(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093787
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】ペースト状食品用品質向上剤、およびペースト状食品
(51)【国際特許分類】
A23L 29/256 20160101AFI20240702BHJP
A23L 29/212 20160101ALI20240702BHJP
A23L 9/20 20160101ALI20240702BHJP
A23G 3/42 20060101ALI20240702BHJP
A23L 29/00 20160101ALI20240702BHJP
A23G 3/34 20060101ALN20240702BHJP
【FI】
A23L29/256
A23L29/212
A23L9/20
A23G3/42
A23L29/00
A23G3/34 106
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210368
(22)【出願日】2022-12-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000118615
【氏名又は名称】伊那食品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小山 紗織
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 暢宏
【テーマコード(参考)】
4B014
4B025
4B035
4B041
【Fターム(参考)】
4B014GE04
4B014GG05
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4B041LP27
(57)【要約】
【課題】ペースト状食品の艶、保形性、耐離水性、味立ち、糊状感、および作業性を向上させることが可能なペースト状食品用品質向上剤、およびこれらの品質の向上したペースト状食品を提供する。
【解決手段】本発明に係るペースト状食品用品質向上剤、およびペースト状食品は、1.5%寒天濃度のゲルにおける20℃での強度が600g/cm2以上の寒天と、澱粉とを含有することを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペースト状食品の品質を向上させる品質向上剤であって、1.5%寒天濃度のゲルにおける20℃での強度が600g/cm2以上の寒天と、澱粉とを含有することを特徴とするペースト状食品用品質向上剤。
【請求項2】
前記澱粉は、((GS/150)×100)で定義されるゲル強度残存率(GSは、0.25%の寒天Xと1.5%の澱粉とを含有する寒天・澱粉溶液のゲル化物の20℃におけるゲル強度であり、寒天Xは、0.25%の濃度でゲルを調製した際、20℃におけるゲル強度が150g/cm2の寒天である)が、15~80%であることを特徴とする請求項1に記載のペースト状食品用品質向上剤。
【請求項3】
前記澱粉は、3%澱粉濃度のゾルにおける10℃での粘度が、10~200mPa・sであることを特徴とする請求項1または2に記載のペースト状食品用品質向上剤。
【請求項4】
1.5%寒天濃度のゲルにおける20℃での強度が600g/cm2以上の寒天と、澱粉とを含有することを特徴とするペースト状食品。
【請求項5】
前記澱粉は、((GS/150)×100)で定義されるゲル強度残存率(GSは、0.25%の寒天Xと1.5%の澱粉とを含有する寒天・澱粉溶液のゲル化物の20℃におけるゲル強度であり、寒天Xは、0.25%の濃度でゲルを調製した際、20℃におけるゲル強度が150g/cm2の寒天である)が、15~80%であることを特徴とする請求項4に記載のペースト状食品
【請求項6】
前記澱粉は、3%澱粉濃度のゾルにおける10℃での粘度が、10~200mPa・sであることを特徴とする請求項4または5に記載のペースト状食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペースト状食品用品質向上剤、およびペースト状食品に関する。
【背景技術】
【0002】
ペースト状食品は、パン類や菓子類等の生地にサンドまたはトッピングして用いられることがある。ペースト状食品を含有する最終製品の出来栄えには、ペースト状食品の品質が大きく影響する。
従来、ペースト状食品の品質向上には、「伊那寒天イーナ(伊那食品工業社製)」のような1.5%寒天ゲル強度が250g/cm2以下に調整された半固形状にゲル化する低強度寒天が用いられてきた(例えば、特許文献1参照)。低強度寒天を用いた寒天ゲルは、柔らかいペースト状の物性を示し、ペースト状食品に添加してもペースト状食品本来の食感を劣化させにくいためである。
【0003】
ペースト状食品は、滑らかさ、艶、保形性、耐離水性、味立ち、糊状感、および作業性の全てが良好であることが望まれるものの、そのような品質の向上が可能な品質向上剤は、未だ得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、ペースト状食品の滑らかさ、艶、保形性、耐離水性、味立ち、糊状感、および作業性を向上させることが可能なペースト状食品用品質向上剤、およびこれらの品質の向上したペースト状食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明者らは、20℃における1.5%寒天ゲル強度が600g/cm2以上である寒天を澱粉と組み合わせることによって、ペースト状食品本来の滑らかな食感を損ねることなく、ペースト状食品の品質向上効果が得られることを見出し、本発明に至った。
【0007】
すなわち、本発明に係るペースト状食品用品質向上剤は、ペースト状食品の品質を向上させる品質向上剤であって、1.5%寒天濃度のゲルにおける20℃でのゲル強度が600g/cm2以上の寒天と、澱粉とを含有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係るペースト状食品は、1.5%寒天濃度のゲルにおける20℃での強度が600g/cm2以上の寒天と、澱粉とを含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ペースト状食品の滑らかさ、艶、保形性、耐離水性、味立ち、糊状感、および作業性を向上させることが可能なペースト状食品用品質向上剤、およびこれらの品質の向上したペースト状食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の品質向上剤は、ペースト状食品の品質を高めるために用いられる。本発明におけるペースト状食品は、一定の形状を持たずに半固形状のテクスチャーを示す食品を指す。例えば、豆類、ナッツ類、芋類、および野菜類からなる群より選択される材料の粉砕物を含有するものが挙げられる。これらを、第1のペースト状食品と称する。小麦粉やコーンスターチを加熱してなる糊化澱粉の効果によって保形しているもの(例えば、フラワーペースト、カスタードクリーム等)もまた、本発明におけるペースト状食品の一種である。これらを、第2のペースト状食品と称する。第1および第2のペースト状食品については、追って詳細に説明する。
【0011】
本発明の品質向上剤により向上するペースト状食品の品質とは、滑らかさ、艶、保形性、耐離水性、味立ち、糊状感、および作業性であり、特に耐離水性が重要視される。本発明の品質向上剤は、所定の寒天と澱粉とを含有しているので、ペースト状食品の品質を高めることが可能となった。
【0012】
本発明に用いられる寒天は、1.5%寒天濃度のゲルにおける20℃での強度、すなわち20℃における1.5%寒天ゲル強度が600g/cm2以上である。1.5%ゲル強度が低すぎると、ペースト状食品に糊状感が生じたり、耐離水性が低下したり、保形性が低くなったりして目的を達成することができない。寒天の1.5%寒天ゲル強度は、800g/cm2以上が好ましく、1000g/cm2超がより好ましく、1300g/cm2以上がさらに好ましい。なお、現在の技術で製造される寒天の1.5%ゲル強度は、最大で2000g/cm2程度である。
【0013】
20℃における1.5%寒天ゲル強度が600g/cm2以上の寒天は、ペースト状食品の保形性を高め、離水を防止する。また、1.5%寒天ゲル強度が600g/cm2未満の低い寒天を使用した場合よりも、味立ちがよく、糊状感の少ないペースト状食品を製造することが可能である。すなわち、1.5%寒天ゲル強度が高いほど、艶があり、保形性が高く、耐離水性が高く、糊状感が少なく、しかも味立ちがよいペースト状食品を製造することができる。
【0014】
1.5%寒天ゲル強度が600g/cm2以上の寒天としては、市販品を用いることができる。なお、1.5%寒天ゲル強度が600g/cm2以上の寒天を用いた寒天ゲルは、固いゼリー状の物性を示す。これをペースト状食品に添加した際には、ペースト状食品の滑らかな食感が損なわれてしまうため、品質向上のためにペースト状食品に添加されることはなかった。本発明者らは、こうした寒天を澱粉と組み合わせることによって、ペースト状食品本来の滑らかな食感を損なうことなく、品質向上効果が発揮されることを見出した。
【0015】
澱粉は、ペースト状食品の艶を向上させ、離水を防止する。本発明に用いられる澱粉は、((GS/150)×100)で定義されるゲル強度残存率が、15~80%であることが好ましい。GSは、0.25%の寒天Xと1.5%の澱粉とを含有する寒天・澱粉溶液のゲル化物の20℃におけるゲル強度であり、寒天Xは、0.25%の濃度でゲルを調製した際、20℃におけるゲル強度が150g/cm2の寒天である。ゲル強度残存率は20~60%がより好ましく、20~50%であることがさらに好ましい。
【0016】
ゲル強度残存率は、寒天分子の網目構造と相互作用する度合いを表している。ゲル強度残存率が低すぎる澱粉を用いると、ペースト状食品の保形性が低くなってしまう場合があり。一方、ゲル強度残存率が高すぎる澱粉を用いると、ペースト状食品の滑らかな食感が損なわれてしまったり、離水が多くなってしまったりする場合がある。
【0017】
ゲル強度残存率が、15~80%の澱粉は、市販の澱粉を処理することによって取得することができる。処理としては、例えば、ドラム乾燥機・スプレー乾燥機・凍結乾燥機・エクストルーダー等を用いたα化処理;ターボ粉砕機・サイクロン粉砕機・石臼式粉砕機等を用いた粉砕処理;α-アミラーゼ等を用いた酵素処理;乳酸・リン酸・クエン酸等を用いた酸処理等が挙げられる。
【0018】
湿熱処理等の処理を行うことで、膨潤を抑制された澱粉を製造することができる。上記方法によっても澱粉のゲル強度残存率を調整できるものの、このようにして製造された澱粉を使用すると離水の発生が増加したり、ざらつきが生じたりしてペースト状食品本来の滑らかな食感が損なわれてしまう。したがって、澱粉の膨潤を抑制するための処理は好ましくない。
α化処理の一例としては、ドラムの表面温度が90~150℃程度のドラム乾燥機での乾燥が挙げられるが、α化処理を行う形態は特に限定されるものではない。乾燥機の種類や条件等は、一般に知られた形態を用いて適宜調節すればよい。
【0019】
澱粉のゲル強度残存率を向上させるためには、例えば乾燥時間を長くする、乾燥温度を高くする、あるいは、乾燥前の澱粉溶液の濃度を低くするといった手法が挙げられる。粉砕処理には、例えば回転数が60Hzのターボ粉砕機を用いることができるが、粉砕処理を行う形態は特に限定されるものではなく、粉砕機の種類や条件等は一般に知られた形態を用いて適宜調節すればよい。
【0020】
澱粉を粉砕する際、粉砕強度を高め、粉砕物の粒度を細かくした場合も、ゲル強度残存率を向上させることができる。具体的には、粉砕機の回転数を高める、クリアランスを狭くする、原料の供給量を低減するという手法が挙げられる。また、市販の澱粉であっても、ゲル強度残存率が15~80%である場合には、本発明の品質向上剤に好適に用いることができる。
【0021】
上述したような澱粉は、3%澱粉濃度のゾルにおける10℃での粘度、すなわち10℃における3%ゾル粘度が10~200mPa・sであることが好ましい。3%ゾル粘度が低すぎる澱粉を用いると、十分な離水防止効果が得られない場合がある。一方、3%ゾル粘度の高すぎる澱粉を用いると、ペースト状食品の糊状感が強くなったり、味立ちが悪くなったりしてしまう場合がある。澱粉の3%ゾル粘度は、20~200mPa・sであることがより好ましく、50~200mPa・sであることがさらに好ましい。
【0022】
澱粉の由来原料は特に限定されないが、例えば、うるち米、もち米、タピオカ、コーン、葛粉、および馬鈴薯等が挙げられる。より高い品質向上効果が得られることから、うるち米、もち米、タピオカ、コーン、葛由来の澱粉を用いることが好ましく、うるち米、もち米、タピオカ、コーン由来の澱粉を用いることがより好ましく、うるち米由来の澱粉を用いることがさらに好ましい。また、食品澱粉、加工澱粉であるか否かは特に限定されず、いずれを用いてもよい。
【0023】
品質向上剤における寒天と澱粉との配合比(寒天:澱粉)は、3:3~3:300であることが好ましい。寒天の割合が高く澱粉の割合が低い場合には、離水が多くなってしまったり、艶がなくなってしまったり、滑らかな食感が損なわれてしまったりする場合がある。これとは逆に、寒天の割合が低く澱粉の割合が高い場合には、糊状感が強くなってしまったり、保形性が低くなってしまったり、味立ちが悪くなってしまったりする場合がある。
【0024】
品質向上剤における寒天と澱粉とのより好ましい配合比は、品質向上の対象となるペースト状食品に応じて異なる。例えば、第1のペースト状食品であれば、品質向上剤における配合比(寒天:澱粉)が3:8~3:100の場合に、より高い品質向上効果が得られ、3:15~3:50の配合比が特に高い品質向上効果が得られる。一方、第2のペースト状食品であれば、配合比(寒天:澱粉)が3:10~3:80の場合に、より高い品質向上効果が得られ、3:15~3:60の場合にさらに高い品質向上効果が得られ、3:20~3:45の配合比が特に高い品質向上効果が得られる。
【0025】
品質向上剤には、一般的なゲル化剤・増粘安定剤・食品添加物が含有されていてもよい。例えば、こんにゃく粉、カラギーナン、キサンタンガム、ジェランガム、ウェランガム、アグロバクテリウムスクシノグリカン、カードラン、プルラン、ペクチン、フェネグリークガム、グァーガム、タラガム、ローカストビーンガム、カシヤガム、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、アルギン酸、アルギン酸塩、アラビアガム、大豆多糖類、ゼラチン、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびデキストリン等が挙げられる。また、本発明の品質向上剤の効果を妨げない程度であれば、寒天または澱粉が含有されていてもよい。一般的なゲル化剤・増粘安定剤・食品添加物であれば特に限定されず、任意のものを用いることができる。
【0026】
本発明の品質向上剤は、所定の寒天と澱粉、および必要に応じて上記ゲル化剤・増粘安定剤・食品添加物等を配合し、ミキサー等により均一に混合して作製することができる。
【0027】
本発明の品質向上剤を用いることにより品質向上が可能なペースト状食品について、以下に説明する。
本発明の品質向上剤は、一定の形状を持たず半固形状のテクスチャーを示すペースト状食品であれば、何れにも用いることができるが、以下に示す第1のペースト状食品、または第2のペースト状食品の品質向上に好適に用いることができる。
【0028】
第1のペースト状食品とは、豆類、ナッツ類、芋類、および野菜類からなる群より選択される材料の粉砕物を含有するペースト状食品のことである。第1のペースト状食品は、離水、艶、保形性の問題が生じやすく、品質の向上が求められていた。第1のペースト状食品のうちでは、豆類、ナッツ類、または芋類を含有する場合、より優れた品質向上効果が発揮され、豆類を含有する場合に特に優れた品質向上効果が発揮される。
以下、第1のペースト状食品について具体的に説明する。
【0029】
豆類とは、分類学的に「マメ科」に属するものを指し、例えば、小豆、大豆、緑豆、ささげ、金時豆、黒豆、手亡豆、エンドウ豆、そら豆、ひよこ豆、レンズ豆、および落花生等が挙げられる。なかでも、小豆、手亡豆、エンドウ豆が好ましい。豆類を用いたペースト状食品の例としては、餡、ピーナッツバター、味噌等が挙げられる。高い品質向上効果が発揮されるため、餡が好ましい。
【0030】
ナッツ類とは、食用の堅果種子のことであり、例えば、栗、アーモンド、マカダミア、カシューナッツ、ピスタチオ、およびクルミ等が挙げられる。ナッツ類を用いたペースト状食品の例としては、モンブランクリーム、栗きんとん等が挙げられる。
【0031】
芋類とは、植物の根や地下茎が養分を蓄えて肥大化したものを指し、例えば、安納芋、さつまいも、およびじゃがいも等が挙げられる。芋類を用いたペースト状食品の例としては、スイートポテト、芋ペースト等が挙げられる。
【0032】
野菜類とは、苗を植えてから1年で収穫する草本植物のことを指し、例えば、かぼちゃ、にんじん、トマト、スイカ、メロン、およびイチゴ等が挙げられる。野菜類を用いたペースト状食品としては、かぼちゃペースト、ケチャップ、ジャム等が挙げられる。
【0033】
豆類、ナッツ類、芋類および野菜類からなる群より選択される材料は、粉砕物としてペースト状食品に含有される。粉砕物は任意の方法により取得することができ、その方法は特に限定されない。例えば、ミキサーによる粉砕、柔らかく煮た材料をつぶすといった方法等が挙げられる。
【0034】
また、第1のペースト状食品は糊化澱粉含有量が5%以下であることが好ましい。これは、糊化澱粉含有量が多いペースト状食品は、そもそも上述したペースト状食品の課題が生じにくいためである。糊化澱粉とは、加熱された結果、完全に糊化しペースト状となった澱粉をさす。ここでの澱粉とは、いわゆる食品表示上の「澱粉」や「加工澱粉」に加え、「小麦粉」や「米粉」等の穀物を粉砕し「…粉」で呼称されるものを含んでいる。また、上記澱粉には、豆類、ナッツ類、芋類、および野菜類からなる群より選択される材料の粉砕物に含まれる澱粉は含まれない。これは、豆類、ナッツ類、芋類、および野菜類からなる群より選択される材料の粉砕物に含有される澱粉は加熱料理してもペースト状とならず、上述したペースト状食品の課題に対して影響を及ぼさないためである。
第1のペースト状食品に含まれる糊化澱粉は、本発明の品質向上剤に含有される澱粉も合わせて5質量%以下が好ましく、4.5質量%以下がより好ましく、4.0質量%以下がさらに好ましく、3.5質量%以下がよりさらに好ましく、3.0質量%以下が特に好ましく、2.5質量%以下がより特に好ましく、2.0質量%以下が最も好ましい。
【0035】
第1のペースト状食品のBrixは、市販のBrix測定器を用いて測定することができる。第1のペースト状食品のBrixが60以下の場合には、低糖度と称することができ、特にこのような低糖度の場合には上述した課題が生じやすい。このため、本発明に係る品質向上剤の効果が強く発揮される。また、第1のペースト状食品のBrixが高いほど、上述したような課題が生じにくいため、品質向上剤の必要性が低くなってしまう。
したがって、第1のペースト状食品のBrixは、35~75が好ましく、40~65がより好ましく、40~60がさらに好ましく、40~55がよりさらに好ましく、40~50が特に好ましい。なお、Brixが30未満の第1のペースト状食品に対しては、品質向上剤による離水防止効果が得られない場合がある。
【0036】
本発明の品質向上剤は、pHが6.0以上の第1のペースト状食品に対して、特に効果を発揮する。第1のペースト状食品のpHが低すぎる場合、酸によって寒天が分解されてしまい、糊状感が生じてしまったり、離水が生じてしまったりする場合がある。例えば、加熱工程をすべて終えてからpHを6.0よりも低い酸性に調整し、その後は一切の加熱工程を経ずに製造された第1のペースト状食品については、ある程度の品質向上効果が得られるが、経時的に寒天、および澱粉が酸によって分解されてしまい、本発明の品質向上剤の効果が低くなってしまう場合がある。また、pHを6.0より低い酸性に調整してから加熱工程を経て製造される第1のペースト状食品については、加熱工程中に寒天、および澱粉が酸によってひどく分解されてしまい、本発明の品質向上剤の効果がほとんど得られなくなってしまう。
第1のペースト状食品のpHは、例えばクエン酸ナトリウム等により調整することができる。pHが6.0以上の第1のペースト状食品としては、具体的には、小豆餡等が挙げられる。
【0037】
第1のペースト状食品中に、本発明の品質向上剤が0.05~2.5質量%程度含有されていれば、所望の品質向上効果を得ることができる。この場合、第1のペースト状食品における寒天の含有量は、0.005~0.2質量%であり、澱粉の含有量は、0.04~2.5質量%である。ペースト状食品中における寒天の含有量は、0.02~0.20質量%がより好ましく、0.03~0.15質量%がさらに好ましく、0.05~0.15質量%がよりさらに好ましい。澱粉の含有量は、0.1~2.0質量%がより好ましく、0.2~2.0質量%がさらに好ましく、0.3~1.5質量%がよりさらに好ましく、0.5~1.5質量%が特に好ましい。
【0038】
品質向上剤の含有量や、寒天および澱粉の含有量は、品質向上剤の添加前の第1のペースト状食品本来の保形性や耐離水性によって好ましい範囲が異なる。第1のペースト状食品本来の保形性や耐離水性が低い場合は、品質向上剤や寒天および澱粉の好ましい含有量は多くなる傾向があり、第1のペースト状食品本来の保形性や耐離水性が比較的高い場合は、品質向上剤や寒天および澱粉の好ましい含有量は少なくなる傾向がある。しかしながら、いずれの場合においても第1のペースト状食品中に、本発明の品質向上剤が0.05~2.5質量%程度含有されていれば、所望の品質向上効果を得ることができる。
【0039】
本発明の品質向上剤は、フラワーペーストやカスタードクリーム等の糊化澱粉によって保形されているペースト状食品(第2のペースト状食品)の品質向上にも、用いることができる。上述したように、糊化澱粉とは、加熱された結果、完全に糊化しペースト状となった澱粉をさす。ここでの澱粉とは、いわゆる食品表示上の「澱粉」や「加工澱粉」に加え、「小麦粉」や「米粉」等の穀物を粉砕し「…粉」で呼称されるものを含んでいる。
【0040】
第2のペースト状食品としては、具体的には、カスタードクリーム、フラワーペースト、およびミルクジャム等が挙げられる。こうした第2のペースト状食品は、離水や保形性の問題が比較的生じにくい。しかしながら、糊状感が少なく味立ちの良いテクスチャーとするために糊化澱粉の一部または全部を減量した場合、第2のペースト状食品は保形性の低下や耐離水性の低下が生じる。本発明の品質向上剤を用いることにより、滑らかさ、艶、保形性、耐離水性、味立ち、糊状感、および作業性の全てを兼ね備えた第2のペースト状食品を製造することが可能となった。
【0041】
第2のペースト状食品のBrixは、上述したように市販のBrix測定器を用いて測定することができる。一般的な第2のペースト状食品はBrixが15~65程度であるが、第1のペースト状食品の場合と同様にBrixが高い第2のペースト状食品には、上述したような課題が生じにくい。このため、本発明の品質向上剤の必要性が低くなってしまう。一方で、Brixが低いほど上述したような課題が生じやすくなるため、本発明に係る品質向上剤の効果が強く発揮される。したがって、第2のペースト状食品のBrixは、15~50が好ましく、15~40がより好ましく、15~35がさらに好ましく、15~30がよりさらに好ましく、15~25が特に好ましい。
【0042】
本発明の品質向上剤は、pHが6.0以上の第2のペースト状食品に対して、特に効果を発揮する。第2のペースト状食品のpHが低すぎる場合、酸によって寒天、および澱粉が分解されてしまい、糊状感が生じてしまったり、離水が生じてしまったりする場合がある。例えば、加熱工程をすべて終えてからpHを6.0よりも低い酸性に調整し、その後は一切の加熱工程を経ずに製造された第2のペースト状食品については、ある程度の品質向上効果が得られるが、経時的に寒天、および澱粉が酸によって分解されてしまい、本発明の品質向上剤の効果が低くなってしまう場合がある。また、pHを6.0より低い酸性に調整してから加熱工程を経て製造される第2のペースト状食品については、加熱工程中に寒天、および澱粉が酸によってひどく分解されてしまい、本発明の品質向上剤の効果がほとんど得られなくなってしまう。
第2のペースト状食品のpHは、例えばクエン酸ナトリウム等により調整することができる。pHが6.0以上の第2のペースト状食品としては、具体的には、カスタードクリームやフラワーペースト等が挙げられる。
【0043】
第2のペースト状食品に本発明の品質向上剤を配合する場合には、品質向上剤中の澱粉を含めて、最終的なペースト状食品中の糊化澱粉が2.0~5.0質量%となるように用いることで所望の品質向上効果が得られる。最終的なペースト状食品中の糊化澱粉が2.0~4.5質量%となる場合には、より高い品質向上効果が得られ、2.5~4.5質量%となる場合には、さらに高い品質向上効果が得られ、2.5~4.0質量%となる場合、よりさらに高い品質向上効果が得られ、3.0~4.0質量%となる場合、特に高い品質向上効果が得られる。
【0044】
第2のペースト状食品中における寒天の含有量は、0.2~0.5質量%であることが好ましく、0.2~0.45質量%であることがより好ましく、0.25~0.45質量%がさらに好ましく、0.25~0.4質量%であることがよりさらに好ましく、0.3~0.4質量%であることが特に好ましい。
【0045】
本発明のペースト状食品は、例えば、対象となるペースト状食品に本発明の品質向上剤を加え、均一に混合して加熱することにより製造することができる。その際、グラニュー糖、水あめ等を適宜配合して、Brixを調整してもよい。
【0046】
本発明の品質向上剤は、1.5%寒天ゲル強度が600g/cm2以上の寒天と澱粉とを含有しているので、両者の相互作用によってペースト状食品の品質を向上させるという効果が得られた。
1.5%寒天ゲル強度が600g/cm2以上の寒天は分子量が大きく、分子同士が強く相互作用するため、緻密な網目構造を形成することができる。こうした寒天を使用した寒天ゲルは保形性が高く、硬いものとなる。また、寒天は分子量が大きくなるにつれて、糊状感が低下し、味立ちが向上するという傾向がある。しかしながら、1.5%寒天ゲル強度が600g/cm2以上の寒天からなる寒天ゲルは、その固まり方の強さから滑らかさに乏しく、ペースト状食品に応用することができなかった。
【0047】
本発明者らは、澱粉を併用することで、1.5%寒天ゲル強度が600g/cm2以上の寒天の効果を発揮させつつ、ペースト状食品本来の滑らかな食感を損なわずに品質向上効果が得られることを見出した。これは、澱粉分子が寒天分子と相互作用して、寒天分子同士の結合を阻害することに起因する。すなわち、1.5%寒天ゲル強度が600g/cm2以上の寒天を用いた場合でも、寒天ゲルが強く固まりすぎず滑らかなテクスチャーとなる。ゲル強度残存率が15~80%である澱粉を用いた場合には、ペースト状食品本来の滑らかさを損なうことなく、より高い品質向上効果が得られる。
【0048】
澱粉を併用することによって、ペースト状食品の艶と耐離水性を向上させることができるものの、糊状感の増加、味立ちの劣化、さらには作業性の悪化という問題が生じることがある。本発明者らは、3%ゾル粘度が10~200mPa・sの澱粉を用いることで、こうした問題を回避できることを見出した。
本発明の品質向上剤によると、以上のようなメカニズムによってペースト状食品本来の滑らかさを損なうことなく品質を向上させることが可能となった。
【実施例0049】
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【0050】
品質向上剤の調製に用いる寒天を、1.5%寒天ゲル強度(JS)とともに以下に示す。
なお、寒天の1.5%寒天ゲル強度は「日寒水式」の測定方法により測定した。まず、1.5%の寒天溶液を20℃で15時間冷却してゲル化させ、寒天ゲルを作製した。得られた寒天ゲルを表面積1cm2のプランジャーを用いて20秒間耐え得る最大重量を測定して1.5%寒天ゲル強度とした。
【0051】
寒天1:伊那寒天UX-100/伊那食品工業社製(JS 110)
寒天2:伊那寒天T-2000/伊那食品工業社製(JS 650)
寒天3:伊那寒天M-8/伊那食品工業社製(JS 840)
寒天4:伊那寒天T-1/伊那食品工業社製(JS 1000)
寒天5:伊那寒天WK-972/伊那食品工業社製(JS 1350)
寒天6:伊那寒天カリコリカン/伊那食品工業社製(JS 1880)
【0052】
品質向上剤の調製に用いる澱粉を、ゲル強度残存率および3%ゾル粘度(VIS)とともに以下に示す。ゲル強度残存率および3%ゾル粘度は、それぞれ後述する方法により測定した。
【0053】
うるち米澱粉A:ファインスノウ/上越スターチ社製
(ゲル強度残存率 40.5,VIS 1368)
うるち米澱粉B:うるち米澱粉Aを処理して取得した。具体的には、うるち米澱粉Aの5%水溶液を、表面温度が110℃のドラムドライヤ―を用いて乾燥した後、カッターミルで粉砕した。
(ゲル強度残存率 20.4,VIS 178)
うるち米澱粉C:うるち米澱粉Bを処理して取得した。具体的には、うるち米澱粉Bをターボ粉砕機で粉砕し、100メッシュの篩を用いて篩分けを行った。
(ゲル強度残存率 24.9,VIS 104)
うるち米澱粉D:うるち米澱粉Cを処理して取得した。具体的には、うるち米澱粉Cをさらに石臼式粉砕機で粉砕した後、200メッシュの篩を用いて篩分けを行った。
(ゲル強度残存率 46.4,VIS 52)
うるち米澱粉E:うるち米澱粉Dを処理して取得した。具体的には、うるち米澱粉Dをさらに石臼式粉砕機で粉砕した後、200メッシュの篩を用いて篩分けを行った。
(ゲル強度残存率 57.1,VIS 24)
うるち米澱粉F:うるち米澱粉Aをエクストルーダー処理して取得した。具体的には、供給部温度:40℃、射出部温度:110℃となるように段階的に加熱し、圧縮比が1:1のスクリューが毎分180回転するエクストルーダーにうるち米澱粉Aと水を1:1となるように供給し処理を行った。射出部より得られた処理物をターボ粉砕機で粉砕した後、100メッシュの篩を用いて篩分けを行った。
(ゲル強度残存率 75.4,VIS 15)
うるち米澱粉G:うるち米澱粉Aを処理して取得した。具体的には、うるち米澱粉Aの10%水溶液を、表面温度が105℃のドラムドライヤ―を用いて乾燥した後、カッターミルで粉砕した。
(ゲル強度残存率 17.1,VIS 189)
【0054】
もち米澱粉A:モチールB(上越スターチ社製)の10%水溶液を、表面温度が110℃のドラムドライヤ―を用いて乾燥した。その後、石臼式粉砕機で粉砕し、180メッシュの篩を用いて篩分けを行った。
(ゲル強度残存率 20.5,VIS 98)
【0055】
コーン澱粉A:コーンスターチホワイト(日本コーンスターチ社製)の10%水溶液を、表面温度が110℃のドラムドライヤ―を用いて乾燥した。その後、ターボ粉砕機で粉砕し、100メッシュの篩を用いて篩分けを行った。
(ゲル強度残存率 23.2,VIS 74)
【0056】
タピオカ澱粉A:MKK-100(松谷化学工業社製)の10%水溶液を、表面温度が110℃のドラムドライヤ―を用いて乾燥した。その後、石臼式粉砕機で粉砕し、180メッシュの篩を用いて篩分けを行った。
(ゲル強度残存率 25.8,VIS 90)
【0057】
葛粉A:吉野本葛(天極堂社製)の10%水溶液を、表面温度が110℃のドラムドライヤ―を用いて乾燥した。その後、ターボ粉砕機で粉砕し、100メッシュの篩を用いて篩分けを行った。
(ゲル強度残存率 20.9,VIS 108)
【0058】
<ゲル強度残存率>
寒天として、伊那寒天カリコリカン(伊那食品工業)を準備した。伊那寒天カリコリカンは、0.25%の濃度のゲルとした際、20℃におけるゲル強度が150g/cm2である。伊那寒天カリコリカン1.25g、澱粉7.5g、およびグラニュー糖75gをよく粉体混合し、500gの精製水にダマにならないよう気を付けながら分散した。
分散液を中火で加熱し、沸騰してから弱火で10分間加熱した。加熱後、秤量し、500gを超える場合は、水分が蒸発して500gになるまでさらに加熱した。500g未満の場合は、90℃の精製水を510gになるように追加し、再加熱して500gに調整した。重量調整後、液温が60℃になるまで蒸発を防ぎながら攪拌し冷却した。
【0059】
溶液は、重量が500gであることを確認した後、容器に充填した。容器は、直径が49mmで、高さが40mmのものを使用し、容器上部にテープを巻いて、テープ上端まで溶液を流し込んだ。試料溶液は、庫内の雰囲気温度が20℃に維持されるように設定された恒温槽にて15時間冷却し、ゲル化させた。恒温槽としては、試料を庫内に入れても温度が20℃+5℃以上にならないように十分に容量が大きなものを使用した。冷却後、テクスチャーアナライザー(StableMicroSystems社)でゲル強度を測定した。
なお、寒天・澱粉溶液にはグラニュー糖が含有されているが、ゲル強度の測定には何ら影響を及ぼすものではない。
【0060】
ゲル強度測定用の試料は、テープを除いて、容器からはみ出たゲルをナイフ等で容器上端に沿って水平にカットして準備した。試料における断面の中心のゲル強度を、以下の手法により測定した。具体的には、断面積1cm2の円柱状のプランジャーを、1mm/秒の速度でゲル化物に侵入させ、ゲルが破断したときの応力をゲル強度(GS)として記録した。((GS/150)×100)によりゲル強度残存率を算出した。
【0061】
<3%澱粉ゾル粘度>
澱粉ゾル粘度の測定にあたっては、まず、澱粉9.0gとグラニュー糖45gをよく粉体混合し、ダマにならないよう300gの精製水に分散させた。得られた分散液を中火で加熱し、沸騰後、弱火で3分間加熱した。加熱後の重量に応じて所定の操作を行い、重量を300gに調整した。加熱後の重量が300gを超える場合は、水分が蒸発して300gになるまでさらに加熱した。300g未満の場合は、310gになるように90℃の精製水を追加し、再加熱して300gに調整した。
【0062】
重量調整後、蒸発を避けつつ液温が60℃になるまで攪拌して冷却した。澱粉溶液は、重量が300gであることを確認した後、300mLのトールビーカーに全量を充填し、直ちにパラフィルムで覆った。その後、20℃の部屋で1時間放冷して粗熱を取った。粗熱を取った澱粉溶液は、庫内の雰囲気温度が10℃に維持されるように設定された恒温槽内で3時間冷却して、試料としての澱粉ゾルを得た。恒温槽としては、粗熱を取った試料を庫内に収容しても温度が10℃+5℃以上にならないように、十分に容量が大きなものを使用した。
【0063】
冷却後、試料の液温が10℃になったことを確認し、B型粘度計(ブルックフィールド社)で粘度を測定した。ローターは、試料の粘度に応じて、以下のとおり選択して使用した。
1000mPa・s以上の試料:No.3のローター
500mPa・s以上1000mPa・s未満の試料:No.2のローター
500mPa・s未満の試料:No.1のローター
測定は、室温が20℃に保たれた部屋で行い、ローターが回転し始めてから40秒後に測定された粘度を、3%ゾル粘度とした。
なお、澱粉ゾルにはグラニュー糖が含有されているが、ゾル粘度の測定には何ら影響を及ぼすものではない。
【0064】
品質向上剤が添加される第1のペースト状食品を、Brix(可溶性固形分)とともに以下に示す。Brixは、市販のBrix測定器(ATAGO社製)を用いて測定した。
小豆餡(Brix 55)
手亡餡(Brix 55)
白いんげん餡(Brix 55)
栗ペースト(Brix 40)
安納芋ペースト(Brix 28)
かぼちゃペースト(Brix 18)
【0065】
品質向上剤を含有する本発明のペースト状食品を製造し、滑らかさ、艶、保形性、耐離水性、糊状感、味立ち、作業性を評価する。それぞれの評価方法および判断基準を、以下に示す。
【0066】
<滑らかさ>
10名のパネラーが製品を試食し、滑らかさについて、以下の基準で段階評価を行った。表には、10名のパネラーがつけた点数を平均し、四捨五入した整数で示した。
4点:非常に滑らかな食感である
3点:滑らかな食感である
2点:やや滑らかな食感であるが、多少固まりがある
1点:滑らかでなく、所々に小さいゲルやざらつきがみられる
0点:全く滑らかでなく、細かいゲルの集合体となっている
【0067】
<艶>
ペースト状食品について目視により艶を確認し、以下の基準で5段階評価を行った。
4点:全体的に非常に艶がある
3点:全体的に艶がある
2点:部分的に艶が失われている
1点:艶がなく、部分的に白濁している
0点:全く艶がなく、白濁してしらけてしまっている
【0068】
<保形性>
ペースト状食品10gを皿の上に載置して、常温で放置した。24時間経過後の保形性を目視で確認し、以下の基準で5段階評価を行った。
4点:充填初期と全く変わらず、原型を完全にとどめている
3点:充填初期とほとんど変わらず、原型をほぼとどめている
2点:充填初期とあまり変わらず、原型が確認できる
1点:ダレてしまい、充填初期の原型はほぼとどめていない
0点:ダレてしまい、充填初期の原型を全くとどめていない
【0069】
<耐離水性>
ペースト状食品10gを濾紙の上に載置して、常温で放置した。24時間経過後の濾紙への染み込みを目視で確認し、以下の基準で5段階評価を行った。
4点:全く離水がない
3点:ほとんど離水がない
2点:あまり離水はない
1点:離水が出てしまっている
0点:非常に多くの離水が生じており、濾紙いっぱいに広がっている
【0070】
<糊状感>
10名のパネラーが製品を試食し、糊状感について、以下の基準で段階評価を行った。表には、10名のパネラーがつけた点数を平均し、四捨五入した整数で示した。
4点:糊状感が全くなく、非常にさっぱりした食感である
3点:糊状感がほとんどなく、さっぱりした食感である
2点:糊状感があまりなく、ある程度さっぱりした食感である
1点:糊状感がある
0点:糊状感が非常に強く、口の中にまとわりつく
【0071】
<味立ち>
10名のパネラーが製品を試食し、味立ちについて、以下の基準で5段階評価を行った。表には、10名のパネラーがつけた点数を平均し、四捨五入した整数で示した。
4点:味立ちが非常によく、素材の味を非常に強く感じる
3点:味立ちがよく、素材の味を感じる
2点:ある程度味立ちがよく、素材の味を感じる
1点:味立ちが悪く、素材の味を遠く感じる
0点:味立ちが非常に悪く、素材の味が遠く感じる
【0072】
<作業性>
ペースト状食品を製造する際の作業性について、以下の基準で5段階評価を行った。表には、10名のパネラーがつけた点数を平均し、四捨五入した整数で示した。
4点:製造途中の粘度が極めて低く、非常に作業性がよい
3点:製造途中の粘度が低く、作業性がよい
2点:製造途中の粘度がやや低く、ある程度作業性がよい
1点:粘度がやや高く、作業性が悪い
0点:粘度が非常に高くなってしまい、製造工程の作業に支障をきたす
【0073】
<総合評価>
以上の項目の点数を合計して、総合評価を行った。製品としての総合的な出来栄えは、評価がよくない項目によって左右される。例えば、滑らかさ、艶、保形性、耐離水性、糊状感、味立ち、作業性のいずれの項目も評価が2点の製品と、耐離水性の評価が0点で残りの項目が4点である製品とでは、前者の方が製品の出来栄えが良好である。総合評価として、以上7項目の合計点によって評価を行った。合計点が21点以上であれば、合格である。好ましくは23点以上であり、より好ましくは25点以上であり、27点以上であることが最も好ましい。
【0074】
以下の試験例1~7においては、品質向上剤を含有する第1のペースト状食品を作製し、試験例2~14においては、品質向上剤を含有する第2のペースト状食品を作製して、その品質向上効果を確認する。
【0075】
<試験例1>
小豆餡(Brix 55)を用い、下記表に示した配合(質量部)にて最中餡を作製した(作製量500g)。まず、品質向上剤としての澱粉と寒天とを少量の水に加え、沸騰状態で10分間加熱した。そこに小豆餡と55%ショ糖溶液を混合し、最初に加えた水が蒸発して重量が500gになるまで沸騰加熱して、ペースト状食品(実施例1~5、比較例4)を製造した。
品質向上剤を用いずに比較例1を得、澱粉のみ、または寒天のみを加えて比較例2,3を得た。
得られたペースト状食品を上述の方法により評価し、その結果を処方とともに下記表にまとめる。
【0076】
【0077】
上記表に示されるように、実施例1~5では、艶向上効果、保形性向上効果、離水防止効果が確認できた。さらに、滑らかさ、糊状感、味立ち、作業性についても良好な最中餡を得ることができた。
実施例のペースト状食品は、澱粉と寒天が含有されており、しかも寒天の1.5%寒天ゲル強度が600g/cm2以上である。本発明の品質向上剤が含有されているので、所望の物性を備えている。
【0078】
比較例1~3には、澱粉および寒天の少なくとも一方が含有されていない。すなわち、本発明の品質向上剤が含有されていないので、品質向上効果は得られない。比較例4は澱粉および寒天が配合されているものの、寒天の1.5%寒天ゲル強度が110g/cm2と600g/cm2未満であるので、本発明の品質向上剤ではない。このため、離水防止効果を得ることができず、保形性も不十分であった。
【0079】
<試験例2>
小豆餡(Brix 55)を用い、下記表に示した配合(質量部)にて最中餡を作製した(作製量500g)。まず、品質向上剤としての澱粉と寒天とを少量の水に加え、沸騰状態で10分間加熱した。そこに小豆餡と55%ショ糖溶液を混合し、最初に加えた水が蒸発して重量が500gになるまで沸騰加熱して、ペースト状食品を製造した。
得られたペースト状食品を上述の方法により評価し、その結果を処方とともに下記表にまとめる。
【0080】
【0081】
上記表に示されるように、実施例6~12では、艶向上効果、保形性向上効果、離水防止効果が確認できた。さらに、滑らかさ、糊状感、味立ち、作業性についても良好な最中餡を得ることができた。実施例のペースト状食品は、澱粉と寒天が含有されており、しかも寒天の1.5%寒天ゲル強度が600g/cm2以上である。本発明の品質向上剤が含有されているので、所望の物性を備えている。
【0082】
<試験例3>
小豆餡(Brix 55)を用い、下記表に示した配合(質量部)にて最中餡を作製した(作製量500g)。まず、品質向上剤としての澱粉と寒天とを少量の水に加え、沸騰状態で10分間加熱した。そこに小豆餡と55%ショ糖溶液を混合し、最初に加えた水が蒸発して重量が500gになるまで沸騰加熱して、ペースト状食品を製造した。
得られたペースト状食品を上述の方法により評価し、その結果を処方とともに下記表にまとめる。
【0083】
【0084】
上記表に示されるように、実施例13~17では、艶向上効果、保形性向上効果、離水防止効果が確認できた。さらに、滑らかさ、糊状感、味立ち、作業性の物性についても良好な最中餡を得ることができた。実施例のペースト状食品は、澱粉と寒天が含有されており、しかも寒天の1.5%寒天ゲル強度が600g/cm2以上である。本発明の品質向上剤が含有されているので、所望の物性を備えている。
【0085】
<試験例4>
小豆餡(Brix 55)を用い、下記表に示した配合(質量部)にて最中餡を作製した(作製量500g)。まず、品質向上剤としての澱粉と寒天とを少量の水に加え、沸騰状態で10分間加熱した。そこに小豆餡と55%ショ糖溶液を混合し、最初に加えた水が蒸発して重量が500gになるまで沸騰加熱して、ペースト状食品を製造した。
得られたペースト状食品を上述の方法により評価し、その結果を処方とともに下記表にまとめる。
【0086】
【0087】
【0088】
実施例18~31の最中餡において、比(寒天:澱粉)は(3:3)~(3:300)であり、澱粉の含有量は0.1~2.0質量%であり、寒天の含有量は0.01~0.2質量%である。
【0089】
上記表に示されるように、実施例18~31では、艶向上効果、保形性向上効果、離水防止効果が確認できた。さらに、滑らかさ、糊状感、味立ち、作業性の物性についても良好な最中餡を得ることができた。実施例のペースト状食品は、澱粉と寒天が含有されており、しかも寒天の1.5%寒天ゲル強度が600g/cm2以上である。本発明の品質向上剤が含有されているので、所望の物性を備えている。
【0090】
<試験例5>
小豆餡(Brix 55)を用い、下記表に示した配合(質量部)にて最中餡を作製した(作製量500g)。まず、品質向上剤としての澱粉と寒天とを少量の水に加え、沸騰状態で10分間加熱した。そこに小豆餡、55%ショ糖溶液、および必要に応じてグラニュー糖または水を混合し、最初に加えた水が蒸発して所定のBrixになるまで沸騰加熱して、ペースト状食品を製造した。
本試験例においては、グラニュー糖または水の量を変更してBrixを40~70の範囲内に調整し、市販のBrix測定器(ATAGO社製)を用いてペースト状食品のBrixを測定した。得られたペースト状食品を上述の方法により評価し、その結果を、処方およびBrixとともに下記表にまとめる。
【0091】
【0092】
上記表に示されるように、実施例32~38では、艶向上効果、保形性向上効果、離水防止効果が確認できた。さらに、滑らかさ、糊状感、味立ち、作業性の物性についても良好な最中餡を得ることができた。実施例のペースト状食品は、澱粉と寒天が含有されており、しかも寒天の1.5%寒天ゲル強度が600g/cm2以上である。本発明の品質向上剤が含有されているので、所望の物性を備えている。
本発明の品質向上剤は、Brixが40~70の範囲内にあるペースト状食品に対して効果を発揮することが確認された。
【0093】
<試験例6>
手亡餡(Brix 55)または白いんげん餡(Brix 55)を用い、下記表に示した配合(質量部)にて最中餡を作製した(作製量500g)。具体的には、まず、品質向上剤としての澱粉と寒天とを少量の水に加え、沸騰状態で10分間加熱した。そこに手亡餡または白いんげん餡と55%ショ糖溶液を混合し、最初に加えた水が蒸発して所定のBrixになるまで沸騰加熱して、ペースト状食品(実施例39,40)を製造した。また、品質向上剤を用いずに、比較例5,6を製造した。
得られたペースト状食品を上述の方法により評価し、その結果を処方とともに下記表にまとめる。
【0094】
【0095】
上記表に示されるように、実施例39,40では、艶向上効果、保形性向上効果、離水防止効果が確認できた。さらに、滑らかさ、糊状感、味立ち、作業性の物性についても良好な最中餡を得ることができた。実施例のペースト状食品は、澱粉と寒天が含有されており、しかも寒天の1.5%寒天ゲル強度が600g/cm2以上である。本発明の品質向上剤が含有されているので、所望の物性を備えている。
本発明の品質向上剤が含有されない場合には、艶向上効果、保形性向上効果、離水防止効果は全く得られないことが、比較例5,6に示されている。
【0096】
<試験例7>
栗ペースト(Brix 40)、安納芋ペースト(Brix 28)、またはかぼちゃペースト(Brix 18)を用い、下記表に示した配合(質量部)にて、ペースト状食品を作製した(作製量500g)。具体的には、まず、品質向上剤としての澱粉と寒天とを少量の水に加え、沸騰状態で10分間加熱した。そこに、残りの材料を混合し、最初に加えた水が蒸発して所定のBrixになるまで沸騰加熱して、ペースト状食品(実施例41~43)を製造した。また、品質向上剤を用いずに、比較例7~9を製造した。
得られたペースト状食品は、それぞれ、モンブランクリーム、スイートポテト、かぼちゃペーストである。得られたペースト状食品を上述の方法により評価し、その結果を処方とともに下記表にまとめる。
【0097】
【0098】
上記表に示されるように、実施例41~43では、艶向上効果、保形性向上効果、離水防止効果が確認できた。さらに、滑らかさ、糊状感、味立ち、作業性の物性についても良好なペースト状食品を得ることができた。実施例のペースト状食品は、澱粉と寒天が含有されており、しかも寒天の1.5%寒天ゲル強度が600g/cm2以上である。本発明の品質向上剤が含有されているので、所望の物性を備えている。
本発明の品質向上剤が含有されない場合には、離水防止効果は全く得られないことが、比較例7~9に示されている。
【0099】
<試験例8>
下記表に示した配合(質量部)にて、カスタードクリームを作製した(作製量500g)。具体的には、まず、牛乳、加糖卵黄、グラニュー糖の混合液に、品質向上剤としての澱粉と寒天とを加え、沸騰状態で10分間加熱した。そこに、バターと水を加えて、ペースト状食品(実施例44)を製造した。
品質向上剤の代わりに小麦粉を加えて比較例10,11を得た。小麦粉は、保形性向上、耐離水性向上の目的で、従来からカスタードクリームに配合されていた成分であり、従来の処方にしたがって配合した。
得られたペースト状食品を上述の方法により評価し、その結果を処方とともに下記表にまとめる。
【0100】
【0101】
上記表に示されるように、実施例44では、艶向上効果、保形性向上効果、離水防止効果が確認できた。さらに、滑らかさ、糊状感、味立ち、作業性についても良好なカスタードクリームを得ることができた。
実施例のペースト状食品は、澱粉と寒天が含有されており、しかも寒天の1.5%寒天ゲル強度が600g/cm2以上である。本発明の品質向上剤が含有されているので、所望の物性を備えている。
【0102】
本発明の品質改良剤の代わりに小麦粉を含有する場合、配合量によっては、保形性と耐離水性が向上したペースト状食品が得られた(比較例10)。あるいは、糊状感、味立ち、作業性が向上したペースト状食品が得られた(比較例11)。しかしながら、比較例10のカスタードクリームは糊状感があり、味立ちが悪く、作業性が悪いものであった。また、比較例11のカスタードクリームは保形性が悪く、離水が出てしまうものであった。
本発明の品質向上剤は、従来用いられていた小麦粉に代わって、滑らかさ、艶、保形性、耐離水性、糊状感、味立ち、作業性の全てを兼ね備えたカスタードクリームを製造できることが確認された。
【0103】
<試験例9>
下記表に示した配合(質量部)にて、カスタードクリームを作製した(作製量500g)。具体的には、まず、牛乳、加糖卵黄、グラニュー糖の混合液に、品質向上剤としての澱粉と寒天とを加え、沸騰状態で10分間加熱した。そこに、バターと水を加えて、ペースト状食品(実施例45~49、比較例15)を製造した。
品質向上剤を用いずに比較例12を得、澱粉のみ、または寒天のみを加えて比較例13,14を得た。
得られたペースト状食品を上述の方法により評価し、その結果を処方とともに下記表にまとめる。
【0104】
【0105】
上記表に示されるように、実施例45~49では、艶向上効果、保形性向上効果、離水防止効果が確認できた。さらに、滑らかさ、糊状感、味立ち、作業性についても良好なカスタードクリームを得ることができた。
実施例のペースト状食品は、澱粉と寒天が含有されており、しかも寒天の1.5%寒天ゲル強度が600g/cm2以上である。本発明の品質向上剤が含有されているので、所望の物性を備えている。
【0106】
比較例12~14には、澱粉および寒天の少なくとも一方が含有されていない。すなわち、本発明の品質向上剤が含有されていないので、品質向上効果は得られない。比較例15は澱粉および寒天が配合されているものの、寒天の1.5%寒天ゲル強度が110g/cm2と600g/cm2未満であるので、本発明の品質向上剤ではない。このため、離水防止効果を得ることができず、保形性も不十分であった。しかも、糊状感が強く、味立ちも劣っている。
【0107】
<試験例10>
下記表に示した配合(質量部)にて、カスタードクリームを作製した(作製量500g)。具体的には、まず、牛乳、加糖卵黄、グラニュー糖の混合液に、品質向上剤としての澱粉と寒天とを加え、沸騰状態で10分間加熱した。そこに、バターと水を加えて、ペースト状食品を製造した。
得られたペースト状食品を上述の方法により評価し、その結果を処方とともに下記表にまとめる。
【0108】
【0109】
上記表に示されるように、実施例50~56では、艶向上効果、保形性向上効果、離水防止効果が確認できた。さらに、滑らかさ、糊状感、味立ち、作業性についても良好なカスタードクリームを得ることができた。実施例のペースト状食品は、澱粉と寒天が含有されており、しかも寒天の1.5%寒天ゲル強度が600g/cm2以上である。本発明の品質向上剤が含有されているので、所望の物性を備えている。
【0110】
<試験例11>
下記表に示した配合(質量部)にて、カスタードクリームを作製した(作製量500g)。具体的には、まず、牛乳、加糖卵黄、グラニュー糖の混合液に、品質向上剤としての澱粉と寒天とを加え、沸騰状態で10分間加熱した。そこに、バターと水を加えて、ペースト状食品を製造した。
得られたペースト状食品を上述の方法により評価し、その結果を処方とともに下記表にまとめる。
【0111】
【0112】
上記表に示されるように、実施例57~61では、艶向上効果、保形性向上効果、離水防止効果が確認できた。さらに、滑らかさ、糊状感、味立ち、作業性の物性についても良好なカスタードクリームを得ることができた。実施例のペースト状食品は、澱粉と寒天が含有されており、しかも寒天の1.5%寒天ゲル強度が600g/cm2以上である。本発明の品質向上剤が含有されているので、所望の物性を備えている。
【0113】
<試験例12>
下記表に示した配合(質量部)にて、カスタードクリームを作製した(作製量500g)。具体的には、まず、牛乳、加糖卵黄、グラニュー糖の混合液に、品質向上剤としての澱粉と寒天とを加え、沸騰状態で10分間加熱した。そこに、バターと水を加えて、ペースト状食品を製造した。
得られたペースト状食品を上述の方法により評価し、その結果を処方とともに下記表にまとめる。
【0114】
【0115】
実施例62~68のカスタードクリームにおいて、比(寒天:澱粉)は(3:12)~(3:75)であり、澱粉の含有量は2.0~5.0質量%であり、寒天の含有量は0.2~0.5質量%である。
【0116】
上記表に示されるように、実施例62~68では、艶向上効果、保形性向上効果、離水防止効果が確認できた。さらに、滑らかさ、糊状感、味立ち、作業性の物性についても良好なカスタードクリームを得ることができた。実施例のペースト状食品は、澱粉と寒天が含有されており、しかも寒天の1.5%寒天ゲル強度が600g/cm2以上である。本発明の品質向上剤が含有されているので、所望の物性を備えている。
【0117】
<試験例13>
下記表に示した配合(質量部)にて、カスタードクリームを作製した(作製量500g)。具体的には、まず、牛乳、加糖卵黄、グラニュー糖の混合液に、品質向上剤としての澱粉と寒天とを加え、沸騰状態で10分間加熱した。そこに、バターと水を加えて、ペースト状食品を製造した。
得られたペースト状食品を上述の方法により評価し、その結果を処方とともに下記表にまとめる。
【0118】
【0119】
上記表に示されるように、実施例69~75では、艶向上効果、保形性向上効果、離水防止効果が確認できた。さらに、滑らかさ、糊状感、味立ち、作業性の物性についても良好なカスタードクリームを得ることができた。実施例のペースト状食品は、澱粉と寒天が含有されており、しかも寒天の1.5%寒天ゲル強度が600g/cm2以上である。本発明の品質向上剤が含有されているので、所望の物性を備えている。
【0120】
カスタードクリームの場合には、品質向上剤の含有量が2.0~6.0質量%程度の場合、より高い品質向上効果が発揮されることが、実施例77~83に示されている。
【0121】
<試験例14>
下記表に示した配合(質量部)にて、カスタードクリームを作製した(作製量500g)。具体的には、まず、牛乳、加糖卵黄、グラニュー糖の混合液に、品質向上剤としての澱粉と寒天とを加え、沸騰状態で10分間加熱した。そこに、バターと水を加えて所定のBrixとなるまで加熱し、ペースト状食品を製造した。
本試験例においては、水あめの量を変更してBrixを25~55の範囲内に調整し、市販のBrix測定器(ATAGO社製)を用いてペースト状食品のBrixを測定した。得られたペースト状食品を上述の方法により評価し、その結果を、処方およびBrixとともに下記表にまとめる。
【0122】
【0123】
上記表に示されるように、実施例76~82では、艶向上効果、保形性向上効果、離水防止効果が確認できた。さらに、滑らかさ、糊状感、味立ち、作業性の物性についても良好なカスタードクリームを得ることができた。実施例のペースト状食品は、澱粉と寒天が含有されており、しかも寒天の1.5%寒天ゲル強度が600g/cm2以上である。本発明の品質向上剤が含有されているので、所望の物性を備えている。
本発明の品質向上剤は、Brixが15~45の範囲内にある第2のペースト状食品に対して効果を発揮することが確認された。