(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093779
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】物品搬送装置
(51)【国際特許分類】
B65G 54/02 20060101AFI20240702BHJP
B65G 45/02 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
B65G54/02
B65G45/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210359
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000141886
【氏名又は名称】株式会社京都製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南 陽太
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 祥之
(72)【発明者】
【氏名】野村 祐裕
【テーマコード(参考)】
3F021
【Fターム(参考)】
3F021AA01
3F021BA02
3F021CA06
3F021DA08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】作業者の利便性を高めるとともに、長期間にわたって安定して物品を搬送できる物品搬送装置を提供する
【解決手段】物品搬送装置100は、溝部134を有するレールを有する搬送部と、溝部134に嵌った状態で回転移動可能なローラーを有する搬送シャトルと、溝部134とローラーとの間に潤滑剤を付与する潤滑剤付与機構9と、を有する。予め決められたタイミング毎に、搬送部で搬送される物品が無い状態を発生させるとともに、この状態のときに潤滑剤付与機構9が、溝部134又はローラーの一方に潤滑剤を付与する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外面に物品の搬送方向に沿って延びる溝部を有するレールを有する搬送部と、
前記溝部に嵌った状態で回転移動可能なローラーを有し前記物品を保持して前記搬送方向に移動可能な複数の搬送シャトルと、
前記搬送シャトルを前記搬送部に沿って移動させるリニア搬送機構と、
前記溝部と前記ローラーとの間に潤滑剤を付与する潤滑剤付与機構と、を有し、
予め決められたタイミング毎に、前記搬送部で搬送される物品が無い潤滑剤付与状態が発生され、
前記潤滑剤付与状態のときに前記潤滑剤付与機構が、前記溝部又は前記ローラーの一方に前記潤滑剤を付与する物品搬送装置。
【請求項2】
前記移動機構は、前記ローラーに前記潤滑剤が付与される前記搬送シャトルの前記物品を搬送した回数が所定回数に到達する毎に前記潤滑剤を付与する請求項1に記載の物品搬送装置。
【請求項3】
前記リニア機構は、予め決められた位置を通過した前記搬送シャトルの数が一定数に到達するごとに前記潤滑剤を付与する請求項1に記載の物品搬送装置。
【請求項4】
前記潤滑剤付与機構は、
前記潤滑剤を保持するとともに前記レールの所定の位置と対向して配置される潤滑剤保持部と、
前記潤滑剤保持部に前記潤滑剤を供給する潤滑剤供給部と、
前記潤滑剤保持部を前記ローラーと干渉しない退避位置と、前記ローラーの外周面又は前記溝部に接触して前記潤滑剤を付与する付与位置との間で往復させる移動機構とを有し、
前記移動機構は、前記潤滑剤保持部を前記退避位置から前記付与位置に移動させ、前記潤滑剤の付与が終了した後、前記付与位置から前記退避位置に移動させる付与動作を実行する請求項1から請求項3のいずれかに記載の物品搬送装置。
【請求項5】
前記付与位置は、前記潤滑剤保持部を前記ローラーの外周面に接触させる位置であり、
前記潤滑剤保持部の前記ローラーが接触する部分の搬送方向の長さは、前記ローラーの外周の長さよりも長い請求項4記載の物品搬送装置。
【請求項6】
前記潤滑剤保持部は、前記ローラーが接触したときに前記ローラーの外周面の形状に合わせて変形可能である請求項5に記載の物品搬送装置。
【請求項7】
前記付与位置は、前記潤滑剤保持部を前記溝部の内面に接触させる位置である請求項4に記載の物品搬送装置。
【請求項8】
前記潤滑剤保持部は、前記溝部の内面に接触するように変形可能である請求項7に記載の物品搬送装置。
【請求項9】
前記レールは、前記溝部の上部が開口しており、
前記潤滑剤付与機構は、前記溝部に前記潤滑剤を滴下する請求項1から請求項3のいずれかに記載の物品搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を搬送する物品搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
物品を搬送する装置として、リニアモーターを用いたリニア搬送装置が開示されている(特許文献1)。リニア搬送装置では、レールに沿って搬送台車が移動可能に配置されており、搬送台車には、レールと当接してレール状を転動するローラーを有する。ローラーの一つは、レールに形成された溝に嵌るように配置されており、搬送台車の上下方向の移動が規制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リニア搬送装置において、物品の搬送を行うとき、ローラーと溝との間に摩擦が発生する。そのために、ローラーと溝との間の潤滑が必要である。そこで従来のリニア搬送装置では、作業者が手作業で溝に潤滑剤を塗布していた。このような構成の場合、物品搬送装置をリニア搬送装置から取り除いて作業する必要があり、作業者にとって利便性が悪い。
【0005】
また、作業者のスキルによって、潤滑剤の塗布の品質(均一度)がばらつき、例えば、潤滑剤の塗布が不十分な場合、ローラーの摩耗の原因となる。また、潤滑剤の過剰な場合、物品に潤滑剤が付着する可能性があり、歩留まりが低下する虞がある。
【0006】
そこで、作業者の利便性を高めるとともに、長期間にわたって安定して物品を搬送できる物品搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明の物品搬送装置は、外面に物品の搬送方向に沿って延びる溝部を有するレールを有する搬送部と、前記溝部に嵌った状態で回転移動可能なローラーを有し前記物品を保持して前記搬送方向に移動可能な複数の搬送シャトルと、前記溝部と前記ローラーとの間に潤滑剤を付与する潤滑剤付与機構と、を有する。予め決められたタイミング毎に、前記搬送部で搬送される物品が無い潤滑剤付与状態が発生される。前記潤滑剤付与状態のときに前記潤滑剤付与機構が、前記溝部又は前記ローラーの一方に前記潤滑剤を付与する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、作業者の利便性を高めるとともに、長期間にわたって安定して物品を搬送できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】物品を保持した搬送シャトル及び単体の搬送シャトルが直線状のレールに沿って移動している状態を外側から見た図である。
【
図5】搬送シャトルの搬送方向の後側から見た図である。
【
図6】第2搬送ルートの分岐レールを移動する搬送シャトルを搬送方向後側から見た図である。
【
図7】物品を保持した搬送シャトルが第1曲線レールを移動している状態を示す平面図である。
【
図8】物品搬送装置の潤滑剤付与機構が配された部分の平面図である。
【
図9】潤滑剤付与機構が配された部分の断面図である。
【
図10】潤滑剤付与機構の動作を示すフローチャートである。
【
図11】第1変形例の物品搬送装置1の概略配置図である。
【
図12】
図11に示す物品搬送装置の潤滑剤付与機構が配置された部分の概略断面図である。
【
図13】第1変形例の物品搬送装置の機能ブロック図である。
【
図14】第2変形例にかかる物品搬送装置の潤滑剤付与機構の近傍の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、本実施形態において、
図1に示す物品搬送装置100を基準として、方向を定義する。物品搬送装置100において、時計回り方向を物品Pcの搬送方向Tr、すなわち、搬送シャトル2の移動方向とする。さらに、第1搬送ルート11のループを基準として、外側Os、内側Isを定義する。また、物品Pc及び搬送シャトル2の移動方向において、現在の位置に対して未来に到達する側を前側とする。逆に、現在の位置に対して過去に位置していた側を後側とする。また、物品Pcの各面は、物品搬送装置100にて搬送されている状態を基準に搬送方向Trの前側の面を前面Pcf、後側の面を後面Pcr、外側の面を外面PcO、内側の面を内面PcIとする。また、物品Pcの底部の面を底面Pctとする。
【0011】
<物品搬送装置100>
図1は、物品搬送装置100の概略配置図である。
図2は、物品搬送装置100の機能ブロック図である。物品搬送装置100は、例えば、紙等で形成され、内部に液体の収容物が充填された略直方体状の物品(被搬送物ともいう)Pcを搬送する。そして搬送しつつ、検査、印字等の処理を実行し、別途設けられた搬出部から次の工程に送られる。
【0012】
物品搬送装置100は、搬送部1と、搬送シャトル2と、リニア搬送機構3と、コントローラ4と、供給部5と、検査部6と、処理部7と、潤滑剤付与機構9と、を有する。
【0013】
<コントローラ4>
ここでコントローラ4の詳細について説明する。
図2に示すように、コントローラ4は、処理回路41と、記憶回路42とを有する。処理回路41は、各種情報を処理する回路であり、CPU、MPU等の演算回路を有する。また、コントローラ4には、処理結果に基づいて、リニア搬送機構3、供給部5、検査部6、処理部7が接続され、処理回路41は、これらの要素の制御を行う。
【0014】
記憶回路42は、ROM、RAM等の半導体メモリー、フラッシュメモリー等の可搬性を有するメモリーおよびハードディスク等の記憶媒体を含むまたは接続される回路である。記憶回路42で、制御プログラムまたは処理プログラム等の各種プログラムを記憶しておき、必要に応じて処理に対応したプログラムを呼び出すとともに処理回路41でプログラムを動作させて、処理を行うようにしてもよい。コントローラ4に接続される要素およびその制御については、各要素の説明時に説明する。
【0015】
<搬送部1>
搬送部1の詳細について説明する。
図3は、物品Pcを保持した搬送シャトル2が直線状のレール13に沿って移動している状態を外側Osから見た図である。
図4は、
図3に示す搬送シャトル2の平面図である。搬送部1は、第1搬送ルート11と、第2搬送ルート12と、を有する。2つの搬送シャトル2が、物品Pcを搬送方向の前後から挟んで保持し、物品Pcを搬送方向Trに搬送する。
【0016】
搬送シャトル2は、第1搬送ルート11に沿って移動する。また、予め決められた条件を満たした又は満たさない搬送シャトル2は、第2搬送ルート12に進入し、第2搬送ルート12に沿って移動する。そして、再度、第2搬送ルート12から第1搬送ルート11に戻り、第1搬送ルート11に沿って移動する。
【0017】
<第1搬送ルート11>
図5は、第1搬送ルート11を移動する搬送シャトル2の搬送方向後側から見た図である。第1搬送ルート11は、環状であり、第1直線搬送レール111と、第2直線搬送レール112と、第1曲線搬送レール113と、第2曲線搬送レール114とを有する。第1直線搬送レール111及び第2直線搬送レール112は、並んで配置される。第1搬送ルート11では、第1直線搬送レール111と第2直線搬送レール112の両端を、それぞれ、第1曲線搬送レール113及び第2曲線搬送レール114で連結して、環状に形成される。
【0018】
第1直線搬送レール111及び第2直線搬送レール112は、直線である。第1直線搬送レール111及び第2直線搬送レール112は、直線状の短レールを搬送方向Trに連結して形成される。直線状の短レールの連結数を変更することで、第1直線搬送レール111及び第2直線搬送レール112の長さを変更できる。なお、第1直線搬送レール111及び第2直線搬送レール112は、それぞれ1本のレールであってもよい。
【0019】
さらに、第1曲線搬送レール113及び第2曲線搬送レール114は、たとえば、クロソイド曲線状を挙げることができる。また、第1曲線搬送レール113及び第2曲線搬送レール114は円弧状であってもよいし、複数の曲線状の部分又は直線状の部分と曲線状の部分とを組みあわせてもよい。
【0020】
第1曲線搬送レール113及び第2曲線搬送レール114は、曲線状の短レールを連結して形成されている。異なる形状及び長さの曲線状の短レールを、第1搬送ルート11に合わせて組み合わせることで、多様な形状に対応可能である。なお、第1曲線搬送レール113及び第2曲線搬送レール114は1本のレールであってもよい。
【0021】
第1搬送ルート11において、搬送シャトル2は、第1搬送ルート11の第1直線搬送レール111、第2直線搬送レール112、第1曲線搬送レール113及び第2曲線搬送レール114の外側Osの面に配置される。そして、搬送シャトル2は、環状の第1搬送ルート11に沿って移動可能である。
【0022】
第1直線搬送レール111、第2直線搬送レール112、第1曲線搬送レール113及び第2曲線搬送レール114は、同一の構造を有しており、これらの詳細な形状の説明において、各レールを代表してレール13として説明する。
【0023】
<第2搬送ルート12>
図6は、第2搬送ルート12の分岐レール121を移動する搬送シャトル2を搬送方向後側から見た図である。
図1に示すとおり、第2搬送ルート12は、分岐レール121と、合流レール122と、帰還レール123とを有する。第2搬送ルート12は、分岐レール121、帰還レール123及び合流レール122の順でつないだ構成である。第2搬送ルート12は、第1搬送ルート11を組み合わせることで環状となる。つまり、第2搬送ルート12は、環状の一部を構成する。
【0024】
第2搬送ルート12は、分岐点P1及び合流点P2で、第1搬送ルート11と接続される。第2搬送ルート12において、搬送シャトル2は、分岐レール121及び合流レール122の環状の内側Isの面に配置され、第2搬送ルート12に沿って移動する。また、搬送シャトル2は、分岐レール121の内側Isの面から帰還レール123の外側Osの面に移動する。また、帰還レール123の外側Osの面から合流レール122の内側の面に移動する。この分岐レール121から帰還レール123への移動する部分は、合流点P2と同様の構成である。また、帰還レール123から合流レール122へ移動する部分は、分岐点P1と同様の構成である。
【0025】
分岐レール121及び合流レール122は、直線である。分岐レール121及び合流レール122は、直線状の短レールを搬送方向Trに連結して形成される。直線状の短レールの連結数を変更することで、分岐レール121及び合流レール122の長さを変更できる。なお、分岐レール121及び合流レール122は、それぞれ1本のレールであってもよい。
【0026】
分岐点P1において、分岐レール121の搬送方向Trの後端の内側Isの面は、第1直線搬送レール111の搬送方向Trの前端の外側Osの面に対向して配置される。また、合流レール122の搬送方向Trの前端の内側Isの面は、第1搬送ルート11の第2直線搬送レール112の搬送方向Trの後側の端部の外側Osの面に対向して配置される。合流レール122と第2直線搬送レール112とが対向する部分が合流点P2である。
【0027】
帰還レール123は、第1曲線搬送レール113及び第2曲線搬送レール114と同じ構成である。帰還レール123の搬送方向Trの後側の端部は、分岐レール121の搬送方向Trの前側端部の内側Isに対向して配置される。同様に、帰還レール123の搬送方向Trの前側の端部は、合流レール122の搬送方向Trの後側端部の内側Isに対向して配置される。
【0028】
また、分岐レール121及び合流レール122は、後述する溝部134が内側Isに配置される以外、第1直線搬送レール111と同様のレール13で構成される。なお、上述したとおり、帰還レール123は、第1曲線搬送レール113及び第2曲線搬送レール114と同じ構成であるため、レール13で構成される。
【0029】
<レール13>
図3、
図5、
図6に示すように、レール13は、レール本体部131と、レール上部132と、レール下部133とを有する。レール本体部131は、搬送方向Trと直交する面で切断した切断面が長方形状の筒体である。レール本体部131は、例えば、一部のステンレス鋼、アルミニウム及びその合金を挙げることができるが、これに限定されない。
【0030】
レール上部132は、レール本体部131の上部に配置される。レール上部132は、搬送方向Trと交差する方向の外面から凹んだ溝部134を有する。レール上部132は、2個の溝部134を有する。2個の溝部134は、上下に並んで配置される。
【0031】
なお、レール本体部131とレール上部132との固定は、単一の部材で形成してもよいし、別体で形成して、溶接、ねじ止め等の固定方法で固定してもよい。第1搬送ルート11の全域において、溝部134は、外側Osに配置される。また、第2搬送ルート12の全域において、溝部134は、内側Isに配置される。
図3及び
図5に示すように、上下方向において、レール本体部131とレール上部132との境界部分には、隙間135が形成される。
【0032】
レール下部133は、レール本体部131の下部に配置される。なお、レール本体部131とレール下部133とは、単一の部材で形成してもよいし、別体で形成して、溶接、ねじ止め等の固定方法で固定してもよい。
【0033】
<搬送シャトル2>
次に、搬送シャトル2について説明する。搬送シャトル2は、シャトル本体21と、物品保持部22とを有する。シャトル本体21には、リニア搬送機構3のマグネット32が配置される。なお、マグネット32はシャトル本体21の内部に収容され、レール本体部131に配置されたコイル31と搬送方向Trと交差する方向に対向する。
【0034】
搬送シャトル2のシャトル本体21は、第1面24と、第2面25とを有する。また、シャトル本体21は、凸部213を有する。凸部213は、レール本体部131とレール上部132との間に形成された隙間135に嵌る。凸部213が隙間135に嵌ることで、シャトル本体21のずれが抑制される。
【0035】
シャトル本体21には、2個の上ローラー211が配置される。2個の上ローラー211は、シャトル本体21に回転可能に支持される。詳しく説明すると、上ローラー211は、搬送方向Trと直交するとともに、レール13の外面と平行な回転軸周りに回転可能に配置される。2個の上ローラー211は、搬送方向Trに離れているとともに、上下方向に異なる位置に配置される。本実施形態におけるシャトル本体21では、搬送方向Trの前側の上ローラー211(
図3参照)が、上になるように配置される。
【0036】
シャトル本体21には、2個の下ローラー212が配置される。2個の下ローラー212は、シャトル本体21に回転可能に支持される。下ローラー212は円柱状である。2個の下ローラー212は、搬送方向Trに離れているとともに、上下方向に異なる位置に配置される。本実施形態におけるシャトル本体21では、搬送方向Trの前側の下ローラー212(
図3参照)が、下になるように配置される。
【0037】
<物品保持部22>
物品保持部22は、シャトル本体21の上部に固定される。物品保持部22は、保持板221と、保持アーム222と、支持台座223とを有する。保持板221は、板状であり、シャトル本体21よりも内側Isに配置され、上方に延びる。保持板221の搬送方向Tr前側は、前側に向かって内側に傾斜している。また、保持板221には、貫通孔2211と、搬送方向Trの両端に設けられた凹部2212とを有する。凹部2212は、貫通孔2211よりも下に搬送方向に並んで配置される。
【0038】
物品保持部22は、2個の保持アーム222を有し、上下に並んで保持板221に固定される。各保持アーム222の一方は保持板221の上方に配置され、他方は貫通孔2211を貫通して、保持板221よりも外側Osに突出する。
【0039】
保持アーム222は、搬送方向前部に配置される第1接触部225と、搬送方向後部に配置される第2接触部226とを有する。第1接触部225及び第2接触部226は、突出方向の中間部分が搬送方向Trに膨らんだ曲面状である(
図4等参照)。
【0040】
支持台座223は、保持板221に固定される。支持台座223は、前部支持台座227と、後部支持台座228とを有する。前部支持台座227は、搬送方向Trにおいて、第1接触部225よりも前側に配置される。また、後部支持台座228は第2接触部226よりも後側に配置される。前部支持台座227及び後部支持台座228の上面は、同じ高さである。なお、前部支持台座227と後部支持台座228とが一体に形成されていてもよい。搬送シャトル2は以上示した形状を有する。
【0041】
<リニア搬送機構3>
物品搬送装置100において、複数の搬送シャトル2は、リニア搬送機構3によって、それぞれ、独立して駆動される。リニア搬送機構3は、複数のコイル31と、マグネット32と、リニアドライバ33と、を有する。複数のコイル31は、第1搬送ルート11及び第2搬送ルート12を構成するレール13の内部に搬送方向Trに沿って配列されている。
【0042】
マグネット32は、永久磁石であり搬送シャトル2のシャトル本体21に配置される。
図5に示すように、マグネット32は、シャトル本体21の内部に配置される。シャトル本体21は、磁石に引っ付かない材料で形成されている。そのため、マグネット32の磁力は、シャトル本体21の外部に漏れる。そして、マグネット32は、コイル31と磁力を付与しあうことができるように配置される。シャトル本体21に配置されたマグネット32と、レール13の内部に配置された複数のコイル31とでリニアモーターが形成される。
【0043】
リニアドライバ33は、各コイル31と接続される(
図2参照)。リニアドライバ33は、不図示の電源回路に接続されている。リニアドライバ33は、コイル31に供給する電力を制御する回路であり、演算処理回路、各コイル31に供給する電圧および電流を調整する電力供給回路等の回路を含む。リニアドライバ33は、コントローラ4からの指示に基づいて、各コイル31に適切な電流を供給する。
【0044】
コイル31に順に電流が供給されることで、搬送シャトル2に配置されたマグネット32との間に発生する磁力によって、搬送シャトル2が搬送部1の第1搬送ルート11又は第2搬送ルート12に沿って移動する。また、リニアドライバ33は、コイル31に供給する電流の量、タイミングを変更することで、搬送シャトル2の速度を調整することができる。
【0045】
コントローラ4は、リニアドライバ33を介して、搬送シャトル2を独立して移動させることができる。なお、コントローラ4は、複数の搬送シャトル2を個別に動作をさせることができるとともに、同期して動作させることも可能である。また、コントローラ4は、搬送シャトル2の位置を取得できる。
【0046】
コントローラ4は、搬送シャトル2を加減速することで、搬送方向Trに隣り合う搬送シャトル2の相対距離を調整する。例えば、搬送シャトル2を加速すると、搬送方向Trの前を移動している搬送シャトル2との距離が接近し、後を移動している搬送シャトル2との距離が離間する。また、減速した場合、その反対に、前の搬送シャトル2と離間し、後の搬送シャトル2と接近する。搬送シャトル2の加減速によって、搬送シャトル2同士が接触する虞もある。
【0047】
また、リニア搬送機構3において、搬送シャトル2の速度、換言すると、搬送シャトル2間の相対距離を頻繁に変更すると、消費電力が増加し、コイル31の過熱の原因になる。そのため、コントローラ4は、なるべく搬送シャトル2の加減速を行わない、つまり、搬送シャトル2同士の距離を一定に保って搬送シャトル2を制御する。また、搬送シャトル2同士の距離を変更する必要がある場合も、コントローラ4は、搬送シャトル2同士の距離の変化がなるべく小さくなるように搬送シャトル2の速度を制御する。
【0048】
搬送シャトル2において、物品保持部22は、シャトル本体21の上方に配置される。このことから、シャトル本体21の第1面24の内側及び第2面25の外側には、構成部材が配置されない。そのため、上ローラー211及び下ローラー212の径方向外縁部が、第1面24よりも内側Is及び第2面25よりも外側Osに突出する。
【0049】
これにより、第1搬送ルート11において、搬送シャトル2は、第1直線搬送レール111、第2直線搬送レール112、第1曲線搬送レール113及び第2曲線搬送レール114の外側Osに沿って移動できる。また、搬送シャトル2は、第2搬送ルート12において、分岐レール121及び合流レール122の内面に沿って移動できる。また、搬送シャトル2は、帰還レール123の外面に沿って移動できる。
【0050】
さらに詳しく説明すると、搬送シャトル2は、第1搬送ルート11において、レール13の外側Osに沿って移動可能である。シャトル本体21は、例えば、マグネット32の磁力によって、第1搬送ルート11のレール13の外側Osに吸着されている。なお、レール13に磁石を吸着する鉄等の金属で形成された吸着部を備えていてもよいし、コイル31に備えられた鉄心とマグネット32との磁力によって吸着されてもよい。
【0051】
第1搬送ルート11において、上ローラー211および下ローラー212がレール13と接触することで、シャトル本体21の第1面24がレール13の外面と一定の間隔を開けて配置される。つまり、シャトル本体21は、上下を上ローラー211及び下ローラー212でレール13の外面に移動可能に支持される。
【0052】
搬送シャトル2は、搬送方向Trに配列された上ローラー211および下ローラー212が上下にずれている。このため、搬送シャトル2が、搬送方向Trに接近した場合でも、上ローラー211同士または下ローラー212同士が干渉しにくい。そのため、搬送シャトル2を搬送方向Trに前後に接近して配置可能及び接近した状態で移動可能である。
【0053】
図6に示すように、搬送シャトル2は、第2搬送ルート12において、分岐レール121及び合流レール122の内側Isに沿って移動可能である。シャトル本体21は、内部に配置されたマグネット32の磁力によって、分岐レール121及び合流レール122の内面に吸着されている。なお、レール13に磁石を吸着する鉄等の金属で形成された吸着部を備えていてもよいし、コイル31に備えられた鉄心とマグネット32との磁力によって吸着されてもよい。
【0054】
上ローラー211及び下ローラー212が分岐レール121及び合流レール122と接触することで、シャトル本体21の第2面25が分岐レール121及び合流レール122の内面と一定の間隔を開けて対向して配置される。つまり、シャトル本体21は、上下を上ローラー211及び下ローラー212で分岐レール121及び合流レール122の内面に移動可能に支持される。
【0055】
このような構成とすることで、第1直線搬送レール111、第2直線搬送レール112、分岐レール121及び合流レール122に配置されるコイル31の制御で、搬送シャトル2を分岐点P1で分岐可能であるとともに、合流点P2で合流可能である。つまり、簡単な構成であるとともに、簡単な制御で、搬送シャトル2を分岐、合流させることができる。
【0056】
つまり、コントローラ4は、第1直線搬送レール111を移動する搬送シャトル2を、分岐点P1で、第1曲線搬送レール113又は分岐レール121のどちらかに分岐可能である。また、コントローラ4は、第2搬送ルート12の合流レール122を移動する搬送シャトル2を、合流点P2で、第2直線搬送レール112に合流させることが可能である。
【0057】
<搬送シャトル2による物品Pcの保持>
次に、搬送シャトル2による物品Pcの保持について説明する。物品Pcは、搬送方向Trに並んで配置された2つの搬送シャトル2にて、搬送方向Trの前後から保持される。
【0058】
搬送方向Trの前側の搬送シャトル2の後部支持台座228が物品Pcの底面の前部の内側を支持し、第2接触部226が物品Pcの前面Pcfを押圧する。また、物品Pcの搬送方向Trの後側の搬送シャトル2の前部支持台座227が物品Pcの底面Pctの後部の内側を支持し、第1接触部225が物品Pcの後面Pcrを押圧する。このとき、物品Pcの内面PcIは保持板221と接触する。
【0059】
ここで物品Pcが、内部に液体の収容物が充填された略直方体状の場合、物品Pcの前面Pcfは、第2接触部226に押圧されて中間部分が凹む。同様に、物品Pcの後面Pcrは、第1接触部225に押圧されて中間部分が凹む。このように、前面Pcf及びPcrがそれぞれ、第2接触部226及び第1接触部225に押圧されて凹むことで、物品Pcの外側Osへの移動が制限される。また、物品Pcの内面PcIが保持板221と接触することで、物品Pcの内側Isへの移動も制限される。これにより、2つの搬送シャトル2で、物品Pcをしっかり保持できる。なお、物品Pcの搬送方向Trの前後に配置される搬送シャトル2は、同じ形状である。
【0060】
図7は、物品Pcを保持した搬送シャトル2が曲線状のレール13を移動している状態を示す平面図である。
図7に示すように、第1接触部225及び第2接触部226が各々、外側に膨らんだ、略曲面状であるので、保持アーム222の突出方向が平行でない場合にも物品Pcの前面Pcf及び後面Pcrを挟んで保持できる。
【0061】
<供給部5>
図1に示すように、供給部5は、物品移動部51を有する。物品移動部51は、物品Pcを移動させる移動機構である。物品移動部51は、例えば、物品搬送装置100が配置される工程の前工程から搬出された物品を、物品搬送装置100に搬入(供給)する。なお、供給部5における物品Pcの移動方向を、供給方向Tsとする。
【0062】
物品移動部51は、略直方体状の物品Pcを搬送するコンベヤである。物品移動部51は、上面に載置された物品Pcを供給方向Tsに移動させる。これにより、物品Pcは、供給部5において、供給方向Tsに沿って移動する。
【0063】
物品移動部51は、ベルトコンベヤやトップチェーンコンベヤなど、一般的な搬送コンベヤを用いることができる。ここでは、物品移動部51は、ベルトコンベヤを用いている(
図1等参照)。物品移動部51は、コントローラ4に接続されており(
図2参照)、コントローラ4からの指示に従って駆動される。
【0064】
物品移動部51の供給方向Tsの後端が乗換部R1に接続している。物品移動部51によって供給方向Tsに移動された物品Pcは、乗換部R1で前後に並んだ搬送シャトル2に搬送方向Trの前後から挟まれて保持され、搬送方向Trに沿って搬送される。
【0065】
供給部5において、物品移動部51の供給方向Tsの前方の端部は、物品Pcを正確な方向に誘導するガイドバー52が配置される。ガイドバー52は、物品移動部51上を移動する物品Pcの搬送方向Trと交差する方向に面する側面と接触する。これにより、物品Pcの倒れを抑制しつつ、乗換部R1における物品Pcの搬送シャトル2に対する角度のずれを抑制できる。
【0066】
乗換部R1において、物品移動部51の供給方向Tsの前側の端部の内側Isは、搬送シャトル2の支持台座223と接触しないように、隙間をあけて配置される。そして、物品Pcは、物品移動部51による移動から搬送シャトル2による保持に移行するとき、前側の搬送シャトル2の後部支持台座228が物品Pcの底面Pctを支持する。そのため、物品移動部51は、支持台座223の上面と同じ高さ又はそれよりも多少高く設けることが好ましい。なお、物品移動部51の上面の支持台座223に対する高さは、物品Pcが支持台座223の上面に移動するとき、物品Pc及び内部に収容されている収容物に悪影響の無い程度の高さである。
【0067】
<検査部6>
検査部6は、第1直線搬送レール111の近傍に配置される。検査部6は、第1直線搬送レール111の環状の外側に配置されて、搬送シャトル2が保持した物品Pcの底面Pctの状態に基づいて、物品Pcの良又は不良の判定を行う。
【0068】
図2に示すように、検査部6は、撮像部61と、判定部62とを有する。撮像部61及び判定部62は、コントローラ4に接続されており、コントローラ4からの指示に従って動作する。
【0069】
撮像部61は、例えば、CCD、CMOS等の撮像素子を有する、カメラを有する。撮像部61は、搬送シャトル2によって前後から保持され、第1直線搬送レール111に沿って移動する物品Pcの底面を撮像する。撮像部61は、画角及び焦点が固定されている。そして、コントローラ4の処理回路41は、搬送シャトル2に保持された物品Pcが検査部6を通過する毎に、物品Pcの底面Pctを撮像するように制御する。
【0070】
そして、撮像部61は、物品Pcの底面Pctを撮像するごとに、撮像データをコントローラ4に送る。コントローラ4は、送られてきた撮像データを記憶回路42に蓄積する。また、コントローラ4の処理回路41は、送られてきた撮像データを判定部62に送信する。判定部62は、画像データに対して画像処理を実行し、画像処理後の画像データに基づいて、底面Pctの折りしろの形状、位置、色を確認し、物品Pcの良又は不良に判定する。
【0071】
なお、判定部62は、コントローラ4の処理回路41と独立した処理装置を用いて処理を実行するようにしてもよいし、処理回路41の一部を用いて判定処理を行ってもよい。さらには、記憶回路42に記憶された判定処理用のプログラムを処理回路41で実行し、判定部62としてもよい。
【0072】
判定部62は、物品Pcの良又は不良を判定する。そして、判定部62による物品Pcの良又は不良の判定結果は、コントローラ4に送る。コントローラ4は、良品と判定された物品Pcを保持した搬送シャトル2が分岐点P1から第1曲線搬送レール113に移動するように、リニア搬送機構3を制御する。また、コントローラ4は、不良品と判定された物品Pcを保持した搬送シャトル2が分岐点P1から第2搬送ルート12に移動するように、リニア搬送機構3を制御する。
【0073】
第2搬送ルート12の分岐レール121の途中に、第2搬送ルート12の外部に排出する物品排出部124が設けられている。物品排出部124では、搬送シャトル2に保持されて不良品と判定された物品Pcを物品搬送装置100の外部に排出される。物品搬送装置100において、コントローラ4は、物品Pcを保持した搬送シャトル2が物品排出部124を通過するときに、物品Pcを保持している搬送シャトル2の距離が離れるようにリニア搬送機構3を制御する。これにより物品Pcが搬送シャトル2から離れ、物品Pcが落下する。落下した物品Pcは、不図示の容器によって回収される。
【0074】
コントローラ4は、物品排出部124を通過した搬送シャトル2を帰還レール123及び合流レール122に沿って一定の速度で移動するように、リニア搬送機構3を制御する。そして、コントローラ4は、合流点P2で搬送シャトル2が第2直線搬送レール112に移動するように、リニア搬送機構3を制御する。
【0075】
検査部6を用いることで、物品搬送装置100で搬送される物品Pcの良品と不良品とを判定し、良品のみを正規のルートである第1搬送ルート11に沿って移動させることができる。本実施形態の検査部6では、撮像部61として静止画を撮像する構成を例に説明したが、動画を撮影し、その動画に基づいて良品と不良品とを判定するようにしてもよい。
【0076】
<処理部7>
第1搬送ルート11の第2直線搬送レール112の搬送方向Trの後側の近傍には、物品Pcに対して予め決められた処理を実行するための処理部7が配置される。処理部7は、コントローラ4に接続されており、コントローラ4からの指示に基づいて、制御される。
【0077】
本実施形態の物品搬送装置100において、処理部7は、物品Pcの所定の位置に、製造日、消費期限等の文字を印字する印字処理である。なお、処理部7による処理は、印字処理に限定されず、物品Pcに対して実行される処理を広く採用することができる。
【0078】
処理部7において、物品Pcに対して印字処理を実行するとき、物品Pcの搬送速度が速いと、正確な印字ができない。そのため、コントローラ4は、物品Pcが処理部7を移動するとき、物品Pcの搬送速度を遅くして物品Pcに対して処理を実行する。そして、物品Pcに対する処理が完了すると、コントローラ4は、物品Pcを元の速度に戻し、第2直線搬送レール112に沿って移動させる。
【0079】
そして、第2直線搬送レール112の搬送方向Trの後端部の近傍には、物品搬送装置100の外部に、物品Pcを搬出する搬出部115が設けられる。搬出部115では、物品Pcが物品搬送装置100の外部、例えば、次工程に物品Pcを移動させる。搬出部115で物品Pcを外部に搬出した後、搬送シャトル2は、第2曲線搬送レール114に移動させる。第2曲線搬送レール114において、搬送シャトル2は、一定の速度で移動しつつ、乗換部R1での物品Pcの供給の待機を行う。
【0080】
物品搬送装置100において、搬送シャトル2の上ローラー211は、溝部134に嵌った状態で転動する。そのため、搬送シャトル2の上ローラー211と溝部134との摩擦が高くなると、上ローラー211が摩耗しやすくなる。そのため、物品搬送装置100において、上ローラー211と溝部134とを潤滑するための潤滑剤を付与する潤滑剤付与機構9が設けられている。潤滑剤は、例えば、オイル、シリコンオイル、グリース等を挙げることができるがこれに限定されない。
【0081】
詳細は後述するが、物品搬送装置100では、上ローラー211が溝部134内を転動することで、潤滑剤を溝部134に供給する。そのため、潤滑剤は、上ローラー211の転動で、溝部134の全体に、供給できるとともに、側方に開口した溝部134から下方に垂れないような性質の物質が好ましい。ここでは、溝部134から垂れない程度の粘度を有する液体の潤滑剤を用いるものとする。
【0082】
潤滑剤付与機構9について図面を参照して説明する。
図8は、物品搬送装置100の潤滑剤付与機構9が配された部分の平面図である。
図9は、潤滑剤付与機構9が配された部分の断面図である。
【0083】
潤滑剤付与機構9は、潤滑剤保持部91と、潤滑剤供給部92と、移動機構93とを有する。
図2に示すように、潤滑剤付与機構9の潤滑剤供給部92及び移動機構93は、コントローラ4に接続され、コントローラ4からの指示に基づいて動作する。
【0084】
潤滑剤保持部91は、一定量の潤滑剤を保持可能な構成である。潤滑剤保持部91は、潤滑剤保持体911と、ハウジング912とを有する。潤滑剤保持体911は、例えば、吸液性を有するゴム(例えば、多孔質ゴム)で形成されている。しかしながら、潤滑剤保持体911を構成する材料は、これに限定されず、弾性変形可能であるとともに潤滑剤を保持し、変形することで潤滑剤を外部に供給可能な材料を広く採用することができる。
【0085】
潤滑剤保持体911は、レール13の溝部134と対向して配置されており、溝部134に嵌入可能な構成である。
図9に示すように、潤滑剤保持体911は、上下に並んで配置されており、溝部134と対向する部分は、溝部に向かって細くなるような傾斜面913を有する形状である。このような構成とすることで、傾斜面913が溝部134の内面と接触しやすい。また、接触面積が大きくなるため、潤滑剤が塗布される面積が広くなり、より多くの潤滑剤をなるべく広い範囲に供給できる。
【0086】
潤滑剤が付与された部分を搬送シャトル2が通過するとき、上ローラー211が潤滑剤と接触し、潤滑剤は上ローラー211の外周面に付着する。この状態で、搬送シャトル2がレール13に沿って移動することで、潤滑剤が溝部134の全体に塗布される。このとき、上ローラー211の外周面の周方向の一部に潤滑剤が付着していないと、溝部134には、潤滑剤が塗布された領域と塗布されない領域とが形成される場合がある。溝部134の全体に略均一に潤滑剤が塗布されるように、潤滑剤保持体911の搬送方向Trの長さL1は、上ローラー211の外周の最大長よりも長く形成されていることが好ましい。
【0087】
潤滑剤保持体911は、ハウジング912に収容され、ハウジング912に固定される。ハウジング912に収容されるとき潤滑剤保持体911の溝部134と対向する部分は、ハウジング912の外部に突出している。潤滑剤保持体911のハウジング912から突出している部分が、レール13の溝部134に嵌入される部分であり、潤滑剤を溝部134に供給する部分である。
【0088】
また、ハウジング912には、潤滑剤を潤滑剤保持体911に供給するための供給配管914が設けられている。供給配管914は、ハウジング912の外面と潤滑剤保持体911を収容する部分の内面とをつなぐ。供給配管914には、潤滑剤供給部92からの潤滑剤が流れるパイプ94が接続されている。
【0089】
パイプ94は、供給配管914と潤滑剤供給部92の後述するポンプ922とを繋ぐ管である。パイプ94は、内部を潤滑剤が流れても、劣化しない又は劣化しにくい材料で形成されている。また、潤滑剤保持部91は、潤滑剤を溝部134に供給するときに、レール13に接近するように移動する。そのため、パイプ94は、柔軟性を有するとともに、潤滑剤保持部91が移動しても、大きな張力が作用しないような材料、形状及び長さであることが好ましい。
【0090】
潤滑剤供給部92は、潤滑剤を溜めるとともに、パイプ94を介して潤滑剤を潤滑剤保持部91に供給する。潤滑剤供給部92は、タンク921と、ポンプ922とを有する。タンク921は、潤滑剤を溜めることができるような容器である。潤滑剤供給部92には、液量を監視する液量監視部(
図2参照)が設けられてもよい。液量監視部で潤滑剤供給部92の液量を監視し、液量が一定量を下回ったときに、潤滑剤の追加を促す情報を、外部の潤滑剤を供給する装置(不図示)に通知するようにしてもよい。このとき、外部の装置に直接情報を通知してもよいし、コントローラ4を介して情報を通知するようにしてもよい。
【0091】
ポンプ922は、タンク921に取り付けられる。ポンプ922は、タンク921の一部に設けられたエアバルブ923を有する構成であり、パイプ94の一部がタンク921の開口が、潤滑剤に挿し込まれている構成を挙げることができる。そして、エアバルブからガス(空気)を供給することで、タンク921内部の気圧を挙げ、パイプ94に潤滑剤が流入する。なお、ポンプ922としては、この構成に限定されるものではなく、潤滑剤を迅速かつ安定して送り出すことができる構成を広く採用することができる。ポンプ922としては、潤滑剤の粘度、pH等の物理的又は化学的な性質によって適切な構成のものが選択される。ポンプ922は、コントローラ4に接続されており、コントローラ4の指示に基づいて潤滑剤を潤滑剤保持部91に供給する。
【0092】
移動機構93は、レール13の溝部134と対向して配置される。そして、移動機構93は、コントローラ4に接続されており、コントローラ4の指示に基づいて動作する。移動機構93は、移動体931を有し、移動体931には潤滑剤保持部91が固定されている。移動機構93は、移動体931に取り付けられた潤滑剤保持部91を、潤滑剤保持体911が溝部134と接触する付与位置T1と、搬送シャトル2の邪魔にならない退避位置T2とに円滑に移動させる。
【0093】
移動機構93は、ここでは、作動流体として空気を用いるエアシリンダを挙げることができるがこれに限定されない。移動機構93は、作動流体としてオイルを用いるオイルシリンダ等の流体圧力を利用したものであってもよいし、モータ、ソレノイド等の電動の構成であってもよい。移動機構93は、潤滑剤保持部91を付与位置T1と退避位置T2との間で往復移動させることができる構成を広く採用することができる。なお、移動体931の構成は、移動機構93の構成によって決まる。
図1に示すように、潤滑剤付与機構9は、第2直線搬送レール112の搬送方向Trの後方端部の近傍、例えば、搬出部115の搬送方向Trにおける後方側に配置される。潤滑剤付与機構9は、以上示した構成を有する。
【0094】
<潤滑剤付与機構9による潤滑剤の塗布について>
潤滑剤付与機構9の動作について説明する。物品搬送装置100では、搬送シャトル2が移動する毎に、溝部134と搬送シャトル2の上ローラー211との間の潤滑剤が減少し、摩擦が大きくなる。そのため、コントローラ4は、一定の期間ごとに、潤滑剤付与機構9で、潤滑剤を溝部134に供給する。
【0095】
一定期間の決定方法は、例えば、コントローラ4が、潤滑剤付与機構9の前を通過した回数をカウントし、カウント数が一定数に到達したときに、一定期間経過地したと判断することができる。コントローラ4は、搬送シャトル2の位置を把握しているので、潤滑剤付与機構9の前を通過する搬送シャトル2をカウントできる。なお、一定期間の決定方法は、この構成に限定されず、別途、搬送シャトル2の通過を認識するセンサを備えてそのセンサを用いてもよいし、検査部6で実行する検査とともに搬送シャトル2の通過数を取得するようにしてもよい。また、ある一つ搬送シャトル2の移動距離が一定距離に到達したときを一定期間経過したときとしてもよい。
【0096】
なお、物品搬送装置100では、潤滑剤をレール全体に塗布するとき、物品Pcの搬送を停止した状態で実行するものとする。このようにすることで、溝部134から飛んだ潤滑剤が物品Pcに付着することを防止できる。なお、粘度等の性質によって、飛び散りにくい潤滑剤の場合、物品Pcを搬送しているときに、潤滑剤を溝部134にいきわたらせるように動作してもよい。
【0097】
図10は、潤滑剤付与機構9の動作を示すフローチャートである。
図10に示すように、コントローラ4は、潤滑剤付与機構9の前を通過した搬送シャトル2の数である通過数Jnを取得する(ステップS101)。そして、コントローラ4は、通過数Jnが予め決められた数であるしきい値Jtに到達したか否か確認する(ステップS102)。
【0098】
通過数Jnがしきい値Jt未満の場合(ステップS102でNoの場合)、コントローラ4は、現在の動作を継続するとともに、ステップS101に戻り、通過数Jnの取得を継続する。
【0099】
通過数Jnがしきい値Jtに到達したとき(ステップS102でYesの場合)。処理は、ステップS103に遷移する。ステップS103において、コントローラ4は、供給部5からの物品Pcの供給を停止する。処理は、ステップS104に遷移する。ステップS104において、コントローラ4は、搬送部1に搬送中の物品Pcがない潤滑剤付与状態であるか否か確認する。なお、搬送部1において、物品Pcは、搬出部115から外部に搬出されるとともに、物品排出部124から排出される。そのため、コントローラ4は、排出される物品Pc及び搬出される物品Pcをカウントすることで、搬送部1内に物品Pcの有無を判定できる。
【0100】
上述したとおり、本処理において、潤滑剤が物品Pcに付着することを防止するため、搬送部1に搬送中の物品Pcが無いときに、潤滑剤の供給が実施される。搬送部1が潤滑剤付与状態ではない場合、つまり、搬送部1に搬送中の物品がある場合(ステップS104でNoの場合)、コントローラ4は、ステップS104を繰り返して物品Pcの有無の確認を行う。
【0101】
潤滑剤付与状態である場合、つまり、搬送部1に搬送中の物品Pcが無い場合(ステップS104でYesの場合)、処理は、ステップS105に遷移する。このとき、物品搬送装置100の複数の搬送シャトル2は、物品Pcを保持しない状態で、搬送方向Trに移動する。
【0102】
ステップS105において、コントローラ4は、移動している複数の搬送シャトル2の間隔で、潤滑剤付与機構9で潤滑剤が付与可能な間隔(以下、付与可能間隔と称する場合がある)があるか否か確認する。潤滑剤が付与可能な間隔(付与可能間隔)とは、潤滑剤付与機構9の潤滑剤保持体911が、退避位置T2から付与位置T1に移動し、潤滑剤を溝部134に接触して潤滑剤を付与した後、退避位置T2に戻ることができるまでの搬送シャトル2が移動する距離よりも長い間隔である。
【0103】
複数の搬送シャトル2の間隔のうち付与可能間隔が確認された場合(ステップS105でYesの場合)、処理はステップS106に遷移する。ステップS106において、コントローラ4は、付与可能間隔の搬送方向Trの前側の搬送シャトル2が潤滑剤付与機構9の前を通過したか否か確認する。通過が確認されない場合(ステップS106でNoの場合)通過が確認するまでステップS106を繰り返す。また、通過が確認された場合(ステップS106でYesの場合)、処理はステップS107に遷移する。
【0104】
ステップS107において、コントローラ4は、潤滑剤付与機構9の移動機構93を制御して潤滑剤保持体911を退避位置T2から付与位置T1に移動させる。これにより、潤滑剤保持体911が溝部134に押し当てられ、溝部134に潤滑剤が付与される。上述したとおり、潤滑剤保持体911は、液体を保持できる多孔質体であるため、溝部134に押し当てられて変形することで、接触部分から潤滑剤が出る。これにより、潤滑剤が溝部134に付与される。
【0105】
ステップS107において、コントローラ4は、溝部134に潤滑剤が付与された後、潤滑剤付与機構9の移動機構93を制御し、潤滑剤保持体911を付与位置T1から退避位置T2に移動させる。つまり、ステップS107は、潤滑剤を付与する付与処理である。その後、処理はステップS108に遷移する。
【0106】
本実施形態の物品搬送装置100において、搬送シャトル2が潤滑剤付与機構9と対向する部分に到達すると、搬送シャトル2の上ローラー211に潤滑剤が付着する。この状態で、搬送シャトル2を搬送部1に沿って移動させることで、上ローラー211に付着した潤滑剤が、溝部134に塗り広げられる。上述のとおり、物品搬送装置100には、複数の搬送シャトル2が配置されている。複数の搬送シャトル2が継続して搬送部1に沿って移動することで、溝部134の潤滑剤付与機構9と対向する部分に付与された潤滑剤が、溝部134の全体に塗布される。
【0107】
物品搬送装置100において、潤滑剤が溝部134の全体に塗布された後に、物品Pcの搬送を再開する。コントローラ4は、上ローラー211に潤滑剤が付着している搬送シャトル2が一定の距離移動したことで、潤滑剤が溝部134にいきわたったと判断する。つまり、ステップS108において、コントローラ4は、付与処理後に移動する搬送シャトル2の移動距離Ds1を取得する。その後、処理はステップS109に遷移する。ステップS109において、付与可能間隔の直後に移動する搬送シャトル2の移動距離Ds1が、予め決められた距離Ds2に到達したか否か判断する。
【0108】
移動距離Ds1が予め決められた距離Ds2に到達するまで(ステップS109でNoの間)、コントローラ4は、物品Pcを保持しない状態の搬送シャトル2の移動を継続する。そして、移動距離Ds1が予め決められた距離Ds2に到達したことを確認した場合(ステップS109でYesの場合)、コントローラ4は、物品Pcの搬送を再開する(ステップS110)。
【0109】
搬送部1を移動している複数の搬送シャトル2において、付与可能間隔以上の間隔が形成されない場合もある。このような場合において、コントローラ4は、搬送シャトル2を減速すると、次の搬送シャトル2が到着するまでの時間が長くなる。そのため、搬送シャトル2の搬送方向の物理的な間隔が短くても、潤滑剤付与機構9で溝部134に潤滑剤を付与することが可能になる。
【0110】
そこで、本発明の物品搬送装置100では、搬送部1を移動している複数の搬送シャトル2において付与可能間隔が存在しない場合(ステップS105でNoの場合)、処理はステップS111に遷移する。ステップS111において、コントローラ4は、搬送部1を移動している全ての搬送シャトル2を減速する。
【0111】
なお、搬送シャトル2の減速速度は、最も長い間隔で上述した潤滑剤付与機構9による潤滑剤の付与の動作が搬送シャトル2に干渉しない程度の速度を挙げることができる。また、ステップS111の搬送シャトル2を減速する処理には、搬送シャトル2を停止する場合も含む。
【0112】
その後、処理はステップS112に遷移する。ステップS112において、コントローラ4は、付与可能間隔の搬送方向Trの前側の搬送シャトル2が潤滑剤付与機構9の前を通過したか否か確認する。通過が確認されない場合(ステップS112でNoの場合)通過が確認するまでステップS112を繰り返す。また、通過が確認された場合(ステップS112でYesの場合)、処理はステップS113に遷移する。
【0113】
ステップS113において、コントローラ4は、潤滑剤付与機構9を制御して、潤滑剤を溝部134に付与し(付与処理)、処理はステップS114に遷移する。なお、ステップS113の付与処理は、ステップS107と同じであるため詳細は省略する。そして、ステップS114では、減速している搬送シャトル2を元の速度まで加速する。その後、処理はステップS108に遷移する。その後の処理は、上述の処理と同じであるため省略する。
【0114】
以上示したように、物品搬送装置100では、予め決められたタイミングでレール13の溝部134に潤滑剤を付与し、その潤滑剤を搬送シャトル2の上ローラー211で溝部134の全体に略均一に塗布できる。
【0115】
なお、潤滑剤付与機構9は、第2直線搬送レール112の搬送方向Trの後側の端部に配置されているが、これに限定されない。例えば、第2搬送ルート12に配置されてもよい。搬送シャトル2は、物品Pcを排出するときに、第2搬送ルート12に移動する。つまり、第2搬送ルート12は、第1搬送ルート11に比べて通過する搬送シャトル2の延べ数が少ない。そのため、第2搬送ルート12のレール13の溝部134は、第1搬送ルート11のレール13の溝部134に比べて、潤滑剤が切れにくい。そのため、潤滑剤付与機構9を第2搬送ルート12に配置する場合、合流レール122の合流点P2に近い部分に配置されることが好ましい。
【0116】
<第1変形例>
図11は、第1変形例の物品搬送装置100Aの概略配置図である。
図12は、
図11に示す物品搬送装置100Aの潤滑剤付与機構9Aが配置された部分の概略断面図である。
図13は、第1変形例の物品搬送装置100Aの機能ブロック図である。
【0117】
図11に示すように、物品搬送装置100Aの搬送部1A、上下に並んで配置される第1直線搬送レール111Aと第2直線搬送レール112Aとを有する。そして、第1直線搬送レール111Aと第2直線搬送レール112Aの両端同士を繋ぐ、第1曲線搬送レール113A及び第2曲線搬送レール114Aを有する。
【0118】
すなわち、第1直線搬送レール111A、第1曲線搬送レール113A、第2直線搬送レール112A及び第2曲線搬送レール114Aは、この順に環状に連結されている。なお、各搬送レールは、物品搬送装置100のレール13Aを有する。レール13Aは、レール13と同様の構成を有しており、レール13Aの各部について、レール13と対応する部分について説明する。
【0119】
レール13Aは、レール本体部131Aと、第1レール132Aと、第2レール133Aとを有する。レール13Aのレール本体部131A、第1レール132A及び第2レール133Aは、レール13のレール本体部131、レール上部132、レール下部133と対応する。さらに、第1レール132Aの上面には、レール13のレール上部132に形成された溝部134と同様の構成の溝部134を有する。
【0120】
搬送部1Aには、搬送シャトル2Aが配置され、搬送シャトル2Aは搬送部1Aに沿って移動する。搬送シャトル2Aは、シャトル本体21Aを有し、シャトル本体21Aには、第1ローラー211Aと、第2ローラー212Aとを有する。搬送シャトル2Aの第1ローラー211A及び第2ローラー212Aは、搬送シャトル2の上ローラー211及び下ローラー212と同様の構成を有する。
【0121】
搬送部1Aにおいて、第1直線搬送レール111Aを構成するレール13Aの上面に溝部134が形成されている。そして、第1直線搬送レール111Aの搬送方向Trの後側の端部の近傍に、潤滑剤付与機構9Aが配置される。
【0122】
潤滑剤付与機構9Aの詳細について図面を参照して説明する。潤滑剤付与機構9Aは、潤滑剤滴下部91Aと、潤滑剤供給部92と、パイプ94と、を有する。潤滑剤供給部92及びパイプ94は、潤滑剤付与機構9と同じ構成を有し、実質上同じ部分には同じ符号付すとともに、同じ部分の詳細な説明は省略する。
【0123】
潤滑剤滴下部91Aは、容器915と、ノズル916とを有する。容器915は、潤滑剤を溜めることができる構成である。容器915は、第1直線搬送レール111Aの搬送シャトル2と干渉しない位置に配置される。
図12に示すように、ノズル916は、第1直線搬送レール111Aのレール13の溝部134の上部に配置される。
図13に示すように、ノズル916は、コントローラ4に接続されており、コントローラ4の指示に従って動作する。さらに説明すると、ノズル916は、コントローラ4からの指示で、潤滑剤の量が調整される。
【0124】
潤滑剤付与機構9Aでは、潤滑剤付与機構9と同様、予め決められたタイミングで溝部134に潤滑剤が付与される。予め決められたタイミングは、潤滑剤付与機構9と同じである。そして、予め決められたタイミングで、コントローラ4は、潤滑剤滴下部91Aのノズル916を制御して、溝部134に潤滑剤を滴下する。その後、搬送シャトルが搬送部1Aに沿って移動することで、潤滑剤が溝部134の全体に塗布される。これにより、溝部134と第1ローラー211Aとの摩擦の増大を抑制することができる。
【0125】
<第2変形例>
上述した潤滑剤付与機構9、9Aでは、潤滑剤をレール13、13Aの溝部134に付与し、上ローラー211又は第1ローラー211Aの表面に付着させる。そして、潤滑剤が付着した上ローラー211又は第1ローラー211Aを溝部134内で転動させることで、溝部134の全体に塗布する構成となっている。これに対し、第2変形例の潤滑剤付与機構9Bでは、上ローラー211の外周面に直接潤滑剤を付与する構成となっている。
【0126】
以下に、第2変形例にかかる潤滑剤付与機構9Bについて、図面を参照して説明する。第2変形例の潤滑剤付与機構9Bは、潤滑剤保持部91が
図8等に示す潤滑剤付与機構9と異なる構成であり、その他の点は、潤滑剤付与機構9と同様の構成を有する。そのため、潤滑剤付与機構9Bの実質的に潤滑剤付与機構9と同じ部分には同じ符号を付すとともに同じ部分の詳細な説明を省略する。
【0127】
潤滑剤付与機構9Bは、潤滑剤保持部91Bと、潤滑剤供給部92と、移動機構93とを有する。潤滑剤付与機構9Bの潤滑剤供給部92及び移動機構93は、潤滑剤付与機構9が有するものと同様の構成を有する。つまり、潤滑剤付与機構9と同様、潤滑剤付与機構9Bの潤滑剤供給部92及び移動機構93は、コントローラ4に接続され、コントローラ4からの指示に基づいて動作する。
【0128】
図14は、第2変形例にかかる物品搬送装置100Bの潤滑剤付与機構9Bの近傍の断面図である。なお、
図14に示す物品搬送うち100Bでは、搬送シャトル2の物品保持部22の図示を省略している。
【0129】
図14に示すように、潤滑剤保持部91Bは、潤滑剤保持体911Bと、ハウジング912と、凹溝917とを有する。潤滑剤保持部91Bのハウジング912は、潤滑剤保持部91のハウジング912と実質上同じ構成である。そのため、ハウジング912の詳細な説明は省略する。
【0130】
潤滑剤保持体911Bは、潤滑剤保持体911と同様、吸液性を有する多孔質ゴムで形成されている。そして、凹溝917は、潤滑剤保持体911Bの溝部134と対向する部分には、溝部134と同様の形状で、搬送方向Trに沿って全長に渡って形成されている。凹溝917は、潤滑剤保持体911Bが付与位置T12にあるとき、搬送シャトル2の上ローラー211の外周面が嵌ることができる形状を有する。
【0131】
潤滑剤保持体911Bとして剛性が高い材料で形成されている場合、潤滑剤保持体911Bを搬送シャトル2の上ローラー211に強く押し当てると、上ローラー211の回転に対して抵抗になる可能性がある。抵抗により上ローラー211の回転が阻害されると、上ローラー211の表面に潤滑剤が均一に付与されにくい。そのため、潤滑剤保持体911Bとして剛性が高い材料で形成されている場合、潤滑剤保持体911Bは、上ローラー211に強く押し当てられないような付与位置T12に移動する。このとき、潤滑剤保持体911Bは、小さい変形でも凹溝917から潤滑剤が出やすい構成であることが好ましい。
【0132】
潤滑剤保持体911Bとして柔軟性が高い材料で形成されている場合、潤滑剤保持体911Bを搬送シャトル2の上ローラー211に多少強く押し当てても、上ローラー211の回転に対する抵抗が小さい。つまり、潤滑剤保持体911Bが上ローラー211に多少強く押し当てても、上ローラー211の回転を阻害することなく、上ローラー211の外周面に潤滑剤を略均一に供給することができる。そのため、潤滑剤保持体911Bとして柔軟性が高い材料で形成されている場合、潤滑剤保持体911Bは、上ローラー211に押し当てられて潤滑剤保持体911Bが上ローラー211の外周面に合わせた形状に変形できる付与位置T12に移動する。このとき、潤滑剤保持体911Bは、ある程度変形したときに、凹溝917から潤滑剤が出るような構成であることが好ましい。
【0133】
上述したように、搬送部1、1A、1Bでは、搬送シャトル2の上ローラー211又は搬送シャトル2Aの第1ローラー211Aに潤滑剤を付着させ、上ローラー211又は第1ローラー211Aが溝部134を転動し、溝部134全体に潤滑剤を塗布する。そのため、搬送シャトル2又は搬送シャトル2Aが一定距離以上移動することで、溝部134全体に潤滑剤が略均一に塗布される。
【0134】
以上示した構成の潤滑剤付与機構9、9A、9Bを用いることで、作業者が溝部134に潤滑剤を付与する場合に比べて、溝部134全体に短時間且つ略均一に潤滑剤を塗布することができる。これにより、搬送シャトル2の上ローラー211の摩耗、潤滑剤の物品Pcへの付着等の不具合の発生を抑制できる。
【0135】
以上示した、潤滑剤付与機構9、9A、9Bのような構成とすることで、物品搬送装置100の溝部134に一定のタイミングで自動的に潤滑剤が付与される。そのため、使用者が特に意識しなくても、溝部134から潤滑剤が切れることを抑制できる。これにより、長期間にわたり、潤滑剤を自動的に溝部134の全体に略均一に塗布することができるため、使用者の手間を減らすことができる。つまり、使用者の利便性を高めることができる。
【0136】
潤滑剤を溝部134に付与するとき、潤滑剤が多いと溝部134から垂れたり、上ローラー211で潤滑剤を塗布するときに飛び散ったりする可能性があり好ましくない。また、潤滑剤が少ないと溝部134に潤滑剤が塗布されにくい部分が形成されたり、塗布された潤滑剤の膜厚が小さくなったりして、潤滑不良が発生しやすくなる。
【0137】
このような不具合の発生を抑制するため、潤滑剤付与機構9、9A、9Bでは、潤滑剤供給部92から供給する潤滑剤の量を、潤滑剤を付与す毎に変化させ、潤滑状態を確認する。そして、潤滑剤を付与する毎に、潤滑剤の付与頻度及び潤滑剤の量を溝部134の潤滑状態と関連付けて記憶回路42に記憶させる。そして、潤滑状態が一定の条件よりも高い条件となる純化剤の量を記憶させる。その後、予め決められた潤滑剤の付与頻度から、潤滑状態が一定の条件よりも高くなる潤滑剤の量を記憶から呼出し、その潤滑剤の量となるように、コントローラ4が潤滑剤供給部92を動作させてもよい。このようにすることで、物品搬送装置100の個体ごとに条件がばらつく場合にも、その個体に最適な条件で潤滑剤の付与を実行できる。
【0138】
なお、潤滑状態を検出する方法としては、潤滑状態を検出するセンサを用いてもよいし、リニア搬送機構3が各コイル31に供給される電流値の変動から、搬送シャトル2の摩擦力の変化を推定し、その結果に基づいて潤滑状態を推定してもよい。
【0139】
また、1つの付与可能間隔での潤滑剤の付与で、十分な潤滑剤の付与が難しい場合には、別の付与可能間隔を見つけて、潤滑剤を付与するようにしてもよい。つまり、1回の潤滑剤を付与する処理で、複数回、潤滑剤保持体91から潤滑剤を付与するようにしてもよい。このようにすることで、付与時に潤滑剤が垂れることなく、また、溝部134の全体に十分な潤滑剤を塗布することができる。
【0140】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこの内容に限定されるものではない。また本発明の実施形態は、発明の趣旨を逸脱しない限り、種々の改変を加えることが可能である。
【0141】
<まとめ>
本発明は、以下の構成を有する。
【0142】
(1)物品搬送装置は、外面に物品の搬送方向に沿って延びる溝部を有するレールを有する搬送部と、
前記溝部に嵌った状態で回転移動可能なローラーを有し前記物品を保持して前記搬送方向に移動可能な複数の搬送シャトルと、
前記搬送シャトルを前記搬送部に沿って移動させるリニア搬送機構と、
前記溝部と前記ローラーとの間に潤滑剤を付与する潤滑剤付与機構と、を有し、
予め決められたタイミング毎に、前記搬送部で搬送される物品が無い状態を潤滑剤付与状態が発生され、
前記潤滑剤付与状態のときに前記潤滑剤付与機構が、前記溝部又は前記ローラーの一方に前記潤滑剤を付与する。
【0143】
(2)前記移動機構は、前記ローラーに前記潤滑剤が付与される前記搬送シャトルの前記物品を搬送した回数が所定回数に到達する毎に前記潤滑剤を付与する(1)に記載の物品搬送装置。
【0144】
(3)前記リニア機構は、予め決められた位置を通過した前記搬送シャトルの数が一定数に到達するごとに前記潤滑剤を付与する請求項(1)又は(2)に記載の物品搬送装置。
【0145】
(4)前記潤滑剤付与機構は、
前記潤滑剤を保持するとともに前記レールの所定の位置と対向して配置される潤滑剤保持部と、
前記潤滑剤保持部に前記潤滑剤を供給する潤滑剤供給部と、
前記潤滑剤保持部を前記ローラーと干渉しない退避位置と、前記ローラーの外周面又は前記溝部に接触して前記潤滑剤を付与する付与位置との間で往復させる移動機構とを有し、
前記移動機構は、前記潤滑剤保持部を前記退避位置から前記付与位置に移動させ、前記潤滑剤の付与が終了した後、前記付与位置から前記退避位置に移動させる付与動作を実行する(1)から(3)のいずれかに記載の物品搬送装置。
【0146】
(5)前記付与位置は、前記潤滑剤保持部を前記ローラーの外周面に接触させる位置であり、
前記潤滑剤保持部の前記ローラーが接触する部分の搬送方向の長さは、前記ローラーの外周の長さよりも長い(4)に記載の物品搬送装置。
【0147】
(6)前記潤滑剤保持部は、前記ローラーが接触したときに前記ローラーの外周面の形状に合わせて変形可能である(5)に記載の物品搬送装置。
【0148】
(7)前記付与位置は、前記潤滑剤保持部を前記溝部の内面に接触させる位置である(5)又は(6)記載の物品搬送装置。
【0149】
(8)前記潤滑剤保持部は、前記溝部の内面に接触するように変形可能である(5)から(7)のいずれかに記載の物品搬送装置。
【0150】
(9)前記レールは、前記溝部の上部が開口しており、
前記潤滑剤付与機構は、前記溝部に前記潤滑剤を滴下する(1)から(3)のいずれかに記載の物品搬送装置。
【符号の説明】
【0151】
100、100A 物品搬送装置
1、1A 搬送部
11 第1搬送ルート
111、111A 第1直線搬送レール
112、112A 第2直線搬送レール
113、113A 第1曲線搬送レール
114、114A 第2曲線搬送レール
115 搬出部
12 第2搬送ルート
121 分岐レール
122 合流レール
123 帰還レール
124 物品排出部
13、13A レール
131、131A レール本体部
132 レール上部
132A 第1レール
133 レール下部
133A 第2レール
134 溝部
135 隙間
2、2A 搬送シャトル
21、21A シャトル本体
211 上ローラー
211A 第1ローラー
212 下ローラー
212A 第2ローラー
213 凸部
22 物品保持部
221 保持板
222 保持アーム
2211 貫通孔
2212 凹部
223 支持台座
225 第1接触部
226 第2接触部
227 前部支持台座
228 後部支持台座
24 第1面
25 第2面
3 リニア搬送機構
31 コイル
32 マグネット
33 リニアドライバ
4 コントローラ
41 処理回路
42 記憶回路
5 供給部
51 物品移動部
52 ガイドバー
6 検査部
7 処理部
61 撮像部
62 判定部
9、9A、9B 潤滑剤付与機構
91、91B 潤滑剤保持部
91A 潤滑剤滴下部
911、911B 潤滑剤保持体
912 ハウジング
913 傾斜面
914 供給配管
915 容器
916 ノズル
9161 滴下口
917 凹溝
92 潤滑剤供給部
921 タンク
922 ポンプ
923 エアバルブ
93 移動部
931 移動体
94 パイプ