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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093764
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H03K 19/00 20060101AFI20240702BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20240702BHJP
   H03K 19/0185 20060101ALN20240702BHJP
【FI】
H03K19/00 210
H01L27/04 D
H03K19/0185
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210332
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】520041932
【氏名又は名称】ナノブリッジ・セミコンダクター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白 旭
(72)【発明者】
【氏名】阪本 利司
(72)【発明者】
【氏名】宮村 信
(72)【発明者】
【氏名】根橋 竜介
(72)【発明者】
【氏名】船橋 一訓
【テーマコード(参考)】
5F038
5J056
【Fターム(参考)】
5F038CD02
5F038CD04
5F038CD09
5F038CD16
5F038DF08
5F038EZ20
5J056AA00
5J056BB02
5J056BB17
5J056DD13
5J056DD29
5J056FF07
(57)【要約】
【課題】パワーゲーティングを行う半導体装置において、貫通電流及び誤動作を防止しつつ、動作遅延及び消費電力の増加の問題を解消した半導体装置を提供する。
【解決手段】パワードメインと、P型トランジスタ及びN型トランジスタが組み合わされてなり、外部から入力された制御信号に応じて、パワードメインに対して電源電圧が供給される状態と供給されない状態とを切り替えるためのパワーコントローラと、を備え、パワーコントローラの出力部は、パワードメインの電源ライン又はグランドラインに接続されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワードメインと、
P型トランジスタ及びN型トランジスタが組み合わされてなり、外部から入力された制御信号に応じて、前記パワードメインに対して電源電圧が供給される状態と供給されない状態とを切り替えるためのパワーコントローラと、を備え、
前記パワーコントローラの出力部は、前記パワードメインの電源ライン又はグランドラインに接続されている
半導体装置。
【請求項2】
前記パワードメインは、P型トランジスタを有し、
前記パワーコントローラの出力部は、前記パワードメインのP型トランジスタのボディ端子に接続されている
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記パワードメインは、N型トランジスタを有し、
前記パワーコントローラの出力部は、前記パワードメインのN型トランジスタのボディ端子に接続されている
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
外部から入力された制御信号に応じて、前記パワードメインに対して電源電圧が供給される状態と供給されない状態とを切り替えるパワースイッチをさらに備え、
前記パワーコントローラの出力は、前記パワードメインの最終段の部分の電源ライン又はグランドラインに接続されており、
前記パワースイッチは、前記パワードメインの前記最終段以外の部分の電源ライン又はグランドラインに接続されている
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記パワーコントローラの出力は、さらに、前記パワードメインの最初段の部分の電源ライン又はグランドラインに接続されている
請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記パワードメインとして、第1の電圧で動作するトランジスタにより構成された第1のパワードメインと、前記第1の電圧よりも高い第2の電圧で動作するトランジスタにより構成された第2のパワードメインと、を備え、
前記第2のパワードメインの出力部は、前記第1のパワードメインの入力部に接続されている
請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第2のパワードメインは、2つの電極間に印加される電圧の向きに応じて抵抗状態が変化する不揮発性抵抗変化素子と、前記不揮発性抵抗変化素子に対して、抵抗状態を変化させる書き込み動作を行うための書き込み回路と、を備える
請求項6に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、論理回路を搭載した様々な電子機器のモバイル化に伴って、電子機器に用いられる論理回路の低消費電力化が要請されている。電子機器に用いられる論理回路は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の半導体集積回路により構成されることが多い。
【0003】
近年では、ゲート幅の縮小や酸化膜の薄膜化など、CMOSの製造プロセスの微細化が進んでいる。このような製造プロセスの微細化に伴い、CMОSにおけるリーク電流が大きくなり、これによる消費電力も無視できなくなってきている。
【0004】
これに対する対策として、パワードメイン毎に、論理回路が動作していない期間では電源供給を遮断してリーク電流を低減するパワーゲーティングと呼ばれる手法が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、又は、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6722986号公報
【特許文献2】米国特許第7694251号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】X. Bai et al., "Via-Switch FPGA: 65-nm CMOS Implementation and Evaluation," in IEEE Journal of Solid-State Circuits, vol. 57, no. 7, pp. 2250-2262, July 2022.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図15は、パワードメインの電源ラインにパワーゲーティング用トランジスタを配置した従来の構成の集積回路の概略構成図である。図16は、パワードメインのグランドラインにパワーゲーティング用トランジスタを配置した従来の構成の集積回路の概略構成図である。
【0008】
図15に示されているような従来の半導体装置100の構成では、パワードメイン110、111の電源ラインの各々に、パワーゲーティング用のトランジスタ120、121が接続されている。トランジスタ120、121は、パワードメイン110、111に対する電源供給状態を切り替えるパワースイッチとして機能する。パワードメイン110とパワードメイン111との間には、アイソレーションセル130が挿入されている。
【0009】
また、図16に示すように、パワードメイン110、111のグランドラインの各々に、パワーゲーティング用のトランジスタ120、121が接続されている場合においても、パワードメイン110とパワードメイン111との間には、同様にアイソレーションセル130が挿入されている。
【0010】
図17は、図16に示す従来の構成において、パワードメイン110、111間にアイソレーションセルを挿入しない場合の問題を説明するための図である。
【0011】
図17に示すように、前段のパワードメイン110の電源がオフ状態であり、後段のパワードメイン111の電源がオン状態の場合の場合、パワードメイン110の出力信号OUT0が不定状態となり、後段のパワードメイン111に設けられているCMOSにおいて、貫通電流が発生するおそれがある。また、後段のパワードメイン111に不安定な信号値の出力信号OUT0が伝搬し、パワードメイン111内の回路において誤動作が発生するおそれがある。
【0012】
図18は、図16に示す従来の構成において、パワードメイン110、111間にアイソレーションセル130の一例としてAND回路を挿入した場合の問題を説明するための図である。AND回路130は、入力された2つの信号の論理積演算を行う回路である。
【0013】
図18に示すように、前段のパワードメイン110の電源をオフ状態とすべく、トランジスタ120に入力される制御信号ENG0をグランド電位(すなわち、論理値「0」)とした場合、AND回路130の出力はパワードメイン110の出力信号OUT0の論理値に関わらず「0」となり、後段のパワードメイン111における貫通電流及び誤動作を防止することができる。
【0014】
しかしながら、このようなアイソレーションセル130の使用により、半導体装置100Aにおいて、動作遅延及び消費電力の増加等の問題が生じる。
【0015】
なお、上記の課題は、図15に示すような、パワードメイン110、111の電源ライン側にパワーゲーティング用のトランジスタ120、121を配置した半導体装置100においても同様である。
【0016】
本発明は以上のような課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、パワーゲーティングを行う半導体装置において、貫通電流及び誤動作を防止しつつ、動作遅延及び消費電力の増加の問題を解消した半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の半導体装置は、パワードメインと、P型トランジスタ及びN型トランジスタが組み合わされてなり、外部から入力された制御信号に応じて、前記パワードメインに対して電源電圧が供給される状態と供給されない状態とを切り替えるためのパワーコントローラと、を備え、前記パワーコントローラの出力部は、前記パワードメインの電源ライン又はグランドラインに接続されている。
【0018】
本発明の半導体装置において、前記パワードメインは、P型トランジスタを有し、前記パワーコントローラの出力部は、前記パワードメインのP型トランジスタのボディ端子に接続されていてもよい。
【0019】
また、前記パワードメインは、N型トランジスタを有し、前記パワーコントローラの出力部は、前記パワードメインのN型トランジスタのボディ端子に接続されていてもよい。
【0020】
また、外部から入力された制御信号に応じて、前記パワードメインに対して電源電圧が供給される状態と供給されない状態とを切り替えるパワースイッチをさらに備え、前記パワーコントローラの出力は、前記パワードメインの最終段の部分の電源ライン又はグランドラインに接続されており、前記パワースイッチは、前記パワードメインの前記最終段以外の部分の電源ライン又はグランドラインに接続されていてもよい。
【0021】
また、前記パワーコントローラの出力は、さらに、前記パワードメインの最初段の部分の電源ライン又はグランドラインに接続されていてもよい。
【0022】
また、前記パワードメインとして、第1の電圧で動作するトランジスタにより構成された第1のパワードメインと、前記第1の電圧よりも高い第2の電圧で動作するトランジスタにより構成された第2のパワードメインと、を備え、前記第2のパワードメインの出力部は、前記第1のパワードメインの入力部に接続されていてもよい。
【0023】
また、前記第2のパワードメインは、2つの電極間に印加される電圧の向きに応じて抵抗状態が変化する不揮発性抵抗変化素子と、前記不揮発性抵抗変化素子に対して、抵抗状態を変化させる書き込み動作を行うための書き込み回路と、を備えてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明の半導体装置によれば、パワーゲーティングを行う半導体装置において、貫通電流及び誤動作を防止しつつ、動作遅延及び消費電力の増加の問題を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の第1の実施形態の半導体装置の概略構成を示す図である。
図2図1に示す半導体装置の動作説明のための図である。
図3】本発明の第1の実施形態の変形例の半導体装置の概略構成を示す図である。
図4図3に示す半導体装置の動作説明のための図である。
図5】本発明の第2の実施形態の半導体装置の概略構成を示す図であり、電源タイプのパワーインバータと電源タイプのパワースイッチのハイブリッド方式のパワーゲーティング回路を示す図である。
図6】本発明の第2の実施形態の変形例の半導体装置の概略構成を示す図であり、グランドタイプのパワーインバータと電源タイプのパワースイッチのハイブリッド方式のパワーゲーティング回路を示す図である。
図7】本発明の第2の実施形態の変形例の半導体装置の概略構成を示す図であり、グランドタイプのパワーインバータとグランドタイプのパワースイッチのハイブリッド方式のパワーゲーティング回路を示す図である。
図8】本発明の第2の実施形態の変形例の半導体装置の概略構成を示す図であり、電源タイプのパワーインバータとグランドタイプのパワースイッチのハイブリッド方式のパワーゲーティング回路を示す図である。
図9】本発明の第3の実施形態の半導体装置の概略構成を示す図である。
図10図9に示す半導体装置の動作説明のための図である。
図11】本発明の第3の実施形態の変形例の半導体装置の概略構成を示す図である。
図12図11に示す半導体装置のパワーゲーティングモードについて説明するための図である。
図13図11に示す半導体装置の書き込みモードについて説明するための図である。
図14図11に示す半導体装置のアプリケーションモードについて説明するための図である。
図15】パワードメインの電源ラインにパワーゲーティング用トランジスタを配置した従来の構成の集積回路の概略構成図である。
図16】パワードメインのグランドラインにパワーゲーティング用トランジスタを配置した従来の構成の集積回路の概略構成図である。
図17図16に示す従来の構成において、パワードメイン間にアイソレーションセルを挿入しない場合の問題を説明するための図である。
図18図16に示す従来の構成において、パワードメイン間にアイソレーションセルの一例としてAND回路を挿入した場合の問題を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0027】
(第1の実施形態)
最初に、本発明の第1の実施形態の半導体装置1について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態の半導体装置1の概略構成を示す図である。図2は、上記半導体装置1の動作説明のための図である。
【0028】
本実施形態の半導体装置1は、パワードメインの電源制御にパワーインバータを用いたパワーインバータ方式のパワーゲーティング回路を備えた集積回路である。
【0029】
図1に示すように、本実施形態の半導体装置1は、前段のパワードメイン10及び後段のパワードメイン11の2つのパワードメインと、P型トランジスタ及びN型トランジスタが組み合わされてなり、外部から入力された制御信号に応じて、パワードメイン10、11に対して電源電圧が供給される状態(電源オン状態)と供給されない状態(電源オフ状態)とを切り替えるための2つのパワーインバータ20、21と、を備える。
【0030】
ここで「パワードメイン」とは、半導体装置1において、同時に電源のオン状態とオフ状態とが切り替えられる領域を意味する。
【0031】
パワーインバータ20、21は、一例として、P型トランジスタであるP型MOS-FET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)及びN型トランジスタであるN型MOS-FETが組み合わされてなるCMOSにより構成される。
【0032】
パワーインバータ20、21は、本発明の技術におけるパワーコントローラの一例である。パワーコントローラは、P型トランジスタ及びN型トランジスタが組み合わされてなる回路であり、上記のようなCMOSインバータ構成に限らず、例えば、NORゲート或いはNANDゲートを含むCMOSトランジスタ回路とする等、種々の変更が可能である。
【0033】
パワーインバータ20の出力部20aは、前段のパワードメイン10の電源ラインに接続されている。また、パワーインバータ21の出力部21aは、後段のパワードメイン11の電源ラインに接続されている。ここで、「電源ライン」とは、パワードメイン10及びパワードメイン11において電源に接続される部分を意味する。
【0034】
図2に示すように、パワードメイン10は、一例として、P型MOS-FET30P及びN型MOS-FET30Nが組み合わされてなるCMOS30を有し、パワーインバータ20の出力部20aは、P型MOS-FET30Pのボディ端子に接続されている。
【0035】
同様に、パワードメイン11は、P型MOS-FET31P及びN型MOS-FET31Nが組み合わされてなるCMOS31を有し、パワーインバータ21の出力部21aは、P型MOS-FET31Pのボディ端子に接続されている。
【0036】
次に、半導体装置1の作用について説明する。
【0037】
図2に示すように、パワーインバータ20に入力する制御信号END0の論理値を「1(すなわち、電源電位VDD)」に設定した場合、パワーインバータ20の出力部20aの電位はグランド電位GNDとなり、パワードメイン10の電源がオフ状態となる。
【0038】
このとき、パワーインバータ20の出力部20aと接続されているP型MOS-FET30Pのソース端子及びボディ端子はグランド電位GNDとなり、ボディ端子とPN接合されているドレイン端子もグランド電位GNDとなる。
【0039】
従って、CMOS30の出力信号OUT0は、P型MOS-FET30Pを経由した出力論理値が「0(すなわち、グランド電位GND)」となり、出力信号OUT0の論理値が「0(すなわち、グランド電位GND)」に安定する。
【0040】
これにより、後段のパワードメイン11のCMOS31における貫通電流及び誤動作の発生を防ぐことができる。さらに、パワードメイン10とパワードメイン11との間のアイソレーションセルの配置が不要であるため、アイソレーションセルの配置による動作遅延及び消費電力の増加を無くすことができる。
【0041】
[第1の実施形態の変形例]
なお、上記の半導体装置1では、パワーインバータ20の出力部20a及びパワーインバータ21の出力部21aの各々は、パワードメイン10及びパワードメイン11の電源ラインに接続されているが、パワードメイン10及びパワードメイン11のグランドラインに接続してもよい。以下、そのような態様について説明する。
【0042】
図3は、本発明の第1の実施形態の変形例の半導体装置1Aの概略構成を示す図である。図4は、上記半導体装置1Aの動作説明のための図である。
【0043】
本実施形態の変形例の半導体装置1Aは、上記の半導体装置1と比較して、パワーインバータ20の出力部20a及びパワーインバータ21の出力部21aの各々が、パワードメイン10及びパワードメイン11のグランドラインに接続されている点以外は同じ構成であるため、構成に関する説明は省略する。
【0044】
図3に示すように、パワーインバータ20の出力部20aは、前段のパワードメイン10のグランドラインに接続されている。また、パワーインバータ21の出力部21aは、後段のパワードメイン11のグランドラインに接続されている。ここで、「グランドライン」とは、パワードメイン10及びパワードメイン11においてグランドに接続される部分を意味する。
【0045】
図4に示すように、パワードメイン10は、一例として、P型MOS-FET30P及びN型MOS-FET30Nが組み合わされてなるCMOS30を有し、パワーインバータ20の出力部20aは、N型MOS-FET30Nのボディ端子に接続されている。
【0046】
同様に、パワードメイン11は、P型MOS-FET31P及びN型MOS-FET31Nが組み合わされてなるCMOS31を有し、パワーインバータ21の出力部20aは、N型MOS-FET31Nのボディ端子に接続されている。
【0047】
次に、半導体装置1Aの作用について説明する。
【0048】
図4に示すように、パワーインバータ20に入力する制御信号ENG0の論理値を「0(すなわち、グランド電位)」に設定した場合、パワーインバータ20の出力部20aの電位は電源電位VDDとなり、パワードメイン10の電源がオフ状態となる。
【0049】
このとき、パワーインバータ20の出力部20aと接続されているN型MOS-FET30Nのソース端子及びボディ端子は電源電位VDDとなり、ボディ端子とPN接合されているドレイン端子も電源電位VDDとなる。
【0050】
従って、CMOS30の出力信号OUT0は、P型MOS-FET30Pを経由した出力論理値が「1(すなわち、電源電位VDD)」となり、出力信号OUT0の論理値が「1(すなわち、電源電位VDD)」に安定する。
【0051】
これにより、後段のパワードメイン11のCMOS31における貫通電流及び誤動作の発生を防ぐことができる。さらに、パワードメイン10とパワードメイン11との間のアイソレーションセルの配置が不要であるため、アイソレーションセルの配置による動作遅延及び消費電力の増加を無くすことができる。
【0052】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態の半導体装置2について説明する。図5は、本発明の第2の実施形態の半導体装置2の概略構成を示す図である。
【0053】
本実施形態の半導体装置2は、パワーインバータとパワースイッチとを組み合わせたハイブリッド方式のパワーゲーティング回路を備えた構成である。
【0054】
図5に示すように、本実施形態の半導体装置2は、前段のパワードメイン10及び後段のパワードメイン11の2つのパワードメインと、P型MOS-FET及びN型MOS-FETが組み合わされてなり、外部から入力された制御信号に応じて、パワードメイン10、11に対して電源電圧が供給される状態と供給されない状態とを切り替えるための2つのパワーインバータ20、21と、外部から入力された制御信号に応じて、パワードメイン10、11に対して電源電圧が供給される状態と供給されない状態とを切り替えるパワースイッチ40、41と、を備える。
【0055】
ここで、「パワースイッチ」とは、2つのトランジスタが組み合わされてなるインバータではなく、例えばトランジスタ等の、単一の素子により電源電圧が供給される状態と供給されない状態とを切り替えるものを意味する。本実施形態のパワースイッチ40、41は、一例として、P型MOS-FETにより構成されている。
【0056】
パワーインバータ20の出力部20aは、前段のパワードメイン10の最終段の部分10bの電源ラインに接続されている。また、パワーインバータ21の出力部21aは、後段のパワードメイン11の最終段の部分11bの電源ラインに接続されている。
【0057】
パワースイッチ40は、前段のパワードメイン10の最終段以外の部分10aの電源ラインに接続されている。また、パワースイッチ41は、後段のパワードメイン11の最終段以外の部分11aの電源ラインに接続されている。
【0058】
後段のパワードメイン11のCMOS31における貫通電流及び誤動作の発生を防ぐためには、前段のパワードメイン10の最終段の部分10bがパワーインバータ20により電源制御されていればよく、最終段以外の部分10aの電源制御についてはパワーインバータを用いる必要がない。
【0059】
そのため、最終段以外の部分10aについては、パワーインバータ(本例ではCMOS)よりもサイズが小さいP型MOS-FETにより構成されるパワースイッチ40により電源制御を行うことにより、パワーゲーティングに要する回路領域のサイズを小さくすることができる。
【0060】
[第2の実施形態の変形例]
なお、本実施形態において、パワーインバータ及びパワースイッチは、パワードメインの電源ラインに接続される態様に限らず、パワードメインのグランドラインに接続される態様としてもよい。
【0061】
以下では、電源ラインに接続されるパワーインバータ及びパワースイッチを、電源タイプのパワーインバータ及びパワースイッチと呼称する。また、グランドラインに接続されるパワーインバータ及びパワースイッチを、グランドタイプのパワーインバータ及びパワースイッチと呼称する。
【0062】
例えば、図6に示す半導体装置2Aのように、グランドタイプのパワーインバータ20、21と電源タイプのパワースイッチ40、41とを組み合わせたハイブリッド方式のパワーゲーティング回路としてもよい。
【0063】
また、図7に示す半導体装置2Bのように、グランドタイプのパワーインバータ20、21とグランドタイプのパワースイッチ40、41とを組み合わせたハイブリッド方式のパワーゲーティング回路としてもよい。
【0064】
また、図8に示す半導体装置2Cのように、電源タイプのパワーインバータ20、21とグランドタイプのパワースイッチ40、41とを組み合わせたハイブリッド方式のパワーゲーティング回路としてもよい。
【0065】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態の半導体装置3について説明する。図9は、本発明の第3の実施形態の半導体装置3の概略構成を示す図である。図10は、上記半導体装置3の動作説明のための図である。
【0066】
本実施形態の半導体装置3は、第2の実施形態に示したハイブリッド方式のパワーゲーティング回路を備えた構成において、後段のパワードメインをコア電圧で動作するトランジスタにより構成されたコア電圧パワードメイン11とし、前段のパワードメインをコア電圧よりも高い電圧で動作するトランジスタにより構成された高電圧パワードメイン10とした構成である。
【0067】
高電圧パワードメイン10は、本発明の技術における第2のパワードメインの一例である。また、コア電圧パワードメイン11は、本発明の技術における第1のパワードメインの一例である。
【0068】
なお、高電圧パワードメイン10の動作電圧をVHV、コア電圧パワードメイン11の動作電圧をVDDとした場合、動作電圧VHVは、下記の条件式(1)を満たす範囲で設定される。
VHV≦2×VDD
【0069】
図9及び図10に示すように、本実施形態の半導体装置3は、前段の高電圧パワードメイン10及び後段のコア電圧パワードメイン11の2つのパワードメインと、P型MOS-FET及びN型MOS-FETが組み合わされてなり、外部から入力された制御信号に応じて、高電圧パワードメイン10及びコア電圧パワードメイン11に対して電源電圧が供給される状態と供給されない状態とを切り替えるための2つのパワーインバータ20、21と、外部から入力された制御信号に応じて、高電圧パワードメイン10及びコア電圧パワードメイン11に対して電源電圧が供給される状態と供給されない状態とを切り替えるパワースイッチ40、41と、を備える。
【0070】
パワーインバータ20の出力部20aは、前段の高電圧パワードメイン10の最終段の部分10bの電源ラインに接続されている。また、パワーインバータ21の出力部21aは、後段のコア電圧パワードメイン11の最初段の部分11a及び最終段の部分11cのグランドラインに接続されている。
【0071】
パワースイッチ40は、前段の高電圧パワードメイン10の最終段以外の部分10aの電源ラインに接続されている。また、パワースイッチ41は、後段のパワードメイン11の中間の部分11bのグランドラインに接続されている。
【0072】
高電圧パワードメイン10の出力部10cは、コア電圧パワードメイン11の入力部11dに接続されている。
【0073】
次に、本実施形態の半導体装置3の作用について説明する。
【0074】
前段の高電圧パワードメイン10の電源がオン状態であり、後段のコア電圧パワードメイン11の電源がオフ状態の場合、コア電圧パワードメイン11の最初段の部分11aに含まれるトランジスタのゲート端子に高電圧が印加され、コア電圧パワードメイン11の回路が故障するおそれがある。
【0075】
本実施形態の半導体装置3においては、図10に示すように、パワーインバータ21に入力する制御信号ENG1の論理値を「0(すなわち、グランド電位GND)」に設定した場合、パワーインバータ21の出力部21aの電位はVDDとなり、コア電圧パワードメイン11の電源がオフ状態となる。
【0076】
このとき、パワーインバータ21の出力部21aと接続されているN型MOS-FET31Nのソース端子及びボディ端子の電位はVDDとなり、ボディ端子とPN接合されているドレイン端子の電位もVDDとなる。
【0077】
そのため、コア電圧パワードメイン11の最初段の部分11aに含まれるP型MOS-FET31P及びN型MOS-FET31Nのゲート端子に、高電圧パワードメイン10の出力部10cから高電圧VHV(ただし、VHV≦2×VDD)が印加された場合でも、P型MOS-FET31P及びN型MOS-FET31Nにおけるゲート端子とソース端子との間の電位差、ゲート端子とボディ端子との間の電位差、及び、ゲート端子とドレイン端子との間の電位差が、VDDよりも低くなるため、コア電圧パワードメイン11に含まれるトランジスタの故障を防ぐことができる。
【0078】
また、高電圧パワードメイン10の最終段の部分10bの電源制御をパワーインバータ20により行っているため、第1の実施形態で説明の通り、高電圧パワードメイン10の電源がオフ状態の場合の出力信号が「0(すなわち、グランド電位)」に安定する。
【0079】
そのため、前段の高電圧パワードメイン10の電源がオフ状態であり、後段のコア電圧パワードメイン11の電源がオン状態の場合に、後段のコア電圧パワードメイン11のCMOS31における貫通電流及び誤動作の発生を防ぐことができる。さらに、高電圧パワードメイン10とのコア電圧パワードメイン11との間のアイソレーションセルの配置が不要であるため、アイソレーションセルの配置による動作遅延及び消費電力の増加を無くすことができる。
【0080】
[第3の実施形態の変形例]
図11は、本発明の第3の実施形態の変形例の半導体装置3Aの概略構成を示す図である。
【0081】
本実施形態の半導体装置3において、高電圧パワードメイン10は、2つの電極間に印加される電圧の向きに応じて抵抗状態が変化する不揮発性抵抗変化素子と、不揮発性抵抗変化素子に対して、抵抗状態を変化させる書き込み動作を行うための書き込み回路と、を備えた構成としてもよい。以下、不揮発性抵抗変化素子と書き込み回路とを備えた半導体装置3Aについて説明する。
【0082】
図11に示すように、半導体装置3Aにおける高電圧パワードメイン10は、行方向及び列方向に配列された配線の交点に配置された不揮発性抵抗変化素子51、及び、任意の不揮発性抵抗変化素子51に対して接続するためのアドレス用トランジスタ52を備えたクロスバー50と、不揮発性抵抗変化素子51に対して、抵抗状態を変化させる書き込み動作を行うための書き込み回路60と、を備える。この高電圧パワードメイン10は、FPGA(Field Programmable Gate Array)ルーティングブロックとも呼ばれ、データ信号のルーティング機能を有する。
【0083】
高電圧パワードメイン10は、内部にCMOSを使用していないため、パワーインバータによるパワーゲーティングの必要がない。そのため、高電圧パワードメイン10は、電源ラインに接続されたパワースイッチ40のみにより電源制御される。
【0084】
コア電圧パワードメイン11は、最初段の部分11aが入力バッファにより構成され、中間の部分11bがFPGA論理ブロックにより構成され、最終段の部分11cが出力バッファにより構成される。非特許文献1に示されるように、中間の部分11bのFPGA論理ブロックは、ルックアップテーブル及びD-フリップフロップ等から構成され、任意の論理関数及び順序回路の機能を有する。
【0085】
コア電圧パワードメイン11の最初段の部分11a及び最終段の部分11cのバッファは、グランドラインに接続されたパワーインバータ21により電源制御される。また、コア電圧パワードメイン11の中間の部分11bのFPGA論理ブロックは、グランドラインに接続されたパワースイッチ41により電源制御される。
【0086】
次に、本実施形態の変形例の半導体装置3Aの作用について説明する。
図12は、半導体装置3Aのパワーゲーティングモードについて説明するための図である。ここで、パワーゲーティングモードとは、高電圧パワードメイン10及びコア電圧パワードメイン11の電源をオフ状態とするモードを意味する。
【0087】
図12に示すように、高電圧パワードメイン10の電源ラインに接続されたパワースイッチ40に入力する制御信号ENH0の論理値を「1(すなわち、電源電位VHV)」に設定することにより、パワースイッチ40の高電圧パワードメイン10との接続部がハイ・インピーダンス状態となる。その結果、高電圧パワードメイン10の電源がオフ状態となる。
【0088】
また、コア電圧パワードメイン11のグランドラインに接続されたパワーインバータ21及びパワースイッチ41に入力する制御信号ENG1の論理値を「0(すなわち、グランド電位GND)」に設定することにより、パワーインバータ21の出力部21aの電位が電源電位VDDとなり、パワースイッチ41のコア電圧パワードメイン11との接続部がハイ・インピーダンス状態となる。その結果、コア電圧パワードメイン11の電源がオフ状態となる。
【0089】
図13は、半導体装置3Aの書き込みモードについて説明するための図である。ここで、書き込みモードとは、高電圧パワードメイン10のFPGAルーティングブロックを構成する不揮発性抵抗変化素子51に対して、抵抗状態を変化させる書き込み動作を行うモードを意味する。
【0090】
図13に示すように、書き込みモードにおいて、例えば、クロスバーの右下の不揮発性抵抗変化素子51aに対してオン状態(低抵抗状態)とする書き込みを行う場合、制御信号ENH0の論理値を「0(すなわち、グランド電位GND)」に設定して、高電圧パワードメイン10の電源をオン状態とする。
【0091】
また、書き込み回路60のX軸入力部を書き込み用の高電圧電位VHV、Y軸入力部をグランド電位GNDに設定して、右下の不揮発性抵抗変化素子51aに対応するアドレス用トランジスタ52(図13中のX1及びY1)をオンに設定すると、不揮発性抵抗変化素子51aの電位がVHV、他端の電位がGNDとなり、不揮発性抵抗変化素子51aに対してオン状態とする書き込みが行われる。
【0092】
このとき、電源電位VHVは、コア電圧パワードメイン11の最初段のバッファにも印加されるが、上記で説明の通り、コア電圧パワードメイン11の最初段の部分11aをパワーインバータ21により電源制御することにより、コア電圧パワードメイン11の電源がオフ状態の場合でも、後段のコア電圧パワードメイン11のCMOS31における貫通電流及び誤動作の発生を防ぐことができる。さらに、高電圧パワードメイン10とのコア電圧パワードメイン11との間のアイソレーションセルの配置が不要であるため、アイソレーションセルの配置による動作遅延及び消費電力の増加を無くすことができる。
【0093】
図14は、半導体装置3AのFPGAにおけるアプリケーションモードについて説明するための図である。ここで、アプリケーションモードとは、コア電圧パワードメイン11のFPGA論理ブロックにおいて、高電圧パワードメイン10のFPGAルーティングブロックから取得した信号に対する演算を行うモードを意味する。
【0094】
図14に示すように、アプリケーションモードでは、高電圧パワードメイン10の電源ラインに接続されたパワースイッチ40に入力する制御信号ENH0の論理値を「1(すなわち、電源電位VHV)」に設定して、高電圧パワードメイン10の電源をオフ状態とする。
【0095】
また、コア電圧パワードメイン11のグランドラインに接続されたパワーインバータ21及びパワースイッチ41に入力する制御信号ENG1の論理値を「1(すなわち、電源電位VDD)」に設定して、コア電圧パワードメイン11の電源をオン状態とする。
【0096】
この状態で、論理値「1(すなわち、電源電位VDD)」又は論理値「0(すなわち、グランド電位GND)」のデータ信号が、オン状態の不揮発性抵抗変化素子(例えば、51a)を経由し、コア電圧パワードメイン11の最初段の部分11aの入力バッファに入力される。
【0097】
コア電圧パワードメイン11に入力されたデータ信号は、コア電圧パワードメイン11の中間の部分11bのFPGA論理ブロックにおける演算に用いられる。
【0098】
以上に示した記載内容および図示内容は、本開示の技術に係る部分についての詳細な説明であり、本開示の技術の一例に過ぎない。例えば、上記の構成、機能、作用、および効果に関する説明は、本開示の技術に係る部分の構成、機能、作用、および効果の一例に関する説明である。よって、本開示の技術の主旨を逸脱しない範囲内において、以上に示した記載内容および図示内容に対して、不要な部分を削除したり、新たな要素を追加したり、置き換えたりしてもよいことは言うまでもない。また、錯綜を回避し、本開示の技術に係る部分の理解を容易にするために、以上に示した記載内容および図示内容では、本開示の技術の実施を可能にする上で特に説明を要しない技術常識等に関する説明は省略されている。
【符号の説明】
【0099】
1、1A、2、2A、2B、2C、3、3A 半導体装置
10 パワードメイン/高電圧パワードメイン
11 パワードメイン/コア電圧パワードメイン
20 パワーインバータ
20a 出力部
21 パワーインバータ
21a 出力部
40 パワースイッチ
41 パワースイッチ
50 クロスバー
51、51a 不揮発性抵抗変化素子
52 アドレス用トランジスタ
60 書き込み回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
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