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特開2024-93818樹脂フィルム、積層体、並びに積層体及び偏光フィルムの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093818
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】樹脂フィルム、積層体、並びに積層体及び偏光フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20240702BHJP
   H10K 50/86 20230101ALI20240702BHJP
   H10K 50/844 20230101ALI20240702BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240702BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
G02B5/30
H10K50/86
H10K50/844
B32B27/00 A
B32B27/00 B
C08J5/18 CER
C08J5/18 CEZ
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210402
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】猪股 貴道
【テーマコード(参考)】
2H149
3K107
4F071
4F100
【Fターム(参考)】
2H149AA14
2H149AA18
2H149AB01
2H149AB02
2H149BA02
2H149CA02
2H149EA12
2H149EA22
2H149FA03W
2H149FA04Z
2H149FA05X
2H149FA12Z
2H149FA63
2H149FA66
2H149FA68
2H149FA69
2H149FD05
2H149FD06
2H149FD08
2H149FD09
2H149FD12
2H149FD25
2H149FD44
2H149FD47
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC32
3K107CC33
3K107CC43
3K107EE26
3K107EE61
3K107FF00
3K107FF02
3K107FF06
3K107FF08
3K107FF14
3K107FF15
4F071AA39
4F071AA86
4F071AF08Y
4F071AF29Y
4F071AF30Y
4F071AF35Y
4F071AG28
4F071AG34
4F071AH12
4F071BA02
4F071BB02
4F071BC02
4F071BC12
4F071BC16
4F100AK01A
4F100AK02A
4F100AK03B
4F100AK42B
4F100AR00B
4F100AR00C
4F100BA02
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100CB00D
4F100DD07A
4F100DD07B
4F100EC18
4F100EH46
4F100EJ86
4F100JA05A
4F100JD04
4F100JD04A
4F100JL14B
4F100JN01
4F100JN01A
4F100JN10C
4F100JN18
4F100JN18A
4F100YY00A
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】薄型でありながら、表示装置に組み込まれた場合に、ボケが少なく薄膜干渉によるムラが少ない表示を実現しうる樹脂フィルム。
【解決手段】厚みが4μm以下であり、算術平均高さSaが50nm以下である主面S1を有し、総ヘイズが、0.4%以上10%以下であり、溶媒の含有率が0.01重量%以上10重量%以下である、樹脂フィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚みが4μm以下であり、
算術平均高さSaが50nm以下である主面S1を有し、
総ヘイズが、0.4%以上10%以下であり、
溶媒の含有率が0.01重量%以上10重量%以下である、樹脂フィルム。
【請求項2】
厚み100μm当たりの水蒸気透過率が、4g/(m・day)以下である、請求項1に記載の樹脂フィルム。
【請求項3】
光弾性定数が、10×10-13cm/dyn以下である、請求項1に記載の樹脂フィルム。
【請求項4】
測定波長550nmにおける面内のレターデーションReが0nm以上2nm以下であり、厚み方向のレターデーションRthが、-5nm以上5nm以下である、請求項1に記載の樹脂フィルム。
【請求項5】
脂環式構造を含有する重合体を含む、請求項1に記載の樹脂フィルム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の樹脂フィルムと、算術平均高さSaが50nm以下である主面S2を有する基材フィルムとを含み、前記樹脂フィルムの前記主面S1と前記基材フィルムの主面S2とが直接している、積層体。
【請求項7】
請求項6に記載の積層体の製造方法であって、
算術平均高さSaが50nm以下である主面S2を有する基材フィルムを用意する工程(1)、
前記基材フィルムの主面S2上に、重合体及び溶媒を含有する樹脂液を塗布して樹脂液の層を形成する工程(2)、及び
前記樹脂液の層を乾燥して、前記基材フィルムの主面S2上に樹脂フィルムを形成する工程(3)を含む、積層体の製造方法。
【請求項8】
偏光子層と請求項6に記載の積層体に含まれる前記樹脂フィルムとを、接着剤により貼合する工程(4)、及び
前記積層体の前記基材フィルムを剥離する工程(5)を含む、偏光フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂フィルム、積層体、並びに積層体及び偏光フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置には、偏光子層、位相差層などの光学要素が含まれうる。これらの光学要素を保護するための保護フィルムとして、樹脂フィルムを用いる場合がある。
例えば、透光性支持体と、その面上に設けられた環状ポリオレフィンを含む層とを備える光学フィルムを、偏光子の保護フィルムとして用いる技術が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
また、家電製品や自動車内装部品などの樹脂成形体の表面に転写層を転写するための、転写フィルムが知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際出願第2014/057950号
【特許文献2】特開2020-040235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、スマートフォンなどの端末装置の小型化及び薄型化が進められ、端末装置に備えられる表示装置の薄型化の要求が高まっている。表示装置に含まれる偏光子層、位相差層などの光学要素も、薄型化が求められている。
表示装置の薄型化の要求に応じるために、保護フィルムを省略すると、表示装置の耐久性が低下する場合がある。表示装置の耐久性は、例えば、偏光子層に含まれうるヨウ素による表示装置の部材の劣化や表示装置の外部からの湿気による偏光子層の劣化などの劣化により低下しうる。
【0006】
一方で、保護フィルムの薄型化を更に進めると、薄膜干渉により、表示装置に表示ムラが現れる場合がある。
【0007】
さらに、保護フィルムを組み込んでも、表示装置が、ボケが少ない、より精細な表示を実現できることが好ましい。
【0008】
したがって、薄型でありながら、表示装置に組み込まれた場合に、ボケが少なく薄膜干渉によるムラが少ない表示を実現しうる樹脂フィルム;かかる樹脂フィルムを含む積層体;かかる積層体の製造方法;かかる樹脂フィルムを含む偏光フィルムの製造方法;が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記課題を解決するべく、鋭意検討した結果、厚みが4μm以下であって、主面の算術平均高さSa、総ヘイズ、及び溶媒の含有率が特定の範囲である樹脂フィルムにより、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下を提供する。
【0010】
<1> 厚みが4μm以下であり、
算術平均高さSaが50nm以下である主面S1を有し、
総ヘイズが、0.4%以上10%以下であり、
溶媒の含有率が0.01重量%以上10重量%以下である、樹脂フィルム。
<2> 厚み100μm当たりの水蒸気透過率が、4g/(m・day)以下である、<1>に記載の樹脂フィルム。
<3> 光弾性定数が、10×10-13cm/dyn以下である、<1>又は<2>に記載の樹脂フィルム。
<4> 測定波長550nmにおける面内のレターデーションReが0nm以上2nm以下であり、厚み方向のレターデーションRthが、-5nm以上5nm以下である、<1>~<3>のいずれか一項に記載の樹脂フィルム。
<5> 脂環式構造を含有する重合体を含む、<1>~<4>のいずれか一項に記載の樹脂フィルム。
<6> <1>~<5>のいずれか一項に記載の樹脂フィルムと、算術平均高さSaが50nm以下である主面S2を有する基材フィルムとを含み、前記樹脂フィルムの前記主面S1と前記基材フィルムの主面S2とが直接している、積層体。
<7> <6>に記載の積層体の製造方法であって、
算術平均高さSaが50nm以下である主面S2を有する基材フィルムを用意する工程(1)、
前記基材フィルムの主面S2上に、重合体及び溶媒を含有する樹脂液を塗布して樹脂液の層を形成する工程(2)、及び
前記樹脂液の層を乾燥して、前記基材フィルムの主面S2上に樹脂フィルムを形成する工程(3)を含む、積層体の製造方法。
<8> 偏光子層と<6>に記載の積層体に含まれる前記樹脂フィルムとを、接着剤により貼合する工程(4)、及び
前記積層体の前記基材フィルムを剥離する工程(5)を含む、偏光フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、薄型でありながら、表示装置に組み込まれた場合に、ボケが少なく薄膜干渉によるムラが少ない表示を実現しうる樹脂フィルム;かかる樹脂フィルムを含む積層体;かかる積層体の製造方法;かかる樹脂フィルムを含む偏光フィルムの製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。以下に示す実施形態の構成要素は、適宜組み合わせうる。
【0013】
以下の説明において、「長尺」のフィルムとは、幅に対して、5倍以上の長さを有するフィルムをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムをいう。フィルムの長さの上限は、特に制限は無く、例えば、幅に対して10万倍以下としうる。
【0014】
以下の説明において、接着剤とは、別に断らない限り、狭義の接着剤(エネルギー線照射後、あるいは加熱処理後、23℃における剪断貯蔵弾性率が1MPa~500MPaである接着剤)のみならず、23℃における剪断貯蔵弾性率が1MPa未満である粘着剤をも包含する。
したがって、「接着剤の層」は、狭義の接着剤の層の他、粘着剤の層をも包含する。
【0015】
以下の説明において、「(メタ)アクリル」の文言は、「アクリル」、「メタクリル」及びこれらの組み合わせを包含する。
【0016】
以下の説明において、層の面内レターデーションReは、別に断らない限り、Re=(nx-ny)×dで表される値である。また、層の厚み方向のレターデーションRthは、別に断らない限り、Rth=[{(nx+ny)/2}-nz]×dで表される値である。ここで、nxは、層の厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表す。nyは、層の前記面内方向であってnxの方向に直交する方向の屈折率を表す。nzは層の厚み方向の屈折率を表す。dは、層の厚みを表す。測定波長は、別に断らない限り、550nmである。
【0017】
以下の説明において、「層」及び「フィルム」とは、別に断らない限り、剛直な部材であってもよく、例えば樹脂製のフィルムのように可撓性を有する部材であってもよい。
【0018】
以下の説明において、別に断らない限り、溶媒には、分散媒が含まれる。
【0019】
<1.樹脂フィルム>
本発明の一実施形態に係る樹脂フィルムは、
厚みが4μm以下であり、
算術平均高さSaが50nm以下である主面S1を有し、
総ヘイズが、0.4%以上10%以下であり、
溶媒の含有率が0.01重量%以上10重量%以下である。
本実施形態に係る樹脂フィルムは、薄型でありながら、表示装置に組み込まれた場合に、ボケが少なく薄膜干渉によるムラの少ない表示を実現しうる。
【0020】
<1.1.樹脂フィルムの厚み>
樹脂フィルムの厚みは、通常0μmより大きく、通常4μm以下、好ましくは3μm以下である。
ある積層体を構成する層の厚みが小さいと、積層体を組み込んだ表示装置に薄膜干渉による表示ムラが生じやすい。しかし、本実施形態の樹脂フィルムによれば、厚みが4μm以下であっても、樹脂フィルムを組み込んだ表示装置に薄膜干渉による表示ムラを生じさせにくい。
【0021】
<1.2.算術平均高さSa>
樹脂フィルムの主面S1における算術平均高さSaは、通常0nmより大きく、好ましくは4nmより大きく、より好ましくは5nm以上、更に好ましくは6nm以上であり、通常50nm以下、好ましくは30nm以下、より好ましくは10nm以下である。
【0022】
樹脂フィルムの主面S1の算術平均高さSaが、前記上限値以下であると、樹脂フィルムを組み込んだ表示装置において、ボケが少ない精細な表示を実現しうる。
【0023】
算術平均高さSaは、表面粗さ測定機により、ISO 25178に準拠し測定しうる。
【0024】
樹脂フィルムの主面S1における算術平均高さSaは、後述する工程(1)~(3)を含む製造方法において、基材フィルムの主面S2における算術平均高さSaを調整することにより、調整することができる。基材フィルムの主面S2における算術平均高さSaを調整する方法については後述する。
【0025】
<1.3.樹脂フィルムの総ヘイズ>
樹脂フィルムの総ヘイズは、通常0.4%以上、好ましくは0.8%以上であり、通常10%以下、好ましくは3%以下である。
樹脂フィルムの総ヘイズが、前記範囲内であると、樹脂フィルムを組み込んだ表示装置において、薄膜干渉による表示ムラの低減と、表示ボケの低減とを、バランスよく達成しうる。
【0026】
樹脂フィルムの総ヘイズは、樹脂フィルムの表面に存在する凹凸の密度の指標となりうる。樹脂フィルムの総ヘイズが前記範囲内であると、樹脂フィルムの表面に存在する凹凸の密度が適度となり、前記の薄膜干渉による表示ムラの低減と、表示ボケの低減とを、バランスよく達成しうる。
【0027】
樹脂フィルムの総ヘイズは、下記方法により調整することができる。
例えば算術平均高さSaを大きく、または、表面に存在する凹凸の密度を上げることにより、樹脂フィルムの総ヘイズを上昇させることができる。
また、例えば算術平均高さSaを小さく、または、表面に存在する凹凸の密度を下げることにより、樹脂フィルムの総ヘイズを低下させることができる。
【0028】
樹脂フィルムの総ヘイズは、ヘイズメーターを用いて測定しうる。
【0029】
樹脂フィルムの外部ヘイズは、好ましくは0.4%以上、より好ましくは0.8%以上であり、好ましくは10%以下、より好ましくは3%以下である。
樹脂フィルムの外部ヘイズHoutは、樹脂フィルムの総ヘイズ(Htot)と樹脂フィルムの内部ヘイズ(Hin)との差(Htot-Hin)として求めうる。
樹脂フィルムの内部ヘイズHinは、実施例記載の方法により、測定しうる。
【0030】
樹脂フィルムの外部ヘイズHoutは、下記方法により調整することができる。
例えば算術平均高さSaを大きく、または、表面に存在する凹凸の密度を上げることにより、樹脂フィルムの外部ヘイズを上昇させることができる。
また、例えば算術平均高さSaを小さく、または、表面に存在する凹凸の密度を下げることにより、樹脂フィルムの外部ヘイズを低下させることができる。
【0031】
<1.4.樹脂フィルムの材料>
樹脂フィルムは、樹脂を含み、好ましくは樹脂のみからなる。樹脂は、好ましくは熱可塑性樹脂であり、樹脂は、通常、重合体と、溶媒と、必要に応じて含まれる任意の成分とを含む。
【0032】
樹脂フィルムに含まれる重合体としては、例えば、ポリエステル、アクリル重合体、脂環式構造を含有する重合体などが挙げられる。これらの重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、樹脂フィルムの水蒸気透過率を低くする観点から、環状オレフィン系重合体などの、脂環式構造を含有する重合体が好ましい。環状オレフィン系重合体とは、環状オレフィンを重合して得られる構造単位を有する重合体又はその水素化物を意味する。
【0033】
脂環式構造を含有する重合体は、その重合体の繰り返し単位が脂環式構造を含有する。脂環式構造を含有する重合体は、通常、水蒸気透過率が低い。そのため、脂環式構造を含有する重合体を含む樹脂で樹脂フィルムを形成した場合、水蒸気透過率が低い樹脂フィルムを得ることができる。
【0034】
脂環式構造を含有する重合体は、主鎖に脂環式構造を含有していてもよく、側鎖に脂環式構造を含有していてもよく、主鎖及び側鎖の双方に脂環式構造を含有していてもよい。中でも、機械的強度及び耐熱性の観点からは、少なくとも主鎖に脂環式構造を含有する重合体が好ましい。
【0035】
脂環式構造としては、例えば、飽和脂環式炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和脂環式炭化水素(シクロアルケン、シクロアルキン)構造などが挙げられる。中でも、機械的強度及び耐熱性の観点から、シクロアルカン構造及びシクロアルケン構造が好ましく、中でもシクロアルカン構造が特に好ましい。
【0036】
脂環式構造を構成する炭素原子数は、一つの脂環式構造あたり、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上であり、好ましくは30個以下、より好ましくは20個以下、特に好ましくは15個以下の範囲である。脂環式構造を構成する炭素原子数がこの範囲にある場合に、樹脂フィルムの機械的強度、耐熱性及び成形性が高度にバランスされる。
【0037】
脂環式構造を含有する重合体において、脂環式構造を含有する繰り返し単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択しうる。脂環式構造を含有する重合体における脂環式構造を含有する繰り返し単位の割合は、好ましくは55重量%以上、更に好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。脂環式構造を含有する重合体における脂環式構造を含有する繰り返し単位の割合がこの範囲にあると、樹脂の透明性及び耐熱性が良好となる。
【0038】
脂環式構造を含有する重合体としては、例えば、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素化物が挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系重合体及びその水素化物は、透明性と成形性が良好である。
【0039】
ノルボルネン系重合体及びその水素化物の例としては、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体及びその水素化物;ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体及びその水素化物が挙げられる。また、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の開環単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の開環共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる任意の単量体の開環共重合体が挙げられる。さらに、ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の付加単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の付加共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる任意の単量体の付加共重合体が挙げられる。これらの重合体としては、例えば、特開2002-321302号公報等に開示されている重合体が挙げられる。
【0040】
ノルボルネン系重合体及びその水素化物の具体例としては、日本ゼオン社製「ゼオノア」;JSR社製「アートン」;TOPAS ADVANCED POLYMERS社製「TOPAS」が挙げられる。
【0041】
樹脂フィルムに含まれる重合体の重量平均分子量Mwは、好ましくは10,000以上、より好ましくは15,000以上、特に好ましくは20,000以上であり、好ましくは100,000以下、より好ましくは80,000以下、特に好ましくは50,000以下である。重量平均分子量がこのような範囲にあるときに、樹脂フィルムを形成する樹脂の機械的強度及び成形性が高度にバランスされる。
【0042】
樹脂フィルムに含まれる重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.5以上、特に好ましくは1.8以上であり、好ましくは3.5以下、より好ましくは3.0以下、特に好ましくは2.7以下である。ここで、Mnは、数平均分子量を表す。分子量分布が前記範囲の下限値以上である場合重合体の生産性を高め、製造コストを抑制できる。また、分子量分布が前記範囲の上限値以下である場合、低分子成分の量が小さくなるので、高温曝露時の緩和を抑制して、樹脂フィルムの安定性を高めることができる。
【0043】
前記の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定できる。GPCで用いる溶媒としては、シクロヘキサン、トルエン、テトラヒドロフランが挙げられる。GPCを用いた場合、重量平均分子量は、例えばポリイソプレン換算またはポリスチレン換算の相対分子量として測定しうる。
【0044】
樹脂フィルムに含まれる重合体のガラス転移温度は、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上、更に好ましくは120℃以上であり、好ましくは170℃以下、より好ましくは160℃以下、更に好ましくは150℃以下である。重合体のガラス転移温度が前記範囲にある場合、高温環境下における樹脂フィルムの耐久性を高めることができる。ガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、10℃/分で昇温して測定しうる。
【0045】
樹脂フィルムの重量100重量%に対して、樹脂フィルム中の重合体の含有率は、特定の範囲にあることが好ましい。この重合体の含有率の特定の範囲は、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、更に好ましくは90重量%以上であり、好ましくは99.99重量%以下、より好ましくは99.9重量%以下、更に好ましくは99重量%以下、特に好ましくは96重量%以下である。
【0046】
(溶媒)
樹脂フィルムの材料である樹脂は、通常溶媒を含有する。
樹脂フィルムに含まれる樹脂が含有する溶媒は、通常、樹脂フィルムから除去されずに残った、樹脂フィルムを製造する際に用いられた溶媒の一部である。溶媒としては、有機溶媒が好ましく、樹脂フィルムに含まれうる重合体を溶解可能な有機溶媒が特に好ましい。溶媒としては、例えば、シクロヘキサン、アルキルシクロヘキサン(メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、など)、トルエン等の炭化水素溶媒;テトラヒドロフラン等の環状エーテル溶媒;等が挙げられる。溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
(任意の成分)
樹脂フィルムは、前記の重合体及び溶媒に加えて、任意の成分を含みうる。任意の成分としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤などの安定剤;滑剤、可塑剤などの樹脂改質剤;帯電防止剤;などが挙げられる。
【0048】
<1.5.樹脂フィルムの溶媒含有率>
樹脂フィルム中に含まれる溶媒の含有率は、樹脂フィルムの単位重量を100重量%として、通常0.01重量%以上であり、通常10重量%以下である。ここで、樹脂フィルム中に複数種の溶媒が含まれている場合、溶媒の含有率は、それら複数種の溶媒の含有率の合計である。
【0049】
樹脂フィルムにおける溶媒の含有率が前記上限値以下であると、樹脂フィルムに残留する溶媒の揮散により、樹脂フィルムを組み込んだ表示装置が備える樹脂部材が変質することを低減しうる。また、樹脂フィルムの機械的強度を高めうる。
樹脂フィルムにおける溶媒の含有率が前記下限値以上であると、樹脂フィルムを、樹脂液を用いた塗布法により容易に製造しうる。また、樹脂フィルムと、後述する基材フィルムとの剥離力を、より適切な範囲に調整することができる。
【0050】
樹脂フィルムにおける溶媒の含有率は、ガスクロマトグラフ質量分析計を用いて測定できる。具体的な測定方法は、実施例に記載の方法を採用しうる。
【0051】
樹脂フィルムにおける溶媒の含有率は、例えば、樹脂フィルムの形成時における樹脂液の乾燥温度及び乾燥時間により、調整できる。
【0052】
<1.6.樹脂フィルムの特性>
(水蒸気透過率)
樹脂フィルムは、小さい水蒸気透過率を有することが好ましい。具体的には、樹脂フィルムの厚み100μm当たりの水蒸気透過率は、好ましくは4.0g/(m・day)以下、より好ましくは3.0g/(m・day)以下、特に好ましくは2.0g/(m・day)以下である。下限値は、理想的には0g/(m・day)以上であり、0.1g/(m・day)以上であってもよい。樹脂フィルムが前記のように小さい水蒸気透過率を有する場合、樹脂フィルムによって偏光子層を安定して保護できる。よって、偏光子層の湿気による劣化を効果的に抑制できるので、偏光子層の偏光度の低下を抑制できる。さらに、偏光子層に浸入した湿気により偏光子層内のヨウ素がブリードアウトすることを抑制できるので、そのヨウ素が表示装置内の電極等の金属部品を腐食することを効果的に抑制できる。
【0053】
樹脂フィルムの厚み100μm当たりの水蒸気透過率は、下記の方法で測定できる。樹脂フィルムの水蒸気透過率を、水蒸気透過率測定装置(MOCON社製「PERMATRAN-W」)により、JIS K 7129 B法に従って、温度40℃、湿度90%RHの条件で測定する。この水蒸気透過率の測定値に「100(μm)/樹脂フィルムの厚み(μm)」を掛け算して、厚み100μm当たりの値に換算して、樹脂フィルムの厚み100μm当たりの水蒸気透過率を得る。
【0054】
(光弾性定数)
樹脂フィルムの光弾性定数は、特定の範囲にあることが好ましい。具体的には、樹脂フィルムの光弾性定数は、小さいほど好ましく、好ましくは10×10-13cm/dyn以下、より好ましくは5×10-13cm/dyn以下、特に好ましくは2×10-13cm/dyn以下である。下限は、通常0.0×10-13cm/dyn以上である。樹脂フィルムの光弾性定数が前記範囲にある場合、膨張又は収縮の応力によるレターデーションの変化を小さくできるので、表示装置の表示均一性を保つことができる。樹脂フィルムの光弾性定数は、樹脂フィルムに応力を加えた場合に生じる複屈折から、計算による求めうる。具体的な測定方法は、実施例に記載の方法を採用しうる。
【0055】
(レターデーション)
樹脂フィルムは、面内方向及び厚み方向の両方において、光学異方性が小さいことが好ましく、光学等方性を有することが更に好ましい。樹脂フィルムの光学異方性が小さいと、樹脂フィルムを透過することによる偏光の偏光状態の変化を通常は小さくでき、好ましくは無くすことができる。したがって、樹脂フィルムを偏光子層と貼り合わせた場合に、樹脂フィルムによる偏光状態の変化を抑制できるので、それら樹脂フィルム及び偏光子層を含む偏光フィルムを透過する偏光の偏光状態の制御をシンプルにできる。
【0056】
したがって、樹脂フィルムの面内レターデーションは、小さいことが好ましい。具体的には、樹脂フィルムの測定波長550nmにおける面内レターデーションは、好ましくは2nm以下であり、通常0nm以上であり、0nmであってもよい。
また、樹脂フィルムの厚み方向のレターデーションは、ゼロ又はゼロに近いことが好ましい。具体的には、樹脂フィルムの測定波長550nmにおける厚み方向のレターデーションは、好ましくは-5nm以上、より好ましくは-4nm以上、更に好ましくは-3nm以上、特に好ましくは-2nm以上であり、好ましくは5nm以下、より好ましくは4nm以下、更に好ましくは3nm以下、特に好ましくは2nm以下である。
【0057】
光学異方性の小さい樹脂フィルムは、例えば、後述する塗布法のように、樹脂フィルムに加えられる応力を小さくできる樹脂フィルムの形成方法により、形成できる。
【0058】
(樹脂フィルムの長さ)
樹脂フィルムは、長尺であってもよく、枚葉の形態であってもよい。樹脂フィルムが長尺であると、樹脂フィルムと他の部材との貼合を効率よく行いうる。
【0059】
<1.7.樹脂フィルムの用途>
前記の樹脂フィルムは、薄型でありながら、薄膜干渉による表示ムラ、表示ボケを生じさせにくい。よって、樹脂フィルムを、表示装置の構成要素として好適に用いうる。例えば、表示装置が視認側に備えうる光学要素(例、偏光子)の保護フィルムとして、好適に用いうる。
樹脂フィルムを組み込む表示装置の例としては、特に限定されず、液晶表示装置及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置が挙げられる。液晶表示装置の例としては、特に限定されず、インプレーンスイッチング(IPS)モード、バーチカルアラインメント(VA)モード、マルチドメインバーチカルアラインメント(MVA)モード、コンティニュアスピンホイールアラインメント(CPA)モード、ハイブリッドアラインメントネマチック(HAN)モード、ツイステッドネマチック(TN)モード、スーパーツイステッドネマチック(STN)モード、オプチカルコンペンセイテッドベンド(OCB)モードなどの、任意のモードの液晶セルを備える表示装置が挙げられる。
【0060】
<2.樹脂フィルムの製造方法>
前記の樹脂フィルムは、任意の方法により製造されうる。樹脂フィルムは、好ましくは、下記の工程(1)、工程(2)、及び工程(3)を、この順で含む方法により製造される。樹脂フィルムの製造方法は、工程(1)~(3)以外に、任意の工程を含みうる。
【0061】
(工程(1))
工程(1)では、算術平均高さSaが50nm以下である主面S2を有する基材フィルムを用意する。
基材フィルムは、延伸されている延伸フィルムであってもよく、延伸されていない未延伸フィルムであってもよく、好ましくは、基材フィルム表面の算術平均高さSaを調整しやすいので、延伸されている延伸フィルムである。
【0062】
基材フィルムは、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。基材フィルムとして、熱可塑性樹脂層のみからなるフィルムを用いてもよい。
または、熱可塑性樹脂層と熱可塑性樹脂層上に形成された離型層とを含む離型フィルムを用いてもよい。基材フィルムが離型層を含む場合、離型層は、基材フィルムの最も外側に設けられており、基材フィルムの主面S2は、離型層の表面に相当する。
【0063】
基材フィルムが熱可塑性樹脂層を含む場合、熱可塑性樹脂層に含まれうる重合体の例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどの、ポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどの、α‐オレフィンの重合体;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどの、塩化ビニル系重合体;ポリビニルアルコール;エチレン-酢酸ビニル共重合体;ポリスチレン;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルスルホン;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルイミド;ポリイミド;含フッ素原子重合体;ポリアミド;アクリル重合体;ノルボルネン系重合体などの、環状オレフィン系重合体;が挙げられる。熱可塑性樹脂層に含まれうる重合体は、単独重合体であってもよく、共重合体であってもよい。これらは、一種単独で用いてもよく、二種以上を任意の割合で組み合わせて用いてもよい。
【0064】
なかでも、価格、機械的強度、延伸加工のしやすさの観点から、熱可塑性樹脂層は、好ましくはポリエステルを含み、より好ましくはポリエチレンテレフタレートを含む。
【0065】
熱可塑性樹脂層中の重合体の含有割合は、好ましくは80重量%~100重量%、より好ましくは90重量%~100重量%、更に好ましくは95重量%~100重量%としうる。
【0066】
熱可塑性樹脂層は、前記の重合体に加えて、必要に応じて任意の成分を含みうる。任意の成分としては、樹脂フィルムに含まれうる任意の成分の例と同様の例が挙げられる。任意の成分は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
基材フィルムが離型層を含む場合、離型層に含まれうる樹脂の例としては、アルキド系樹脂;ポリオレフィン系樹脂;含フッ素原子樹脂;シリコーン系樹脂;ウレタン系樹脂;アクリル系樹脂が挙げられる。
【0068】
離型層が、弾性率が低く、柔らかい樹脂で形成されているほど、熱可塑性樹脂層と離型層との積層体を延伸した場合に、熱可塑性樹脂層の延伸による変形に、離型層の変形が追随しやすくなるので、離型層の断裂が生じにくくなる。その結果、離型層表面の算術平均高さSaを小さくすることができる。
一方、離型層が、弾性率が高く、硬い樹脂で形成されているほど、熱可塑性樹脂層と離型層との積層体を延伸した場合に、熱可塑性樹脂層の延伸による変形に、離型層の変形が追随しにくくなり、離型層の断裂が生じやすくなる。その結果、離型層表面の算術平均高さSaを大きくすることができる。
離型層の弾性率は、離型層を構成する樹脂の種類の選択、樹脂に含まれる重合体の重量平均分子量の調整により、または、樹脂に含まれる重合体の配合比率、樹脂に含まれる共重合体における構成単位の重量割合などを調整することにより、調整しうる。例えば、離型層の弾性率は、離型層を構成する樹脂に含まれる重合体の重量平均分子量を大きくすることにより、高くなる傾向がある。
【0069】
さらに、熱可塑性樹脂層と離型層との積層体を延伸する際の倍率を小さくするほど、離型層の断裂が生じにくくなり、離型層表面の算術平均高さSaを小さくすることができる。
【0070】
基材フィルムとして、市販品を用いてもよい。市販品の例としては、ユニチカ社製「ユニピールシリーズ」(TR-1、TR-5)が挙げられる。市販品である基材フィルムを、更に延伸して、主面S2の算術平均高さSaを調整してもよい。
【0071】
基材フィルムの主面S2が有する算術平均高さSaは、所望とする樹脂フィルムの主面S1における算術平均高さSaに応じた値としうる。具体的には、所望とする樹脂フィルムの主面S1における算術平均高さSaと同じ値としうる。基材フィルムの主面S2が有数る算術平均高さSaは、通常0nmより大きく、好ましくは4nmより大きく、より好ましくは5nm以上、更に好ましくは6nm以上であり、通常50nm以下、好ましくは30nm以下、より好ましくは10nm以下である。
【0072】
(工程(2))
工程(2)では、前記基材フィルムの主面S2上に、重合体及び溶媒を含有する樹脂液を塗布して樹脂液の層を形成する。
樹脂液は、通常樹脂フィルムに含まれうる重合体と溶媒とを含み、さらに、樹脂フィルムに含まれうる重合体以外の任意成分とを含む。
ここで、樹脂液に含まれる重合体及び任意の成分等の不揮発成分の一部又は全部は、溶媒に溶解していてもよい。また、前記不揮発成分の一部又は全部は、溶媒に分散していてもよい。
【0073】
溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0074】
樹脂液における不揮発成分の濃度は、樹脂液が塗布に適した粘度となる範囲で、任意に設定しうる。具体的な濃度範囲は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは8重量%以上、特に好ましくは10重量%以上であり、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下、特に好ましくは15重量%以下である。
【0075】
基材フィルムへの樹脂液の塗布方法としては、例えば、カーテンコーティング法、押し出しコーティング法、ロールコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、スライドコーティング法、印刷コーティング法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、及びギャップコーティング法が挙げられる。
【0076】
工程(2)で、基材フィルムの主面S2上に樹脂液の層が形成される。
【0077】
(工程(3))
工程(3)では、前記樹脂液の層を乾燥して、前記基材フィルムの主面S2上に樹脂フィルムを形成する。
【0078】
樹脂液の乾燥の条件は、乾燥後に得られる樹脂フィルムに含まれる溶媒の含有率が上述した特定の範囲に収まるように設定される。例えば、乾燥温度及び乾燥時間等の乾燥条件を適切に設定することで、樹脂フィルムに含まれる溶媒の含有率を、特定の範囲に調整できる。
【0079】
具体的な乾燥温度は、樹脂フィルムに含まれる重合体及び溶媒の種類及び量によって異なりうるが、一般的には、好ましくは90℃以上、より好ましくは100℃以上、特に好ましくは110℃以上であり、好ましくは140℃以下、より好ましくは135℃以下、特に好ましくは130℃以下である。
【0080】
具体的な乾燥時間は、重合体、溶媒の種類及び量によって異なりうるが、一般的には、好ましくは30秒以上、より好ましくは60秒以上、特に好ましくは90秒以上であり、好ましくは5分以下、より好ましくは4分以下、特に好ましくは3分以下である。
【0081】
基材フィルムの主面S2上に形成された樹脂フィルムの主面は、基材フィルムの主面S2の凹凸に対応する凹凸を有することとなる。したがって、基材フィルムの主面S2に対向する、樹脂フィルムの主面S1は、基材フィルムの主面S2が有する算術平均高さSaに対応する算術平均高さSaを有する。基材フィルムの主面S2に対向する、樹脂フィルムの主面S1の算術平均高さSaは、通常0nmより大きく、好ましくは4nmより大きく、より好ましくは5nm以上、更に好ましくは6nm以上であり、通常50nm以下、好ましくは30nm以下、より好ましくは10nm以下である。
【0082】
前記の工程(1)~(3)を含む方法により、樹脂フィルムと基材フィルムとを含む積層体(以下、第一積層体ともいう。)が得られる。
【0083】
基材フィルムが離型層を含む場合、第一積層体に含まれる離型層中の溶媒の含有率は、好ましくは0.05重量%以上、より好ましくは0.08重量%以上、特に好ましくは0.10重量%以上であり、好ましくは1.5重量%以下、より好ましくは1.2重量%以下、特に好ましくは1.0重量%以下である。
第一積層体において、基材フィルムが含みうる離型層中の溶媒の含有率が前記範囲内であると、基材フィルムと樹脂フィルムとの剥離力をより適切な範囲に調整することができる。
【0084】
基材フィルムが含みうる離型層中の溶媒の含有率は、ガスクロマトグラフ質量分析計を用いて測定できる。具体的な測定方法は、実施例に記載の方法を採用しうる。
【0085】
基材フィルムが含みうる離型層中の溶媒の含有率は、例えば、溶媒の種類、離型層に含まれる重合体の種類及び量、並びに、樹脂フィルムの形成時における樹脂液の乾燥温度及び乾燥時間により、調整できる。
【0086】
工程(2)において、基材フィルム上に樹脂液を塗布する際に、基材フィルムの主面S2(基材フィルムが離型層を含む場合には、離型層の表面)から、通常樹脂液に含まれる溶媒が浸入する。
そのため、第一積層体において、基材フィルムが含みうる離型層には、樹脂液に含まれる溶媒と共通の溶媒が残留する。
【0087】
(任意の工程)
樹脂フィルム又は後述する積層体(第一積層体)の製造方法が含みうる任意の工程の例としては、特に限定されず、樹脂フィルム又は積層体をトリミングする工程、樹脂フィルム又は積層体を巻き取る工程が挙げられる。
【0088】
<3.積層体及びその製造方法>
本発明の一実施形態に係る積層体(第一積層体)は、前記の樹脂フィルムと、前記基材フィルムとを含み、樹脂フィルムの主面S1と基材フィルムの主面S2とが直接している。
樹脂フィルムの主面S1と基材フィルムの主面S2とが直接しているとは、樹脂フィルムの主面S1と基材フィルムの主面S2との間に介在する層が存在していないことを意味する。
前記のとおり、基材フィルムの主面S2が有する算術平均高さSaは、通常0nmより大きく通常50nm以下であり、樹脂フィルムの主面S1が有する算術平均高さSaは、通常0nmより大きく通常50nm以下である。
【0089】
樹脂フィルムと基材フィルムとを含む第一積層体は、含まれる樹脂フィルムを偏光子層などの光学層に転写して、樹脂フィルムと光学層との積層体(例えば、偏光フィルム)を得るための、転写用積層体として用いうる。
【0090】
積層体(第一積層体)は、前記の工程(1)、工程(2)、及び工程(3)をこの順で含む製造方法により得ることができる。
【0091】
積層体の製造方法は、前記の工程(1)~(3)に加えて、任意の工程を含みうる。任意の工程の例としては、前記の例が挙げられる。
【0092】
<4.偏光フィルムの製造方法>
本発明の一実施形態に係る偏光フィルムの製造方法は、下記の工程(4)及び工程(5)をこの順で含む。偏光フィルムの製造方法は、工程(4)及び工程(5)以外に、任意の工程を含みうる。
【0093】
(工程(4))
工程(4)では、偏光子層と前記の第一積層体に含まれる前記樹脂フィルムとを、接着剤により貼合する。
偏光子層と樹脂フィルムとを、接着剤により貼合することで、樹脂フィルムの表面に存在する凹凸が接着剤により埋没し、更にボケが低減された精細な表示を実現しうる。
【0094】
第一積層体は、例えば、前記の工程(1)~工程(3)を含む製造方法により製造しうる。
偏光子層としては、振動方向が直角に交わる二つの直線偏光のうち、一方を透過させ、他方を吸収又は反射できるフィルムを用いることができる。ここで、直線偏光の振動方向とは、直線偏光の電場の振動方向を表す。このようなフィルムは、通常、偏光透過軸を有し、当該偏光透過軸と平行な振動方向を有する直線偏光を透過でき、偏光透過軸と垂直な振動方向を有する直線偏光を吸収又は反射できる。
【0095】
偏光子層は、例えば、ポリビニルアルコール、部分ホルマール化ポリビニルアルコール等のビニルアルコール系重合体を含む、ポリビニルアルコール樹脂のフィルムに、ヨウ素等の二色性物質による染色処理、延伸処理、架橋処理等の適切な処理を適切な順序及び方式で施したものが挙げられる。偏光子層は、ポリビニルアルコール樹脂を含むことが好ましい。
【0096】
偏光子層の厚みは、好ましくは1μmより大きく、より好ましくは2μm以上、特に好ましくは3μm以上であり、好ましくは19μm以下、より好ましくは18μm以下である。偏光子層の厚みが前記下限値より大きい場合、偏光フィルムの光学性能を十分に高めることができる。また、偏光子層の厚みが前記上限値以下である場合、偏光フィルムを備える表示体の反りを軽減し、偏光フィルムの屈曲復元性を効果的に高めることができる。
【0097】
第一積層体が備える樹脂フィルムと偏光子層とを貼合するための接着剤としては、例えば、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、変性ポリビニルアルコール系接着剤、ポリオレフィン系接着剤、変性ポリオレフィン系接着剤、ポリビニルアルキルエーテル系接着剤、ゴム系接着剤、塩化ビニル-酢酸ビニル系接着剤、SEBS(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体)系接着剤、エチレン-スチレン共重合体などのエチレン系接着剤、エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エチル共重合体などのアクリル酸エステル系接着剤などが挙げられる。接着剤としては、当該接着剤の硬化を短時間で行うという観点では、紫外線硬化型の接着剤が好ましいが、接着層をより薄くするという観点ではポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール系の水系接着剤であってもよい。
【0098】
偏光子層と第一積層体が備える樹脂フィルムとの具体的な貼り合わせ方法は、特に制限は無い。例えば、長尺の樹脂フィルム及び長尺の偏光子層を、ピンチローラー等の貼合具を用いて貼合してもよい。
【0099】
樹脂フィルムには溶媒が含まれるが、溶媒の含有率が上述した特定の範囲にあるので、その樹脂フィルムは容易に破断しない程度の機械的強度を有することができる。したがって、工程(4)における樹脂フィルムと偏光子層との貼り合わせ時に、当該貼り合わせのための応力が樹脂フィルムに加わっても、樹脂フィルムの破断を抑制できる。したがって、樹脂フィルムと偏光子層との貼り合わせを、樹脂フィルムの破断を抑制しながら行うことができる。
【0100】
(工程(5))
工程(5)では、前記第一積層体の前記基材フィルムを剥離する。通常、基材フィルムの剥離は、連続的に行われる。基材フィルムを積層体から剥離することにより、偏光子層と、樹脂フィルムとを備える、偏光フィルムを得ることができる。
【0101】
一例において、前記の工程(4)及び工程(5)は、下記のように行ってもよい。偏光子層の両側に、第一積層体の樹脂フィルムを貼り合わせて、第一積層体、偏光子層、及び第一積層体をこの順に備えるフィルムを得る(工程(4))。その後、偏光子層の両側の第一積層体が備える基材フィルムを剥離する(工程(5))。この例に係る方法によれば、樹脂フィルム、偏光子層、及び樹脂フィルムを、この順に備える偏光フィルムを得ることができる。
【0102】
また、偏光フィルムは、前記のように第一積層体、偏光子層、及び第一積層体をこの順に備えるフィルムとして製造し、当該フィルムとして保存及び運搬してもよい。このフィルムは、基材フィルム、樹脂フィルム、偏光子層、樹脂フィルム、及び基材フィルムをこの順に備えるので、樹脂フィルム及び偏光子層を基材フィルムによって保護できる。また、この場合、使用の直前に基材フィルムを剥離して複層フィルムを得て、その複層フィルムを表示装置への取り付け等の用途に用いうる。
【実施例0103】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0104】
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り、重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温(23℃)及び常圧(1atm)の条件において行った。
【0105】
<評価方法>
(厚みの測定方法)
フィルム又は層の厚みを、フィルメトリックス株式会社製 膜厚測定システム「F20」により測定した。
【0106】
(算術平均高さSaの測定方法)
転写用積層体から、樹脂フィルムを剥がした。剥がした樹脂フィルムの基材フィルムと接していた面の算術平均高さSaを、表面粗さ測定機(サーフコーダーSE800 株式会社小池研究所製)を用いてISO 25178に準拠し測定した。
【0107】
(樹脂フィルムのヘイズの測定方法)
転写用積層体から、樹脂フィルムを剥がした。剥がした樹脂フィルムの総ヘイズHtot(%)を、ヘイズメーター(NDH7000 日本電色工業社製)を用いて、JIS-K-7361に準拠して測定した。
また、樹脂フィルムの内部ヘイズHin(%)を、下記の方法により測定した。
屈折率を1.53に調整した液体中にフィルムを浸漬した後、ヘイズメーター(NDH7000 日本電色工業社製)を用いて、JIS-K-7361に準拠して測定した。
樹脂フィルムの外部ヘイズHout(%)を、下記の式により算出した。
Hout=Htot-Hin(%)
【0108】
(樹脂フィルムの透過率)
樹脂フィルムの全光線透過率を、ヘイズメーター(NDH 7000 日本電色工業社製)を用いてJIS-K-7361に準拠して測定した。
【0109】
(溶媒の含有率の測定方法)
転写用積層体から、樹脂フィルムを剥がした。剥がした樹脂フィルムを40mm×200mmにカットした後、秤量し、バイアル瓶に投入した。樹脂フィルムを150℃で30分加熱して樹脂フィルム中の溶媒を気化させ、その気化した溶媒の量を、ガスクロマトグラフ質量分析計(島津製作所製「GC-2010 Plus/Trubomatrix 40」;カラムはAgilent techologies製「DB-5ms」)を用いて測定した。具体的な溶媒の量は、予め準備した検量線に基づいて求めた。求めた溶媒の量から、溶媒の含有率を計算した。
【0110】
基材フィルムに含まれる離型層が含有する樹脂(離型剤)中の溶媒の含有率は、下記の方法によって測定した。転写用積層体から、基材フィルムを剥離した。剥離した基材フィルムを0.1g秤量後、トルエン溶液中で離型剤のみを溶解させ、フィルタでろ過、回収し、試料溶液とした。ガスクロマトグラフ質量分析計(島津製作所製「GCMS-QP2020」(カラムはAgilent techologies製「DB-1」))を用いて溶媒の量を測定した。具体的な溶媒の量は、予め準備した検量線に基づいて求めた。求めた溶媒の量から、溶媒の含有率を計算し、離型層に含まれる樹脂(離型剤)中の溶媒の含有率を測定した。
【0111】
(レターデーションの測定方法)
転写用積層体から樹脂フィルムを剥がした。この樹脂フィルムについて、位相差計(AXOMETRICS社製「Axo Scan」)を用いて、測定波長550nmにおける面内レターデーションRe及び厚み方向のレターデーションRthを測定した。
【0112】
(水蒸気透過率の測定方法)
転写用積層体から樹脂フィルムを剥がした。この樹脂フィルムについて、水蒸気透過率測定装置(MOCON社製「PERMATRAN-W」)により、JIS K 7129 B法に従って、温度40℃、湿度90%RHの条件にて、水蒸気透過率を測定した。こうして得られた水蒸気透過率の測定値を、厚み100μm当たりの値に換算して、樹脂フィルムの厚み100μm当たりの水蒸気透過率を得た。具体的には、測定値に「100(μm)/樹脂フィルムの厚み(μm)」を掛け算して、厚み100μm当たりの水蒸気透過率を得た。
【0113】
(光弾性定数の測定)
転写用積層体から樹脂フィルムを剥がした。この樹脂フィルムをカットして、幅1cmのフィルム片を複数用意した。これらのフィルム片に、重さ50g、100g、150g及び200gの分銅を吊り下げ、測定波長550nmで面内レターデーションを測定した。面内レターデーションの測定は、位相差計(AXOMETRICS社製「Axo Scan」)を用いて行った。測定された面内レターデーションを樹脂フィルムの厚みで割り算して、複屈折を求めた。得られた複屈折、及び、その複屈折に対応する分銅によって樹脂フィルムに与えられる単位断面積当たりの力の大きさを、力の大きさを横軸、複屈折を縦軸とする座標系にプロットした。得られたプロットから最小二乗法によって近似直線を得た。この近似直線の傾きとして、樹脂フィルムの光弾性定数を求めた。
【0114】
(評価用偏光フィルムの作製方法)
偏光子層の作製
長尺の原反フィルムとして、厚み20μmの未延伸ポリビニルアルコールフィルム(ビニロンフィルム、平均重合度約2400、ケン化度99.9モル%)を用意した。ガイドロールを介してこのフィルムを長手方向に連続搬送しながら、当該フィルムに対して、30℃で1分間純水に浸漬し2倍に延伸する処理を行った。その後、このフィルムに対して、染色溶液(ヨウ素及びヨウ化カリウムを重量比1:23で含む染色剤溶液、染色剤濃度1.2mmol/L)に32℃で2分間浸漬する染色処理を行い、フィルムにヨウ素を吸着させた。その後、フィルムを35℃で30秒間、ホウ酸3重量%水溶液に浸漬して、架橋及び洗浄を行った。その後、57℃で、フィルムを、ホウ酸3重量%及びヨウ化カリウム5重量%を含む水溶液中で、3.0倍に延伸した。その後、フィルムに対して、35℃で、ヨウ化カリウム5%及びホウ酸1.0%を含む水溶液中で、補色処理を行った。その後、フィルムを70℃で2分間乾燥させて、厚み8μmの長尺の偏光子層を得た。この偏光子層の偏光度を紫外可視分光光度計(日本分光社製「V-7200」)で測定したところ、99.996%であり、十分な偏光能を有していた。
【0115】
偏光フィルムの作製
トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(KC4UY、コニカミノルタ社製)の表面と転写用積層体が備える樹脂フィルムの表面とに、コロナ処理を施した。その後、それぞれのコロナ処理面に、紫外線硬化型の接着剤(ADEKA社製「アークルズKRX-7007」)を塗布して、接着剤の層を形成した。この接着剤の層を介して、偏光子層に、TACフィルムと転写用積層体とをピンチローラーにて貼り合わせた。貼り合わせの直後に、紫外線照射装置を用いて、基材フィルム側から750mJ/cmの紫外線照射を行って、接着剤を硬化させた。その後、基材フィルムを剥離して、基材フィルムから偏光子層への樹脂フィルムの転写を達成し、(TACフィルム)/(偏光子層)/(樹脂フィルム)の層構成を有する、偏光フィルムを得た。
【0116】
(透過表示品位及び薄膜干渉ムラの評価方法)
市販のスマートフォン(iPhone(登録商標) SE 第二世代)を用意し、その視認側の偏光フィルムを取り除き、実施例、比較例で得られた転写用積層体を用いて作製した偏光フィルムを貼り付け、透過表示品位及び薄膜干渉ムラの目視評価を下記の評価基準により行った。
【0117】
透過表示品位の評価基準
「A」:表示ボケが全くない。
「B」:やや表示ボケがあるが、表示性能に支障がない。
「C」:樹脂フィルムの表面が白く視認され表示品位が低下した。
【0118】
薄膜干渉ムラの評価基準
「AA」:暗室内三波長管下の観察でムラが全く見られない。
「A」:暗室内三波長管下の観察でムラがやや視認されるが、一般使用環境(LED照明下の室内環境)では視認されない。
「B」:一般使用環境でムラが視認される。
【0119】
(偏光フィルムの加湿信頼性)
ガラス基板(コーニング社製「イーグルXG」;厚み0.5mm)を用意した。このガラス基板に、光学用粘着シート(日東電工社製「LUCIACS CS9861US」)を介して、実施例、比較例で得られた転写用積層体を用いて作製した偏光フィルムを貼り付け、TAC/偏光子/樹脂フィルム/粘着層/ガラス基板の層構成を有するサンプルを得た。分光光度計(日本分光社製「V-7200」)を用いて、60℃95%RHに120時間静置した後の偏光度を測定した。下記基準により、偏光フィルムの加湿信頼性を評価した。偏光度が高いほど、偏光フィルムの加湿信頼性が高い。
「A」:偏光度99.90%以上であり、劣化が見られない。
「B」:偏光度99.50%以上99.90%未満であり、わずかな劣化があるが表示装置に組み込んだ場合に表示性能に支障がない。
「C」:偏光度99.50%未満であり、表示装置に組み込んだ場合に表示に支障がある。
【0120】
<実施例1>
ノルボルネン系重合体(日本ゼオン社製「ZEONOR」;ガラス転移温度138℃)、及び、溶媒としてシクロヘキサンを混合して、樹脂液として、ノルボルネン系重合体の濃度15重量%の樹脂溶液を得た。
【0121】
基材フィルムとして、ポリオレフィン系樹脂を含む離型層を備える長尺のポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ社製「ユニピール高平滑グレード1」、算術平均高さSa=5nm)を用意した。この基材フィルムの離型層の面上に、前記の樹脂溶液を塗布して、樹脂溶液の層を形成した。その後、樹脂溶液の層を、120℃で2分間の乾燥条件で乾燥して、基材フィルム上に厚み3μmの樹脂フィルムを形成した。以上の操作により、基材フィルムと、この基材フィルム上に形成された樹脂フィルムとを備える転写用積層体(第一積層体)を得た。
【0122】
得られた転写用積層体を用いて、上述した方法により、算術平均高さSa、樹脂フィルムの溶媒の含有率、ヘイズ、透過率、面内レターデーション、厚み方向のレターデーション、水蒸気透過率、光弾性定数、及び離型層の残溶媒量を評価した。また、得られた転写用積層体を用いて、上述した方法により偏光フィルムを作製して、透過表示品位、薄膜干渉ムラ、及び加湿信頼性を、評価した。
【0123】
<実施例2>
基材フィルムとして、ポリオレフィン系樹脂を含む離型層を備える長尺のポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ社製「ユニピール高平滑グレード2」、算術平均高さSa=6nm)を用意した。樹脂フィルムの厚みが表に示す厚みとなるように、樹脂溶液の層の塗布条件を調整した。
以上の事項以外は、実施例1同様の操作を行い厚み4μmの樹脂フィルムを形成し、基材フィルムと、この基材フィルム上に形成された樹脂フィルムとを備える転写用積層体(第一積層体)を得て、実施例1と同様にして評価した。
【0124】
<実施例3>
基材フィルムとして、ポリオレフィン系樹脂を含む離型層を備える長尺のポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ社製「ユニピール高平滑グレード3」、算術平均高さSa=27nm)を用意した。樹脂フィルムの厚みが表に示す厚みとなるように、樹脂溶液の層の塗布条件を調整した。
以上の事項以外は、実施例1同様の操作を行い厚み2μmの樹脂フィルムを形成し、基材フィルムと、この基材フィルム上に形成された樹脂フィルムとを備える転写用積層体(第一積層体)を得て、実施例1と同様にして評価した。
【0125】
<実施例4>
基材フィルムとして、ポリオレフィン系樹脂を含む離型層を備える長尺のポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ社製「ユニピール高平滑グレード4」、算術平均高さSa=23nm)を用意した。樹脂フィルムの厚みが表に示す厚みとなるように、樹脂溶液の層の塗布条件を調整した。
以上の事項以外は、実施例1同様の操作を行い厚み3μmの樹脂フィルムを形成し、基材フィルムと、この基材フィルム上に形成された樹脂フィルムとを備える転写用積層体(第一積層体)を得て、実施例1と同様にして評価した。
【0126】
<実施例5>
基材フィルムとして、ポリオレフィン系樹脂を含む離型層を備える長尺のポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ社製「ユニピール高平滑グレード1」、算術平均高さSa=5nm)を用意した。ポリメチルメタクリレート樹脂(住友化学社製 スミペックスT55Z)を準備し塩化メチレンと混合して、樹脂液としてポリメチルメタクリレート樹脂の濃度15重量%の樹脂溶液を得た。これを基材フィルム上に塗布して樹脂溶液の層を形成した。その後、樹脂溶液の層を、120℃で2分間の乾燥条件で乾燥して、基材フィルム上に厚み3μmの樹脂フィルムを形成した。以上の操作により、基材フィルムと、この基材フィルム上に形成された樹脂フィルムとを備える転写用積層体(第一積層体)を得て、実施例1と同様にして評価した。
【0127】
<実施例6>
基材フィルムとして、ポリオレフィン系樹脂を含む離型層を備える長尺のポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ社製「ユニピール高平滑グレード1」、算術平均高さSa=5nm)を用意した。トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(KC4UY、コニカミノルタ社製)を粉砕し、塩化メチレンと混合して、樹脂液としてTAC樹脂の濃度15重量%の樹脂溶液を得た。これを基材フィルム上に塗布して樹脂溶液の層を形成した。その後、樹脂溶液の層を、120℃で2分間の乾燥条件で乾燥して、基材フィルム上に厚み3μmの樹脂フィルムを形成した。以上の操作により、基材フィルムと、この基材フィルム上に形成された樹脂フィルムとを備える転写用積層体(第一積層体)を得て、実施例1と同様にして評価した。
【0128】
<比較例1>
基材フィルムとして、ポリオレフィン系樹脂を含む離型層を備える長尺のポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ社製「ユニピール高平滑グレード5」、算術平均高さSa=4nm)を用意した。実施例1同様の操作を行い厚み3μmの樹脂フィルムを形成し、基材フィルムと、この基材フィルム上に形成された樹脂フィルムとを備える転写用積層体(第一積層体)を得て、実施例1と同様にして評価した。
【0129】
<比較例2>
基材フィルムとして、ポリオレフィン系樹脂を含む離型層を備える長尺のポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ社製「ユニピール高平滑グレード6」、算術平均高さSa=29nm)を用意した。実施例1同様の操作を行い厚み3μmの樹脂フィルムを形成し、基材フィルムと、この基材フィルム上に形成された樹脂フィルムとを備える転写用積層体(第一積層体)を得て、実施例1と同様にして評価した。
【0130】
<比較例3>
基材フィルムとして、ポリオレフィン系樹脂を含む離型層を備える長尺のポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ社製「ユニピール一般グレード TR-1」、算術平均高さSa=58nm)を用意した。実施例1同様の操作を行い厚み3μmの樹脂フィルムを形成し、基材フィルムと、この基材フィルム上に形成された樹脂フィルムとを備える転写用積層体(第一積層体)を得て、実施例1と同様にして評価した。
【0131】
<結果>
結果を以下の表に示す。
表における略号は、以下の意味を表す。
「COP」:ノルボルネン系重合体(日本ゼオン社製「ZEONOR」)
「PMMA」:ポリメチルメタクリレート樹脂(住友化学社製「スミペックスT55Z」)
「TAC」:トリアセチルセルロース(コニカミノルタ社製「KC4UY」)
【0132】
【表1】
【0133】
【表2】
【0134】
以上の結果より、実施例に係る樹脂フィルムを備えた偏光フィルムは、透過表示品位及び薄膜干渉ムラの評価のいずれも優れていることがわかる。
一方、比較例に係る樹脂フィルムを備えた偏光フィルムは、透過表示品位及び薄膜干渉ムラのいずれかが実施例と比較して劣ることがわかる。
また、実施例1~4に係る、脂環式構造を含有する重合体を含む樹脂フィルムを備えた偏光フィルムは、加湿信頼性に優れていることがわかる。