の処理方法において、今回は熱処理によって表面処理剤を処理したが、他の方法でもこれに限られたものではない。
【0037】
以上、本発明を実施形態に基づいて詳細に説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述した実施形態では、ガラス繊維クロスを一例として構成を例示して説明したが、本発明は勿論これに限定されず、例えば、強化繊維、金属繊維、ロックウール、セラミックス、活性炭繊維、黒鉛化繊維、耐熱ガラス繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、SiC繊維、ハニカム構造を有したハニカム活性炭、アルミハニカム等などへの応用が可能である。
【0038】
<実施例>
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明がこれにより限定されるものではない。例えば、今回の実施例ではガラス繊維織物を、光触媒を担持する基材として用いたが、これに限られたものではなく、ガラス繊維、強化繊維、金属繊維、ロックウール、セラミックス、活性炭繊維、黒鉛化繊維、耐熱ガラス繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、SiC繊維、ハニカム構造を有したハニカム活性炭、アルミハニカム、その他ハニカム構造を有した材料などが用いることができる。下記の実施例1~実施例4に記載の方法でそれぞれ光触媒フィルタを作製した。
【0039】
(実施例1)
はじめに、第一のフィルタ1(a)を作製するため、ガラス繊維クロス(断熱クロス 型番 A330T104LF : ユニチカ社製)を10cm×10cm に裁断機を用いて裁断した。その後、裁断したガラス繊維クロスに対して通気孔を設けるため、ガラス繊維クロスの縦横に約2cm 程度ごとに印を付けて、通気孔部3と遮蔽したところに光触媒を担持させる光触媒担持部2が交互になるようにガラス繊維クロスをカッティングした。
【0040】
第二のフィルタ1(b)においては、ガラス繊維クロスを第一のフィルタ1(a)と同様に10cm×10cm に裁断した。そして、第一のフィルタ1(a)の通気孔部3と光触媒担持部2の配置と、第二のフィルタの通気孔部3と遮蔽部4とが逆に重なるように、ガラス繊維クロスのカッティングを行った。ここで、フィルタの遮蔽した所について光触媒を担持させたものを光触媒担持部2とし、光触媒を担持させていないものを遮蔽部4としている。
【0041】
次に、通気孔部3を設けた第一のフィルタ1(a)をマッフル炉(Muffle Furnace FP300:ヤマト製)内に置き、酸素雰囲気中で630℃、30分の条件で表面に付着している表面処理剤(サイジング剤)を飛ばした。
【0042】
つぎに、表面処理剤を除去し清浄化した第一のガラス繊維クロスに、光触媒酸化チタン溶液をスプレー法にてコーティングを行った。光触媒酸化チタン溶液は、紫外線応答型光触媒酸化チタン(ST-01:石原産業社製)を用い、12.5gを純水で希釈し、マグネティックスターラーにて30分攪拌後、紫外線応答型光触媒コーティング液を得た。このコーティング液を用いてスプレーコーティング後、乾燥炉にて120℃、1時間の条件で仮乾燥した。この工程を3回繰り返した後、マッフル炉にて300℃、30分の条件でガラス繊維クロスに塗布した紫外線応答型光触媒5を焼結させ、紫外線応答型光触媒を担持した光触媒フィルタ1(a)を得た。
【0043】
このようにして、実施例1では、紫外線応答型光触媒5を担持したフィルタ1(a)と、光触媒を担持していないフィルタ1(b)を用いる。つぎに、これら2枚のフィルタを一定の間隔を空けて、配置した。このとき、第一のフィルタ1(a)の通気孔部3に対して、第二のフィルタ1(b)の遮蔽部4と、第一のフィルタ1(a)の光触媒担持部2に対して、第二のフィルタ1(b)の通気孔部3が、それぞれ光源から照射される光の通過方向に重なるように配置した。
図1に示す光触媒フィルタはこれらを模式的に表したものである。
【0044】
つぎに、作製した光触媒フィルタの紫外線強度測定を行った。紫外線強度を測定するため、紫外線強度計(UV-340A:マザーツール社製)と紫外線ライト61には、ブラックライト(FL4BLB/N:東芝ライテック社製)を2本使用した。測定方法は、紫外線ライトと光触媒フィルタの距離が2cmになるように配置し、3回測定した測定値の平均値を紫外線強度の値とした。
【0045】
まず、紫外線ライトのみでの紫外線強度は622μW/cm2であった。それに対し、第一の光触媒フィルタを配置し測定した場合、204μW/cm2であった。次に、第二のフィルタを第一のフィルタの次に一定の間隔を空けて配置させ、紫外線強度を測定すると、30μW/cm2となった。
【0046】
このようにして得られた光触媒フィルタ1は、第一の光触媒フィルタ1(a)の遮蔽部に光触媒が担持された光触媒担持部2と、通気孔部3とがあり、紫外線が通気孔部3を貫通しても、第二のフィルタ1(b)の遮蔽部4によって紫外線を外部に漏らすことを低減することができ、外部に漏れ出た紫外線を直視してしまうことを防ぐことができる。また、実施例1で得られた光触媒フィルタ1は、例えば
図2に示したような配置で装置などに取り付けることができる。
【0047】
図2は、光触媒フィルタ1を断面から見た図であり、例えば、左側に紫外線ライト61とファンが配置され、右側に向かってファンによる送風および紫外線が照射され、紫外線が照射されたところに第一のフィルタ1(a)と第二のフィルタ1(b)が配置される様子を模式的に表したものである。
【0048】
ここで、ハニカム構造を有した材料を基材に用いる場合においてもガラス繊維クロスと同様に光触媒フィルタとして用いることができる。
【0049】
ハニカムフィルタの場合、既に通気孔部と光触媒を担持する部分(担持部)を持ち合わせているため、担持部に光触媒を塗布すればよい。また、積層する場合は、第一のフィルタと第二のフィルタで通気孔部が重ならないように組み合わせる。また、ハニカムフィルタは厚みがあるため、紫外線が細孔部に行き渡り、かつ外部へ紫外線が漏れ出ないような厚みのフィルタを選択する。ハニカムを厚くしすぎるとハニカムの細孔の奥まで紫外線は照射しにくくなり、また薄くし過ぎるとハニカムの細孔まで紫外線は照射できるが、外部に紫外線が漏れ出てしまう。
【0050】
(実施例2)
実施例2では、実施例1と同様の手順で第一のフィルタ11(a)についてガラス繊維クロスを10cm×10cmに裁断した。その後、裁断したガラス繊維クロスに対して通気孔を設けるため、ガラス繊維クロスの縦横に約2cm程度ごとに印を付けて、通気孔部23と遮光部分に光触媒を担持させる光触媒担持部22が交互になるようにガラス繊維クロスをカッティングした。
【0051】
第二のフィルタ11(b)においても、ガラス繊維クロスを第一のフィルタ11(a)と同様に10cm×10cmに裁断した。そして、第一のフィルタ11(a)の通気孔部23と光触媒担持部22と同様に、第二のフィルタの通気孔部23と遮光部分に光触媒を担持させる光触媒担持部22を設けるためガラス繊維クロスのカッティングを行った。
【0052】
次に、通気孔部23を設けた第一のフィルタ11(a)と第二のフィルタ11(b)をマッフル炉内に置き、酸素雰囲気中で630℃、30分の条件で表面に付着している表面処理剤(サイジング剤)を飛ばした。
【0053】
つぎに、表面処理剤を除去し清浄化した第一のフィルタ11(a)および第二のフィルタ11(b)に、光触媒酸化チタン溶液をスプレー法にてコーティングを行った。光触媒酸化チタン溶液は、紫外線応答型光触媒酸化チタン(ST-01:石原産業社製)を用い、12.5gを純水で希釈し、マグネティックスターラーにて30分攪拌後、紫外線応答型光触媒コーティング液を得た。
【0054】
このコーティング液を用いてスプレーコーティング後、乾燥炉にて120℃、1時間の条件で仮乾燥した。この工程を3回繰り返した後、マッフル炉にて300℃、30分の条件でガラス繊維クロスに塗布した紫外線応答型光触媒を焼結させ、紫外線応答型光触媒25を担持した第一のフィルタ11(a)と第二のフィルタ11(b)を得た。
【0055】
このようにして、実施例2では、紫外線応答型光触媒25を担持したフィルタ11(a)と、フィルタ11(b)を用いる。作製したフィルタはそれぞれ枠組みのホルダに挟み込むなどして自立するようにした。つぎに、これら2枚のフィルタを一定の間隔を空けて、配置した。このとき、第一のフィルタ11(a)の通気孔部23に対して、第二のフィルタ11(b)の光触媒担持部22と、第一のフィルタ11(a)の光触媒担持部22に対して、第二のフィルタ11(b)の通気孔部23が、それぞれ光源から照射される光の通過方向に一部は重なり一部はずらすため、第二のフィルタ11(b)を固定しているホルダを上下に高さをずらして配置した。
図3に示す光触媒フィルタはこれらを模式的に表したものである。また、光触媒フィルタ11の取り付け方は、装置の構造にも依存するが、光触媒フィルタ11と必要な外形が異なる場合も想定される。このときは、光触媒フィルタ11の形状またはサイズを選択すればよく、例えば同じフィルタのサイズをずらして配置する場合や、外形で位置出しをするなど、作製時にフィルタの形状を変えることだけで、同様の光触媒フィルタを作製することが可能である。
【0056】
このようにして得られた光触媒フィルタ11は、第一のフィルタ11(a)の光触媒が担持された光触媒担持部22と、通気孔部23とがあり、紫外線が通気孔部23を貫通しても、第二に配置したフィルタ11(b)において、第一の光触媒フィルタ11(a)に一部重なる部分が光触媒担持部22によって紫外線が外部に漏れることを低減することができ、外部に漏れ出た紫外線を直視してしまうことを防ぐことができる。さらに第二に配置されたフィルタ11(b)も光触媒を担持しているため、より光触媒による効果を得ることができる。
【0057】
つぎに、作製した光触媒フィルタの紫外線強度測定を行った。測定方法は、実施例1と同様に行い、紫外線ライト62と光触媒フィルタの距離が2cmになるように配置し、3回測定した測定値の平均値を紫外線強度の値とした。
【0058】
紫外線ライトのみでの紫外線強度は622μW/cm2であったのに対し、光触媒フィルタを配置し測定した場合、7μW/cm2であった。第一のフィルタ11(a)および第二のフィルタ11(b)に光触媒を担持させたことにより、ガラス繊維クロスの繊維間に光触媒が付着することで繊維同士の隙間が埋まり、紫外線を漏れにくくすることができる。
【0059】
また、このようにして得られた光触媒フィルタは、第一のフィルタ11(a)の光触媒が担持された光触媒担持部222と、通気孔部223とがあり、紫外線が通気孔部223を貫通しても、第二のフィルタ11(b)の光触媒担持部222によって紫外線を外部に漏れにくくすることができる。
【0060】
また、実施例2で得られた光触媒フィルタ21は、例えば
図4に示したような組み合わせの配置で装置に取り付けることができる。
【0061】
図4は、光触媒フィルタ21を断面から見た図であり、例えば、左側に紫外線ライト62とファンが配置され、右側に向かってファンによる送風および紫外線が照射され、紫外線が照射されたところに光触媒フィルタ21が配置される様子を模式的に表したものである。
【0062】
光触媒フィルタ21を脱臭装置に取り付ける方法としては、例えば、光触媒フィルタの周りを囲うようなホルダを用いる方法や光触媒フィルタを金属製の網で挟み込む方法、などが使用できるが、保持する物であればこの限りではない。
【0063】
また、光触媒フィルタ21を配置する際に、光触媒の効果をより発揮できるように、光触媒を担持した表面部分に対し、光がより多く照射されるようにライトを配置する。光触媒に光が当たる面が多い方が、光触媒の励起量が多くなり、より効果を得ることができる。さらに、ライトと光触媒フィルタ21の光触媒担持部との距離は2cm 以内になるよう配置する。
【0064】
ここで、ハニカム構造を有した材料を基材に用いる場合においてもガラス繊維クロスと同様に光触媒フィルタとして用いることができ、これに限られたものではない。
【0065】
(実施例3)
実施例3では、実施例1と同様の手順で第一のフィルタ31(a)についてガラス繊維クロスを10cm×10cm に裁断した。その後、裁断したガラス繊維クロスに対して通気孔を設けるため、ガラス繊維クロスの縦横に約2cm 程度ごとに印を付けて、通気孔部33と遮蔽されたところに光触媒を担持する光触媒担持部32が交互になるようにガラス繊維クロスをカッティングした。
【0066】
第二のフィルタ31(b)においては、ガラス繊維クロスを第一のフィルタ31(a)と同様に10cm×10cm に裁断した。そして、第一のフィルタ31(a)の通気孔部33と光触媒担持部32の配置と、第二のフィルタ31(b)の通気孔部33と光触媒担持部32とが重なる部分を設けるように、ガラス繊維クロスのカッティングを行った。
【0067】
次に、通気孔部33を設けた第一のフィルタ31(a)と第二のフィルタ31(b)をマッフル炉内に置き、酸素雰囲気中で630℃、30分の条件で表面に付着している表面処理剤(サイジング剤)を飛ばした。
【0068】
つぎに、表面処理剤を除去し清浄化した第一のフィルタ31(a)および第二のフィルタ31(b)に、光触媒酸化チタン溶液をスプレー法にてコーティングを行った。このとき、ガラス繊維クロスの起毛している方の表面にコーティングを行う。光触媒酸化チタン溶液は、紫外線応答型光触媒酸化チタン(ST-01:石原産業社製)を用い、12.5g を純水で希釈し、マグネティックスターラーにて30分攪拌後、紫外線応答型光触媒コーティング液を得た。
【0069】
このコーティング液を用いてスプレーコーティング後、乾燥炉にて120℃、1時間の条件で仮乾燥し、この工程を3回繰り返した。次に、第二のフィルタ31(c)において紫外線応答型光触媒35を塗布していない方の表面に可視光応答型光触媒のコーティングを行った。
【0070】
光触媒酸化チタン溶液は、可視光応答型光触媒酸化チタン(STS-427:石原産業社製)を用い、6.67g を純水で希釈し、マグネティックスターラーにて30分攪拌後、可視光応答型光触媒コーティング液を得た。
【0071】
このコーティング液を用いてスプレーコーティング後、乾燥炉にて120℃、1時間の条件で仮乾燥し、この工程を3回繰り返した。
【0072】
塗布後、マッフル炉にて300℃、30分の条件でガラス繊維クロスに塗布した光触媒を焼結させた。
【0073】
このようにして、実施例3では、紫外線応答型光触媒35を担持したフィルタ31(a)とフィルタ31(b)と、フィルタ31(b)の裏面に可視光応答型光触媒を塗布したフィルタ31(c)を用いる。このとき、第一のフィルタ31(a)の通気孔部43に対して、第二のフィルタ31(b)の光触媒担持部42と、第一のフィルタ31(a)の光触媒担持部42に対して、第二のフィルタ31(b)の通気孔部43が、それぞれ光源から照射される光の通過方向に重なるように配置した。
図5に示す光触媒フィルタはこれらを模式的に表したものである。
【0074】
このようにして得られた光触媒フィルタ31は、第一のフィルタ31(a)の光触媒が担持された光触媒担持部42と、通気孔部43とがあり、紫外線が通気孔部43を貫通しても、第二のフィルタ31(b)において、第一のフィルタ31(a)に重なる部分が光触媒担持部42によって紫外線を外部に漏らすことを低減することができ、外部に漏れ出た紫外線を直視してしまうことを防ぐことができる。さらに第二のフィルタ31(b)も光触媒を担持しているため、より光触媒による効果を得ることができる。
【0075】
また、実施例3で得られた光触媒フィルタ31は、例えば
図6に示したような配置で装置に取り付けることができる。
【0076】
図6は、光触媒フィルタ31および脱臭装置を断面から見た図であり、装置左側に紫外線ライト63とファンが配置され、装置右側に向かってファンによる送風および紫外線が照射され、紫外線が照射されたところに光触媒フィルタ31が配置される様子を模式的に表したものである。
【0077】
具体的に、光触媒フィルタ31は、脱臭装置などに組み込むことができる。
図7は、脱臭装置100の断面を模式的に表したものである。本脱臭装置100は、外気を前面から吸入するために装置左側(前面)にスリット孔104(a)が配置され、これをフィルタまで送風するファン101と、光触媒反応を起こすための紫外線ライト102と、汚染空気中の汚染物質を酸化分解して無害化する光触媒フィルタ31と無害化した空気を外に排気するスリット孔104(b)とから構成されている。
【0078】
紫外線ライト102、光触媒フィルタ31は、この順にファン101 によって吸入された汚染空気が通過していくように配置されている。フィルタ31の基材として、ガラスクロスを用いているが、これに限定されるものではなく、ハニカム基材やHEPAフィルタ、活性炭繊維フィルタなど光触媒を担持させることができるものであれば如何なるものを用いてもよい。
【0079】
脱臭装置100の前面には、空気を通すため複数のスリット孔104(a)、104(b)が設けられている。
【0080】
ファン101の作用によって、脱臭装置100の周囲の空気が、空気吸込口用のスリット孔104(a)を介して脱臭装置内に導入される。この導入された空気は、ファン101を介して、光触媒フィルタ31の収容部に導入される。光触媒フィルタ31の収容部には、紫外線ライトから400nm以下の波長の光が照射される。さらに、紫外線ライトによって光触媒フィルタ31にコーティングされた光触媒に波長400nm以下の波長の光が照射されるので光触媒が活性化する。
【0081】
脱臭装置100の空気吸込口用のスリット孔104(a)から風が吸入され、光触媒フィルタを通過し、光触媒により清浄化された空気は装置裏側の排出部であるスリット孔104(b)を通って外部へ排出される。
【0082】
光触媒フィルタ31は、ファンの右側に紫外線ライト102と光触媒フィルタ31を一定の間隔を空けて配置する。このとき、実施例3で作製した光触媒フィルタ31の第一の光触媒を担持した側を紫外線ライト102に向けて配置し、第二の光触媒フィルタにおいても紫外線応答型光触媒を塗布した側を紫外線ライト102に向けて配置する。光触媒フィルタ31の第一および第二の光触媒担持部に紫外線ライトは照射される。また、第二において、裏面は可視光応答型光触媒が担持されているため、スリット孔104(b)に隙間があることで、外部からの室内光や可視光ライトなどの可視光が装置内へ入ってくることができる。この光を利用して、光触媒フィルタ31の可視光応答型光触媒が塗布された部分が光触媒効果を発揮することができる。
【0083】
また、脱臭装置において、フィルタの構成で紫外線の漏れを防いだことによって、フィルタと排出部のスリット孔104(b)との距離を例えば2cm以内の狭い範囲に配置にすることができ、余分なスペースを作らずスリムな脱臭装置とすることができる。さらにスリット孔の大きさを1~2cm程度にしてフィルタの通気孔部の大きさ以下にすることで外部への紫外線漏れを防止しやすい装置構成とすることができる。
【0084】
光触媒フィルタ31の取り付け方は、装置の構造にも依存するが、光触媒フィルタ31と必要な外形が異なる場合も想定される。
【0085】
このときは光触媒フィルタ31の形状を選択すればよく、作製時にフィルタの形状を変えることだけで、同様の光触媒フィルタを作製することが可能である。
【0086】
このときの光触媒フィルタ31を脱臭装置100に取り付ける方法としては、例えば、光触媒フィルタを金属製の網で挟み込む方法や、両面テープ、金具、溶接、超音波溶着などが使用できるが、保持する物であればこの限りではない。
【0087】
また、光触媒フィルタ31を配置する際に、光触媒の効果をより発揮できるように、光触媒を担持した表面部分に対し、光がより多く当たるようにライト102を配置する。光触媒に光が当たる面が多い方が、光触媒の励起量が多くなり、より効果を得ることができる。さらに、ライト102と光触媒フィルタ31の光触媒担持部との距離は2cm 以内になるよう配置する。
【0088】
また、実施例1~2よりも、第二のフィルタの光触媒の担持量が多いため、より高い光触媒効果を発揮することができ、また、光触媒フィルタの第一および第二に光触媒を担持させたことにより、ガラス繊維クロスの繊維間に光触媒が付着することで繊維同士の隙間が埋まり、紫外線を漏れ出さないよう低減することができる。
【0089】
ここで、ハニカム構造を有した材料を基材に用いる場合においてもガラス繊維クロスと同様に光触媒フィルタとして用いることができ、これに限られたものではない。
【0090】
(実施例4)
実施例4では、実施例1と同様の手順で第一のフィルタ41(a)においてガラス繊維クロスを10cm×10cm に裁断した。その後、裁断したガラス繊維クロスに対して通気孔を設けるため、ガラス繊維クロスの縦横に約2cm 程度ごとに印を付けて、通気孔部53と遮蔽したところに光触媒を担持させる光触媒担持部52が交互になるようにガラス繊維クロスをカッティングした。
【0091】
第二のフィルタ41(b)と第三のフィルタ41(c)においては、ガラス繊維クロスを第一のフィルタ41(a)と同様に10cm×10cm に裁断した。そして、第二のフィルタ41(b)の通気孔部53と光触媒担持部52が第一のフィルタ41(a)の通気孔部53と光触媒担持部52の大きさよりも小さいサイズになるようにガラス繊維クロスのカッティングを行った。また、第三のフィルタ41(c)の通気孔部53と光触媒担持部52は第一のフィルタ41(a)の通気孔部53と光触媒担持部52と、第二のフィルタ41(b)の通気孔部53と光触媒担持部52大きさよりも小さいサイズになるようにガラス繊維クロスのカッティングを行った。
【0092】
次に、通気孔部53を設けた第一のフィルタ41(a)と第二のフィルタ41(b)、第三のフィルタ41(c)をマッフル炉内に置き、酸素雰囲気中で630℃、30分の条件で表面に付着している表面処理剤(サイジング剤)を飛ばした。
【0093】
つぎに、表面処理剤を除去し清浄化した第一のフィルタ41(a)、第二のフィルタ41(b)および第三のフィルタ41(c)に、光触媒酸化チタンをスプレー法にてコーティングを行った。光触媒酸化チタン溶液は、紫外線応答型光触媒酸化チタン(ST-01:石原産業社製)を用い、12.5g を純水で希釈し、マグネティックスターラーにて30分攪拌後、紫外線応答型光触媒コーティング液を得た。
【0094】
このコーティング液を用いてスプレーコーティング後、乾燥炉にて120℃、1時間の条件で仮乾燥した。この工程を3回繰り返した。
【0095】
次に、第三のフィルタにおいて、紫外線応答型光触媒55を塗布していない方のフィルタ41(d)表面に可視光応答型光触媒のコーティングを行った。光触媒酸化チタン溶液は、可視光応答型光触媒酸化チタン(STS-427:石原産業社製)を用い、6.67g を純水で希釈し、マグネティックスターラーにて30分攪拌後、可視光応答型光触媒コーティング液を得た。このコーティング液を用いてスプレーコーティング後、乾燥炉にて120℃、1時間の条件で仮乾燥し、この工程を3回繰り返した。
【0096】
塗布後、マッフル炉にて300℃、30分の条件でガラス繊維クロスに塗布した光触媒を焼結させ、紫外線応答型光触媒55を担持したフィルタ41(a)、フィルタ41(b)とフィルタ41(c)の裏面に可視光応答型光触媒46を担持した41(d)を得た。
【0097】
このようにして、実施例4では、紫外線応答型光触媒55を担持したフィルタ41(a)と、フィルタ41(b)、フィルタ41(c)を用いる。さらに、第三のフィルタ41(c)の裏面には、可視光応答型光触媒46を担持しており、フィルタ41(d)としている。つぎに、これら3枚のフィルタを一定の間隔を空けて、配置した。このとき、第一のフィルタ41(a)の通気孔部53に対して、第二のフィルタ41(b)の光触媒担持部52と、第三のフィルタの通気孔部53と、第一のフィルタ41(a)の光触媒担持部52に対して、第二のフィルタ41(b)の通気孔部53と第三のフィルタ41(c)の光触媒担持部53が、それぞれ光源から照射される光の通過方向に重なるように配置した。
図8に示す光触媒フィルタはこれらを模式的に表したものである。
【0098】
このようにして得られた光触媒フィルタ41は、
図9のような配置で脱臭装置に組み込むことができる。第一のフィルタ41(a)の光触媒が担持された光触媒担持部52と、通気孔部53とがあり、紫外線が通気孔部53を貫通しても、第二のフィルタ41(b)、第三のフィルタ41(c)の光触媒担持部52によって紫外線を外部に漏らすことを低減することができ、外部に漏れ出た紫外線を直視してしまうことを防ぐことができる。また、第二のフィルタ41(b)、第三のフィルタ41(c)も光触媒を担持しているため、より光触媒による効果を得ることができる。さらに、第三のフィルタの裏面41(d)には可視光応答型光触媒46を担持している光触媒担持部47によって、脱臭装置の外から入ってくる室内光または可視光の光を利用して光触媒効果を生み出すことができる。
【0099】
つぎに、作製した光触媒フィルタの紫外線強度測定を行った。測定方法は、実施例1と同様に行い、紫外線ライト64と光触媒フィルタの距離が2cm になるように配置し、3回測定した測定値の平均値を紫外線強度の値とした。
【0100】
紫外線ライト64のみでの紫外線強度は 622μW/cm2 であったのに対し、光触媒フィルタを配置し測定した場合、1μW/cm2 であった。
【0101】
第一のフィルタに41(a)対し、第二のフィルタ41(b)、第三のフィルタ41(c)の通気孔部と光触媒担持部のサイズを小さくしたことにより、ガラス繊維クロスの繊維間に光触媒が付着することで繊維同士の隙間が埋まり、風を通過させることはできるが、より紫外線を漏れ出さないよう低減することができる。
よって実施例1~3よりも単位面積当たりの表面積が大きくなることで光触媒の担持量が多くなり、より高い光触媒効果を発揮することができる。
【0102】
ここで、ハニカム構造を有した材料を基材に用いる場合においてもガラス繊維クロスと同様に光触媒フィルタとして用いることができ、これに限られたものではない。
【符号の説明】
【0103】
1 光触媒フィルタ
1(a)、11(a)、31(a)、41(a) フィルタ(第一)
1(b) フィルタ(第二)
11(b)、31(b)、41(b) フィルタ(第二)
41(c) フィルタ(第三)
31(c) フィルタ裏面(第二)
41(d) フィルタ裏面(第三)
2、12、22、32、42、52 光触媒担持部
3、13、23、33、43、53 通気孔部
4 遮蔽部
5、15、25、35、45、55、225 紫外線応答型光触媒
61、62、63、64 紫外線ライト
36、46 可視光応答型光触媒
37 光触媒担持部
100 脱臭装置
101 ファン
102 紫外線ライト
104(a)、(b) スリット孔