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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093749
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】光量調節装置および光学機器
(51)【国際特許分類】
   G03B 9/02 20210101AFI20240702BHJP
   G03B 9/24 20210101ALI20240702BHJP
【FI】
G03B9/02 A
G03B9/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210315
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000104652
【氏名又は名称】キヤノン電子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】加藤 奨
【テーマコード(参考)】
2H080
2H081
【Fターム(参考)】
2H080AA21
2H080AA38
2H080AA69
2H081AA43
2H081AA49
2H081BB15
2H081BB27
2H081BB28
(57)【要約】      (修正有)
【課題】姿勢による精度差を少なくすることができる光量調節装置を提供する。
【解決手段】開口を有する地板50と、開口を通過する光量を調節する絞り羽根10と、絞り羽根を駆動する駆動リング20と、を備え、絞り羽根は回転中心ピン11を有し、回転中心ピンは地板に設けられた孔51に挿入され、絞り羽根の回転中心ピンが設けられた側とは反対側の面には、駆動リングが配置され、孔の周囲に絞り羽根に向かって突出した、及び、駆動リングのうち回転中心ピンに向かって突出した、少なくともいづれか一方の回転中心ピン支持部52を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有する地板と、
前記開口を通過する光量を調節する絞り羽根と、
前記絞り羽根を駆動する駆動リングと、を備え、
前記絞り羽根は回転中心ピンを有し、
前記回転中心ピンは前記地板に設けられた孔に挿入され、
前記絞り羽根の前記回転中心ピンが設けられた側とは反対側の面には、前記駆動リングが配置され、
前記孔の周囲に前記絞り羽根に向かって突出した、及び、前記駆動リングのうち前記回転中心ピンに向かって突出した、の少なくともいずれか一方の回転中心ピン支持部を有することを特徴とする光量調節装置。
【請求項2】
前記回転中心ピン支持部では光軸方向で前記絞り羽根が1枚のみ重なることを特徴とする請求項1に記載の光量調節装置。
【請求項3】
前記回転中心ピン支持部は前記駆動リングに設けられ、前記孔及びその周辺に重なるように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の光量調節装置。
【請求項4】
前記回転中心ピン支持部は凸形状で前記駆動リングの前記絞り羽根が摺動する側に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の光量調節装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の光量調節装置と、前記光量調節装置を通過した光の像を撮像する撮像素子と、を備えたことを特徴とする光学機器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラや交換レンズ等の光学機器に搭載され、絞り装置等と称される光量調節装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような光量調節装置においては、高精度な物且つ、滑らかな作動、が求められている。駆動リングを固定開口の周囲で回転させて複数の絞り羽根を開閉方向に回動させ、複数の絞り羽根により形成される絞り開口(可変開口)の大きさを変化させることにより光量を調節する。このような絞り装置は、虹彩型絞り装置とも称される。
【0003】
羽根のそり上がりを低減するのに、特許文献1では、駆動リング及びカバーに絞り羽根の羽根部を抑える凸部をそれぞれ設ける構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-140059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら引用文献1の絞り装置では、駆動ピンと駆動リングの挿入穴の掛かり量が少ないと絞り羽根が傾き易くなり、姿勢により精度が変化してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の光量調節装置は、
開口を有する地板と、
前記開口を通過する光量を調節する絞り羽根と、
前記絞り羽根を駆動する駆動リングと、を備え、
前記絞り羽根は回転中心ピンを有し、
前記回転中心ピンは前記地板に設けられた孔に挿入され、
前記絞り羽根の前記回転中心ピンが設けられた側とは反対側の面には、前記駆動リングが配置され、
前記孔の周囲に前記絞り羽根に向かって突出した、及び、前記駆動リングのうち前記回転中心ピンに向かって突出した、の少なくともいづれか一方の回転中心ピン支持部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、地板または駆動リングにある回転中心ピン支持部により羽根走行スペース内での絞り羽根の光軸方向への動きを少なくすることができる。この結果、姿勢による精度差を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1の絞り装置の斜視図。
図2】本発明の実施例1である絞り装置の分解斜視図。
図3】実施例1の絞り装置における駆動リングの斜視図。
図4】実施例1の絞り装置における絞り羽根の斜視図。
図5】実施例1の絞り装置における地板の斜視図。
図6】実施例1の絞り装置における断面図。
図7】実施例1の絞り装置における羽根が重なる範囲を示した図。
図8】実施例2の絞り装置における駆動リングの斜視図。
図9】実施例2の絞り装置における断面図。
図10】実施例2の絞り装置における羽根が重なる範囲を示した図。
図11】絞り装置を搭載した撮像装置の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【0010】
<実施例1>
図1には、本発明の実施例1である光量調節装置としての虹彩型絞り装置7の組み立て状態を示している。また、図2には実施例1である光量調節装置を分解して示している。なお、ここでは絞り装置について説明するが、シャッタ装置やシャッタ機能を有する絞り装置も、本発明の実施例としての光量調節装置に含まれる。
【0011】
絞り装置7は、アクチュエータ1と、押さえ部材40と、駆動リング20と、複数の絞り羽根10と、地板50と、フォトインタラプタ3とを有する。
【0012】
アクチュエータ1は、ステッピングモータ等の電磁アクチュエータである。アクチュエータ1の出力軸には、駆動リング20を回転駆動するピニオンギア2が取り付けられる。アクチュエータ1とピニオンギア2とにより駆動源部が構成される。
【0013】
フォトインタラプタ3は、駆動リング20の初期位置を検出するためのセンサとして用いられる。アクチュエータ1はビス61により押さえ部材40に取り付けられる。
絞り装置7の中心軸5は、該絞り装置が後述する撮像装置に搭載された場合には該撮像装置の光軸に一致する。以下の説明では、この中心軸5に平行な方向をスラスト方向という。押さえ部材40、駆動リング20、複数の絞り羽根10および地板50は、この順でスラスト方向において積層される。すなわち、駆動リング20は、スラスト方向において、絞り羽根10に対して地板50とは反対側に配置され、押さえ部材40は絞り羽根10および駆動リング20に対して地板50とは反対側に配置される。また、スラスト方向に直交する方向および面をそれぞれラジアル方向(径方向)およびラジアル面という。
【0014】
絞り羽根10は、地板50に形成された固定開口54の周方向に複数配置されている。本実施例1では7つの絞り羽根10が用いられている。なお、絞り羽根の数は7に限らず、他の複数の数であっても良い。
【0015】
図4には1つの絞り羽根10を拡大して示している。絞り羽根10は、ラジアル面にほぼ平行になるように配置され、遮光機能を有する平板形状の羽根部と、該羽根部からスラスト方向における互いに反対側に突出するように設けられた回転中心ピン11およびカムピン12とを有する。回転中心ピン11とカムピン12のラジアル面内での位置は互いに異なっている。
【0016】
図3には、駆動リング20を拡大して示している。駆動リング20は、その中央に光通過開口24を有し、さらに裏面全体が羽根支持部となっている。また、駆動リング20の周方向複数個所(本実施例1では7箇所)には光軸5の方向に押さえ部材側に延出したラジアル支持壁部(回転支持部)22が形成されている。駆動リング20のラジアル突起部23が押さえ部材40の内周部に嵌合し、光軸5周りで回転可能に支持される。
駆動リング20にはそれぞれ、7つの絞り羽根10のカムピン12が挿入されて係合するカム溝部21が形成されている。
【0017】
また、駆動リング20の外周部の一部には、ピニオンギア2に噛み合うギア部25が形成されている。ギア部25は、ラジアル突起部23からラジアル方向外側に延出して形成されている。
【0018】
さらに、駆動リング20の周方向一箇所には、フォトインタラプタ3の発光部と受光部との間に入り込んで遮光する遮光突起部26が設けられている。
【0019】
図2に示すように、押さえ部材40はその中央に光通過開口44を有するリング形状に形成されており、押さえ部材40と地板50との間に配置された絞り羽根10および駆動リング20を覆う(押さえる)ように配置され、地板50に4つのビス60により固定される。
【0020】
図5には地板50を示しており、地板50は、その中央に固定開口としての光通過開口54を有するリング形状に形成されており、該リング形状の部分には複数の絞り羽根10の回転中心ピン11がそれぞれ係合する複数(絞り羽根10と同じ7つ)の駆動穴部51が形成されている。
【0021】
また、駆動穴部の周囲には回転中心ピン11が姿勢により、抜け掛かることで変化する掛かり量を少なくするための回転中心ピン支持部52を有している。
【0022】
図6には本実施例1の断面図を示しており、絞り羽根10は、駆動リング20と地板50の間に形成される羽根走行スペース81を走行する。このとき、駆動リング20は地板50と押さえ部材40とに挟まれるように支持されており、絞り羽根10が作動するのに必要なスペースが設けられている。
【0023】
通常、開いているときは絞り羽根10は走行スペース81の光軸5の方向で絞り羽根同士の重なりは3枚となり、閉じているときには重なりは2枚となる。
【0024】
また、羽根走行スペース81の中で回転中心ピン11は回転中心ピン支持部52により、スラスト方向の動きがさらに規制されている。
【0025】
このとき、開いているときに駆動ピン支持部52における光軸5の方向での絞り羽根同士の重なりは従来が2枚に対して、1枚のみとすることを特徴とする。
【0026】
図7には実施例1の絞り装置における羽根が重なる範囲を示しており、絞り羽根10が複数枚重なるのは重なり範囲70で駆動ピン支持部52の上を通過する羽根は1枚のみとなり、羽根の重なりを少なくできる。
【0027】
駆動ピン支持部52により、図6図7に示すように絞り羽根10の作動を邪魔することなく、絞り羽根10の回転中心ピン11の羽根が傾き難くなり、羽根を絞った場合の羽根同士の編み上がりを少なくすることができ、姿勢差による精度の変化を小さくすることができる。
【0028】
なお、本実施例1において、絞り羽根10を「支持する(又は押さえる)」とは、絞り羽根10の滑らかな回動に必要なガタを与えつつ、それ以上に絞り羽根10がガタついたり脱落したりしないように移動を制限することを意味する。つまり、回動する方向以外の方向(スラスト方向)にガタがないように押さえ込むことではない。
【0029】
以上のように構成された絞り装置7においては、アクチュエータ1が動作してピニオンギア2が回転すると、駆動リング20が地板50および押さえ部材40に対して中心軸5周りで(周方向にて)回転する。駆動リング20は、7つの絞り羽根10にカムピン12を介してアクチュエータ1からの駆動力を伝達する。これにより、各絞り羽根10は、カムピン12がカム溝部51に沿って移動することで回転中心ピン11を中心として回動する。アクチュエータ1による駆動リング20の回転位置を制御することで、複数の絞り羽根10の回動位置、つまりは複数の絞り羽根10の羽根部によって形成される絞り開口(可変開口)のサイズ(径)が制御される。絞り開口径に応じて、光通過開口44,24,54を通過する光量を変化させる(調節する)ことができる。
【0030】
駆動リング20の回転位置を制御するために必要な駆動リング20の回転初期位置の検出は、駆動リング20の遮光突起部26がフォトインタラプタ3の発光部と受光部との間に入り込んで発光部からの光を遮ったことを示す信号を検出することで行うことができる。
【0031】
<実施例2>
本実施例2では地板50の駆動ピン支持部52は設けられておらず、一方で図8のように駆動リング120に駆動ピン支持部122が周方向に1周設けられている。
【0032】
図9には本実施例2の断面図を示しており、羽根走行スペース181は駆動リング120と地板50で作られたスペースで決められている。この時、駆動リング120は地板50と押さえ部材40とに挟まれるように支持されており、絞り羽根10が作動するのに必要なスペースが設けられている。
【0033】
また、羽根走行スペース181の中で回転中心ピン11は駆動ピン支持部122により、光軸5の方向の動きがさらに規制されている。
【0034】
図10には実施例2の絞り装置における羽根が重なる範囲を示しており、絞り羽根10が複数枚重なるのは重なり範囲170で駆動ピン支持部122の上を通過する羽根は1枚のみとなる。
【0035】
駆動ピン支持部122により、図9図10に示すように絞り羽根10の作動を邪魔することなく、絞り羽根10の回転中心ピン11の掛かり量を減らしにくく、姿勢差による精度の変化を小さくすることができる。実施例1及び実施例2の少なくともいづれか一方の回転中心支持部を設けると姿勢差による精度の変化を少なくすることができ、両方設けてもよい。
【0036】
<実施例3>
図11は、実施例1、2で説明した絞り装置を搭載した撮像装置としての、一眼レフカメラ用の交換レンズ221、及びその交換レンズが装着されるカメラ本体の内部構成を示している。
【0037】
交換レンズ221の鏡筒内には、変倍レンズ232、光路を絞る実施形態1の絞り装置100、およびフォーカスレンズ229を含む撮影光学系が収容されている。
【0038】
CCDセンサやCMOSセンサ等の光電変換素子により構成される撮像素子225はカメラ本体内に配置され、交換レンズ221により形成された被写体像を光電変換して電気信号を出力する。絞り装置100の絞り開口を変化させたり不図示のNDフィルタを進退させたりすることにより、撮像素子225上に形成される被写体像の明るさ(つまりは撮像素子225に到達する光量)を適正に設定することができる。
【0039】
撮像素子225から出力された電気信号は、画像処理回路226においてデジタル信号に変換されるとともに、種々の画像処理を施される。これにより、画像信号が生成される。
【0040】
ユーザは、ズームリング231を回転操作することにより、変倍レンズ232を移動させて変倍(ズーミング)を行わせることが出来る。コントローラ222は、画像信号のコントラストを検出し、そのコントラストに応じてフォーカスモータ228を制御し、フォーカスレンズ229を移動させてオートフォーカスを行う。あるいは、コントローラ222は、不図示の位相差検出方式を用いた焦点検出手段の検出信号に基づいて、フォーカスモータ228を制御し、フォーカスレンズ229を移動させてオートフォーカスを行ってもよい。
【0041】
さらに、コントローラ222は、不図示の測光手段の測光値あるいは画像信号に基づいて、絞り装置100のステッピングモータ(アクチュエータ)1を制御し、光量を調節する。これにより、撮影時のボケやゴーストを自然な形状にすることができ、高画質の画像を記録することができる。
【0042】
なお、本発明は、上述した一眼レフカメラに限定されず、レンズ一体型のデジタルカメラ、ビデオカメラ等の光学機器にも広く適用可能である。
【0043】
以上説明した各実施形態は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施形態に対して種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 アクチュエータ
2 ピニオンギア
3 フォトインタラプタ
10 絞り羽根
20 駆動リング
40 押さえ部材
50 地板
52 回転中心ピン支持部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11