IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000938
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】光検出装置及び測距システム
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/481 20060101AFI20231226BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20231226BHJP
   G01S 17/32 20200101ALI20231226BHJP
   G01S 17/93 20200101ALI20231226BHJP
【FI】
G01S7/481 A
G01C3/06 120Q
G01S17/32
G01S17/93
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099946
(22)【出願日】2022-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(72)【発明者】
【氏名】前田 俊治
【テーマコード(参考)】
2F112
5J084
【Fターム(参考)】
2F112AD01
2F112BA10
2F112CA05
2F112DA15
2F112DA21
2F112DA24
2F112DA28
2F112DA32
2F112FA03
2F112FA07
2F112FA21
2F112FA45
2F112FA50
5J084AA05
5J084AB01
5J084AB07
5J084AC02
5J084AD01
5J084BA02
5J084BA36
5J084BA39
5J084BA48
5J084BB24
5J084BB27
5J084BB28
5J084BB40
5J084CA31
5J084CA48
5J084CA49
5J084CA68
5J084EA31
(57)【要約】
【課題】半導体集積化が容易で、低消費電力かつ測距精度に優れた光検出装置を提供する。
【解決手段】光検出装置は、複数の波長帯域を含む第1光信号を受光する受光部と、前記第1光信号と第2光信号とに基づいて自己相関又は相互相関による畳み込み演算を行って画素信号を生成する複数の画素と、前記画素信号をアナログ-デジタル変換してデジタル信号を生成するアナログ-デジタル変換器と、前記デジタル信号に対してフーリエ変換処理を行うフーリエ変換処理部と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の波長帯域を含む第1光信号を受光する受光部と、
前記第1光信号と第2光信号とに基づいて自己相関又は相互相関による畳み込み演算を行って画素信号を生成する複数の画素と、
前記画素信号をアナログ-デジタル変換してデジタル信号を生成するアナログ-デジタル変換器と、
前記デジタル信号に対してフーリエ変換処理を行うフーリエ変換処理部と、を備える、光検出装置。
【請求項2】
前記第1光信号は、発光部が発光した複数の波長帯域を含む光信号が物体で反射された反射光信号である、請求項1に記載の光検出装置。
【請求項3】
前記発光部で発光された光信号の伝搬方向を切り替える光サーキュレータを備え、
前記発光部で発光された光信号の伝搬方向を前記光サーキュレータで切り替えて、前記物体に照射し、
前記受光部は、前記物体で反射された前記第1光信号を前記光サーキュレータを介して受光する、請求項2に記載の光検出装置。
【請求項4】
前記第2光信号は、前記第1光信号、又は所定のパルス幅のパルス光信号である、請求項1に記載の光検出装置。
【請求項5】
前記受光部は、
それぞれが光電変換素子を有する複数の画素と、
前記複数の画素に対して前記第1光信号を同タイミングで入射させる複数の第1光導波路と、
前記複数の画素に対して前記第2光信号を一定の遅延時間ずつ順にずらして入射させる複数の第2光導波路と、を有し、
前記複数の画素は、前記複数の第1光導波路から出射された光と、前記複数の第2光導波路から出射された光とを光電変換して畳み込み演算を行った画素信号を出力する、請求項1に記載の光検出装置。
【請求項6】
前記第2光信号は、前記第1光信号であり、
前記複数の画素は、前記複数の第1光導波路から出射された光と、前記複数の第2光導波路から出射された光とに基づく自己相関による畳み込み演算を行って前記画素信号を生成する、請求項5に記載の光検出装置。
【請求項7】
所定のパルス幅のパルス光信号を生成するパルス光発生器を備え、
前記第2光信号は、前記パルス光発生器で生成された前記パルス光信号であり、
前記複数の画素は、前記複数の第1光導波路から出射された光と、前記複数の第2光導波路から出射された光とに基づく相互相関による畳み込み演算を行って前記画素信号を生成する、請求項5に記載の光検出装置。
【請求項8】
前記複数の第1光導波路は、前記複数の第1光導波路の光路長、屈折率、又は反射率の少なくとも一つを個別に調整して、前記第1光信号を同タイミングに前記複数の画素に入射させる、請求項5に記載の光検出装置。
【請求項9】
前記複数の第2光導波路は、前記複数の第2光導波路の光路長、屈折率、又は反射率の少なくとも一つを個別に調整して、一定の遅延時間ずつずらされた前記第2光信号を前記複数の画素に入射する、請求項5に記載の光検出装置。
【請求項10】
前記第1光信号は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)信号形式の光信号である、請求項1に記載の光検出装置。
【請求項11】
前記第1光信号は、それぞれ異なる周波数帯域の複数のサブキャリア信号を含んでおり、
前記複数のサブキャリア信号のうち、信号強度がピーク値になるサブキャリア信号の周波数では、このサブキャリア信号に周波数軸上で隣接する2つのサブキャリア信号の信号強度はゼロである、請求項10に記載の光検出装置。
【請求項12】
発光部から発光された複数の波長帯域を含む光信号を、それぞれ異なる波長帯域の複数の分光信号に分光する分光器を備え、
前記複数の分光信号が1以上の物体に照射されて反射された複数の反射分光信号は、前記分光器にて光結合されて前記第1光信号が生成され、前記受光部にて受光される、請求項1に記載の光検出装置。
【請求項13】
前記分光器で分光された前記複数の分光信号は、所定領域内のそれぞれ異なる伝搬方向に伝搬する、請求項12に記載の光検出装置。
【請求項14】
前記分光器で分光された前記複数の分光信号を少なくとも一方向に走査させる走査部材を備え、
前記走査部材で走査された前記複数の分光信号が前記物体に照射されて反射された複数の反射分光信号は前記分光器にて光結合されて前記第1光信号が生成されて、前記受光部にて受光される、請求項12に記載の光検出装置。
【請求項15】
前記分光器及び前記走査部材を一体化させた屈折方向制御部材を備え、
前記屈折方向制御部材は、前記第1光信号に含まれる波長帯域ごとに分光された複数の分光信号の屈折方向をそれぞれ相違させて、二次元方向に伝搬させる、請求項14に記載の光検出装置。
【請求項16】
前記フーリエ変換処理を行った結果に基づいて、前記第1光信号を反射させた物体までの距離を計測する測距部を備える、請求項1に記載の光検出装置。
【請求項17】
前記フーリエ変換処理を行った結果に基づいて、前記第1光信号に含まれる周波数成分の解析を行うスペクトラム解析部を備える、請求項1に記載の光検出装置。
【請求項18】
複数の波長帯域の光信号を発光する発光部と、
前記発光部で発光された光信号が物体で反射された第1光信号を受光する受光部と、
前記第1光信号と第2光信号とに基づいて自己相関又は相互相関による畳み込み演算を行って画素信号を生成する複数の画素と、
前記画素信号をアナログ-デジタル変換してデジタル信号を生成するアナログ-デジタル変換器と、
前記デジタル信号に対してフーリエ変換処理を行うフーリエ変換処理部と、
前記フーリエ変換処理を行った結果に基づいて、前記物体までの距離を計測する測距部と、を備える、測距システム。
【請求項19】
前記発光部は、OFDM信号形式の光信号を発光する、請求項18に記載の測距システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光検出装置及び測距システムに関する。
【背景技術】
【0002】
FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式のレーダ及び測距センサが提案されている(特許文献1参照)。FMCW方式の測距センサは、ToF(Time of Flight)方式の一種であり、距離を周波数に換算して測距を行う。
【0003】
FMCW方式の測距センサでは、光源から周波数を連続的に変化させた光信号を発光し、この光信号の周波数と物体からの反射光の周波数との周波数差が一定になる時間領域にて、反射光の遅延量を検出し、検出された遅延量に基づいて物体までの距離を推定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-61809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
FMCW方式の測距センサは、長距離での距離計測精度に優れ、また低消費電力であるという特徴を備えている。光源から発光される光信号には、短波長赤外光(SWIR:Short Wavelength Infra-Red)の波長帯域を用いるのが一般的であるが、SWIRの波長帯域である1500nmを周波数に換算すると、200THzもの高周波信号である。このため、光源からの光信号や、物体からの反射光信号を直接アナログ-デジタル変換することは困難である。よって、一般には、光学ミキサを用いて低周波数信号に変換してからアナログ-デジタル変換が行われる。しかしながら、低損失の光学ミキサを半導体基板上に集積化するには、種々の課題がある。
【0006】
そこで、本開示では、半導体集積化が容易で、低消費電力かつ測距精度に優れた光検出装置及び測距システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本開示によれば、複数の波長帯域を含む第1光信号を受光する受光部と、
前記第1光信号と第2光信号とに基づいて自己相関又は相互相関による畳み込み演算を行って画素信号を生成する複数の画素と、
前記画素信号をアナログ-デジタル変換してデジタル信号を生成するアナログ-デジタル変換器と、
前記デジタル信号に対してフーリエ変換処理を行うフーリエ変換処理部と、を備える、光検出装置。
【0008】
前記第1光信号は、発光部が発光した複数の波長帯域を含む光信号が物体で反射された反射光信号であってもよい。
【0009】
前記発光部で発光された光信号の伝搬方向を切り替える光サーキュレータを備え、
前記発光部で発光された光信号の伝搬方向を前記光サーキュレータで切り替えて、前記物体に照射し、
前記受光部は、前記物体で反射された前記第1光信号を前記光サーキュレータを介して受光してもよい。
【0010】
前記第2光信号は、前記第1光信号、又は所定のパルス幅のパルス光信号であってもよい。
【0011】
前記受光部は、
それぞれが光電変換素子を有する複数の画素と、
前記複数の画素に対して前記第1光信号を同タイミングで入射させる複数の第1光導波路と、
前記複数の画素に対して前記第2光信号を一定の遅延時間ずつ順にずらして入射させる複数の第2光導波路と、を有し、
前記複数の画素は、前記複数の第1光導波路から出射された光と、前記複数の第2光導波路から出射された光とを光電変換して畳み込み演算を行った画素信号を出力してもよい。
【0012】
前記第2光信号は、前記第1光信号であり、
前記複数の画素は、前記複数の第1光導波路から出射された光と、前記複数の第2光導波路から出射された光とに基づく自己相関による畳み込み演算を行って前記画素信号を生成してもよい。
【0013】
所定のパルス幅のパルス光信号を生成するパルス光発生器を備え、
前記第2光信号は、前記パルス光発生器で生成された前記パルス光信号であり、
前記複数の画素は、前記複数の第1光導波路から出射された光と、前記複数の第2光導波路から出射された光とに基づく相互相関による畳み込み演算を行って前記画素信号を生成してもよい。
【0014】
前記複数の第1光導波路は、前記複数の第1光導波路の光路長、屈折率、又は反射率の少なくとも一つを個別に調整して、前記第1光信号を同タイミングに前記複数の画素に入射させてもよい。
【0015】
前記複数の第2光導波路は、前記複数の第2光導波路の光路長、屈折率、又は反射率の少なくとも一つを個別に調整して、一定の遅延時間ずつずらされた前記第2光信号を前記複数の画素に入射してもよい。
【0016】
前記第1光信号は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)信号形式の光信号であってもよい。
【0017】
前記第1光信号は、それぞれ異なる周波数帯域の複数のサブキャリア信号を含んでおり、
前記複数のサブキャリア信号のうち、信号強度がピーク値になるサブキャリア信号の周波数では、このサブキャリア信号に周波数軸上で隣接する2つのサブキャリア信号の信号強度はゼロであってもよい。
【0018】
発光部から発光された複数の波長帯域を含む光信号を、それぞれ異なる波長帯域の複数の分光信号に分光する分光器を備え、
前記複数の分光信号が1以上の物体に照射されて反射された複数の反射分光信号は、前記分光器にて光結合されて前記第1光信号が生成され、前記受光部にて受光されてもよい。
【0019】
前記分光器で分光された前記複数の分光信号は、所定領域内のそれぞれ異なる伝搬方向に伝搬してもよい。
【0020】
前記分光器で分光された前記複数の分光信号を少なくとも一方向に走査させる走査部材を備え、
前記走査部材で走査された前記複数の分光信号が前記物体に照射されて反射された複数の反射分光信号は前記分光器にて光結合されて前記第1光信号が生成されて、前記受光部にて受光されてもよい。
【0021】
前記分光器及び前記走査部材を一体化させた屈折方向制御部材を備え、
前記屈折方向制御部材は、前記第1光信号に含まれる波長帯域ごとに分光された複数の分光信号の屈折方向をそれぞれ相違させて、二次元方向に伝搬させてもよい。
【0022】
前記フーリエ変換処理を行った結果に基づいて、前記第1光信号を反射させた物体までの距離を計測する測距部を備えてもよい。
【0023】
前記フーリエ変換処理を行った結果に基づいて、前記第1光信号に含まれる周波数成分の解析を行うスペクトラム解析部を備えてもよい。
【0024】
本開示によれば、複数の波長帯域の光信号を発光する発光部と、
前記発光部で発光された光信号が物体で反射された第1光信号を受光する受光部と、
前記第1光信号と第2光信号とに基づいて自己相関又は相互相関による畳み込み演算を行って画素信号を生成する複数の画素と、
前記画素信号をアナログ-デジタル変換してデジタル信号を生成するアナログ-デジタル変換器と、
前記デジタル信号に対してフーリエ変換処理を行うフーリエ変換処理部と、
前記フーリエ変換処理を行った結果に基づいて、前記物体までの距離を計測する測距部と、を備える、測距システムが提供される。
【0025】
前記発光部は、OFDM信号形式の光信号を発光してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1A】干渉計を用いて光の周波数解析を行う概念図。
図1B図1Aの干渉計の一変形例を示す図。
図2】自己相関方式の処理手順をより詳細に説明する図。
図3】光電変換素子を有する受光部で行われる畳み込み演算処理を模式的に示す図。
図4】自己相関方式の光検出装置のブロック図。
図5】相互相関方式を説明する図。
図6】相互相関方式の光検出装置のブロック図。
図7】本開示による測距システムの概略構成を示す図。
図8A】インパルス信号に対してフーリエ変換処理を行った結果を示す図。
図8B】パルス信号に対してフーリエ変換処理を行った結果を示す図。
図9】入射光信号に含まれる複数のOFDM信号の一例を示す図。
図10図9Cの3つのサブキャリア信号を合成したOFDM信号の波形図。
図11】OFDM信号を用いた本開示による測距システムの概略構成を示す図。
図12】受光部の動作とシミュレーション波形を示す図。
図13】位相角と位相差の関係を示す図。
図14】本開示による光検出装置の具体的構成の第1例を示すブロック図。
図15A】第1光導波路の形状を変えて光路量を等しくする例を示す図。
図15B】互いに屈折率又は反射率の異なる材料を用いて光路長を調整する図。
図15C】第1光導波路の屈折率又は反射率を電気的に制御して、光路長を同一にする例を示す図。
図16】一変形例による光検出装置の具体的構成の第2例を示すブロック図。
図17】車両制御システムの概略的な構成の一例を示すブロック図。
図18】車外情報検出部及び撮像部の設置位置の一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して、光検出装置及び測距システムの実施形態について説明する。以下では、光検出装置及び測距システムの主要な構成部分を中心に説明するが、光検出装置及び測距システムには、図示又は説明されていない構成部分や機能が存在しうる。以下の説明は、図示又は説明されていない構成部分や機能を除外するものではない。
【0028】
短波長赤外光等の光に対して、干渉計を用いて光学的な自己相関を取ることにより、周波数解析を行うことができる。
【0029】
図1Aは干渉計1を用いて光の周波数解析を行う概念図である。図1Aの干渉計1は、光源2と、ハーフミラー3と、固定ミラー4と、可動ミラー5と、光電変換素子(フォトダイオード)6aを有する受光部6とを備えている。
【0030】
光源2は、例えば短波長赤外帯域又は可視光帯域の光を発光する。図1Aの波形w1に示すように、光源2が発光する光は、2種類以上の波長(周波数)成分を含んでいる。
【0031】
光源2からの光の一部は、ハーフミラー3を透過して固定ミラー4で反射され、ハーフミラー3で再度反射されて光電変換素子6aに入射される。また、光源2からの光の他の一部は、ハーフミラー3で反射されて可動ミラー5で反射され、ハーフミラー3を透過して光電変換素子6aに入射される。
【0032】
このように、光電変換素子6aには、固定ミラー4で反射された光と、可動ミラー5で反射された光とが入射される。可動ミラー5は光軸に沿って周期的に移動される。よって、光源2からハーフミラー3と可動ミラー5で反射されて、ハーフミラー3を透過して光電変換素子6aに入射される光の光路長は、可動ミラー5の移動により変更される。
【0033】
これに対して、光源2からハーフミラー3を透過して固定ミラー4とハーフミラー3で反射されて光電変換素子6aに入射される光の光路長は常に一定である。よって、これら2つの光路長の差は、可動ミラー5の移動に応じて変化する。
【0034】
光電変換素子6aには、これら2つの光路長の光が入射される。光電変換素子6aは、これら2つの光路長の光を合成した画素信号を生成する。すなわち、光電変換素子6aは、固定ミラー4で反射されて入射された光を、可動ミラー5で反射された光が入射されるタイミングでサンプリングする場合と同様の画素信号を生成する。固定ミラー4の位置は周期的に変化するため、光電変換素子6aは、固定ミラー4で反射された光を、複数のサンプリング位置でサンプリングした場合と同様の画素信号を生成できる。この画素信号は、例えば波形w2で表される。波形w2は、可動ミラーを周期的に移動させた状態で光電変換素子6aから出力された画素信号をアナログ-デジタル変換(以下、AD変換)した波形を示している。より具体的には、波形w2は、固定ミラー4で反射された光を、少しずつずらしながら畳み込み演算を行って生成される波形である。
【0035】
可動ミラー5をゆっくりとした速度で移動させても、光電変換素子6aは、波形w2のような画素信号を生成でき、光源2からの光の波長(周波数)に合わせて高速にサンプリングをしてAD変換する必要がなくなる。
【0036】
波形w2に示す画素信号をフーリエ変換処理を行うと、図1Aの波形w3に示すように、光源2で発光された光に含まれる複数の波長(周波数)成分を抽出することができる。
【0037】
図1Aでは、可動ミラー5を光軸に沿って周期的に移動させる例を示したが、可動ミラー5で光路長を変える代わりに光の伝搬遅延時間を周期的に可変させる構成も取り得る。
【0038】
図1B図1Aの干渉計1の一変形例を示す図である。図1Bの干渉計1aは、ハーフミラー3、固定ミラー4、及び可動ミラー5の代わりに、光導波路7と光学可変遅延素子8とを有する。光学可変遅延素子8は、光の伝搬遅延時間を周期的に可変させることができる。
【0039】
光源2から発光された光は、光導波路7と光学可変遅延素子8に入射される。光導波路7に入射された光が光導波路7から出射されるまでに要する時間(伝搬遅延時間)は常に一定である。これに対して、光学可変遅延素子8に入射された光が光学可変遅延素子8から出射されるまでに要する時間は、周期的に変化する。
【0040】
光導波路7から出射された光と光学可変遅延素子8から出射された光はいずれも光電変換素子6aに入射される。光導波路7から出射された光と光学可変遅延素子8から出射された光の遅延時間は周期的に変化するため、光電変換素子6aを有する受光部6は、光導波路7から出射された光と光学可変遅延素子8から出射された光を畳み込み演算した画素信号を生成する。この画素信号は、図1Aの波形w2と同じになる。よって、この画素信号に対してフーリエ変換処理を行うと、波形w3と同様に、光源2で発光された光に含まれる複数の波長成分を抽出することができる。
【0041】
図1A図1Bは、光源2で発光された光と、光源2で発光された光を遅延させた光との自己相関による畳み込み演算をした結果をAD変換しており、自己相関方式と呼ばれる。
【0042】
図2及び図3は自己相関方式の処理手順をより詳細に説明する図である。図2及び図3は、互いに周波数が異なる2つの信号を合成した信号に対して、自己相関方式にて、その信号に含まれる2つの周波数成分を抽出する例を示している。
【0043】
図2には、合成される2つの信号の波形w4、w5と、合成後の信号の波形w6が図示されている。波形w4とw5の信号振幅は異なっているため、合成後の信号の波形w6の振幅は時間に応じて変化する。自己相関方式では、合成後の信号と、合成後の信号を段階的に遅延させた信号との間で畳み込み演算を行ってデジタル信号を生成する。
【0044】
図3は光電変換素子6aを有する受光部6で行われる畳み込み演算処理を模式的に示す図である。以下では、波形w6で表される合成後の信号を入射光信号と呼び、入射光信号を段階的に遅延させた信号を遅延光信号と呼ぶ。
【0045】
受光部6内の各光電変換素子6aには、同一位相の入射光信号と、遅延量がそれぞれ異なる遅延光信号とが入射される。各光電変換素子6aを有する受光部6は、入射光信号w6と遅延光信号w7との畳み込み演算とAD変換を行う。これにより、波形w8に示すデジタル信号が生成される。次に、デジタル信号に対してフーリエ変換処理を行う。これにより、波形w9に示すように、入射光信号w6に含まれる2つの周波数成分が抽出される。
【0046】
複数の遅延光信号w7の遅延量は等量ずつ相違しており、これら遅延光信号27と入力光信号w6との畳み込み演算を行った結果を示す信号は、入力光信号w6を高速にサンプリングした信号と相関がある。
【0047】
図4は自己相関方式の光検出装置10aのブロック図である。図4の光検出装置10aは、複数の光電変換素子11aを有する受光部11と、AD変換器(ADC:Analog Digital Converter)12と、フーリエ変換処理部(FFT:Fast Fourier Transform)13とを有する。
【0048】
受光部11内の各光電変換素子11aには、入射光信号と、入射光信号を段階的に遅延させた遅延光信号とが入射される。各光電変換素子11aに入射される入射光信号の位相は揃っており、同タイミングで同一位相の入射光信号が入射される。各光電変換素子11aに入射される遅延光信号は、光電変換素子11aごとに、遅延量が等量ずつずれている。
【0049】
各画素光電変換素子11aで生成される画素信号は、入射光信号と遅延光信号との畳み込み演算を行った信号であり、例えば波形w13で表される。AD変換器12は、複数の光電変換素子11aで光電変換された画素信号をデジタル信号に変換する。受光部11とAD変換器12とで、入射光信号と遅延光信号の畳み込み演算とAD変換とが行われる。フーリエ変換処理部13は、デジタル信号に基づいて、入射光信号に含まれる複数の周波数成分を抽出する。
【0050】
入射光信号に含まれる複数の周波数成分を抽出する手法として、自己相関方式の他に、相互相関方式と呼ばれる方式がある。図5は相互相関方式を説明する図である。図5は、図2と同様に、波形w4、w5で表される2つの信号を合成した波形w6の入射光信号の周波数解析を行う例を示している。
【0051】
相互相関方式では、複数の光電変換素子11aに対して、同一位相の入射光信号(波形w6)を入射するとともに、段階的に遅延させたパルス光信号(波形w10)を入射する。すなわち、各光電変換素子11aに入射されるパルス光信号は、それぞれ位相が等量ずつ異なっている。各光電変換素子11aを有する受光部11は、入射光信号とパルス光信号との畳み込み演算を行った画素信号を生成し、その後に画素信号をAD変換して、波形w11に示すデジタル信号を生成する。相互相関方式によるデジタル信号の波形w11は、自己相関方式によるデジタル信号の波形w8と同様であり、波形w9と同様の波形w12の周波数解析結果が得られる。
【0052】
図6は相互相関方式の光検出装置10bのブロック図である。図6の光検出装置10bは、図4の光検出装置10aと同様に、複数の光電変換素子11aを有する受光部11と、AD変換器12と、フーリエ変換処理部13とを有する他に、パルス光発生器14を有する。
【0053】
パルス光発生器14は、所定のパルス幅のパルス光信号を生成する。受光部11内の各光電変換素子11aには、入射光信号と、段階的に遅延されたパルス光信号とが入射される。各光電変換素子11aを有する受光部11では、入射光信号とパルス光信号とに基づいて畳み込み演算を行って、例えば波形w14に示すような画素信号を生成する。この画素信号はAD変換器12でデジタル信号に変換される。フーリエ変換処理部13は、デジタル信号に基づいて、入射光信号に含まれる複数の周波数成分を抽出する。
【0054】
以上に説明したように、複数の周波数成分(波長成分)を含む入射光信号に対して、受光部11内の各画素で自己相関方式又は相互相関方式による畳み込み演算を行って生成されるデジタル信号は、高速のAD変換器を用いずに生成できる。このため、回路規模を縮小でき、かつ消費電力の低減も図れる。
【0055】
また、生成されたデジタル信号は、入射光信号に含まれる複数の周波数成分を含んでおり、AD変換後にフーリエ変換処理を行うことで、距離計測や周波数解析を行うことができる。
【0056】
図7は本開示による測距システム20の概略構成を示す図である。図7の測距システム20は、光源2と、サーキュレータ21と、受光部11とを備えている。光源2は、複数の波長(周波数)帯域の光信号を発光する。サーキュレータ21は、光源2で発光された光信号の伝搬方向を切り替えて、物体15の方向に伝搬させる。サーキュレータ21で伝搬方向が切り替えられた光信号が物体15に照射されると、物体15で反射されて、その反射光信号は、逆方向を伝搬して、サーキュレータ21に入射される。サーキュレータ21は、反射光信号を受光部11に導光する。
【0057】
受光部11は、自己相関方式を採用する場合には、反射光信号と、反射光信号を段階的に遅延させた遅延光信号とを複数の画素に入射させて、各画素内で畳み込み演算を行った結果を示す画素信号を生成する。この画素信号は、図7では不図示のAD変換器でデジタル信号に変換される。デジタル信号は、図7では不図示のフーリエ変換処理部に入力され、デジタル信号に含まれる複数の周波数成分が抽出される。抽出された複数の周波数成分の位相差から物体15の距離を計測することができる。
【0058】
距離計測を行うには、光源2が発光する光信号に複数の波長(周波数)帯域の信号成分が含まれている必要がある。本実施形態では、複数の波長(周波数)帯域の信号成分を含む光信号として、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)信号を使用することができる。
【0059】
図8A図8BはOFDM信号を説明する図である。図8Aに示すインパルス信号に対してフーリエ変換処理を行うと、全周波数成分を均等に含む周波数解析結果が得られる。また、図8Bに示すように、所定のパルス幅を有するパルス信号に対してフーリエ変換処理を行うと、所定の周波数で信号強度がピーク値になり、一定の周波数ごとに信号強度がゼロになる周波数解析結果が得られる。
【0060】
OFDM信号は、信号強度がピーク値になる周波数がそれぞれ相違する複数のサブキャリア信号を含み、一つのサブキャリア信号の信号強度がピーク値になるときには他のサブキャリア信号の信号強度がゼロになるようにしている。OFDM信号は、信号強度がピーク値になる周波数がそれぞれ異なる複数のサブキャリア信号を含みながらも、これらサブキャリア信号がそれぞれ干渉しないという特徴を有する。
【0061】
図9は入射光信号に含まれる複数のOFDM信号の一例を示す図である。図9の横軸は周波数、縦軸は信号強度である。図9のOFDM信号は、3つのサブキャリア信号を含む例を示している。図9Aは、それぞれ位相が異なり同一のパルス幅を有するパルス信号を示している。図9B図9Aの3つのパルス信号に対して逆フーリエ変換処理を行って生成される信号を示している。図9C図9Aの3つのパルス信号に対して逆フーリエ変換処理を行って生成される信号の絶対値を示しており、サブキャリア信号に該当する。OFDM信号は、例えば図9Cの3つの波形を合成することにより得られる。
【0062】
図10図9Cの3つのサブキャリア信号w15,w16,w17を合成したOFDM信号の波形図である。図10の横軸は周波数、縦軸は信号強度である。図10のOFDM信号は、隣り合う周波数のサブキャリア信号同士の位相を互いに直交させて、周波数帯域の一部を重ね合わせている。一つのサブキャリア信号の信号強度がピークになる時間位置では、他のサブキャリア信号の信号強度はゼロである。
【0063】
OFDM信号は、マルチパスに強いため、無線通信で広く用いられている。無線通信で使用されるOFDM信号は、ピーク値に対して振幅変調、周波数変調、又は位相変調などを行うことができる。本実施形態では、OFDM信号を周波数解析又は距離計測に用いるため、ピーク値に変調をかける必要はない。
【0064】
OFDM信号は、マルチパスにより位相のずれが生じる。特に、位相変調の場合、シンボルの回転が起きる。このため、OFDM受信機にはイコライザが設けられる。イコライザは、ビルや山などの障害物によるマルチパスを検出して補正を行う。このように、イコライザは、障害物を検出して補正する機能を持っている。これはすなわち、障害物までの距離を検出できることを意味する。本実施形態では、マルチパスに強いOFDM信号を用いて、イコライザを設けてマルチパスの補正を行う代わりに、障害物(物体15)の距離を計測する。
【0065】
図10に示すように、OFDM信号は複数のサブキャリア信号を含んでおり、各サブキャリア信号は信号強度がピークになる周波数がそれぞれ異なっている。光源2で発光される光信号をOFDM信号にすることで、所定領域内に位置する複数の物体15の距離計測を同時に行うことができる。光源2で発光される光信号に含まれるサブキャリア信号の数を増やすことで、より多くの物体15の距離計測を同時に行うことができる。
【0066】
図11はOFDM信号を用いた本開示による測距システム20aの概略構成を示す図である。図11の測距システム20aは、光源2aと、サーキュレータ21と、受光部11と、分光器22と、走査部材23とを備えている。
【0067】
光源2aは、図9に示すOFDM信号形式の光信号を発光する。光源2aは、OFDM信号に含まれる各サブキャリア信号形式の光信号を発光する複数の発光部を有し、これら発光部から発光される複数の光信号によりOFDM信号形式の光信号が生成される。あるいは、一つの発光部から複数のサブキャリア信号を含む光信号を発光してもよい。一つの発光部から複数のサブキャリア信号を含む光信号を発光する場合、個々のサブキャリア信号成分の光強度を抑制でき、レーザ安全性の観点で望ましい。
【0068】
サーキュレータ21は、光源2aで発光された光信号の伝搬方向を切り替える。サーキュレータ21は、光源2aで発光された光信号を分光器22の方向に伝搬させるか、物体15からの反射光信号を受光部11の方向に伝搬させるかを切り替える。
【0069】
分光器22は、光源2aで発光された光信号を波長(周波数)ごとに複数の方向に分光する。光源2aで発光された光信号はOFDM信号であるため、信号強度がピーク値になる周波数がそれぞれ異なる複数のサブキャリア信号を含んでいる。分光器22は、光信号を複数の分光信号に分光する。各分光信号は、光源2aで発光された光信号に含まれるいずれかのサブキャリア信号成分を含んでいる。分光器22で分光された複数の分光信号は、それぞれ異なる方向に伝搬し、伝搬方向に位置する物体15の距離計測に用いられる。
【0070】
分光器22は、例えばプリズムである。プリズムは、入射光を波長(周波数)帯域ごとに異なる方向に屈折させる。これにより、プリズムは、入射光を複数の分光信号に分光させて、各分光信号を別々の方向に伝搬させる。
【0071】
分光器22は、波長(周波数)帯域ごとに屈折率を変化させる屈折率制御部材であればよく、必ずしもプリズムを用いる必要はない。
【0072】
図11の例では、分光器22で分光された複数の分光信号にて、物体15の検出範囲である二次元領域の第1方向yの所定領域24内に存在する物体15の距離計測を同時に行うことができる。第1方向yの所定領域24内に存在する1以上の物体15からの反射光は、物体15までの距離に応じた時間で、分光器22に入射される。分光器22は、第1方向yの所定領域24内に存在する1以上の物体15からの反射光を光結合して受光部11に入射させる。
【0073】
走査部材23は、分光器22で分光された複数の分光信号を二次元領域の第2方向xに走査させることができる。走査部材23は、例えば、少なくとも一軸周りに回転自在な反射ミラーを有し、分光器22で分光された複数の分光信号を反射させて、二次元領域の第2方向xに走査させる。これにより、第1方向yに延びる所定領域24を第2方向xに走査させながら、所定領域24ごとに二次元領域の全域に位置する1以上の物体15の距離計測を行うことができる。
【0074】
図11の分光器22と走査部材23を一体化させた屈折方向制御部材を設けてもよい。屈折方向制御部材は、光源2aからの光信号に含まれる波長(周波数)帯域ごとに複数の分光信号に分光し、これら分光信号の屈折方向をそれぞれ相違させて、二次元方向に伝搬させる。これにより、分光器22と走査部材23を設けなくても、三次元領域内に位置する複数の物体15に分光信号を照射させることができる。複数の分光信号が照射された複数の物体15からの反射分光信号は、屈折方向制御部材にて光結合されて、サーキュレータ21を介して受光部11に入射される。
【0075】
図12図11の測距システム20aで三次元(空間)領域内の物体15の距離計測を行う場合の受光部11の動作とシミュレーション波形を示す図である。図12は、光源2aが図8に示すように3つのサブキャリア信号を含むOFDM信号形式の光信号を発光する場合のシミュレーション結果を示す。光源2aで発光された光信号は、サーキュレータ21にて伝搬方向が切り替えられ、分光器22に入射される。分光器22は、光信号に含まれる3つのサブキャリア信号を、それぞれ別々の分光信号に分光する。分光器22で分光された3つの分光信号は、それぞれ別々の方向に伝搬し、別々の物体15の距離計測に用いられる。各分光信号の伝搬方向に位置する物体15からの反射光信号は、逆の経路を通って分光器22に入射される。分光器22は、これら3つの反射光信号を光結合して、サーキュレータ21に入射する。サーキュレータ21は、分光器22からの反射光信号を受光部11に導光する。
【0076】
図12の波形w21は、受光部11内の各画素に入射光信号と遅延光信号を入射した場合に各画素から出力される画素信号をAD変換したデジタル信号の波形である。波形w21の横軸は時間、縦軸はデジタル信号の信号レベルである。
【0077】
図12の波形w22は、デジタル信号をフーリエ変換処理部13でフーリエ変換処理を行い、その処理結果の絶対値を示している。波形w22の横軸は周波数、縦軸はフーリエ変換処理後の絶対値である。波形w22には、各サブキャリアのピーチ値が現れている。
図12の波形w23は、デジタル信号に対して複素数のフーリエ変換処理を行った結果を示している。波形w23の横軸は位相角、縦軸は複素数のフーリエ変換処理結果である位相角の値である。位相角の微分(傾き)は位相差を表す。図13に示すように、位相角の傾きが位相差であり、位相角を微分することにより求められる。
【0078】
図12の波形w24は、波形w23の位相角を微分した波形図である。波形w24の横軸は位相角、縦軸は位相差である。波形w24は、左右に対称的な波形であり、階段状の波形形状になっている。階段状の波形形状は、位相差を表している。位相差は、図8(C)の3つのサブキャリアの遅延量を表しており、3つの分光信号が照射された3つ物体15までの距離を表している。
【0079】
このように、光源2aが複数のサブキャリア信号を含むOFDM信号形式の光信号を発光することで、三次元空間領域内の第1方向yの所定領域24内に位置する1以上の物体15の距離を同時に計測することができる。また、走査部材23を設けることで、三次元空間領域内に位置する複数の物体15の距離を計測できる。
【0080】
図14は本開示による光検出装置10cの具体的構成の第1例を示すブロック図である。図14の光検出装置10cは、画素チップ31とロジックチップ32とを備えている。画素チップ31とロジックチップ32は積層されて、例えばCu-Cu接合、ビア、バンプなどにより各種信号の伝送を行う。なお、図14の光検出装置10cは、画素チップ31とロジックチップ32に分けずに、単体のチップで構成することも可能である。また、3つ以上のチップを積層させて光検出装置10cを構成してもよい。
【0081】
図14の画素チップ31は、複数の画素33と、複数の第1光導波路34と、複数の第2光導波路35と、AD変換器12と、DA変換器(DAC:Digital Analog Converter)36とを有する。
【0082】
図14の画素チップ31には、物体15からの反射光信号が入射される。物体15からの反射光信号は、図11に示すように、複数の物体15で反射されて、分光器22で光結合されてから画素チップ31に入射される。より詳細には、反射光信号は、画素チップ31内の複数の画素33に直接入射されるのではなく、画素チップ31上の複数の第1光導波路34に入射される。
【0083】
複数の第1光導波路34は、反射光信号の入射位置から複数に分岐された複数の分岐導波路であり、各分岐導波路は対応する画素33まで延びている。複数の第1光導波路34における反射光信号の入射位置から各画素33までの距離を等しくしている。これにより、複数の第1光導波路34で伝搬される反射光信号は、同タイミングで複数の画素33に入射される。
【0084】
図14に示すように、複数の第1光導波路34における反射光信号の入射位置は、画素チップ31の外周縁にあり、入射位置から各画素33までの直線距離は異なっている。このため、図15Aに示すように、入射位置からの直線距離が短い画素33までの第1光導波路34を波状にして光路長を長くする。あるいは、図15Bに示すように、反射光信号の入射位置からの直線距離が短い画素33までの第1光導波路34と、入射位置からの直接距離が長い画素33までの第1光導波路34では、互いに屈折率又は反射率の異なる材料を用いることで、光路長を調整する。あるいは、図15Cに示すように、反射光信号の入射位置から画素33までの距離に応じて第1光導波路34に印加する電圧Vを制御して、第1光導波路34の屈折率又は反射率を電気的に制御して、光路長を同一にする。
【0085】
複数の第2光導波路35は、第1光導波路34と共通の反射光信号の入射位置から分岐された複数の分岐導波路である。複数の第2光導波路35における反射光信号の入射位置から各画素33までの光路長はそれぞれ等量ずつ異なっている。すなわち、各第2光導波路35で伝搬される反射光信号の遅延量は、等量ずつ異なっている。
【0086】
複数の第2光導波路35の光路長を画素33ごとに相違させるには、例えば、上述した図15A図15B又は図15Cに示す手法が用いられる。
【0087】
このように、複数の画素33には、複数の第1光導波路34にて反射光信号が同時に入射されるとともに、複数の第2光導波路35にて所定の遅延量ずつずれた反射光信号が入射される。図14の部分拡大図に示すように、複数の第1光導波路34と複数の第2光導波路35の画素33側の端部には反射部材16が取り付けられており、第1光導波路34と第2光導波路35を伝搬してきた反射光信号は、反射部材16で反射されて各画素33に入射される。
【0088】
複数の画素33は、第1光導波路34で伝搬されてきた反射光信号(第1光信号)と、第2光導波路35で伝搬されてきた反射光信号(第2光信号)とを受光して、自己相関方式による畳み込み演算を行って画素信号を生成する。生成された画素信号は、信号線Sigを介してAD変換器12に入力される。信号線Sigは、カラム方向に一定間隔で複数設けられている。
【0089】
画素チップ31上のAD変換器12は、コンパレータ37と、カウンタ38とを有する。コンパレータ37は、信号線Sigを介して各画素33から伝送された画素信号と、DA変換器36で生成された参照信号とを比較する。参照信号は、時間とともに信号レベルが変化するランプ波信号である。コンパレータ37は、画素信号と参照信号とが一致すると、出力信号レベルを変化させる。カウンタ38は、コンパレータ37で一致が検出されるまでの間、カウント動作を継続する。コンパレータ37で一致が検出されたときのカウンタ38のカウント値が画素信号をAD変換したデジタル信号として接続部39に送られる。
【0090】
ロジックチップ32には、接続部40とフーリエ変換処理部13とが設けられている。画素チップ31上の接続部39とロジックチップ32上の接続部40は、対向する位置に配置されており、例えばCu-Cu接合部を介して各種の信号の送受を行う。具体的には、画素チップ31上のAD変換器12で生成されたデジタル信号は、接続部39、40を介してロジックチップ32上のフーリエ変換処理部13に入力される。
【0091】
フーリエ変換処理部13は、デジタル信号に対してフーリエ変換処理を行って、デジタル信号に含まれる複数のサブキャリア信号成分の位相差を検出する。検出された位相差により、物体15の距離を計測することができる。
【0092】
このほか、ロジックチップ32には、測距部41又はスペクトラム解析部(周波数解析部)42の少なくとも一方が設けられる場合もある。測距部41は、フーリエ変換処理を行った結果に基づいて、反射光信号を反射した物体15までの距離を計測する。スペクトラム解析部42は、フーリエ変換処理を行った結果に基づいて、反射光信号に含まれる周波数成分の解析を行う。
【0093】
図16は一変形例による光検出装置10dの具体的構成の第2例を示すブロック図である。図16の光検出装置10dは、相互相関方式による畳み込み演算を行うものである。
【0094】
図16の光検出装置10dは、画素チップ31側の構成が図14の光検出装置10cとは異なっている。図16の画素チップ31上には、図14の構成に加えて、パルス光発生器14が設けられている。パルス光発生器14は、所定のパルス幅のパルス光信号を生成する。パルス光発生器14から出射されたパルス光信号は、複数の第2光導波路35を介して複数の画素33に入射される。複数の第2光導波路35は、パルス光を等量ずつ遅延させて、各画素33に入射する。すなわち、複数の画素33に入射されるパルス光信号の入射タイミングは所定の遅延量ずつ異なっている。
【0095】
複数の画素33はそれぞれ、対応する第1光導波路34で伝搬されてきた反射光信号(第1光信号)と、対応する第2光導波路35で伝搬されてきたパルス光信号(第2光信号)とを受光し、相互相関方式による畳み込み演算を行って画素信号を生成する。AD変換器12とフーリエ変換処理部13の処理動作は、図14と同様であり、デジタル信号に含まれる複数のサブキャリア信号の位相差により物体15の距離を測定することができる。
【0096】
このように、本実施形態では、複数の波長(周波数)成分を含む光信号を光源2aで発光させて物体15に照射し、物体15からの反射光信号を複数の画素33で受光するとともに、反射光信号を段階的にずらした遅延光信号、又はパルス光信号を段階的にずらした遅延パルス光信号を複数の画素33で受光する。そして、複数の画素33は、自己相関方式又は相互相関方式による畳み込み演算を行って画素信号を生成する。生成された画素信号をデジタル信号に変換して、周波数解析を行うことで、位相差を検出して物体15の距離を計測する。
【0097】
本実施形態によれば、高周波信号である反射光信号を高速にサンプリングすることなくAD変換をすることができ、ハードウェアコストを抑制できるとともに、低消費電力化を図れる。
【0098】
また、本実施形態では、OFDM信号形式の光信号を光源2aで発光するため、分光器22で複数の分光信号に分光させて、所定領域24内の複数の物体15の距離を同時に計測できる。これにより、走査部材23を一次元方向に走査させるだけで、三次元空間内に位置する物体15の距離計測を高速に行うことができる。
【0099】
さらに、本実施形態では、自己相関方式又は相互相関方式による畳み込み演算を行って画素信号を生成した後にAD変換処理とフーリエ変換処理を行うため、光信号に含まれる複数の周波数成分の抽出を容易に行うことができ、光検出装置として利用することができる。
【0100】
(応用例)
本開示に係る技術は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、自動車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、自動二輪車、自転車、パーソナルモビリティ、飛行機、ドローン、船舶、ロボット、建設機械、農業機械(トラクター)などのいずれかの種類の移動体に搭載される装置として実現されてもよい。
【0101】
図17は、本開示に係る技術が適用され得る移動体制御システムの一例である車両制御システム7000の概略的な構成例を示すブロック図である。車両制御システム7000は、通信ネットワーク7010を介して接続された複数の電子制御ユニットを備える。図17に示した例では、車両制御システム7000は、駆動系制御ユニット7100、ボディ系制御ユニット7200、バッテリ制御ユニット7300、車外情報検出ユニット7400、車内情報検出ユニット7500、及び統合制御ユニット7600を備える。これらの複数の制御ユニットを接続する通信ネットワーク7010は、例えば、CAN(Controller Area Network)、LIN(Local Interconnect Network)、LAN(Local Area Network)又はFlexRay(登録商標)等の任意の規格に準拠した車載通信ネットワークであってよい。
【0102】
各制御ユニットは、各種プログラムにしたがって演算処理を行うマイクロコンピュータと、マイクロコンピュータにより実行されるプログラム又は各種演算に用いられるパラメータ等を記憶する記憶部と、各種制御対象の装置を駆動する駆動回路とを備える。各制御ユニットは、通信ネットワーク7010を介して他の制御ユニットとの間で通信を行うためのネットワークI/Fを備えるとともに、車内外の装置又はセンサ等との間で、有線通信又は無線通信により通信を行うための通信I/Fを備える。図17では、統合制御ユニット7600の機能構成として、マイクロコンピュータ7610、汎用通信I/F7620、専用通信I/F7630、測位部7640、ビーコン受信部7650、車内機器I/F7660、音声画像出力部7670、車載ネットワークI/F7680及び記憶部7690が図示されている。他の制御ユニットも同様に、マイクロコンピュータ、通信I/F及び記憶部等を備える。
【0103】
駆動系制御ユニット7100は、各種プログラムにしたがって車両の駆動系に関連する装置の動作を制御する。例えば、駆動系制御ユニット7100は、内燃機関又は駆動用モータ等の車両の駆動力を発生させるための駆動力発生装置、駆動力を車輪に伝達するための駆動力伝達機構、車両の舵角を調節するステアリング機構、及び、車両の制動力を発生させる制動装置等の制御装置として機能する。駆動系制御ユニット7100は、ABS(Antilock Brake System)又はESC(Electronic Stability Control)等の制御装置としての機能を有してもよい。
【0104】
駆動系制御ユニット7100には、車両状態検出部7110が接続される。車両状態検出部7110には、例えば、車体の軸回転運動の角速度を検出するジャイロセンサ、車両の加速度を検出する加速度センサ、あるいは、アクセルペダルの操作量、ブレーキペダルの操作量、ステアリングホイールの操舵角、エンジン回転数又は車輪の回転速度等を検出するためのセンサのうちの少なくとも一つが含まれる。駆動系制御ユニット7100は、車両状態検出部7110から入力される信号を用いて演算処理を行い、内燃機関、駆動用モータ、電動パワーステアリング装置又はブレーキ装置等を制御する。
【0105】
ボディ系制御ユニット7200は、各種プログラムにしたがって車体に装備された各種装置の動作を制御する。例えば、ボディ系制御ユニット7200は、キーレスエントリシステム、スマートキーシステム、パワーウィンドウ装置、あるいは、ヘッドランプ、バックランプ、ブレーキランプ、ウィンカー又はフォグランプ等の各種ランプの制御装置として機能する。この場合、ボディ系制御ユニット7200には、鍵を代替する携帯機から発信される電波又は各種スイッチの信号が入力され得る。ボディ系制御ユニット7200は、これらの電波又は信号の入力を受け付け、車両のドアロック装置、パワーウィンドウ装置、ランプ等を制御する。
【0106】
バッテリ制御ユニット7300は、各種プログラムにしたがって駆動用モータの電力供給源である二次電池7310を制御する。例えば、バッテリ制御ユニット7300には、二次電池7310を備えたバッテリ装置から、バッテリ温度、バッテリ出力電圧又はバッテリの残存容量等の情報が入力される。バッテリ制御ユニット7300は、これらの信号を用いて演算処理を行い、二次電池7310の温度調節制御又はバッテリ装置に備えられた冷却装置等の制御を行う。
【0107】
車外情報検出ユニット7400は、車両制御システム7000を搭載した車両の外部の情報を検出する。例えば、車外情報検出ユニット7400には、撮像部7410及び車外情報検出部7420のうちの少なくとも一方が接続される。撮像部7410には、ToF(Time Of Flight)カメラ、ステレオカメラ、単眼カメラ、赤外線カメラ及びその他のカメラのうちの少なくとも一つが含まれる。車外情報検出部7420には、例えば、現在の天候又は気象を検出するための環境センサ、あるいは、車両制御システム7000を搭載した車両の周囲の他の車両、障害物又は歩行者等を検出するための周囲情報検出センサのうちの少なくとも一つが含まれる。
【0108】
環境センサは、例えば、雨天を検出する雨滴センサ、霧を検出する霧センサ、日照度合いを検出する日照センサ、及び降雪を検出する雪センサのうちの少なくとも一つであってよい。周囲情報検出センサは、超音波センサ、レーダ装置及びLIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)装置のうちの少なくとも一つであってよい。これらの撮像部7410及び車外情報検出部7420は、それぞれ独立したセンサないし装置として備えられてもよいし、複数のセンサないし装置が統合された装置として備えられてもよい。
【0109】
ここで、図18は、撮像部7410及び車外情報検出部7420の設置位置の例を示す。撮像部7910,7912,7914,7916,7918は、例えば、車両7900のフロントノーズ、サイドミラー、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部のうちの少なくとも一つの位置に設けられる。フロントノーズに備えられる撮像部7910及び車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部7918は、主として車両7900の前方の画像を取得する。サイドミラーに備えられる撮像部7912,7914は、主として車両7900の側方の画像を取得する。リアバンパ又はバックドアに備えられる撮像部7916は、主として車両7900の後方の画像を取得する。車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部7918は、主として先行車両又は、歩行者、障害物、信号機、交通標識又は車線等の検出に用いられる。
【0110】
なお、図18には、それぞれの撮像部7910,7912,7914,7916の撮影範囲の一例が示されている。撮像範囲aは、フロントノーズに設けられた撮像部7910の撮像範囲を示し、撮像範囲b,cは、それぞれサイドミラーに設けられた撮像部7912,7914の撮像範囲を示し、撮像範囲dは、リアバンパ又はバックドアに設けられた撮像部7916の撮像範囲を示す。例えば、撮像部7910,7912,7914,7916で撮像された画像データが重ね合わせられることにより、車両7900を上方から見た俯瞰画像が得られる。
【0111】
車両7900のフロント、リア、サイド、コーナ及び車室内のフロントガラスの上部に設けられる車外情報検出部7920,7922,7924,7926,7928,7930は、例えば超音波センサ又はレーダ装置であってよい。車両7900のフロントノーズ、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部に設けられる車外情報検出部7920,7926,7930は、例えばLIDAR装置であってよい。これらの車外情報検出部7920~7930は、主として先行車両、歩行者又は障害物等の検出に用いられる。
【0112】
図17に戻って説明を続ける。車外情報検出ユニット7400は、撮像部7410に車外の画像を撮像させるとともに、撮像された画像データを受信する。また、車外情報検出ユニット7400は、接続されている車外情報検出部7420から検出情報を受信する。車外情報検出部7420が超音波センサ、レーダ装置又はLIDAR装置である場合には、車外情報検出ユニット7400は、超音波又は電磁波等を発信させるとともに、受信された反射波の情報を受信する。車外情報検出ユニット7400は、受信した情報に基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等の物体検出処理又は距離検出処理を行ってもよい。車外情報検出ユニット7400は、受信した情報に基づいて、降雨、霧又は路面状況等を認識する環境認識処理を行ってもよい。車外情報検出ユニット7400は、受信した情報に基づいて、車外の物体までの距離を算出してもよい。
【0113】
また、車外情報検出ユニット7400は、受信した画像データに基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等を認識する画像認識処理又は距離検出処理を行ってもよい。車外情報検出ユニット7400は、受信した画像データに対して歪補正又は位置合わせ等の処理を行うとともに、異なる撮像部7410により撮像された画像データを合成して、俯瞰画像又はパノラマ画像を生成してもよい。車外情報検出ユニット7400は、異なる撮像部7410により撮像された画像データを用いて、視点変換処理を行ってもよい。
【0114】
車内情報検出ユニット7500は、車内の情報を検出する。車内情報検出ユニット7500には、例えば、運転者の状態を検出する運転者状態検出部7510が接続される。運転者状態検出部7510は、運転者を撮像するカメラ、運転者の生体情報を検出する生体センサ又は車室内の音声を集音するマイク等を含んでもよい。生体センサは、例えば、座面又はステアリングホイール等に設けられ、座席に座った搭乗者又はステアリングホイールを握る運転者の生体情報を検出する。車内情報検出ユニット7500は、運転者状態検出部7510から入力される検出情報に基づいて、運転者の疲労度合い又は集中度合いを算出してもよいし、運転者が居眠りをしていないかを判別してもよい。車内情報検出ユニット7500は、集音された音声信号に対してノイズキャンセリング処理等の処理を行ってもよい。
【0115】
統合制御ユニット7600は、各種プログラムにしたがって車両制御システム7000内の動作全般を制御する。統合制御ユニット7600には、入力部7800が接続されている。入力部7800は、例えば、タッチパネル、ボタン、マイクロフォン、スイッチ又はレバー等、搭乗者によって入力操作され得る装置によって実現される。統合制御ユニット7600には、マイクロフォンにより入力される音声を音声認識することにより得たデータが入力されてもよい。入力部7800は、例えば、赤外線又はその他の電波を利用したリモートコントロール装置であってもよいし、車両制御システム7000の操作に対応した携帯電話又はPDA(Personal Digital Assistant)等の外部接続機器であってもよい。入力部7800は、例えばカメラであってもよく、その場合搭乗者はジェスチャにより情報を入力することができる。あるいは、搭乗者が装着したウェアラブル装置の動きを検出することで得られたデータが入力されてもよい。さらに、入力部7800は、例えば、上記の入力部7800を用いて搭乗者等により入力された情報に基づいて入力信号を生成し、統合制御ユニット7600に出力する入力制御回路などを含んでもよい。搭乗者等は、この入力部7800を操作することにより、車両制御システム7000に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりする。
【0116】
記憶部7690は、マイクロコンピュータにより実行される各種プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、及び各種パラメータ、演算結果又はセンサ値等を記憶するRAM(Random Access Memory)を含んでいてもよい。また、記憶部7690は、HDD(Hard Disc Drive)等の磁気記憶デバイス、半導体記憶デバイス、光記憶デバイス又は光磁気記憶デバイス等によって実現してもよい。
【0117】
汎用通信I/F7620は、外部環境7750に存在する様々な機器との間の通信を仲介する汎用的な通信I/Fである。汎用通信I/F7620は、GSM(登録商標)(Global System of Mobile communications)、WiMAX(登録商標)、LTE(登録商標)(Long Term Evolution)若しくはLTE-A(LTE-Advanced)などのセルラー通信プロトコル、又は無線LAN(Wi-Fi(登録商標)ともいう)、Bluetooth(登録商標)などのその他の無線通信プロトコルを実装してよい。汎用通信I/F7620は、例えば、基地局又はアクセスポイントを介して、外部ネットワーク(例えば、インターネット、クラウドネットワーク又は事業者固有のネットワーク)上に存在する機器(例えば、アプリケーションサーバ又は制御サーバ)へ接続してもよい。また、汎用通信I/F7620は、例えばP2P(Peer To Peer)技術を用いて、車両の近傍に存在する端末(例えば、運転者、歩行者若しくは店舗の端末、又はMTC(Machine Type Communication)端末)と接続してもよい。
【0118】
専用通信I/F7630は、車両における使用を目的として策定された通信プロトコルをサポートする通信I/Fである。専用通信I/F7630は、例えば、下位レイヤのIEEE802.11pと上位レイヤのIEEE1609との組合せであるWAVE(Wireless Access in Vehicle Environment)、DSRC(Dedicated Short Range Communications)、又はセルラー通信プロトコルといった標準プロトコルを実装してよい。専用通信I/F7630は、典型的には、車車間(Vehicle to Vehicle)通信、路車間(Vehicle to Infrastructure)通信、車両と家との間(Vehicle to Home)の通信及び歩車間(Vehicle to Pedestrian)通信のうちの1つ以上を含む概念であるV2X通信を遂行する。
【0119】
測位部7640は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)衛星からのGNSS信号(例えば、GPS(Global Positioning System)衛星からのGPS信号)を受信して測位を実行し、車両の緯度、経度及び高度を含む位置情報を生成する。なお、測位部7640は、無線アクセスポイントとの信号の交換により現在位置を特定してもよく、又は測位機能を有する携帯電話、PHS若しくはスマートフォンといった端末から位置情報を取得してもよい。
【0120】
ビーコン受信部7650は、例えば、道路上に設置された無線局等から発信される電波あるいは電磁波を受信し、現在位置、渋滞、通行止め又は所要時間等の情報を取得する。なお、ビーコン受信部7650の機能は、上述した専用通信I/F7630に含まれてもよい。
【0121】
車内機器I/F7660は、マイクロコンピュータ7610と車内に存在する様々な車内機器7760との間の接続を仲介する通信インタフェースである。車内機器I/F7660は、無線LAN、Bluetooth(登録商標)、NFC(Near Field Communication)又はWUSB(Wireless USB)といった無線通信プロトコルを用いて無線接続を確立してもよい。また、車内機器I/F7660は、図示しない接続端子(及び、必要であればケーブル)を介して、USB(Universal Serial Bus)、HDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface、又はMHL(Mobile High-definition Link)等の有線接続を確立してもよい。車内機器7760は、例えば、搭乗者が有するモバイル機器若しくはウェアラブル機器、又は車両に搬入され若しくは取り付けられる情報機器のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。また、車内機器7760は、任意の目的地までの経路探索を行うナビゲーション装置を含んでいてもよい。車内機器I/F7660は、これらの車内機器7760との間で、制御信号又はデータ信号を交換する。
【0122】
車載ネットワークI/F7680は、マイクロコンピュータ7610と通信ネットワーク7010との間の通信を仲介するインタフェースである。車載ネットワークI/F7680は、通信ネットワーク7010によりサポートされる所定のプロトコルに則して、信号等を送受信する。
【0123】
統合制御ユニット7600のマイクロコンピュータ7610は、汎用通信I/F7620、専用通信I/F7630、測位部7640、ビーコン受信部7650、車内機器I/F7660及び車載ネットワークI/F7680のうちの少なくとも一つを介して取得される情報に基づき、各種プログラムにしたがって、車両制御システム7000を制御する。例えば、マイクロコンピュータ7610は、取得される車内外の情報に基づいて、駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置の制御目標値を演算し、駆動系制御ユニット7100に対して制御指令を出力してもよい。例えば、マイクロコンピュータ7610は、車両の衝突回避あるいは衝撃緩和、車間距離に基づく追従走行、車速維持走行、車両の衝突警告、又は車両のレーン逸脱警告等を含むADAS(Advanced Driver Assistance System)の機能実現を目的とした協調制御を行ってもよい。また、マイクロコンピュータ7610は、取得される車両の周囲の情報に基づいて駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置等を制御することにより、運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行ってもよい。
【0124】
マイクロコンピュータ7610は、汎用通信I/F7620、専用通信I/F7630、測位部7640、ビーコン受信部7650、車内機器I/F7660及び車載ネットワークI/F7680のうちの少なくとも一つを介して取得される情報に基づき、車両と周辺の構造物や人物等の物体との間の3次元距離情報を生成し、車両の現在位置の周辺情報を含むローカル地図情報を作成してもよい。また、マイクロコンピュータ7610は、取得される情報に基づき、車両の衝突、歩行者等の近接又は通行止めの道路への進入等の危険を予測し、警告用信号を生成してもよい。警告用信号は、例えば、警告音を発生させたり、警告ランプを点灯させたりするための信号であってよい。
【0125】
音声画像出力部7670は、車両の搭乗者又は車外に対して、視覚的又は聴覚的に情報を通知することが可能な出力装置へ音声及び画像のうちの少なくとも一方の出力信号を送信する。図17の例では、出力装置として、オーディオスピーカ7710、表示部7720及びインストルメントパネル7730が例示されている。表示部7720は、例えば、オンボードディスプレイ及びヘッドアップディスプレイの少なくとも一つを含んでいてもよい。表示部7720は、AR(Augmented Reality)表示機能を有していてもよい。出力装置は、これらの装置以外の、ヘッドホン、搭乗者が装着する眼鏡型ディスプレイ等のウェアラブルデバイス、プロジェクタ又はランプ等の他の装置であってもよい。出力装置が表示装置の場合、表示装置は、マイクロコンピュータ7610が行った各種処理により得られた結果又は他の制御ユニットから受信された情報を、テキスト、イメージ、表、グラフ等、様々な形式で視覚的に表示する。また、出力装置が音声出力装置の場合、音声出力装置は、再生された音声データ又は音響データ等からなるオーディオ信号をアナログ信号に変換して聴覚的に出力する。
【0126】
なお、図17に示した例において、通信ネットワーク7010を介して接続された少なくとも二つの制御ユニットが一つの制御ユニットとして一体化されてもよい。あるいは、個々の制御ユニットが、複数の制御ユニットにより構成されてもよい。さらに、車両制御システム7000が、図示されていない別の制御ユニットを備えてもよい。また、上記の説明において、いずれかの制御ユニットが担う機能の一部又は全部を、他の制御ユニットに持たせてもよい。つまり、通信ネットワーク7010を介して情報の送受信がされるようになっていれば、所定の演算処理が、いずれかの制御ユニットで行われるようになってもよい。同様に、いずれかの制御ユニットに接続されているセンサ又は装置が、他の制御ユニットに接続されるとともに、複数の制御ユニットが、通信ネットワーク7010を介して相互に検出情報を送受信してもよい。
【0127】
なお、本技術は以下のような構成を取ることができる。
(1)複数の波長帯域を含む第1光信号を受光する受光部と、
前記第1光信号と第2光信号とに基づいて自己相関又は相互相関による畳み込み演算を行って画素信号を生成する複数の画素と、
前記画素信号をアナログ-デジタル変換してデジタル信号を生成するアナログ-デジタル変換器と、
前記デジタル信号に対してフーリエ変換処理を行うフーリエ変換処理部と、を備える、光検出装置。
(2)前記第1光信号は、発光部が発光した複数の波長帯域を含む光信号が物体で反射された反射光信号である、(1)に記載の光検出装置。
(3)前記発光部で発光された光信号の伝搬方向を切り替える光サーキュレータを備え、
前記発光部で発光された光信号の伝搬方向を前記光サーキュレータで切り替えて、前記物体に照射し、
前記受光部は、前記物体で反射された前記第1光信号を前記光サーキュレータを介して受光する、(2)に記載の光検出装置。
(4)前記第2光信号は、前記第1光信号、又は所定のパルス幅のパルス光信号である、(1)乃至(3)のいずれか一項に記載の光検出装置。
(5)前記受光部は、
それぞれが光電変換素子を有する複数の画素と、
前記複数の画素に対して前記第1光信号を同タイミングで入射させる複数の第1光導波路と、
前記複数の画素に対して前記第2光信号を一定の遅延時間ずつ順にずらして入射させる複数の第2光導波路と、を有し、
前記複数の画素は、前記複数の第1光導波路から出射された光と、前記複数の第2光導波路から出射された光とを光電変換して畳み込み演算を行った画素信号を出力する、(1)乃至(4)のいずれか一項に記載の光検出装置。
(6)前記第2光信号は、前記第1光信号であり、
前記複数の画素は、前記複数の第1光導波路から出射された光と、前記複数の第2光導波路から出射された光とに基づく自己相関による畳み込み演算を行って前記画素信号を生成する、(5)に記載の光検出装置。
(7)所定のパルス幅のパルス光信号を生成するパルス光発生器を備え、
前記第2光信号は、前記パルス光発生器で生成された前記パルス光信号であり、
前記複数の画素は、前記複数の第1光導波路から出射された光と、前記複数の第2光導波路から出射された光とに基づく相互相関による畳み込み演算を行って前記画素信号を生成する、(5)に記載の光検出装置。
(8)前記複数の第1光導波路は、前記複数の第1光導波路の光路長、屈折率、又は反射率の少なくとも一つを個別に調整して、前記第1光信号を同タイミングに前記複数の画素に入射させる、(5)乃至(7)のいずれか一項に記載の光検出装置。
(9)前記複数の第2光導波路は、前記複数の第2光導波路の光路長、屈折率、又は反射率の少なくとも一つを個別に調整して、一定の遅延時間ずつずらされた前記第2光信号を前記複数の画素に入射する、(5)乃至(7)のいずれか一項に記載の光検出装置。
(10)前記第1光信号は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)信号形式の光信号である、(1)乃至(9)のいずれか一項に記載の光検出装置。
(11)前記第1光信号は、それぞれ異なる周波数帯域の複数のサブキャリア信号を含んでおり、
前記複数のサブキャリア信号のうち、信号強度がピーク値になるサブキャリア信号の周波数では、このサブキャリア信号に周波数軸上で隣接する2つのサブキャリア信号の信号強度はゼロである、(10)に記載の光検出装置。
(12)発光部から発光された複数の波長帯域を含む光信号を、それぞれ異なる波長帯域の複数の分光信号に分光する分光器を備え、
前記複数の分光信号が1以上の物体に照射されて反射された複数の反射分光信号は、前記分光器にて光結合されて前記第1光信号が生成され、前記受光部にて受光される、(1)乃至(11)のいずれか一項に記載の光検出装置。
(13)前記分光器で分光された前記複数の分光信号は、所定領域内のそれぞれ異なる伝搬方向に伝搬する、(12)に記載の光検出装置。
(14)前記分光器で分光された前記複数の分光信号を少なくとも一方向に走査させる走査部材を備え、
前記走査部材で走査された前記複数の分光信号が前記物体に照射されて反射された複数の反射分光信号は前記分光器にて光結合されて前記第1光信号が生成されて、前記受光部にて受光される、(12)又は(13)に記載の光検出装置。
(15)前記分光器及び前記走査部材を一体化させた屈折方向制御部材を備え、
前記屈折方向制御部材は、前記第1光信号に含まれる波長帯域ごとに分光された複数の分光信号の屈折方向をそれぞれ相違させて、二次元方向に伝搬させる、(14)に記載の光検出装置。
(16)前記フーリエ変換処理を行った結果に基づいて、前記第1光信号を反射させた物体までの距離を計測する測距部を備える、(1)乃至(15)のいずれか一項に記載の光検出装置。
(17)前記フーリエ変換処理を行った結果に基づいて、前記第1光信号に含まれる周波数成分の解析を行うスペクトラム解析部を備える、(1)乃至(15)のいずれか一項に記載の光検出装置。
(18)複数の波長帯域の光信号を発光する発光部と、
前記発光部で発光された光信号が物体で反射された第1光信号を受光する受光部と、
前記第1光信号と第2光信号とに基づいて自己相関又は相互相関による畳み込み演算を行って画素信号を生成する複数の画素と、
前記画素信号をアナログ-デジタル変換してデジタル信号を生成するアナログ-デジタル変換器と、
前記デジタル信号に対してフーリエ変換処理を行うフーリエ変換処理部と、
前記フーリエ変換処理を行った結果に基づいて、前記物体までの距離を計測する測距部と、を備える、測距システム。
(19)前記発光部は、OFDM信号形式の光信号を発光する、(18)に記載の測距システム。
【0128】
本開示の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本開示の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本開示の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0129】
1、1a 干渉計、2、2a 光源、3 ハーフミラー、4 固定ミラー、5 可動ミラー、6 受光部、6a 光電変換素子、7 光導波路、8 光学可変遅延素子、10a、10b、10c、10d 光検出装置、11 受光部、11a 光電変換素子、12 AD変換器、13 フーリエ変換処理部、14 パルス光発生器、15 物体、16 反射部材、20 測距システム、20a 測距システム、21 サーキュレータ、22 分光器、23 走査部材、24 所定領域、31 画素チップ、32 ロジックチップ、33 画素、34 第1光導波路、35 第2光導波路、36 DA変換器、37 コンパレータ、38 カウンタ、39 接続部、40 接続部、41 測距部、42 スペクトラム解析部
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図15C
図16
図17
図18