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特開2024-93772浮かべたままでの浚渫作業を可能にする太陽光発電装置の水上設置構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093772
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】浮かべたままでの浚渫作業を可能にする太陽光発電装置の水上設置構造
(51)【国際特許分類】
   B63B 35/00 20200101AFI20240702BHJP
   B63B 35/38 20060101ALI20240702BHJP
   H02S 10/40 20140101ALI20240702BHJP
【FI】
B63B35/00 T
B63B35/38 B
H02S10/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210348
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】513015430
【氏名又は名称】株式会社環境資源開発コンサルタント
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】金城 義栄
【テーマコード(参考)】
5F151
5F251
【Fターム(参考)】
5F151JA13
5F251JA13
(57)【要約】
【課題】発電装置の設置水面に対する大きさを小さくせずとも、発電装置を設置水面に浮かべたまま浚渫作業ができるようにする。
【解決手段】水上太陽光発電装置11を水面に浮かべて設置する太陽光発電装置の水上設置構造において、水上太陽光発電装置11を同一平面上で連結された複数の発電フロート12で構成し、水上太陽光発電装置11の大きさを、設置水面14の面積よりも小さく設置水面の面積の4分の1以上とし、その平面視形状を、水上太陽光発電装置11を設置水面上であらゆる方向に移動しても水底に水上太陽光発電装置11で覆われる陰領域15ができるものとする。そして水上太陽光発電装置11に、接続可能に2以上の分割体に分離させる分離ライン16を形成し、分離ライン16で分離される分割体11aの平面視形状を、それぞれ設置水面14上で移動させたときに陰領域15の上方から退避させられるように形成する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水上太陽光発電装置を水面に浮かべて設置する太陽光発電装置の水上設置構造であって、
水上太陽光発電装置が同一平面上で連結された複数の発電フロートで構成され、
水上太陽光発電装置が、設置される設置水面の面積よりも小さく設置水面の面積の4分の1以上の大きさであるとともに、水上太陽光発電装置を設置水面上であらゆる方向に移動しても水底に水上太陽光発電装置で覆われる陰領域ができる平面視形状であり、
水上太陽光発電装置には、接続可能に2以上の分割体に分離させる分離ラインが形成され、
前記分割体が、前記分割体をそれぞれ設置水面上で移動させたときに前記陰領域の上方から退避させられる平面視形状に形成された
太陽光発電装置の水上設置構造。
【請求項2】
前記分離ラインが前記発電フロート同士の間に形成される
請求項1に記載の太陽光発電装置の水上設置構造。
【請求項3】
前記発電フロート同士を連結する連結装置に分離手段が設けられた
請求項1または請求項2に記載の太陽光発電装置の水上設置構造。
【請求項4】
前記分離ラインが、前記陰領域の上方に対応する部分に形成された
請求項1または請求項2に記載の太陽光発電装置の水上設置構造。
【請求項5】
水上太陽光発電装置を設置水面上で2以上の分割体に分離したのち、
上方に前記分割体がない部分での浚渫作業と前記分割体の移動を繰り返して、水上太陽光発電装置を設置水面上であらゆる方向に移動しても水底にできる水上太陽光発電装置で覆われた陰領域を含めた全体の浚渫作業をおこなう
水上太陽光発電装置の設置域の浚渫方法。
【請求項6】
水上太陽光発電装置を設置水面上で移動して浚渫する周辺部浚渫工程と、
水上太陽光発電装置を設置水面上で2以上の分割体に分離してそれぞれ移動し、設置水面上で水上太陽光発電装置をあらゆる方向に移動しても水底にできる水上太陽光発電装置で覆われた陰領域の上方から前記分割体を退避させて浚渫する中央部浚渫工程を分けておこなう
水上太陽光発電装置の設置域の浚渫方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえばため池やダム湖などのような貯水池に設置される水上太陽光発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ため池やダム湖では、貯水量や水質の維持のために水底の土砂(堆砂)を除去する浚渫作業が不可欠である。
【0003】
水上太陽光発電装置(以下、この項で「発電装置」という。)は水面に浮かべて設置するものであるので、あらかじめ浚渫作業を考慮して設置すれば問題は生じない。つまり、設置される設置水面の大きさに対して発電装置の大きさ(広さ、面積)を小さくして、発電装置を移動させることで水底のどの部位でも上方に発電装置がない状態をえられるようにすれば、発電装置を除去せずとも移動させながら浚渫作業ができる。
【0004】
しかし、そのようにできる発電装置の大きさは、発電装置と設置水面の平面視形状などにもよるが、おおむね設置水面の面積の4分の1以下である。装置の大きさを小さくすれば発電量も小さくなるので、発電量を大きくしたい場合には、設置面積に対して浚渫作業を考慮することなく発電装置の大きさを大きくしたい場合がある。
【0005】
浚渫作業を考慮した水上発電装置として、下記特許文献1に開示のものがある。
【0006】
この水上発電装置は、複数の浮体の上にそれぞれ太陽電池モジュールを回動自在に設け、それら太陽電池モジュールの端部同士を回動自在に連結した構造である。この水上発電装置では、浚渫作業に際して、浮体間に位置する太陽電池モジュール同士の角度を小さくして浮体同士を近づける。これによって太陽電池モジュールの設置面積を縮小して水面をあけるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4845544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1の水上発電装置は、太陽電池モジュールの設置面積の縮小に際して浮体同士を近づける構造であるので、浮体は小さいものでなければならない。このため、水上での安定性が悪く波風の影響を受けやすい。
【0009】
この発明は、発電装置の浮体を小さくせずに、また発電装置の設置水面に対する大きさを小さくせずに構成できるうえに、発電装置を設置水面から除去せずとも浚渫作業ができるようにすることを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そのための手段は、水上太陽光発電装置を水面に浮かべて設置する太陽光発電装置の水上設置構造であって、水上太陽光発電装置が同一平面上で連結された複数の発電フロートで構成され、水上太陽光発電装置が、設置される設置水面の面積よりも小さく設置水面の面積の4分の1以上の大きさであるとともに、水上太陽光発電装置を設置水面上であらゆる方向に移動しても水底に水上太陽光発電装置で覆われる陰領域ができる平面視形状であり、水上太陽光発電装置には、接続可能に2以上の分割体に分離させる分離ラインが形成され、前記分割体が、前記分割体をそれぞれ設置水面上で移動させたときに前記陰領域の上方から退避させられる平面視形状に形成された太陽光発電装置の水上設置構造である。
【0011】
この構成では、設置水面の面積の4分の1以上の広さを有する水上太陽光発電装置による発電がなされる。なお、この発明において水上太陽光発電装置の大きさは、平面視輪郭形状に基づく大きさをいい、内側部分に発電フロートのない部分があっても、その部分を含めて水上太陽光発電装置の大きさである。
【0012】
浚渫作業に際しては、まず水上太陽光発電装置を設置水面上で2以上の分割体に分離する。そののち、上方に分割体がない部分での浚渫作業と分割体の移動を繰り返して、水上太陽光発電装置を設置水面上であらゆる方向に移動しても水底にできる水上太陽光発電装置で覆われた陰領域を含めた全体の浚渫作業をおこなう。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、水上太陽光発電装置の大きさを設置水面の面積の4分の1以上にできるので、比較的小さな貯水池でも発電量を大きくすることができる。しかも従来の水上発電装置とは異なり浮体を小さくする必要がないので、安定した耐久性のよい水上太陽光発電装置を設置できる。
【0014】
また水上太陽光発電装置は分離ラインを有しているので、浚渫作業では水上太陽光発電装置を分離ラインで複数の分割体に分けて移動させることで、陰領域の浚渫作業もおこなえる。このため、水上太陽光発電装置を撤去する必要がないので作業性がよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】太陽光発電装置の水上設置構造の平面図。
図2】水上設置構造の作用を示す平面図。
図3】水上太陽光発電装置を構成する発電フロートの斜視図。
図4】発電フロート間の連結装置を示す平面図。
図5】一つの発電フロートにおける連結装置を示す平面図。
図6図4のA部分の拡大図。
図7図6の側面図。
図8図4のB部分の拡大図。
図9図8の側面図。
図10】設置水面に対する発電装置の大きさを説明する説明図。
図11】陰領域を説明する説明図。
図12】設置水面に対する発電装置の大きさと分離ラインの説明図。
図13】設置水面に対する発電装置の大きさと分離ラインの説明図。
図14】連結装置に設けられる分離手段を示す平面図。
図15】分離ラインにおける連結装置の平面図。
図16】分離ラインにおける連結装置の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
【0017】
図1に、太陽光発電装置の水上設置構造の概略を、図2にその作用を示す。
【0018】
水上に設置される太陽光発電装置、すなわち水上太陽光発電装置11(以下、「発電装置」という。)は、図3に示した発電フロート12で構成されている。発電装置11を構成する発電フロート12は複数設けられる。これらはすべて同一構造であり、同一平面上でたてよこに連結される。
【0019】
まず、発電フロート12について簡単に説明し、つぎに水上設置構造の本質的な部分について説明することにする。
【0020】
発電フロート12は上面に太陽電池パネル21を有し水面に浮くものである。方形板状のフロート本体22と、このフロート本体22の上面に固定されて太陽電池パネル21を支持するパネル架台23を有している。
【0021】
フロート本体22は、複数枚の発泡樹脂板24をその端面同士を突き合わせて正方形に組み合わせるとともに、その上面に補助プレート25と保護板26を固定し、さらに側面カバー27とコーナ―カバー28を縁に取り付けて構成される。
【0022】
補助プレート25は、接合する複数の発泡樹脂板24同士の結合一体化をはかることに加えて、パネル架台23等の固定に資するものであって、金属製である。補助プレート25の長さはフロート本体22の一辺の長さに対応しており、一定幅の中空板状であって、その上面には幅方向に延びる複数の長穴25a(図4図6参照)が形成されている。補助プレート25の敷設位置は、太陽電池パネル21を3列設置できるように、フロート本体22の両側縁とこれらの間の2カ所の合計4カ所としている。
【0023】
保護板26は、たとえばケイ酸カルシウム板のような耐光性有する材料で細幅板状に形成されている。保護板26の敷設位置は、発泡樹脂板24の上面全体であってもよいが、太陽電池パネル21を設置したときに太陽光にさらされる部分のみで足りる。
【0024】
側面カバー27とコーナ―カバー28は、耐候性を有するアルミニウム合金製であり、フロート本体22の上面から下面までの高さに嵌合対応する断面コ字状である。側面カバー27はフロート本体22の直線部に、コーナ―カバー28は角部に取り付けられる。
【0025】
パネル架台23は、補助プレート25と直交する方向に延ばして配設される2本一組の長尺の架台ベース29と、架台ベース29上に立設される前脚30及び後脚(図示せず)と、これらの上で太陽電池パネル21を受ける受け部材(図示せず)で構成される。
【0026】
架台ベース29はフロート本体22の一辺の長さに略対応する長さであり、図示例では3組、合計6本が配設されている。太陽電池パネル21は前述のように3列設置されるので、前脚30、後脚及び受け部材は一組の架台ベース29に3組が等間隔に配設される。前脚30は後脚よりも短く形成されており、受け部材は前脚30側が下がるように傾斜している。
【0027】
このような構成の発電フロート12の連結装置13をつぎに説明する。
【0028】
図4は、縦横に升目状に配置された4個の発電フロート12における隙間部分の一部を示す平面図、図5は1個の発電フロート12の連結部分を示す平面図である。これらの図では太陽電池パネル21等の図示を省略して連結装置13に関する部分を中心に描いている。
【0029】
これらの図に示すように連結装置13は、発電フロート12の各辺に2カ所ずつ設けられ、補助プレート25または架台ベース29に固定されている。
【0030】
補助プレート25に固定される連結装置13(図4のA部分)は、図6図7に示したように連結棒31と固定金具32で構成されている。連結棒31は一定長さで両端部に一方向に屈曲する回転端部31aを有するものであり、棒本体33と回転端部材34からなる。棒本体33は金属製で剛性を有し、両端部に枢着部33aが形成されている。枢着部33aは中心に貫通穴を有する環状である。棒本体33は貫通穴の中心線の方向が棒本体33の長手方向と直交するとともに、発電フロート12の上面と平行になる姿勢で使用される。回転端部材34は、金属製で平面視U字型に形成されており、中間部が固定金具32に保持される一方、両端部が棒本体33の枢着部33aに対して留め具33bで枢着されている。
【0031】
固定金具32は、連結棒31の回転端部31aの屈曲方向を発電フロート12の厚み方向にして回転端部31aを保持するとともに、発電フロート12の上面に固定されるものである。固定金具32はアングル材で構成され、発電フロート12の上面の補助プレート25に固定される固定片32aと、連結棒31の回転端部31aを回転可能に保持する立設片32bを有している。立設片32bにはたてに長い長穴32cが形成されて、この長穴32cに回転端部31aが保持される。
【0032】
このような連結装置13で連結された発電フロート12は、発電フロート12同士が離れようとしても連結棒31が引っ張り力に抗して離間を阻止し、逆に発電フロート12同士が接近しようとしても連結棒31が突っ張って、一定以上の接近を阻止する。連結棒31の棒本体33は剛体であるので、発電フロート12同士の間隔は一定に保たれることになる。一方で、連結棒31の両端の回転端部31aが回転することと、回転端部31aが固定金具32の長穴32cに保持されていることによって、図7に仮想線で示したように発電フロート12同士は連結されていても上下方向には比較的自由に変位する。
【0033】
架台ベース29に固定される連結装置13(図4のB部分)は、図8図9に示したように連結棒31と、固定金具としての架台ベース29の端部で構成されている。
【0034】
連結棒31の構成は、図6図7を用いて説明した前述の連結棒31と同じであるので、詳しい説明は省略する。
【0035】
固定金具については、図6図7で示したように別途に設けるのではなく、架台ベース29の長手方向の端部に図9に示したように連結棒31の回転端部31aを保持する長穴29aを形成して構成する。
【0036】
このような連結装置13による連結によって、複数の発電フロート12は互いの間隔がほとんど変化することがない一方で、波に対しては柔軟に上下方向に変位する。このため、発電装置11は波によってかかる負荷を柔軟に吸収できるうえに、複数の発電フロート12は一体性の高い状態となる。
【0037】
複数の発電フロート12は、前述のように縦横に並べた状態に連結される。連結される発電フロート12の数や配置形態は、発電装置11が浮かべられる設置水面14の形や日当たり状況、東西南北の方向性、所望の発電量等に応じて、例えば図1に示したように、平面視方形状に限らない適宜の形状になされる。たとえば発電装置11の平面視形状は、長方形や正方形に類似した形状であるほか、扇形や台形、凹多角形、円形など様々でありえる。
【0038】
前述のように連結装置13が発電フロート12を高い一体性をもって連結するので、発電装置11はどのような配置形状であっても堅固な連結状態を有することになる。
【0039】
この水上設置構造では、設置水面14の面積よりも小さく設置水面14の面積の4分の1以上の大きさで、かつ発電装置11を設置水面14上であらゆる方向に移動しても水底に発電装置11で覆われる陰領域15ができる平面視形状に発電装置11が形成される。つまり、発電量を大きくするため発電装置11の面積を大きくすることができる。また発電装置11には、接続可能に2以上の分割体11aに分離させる分離ライン16が形成される。このとき、分離ライン16で別れる分割体11aの形状は、分割体11aをそれぞれ設置水面14上で移動させたときに水底における陰領域15の上方から退避させられる平面視形状に形成される。
【0040】
このことを図1の例で説明する。設置水面14は内外に出入りする大小の部分が複数あるおおよそ平面視長円形、あるいは雲形であり、発電装置11は設置水面14に収まる大きさであるとともに、設置水面14の面積の4分の1以上の大きさである。図中、仮想線Xは、設置水面14を4分の1にした図形である。この図に示すように発電装置11の大きさは設置水面14の面積の4分の1よりも大きい。
【0041】
ここで、発電装置11の大きさを設置水面14の面積よりも小さくその4分の1以上とすることについて説明する。
【0042】
発電装置11は設置水面14に浮かべるものであるので、発電装置11の大きさが設置水面14の面積よりも小さければ、移動させることで水底の上方をあけることができる。しかし、発電装置11の大きさが設置水面14の面積の4分の1以上となると、発電装置11と設置水面14の形にもよるが、陰領域15が水底にできる蓋然性が高くなる。図10は、代表的な図形を用いてそれを模式的に示す図である。図10の(a)~(f)のいずれも、実線で囲まれた部分が設置水面14を示し、仮想線Xで示した部分が設置水面14の面積の4分の1の範囲を示している。仮想線Xで囲まれた部分は設置水面14の形状の相似形としている。(a)の設置水面14は縦長長方形であり、(b)は三角形、(c)は平行四辺形、(d)は円形、(e)は長円形、(f)は台形である。いずれの場合も、仮想線Xの部分を縦横に移動させれば、設置水面14のどこかをあけることができるので、形状にもよるが、おおむね設置水面14の面積の4分の1が、陰領域15が発生するか否かの境界であることがわかる。
【0043】
図1に例示の設置水面14と発電装置11の場合、発電装置11を移動させた状態を仮想線であらわした図11に示したように、設置水面14の中央部分に陰領域15ができることになる。陰領域15はクロスハッチングであらわしている。図11中、実線で示す発電装置11は設置位置にあるものである。
【0044】
発電装置11に形成される分離ライン16は、陰領域15をなくせる形状の複数の分割体11aが得られるように形成される。これは、分割体11aをそれぞれ設置水面14上で移動させたときに陰領域15の上方から退避させられる平面視形状であるということである。この条件を満たすとき、すべての分割体11aは単体で考えたときに水底に陰領域15を生じさせない大きさであり形状である。分離ライン16は複数本であってもよく、巨視的にみて直線でなく曲がっていてもよい。
【0045】
図1に例示の分離ライン16は、発電装置11の長手方向の中間部に延びる1本の直線で構成されている。具体的には、図1に示した設置位置での長手方向の中間部であって陰領域15と重なる位置に、分離ライン16は形成されている。
【0046】
このような分離ライン16を形成することで、発電装置11は平面視横長形状であるものがおおよそ正方形に近い形状の2つの分割体11aに分離されることになる。これら分割体11aは、たとえば図2に示したように設置水面14上で互い離れる方向に移動させると、陰領域15から退避して、水底の陰領域15の上方をあけられる形状である。
【0047】
分割体11aの大きさと形状について付言すると、大きさについては設置水面14の面積の4分の1より小さいことが必要であって、形状については縦横の長さの違いが小さいほうが好ましい。
【0048】
このことを模式的に示すと、図12のとおりである。図12の(a)は設置水面14と、その中央に浮かべた発電装置11の平面視状態を示す。設置水面14は縦長長方形であり、発電装置11はその相似形で同じく縦長長方形である。発電装置11の内側に描かれた縦長長方形を描く仮想線Xは、設置水面14の面積の4分の1の大きさを示している。このように、発電装置11の大きさは設置水面14の面積の4分の1よりも大きい。また、一点鎖線は分離ライン16である。分離ライン16は1本であり、発電装置11の長手方向の中間位置で短手方向に一直線に延びている。長手方向に延びるように形成したり、対角線上に延びるように形成したり、2本以上の分離ラインを形成したりすることもできるが、分離ライン16の長さは短いほうが、また本数は少ないほうが分離接続の作業性の点で好ましい。分離ライン16で分離される2個の分割体11aは、図12の(b)に示したように、ともに同形同大であり、その大きさは設置水面14の面積の4分の1よりも小さく、形状は正方形に近い四角形である。
【0049】
図13は発電装置11の内側部分に発電フロート12のない空間部17を有する例を示している。前述のように発電装置11の大きさとは平面視輪郭形状に基づく大きさをいい、水底に光を届ける空間部17も発電装置11の一部である。
【0050】
図13の(a)に示したように発電装置11は、中央部に四角い空間部17を有している。設置水面14と発電装置11の大きさや形状は図12に示したものと同じである。
【0051】
この場合の分離ライン16は短手方向に延びるものであり、空間部17の対角から長辺に向けて短辺と平行に延びるように形成されている。
【0052】
図13の(b)に示したように、この例における分離ライン16で分離される2個の分割体11aは、ともに同形同大であり、その大きさは設置水面14の面積の4分の1よりも小さい。またその形状は、凹部または凸部があるものの巨視的にみて正方形に近いもの、あるいは縦横比が1:1に近いものと言いえる。
【0053】
発電装置11における分離ライン16は発電フロート12同士の間に形成される。このようにすれば発電フロート12を分離できるように改変しなくて済む。
【0054】
そして発電フロート12同士を分離するための分離手段35は、連結装置13に設けることができる。
【0055】
図14はそのための一例を示す連結棒31の分解状態の平面図である。すなわち、連結棒31を長手方向において2分割して、それぞれの先端部に雄ねじ35a,35bを形成し、一方の雄ねじ35aには長ナット35cが備えられている。
【0056】
この構成では、一方の雄ねじ35aに螺合された長ナット35cを、突き合わせた他方の雄ねじ35bに螺合すれば連結できる。分離する際には長ナット35cを回転して一方の雄ねじ35aに戻す。
【0057】
図15は、図4のA部分に相当する部分に形成された分離ライン16を示す平面図であり、図16図4のB部分に相当する部分に形成された分離ライン16を示す平面図である。分離ライン16が形成される部分にある連結装置13の連結棒31は、図14に示した分離手段35を有する連結棒31で構成されている。
【0058】
分離手段35はこのように構成するほか、図示を省略するが、連結棒31の回転端部31aと固定金具32又は架台ベース29との間に構成することもできる。また、連結装置13とは別体の分離手段を備えることもできる。
【0059】
以上のように構成された発電装置11の水上設置構造を有する貯水池では、つぎのようにして浚渫作業が行われる。
【0060】
すなわち、図2に示したように発電装置11を設置水面14上で2以上の分割体11aに分離したのち、上方に分割体11aがない部分での浚渫作業と分割体11aの移動を繰り返して水底における陰領域15を含めた全体の浚渫作業をおこなう。
【0061】
このように、水底に陰領域15があっても発電装置11を設置水面14から除去することなく必要な浚渫作業がおこなえる。このため、発電装置11の設置に際して浚渫作業を考慮して発電装置11の大きさを小さくとどめたりする必要はなく、発電量を確保できる。
【0062】
しかも発電装置11は、発電装置を小さく変形可能に構成して水面をあけるようにした従来のものとは異なり、フロートを小さくする必要はなく、安定した状態での水面への設置が可能である。そのうえ、太陽電池パネル21はフロート本体22の上に固定される構造であるので、太陽電池パネルを介してフロートを連結するような構成の従来のものとは異なり、太陽電池パネル21に負荷がかかる構成でもない。このため発電機能を良好に維持できる。
【0063】
また分離ライン16は陰領域15の上方に対応する部分に形成しているので、分離ライン16の数、また分割体11aの数を少なく抑えることができる。
【0064】
浚渫作業は周辺部浚渫工程と中央部浚渫工程の2つに分けておこなうこともできる。周辺部浚渫工程は、発電装置11を設置水面14上で移動して浚渫するものである。つまり図1に示したような発電装置11の係留を解いて設置水面14上で適宜移動し、浚渫装置を搭載した作業台船や浚渫船を用いて発電装置11が上方にない水底での浚渫作業をおこなう。
【0065】
中央部浚渫工程は、発電装置11を設置水面14上で2以上の分割体11aに分離してそれぞれ移動して、水底における陰領域15の上方から分割体11aを退避させて浚渫するものである。つまり、図2に示したように分離ライン16において発電装置11を複数の分割体11aに分離して、それぞれ移動して、周辺部浚渫工程では浚渫できない陰領域15の浚渫を主におこなう。中央部浚渫工程は周辺部浚渫工程のあとでおこなうとよい。
【0066】
このように2つの工程に分けておこなうと、2以上の分割体11aをそれぞれ移動させる作業負担を低減できる。
【符号の説明】
【0067】
11…水上太陽光発電装置
11a…分割体
12…発電フロート
13…連結装置
14…設置水面
15…陰領域
16…分離ライン
35…分離手段
図1
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