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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093817
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】防振装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 1/387 20060101AFI20240702BHJP
   F16F 15/08 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
F16F1/387 C
F16F15/08 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210401
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】岡村 健
【テーマコード(参考)】
3J048
3J059
【Fターム(参考)】
3J048AA01
3J048BA19
3J048CB22
3J048EA08
3J059AA08
3J059BA42
3J059DA22
3J059GA20
3J059GA28
(57)【要約】
【課題】柱状の突起によるサージング現象の低減効果を向上できる防振装置を提供すること。
【解決手段】軸方向から見て、第1部材11の外周面から第2部材12の内周面までの軸直角方向の中間位置Pよりも第2部材12側に柱状の突起17の中心C2が位置する。防振基体13のサージング現象が生じた場合には、第1部材11側よりも第2部材12側で防振基体13が大きく変形する。この大きく変形する部位に柱状の突起17を位置させることで、柱状の突起17を激しく振動させ易くでき、その突起17によるサージング現象の低減効果を向上できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸状の第1部材と、
前記第1部材を取り囲む筒状の第2部材と、
前記第1部材の外周面と前記第2部材の内周面との間を全周に亘って軸直角方向に連結する筒状の弾性体から構成される防振基体と、
前記防振基体の軸方向の端面から突出して柱状の弾性体から構成される1以上の突起と、を備え、
前記軸方向から見て、前記第1部材の外周面から前記第2部材の内周面までの前記軸直角方向の中間位置よりも前記第2部材側に前記突起の中心が位置することを特徴とする防振装置。
【請求項2】
前記防振基体の前記軸方向の端面は、前記第1部材から離れるにつれて前記軸方向の中央側へ傾斜する下降傾斜面と、
前記下降傾斜面の前記第2部材側に連なり、前記第2部材へ向かうにつれて前記軸方向の外側へ傾斜する上昇傾斜面と、を備え、
前記突起の少なくとも一部が前記上昇傾斜面から突出していることを特徴とする請求項1記載の防振装置。
【請求項3】
前記突起には、前記防振基体を金型で成形したときに凸状または凹状に残る痕跡であって、前記防振基体の原料を前記金型の内部に充填するための孔に対応する痕跡が形成されていることを特徴とする請求項1記載の防振装置。
【請求項4】
前記突起は、前記突起が突出する方向と直交する第1方向へ延びていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の防振装置。
【請求項5】
前記第1部材と前記第2部材との相対移動による主振動方向は、前記軸直角方向のうち特定の第2方向であり、
前記第1方向は、前記軸方向から見て前記第2方向に対し傾くことを特徴とする請求項4記載の防振装置。
【請求項6】
前記防振基体の前記軸方向の端面は、前記第1部材から離れるにつれて前記軸方向の中央側へ傾斜する下降傾斜面を備え、
前記突起の少なくとも一部が前記下降傾斜面から突出し、
前記第1方向は、前記第1部材の軸心を中心とした仮想円の接線方向であることを特徴とする請求項5記載の防振装置。
【請求項7】
前記第1部材と前記第2部材との相対移動による主振動方向は、前記軸直角方向のうち特定の第2方向であり、
前記突起は、前記防振基体のうち前記第1部材が前記第2方向に重なる第1領域よりも外側に位置することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の防振装置。
【請求項8】
前記軸方向および前記第2方向に垂直な方向が第3方向であり、
前記突起は、前記防振基体のうち前記第1部材が前記第3方向に重なる第2領域よりも外側に位置することを特徴とする請求項7記載の防振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防振装置に関し、特に柱状の突起によるサージング現象の低減効果を向上できる防振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車のモータを車体に弾性支持するための防振装置として、車体側およびモータ側の一方に取り付けられる内筒の外周面と、車体側およびモータ側の他方に取り付けられる外筒の内周面とを弾性体製の防振基体で連結したものが知られている。特許文献1に開示された防振装置では、防振基体の軸方向の端面から環状の突起を突出させ、その突起の反共振周波数によってサージング現象(防振基体が共振周波数で激しく振動する現象)を低減させている。更に特許文献1には、サージング現象の低減のために、振動が大きくなり易い防振基体の軸直角方向の中央に環状の突起を位置させることが好ましいと開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2020/175640号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、反共振周波数の調整などのために突起を柱状とした場合、上記特許文献1の通りに防振基体の軸直角方向の中央に突起を位置させると、その突起によるサージング現象の低減効果が十分に得られない。
【0005】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、柱状の突起によるサージング現象の低減効果を向上できる防振装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明の防振装置は、軸状の第1部材と、前記第1部材を取り囲む筒状の第2部材と、前記第1部材の外周面と前記第2部材の内周面との間を全周に亘って軸直角方向に連結する筒状の弾性体から構成される防振基体と、前記防振基体の軸方向の端面から突出して柱状の弾性体から構成される1以上の突起と、を備え、前記軸方向から見て、前記第1部材の外周面から前記第2部材の内周面までの前記軸直角方向の中間位置よりも前記第2部材側に前記突起の中心が位置する。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の防振装置によれば、軸方向から見て、第1部材の外周面から第2部材の内周面までの軸直角方向の中間位置よりも第2部材側に柱状の突起の中心が位置する。防振基体のサージング現象が生じた場合には、第1部材側よりも第2部材側で防振基体が大きく変形する。この大きく変形する部位に柱状の突起を位置させることで、柱状の突起を激しく振動させ易くでき、その突起によるサージング現象の低減効果を向上できる。
【0008】
請求項2記載の防振装置によれば、請求項1記載の防振装置が奏する効果に加え、次の効果を奏する。防振基体の軸方向の端面は、第1部材から離れるにつれて軸方向の中央側へ傾斜する下降傾斜面と、下降傾斜面の第2部材側に連なり、第2部材へ向かうにつれて軸方向の外側へ傾斜する上昇傾斜面と、を備える。突起の少なくとも一部が上昇傾斜面から突出しているので、サージング現象が生じた場合に大きく変形する防振基体の第2部材側に突起をより近づけることができる。その結果、柱状の突起をより激しく振動させ易くでき、その突起によるサージング現象の低減効果をより向上できる。
【0009】
請求項3記載の防振装置によれば、請求項1記載の防振装置が奏する効果に加え、次の効果を奏する。防振基体を金型で成形したときには、防振基体の原料を金型の内部に充填するための孔(具体的には注入口やベント)に対応する位置に、凸状または凹状の痕跡が残る。この痕跡が防振基体に形成された場合、防振基体の変形に伴って痕跡が亀裂の起点になり易い。これに対し、その痕跡が突起に形成されている場合、痕跡が防振基体の亀裂の起点になり難く、防振基体の耐久性を向上できる。
【0010】
請求項4記載の防振装置によれば、請求項1から3のいずれかに記載の防振装置が奏する効果に加え、次の効果を奏する。突起は、突起が突出する方向と直交する第1方向へ延びている。これにより、防振装置に軸直角方向の振動が入力された場合、その振動方向と第1方向との関係から突起の動き方を調整し易くできる。よって、振動方向に応じてサージング現象の特性を調整できる。
【0011】
請求項5記載の防振装置によれば、請求項4記載の防振装置が奏する効果に加え、次の効果を奏する。第1部材と第2部材との相対移動による主振動方向は、軸直角方向のうち特定の第2方向である。軸方向から見て、この第2方向に対し傾いた第1方向へ突起が延びている。これにより、第2方向(主振動方向)の振動が防振装置に入力された場合、突起を第2方向へ振動させ易くでき、突起による第2方向のサージング現象の低減効果を向上できる。
【0012】
請求項6記載の防振装置によれば、請求項5記載の防振装置が奏する効果に加え、次の効果を奏する。防振基体の軸方向の端面は、第1部材から離れるにつれて軸方向の中央側へ傾斜する下降傾斜面を備える。この下降傾斜面から突起の少なくとも一部が突出し、第1部材の軸心を中心とした仮想円の接線方向である第1方向へ突起が延びる。これにより、下降傾斜面に設けられた突起の軸方向の自由長を第1方向に亘って均一に近づけることができる。そのため、突起は、防振装置への振動の入力時に、軸直角方向に倒れるような変形に対し第1方向へ変形し易い。このように、突起は自身が延びる方向へ変形し易いため、振動の入力時に突起の一部に荷重が集中することを抑制でき、突起の耐久性を向上できる。
【0013】
請求項7記載の防振装置によれば、請求項1から3のいずれかに記載の防振装置が奏する効果に加え、次の効果を奏する。第1部材と第2部材との相対移動による主振動方向は、軸直角方向のうち特定の第2方向である。第2方向(主振動方向)の振動が防振装置に入力された場合、防振基体のうち第1部材が第2方向に重なる第1領域の歪みが大きくなり易い。この第1領域よりも外側に突起が位置するので、突起の周囲に応力を集中させ難くでき、その突起の周囲を亀裂の起点になり難くできる。その結果、第2方向の振動に対する防振基体および突起の耐久性を向上できる。
【0014】
請求項8記載の防振装置によれば、請求項7記載の防振装置が奏する効果に加え、次の効果を奏する。第2方向が主振動方向である場合、軸方向および第2方向に垂直な方向である第3方向の振動が防振装置に比較的入力され易い。この第3方向の振動が防振装置に入力された場合、防振基体のうち第1部材が第3方向に重なる第2領域の歪みが大きくなり易い。この第2領域よりも外側に突起が位置するので、突起の周囲に応力を集中させ難くでき、その突起の周囲を亀裂の起点になり難くできる。その結果、第3方向の振動に対する防振基体および突起の耐久性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態における防振装置の正面図である。
図2図1のII-II線における防振装置の断面図である。
図3】防振装置および金型の断面図である。
図4】第2実施形態における防振装置の正面図である。
図5】第3実施形態における防振装置の正面図である。
図6】第4実施形態における防振装置の正面図である。
図7】実施例E1,E2及び比較例E0における動ばね定数の周波数特性を示すグラフである。
図8】実施例E3~E5及び比較例E0における動ばね定数の周波数特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、第1実施形態における防振装置10の正面図である。図2は、図1のII-II線における防振装置10の断面図である。
【0017】
各図面の矢印U、矢印D、矢印L、矢印R、矢印F、矢印Bは、それぞれ防振装置10の上方向、下方向、左方向、右方向、前方向、後方向を示している。上下方向と、左右方向と、前後方向とは互いに垂直な関係にある。また、各図面には、振動(荷重)が入力されていない無荷重状態の防振装置10が示されている。
【0018】
防振装置10は、電気自動車などのモータを車体に弾性支持するためのモータマウントである。防振装置10は、車体側に取り付けられる軸状の第1部材11と、振動源であるモータ側に取り付けられる筒状の第2部材12と、第1部材11と第2部材12とを連結する防振基体13と、を主に備える。
【0019】
第1部材11及び第2部材12は、共通の軸心C1を有して同軸上に配置される。この軸心C1方向(以下単に「軸方向」と称す)は、防振装置10の前後方向であり、防振装置10が搭載された車両の前後方向と一致する。また、軸心C1と直交する方向(以下「軸直角方向」と称す)には、防振装置10の上下方向(第2方向)及び左右方向(第3方向)が含まれる。これらの上下方向および左右方向も、防振装置10が搭載された車両の上下方向および左右方向と一致する。
【0020】
防振装置10の上下方向が防振装置10の主振動方向である。主振動方向とは、振動源であるモータからの主な振動に応じて、第1部材11と第2部材12とが主に相対移動する方向である。
【0021】
第1部材11は、軸心C1を囲む円筒状の部材であり、金属や合成樹脂などで形成されている。軸方向視において(軸方向から見て)、第1部材11の外周面は、軸心C1を中心とした円形状に形成される。軸方向視において、第1部材11の内周面は、軸心C1を中心として左右方向に長軸を有する長円形状に形成される。
【0022】
この第1部材11の内周側に挿入したボルト等の軸部によって、第1部材11が車体側に取り付けられる。なお、その軸部が第1部材11の長円形状の内周面に嵌まることで、軸部を中心とした第1部材11の回転が規制される。これにより、車両の上下方向と防振装置10の上下方向とをずれ難くできる。
【0023】
第2部材12は、第1部材11を取り囲む円筒状の部材であり、金属や合成樹脂などで形成されている。軸方向視において、第2部材12の外周面および内周面は、軸心C1を中心とした円形状に形成される。第2部材12の軸方向寸法は、第1部材11の軸方向寸法よりも短い。第1部材11は、第2部材12に対し軸方向両側へ略同じだけ長くなるように配置されている。
【0024】
防振基体13は、ゴム(弾性体)によって構成される円筒状の部材であり、軸心C1まわりに回転対称に形成されている。防振基体13は、第1部材11の外周面と第2部材12の内周面とにそれぞれ加硫接着され、それらの間を全周に亘って連結する。防振基体13は、全周に亘って連続しており、防振基体13を軸方向に貫通するすぐり等が形成されていない。即ち、軸方向視において、第1部材11の外周面と第2部材12の内周面との間が全周に亘って防振基体13で満たされている。
【0025】
防振基体13の軸方向の両端面はそれぞれ、第1部材11から離れるにつれて下降傾斜(軸方向の中央側へ傾斜)する下降傾斜面14と、下降傾斜面14の第2部材12側に連なって第2部材12へ向かうにつれて上昇傾斜(軸方向の外側へ傾斜)する上昇傾斜面15と、を備える。下降傾斜面14及び上昇傾斜面15は、いずれも全周に亘って設けられる。第1部材11の外周面に密着した円筒状の膜部13aの外周面に下降傾斜面14が滑らかに連なる。第2部材12の内周面に密着した円筒状の膜部13bの内周面に上昇傾斜面15が滑らかに連なる。
【0026】
下降傾斜面14と上昇傾斜面15との境界16は、第1部材11の外周面から第2部材12の内周面までの軸直角方向の長さの半分である中間位置Pよりも第2部材12側に位置する。更に境界16は、その軸直角方向の長さの3/4の位置よりも第2部材12側に位置する。
【0027】
このような防振装置10に軸直角方向の振動が入力された場合、サージング現象が生じることがある。サージング現象とは、防振基体13の共振周波数において、防振基体13の動ばね定数が大きくなって防振基体13が激しく振動する現象である。なお、サージング現象が生じた場合には、第1部材11側よりも第2部材12側で防振基体13が大きく変形する。
【0028】
このサージング現象を低減(共振周波数での動ばね定数を低減)させるために、防振装置10は、防振基体13の軸方向の端面から軸方向に突出する突起17を備えている。突起17の反共振周波数を防振基体13の共振周波数に合わせることで、サージング現象を低減できる。その低減効果は、突起17の形状や寸法、配置、数によって調整される。また、防振装置10には主振動方向(上下方向)の振動が最も入力され易いので、その主振動方向のサージング現象を低減できるように突起の形状などを設定することが好ましい。
【0029】
本実施形態では、突起17は、防振基体13の軸方向の両端面からそれぞれ4本ずつが軸方向に沿って柱状に突出し、軸心C1まわりの周方向(以下単に「周方向」と称す)に互いに離隔している。各々の突起17は、軸心C1を含んで上下方向または左右方向に平行な仮想面に関して面対称(鏡映)に形成されている。更に、軸方向の一端面側の突起17と他端面側の突起17とは、軸心C1と直交する仮想面に関して面対称に形成されている。
【0030】
柱状の突起17とは、軸方向視において、突起17の中心C2を通って軸心C1を中心とした仮想円の周長に対し、突起17の周方向の幅が1/6未満であるものと定義することが好ましい。突起17が周方向に長過ぎる場合、軸心C1を中心とした円弧状に突起17を形成しないと、突起17の変形を制御し難くなる。また、突起17を円弧状にした場合、突起17が変形し難くなるため、サージング現象の低減効果が十分に得られないおそれがある。
【0031】
主振動方向(上下方向)の振動が防振装置10に入力された場合、防振基体13のうち第1部材11が主振動方向に重なる第1領域A1の歪みが大きくなり易い。この第1領域A1よりも外側に突起17が位置するので、突起17の周囲に応力を集中させ難くでき、その突起17の周囲を亀裂の起点になり難くできる。その結果、主振動方向の振動に対する防振基体13及び突起17の耐久性を向上できる。
【0032】
更に、防振装置10には、主振動方向および軸方向に垂直な左右方向の振動も比較的入力され易い。この左右方向の振動が防振装置10に入力された場合、防振基体13のうち第1部材11が左右方向に重なる第2領域A2の歪みが大きくなり易い。この第2領域A2よりも外側に突起17が位置するので、突起17の周囲に応力を集中させ難くでき、その突起17の周囲を亀裂の起点になり難くできる。その結果、左右方向の振動に対する防振基体13及び突起17の耐久性を向上できる。
【0033】
軸方向視において、複数の突起17の中心C2はいずれも、中間位置Pよりも第2部材12側に位置する。この第2部材12側の防振基体13がサージング現象時に大きく変形するため、防振基体13の共振周波数の近傍で柱状の突起17を激しく振動させることができる。その結果、柱状の突起17によるサージング現象の低減効果を向上できる。
【0034】
突起17は、境界16を跨ぐように設けられ、下降傾斜面14及び上昇傾斜面15の両方から突出している。第2部材12側の上昇傾斜面15から突起17の少なくとも一部が突出することで、サージング現象時に大きく変形する防振基体13の第2部材12側に突起17をより近づけることができる。その結果、柱状の突起17をより激しく振動させ易くでき、その突起17によるサージング現象の低減効果をより向上できる。
【0035】
突起17は、軸方向視において、突起17が突出する軸方向と直交する延長方向(第1方向)D1へ延びた楕円形状に形成されている。これにより、防振装置10に軸直角方向の振動が入力された場合、その振動方向と延長方向D1との関係から突起17の動き方を調整し易くできる。よって、振動方向に応じてサージング現象の特性を調整できる。
【0036】
本実施形態における延長方向D1は、周方向を向いている。より具体的に延長方向D1は、軸心C1を中心とした仮想円の接線方向である。更に、軸方向視において、延長方向D1は、防振装置10の上下方向(主振動方向)及び左右方向に対しそれぞれ45度傾いている。そのため、防振装置10の振動方向が上下方向である場合と左右方向である場合とで、突起17の変形の仕方を略同一にでき、突起17によるサージング現象の低減効果を略同一にできる。
【0037】
また、主振動方向の振動が防振装置10に入力された場合、軸方向視において主振動方向に対し傾いた延長方向D1へ延びる突起17を、主振動方向へ振動させ易くできる。その結果、突起17による主振動方向のサージング現象の低減効果を向上できる。なお、主振動方向に限らず、軸方向視において延長方向D1に対し傾く方向であれば、突起17によるサージング現象の低減効果を向上できる。
【0038】
軸方向に突出した突起17では、防振基体13から離れた先端が、突起17の突出する方向と垂直な平面で形成されている。よって、突起17が突出する位置の防振基体13の軸方向の端面の傾斜に応じて、突起17の軸方向の自由長が変化する。また、突起17の先端は、第2部材12の軸方向の端面よりも低い位置(軸方向の中央側)にある。これにより、第2部材12の軸方向の端部を覆うようなストッパを設けた場合、そのストッパに突起17を接触させ難くできる。
【0039】
第1部材11から離れるにつれて下降傾斜する下降傾斜面14は、軸方向の高さの等高線が軸心C1の同心円状になる。突起17の延長方向D1が、その等高線に沿った周方向に近いので、突起17の軸方向の自由長を延長方向D1に亘って均一に近づけることができる。そのため、突起17は、防振装置10への振動の入力時に、延長方向D1に垂直な軸直角方向に倒れるような変形に対し延長方向D1へ変形し易い。このように、突起17は、自身が延びる延長方向D1へ変形し易く、ねじりや折れ曲がりが生じ難い。よって、振動の入力時に突起17の一部に荷重が集中することを抑制でき、突起17の耐久性を向上できる。
【0040】
次に図3を参照して防振装置10の製造方法について説明する。図3は、防振装置10及び金型20の断面図である。図3には、図2と同一箇所の断面が図示されている。図3に示すように、金型20は、防振装置10の軸方向に分割される上型21及び下型22を備える。上型21と下型22との間には、防振装置10と同一形状のキャビティ23が形成されている。上型21は、防振基体13の軸方向の一端面と、その一端面から突出する4本の突起17とを成形する。下型22は、防振基体13の軸方向の他端面と、その他端面から突出する4本の突起17とを成形する。
【0041】
防振装置10を製造するには、まず、下型22のキャビティ23の所定位置に第1部材11及び第2部材12を配置し、下型22と上型21とを型閉めする。次いで、上型21に設けられた注入口24から、防振基体13及び突起17を構成するゴム原料をキャビティ23内へ注入する。なお、注入口24は、突起17の先端を成形する部分のキャビティ23に開口する。この注入口24が開口する部分は、防振基体13の軸方向の一端面(図3紙面の上面)に設けられる4本の突起17のうち、軸心C1に関して対称な2本の突起17に対応して設けられる。
【0042】
注入口24からゴム原料を注入するとき、下型22に設けたベント(空気抜き用の孔)25からキャビティ23内の空気が抜け、キャビティ23内がゴム原料で充填される。ベント25は、突起17の先端を成形する部分のキャビティ23に開口し、注入口24よりも開口部分の内径が小さい。このベント25が開口する部分は、防振基体13の軸方向の他端面(図3紙面の下面)に設けられる4本の突起17のうち、軸心C1に関して対称な2本の突起17に対して設けられる。
【0043】
なお、ベント25が開口する部分の2本の突起17と、注入口24が開口する部分の2本の突起17とは、互いに周方向にずれている。このように、注入口24とベント25とが周方向に離れているので、キャビティ23内をゴム原料で充填するとき、キャビティ23内に空気を残り難くできる。
【0044】
ゴム原料の充填の完了後、ゴム原料を加圧・加熱状態で一定時間保持することにより、ゴム原料が加硫反応して防振基体13及び突起17が加硫成形される。同時に、防振基体13が第1部材11の外周面と第2部材12の内周面とに加硫接着される。上型21及び下型22から成形品を取り出すときに、その成形品を注入口24で切断することにより、防振装置10が得られる。
【0045】
図1,2に示すように、注入口24での切断後には、注入口24内で加硫成形された部分が注入口痕18として、防振基体13の軸方向の一端面側の2本の突起17の先端に一体化して残る。また、ベント25にもゴム原料が僅かに浸入して加硫成形される。そのベント25内で加硫成形された部分がベント痕19として、防振基体13の軸方向の他端面側の2本の突起17の先端に一体化して残る。なお、注入口24及びベント25の配置と同様に、注入口痕18が設けられる2本の突起17と、ベント痕19が設けられる2本の突起17とは、互いに周方向にずれている。
【0046】
このように、注入口痕18及びベント痕19は、金型による防振基体13の成形時にそれぞれ凸状かつ円形状に残る痕跡であり、ベント痕19の方が注入口痕18よりも直径が小さい。なお、この凸状の痕跡を作業者がむしり取ることがあり、その場合は注入口痕18及びベント痕19が凹状の痕跡となる。よって、防振装置10の製造方法を確認しなくても、この注入口痕18及びベント痕19を確認することで、防振装置10の製造方法が分かる。
【0047】
ここで、注入口痕18及びベント痕19が防振基体13の軸方向の端面に形成された場合、防振基体13の変形に伴って注入口痕18及びベント痕19の周囲に歪みが集中し易い。よって、この場合には、注入口痕18及びベント痕19が、防振基体13に生じる亀裂の起点になり易い。
【0048】
これに対して本実施形態では、注入口痕18及びベント痕19が突起17に形成されているため、防振基体13の変形時に、注入口痕18及びベント痕19が防振基体13の亀裂の起点になり難い。その結果、防振基体13の耐久性を向上できる。
【0049】
次に図4を参照して第2実施形態について説明する。第1実施形態では、突起17の延長方向D1を、軸心C1を中心とした仮想円の接線方向とする場合について説明した。これに対し第2実施形態では、突起31が延びる延長方向D2を軸直角方向とする場合を説明する。なお、第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0050】
図4は、第2実施形態における防振装置30の正面図である。防振装置30では、防振基体13の軸方向の両端面からそれぞれ柱状の突起31が4本ずつ軸方向に突出している。これら複数の突起31は、第1実施形態と同様に、軸心C1を含む仮想面や、軸心C1と直交する仮想面に関して面対称に形成されている。
【0051】
突起31の先端の高さは、第1実施形態の突起17の先端の高さと略同一である。複数の突起31の先端には、第1実施形態と同じ位置に注入口痕18やベント痕19がそれぞれ形成されている。軸方向視において、突起31は、第1実施形態の突起17と形状および寸法が略同一に構成され、向きが異なる。軸方向視において、突起31は境界16を跨ぎ、突起31の中心C2が中間位置Pよりも第2部材12側に位置する。
【0052】
突起31は、軸方向視において、突起31が突出する軸方向と直交する延長方向D2へ延びた楕円形状に形成されている。延長方向D2は、軸直角方向(軸心C1と直交する方向)であり、軸方向視において防振装置30の主振動方向(上下方向)及び左右方向に対しそれぞれ45度傾いている。
【0053】
突起31が設けられる下降傾斜面14は、延長方向D2の第2部材12側へ向かうにつれて下降傾斜する。そのため、突起31の軸方向の自由長は、第2部材12側へ向かうにつれて長くなる。これにより、防振装置30に主振動方向や左右方向の振動が入力された場合、突起31は、第1部材11側が殆ど変形せず、第2部材12側が主に変形する。
【0054】
よって、突起31の共振周波数および反共振周波数は、第1実施形態における突起17に対し、主振動方向および左右方向の両方とも高くなる。その結果、突起31単体のサージング現象が最も激しい周波数(以下「サージピーク」と称す)と、突起31の反共振周波数により低減される防振基体13のサージピークとを、第1実施形態に対し異ならせることができる。
【0055】
次に図5を参照して第3実施形態について説明する。第1実施形態では、突起17の延長方向D1を、軸心C1を中心とした仮想円の接線方向とする場合について説明した。これに対し第3実施形態では、突起41が延びる延長方向D3を左右方向とする場合を説明する。なお、第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0056】
図5は、第3実施形態における防振装置40の正面図である。防振装置40では、防振基体13の軸方向の両端面からそれぞれ柱状の突起41が4本ずつ軸方向に突出している。これら複数の突起41は、第1実施形態と同様に、軸心C1を含む仮想面や、軸心C1と直交する仮想面に関して面対称に形成されている。
【0057】
突起41の先端の高さは、第1実施形態の突起17の先端の高さと略同一である。複数の突起41の先端には、第1実施形態と同じ位置に注入口痕18やベント痕19がそれぞれ形成されている。軸方向視において、突起41は、第1実施形態の突起17と形状および寸法が略同一に構成され、向きが異なる。軸方向視において、突起41は境界16を跨ぎ、突起41の中心C2が中間位置Pよりも第2部材12側に位置する。
【0058】
突起41は、軸方向視において、突起41が突出する軸方向と直交する延長方向D3へ延びた楕円形状に形成されている。延長方向D3は、防振装置40の左右方向である。なお、左右方向は、防振装置40の主振動方向(上下方向)および軸方向に垂直な方向である。
【0059】
そのため、防振装置40に主振動方向の振動が入力された場合、突起41の変形は、軸方向視において延長方向D3と直交する方向へ倒れるような変形が支配的となる。一方、防振装置40に左右方向の振動が入力された場合、突起41の変形は、延長方向D3の一端側に対し他端側が伸縮するような変形が支配的となる。
【0060】
よって、主振動方向における突起41の共振周波数および反共振周波数は、第1実施形態における突起17に対し低くなる。一方、左右方向における突起41の共振周波数および反共振周波数は、第1実施形態における突起17に対し高くなる。即ち、防振装置40を周方向に90度回転させて車体に取り付け、延長方向D3を主振動方向とすることで、主振動方向における突起41の共振周波数および反共振周波数を高くでき、左右方向における突起41の共振周波数および反共振周波数を低くできる。
【0061】
以上の結果、突起41単体のサージピークと、突起41の反共振周波数により低減される防振基体13のサージピークとを、第1実施形態に対し異ならせることができる。加えて、防振装置40に入力される振動方向に対し、突起41の延長方向D3の向きを変更することで、それらのサージピークを容易に調整できる。
【0062】
次に図6を参照して第4実施形態について説明する。第1実施形態では、突起17が楕円形状である場合について説明した。これに対し第4実施形態では、突起51が円形状である場合について説明する。なお、第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0063】
図6は、第4実施形態における防振装置50の正面図である。防振装置50では、防振基体13の軸方向の両端面からそれぞれ柱状の突起51が4本ずつ軸方向に突出している。これら複数の突起51は、第1実施形態と同様に、軸心C1を含む仮想面や、軸心C1と直交する仮想面に関して面対称に形成されている。
【0064】
突起51の先端の高さは、第1実施形態の突起17の先端の高さと略同一である。複数の突起51の先端には、第1実施形態と同じ位置に注入口痕18やベント痕19がそれぞれ形成されている。軸方向視において、突起51は境界16を跨ぎ、突起51の中心C2が中間位置Pよりも第2部材12側に位置する。突起51は、第1領域A1及び第2領域A2の外側に位置する。
【0065】
突起51は、軸方向視において円形状に形成されている。この場合、防振装置50に入力される振動方向が軸直角方向のいずれでも、突起51の変形の仕方が略同一となる。その結果、突起51によるサージング現象の低減効果を、振動方向に関わらず均一に近づけることができる。
【実施例0066】
本発明を実施例E1~E5及び比較例E0により更に詳しく説明するが、本発明はこの実施例E1~E5及び比較例E0に限定されるものではない。
【0067】
第1実施形態で説明した防振装置10から全ての突起17を取り除いたものを比較例E0とした。比較例E0における防振基体13は、内径を25mm、外径を66mm、体積を13725mm、質量を123gとした。
【0068】
実施例E1は、第1実施形態で説明した防振装置10であり、比較例E0に突起17を設けたものである。実施例E2は、第2実施形態で説明した防振装置30であり、実施例E1に対し突起31の向きを変えたものである。実施例E3は、第3実施形態で説明した防振装置40であり、実施例E1に対し突起41の向きを変えたものである。実施例E4は、第3実施形態で説明した防振装置40を周方向に90度回転させたものである。実施例E5は、第4実施形態で説明した防振装置50であり、実施例E1に対し突起51の形状を変えたものである。
【0069】
実施例E1~E5における防振基体13は、いずれも比較例E0と同一にした。楕円形状の突起17,31,41は、先端の長径を10.4mm、先端の短径を7.2mmとした。円形状の突起51の先端の直径を7mmとした。また、突起17,31,41,51の先端の高さを膜部13bの先端の高さと略同一にした。
【0070】
図7,8には、実施例E1~E5及び比較例E0に対する動ばね定数の周波数特性の解析結果を示す。この解析では、実施例E1~E5及び比較例E0それぞれに対し、主振動方向に9.8m/sの振動を付与した。図7,8のグラフの横軸は周波数[Hz]である。図7,8のグラフの縦軸は、主振動方向の動ばね定数[N/mm]である。縦軸には等間隔の目盛のみを示して数値を省略した。図7には、実施例E1,E2及び比較例E0のグラフをそれぞれ示した。図8には、実施例E3~E5及び比較例E0のグラフをそれぞれ示した。
【0071】
これらの解析結果によれば、突起が無い比較例E0では、防振基体13のみによるサージピークが約820Hzに出現した。これに対し、実施例E1では約700Hz及び約870Hzに、実施例E2では約760Hz及び約880Hzに、実施例E3では約640Hz及び約810Hzに、実施例E4では約770Hz及び約890Hzに、実施例E5では約680Hz及び約840Hzに、それぞれサージピークが出現した。
【0072】
これらの各周波数における防振基体13及び突起17,31,41,51の挙動を確認した。実施例E1~E5のいずれも、低周波数側のサージピークが突起17,31,41,51によるものであって、高周波数側のサージピークが防振基体13によるものであった。
【0073】
以上の結果、いずれの実施例E1~E5も、突起17,31,41,51の1次共振(サージピーク)の高周波数側に生じる反共振によって、比較例E0に対して防振基体13によるサージング現象(サージピークにおける動ばね定数)が低減されることが確認された。
【0074】
突起17,31,41,51によるサージピークが比較例E0のサージピークから低周波数側に離れる程、突起17,31,41,51によるサージング現象が小さく、低減後の防振基体13のサージング現象が大きくなり易いことが確認された。よって、突起17,31,41,51の形状や向き等を適宜変更することで、サージピークの位置やサージング現象の大きさ等を任意に調整できることが分かった。
【0075】
また図示しないが、実施例E5に対し、突起51の中心C2を中間位置Pよりも第1部材11側に位置させたものを用いて同様の振動解析を行った。この場合、突起51によるサージピークは出現せず、突起51の質量分だけ防振基体13のサージピークが低周波数側に移動した。よって、突起51を第2部材12側に配置した場合、防振基体13のサージピークの低減効果を向上できることが分かった。これは、突起17,31,41についても同様であった。
【0076】
以上、実施形態および実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態および上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、軸方向視における第1部材11の外周面や内周面を楕円形状や多角形状、真円形状などとしても良い。また、第1部材11の軸心と第2部材12の軸心とを互いに軸直角方向へ離してオフセットさせても良い。第1部材11を棒状に形成しても良い。
【0077】
上記実施形態では、防振装置10の前後方向が車両の前後方向と一致し、防振装置10の上下方向および左右方向が車両の上下方向および左右方向と一致する場合を説明したが、これに限らない。例えば、防振装置10の前後方向を車両の左右方向と一致させ、防振装置10の上下方向または左右方向を車両の前後方向と一致させても良い。また、これらの防振装置10の各方向と車両の各方向とを斜めにずらしても良い。
【0078】
上記実施形態では、防振装置10の適用対象として、モータマウントを例示したが、その適用対象は任意である。他の適用対象としては、例えばエンジンマウント、メンバーマウント、デフマウントが例示される。また、車体などの振動受側に第1部材11を取り付け、モータなどの振動源側に第2部材12を取り付ける場合に限らず、振動受側に第2部材12を取り付けて振動源側に第1部材11を取り付けても良い。
【0079】
上記実施形態では、防振基体13が第1部材11と第2部材12との間を全周に亘って連結する場合を説明したが、これに限られない。例えば、防振基体13を軸方向に貫通するすぐり等を設けても良い。
【0080】
上記実施形態では、防振基体13及び突起17,31,41,51がゴム製である場合を説明したが、これに限られない。例えば、ゴム以外の弾性体である熱可塑性エラストマで防振基体13及び突起17,31,41,51を構成しても良い。また、突起17,31,41,51の先端や内部に金属などの錘を設けても良い。これにより、突起17,31,41,51の共振周波数および反共振周波数を調整できる。
【0081】
上記実施形態では、防振基体13の軸方向の両端面からそれぞれ突起17,31,41,51が4本ずつ突出する場合を説明したが、これに限られない。例えば、防振基体13の軸方向の片面からのみ突起17,31,41,51を突出させても良い。また、防振基体13の軸方向の端面に設ける突起17,31,41,51の数は3本以下でも5本以上でも良い。また、各々の突起17,31,41,51は、軸心C1を含む仮想面に関して面対称に形成される場合に限らず、非対称に形成しても良い。同様に、軸方向の一端面側の突起17,31,41,51と他端面側の突起17,31,41,51とは、軸心C1と直交する仮想面に関して非対称に形成しても良い。
【0082】
突起17,31,41が軸方向視において楕円形状である場合に限らず、軸方向視において延長方向D1,D2,D3へ延びた多角形状や長円形状に突起17,31,41を形成しても良い。また、円柱状の突起51を多角柱状にしても良い。突起17,31,41,51のうち2種以上を1つの防振基体13に設けても良い。
【0083】
突起17,31,41,51の軸方向の長さや太さ、質量などは適宜変更し、突起17,31,41,51によるサージング現象の低減効果を調整しても良い。但し、突起17,31,41,51の1次共振に伴う反共振領域が防振基体13のサージピーク(1次共振領域)の近傍に位置するように、突起17,31,41,51の各寸法などを調整することが好ましい。
【0084】
上記実施形態では、突起17,31,41,51が軸方向に突出する場合を説明したが、これに限らない。例えば、突起17,31,41,51を、軸方向に対し傾いた方向へ突出させても良い。この場合、防振装置10,30,40,50に軸方向の振動が入力されたときに、突起17,31,41,51によるサージピークの低減効果が発揮されることがある。
【0085】
上記実施形態では、突起17,31,41,51が下降傾斜面14及び上昇傾斜面15の両方から突出する場合を説明したが、これに限らない。例えば、突起17,31,41,51を下降傾斜面14のみから突出させても良く、突起17,31,41,51を上昇傾斜面15のみから突出させても良い。なお、突起17,31,41,51を下降傾斜面14のみから突出させる場合、軸方向視において突起17,31,41,51を境界16の内側に接するように配置し、突起17,31,41,51を第2部材12に近づけても良い。
【0086】
また、膜部13bから軸直角方向の内側へ台座を張り出させ、その台座から突起17,31,41,51を突出させても良い。更に、台座を膜部13bから軸直角方向に離隔させ、台座を突起17,31,41,51の一部としても良い。また、突起17,31,41,51は、膜部13bと軸直角方向に離隔する場合に限らず、突起17,31,41,51を膜部13bと一体化しても良い。
【符号の説明】
【0087】
10,30,40,50 防振装置
11 第1部材
12 第2部材
13 防振基体
14 下降傾斜面
15 上昇傾斜面
17,31,41,51 突起
18 注入口痕(痕跡)
19 ベント痕(痕跡)
A1 第1領域
A2 第2領域
D1,D2,D3 延長方向(第1方向)

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8