IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ DOWAメタルテック株式会社の特許一覧

特開2024-93788金属ベース回路基板およびその製造方法
<>
  • 特開-金属ベース回路基板およびその製造方法 図1
  • 特開-金属ベース回路基板およびその製造方法 図2
  • 特開-金属ベース回路基板およびその製造方法 図3
  • 特開-金属ベース回路基板およびその製造方法 図4
  • 特開-金属ベース回路基板およびその製造方法 図5
  • 特開-金属ベース回路基板およびその製造方法 図6
  • 特開-金属ベース回路基板およびその製造方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093788
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】金属ベース回路基板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/44 20060101AFI20240702BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20240702BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
H05K3/44 A
H05K3/44 Z
H01L23/12 J
H01L23/36 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210370
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】506365131
【氏名又は名称】DOWAメタルテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(74)【代理人】
【識別番号】100161034
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 知洋
(72)【発明者】
【氏名】小林 幸司
【テーマコード(参考)】
5E315
5F136
【Fターム(参考)】
5E315AA03
5E315BB04
5E315BB05
5E315BB14
5E315BB15
5E315BB16
5E315CC15
5E315DD13
5E315GG22
5F136BB05
5F136FA03
5F136GA01
5F136GA12
(57)【要約】
【課題】接合欠陥が少なく、信頼性、放熱性に優れた金属ベース回路基板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】金属ベース板上に熱硬化型樹脂を主成分とする樹脂シートを配置し、樹脂シートの上に金属板を配置し、金属板の上に強化部材を含むゴムシートからなる接合用スペーサーを載置する積層工程と、金属ベース板、樹脂シートおよび金属板の積層方向に接合用スペーサーを介して加圧した状態で加熱し、金属ベース板、樹脂シートおよび金属板を接合する接合工程と、を有する、金属ベース回路基板の製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ベース板上に熱硬化型樹脂を主成分とする樹脂シートを配置し、
前記樹脂シートの上に金属板を配置し、
前記金属板の上に強化部材を含むゴムシートからなる接合用スペーサーを載置する積層工程と、
前記金属ベース板、前記樹脂シートおよび前記金属板の積層方向に前記接合用スペーサーを介して加圧した状態で加熱し、前記金属ベース板、前記樹脂シートおよび前記金属板を接合する接合工程と、を有する、金属ベース回路基板の製造方法。
【請求項2】
前記接合用スペーサーは、
ガラスクロスからなる強化部材の層がシリコーンゴムシートまたはフッ素ゴムシートの内部に形成されているものである、
請求項1に記載の金属ベース回路基板の製造方法。
【請求項3】
前記接合工程では、
前記接合用スペーサーを介して1~15MPaの加圧をした状態で加熱し、前記金属ベース板、前記樹脂シートおよび前記金属板を接合する、
請求項1または請求項2に記載の金属ベース回路基板の製造方法。
【請求項4】
前記積層工程では、
前記金属板と略同一の外形寸法を有する開口部を備えた位置決め治具を前記樹脂シートの上に配置し、前記開口部に前記金属板を配置する、
請求項1または請求項2に記載の金属ベース回路基板の製造方法。
【請求項5】
前記位置決め治具の表面は、接合時に前記樹脂シートと接合しない材質である、
請求項4に記載の金属ベース回路基板の製造方法。
【請求項6】
前記接合工程で、前記金属ベース板、前記樹脂シートおよび前記金属板を接合した後、
さらに熱処理を行うことにより前記樹脂シートを硬化させる樹脂硬化工程を有する、
請求項1または請求項2に記載の金属ベース回路基板の製造方法。
【請求項7】
前記樹脂硬化工程では、
前記接合工程で加えた圧力を取り除いた後、前記熱処理を行うことにより前記樹脂シートを硬化させる、
請求項6に記載の金属ベース回路基板の製造方法。
【請求項8】
前記金属ベース板が銅または銅合金である、
請求項1または請求項2に記載の金属ベース回路基板の製造方法。
【請求項9】
前記金属板が銅または銅合金である、
請求項1または請求項2に記載の金属ベース回路基板の製造方法。
【請求項10】
前記接合工程において、前記金属ベース板、前記樹脂シートおよび前記金属板を同時に接合する、
請求項1または請求項2に記載の金属ベース回路基板の製造方法。
【請求項11】
前記接合用スペーサーの圧縮永久ひずみが180℃×24時間の条件で20%以下、前記接合用スペーサーの前記ゴムシートの硬さタイプAが30~80である、
請求項1または請求項2に記載の金属ベース回路基板の製造方法。
【請求項12】
金属ベース板上に絶縁樹脂層を介して金属板が接合され、
前記金属板の周縁部において、前記金属板の上面の端部と底面の端部との寸法差が±50μm以下であり、
前記金属板と前記金属ベース板の接合率が98面積%以上である、
金属ベース回路基板。
【請求項13】
前記金属板と前記金属ベース板の間の接合強度が8MPa以上である、
請求項12に記載の金属ベース回路基板。
【請求項14】
前記金属ベース板が銅または銅合金である、
請求項12または請求項13に記載の金属ベース回路基板。
【請求項15】
前記金属板が銅または銅合金である、
請求項12または請求項13に記載の金属ベース回路基板。
【請求項16】
前記金属板の厚さが0.4mm以上である、
請求項12または請求項13に記載の金属ベース回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ベース板上に絶縁樹脂層が形成され、その絶縁樹脂層の上に金属板からなる回路パターンが形成された、金属ベース回路基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属ベース回路基板は、パワーモジュール、LEDモジュール、熱電モジュール等において、パワー半導体素子、LED素子および熱電素子が金属ベース回路基板の金属板からなる回路パターン上に接合される構成部品として用いられる。
【0003】
半導体素子からの発熱に対する放熱特性を向上させるため、回路パターンは比較的厚い1mm以上の金属板が要求される場合がある。金属ベース回路基板の製造において、金属板が厚い場合は、エッチング法により回路パターンを作製すると、長時間エッチングを行う必要があり、また回路パターンの端部にエッチングによるだれやスカートが生じ、高い寸法精度を得ることが難しい。
【0004】
そのため、例えば特許文献1に記載された金属ベース回路基板においては、金属基板(金属ベース板)の少なくとも片面に、導電性金属板を打ち抜いて形成した導電回路部が絶縁層を介して積層一体化されている。また、金属ベース基板、及び、金属基板とほぼ同一の外形寸法を有する保持板の一部を導電回路の形状に打ち抜き、その打ち抜き穴に導電性金属板を打ち抜いて形成した導電回路部を嵌めこみ、ついで、この導電回路部を嵌め込んだ保持板を絶縁層を介して金属基板の少なくとも片面に載置し、積層一体化した後、保持板のみを絶縁層から剥離することを特徴とする金属ベース回路基板の製造方法が提案されている。
【0005】
また、特許文献2には、金属基板(金属ベース板)の一方の面に熱硬化型樹脂を含有する樹脂組成物を配置する樹脂組成物配置工程と、前記樹脂組成物の上に複数の金属片を配置するとともに前記金属片以外の領域に押圧用治具を配置する金属片及び押圧用治具配設工程と、前記金属基板と前記樹脂組成物と前記金属片及び押圧用治具とを積層方向に加圧するとともに加熱して前記樹脂組成物を硬化させる樹脂硬化工程と、を備えており、前記押圧用治具は、少なくとも前記樹脂組成物を押圧する押圧面が、前記熱硬化型樹脂とのSP値の差が3以上である樹脂で構成されている、絶縁回路基板(金属ベース回路基板)の製造方法が提案されている。
【0006】
さらに、特許文献3には、金属基板(金属ベース板)と、この金属基板の一方の面に形成された熱硬化型樹脂を主成分とする絶縁樹脂層と、この絶縁樹脂層の前記金属基板とは反対側の面に形成された回路パターン状を有する回路層と、を備えた絶縁回路基板(金属ベース回路基板)であって、前記回路層は、金属材料からなり、厚さが0.05mm以上2.0mm以下、積層方向に沿った断面において、前記回路層の絶縁樹脂層との接合界面近傍における端面形状は、絶縁樹脂層から前記積層方向に沿って離間するにしたがい漸次外方に突出する形状、又は、前記接合界面に対して直交する方向に延びる形状、とされており、前記回路層の接合界面における端面位置と前記回路層の厚さ中央部における端面位置との接合界面に沿った方向の距離Wが0mm以上2mm以下の範囲内とされている、絶縁回路基板が開示されている。
【0007】
また、特許文献3には、金属基板と、この金属基板の一方の面に形成された熱硬化型樹脂を主成分とする絶縁樹脂層と、この絶縁樹脂層の前記金属基板とは反対側の面に形成された回路パターン状を有する回路層と、を備えた絶縁回路基板の製造方法であって、前記回路層は、金属材料からなり、厚さが0.05mm以上2.0mm以下の範囲内とされており、前記金属基板の一方の面に、硬化済みの熱硬化型樹脂を主成分とする絶縁樹脂層を配置する積層工程と、前記絶縁樹脂層の上に複数の金属片を回路パターン状に配置するとともに、前記金属片以外の領域に押圧用部材を配設する金属片配設工程と、前記金属基板と前記絶縁樹脂層と前記金属片および押圧用治具とを積層方向に加圧するとともに加熱して、前記金属基板と前記絶縁樹脂層と前記金属片を接合する金属片接合工程と、を備えており、前記金属片接合工程においては、前記絶縁樹脂層に含まれる熱硬化型樹脂のガラス転移温度以上に加熱することを特徴とする絶縁回路基板の製造方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6-169147号公報
【特許文献2】特開2018-147934号公報
【特許文献3】特開2019-169540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1~3の方法により製造した金属ベース回路基板では、回路パターン金属板と絶縁樹脂との間の接合欠陥を十分に抑制することが困難であることが判明した。
【0010】
そのため、接合欠陥が少ない金属ベース回路基板を提供することが望まれている。
【0011】
したがって、本発明は、このような従来の問題点に鑑み、接合欠陥が少ない金属ベース回路基板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様は、
金属ベース板上に熱硬化型樹脂を主成分とする樹脂シートを配置し、
前記樹脂シートの上に金属板を配置し、
前記金属板の上に強化部材を含むゴムシートからなる接合用スペーサーを載置する積層工程と、
前記金属ベース板、前記樹脂シートおよび前記金属板の積層方向に前記接合用スペーサーを介して加圧した状態で加熱し、前記金属ベース板、前記樹脂シートおよび前記金属板を接合する接合工程と、を有する、金属ベース回路基板の製造方法である。
【0013】
本発明の第2の態様は、
前記接合用スペーサーは、
ガラスクロスからなる強化部材の層がシリコーンゴムシートまたはフッ素ゴムシートの内部に形成されているものである、
上記第1の態様に記載の金属ベース回路基板の製造方法である。
【0014】
本発明の第3の態様は、
前記接合工程では、
前記接合用スペーサーを介して1~15MPaの加圧をした状態で加熱し、前記金属ベース板、前記樹脂シートおよび前記金属板を接合する、
上記第1または第2の態様に記載の金属ベース回路基板の製造方法である。
【0015】
本発明の第4の態様は、
前記積層工程では、
前記金属板と略同一の外形寸法を有する開口部を備えた位置決め治具を前記樹脂シートの上に配置し、前記開口部に前記金属板を配置する、
上記第1または第2の態様に記載の金属ベース回路基板の製造方法である。
【0016】
本発明の第5の態様は、
前記位置決め治具の表面は、接合時に前記樹脂シートと接合しない材質である、
上記第4の態様に記載の金属ベース回路基板の製造方法である。
【0017】
本発明の第6の態様は、
前記接合工程で、前記金属ベース板、前記樹脂シートおよび前記金属板を接合した後、
さらに熱処理を行うことにより前記樹脂シートを硬化させる樹脂硬化工程を有する、
上記第1または第2の態様に記載の金属ベース回路基板の製造方法である。
【0018】
本発明の第7の態様は、
前記樹脂硬化工程では、
前記接合工程で加えた圧力を取り除いた後、前記熱処理を行うことにより前記樹脂シートを硬化させる、
上記第6の態様に記載の金属ベース回路基板の製造方法である。
【0019】
本発明の第8の態様は、
前記金属ベース板が銅または銅合金である、
上記第1または第2の態様に記載の金属ベース回路基板の製造方法である。
【0020】
本発明の第9の態様は、
前記金属板が銅または銅合金である、
上記第1または第2の態様に記載の金属ベース回路基板の製造方法である。
【0021】
本発明の第10の態様は、
前記接合工程において、前記金属ベース板、前記樹脂シートおよび前記金属板を同時に接合する、
上記第1または第2の態様に記載の金属ベース回路基板の製造方法である。
【0022】
本発明の第11の態様は、
前記接合用スペーサーの圧縮永久ひずみが180℃×24時間の条件で20%以下、前記接合用スペーサーの前記ゴムシートの硬さタイプAが30~80である、
上記第1または第2の態様に記載の金属ベース回路基板の製造方法である。
【0023】
本発明の第12の態様は、
金属ベース板上に絶縁樹脂層を介して金属板が接合され、
前記金属板の周縁部において、前記金属板の上面の端部と底面の端部との寸法差が±50μm以下であり、
前記金属板と前記金属ベース板の接合率が98面積%以上である、
金属ベース回路基板である。
【0024】
本発明の第13の態様は、
前記金属板と前記金属ベース板の間の接合強度が8MPa以上である、
上記第12の態様に記載の金属ベース回路基板である。
【0025】
本発明の第14の態様は、
前記金属ベース板が銅または銅合金である、
上記第12または第13の態様に記載の金属ベース回路基板である。
【0026】
本発明の第15の態様は、
前記金属板が銅または銅合金である、
上記第12または第13の態様に記載の金属ベース回路基板である。
【0027】
本発明の第16の態様は、
前記金属板の厚さが0.4mm以上である、
上記第12または第13の態様に記載の金属ベース回路基板である。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、接合欠陥が少なく、信頼性、放熱性に優れた金属ベース回路基板およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1(a)は、本発明の実施の形態の金属ベース回路基板の上面図である。図1(b)は、図1(a)におけるA-A断面図である。図1(c)は、図1(a)の下面図である。
図2図2は、本発明の実施の形態の強化部材を含むゴムシートからなる接合用スペーサーの断面図である。
図3図3は、本発明の実施の形態において、金属ベース板上に熱硬化型樹脂を主成分とする樹脂シートを配置し、樹脂シートの上に金属板を配置し、金属板の上に強化部材を含むゴムシートからなる接合用スペーサーを載置した積層体の断面図である。
図4図4(a)は、本発明の実施の形態において、金属ベース板上に熱硬化型樹脂を主成分とする樹脂シートを配置し、樹脂シートの上に位置決め治具および金属板を配置し、金属板の上に強化部材を含むゴムシートからなる接合用スペーサーを載置した上面図である。図4(b)は、図4(a)のB-B断面図である。図4(c)は、図4(a)の下面図である。
図5図5(a)は、本発明の他の実施の形態において、金属ベース板上に熱硬化型樹脂を主成分とする樹脂シートを配置し、樹脂シートの上に他の実施の形態の位置決め治具および金属板を配置し、金属板の上に接合治具を介して強化部材を含むゴムシートからなる接合用スペーサーを載置した上面図である。図5(b)は、図5(a)のB-B断面図である。図5(c)は、図5(a)の下面図である。
図6図6(a)は、本発明の他の実施の形態の、裏面に放熱用のピンが形成された金属ベース板の上面図である。図6(b)は、図6(a)のC-C断面図である。図6(c)は、図6(a)の下面図である。
図7図7は、エッチング法により回路パターンを形成した場合の、金属板の周縁部の拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[本発明の実施の形態の詳細]
次に、本発明の実施の形態を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0031】
なお、本明細書において、「A~B」とは、「A以上B以下」の数値範囲であることを意味する。
【0032】
<金属ベース回路基板の製造方法>
本発明の金属ベース回路基板の製造方法は、例えば、金属ベース板上に熱硬化型樹脂を主成分とする樹脂シートを配置し、樹脂シートの上に金属板を配置し、金属板の上に強化部材を含むゴムシートからなる接合用スペーサーを載置する積層工程と、金属ベース板、樹脂シートおよび金属板の積層方向に接合用スペーサー介して加圧した状態で加熱し、金属ベース板、樹脂シートおよび金属板を接合する接合工程と、を有している。接合用スペーサーは、ガラスクロス(ガラス繊維)からなる強化部材の層がシリコーンゴムシートの内部に形成されているものが好ましい。
【0033】
上記本発明の金属ベース回路基板の製造方法により、接合欠陥が少ない金属ベース回路基板を作製することができる。
【0034】
本発明の金属ベース回路基板の製造方法の実施の形態について図面を用いて説明する。
図1(a)~(c)に示すように、本発明の金属ベース回路基板1は、金属ベース板10上に絶縁樹脂層21を介して回路パターンとしての金属板30が接合された構造となっている。図1(a)は金属ベース回路基板1を金属板30に対して上方から見た上面図であり、図1(b)は図1(a)のA-A断面図であり、図1(c)は下面図である。
【0035】
このような本発明の金属ベース回路基板1の製造方法における積層工程では、図3に示すように、金属ベース板10の上に熱硬化型樹脂を主成分とする樹脂シート20を配置し、この樹脂シート20の上に金属板30を配置し、この金属板30の上に強化部材を含むゴムシートからなる接合用スペーサー2を載置し、積層体3を形成する。
【0036】
次いで、接合工程では、接合用スペーサー2を介して、例えばホットプレス装置を用いて加圧、あるいは積層体3を積層方向に加圧する治具で挟むこと等により、好ましくは1~15MPaの加圧をした状態で加熱し、金属ベース板10、樹脂シート20および金属板30を同時に接合する。
【0037】
接合用スペーサー2は、図2に示すように、ガラスクロスのシートからなる強化部材110の層がシリコーンゴムシート100の層で(両面が)覆われているものが好ましい。
すなわち接合用スペーサー2は、金属板30に接触する側の部材が、適度に変形する比較的柔らかい板(シート)状のシリコーンゴムシート100等の材質で形成されていることが好ましい。これにより金属板30に反りやうねりがあった場合、あるいは金属板30が積層時に傾いた状態で樹脂シート20に配置された場合でも、接合用スペーサー2の表面のシリコーンゴムシート100の層により金属板30の表面に密着するように追従することが可能である。シリコーンゴムは安価で調達しやすいので好ましい。
また、積層方向に加圧して接合する際は、接合用スペーサー2の内部に形成されたガラスクロスの強化部材110からなる層により、接合用スペーサー2の変形を抑制し、金属板30の表面に対して均一に負荷(加圧)され、接合欠陥の発生を抑制することができる。
また、接合用スペーサー2は、金属板30に接触する側とは反対側(プレス等に接触する側)の部材もシリコーンゴムシート100で形成されているため、接合時の伝熱性および均圧性を向上させることができる。
【0038】
このような本発明の接合用スペーサー2を用いずに、例えばアルミニウム板やステンレス板などの金属の板をスペーサーとして金属板30に載置した後、加圧・接合して作製した金属ベース回路基板1を、超音波探傷装置により金属板30と金属ベース板10の接合界面を観察したところ、金属板30の中央部に接合欠陥(ボイド)が多く発生することが判明した。
また、本発明の接合用スペーサー2を用いずに、シリコーンゴムシート100のみ(強化部材110を含まない)をスペーサーとして金属板30上に載置した後、加圧・接合して作製した金属ベース回路基板1を、超音波探傷装置により金属板30と金属ベース板10の接合界面を観察したところ、金属板30の端部に接合欠陥が多く観察されることがわかった。
本発明の接合用スペーサー2を用いると、金属板30の中央部、端部のいずれにも接合欠陥の発生が抑制されることがわかった。
【0039】
接合用スペーサー2に用いられるシリコーンゴムシート100は、硬さタイプA(JIS K 6253参照)が30~80、引張強さが5~15MPaであることが好ましい。
また、接合用スペーサー2の厚さは0.5~2.0mmであることが好ましく、0.6~1.7mmであることがより好ましい。ガラスクロス(強化部材110)の層の厚さは接合用スペーサー2の1/4~1/2の厚さであることが好ましく、ガラスクロス層の両面に略同一の厚さのシリコーンゴム層(シリコーンゴムシート100)が形成されていることが好ましい。
また、接合用スペーサー2の変形を効率的に抑制する観点から、ガラスクロス(強化部材110)の最大伸び率は、10%以下であることが好ましい。
また、接合用スペーサー2の圧縮永久ひずみ(JIS K 6262参照)は、小さい方が好ましく、例えば、180℃×24時間の条件で20%以下であることが好ましい。
なお、接合用スペーサー2には、シリコーンゴムシート100の代わりに、フッ素ゴムシートを用いてもよい。フッ素ゴムシートは、硬さタイプAが60~80であることが好ましい。
【0040】
また、図4(a)~(c)に示すように、積層工程では、金属板30と略同一の外形寸法を有する開口部を備えた、例えば金属の板やテフロン(登録商標)等の耐熱性の高い樹脂の板より作製した位置決め治具200を樹脂シート20の上に配置し、その開口部に金属板30を配置して、回路パターンとしての金属板30を所定の位置に配置することが好ましい。また、位置決め治具200の表面は、加熱接合時に樹脂シート20と接合しない材質であることが好ましい。具体的には、位置決め治具200の基材がステンレス(SUS)等の金属板であり、その表面は、例えば、テフロンやシリコーンゴムでコーティングされていることが好ましい。また、位置決め治具200の素材として、樹脂シート20と接合しないテフロンを使用することも好ましい。
【0041】
なお、図4(a)は、金属ベース板10の上に熱硬化型樹脂を主成分とする樹脂シート20を配置し、この樹脂シート20の上に金属板30および位置決め治具200を配置し、金属板30の上に接合用スペーサー2を配置したときの、接合用スペーサー2の上方から見た上面図であり、図4(b)は図4(a)のB-B断面図であり、図4(c)は下面図である。
【0042】
このような位置決め治具200の開口部に所定の回路パターン形状の金属板30を配置して接合することにより、接合後に金属ベース板10上に所定の回路パターンが樹脂シート20(絶縁樹脂層21)を介して形成された完成品の状態となる。このような位置決め治具200を用いて接合することにより、金属板30をエッチングするなどの回路形成工程が不要となるので好ましい。特に、金属板30が厚い場合(例えば、厚さ1mm以上の場合)はエッチングでは寸法精度を確保するのが難しいのでより好ましい。
また、図5(a)~(c)に示すように、積層工程では、金属板30と略同一の外形寸法を有する開口部を備えた位置決め治具200を樹脂シート20の上に配置し、その開口部に金属板30を配置して、回路パターンとしての金属板30を所定の位置に配置し、接合用スペーサー2をそれぞれの金属板30上に配置する際に、金属板30と接合用スペーサー2との間に金属板からなる接合治具300を配置した後、接合用スペーサー2を載置してもよい。接合治具300を用いることで、金属板30が薄い場合にも厚い場合にも安定して接合しやすくなる。また、位置決め治具200の変形を抑制し、位置決め治具200を長期間繰り返し使用することができる。
なお、金属板30が特に薄い場合は、位置決め治具200も薄く特に変形しやすいため、位置決め治具200を使用せず、接合治具300のみを用いることも好ましい。
なお、図5(a)は、金属ベース板10の上に熱硬化型樹脂を主成分とする樹脂シート20を配置し、この樹脂シート20の上に金属板30および位置決め治具200を配置し、金属板30の上に金属板からなる接合治具300を介して接合用スペーサー2を配置したときの、接合用スペーサー2の上方から見た上面図であり、図5(b)は図5(a)のB-B断面図であり、図5(c)は下面図である。
【0043】
また、本発明の金属ベース回路基板の製造方法は、接合工程で、金属ベース板10、樹脂シート20および金属板30を接合した後、接合工程で加えた圧力を取り除き、さらに熱処理を行うことにより樹脂シート20を硬化させる(絶縁樹脂層21を形成する)樹脂硬化工程を有することが好ましい。
【0044】
一方、金属ベース板10上に熱硬化型樹脂を主成分とする樹脂シート20を配置し、次いで金属ベース板10と樹脂シート20の積層方向に加圧しながら加熱して両者を接着した後、樹脂シート20の上に金属板30を配置し、この金属板30の上に強化部材を含むゴムシートからなる接合用スペーサー2を載置し、接合用スペーサー2を介して、加圧をした状態で加熱し、金属ベース板10、樹脂シート20および金属板30を接合することもできる。
このような工程の場合は、樹脂シート20の上に強化部材を含むゴムシートからなる接合用スペーサー2を載置し、接合用スペーサー2を介して1~25MPaの加圧をした状態で接合を行うことが好ましい。
【0045】
また、金属ベース板10が銅または銅合金であることが好ましく、金属板30が銅または銅合金であることが好ましい。
【0046】
<金属ベース回路基板>
本発明の金属ベース回路基板は、金属ベース板上に絶縁樹脂層を介して金属板が接合され、金属板の周縁部において、金属板の上面の端部と底面の端部との寸法差が±50μm以下であり、金属板と金属ベース板の接合率が98面積%以上であることを特徴とする。また、金属板と金属ベース板の間の接合強度が8MPa以上であることが好ましく、金属ベース板が銅または銅合金であることが好ましく、金属板が銅または銅合金であることが好ましい。
【0047】
図7は、エッチング法により回路パターンを形成した場合の、金属板の周縁部の拡大側面図である。図7に示すように、エッチング法により回路パターンを形成した場合、金属板30の周縁部において、金属板30の上面の端部と底面の端部との寸法差w(以下、スカート長wとも言う)が大きくなってしまう可能性がある。一方、本発明の金属ベース回路基板は、エッチングを行っていないため、スカート長wが小さい(±50μm以下)。なお、スカート長wは、金属板30の上面の端部より底面の端部の寸法が大きい場合を正(+)、上面の端部より底面の端部の寸法が小さい場合を負(-)とする。
また、本発明の金属ベース回路基板は、金属板30の厚さtを、スカート長wで除した絶対値(t/w)が4超(より好ましくは10以上、さらに好ましくは50以上)であることが好ましい。つまり、本発明の金属ベース回路基板1は、エッチングを行わずに回路パターンを打ち抜きで形成しているため、寸法精度に優れていると言える。さらに、回路パターンを打ち抜いた後に接合を行っているにもかかわらず、上述の製造方法の工夫により、高い接合率と接合強度を実現している。
上記寸法差w(スカート長w)は、金属ベース回路基板1の回路用の金属板30を上から見たときに、金属板30の回路の辺(周縁、周囲)に対して垂直な断面を観察することで、測定することができる。
【0048】
本発明の金属ベース回路基板の実施の形態について図1(a)~(c)を用いて説明する。本発明の金属ベース回路基板1の実施の形態として、金属ベース板10の表面(一方の板面)上に、絶縁樹脂層21の一方の面が接合しており、絶縁樹脂層21の他方の面に金属板30(の一方の板面)が接合している。即ち、金属ベース板10に絶縁樹脂層21を介して金属板30が接合されており、絶縁樹脂層21によって両者の絶縁性が担保されるとともに、両者を接合する接合材の役割を備えている。
また、金属ベース回路基板1の、金属板30と金属ベース板10の接合界面を超音波探傷装置で観察したときに、金属板30の一方の板面(接合面)の面積に対して接合率が98面積%以上であり、接合欠陥の非常に少ない信頼性の高い金属ベース回路基板1を提供することができる。
【0049】
金属板30は、金属ベース回路基板1の回路パターンを構成し、銅(Cu)または銅合金(Cu合金)であることが好ましい。また、金属ベース板10は放熱板(ヒートシンク)として用いられ、放熱性の高い銅(Cu)または銅合金(Cu合金)であることが好ましい。
また、金属板30の厚さが0.4mm以上であることが好ましく、より好ましくは0.8mm以上、さらには1.0mm以上であることが好ましく、2.0mm以下であることが好ましい。また、金属ベース板10の厚さが1.5~3.0mmであることが好ましい。
【0050】
絶縁樹脂層21はエポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂から選ばれる1つを主成分とするものが好ましく、前述の金属ベース回路基板の製造方法によって、金属板30と金属ベース板10の間の接合強度が8MPa以上であり、接合欠陥の少ない金属ベース回路基板1を得ることができる。
【0051】
本発明の金属ベース板10は、図6(a)~(c)に示す通り、金属ベース板10の樹脂シート20を接着する面と反対側の面に、放熱用のピン11(あるいはフィン)を備えていてもよい。これによりさらに放熱特性を向上させることができる。
【実施例0052】
次に、本発明に係る実施例を説明する。これらの実施例は本発明の一例であって、本発明はこれらの実施例により限定されない。
【0053】
[実施例1]
金属ベース板の材料として長さ85mm、幅85mm、厚さ2mmの矩形の無酸素銅(C1020)を準備し、金属回路板(金属板)の材料として長さ38mm、幅38mm、厚さ1.2mmの矩形の無酸素銅(C1020)を4枚準備した。また、絶縁樹脂層の材料として長さ85mm、幅85mm、厚さ150μmの矩形のポリイミド系の樹脂シートを準備した。
【0054】
次いで、樹脂シートの両面に設けられている保護シートを剥がした後、金属ベース板の略全面が覆われるように樹脂シートを配置し、その上に位置決め治具を用いて4枚の金属回路板を配置し、金属ベース板、樹脂シート、金属回路板および位置決め治具からなる積層体を形成した。
【0055】
位置決め治具は(図4に示すように)4枚の金属回路板のパターン間距離(隣り合った金属回路板の端部と端部の距離)がそれぞれ1mmの間隔を有し、田の字状に配置されるように4枚の金属回路板と略同一の形状の開口部を備えた厚さ1.0mmのステンレス板であり、その板面(表面)にはテフロンのコーティングが施してあり、位置決め治具は金属回路板と略同一の厚さを有している。
【0056】
積層体をホットプレス機内に配置されたSUS304の敷板の上に載置し、積層体の金属回路板の上面に、ガラスクロス層がシリコーンゴム板の厚さ方向中央に形成されたシリコーンゴムとガラスクロス層の複合材からなる厚さ1.5mmの接合用スペーサー(マクセルクレハ(株)製、ガラスクロス入りシリコーンゴムシート、品番SR970P)を載置した後、接合用スペーサー上にさらにSUS304の板材を配置し、大気中において、SUS板材を介して接合用スペーサーの上から4MPaで金属回路板を加圧しながら180℃で10分間加熱し、冷却して、金属ベース板と金属回路板が樹脂シートを介して接合された接合体を得た。なお接合用スペーサーの圧縮永久ひずみは180℃×24時間の条件で14%であり、接合用スペーサーのシリコーンゴムシートの硬さタイプAは70であった。
【0057】
その後、接合体を、窒素ガス中において無加圧で180℃、2時間加熱して樹脂シートを硬化させ、金属ベース回路基板を作製した。
【0058】
(接合率)
金属ベース回路基板について、超音波探傷装置(SAT)(日立建機ファインテック株式会社製、FS100II)により金属ベース板と金属回路板との接合部の超音波探傷画像を取得し、その画像をSATに付属するアプリケーションで2値化することにより、接合している領域(未接合領域でない)の面積を算出し、接合部の全面(金属回路板を配置した領域)の面積に対する、接合している領域の面積の割合を求め、その割合を接合率とした。その結果、接合率は98面積%以上であり、良好に接合していた。
【0059】
[実施例2]
接合用スペーサーの上から5MPaで金属回路板を加圧しながら、金属ベース板と金属回路板を接合して接合体を得た以外は、実施例1と同様の方法で金属ベース回路基板を作製した。
この金属ベース回路基板について、実施例1と同様の方法により接合率(%)を評価した結果、接合率は98面積%以上であり、良好に接合していた。
【0060】
[実施例3]
金属ベース板の材料として長さ100mm、幅100mm、厚さ2mmの矩形の無酸素銅(C1020)を準備し、金属回路板の材料として長さ100mm、幅100mm、厚さ1.2mmの矩形の無酸素銅(C1020)を1枚準備した。また、絶縁樹脂層の材料として長さ100mm、幅100mm、厚さ150μmの矩形のポリイミド系の樹脂シートを準備し、位置決め治具を使用しなかった以外は、実施例1と同様の方法で金属ベース回路基板を作製した。
得られた金属ベース回路基板について、実施例1と同様の方法により接合率(%)を評価した結果、接合率は98面積%以上であり、良好に接合していた。
【0061】
[実施例4]
接合用スペーサーの上から4MPaで3分、その後、2MPaで7分金属回路板を加圧することにより、金属ベース板と金属回路板を接合して接合体を得た以外は、実施例1と同様の方法で金属ベース回路基板を作製した。
得られた金属ベース回路基板について、実施例1と同様の方法により接合率(%)を評価した結果、接合率は98面積%以上であり、良好に接合していた。
(接合強度)
得られた金属ベース回路基板について、金属ベース板と金属回路板の接合強度を評価した。接合強度は、略鉛直方向に延びる壁部が固定された試験台上に、金属ベース回路基板を、金属ベース板を下側にして載置し、金属ベース板と略同じ厚さの支持板を試験台上の壁部と接合体との間に載置した状態で、せん断強度プローブにより接合体の金属回路板を水平方向に押圧して、金属板(金属ベース板または金属回路板)が剥がれたときの力(剥がれない場合は金属板が変形する直前の力)を測定した。その結果、接合強度は8.7MPaであった。
【0062】
[実施例5]
接合時の雰囲気を80Pa以下の減圧雰囲気で行った以外は、実施例4と同様の方法で金属ベース回路基板を作製した。
得られた金属ベース回路基板について、実施例1と同様の方法により接合率(%)を評価した結果、接合率は98面積%以上であり、良好に接合していた。
得られた金属ベース回路基板について、実施例4と同様の方法により金属ベース板と金属回路板の接合強度を評価した結果、10.0MPaであった。
【0063】
[実施例6]
厚さ3μmのNiめっきが全面に形成された金属ベース板および金属回路板を用い、絶縁樹脂層の材料として厚さ200μmの矩形のポリイミド系の樹脂シートを準備し、圧力を10MPa、雰囲気を80Pa以下の減圧雰囲気で接合を行った以外は、実施例1と同様の方法で金属ベース回路基板を作製した。
得られた金属ベース回路基板について、実施例1と同様の方法により接合率(%)を評価した結果、接合率は98面積%以上であり、良好に接合していた。
【0064】
[実施例7]
厚さ3μmのNiめっきが全面に形成された金属ベース板および金属回路板を用い、さらに金属ベース板の裏面(金属回路板を接合する面と反対側の面)に、高さ4mmの5mm角の多数の柱状突起(ピン)がそれぞれ5mmの間隔を置いて形成されておいる金属ベース板を用い、絶縁樹脂層の材料として厚さ200μmの矩形のポリイミド系の樹脂シートを準備し、圧力を7MPa、雰囲気を80Pa以下の減圧雰囲気で接合を行った以外は、実施例1と同様の方法で金属ベース回路基板を作製した。
得られた金属ベース回路基板について、実施例1と同様の方法により接合率(%)を評価した結果、接合率は98面積%以上であり、良好に接合していた。
【0065】
[比較例1]
厚さ2mmの金属回路板を用い、接合用スペーサーを使用せずに、アルミニウム板をスペーサーとして用いて接合した以外は、実施例3と同様の方法で金属ベース回路基板を作製した。
得られた金属ベース回路基板について、実施例1と同様の方法により接合率(%)を評価した結果、接合率は90面積%であり、接合欠陥が多く観察された。
【0066】
[比較例2]
8MPaで金属回路板を加圧することにより、金属ベース板と金属回路板を接合して接合体を得た以外は、比較例1と同様の方法で金属ベース回路基板を作製した。
得られた金属ベース回路基板について、実施例1と同様の方法により接合率(%)を評価した結果、接合率は90面積%であり、接合欠陥が多く観察された。
【0067】
[比較例3]
厚さ3μmのNiめっきが全面に形成された金属ベース板および金属回路板を用いた以外は、比較例1と同様の方法で金属ベース回路基板を作製した。
得られた金属ベース回路基板について、実施例1と同様の方法により接合率(%)を評価した結果、接合率は90面積%であり、接合欠陥が多く観察された。
【0068】
[比較例4]
硫酸と過酸化水素の混合液を用いた化学研磨により金属ベース板および金属回路板を粗化した以外は、比較例1と同様の方法で金属ベース回路基板を作製した。
得られた金属ベース回路基板について、実施例1と同様の方法により接合率(%)を評価した結果、接合率は90面積%であり、接合欠陥が多く観察された。
【0069】
[比較例5]
比較例4と同様の化学研磨により金属ベース板および金属回路板を粗化した後、全面に厚さ3μmのNiめっきを形成した以外は、比較例1と同様の方法で金属ベース回路基板を作製した。
得られた金属ベース回路基板について、実施例1と同様の方法により接合率(%)を評価した結果、接合率は80面積%であり、接合欠陥が多く観察された。
【0070】
[比較例6]
(内部にガラスクロスが形成されていない)厚さ1.0mmのシリコーンゴムをスペーサーとして用いて接合した以外は、比較例1と同様の方法で金属ベース回路基板を作製した。
得られた金属ベース回路基板について、実施例1と同様の方法により接合率(%)を評価した結果、接合率は95面積%であり、接合欠陥が多く観察された。
【0071】
[参考例1]
金属ベース板の材料として長さ85mm、幅85mm、厚さ2mmの矩形の無酸素銅(C1020)を準備し、金属回路板の材料として長さ38mm、幅38mm、厚さ1.2mmの矩形の無酸素銅(C1020)を4枚準備した。また、絶縁樹脂層の材料として長さ85mm、幅85mm、厚さ150μmの矩形のポリイミド系の樹脂シートを準備した。
【0072】
次いで、樹脂シートの片面の保護フィルムをはがし、保護フィルムをはがした面側が金属ベース板に接触するように、金属ベース板の略全面が覆われるように樹脂シートを配置し、この樹脂シートの上にガラスクロス層がシリコーンゴム板の厚さ方向中央に形成されたシリコーンゴムとガラスクロス層の複合材からなる厚さ1.5mmの接合用スペーサー(マクセルクレハ(株)製、ガラスクロス入りシリコーンゴムシート、品番SR970P)を載置し、大気中において、接合用スペーサーの上から3.5MPaで樹脂シートを加圧しながら130℃で5分間加熱し、金属ベース板に樹脂シートが接着した中間接合体を得た。
【0073】
次いで、中間接合体の樹脂シートの表面を覆っている樹脂シートフィルム(保護フィルム)を剥がした後、その上に位置決め治具を用いて4枚の金属回路板を配置し、金属ベース板、樹脂シート、金属回路板および位置決め治具からなる積層体を形成した。
【0074】
位置決め治具は(図4に示すように)4枚の金属回路板のパターン間距離(隣り合った金属回路板の端部と端部の距離)がそれぞれ1mmの間隔を有し、田の字状に配置されるように4枚の金属回路板と略同一の形状の開口部を備えた厚さ1.0mmのステンレス板であり、その板面(表面)にはシリコーンゴムのコーティングが施してあり、位置決め治具は金属回路板と略同一の厚さを有している。
【0075】
積層体をホットプレス機内に配置されたSUS304の敷板の上に載置し、積層体の金属回路板の上面に、ガラスクロス層がシリコーンゴム板の厚さ方向中央に形成されたシリコーンゴムとガラスクロス層の複合材からなる厚さ1.5mmの接合用スペーサー(マクセルクレハ(株)製、ガラスクロス入りシリコーンゴムシート、品番SR970P)を載置した後、大気中において、接合用スペーサーの上から4MPaで金属回路板を加圧しながら180℃で10分間加熱し、金属ベース板と金属回路板が樹脂シートを介して接合された接合体を得た。
【0076】
その後、接合体を、窒素ガス中において無加圧で180℃、2時間加熱して樹脂シートを硬化させ、金属ベース回路基板を作製した。
【0077】
得られた金属ベース回路基板について、実施例1と同様の方法により接合率(%)を評価した結果、接合率は98面積%以上であり、良好に接合していた。
【0078】
[参考例2]
接合用スペーサーの上から4MPaで樹脂シートを加圧して、金属ベース板に樹脂シートが接合された中間接合体を得、中間積層体から形成された積層体の金属板30の上に、金属板30と略同形状のSUS304からなる接合治具(図5における接合治具300)を配置した後、接合用スペーサーを配置し、その上から金属回路板のみを加圧しながら加熱した以外は、参考例1と同様の方法で金属ベース回路基板を作製した。
得られた金属ベース回路基板について、実施例1と同様の方法により接合率(%)を評価した結果、接合率は98面積%以上であり、良好に接合していた。
【0079】
[参考例3]
接合用スペーサーの上から7MPaで樹脂シートを加圧しながら100℃で5分間加熱し、金属ベース板に樹脂シートが接着された中間接合体を得た以外は、参考例1と同様の方法で金属ベース回路基板を作製した。
得られた金属ベース回路基板について、実施例1と同様の方法により接合率(%)を評価した結果、接合率は98面積%以上であり、良好に接合していた。
得られた金属ベース回路基板について、実施例4と同様の方法により金属ベース板と金属回路板の接合強度を評価した結果、11.1MPaであった。
【0080】
[参考例4]
80Pa以下の減圧雰囲気中で加熱して、金属ベース板に樹脂シートが接着された中間接合体を得、80Pa以下の減圧雰囲気中において加熱し、金属ベース板と金属回路板が樹脂シートを介して接合された接合体を得た以外は、参考例3と同様の方法で金属ベース回路基板を作製した。
得られた金属ベース回路基板について、実施例1と同様の方法により接合率(%)を評価した結果、接合率は98面積%以上であり、良好に接合していた。
得られた金属ベース回路基板について、実施例4と同様の方法により金属ベース板と金属回路板の接合強度を評価した結果、13.7MPaであった。
【0081】
[参考例5]
3μmのNiめっきが全面に形成された金属ベース板および金属回路板を用い、厚さ200μmの絶縁樹脂層の材料(樹脂シート)を用い、中間接合体の作製および中間接合体と金属回路板の接合時に10MPaの加圧をかけて接合した以外は参考例4と同様の方法で金属ベース回路基板を作製した。
得られた金属ベース回路基板について、実施例1と同様の方法により接合率(%)を評価した結果、接合率は98面積%以上であり、良好に接合していた。
【0082】
[参考例6]
厚さ3μmのNiめっきが全面に形成された金属ベース板および金属回路板を用い、さらに金属ベース板の裏面(金属回路板を接合する面と反対側の面)に、高さ4mmの5mm角の多数の柱状突起(ピン)がそれぞれ5mmの間隔を置いて形成されておいる金属ベース板を用い、絶縁樹脂層の材料として厚さ200μmの矩形のポリイミド系の樹脂シートを準備し、中間接合体と金属回路板の接合時の圧力を7MPaとした以外は、参考例5と同様の方法で金属ベース回路基板を作製した。
得られた金属ベース回路基板について、実施例1と同様の方法により接合率(%)を評価した結果、接合率は98面積%以上であり、良好に接合していた。
【0083】
[参考例7]
中間接合体の作製および中間接合体と金属回路板の接合時の圧力を5MPaとした以外は、参考例1と同様の方法で金属ベース回路基板を作製した。
得られた金属ベース回路基板について、実施例1と同様の方法により接合率(%)を評価した結果、接合率は98面積%以上であり、良好に接合していた。
【0084】
[比較例7]
厚さ2mmの金属回路板を用い、大気中においてスペーサーなしで4MPaの負荷をかけながら120℃で5分加熱して、金属ベース板に樹脂シートが接着された中間接合体を得、中間接合体と金属回路板を位置決め治具および接合スペーサーなしで加圧しながら接合体を得た以外は、参考例1と同様の方法で金属ベース回路基板を作製した。
得られた金属ベース回路基板について、実施例1と同様の方法により接合率(%)を評価した結果、接合率は90面積%であり、接合欠陥が多く観察された。
【0085】
[比較例8]
大気中において接合用スペーサーなしで4MPaの負荷をかけながら常温で10分保持して中間接合体を得、中間接合体と金属回路板の接合時にシリコーンゴムのスペーサーを使用した以外は、比較例7と同様の方法で金属ベース回路基板を作製した。
得られた金属ベース回路基板について、実施例1と同様の方法により接合率(%)を評価した結果、接合率は95面積%であり、接合欠陥が多く観察された。
【0086】
なお、上記実施例、比較例および参考例について金属板(金属回路板)の上面の端部と底面の端部との寸法差を測定した。
(金属板の上面の端部と底面の端部との寸法差)
金属ベース回路基板の回路用の金属板を上から見たときに、金属板の回路の1つの辺(周縁、周囲)に対して垂直な断面を観察することにより、金属板の周縁部における金属板の上面の端部と底面の端部との寸法差w(スカート長w)を測定し、また、金属板の厚さtをスカート長wで除した絶対値(t/w)を算出した。なお、スカート長wは、金属板の上面の端部より底面の端部の寸法が大きい場合を正(+)、上面の端部より底面の端部の寸法が小さい場合を負(-)とする。
その結果、上記実施例、比較例および参考例のいずれもスカート長wは10μm程度であり、t/wは120であった。
【0087】
以上より、ガラスクロス層がシリコーンゴム板の厚さ方向中央に形成されたシリコーンゴムとガラスクロス層の複合材からなる厚さ1.5mmの接合用スペーサーを用いることで、接合率が98面積%以上である、接合欠陥が少ない金属ベース回路基板を製造できることを確認した。
【符号の説明】
【0088】
1 金属ベース回路基板
2 接合用スペーサー
3 積層体
10 金属ベース板
11 ピン
20 樹脂シート
21 絶縁樹脂層
30 金属板
100 シリコーンゴムシート
110 強化部材
200 位置決め治具
300 接合治具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7