(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093821
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】積層鉄心及び積層鉄心の製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 1/12 20060101AFI20240702BHJP
H02K 1/18 20060101ALI20240702BHJP
H02K 15/02 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
H02K1/12 A
H02K1/18 C
H02K15/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210405
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142022
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196623
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 計介
(72)【発明者】
【氏名】本田 武
(72)【発明者】
【氏名】桂田 仁司
(72)【発明者】
【氏名】永野 義人
【テーマコード(参考)】
5H601
5H615
【Fターム(参考)】
5H601AA09
5H601EE19
5H601EE20
5H601GA02
5H601GA37
5H601GA38
5H601GA40
5H601GB05
5H601GB12
5H601GB33
5H601GC02
5H601GC12
5H601GC22
5H601GC32
5H601GD02
5H601GD08
5H601GD12
5H601GD14
5H601GD23
5H601GD33
5H601KK02
5H601KK21
5H615AA01
5H615BB14
5H615PP06
5H615SS03
5H615SS04
5H615SS05
5H615SS18
(57)【要約】 (修正有)
【課題】バックヨーク部が、隣り合うティース部の間に径方向に延びる切れ目を有する積層鉄心において、寸法精度の低下を抑制可能な構成を提供する。
【解決手段】積層鉄心1は、周方向に延びる板状のバックヨーク部と、複数のティース部4とが、それぞれ厚み方向に積層されて軸線に沿って延びる筒状の積層鉄心1である。前記バックヨーク部は、周方向に隣り合うティース部4の間に、内周側の端面から径方向に延びる切れ目5a、5bを有する。積層方向に隣り合うバックヨーク部の一方を第1バックヨーク部3a、他方を第2バックヨーク部3bとした場合、第1バックヨーク部3aにおける切れ目5a、5bは、第2バックヨーク部3bにおける切れ目5a、5bに対して、少なくとも一部が、前記バックヨーク部を積層方向から見て重ならない位置に位置している。第1バックヨーク部3aは、第2バックヨーク部3bと、少なくとも一部で接着されている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に延びる板状のバックヨーク部と、前記バックヨーク部から径方向内方に突出する板状の複数のティース部とが、それぞれ厚み方向に積層されて軸線に沿って延びる筒状の積層鉄心であって、
前記バックヨーク部は、
周方向に隣り合うティース部の間に、内周側の端面から径方向に延びる切れ目を有し、
積層方向に隣り合うバックヨーク部の一方を第1バックヨーク部、他方を第2バックヨーク部とした場合、
前記第1バックヨーク部における前記切れ目は、前記第2バックヨーク部における前記切れ目に対して、少なくとも一部が、前記バックヨーク部を積層方向から見て重ならない位置に位置し、
前記第1バックヨーク部は、
前記第2バックヨーク部と、少なくとも一部で接着されている、
積層鉄心。
【請求項2】
請求項1に記載の積層鉄心において、
前記バックヨーク部は、
前記切れ目に対して周方向の一側に位置する周方向一側切離部と、
前記切れ目に対して周方向の他側に位置して、前記周方向一側切離部と周方向に接触する周方向他側切離部と、
を有し、
前記第1バックヨーク部における前記周方向一側切離部は、前記第2バックヨーク部における前記周方向他側切離部に対して、前記バックヨーク部を積層方向から見て重なる位置に位置し、
前記第1バックヨーク部の前記周方向一側切離部は、前記第2バックヨーク部の前記周方向他側切離部に接着されている、
積層鉄心。
【請求項3】
請求項2に記載の積層鉄心において、
前記第1バックヨーク部における前記周方向一側切離部は、周方向他側に突出する第1凸部を含み、
前記第2バックヨーク部における前記周方向他側切離部は、周方向一側に突出する第2凸部を含み、
前記第1バックヨーク部における前記第1凸部は、前記第2バックヨーク部における前記第2凸部に対して、前記バックヨーク部を積層方向から見て重なる位置に位置し、
前記第1バックヨーク部の前記第1凸部は、前記第2バックヨーク部の前記第2凸部に接着されている、
積層鉄心。
【請求項4】
請求項3に記載の積層鉄心において、
前記第1バックヨーク部における前記周方向他側切離部は、
前記第1凸部が位置付けられる第1凹部を含み、
前記第2バックヨーク部における前記周方向一側切離部は、
前記第2凸部が位置付けられる第2凹部を含む、
積層鉄心。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一つに記載の積層鉄心において、
前記バックヨーク部は、
軸線を中心として螺旋状に延びていて、積層方向に積層されている、
積層鉄心。
【請求項6】
請求項5に記載の積層鉄心において、
前記バックヨーク部は、
軸線を中心として螺旋状に延びていて、積層方向に積層されている第1バックヨーク部と、
軸線を中心として螺旋状に延びていて、積層方向に積層されている前記第1バックヨーク部の積層方向の間に積層される第2バックヨーク部と、を含み、
前記第1バックヨーク部は、
前記切れ目に対して周方向の一側に位置する周方向一側切離部と、
前記切れ目に対して周方向の他側に位置して、前記周方向一側切離部と周方向に接触する周方向他側切離部と、
を有し、
前記第2バックヨーク部は、
前記切れ目に対して周方向の一側に位置する周方向一側切離部と、
前記切れ目に対して周方向の他側に位置して、前記周方向一側切離部と周方向に接触する周方向他側切離部と、
を有し、
前記第1バックヨーク部における前記周方向一側切離部は、周方向他側に突出する第1凸部を含み、前記第1バックヨーク部における前記周方向他側切離部は、前記第1凸部が位置付けられる第1凹部を含み、
前記第2バックヨーク部における前記周方向他側切離部は、周方向一側に突出する第2凸部を含み、前記第2バックヨーク部における前記周方向一側切離部は、前記第2凸部が位置付けられる第2凹部を含み、
前記第1バックヨーク部における前記第1凸部は、前記第2バックヨーク部における前記第2凸部に対して、前記バックヨーク部を積層方向から見て重なる位置に位置し、
前記第1バックヨーク部の前記第1凸部は、前記第2バックヨーク部の前記第2凸部に接着されている、
積層鉄心。
【請求項7】
請求項5に記載の積層鉄心において、
積層方向に隣り合うバックヨーク部のうち一方のバックヨーク部における前記切れ目の径方向内側の端部は、積層方向に隣り合うバックヨーク部のうち他方のバックヨーク部における前記切れ目の径方向内側の端部と前記積層方向から見て重なる位置に位置し、
前記一方のバックヨーク部における前記切れ目の径方向外側の端部は、前記他方のバックヨーク部における前記切れ目の径方向外側の端部と前記積層方向から見て重なる位置に位置する、
積層鉄心。
【請求項8】
請求項7に記載の積層鉄心において、
前記バックヨーク部は、
前記バックヨーク部の外周側の端面のうち、前記切れ目の径方向外側の端部に対して径方向外方の位置に、内周側に凹む外周側凹部を有する、
積層鉄心。
【請求項9】
板状のバックヨーク部及び複数の板状のティース部がそれぞれ厚み方向に積層された積層鉄心の製造方法であって、
鋼板を打ち抜いて、第1方向に延びるバックヨーク形成部と、前記鋼板を厚み方向から見て、前記バックヨーク形成部から前記第1方向と交差する第2方向の一側に向かって延びる前記複数のティース部と、前記バックヨーク形成部における前記第1方向に隣り合うティース部の間に、前記第2方向の他側に向かって延びるスリットと、を形成する打ち抜き工程と、
前記打ち抜き工程で形成された前記バックヨーク形成部を厚み方向から見て、前記スリットの隙間を潰して前記バックヨーク形成部を円弧状に曲げることにより、前記バックヨーク部を形成するバックヨーク曲げ工程と、
前記バックヨーク曲げ工程によって円弧状に曲げられた前記バックヨーク部を積層方向に重ねた状態で接着する積層工程と、
を有し、
前記打ち抜き工程では、前記スリットを、積層方向に隣り合う前記バックヨーク部の一方と他方とで異なる位置に形成する、
積層鉄心の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の積層鉄心の製造方法において、
前記スリットは、
前記第1方向の他側に向かって突出する第1凸部を含む第1のスリットと、
前記第1方向の一側に向かって突出する第2凸部を含む第2のスリットと、を含み、
前記打ち抜き工程では、
積層方向に隣り合う前記バックヨーク部の一方に前記第1のスリットを形成し、積層方向に隣り合う前記バックヨーク部の他方に前記第2のスリットを形成し、
前記バックヨーク曲げ工程によって円弧状に曲げられた前記バックヨーク部を積層方向に重ねた状態で、前記積層方向に隣り合う前記バックヨーク部の一方の前記第1のスリットの前記第1凸部と、前記積層方向に隣り合う前記バックヨーク部の他方の前記第2のスリットの前記第2凸部とを、接着する、
積層鉄心の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の積層鉄心の製造方法において、
前記打ち抜き工程は、
鋼板を打ち抜いて、第1の前記バックヨーク形成部と、第1の前記複数のティース部と、前記第1のスリットと、を形成する第1打ち抜き工程と、
鋼板を打ち抜いて、第2の前記バックヨーク形成部と、第2の前記複数のティース部と、前記第2のスリットと、を形成する第2打ち抜き工程と、
を含み、
前記バックヨーク曲げ工程は、
前記第1打ち抜き工程で形成された第1の前記バックヨーク形成部を厚み方向から見て、前記第1のスリットの隙間を潰して第1の前記バックヨーク形成部を円弧状に曲げることにより、第1の前記バックヨーク部を形成する第1バックヨーク曲げ工程と、
前記第2打ち抜き工程で形成された第2の前記バックヨーク形成部を厚み方向から見て、前記第2のスリットの隙間を潰して第2の前記バックヨーク形成部を円弧状に曲げることにより、第2の前記バックヨーク部を形成する第2バックヨーク曲げ工程と、
を含み、
前記積層工程では、
前記第1バックヨーク曲げ工程によって円弧状に曲げられた第1の前記バックヨーク部と、前記第2バックヨーク曲げ工程によって円弧状に曲げられた第2の前記バックヨーク部とを交互に積層方向に重ねて接着する、
積層鉄心の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層鉄心及び積層鉄心の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一方向に延びる帯状の鉄心片を折り曲げることにより円環状に形成したバックヨーク部が積層された積層鉄心が知られている。例えば、特許文献1には、ストレートコアから構成されるモータの固定子コアにおいて、前記ストレートコアは、バックヨークにおける隣接するティースの間にあって、かつ、前記ティースが突出している側に設けられた略V字状の切り込み部を備えた複数枚の抜き板を積層して構成され、前記各切り込み部で折り曲げて円弧状またはリング状に前記ストレートコアを形成した固定子コアが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1のバックヨーク部は、V字状の切り込み部の隙間を潰して、外周側を円弧状に塑性変形させることによって得られる。塑性変形によって円弧状に曲げられた前記バックヨーク部には、変形した部分が変形前の状態に戻ろうとするスプリングバックが生じる場合がある。その結果、前記切り込み部が開いて、積層鉄心の寸法精度が低下する可能性がある。そこで、バックヨーク部が隙間を潰した切れ目を有する積層鉄心において、寸法精度の低下を抑制可能な構成が求められている。
【0005】
本発明の目的は、周方向に延びるバックヨーク部が、隣り合うティース部の間に径方向に延びる切れ目を有する積層鉄心において、寸法精度の低下を抑制可能な構成を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る積層鉄心は、周方向に延びる板状のバックヨーク部と、前記バックヨーク部から径方向内方に突出する板状の複数のティース部とが、それぞれ厚み方向に積層されて軸線に沿って延びる筒状の積層鉄心である。前記バックヨーク部は、周方向に隣り合うティース部の間に、内周側の端面から径方向に延びる切れ目を有する。積層方向に隣り合うバックヨーク部の一方を第1バックヨーク部、他方を第2バックヨーク部とした場合、前記第1バックヨーク部における前記切れ目は、前記第2バックヨーク部における前記切れ目に対して、少なくとも一部が、前記バックヨーク部を積層方向から見て重ならない位置に位置する。前記第1バックヨーク部は、前記第2バックヨーク部と、少なくとも一部で接着されている。
【0007】
本発明の一実施形態に係る積層鉄心の製造方法は、板状のバックヨーク部及び複数の板状のティース部がそれぞれ厚み方向に積層された積層鉄心の製造方法である。前記積層鉄心の製造方法は、鋼板を打ち抜いて、第1方向に延びるバックヨーク形成部と、前記鋼板を厚み方向から見て、前記バックヨーク形成部から前記第1方向と交差する第2方向の一側に向かって延びる前記複数のティース部と、前記バックヨーク形成部における前記第1方向に隣り合うティース部の間に、前記第2方向の他側に向かって延びるスリットと、を形成する打ち抜き工程と、前記打ち抜き工程で形成された前記バックヨーク形成部を厚み方向から見て、前記スリットの隙間を潰して前記バックヨーク形成部を円弧状に曲げることにより、前記バックヨーク部を形成するバックヨーク曲げ工程と、前記バックヨーク曲げ工程によって円弧状に曲げられた前記バックヨーク部を積層方向に重ねた状態で接着する積層工程と、を有する。前記打ち抜き工程では、前記スリットを、積層方向に隣り合う前記バックヨーク部の一方と他方とで異なる位置に形成する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、周方向に延びるバックヨーク部が、隣り合うティース部の間に、径方向に延びる切れ目を有する積層鉄心において、寸法精度の低下を抑制可能な構成を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る積層鉄心の概略構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、積層鉄心の概略構成を示す平面図である。
【
図3】
図3は、積層鉄心に積層されている鉄心片の概略構成を示す平面図である。
【
図6】
図6は、積層方向に隣り合うバックヨーク部における切れ目の位置関係を説明する図である。
【
図7】
図7は、積層方向に隣り合うバックヨーク部が接着される位置の一例を説明する図である。
【
図8】
図8は、積層方向に隣り合うバックヨーク部が接着される位置の一例を説明する図である。
【
図9】
図9は、実施形態1に係る積層鉄心の製造方法を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、鋼板から打ち抜かれたバックヨーク形成部及び複数のティースの平面図である。
【
図12】
図12は、鋼板から打ち抜かれたバックヨーク形成部を曲げる方法を説明する図である。
【
図13】
図13は、実施形態2に係る積層鉄心の概略構成を示す部分平面図である。
【
図14】
図14は、積層鉄心に積層されている鉄心片の概略構成を示す部分平面図である。
【
図16】
図16は、実施形態3に係る積層鉄心の概略構成を説明する図である。
【
図17】
図17は、スリットの配置の一例を説明する図である。
【
図18】
図18は、スリットの配置の他の例を説明する図である。
【
図19】
図19は、実施形態4に係る積層鉄心の概略構成を説明する図である。
【
図20】
図20は、実施形態4に係る積層鉄心の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照し、本発明の例示的な実施の形態を詳しく説明する。なお、図中の同一または相当部分については同一の符号を付してその説明は繰り返さない。また、各図中の構成部材の寸法は、実際の構成部材の寸法及び各構成部材の寸法比率等を忠実に表しているわけではない。
【0011】
なお、以下の説明では、積層鉄心の中心軸Pと平行な方向を軸線方向、中心軸Pに直交する方向を径方向、中心軸Pを中心とする円弧に沿う方向を周方向、とそれぞれ称する。
【0012】
また、以下の説明では、板状の部材において、板厚の方向を、前記部材の厚み方向と称する。「部材を厚み方向から見て」とは、厚み方向と視線の方向とが一致していることを意味する。例えば、「鋼板80を厚み方向から見て」とは、鋼板80に対して厚み方向に離れた位置から鋼板80の面を見ることを意味する。
【0013】
また、以下の説明において、“固定”、“接続”及び“取り付ける”等の表現は、部材同士が直接、固定等されている場合だけでなく、他の部材を介して固定等されている場合も含む。すなわち、以下の説明において、固定等の表現には、部材同士の直接的及び間接的な固定等の意味が含まれる。
【0014】
(実施形態1)
(積層鉄心の構成)
図1から
図12を参照して、本発明の例示的な実施形態1に係る積層鉄心1について説明する。
図1に示すように、積層鉄心1は、中心軸Pに沿って延びる筒状である。本実施形態では、積層鉄心1は、複数の板状の鉄心片2が厚み方向に積層されている。
【0015】
図1に示すように、鉄心片2は、積層鉄心1の周方向に延びるバックヨーク部3と、バックヨーク部3から積層鉄心1の径方向内方に突出する複数のティース部4とを有する。鉄心片2は、鉄心片2の材料である板状の鋼板80を打ち抜いて、1方向に延びる板状の鉄心片形成部82を形成し、鉄心片形成部82を厚み方向から見て円環状に曲げることにより形成されている。積層鉄心1の製造方法の詳細は、後述する。
【0016】
図2に示すように、積層鉄心1を軸線方向から見て、バックヨーク部3は、円環状である。バックヨーク部3は、外周側の端面31と、内周側の端面32と、厚み方向の一方の面である第1面33と、厚み方向の他方の面である第2面34とを有する。なお、本明細書では、積層鉄心1を製造する際に、先に積層された鉄心片2において、該鉄心片2に対して次の鉄心片2が積層される側の面を第1面33とする。積層鉄心1の中心軸Pを上下方向とする各図において、上側の面が第1面33である。なお、これにより、積層鉄心1の積層方向を定義する意図はない。
【0017】
積層鉄心1は、複数の鉄心片2が積層されている。すなわち、積層鉄心1は、バックヨーク部3と、ティース部4とがそれぞれ厚み方向に積層されている。
【0018】
図3は、
図2に示す鉄心片2の第2面34側に積層された鉄心片2bの平面図である。
図2に示す鉄心片2と、
図3に示す鉄心片2bとは、積層方向に隣り合っている。なお、
図3に示す鉄心片2bの第2面34側には、
図2に示す鉄心片2が積層されている。このように、本実施形態では、
図6に示すように、
図2に示す鉄心片2と、
図3に示す鉄心片2bとが交互に積層されている。
【0019】
バックヨーク部3は、切れ目5を有する。
図2から
図4に示すように、切れ目5は、バックヨーク部3の内周側の端面32から積層鉄心1の径方向に延びている。切れ目5は、周方向に隣り合うティース部4の間に位置する。
【0020】
切れ目5は、バックヨーク部3における切れ目5を挟んで周方向の一側の部分と周方向の他側の部分とを切り離している。本実施形態では、切れ目5に対して周方向の一側に位置する周方向一側切離部35と、切れ目5に対して周方向の他側に位置する周方向他側切離部36とは、周方向に接触している。
【0021】
積層方向から見て、積層方向に隣り合う鉄心片2のバックヨーク部3のうち一方のバックヨーク部3における切れ目5の形状と、他方のバックヨーク部3における切れ目5の形状とは、異なっている。すなわち、積層鉄心1において積層方向に隣り合う鉄心片2のバックヨーク部3のうち一方のバックヨーク部3における切れ目5の位置は、他方のバックヨーク部3における切れ目5に対して、少なくとも一部が、積層方向から見て重ならない。
【0022】
各バックヨーク部3は、積層方向に隣り合うバックヨーク部3と、接着剤によって接着されている。前記接着剤は、金属同士を接着可能な接着剤である。前記接着剤は、例えば、嫌気性接着剤などである。
【0023】
このように、積層鉄心1では、積層方向に隣り合うバックヨーク部3同士は、接着剤によって接着されている。これにより、積層された状態で、積層方向に隣り合う一方のバックヨーク部3が他方のバックヨーク部3に対して移動することを抑制することができる。
【0024】
(切れ目の構成例)
次に、
図4から
図6を参照して、一例としての切れ目5の構成について説明する。以下では、説明のため、積層方向に隣り合うバックヨーク部3の一方を第1バックヨーク部3aと称し、他方を第2バックヨーク部3bと称する。また、バックヨーク部3の各構成要素について、第1バックヨーク部3aの構成要素には、符号aを付し、第2バックヨーク部3bの構成要素には、符号bを付して区別する。
【0025】
図5に示すように、第1バックヨーク部3aの切れ目5aは、径方向内側の端部51aと、径方向外側の端部52aと、径方向内側の端部51a及び径方向外側の端部52aの間の中間部53aとを含む。第2バックヨーク部3bの切れ目5bは、径方向内側の端部51bと、径方向外側の端部52bと、径方向内側の端部51b及び径方向外側の端部52bの間の中間部53bとを含む。
【0026】
第1バックヨーク部3aにおける切れ目5aの径方向内側の端部51aは、周方向に隣り合うティース部4の中間地点に位置している。径方向外側の端部52aは、径方向内側の端部51aの径方向外方に位置している。すなわち、径方向内側の端部51a及び径方向外側の端部52aは、積層鉄心1の中心軸Pと、周方向に隣り合うティース部4の中間地点を結んで、積層鉄心1の径方向に延びる径方向線上に位置している。
【0027】
図5に示すように第2バックヨーク部3bにおける切れ目5bの径方向内側の端部51bは、周方向に隣り合うティース部4の中間地点に位置している。よって、第2バックヨーク部3bにおける切れ目5bの径方向内側の端部51bは、第1バックヨーク部3aにおける切れ目5aの径方向内側の端部51aと、積層方向から見て重なっている。
【0028】
第2バックヨーク部3bにおける切れ目5bの径方向外側の端部52bは、径方向内側の端部51bの径方向外方に位置している。よって、第2バックヨーク部3bにおける切れ目5bの径方向外側の端部52bは、第1バックヨーク部3aにおける切れ目5aの径方向外側の端部52aと、積層方向から見て重なっている。
【0029】
すなわち、一例としての切れ目5を有する積層鉄心1では、積層方向に隣り合うバックヨーク部3のうち一方のバックヨーク部3における切れ目5の径方向内側の端部51は、積層方向に隣り合うバックヨーク部3のうち他方のバックヨーク部3における切れ目5の径方向内側の端部51と積層方向から見て重なる位置に位置している。一方のバックヨーク部3における切れ目5の径方向外側の端部52は、他方のバックヨーク部3における切れ目5の径方向外側の端部52と積層方向から見て重なる位置に位置している。
【0030】
よって、バックヨーク部3が円弧状に曲げられて形成された積層鉄心1において、積層方向に隣り合うバックヨーク部3の一方の第1バックヨーク部3aと他方の第2バックヨーク部3bとで内周側の形状と、外周側の形状とを容易に揃えることができる。これにより、バックヨーク部3が円弧状に曲げられて形成された積層鉄心1において、寸法精度が低下することを抑制することができる。
【0031】
図5及び
図6に示すように、積層方向から見て、第1バックヨーク部3aにおける切れ目5aの中間部53aは、径方向内側の端部51a及び径方向外側の端部52aの周方向位置に対して周方向の他側に突出している。すなわち、第1バックヨーク部3aにおける周方向一側切離部35aは、周方向の他側に突出する第1凸部を含む。
【0032】
第2バックヨーク部3bにおける切れ目5bの中間部53bは、径方向内側の端部51b及び径方向外側の端部52bの周方向位置に対して周方向の一側に突出している。すなわち、第2バックヨーク部3bの周方向他側切離部36bは、周方向の一側に突出する第2凸部を含む。
【0033】
第1バックヨーク部3aにおける第1凸部は、第2バックヨーク部3bにおける第2凸部に対して、バックヨーク部3を積層方向から見て重なっている。
【0034】
第1バックヨーク部3aにおける周方向他側切離部36aは、第1凸部が位置付けられる第1凹部を含む。第2バックヨーク部3bにおける周方向一側切離部35bは、第2凸部が位置付けられる第2凹部を含む。
【0035】
これにより、第1バックヨーク部3aにおいて、周方向一側切離部35aが周方向他側切離部36aに対して、径方向に移動することを抑制することができる。第2バックヨーク部3bにおいて、周方向一側切離部35bが周方向他側切離部36bに対して、径方向に移動することを抑制することができる。これにより、積層鉄心1の寸法精度が低下することを防止することができる。
【0036】
上述したように、積層鉄心1では、積層方向から見て、積層方向に隣り合う第1バックヨーク部3aと第2バックヨーク部3bとで切れ目5の位置が、異なる。すなわち、積層鉄心1では、積層方向に隣り合う第1バックヨーク部3a及び第2バックヨーク部3bの一方のバックヨーク部3において、切れ目5によって切り離された部分に跨って、他方のバックヨーク部3が積層方向に重なった状態で、周方向に延びている。この構成では、一方のバックヨーク部3における切れ目5の両側の部分である周方向一側切離部35と周方向他側切離部36とが離れる方向に移動しようとした場合、一方のバックヨーク部3の厚み方向の面と、他方のバックヨーク部3の厚み方向の面とに摩擦が生じる。よって、他方のバックヨーク部3の切れ目5を挟んだ両側の部分が離れることを抑制することができる。
【0037】
以上説明したように、本発明の例示的な実施形態に係る積層鉄心1は、周方向に延びる板状のバックヨーク部3と、バックヨーク部3から径方向内方に突出する板状の複数のティース部4とが、それぞれ厚み方向に積層されて軸線に沿って延びる筒状の積層鉄心1である。積層鉄心1のバックヨーク部3は、周方向に隣り合うティース部4の間に、内周側の端面32から径方向に延びる切れ目5を有する。積層方向に隣り合うバックヨーク部3の一方を第1バックヨーク部3a、他方を第2バックヨーク部3bとした場合、第1バックヨーク部3aにおける切れ目5aは、第2バックヨーク部3bにおける切れ目5bに対して、少なくとも一部が、バックヨーク部3を積層方向から見て重ならない位置に位置している。第1バックヨーク部3aは、第2バックヨーク部3bと、少なくとも一部で接着されている。
【0038】
周方向に延びるバックヨーク部3が径方向に延びる切れ目5を有する積層鉄心1では、バックヨーク部3において切れ目5を挟んで周方向の一側の部分と他側の部分とが離れて、積層鉄心1の寸法精度が低下する可能性がある。上述の積層鉄心1では、積層方向から見て、積層方向に隣り合う第1バックヨーク部3aと第2バックヨーク部3bとで切れ目5の位置が異なる。すなわち、積層鉄心1では、積層方向に隣り合う第1バックヨーク部3a及び第2バックヨーク部3bの一方における切れ目5を挟んで一側の部分と他側の部分とに跨って、他方のバックヨーク部3が周方向に延びている。
【0039】
この構成では、一方のバックヨーク部3において切れ目5を挟んで一側と他側とが離れる方向に移動しようとした場合、一方のバックヨーク部3の厚み方向の面と、他方のバックヨーク部の厚み方向の面とに摩擦が生じる。よって、他方のバックヨーク部3の切れ目5を挟んだ両側の部分が離れることを抑制することができる。
【0040】
また、上述の構成では、積層方向に隣り合うバックヨーク部3同士は接着されている。これにより、一方のバックヨーク部3が他方のバックヨーク部3に対して移動することをより確実に抑制することができる。したがって、積層鉄心1の寸法精度が低下することが抑制された積層鉄心1を提供することができる。
【0041】
なお、積層鉄心1では、第1バックヨーク部3aの周方向一側切離部35aと、該周方向一側切離部35aと積層方向に重なっている第2バックヨーク部3bの周方向他側切離部36bとを、接着することが好ましい。
【0042】
図7及び
図8に示すように、第2バックヨーク部3bは、周方向の他側に位置する周方向他側切離部36bにおける第1面33上に、接着部37を有する。第1バックヨーク部3aは、周方向の一側に位置する周方向一側切離部35aにおける第2面34上に、被接着部38を有する。なお、接着部37は、積層鉄心1を製造する際に、接着剤が塗布される部分である。被接着部38は、接着部37に塗布された接着剤によって、接着部37に接着される部分である。
【0043】
すなわち、積層鉄心1においてバックヨーク部3は、切れ目5に対して周方向の一側に位置する周方向一側切離部35と、切れ目5に対して周方向の他側に位置して、周方向一側切離部35と周方向に接触する周方向他側切離部36と、を有する。第1バックヨーク部3aにおける周方向一側切離部35aは、第2バックヨーク部3bにおける周方向他側切離部36bに対して、バックヨーク部3を積層方向から見て重なる位置に位置している。第1バックヨーク部3aの周方向一側切離部35aは、第2バックヨーク部3bの周方向他側切離部36bに接着されている。
【0044】
図8に示すように、第1バックヨーク部3aの周方向一側切離部35aは、切れ目5aから周方向の一側に延びている。第2バックヨーク部3bの周方向他側切離部36bは、切れ目5bから周方向の他側に延びている。したがって、第1バックヨーク部3aの周方向一側切離部35aと、第2バックヨーク部3bの周方向他側切離部36bとを接着することにより、積層方向から見て、積層鉄心1において、切れ目5aよりも周方向の一側の部分と、切れ目5bよりも周方向の他側の部分とを、積層方向に連結することができる。これにより、バックヨーク部3において、切れ目5の両側の部分が互いに離れることをより確実に抑制することができる。
【0045】
なお、積層鉄心1では、第1バックヨーク部3aにおける周方向一側切離部35aは、周方向他側に突出する第1凸部を含む。第2バックヨーク部3bにおける周方向他側切離部36bは、周方向一側に突出する第2凸部を含む。第1バックヨーク部3aにおける前記第1凸部は、第2バックヨーク部3bにおける前記第2凸部に対して、バックヨーク部3を積層方向から見て重なる位置に位置している。第1バックヨーク部3aの前記第1凸部は、第2バックヨーク部3bの前記第2凸部に接着されている。
【0046】
周方向他側に突出する周方向一側切離部35aの第1凸部と、周方向一側に突出する周方向他側切離部36bの第2凸部とで、積層方向に隣り合うバックヨーク部3を積層方向に接着することができる。よって、積層方向に隣り合うバックヨーク部3を容易に且つ確実に接着することができる。
【0047】
(積層鉄心の製造方法)
次に、上述の構成を有する積層鉄心1の例示的な製造方法を、
図9から
図12を用いて詳細に説明する。
【0048】
図9は、積層鉄心1の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図9に示すように、積層鉄心1の製造方法は、準備工程S1、打ち抜き工程S2、バックヨーク曲げ工程S3及び積層工程S4を有する。
【0049】
最初に、準備工程S1では、磁性材料である電磁鋼板を準備する。本実施形態では、電磁鋼板は、一方向に長い帯状である。なお、以下では、電磁鋼板を鋼板80と称する。また、以下の説明では、前記一方向を、鋼板80の第1方向と称し、鋼板80を厚み方向に見て第1方向と交差する方向を、鋼板80の第2方向と称する。
【0050】
次に、打ち抜き工程S2では、鋼板80を打ち抜いて、帯状の鉄心片形成部82を形成する。鉄心片形成部82は、積層鉄心1における鉄心片2となる部分である。
【0051】
図10は、鋼板80における鉄心片形成部82の打ち抜き図である。
図10では、説明のため、打ち抜かれる鋼板80の領域に斜線を付している。打ち抜き工程S2は、プレス加工によって行われる。すなわち、打ち抜き工程S2では、
図10において斜線を付した領域を、パンチを用いて打ち抜く。プレス加工の詳細な説明は省略する。
【0052】
打ち抜き工程S2では、鋼板80の第1領域R1を打ち抜いて、第1方向に延びるバックヨーク形成部83と、鋼板80を厚み方向から見て、バックヨーク形成部83から第2方向の一側に向かって延びる複数のティース部4とを形成する。本実施形態では、鉄心片形成部82の第1方向の長さは、鉄心片2の外周側の長さと、同程度である。鉄心片形成部82のティース部4の数は、鉄心片2のティース部4の数と、同じである。
【0053】
また、打ち抜き工程S2では、バックヨーク形成部83における第1方向に隣り合うティース部4の間で、第2方向に延びる第2領域R2を打ち抜いて、第2方向の他側に向かって延びる所定の幅を有するスリット85を形成する。スリット85は、積層鉄心1の切れ目5となる部分である。
【0054】
本実施形態では、スリット85は、積層鉄心1において積層方向に隣り合う一方のバックヨーク部3と、他方のバックヨーク部3とで異なる位置に形成する。例えば、本実施形態の打ち抜き工程S2では、バックヨーク形成部83aに、積層鉄心1の切れ目5aとなる第1スリット85aが形成された第1鉄心片形成部82aを形成する。また、バックヨーク形成部83bに、積層鉄心1の切れ目5bとなる第2スリット85bが形成された第2鉄心片形成部82bを形成する。
【0055】
また、打ち抜き工程S2では、鋼板80の第3領域R3を打ち抜いて、積層鉄心1においてバックヨーク部3の外周側の端面31となる部分も形成する。
図11に、打ち抜き工程S2で形成された第1鉄心片形成部82a及び第2鉄心片形成部82bを示す。
【0056】
なお、打ち抜き工程S2では、第1領域R1、第2領域R2及び第3領域R3を、どの順番に打ち抜いてもよい。すなわち、打ち抜き工程S2では、第2領域R2を、第1領域R1を打ち抜く前に打ち抜いてもよいし、第1領域R1を打ち抜いた後に打ち抜いてもよい。第3領域R3を、第1領域R1を打ち抜く前に打ち抜いてもよいし、第1領域R1を打ち抜いた後に打ち抜いてもよい。第3領域R3を、第2領域R2を打ち抜く前に打ち抜いてもよいし、第2領域R2を打ち抜いた後に打ち抜いてもよい。第1領域R1、第2領域R2及び第3領域R3を、同時に打ち抜いてもよい。第1領域R1、第2領域R2及び第3領域R3のうち2つの領域を、同時に打ち抜いてもよい。
【0057】
次に、バックヨーク曲げ工程S3で、打ち抜き工程S2で形成された鉄心片形成部82のバックヨーク形成部83を、厚み方向に見て円弧状に曲げる。詳細には、第2領域R2を打ち抜くことによって形成されたスリット85の隙間を潰しつつ、バックヨーク形成部83を円弧状に曲げる。これにより、バックヨーク形成部83の長手方向に延びる両端部のうち、複数のティース部4が位置する側の端部の長さを、積層鉄心1において外周側に位置する端部の長さよりも短くすることができる。よって、厚み方向から見て円環状のバックヨーク部3が形成される。
【0058】
その後、積層工程S4で、バックヨーク曲げ工程S3によって円弧状に曲げられたバックヨーク部3を積層方向に重ねて接着する。
【0059】
以上の工程により、板状のバックヨーク部3及び複数の板状のティース部4がそれぞれ厚み方向に積層された積層鉄心1が製造される。
【0060】
すなわち、本実施形態に係る例示的な積層鉄心1の製造方法は、打ち抜き工程S2と、バックヨーク曲げ工程S3と、積層工程S4とを有する。
【0061】
打ち抜き工程S2は、鋼板80を打ち抜いて、第1方向に延びるバックヨーク形成部83と、鋼板80を厚み方向から見て、バックヨーク形成部83から第1方向と交差する第2方向の一側に向かって延びる複数のティース部4と、バックヨーク形成部83における第1方向に隣り合うティース部4の間に、第2方向の他側に向かって延びるスリット85と、を形成する。バックヨーク曲げ工程S3は、打ち抜き工程S2で形成されたバックヨーク形成部83を厚み方向から見て、スリット85の隙間を潰してバックヨーク形成部83を円弧状に曲げることにより、バックヨーク部3を形成する。積層工程S4は、バックヨーク曲げ工程S3によって円弧状に曲げられたバックヨーク部3を積層方向に重ねた状態で接着する。打ち抜き工程S2では、スリット85を、積層方向に隣り合うバックヨーク部3の一方と他方とで異なる位置に形成する。
【0062】
上述の積層鉄心1の製造方法では、積層方向に隣り合うバックヨーク部3となる一方のバックヨーク形成部83と、他方のバックヨーク形成部83とで、スリット85の位置が異なる。これにより、上述の積層鉄心1の製造方法によって製造された積層鉄心1では、積層方向から見て、積層方向に隣り合うバックヨーク部3の一方と他方とでスリット85の隙間が潰されて形成された切れ目5の位置が異なる。すなわち、積層鉄心1では、積層方向に隣り合うバックヨーク部3のうち一方のバックヨーク部3の切れ目5を挟んで一側の部分と他側の部分とに跨って、他方のバックヨーク部3が周方向に延びている。この構成では、一方のバックヨーク部3において切れ目5を挟んで一側と他側とが離れる方向に移動しようとした場合、一方のバックヨーク部3の厚み方向の面と、他方のバックヨーク部3の厚み方向の面とに摩擦が生じる。よって、他方のバックヨーク部3の切れ目5を挟んだ両側の部分が離れることを抑制することができる。
【0063】
また、上述の製造方法では、積層方向に隣り合うバックヨーク部3同士を接着する。これにより、積層鉄心1において、一方のバックヨーク部3が他方のバックヨーク部3に対して移動することが抑制される。したがって、積層鉄心1の寸法精度が低下することが抑制された積層鉄心1の製造方法を提供することができる。
【0064】
なお、本実施形態では、スリット85は、第1方向の他側に向かって突出する第1凸部を含む第1スリット85aと、第1方向の一側に向かって突出する第2凸部を含む第2スリット85bと、を含む。
【0065】
すなわち、打ち抜き工程S2では、積層鉄心1において積層方向に隣り合うバックヨーク部3の一方に第1のスリット85を形成し、積層方向に隣り合うバックヨーク部3の他方に第2のスリット85を形成する。本実施形態の打ち抜き工程S2では、バックヨーク曲げ工程S3によって円弧状に曲げられたバックヨーク部3を積層方向に重ねた状態で、積層方向に隣り合うバックヨーク部3の一方の第1のスリット85の第1凸部と、積層方向に隣り合うバックヨーク部3の他方の第2のスリット85の第2凸部とを、接着する。
【0066】
周方向に隣り合うティース部4の一方に対して周方向他側に突出する周方向一側切離部35aの第1凸部と、周方向に隣り合うティース部4の他方に対して周方向一側に突出する周方向他側切離部36bの第2凸部とで、積層方向に隣り合うバックヨーク部3を積層方向に接着することができる。よって、積層方向に隣り合うバックヨーク部3を容易に且つ確実に接着することができる。
【0067】
(実施形態2)
(積層鉄心の構成)
次に、
図13から
図15を参照して、本発明の例示的な実施形態2に係る積層鉄心101について説明する。本実施形態では、バックヨーク部103の構成が実施形態1のバックヨーク部3の構成と異なる。以下では、実施形態1と同一の構成には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0068】
積層鉄心101は、複数の鉄心片102が積層されている。鉄心片102は、バックヨーク部103と、ティース部4とを有する。
【0069】
本実施形態では、バックヨーク部103は、切れ目5と、外周側凹部106とを有する。
【0070】
図13は、積層鉄心101を積層方向から見た部分拡大図である。
図14は、
図13に示す鉄心片102に対して積層方向に積層された鉄心片102を積層方向から見た図である。
図13に示す鉄心片102と、
図14に示す鉄心片102とは、積層方向に隣り合っている。積層鉄心101において積層方向に隣り合う鉄心片102のバックヨーク部103のうち一方のバックヨーク部103における切れ目5の位置は、他方のバックヨーク部103における切れ目5に対して、少なくとも一部が、前記積層方向から見て重なっていない。
【0071】
バックヨーク部103の切れ目5の構成、及び、積層方向に隣り合うバックヨーク部103同士の切れ目5の位置関係は、実施形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0072】
図15に示すように、外周側凹部106は、バックヨーク部103の外周側の端面131において切れ目5の径方向の外方に位置する。外周側凹部106は、径方向に凹んでいる。すなわち、バックヨーク部103は、バックヨーク部103の外周側の端面131のうち、切れ目5の径方向外側の端部52に対して径方向外方の位置に、内周側に凹む外周側凹部106を有する。
【0073】
外周側凹部106によって、切れ目5の径方向外側の端部52からバックヨーク部103の外周側の端面131との間の距離は、短い。これにより、バックヨーク部103を、切れ目5の径方向外側の端部52と外周側凹部106との間で容易に曲げることができる。したがって、積層鉄心101の複数の鉄心片102において、バックヨーク部103を円弧状に曲げる位置を容易に揃えることができる。これにより、バックヨーク部が円弧状に曲げられて構成されている積層鉄心101において、寸法精度が低下することを抑制することができる。
【0074】
(実施形態3)
(積層鉄心の構成)
次に、
図16から
図18を参照して、本発明の例示的な実施形態3に係る積層鉄心201について説明する。本実施形態では、積層鉄心201は、所定の形状に打ち抜かれた帯状の鉄心片202を、厚み方向に見て円弧状に曲げつつ螺旋状に巻くスパイラル工法によって、形成されている。すなわち、本実施形態に係る積層鉄心201は、軸線に沿って螺旋状に延びる1つの鉄心片202によって構成されている。
【0075】
図16は、積層鉄心201の一部を分解して示す図である。鉄心片202は、バックヨーク部203と、複数のティース部4とを有する。バックヨーク部203は、切れ目205a、205bを有する。
【0076】
本実施形態では、積層鉄心201において積層方向に隣り合うバックヨーク部203のうち一方のバックヨーク部203及び他方のバックヨーク部203は、螺旋状に延びる1つのバックヨーク部の部分によって構成されている。
【0077】
本実施形態では、切れ目205は、実施形態1の切れ目5と同様の構成を有する。すなわち、積層方向に隣り合うバックヨーク部203の一方を第1バックヨーク部203a、他方を第2バックヨーク部203bとした場合、第1バックヨーク部203aにおける切れ目205aは、第2バックヨーク部203bにおける切れ目205bに対して、少なくとも一部が、バックヨーク部203を積層方向から見て重ならない位置に位置している。具体的には、切れ目205aの中間部53aは、周方向の他側に突出している。切れ目205bの中間部53bは、周方向の一側に突出している。なお、
図16において、二点鎖線は、第1バックヨーク部203aと、第2バックヨーク部203bとの境界を示す。
【0078】
以上説明したように、本実施形態に係る積層鉄心201において、バックヨーク部203は、軸線を中心として螺旋状に延びていて、積層方向に積層されている。
【0079】
このように、直線状に形成されたバックヨーク部が円弧状に曲げられて軸線を中心として螺旋状に延びているバックヨーク部が積層方向に積層された積層鉄心では、バックヨーク部でスプリングバックが生じて、積層鉄心の寸法精度が低下する場合がある。これに対して、本実施形態に係る積層鉄心201では、積層方向に隣り合うバックヨーク部203が相対移動することが抑制されている。したがって、螺旋状に延びているバックヨーク部203を有する積層鉄心201において、バックヨーク部203でスプリングバックが生じることを抑制することができる。よって、積層鉄心201の寸法精度が低下することを防止することができる。
【0080】
(積層鉄心の製造方法)
次に、積層鉄心201の製造方法について説明する。積層鉄心201の製造方法は、準備工程S1、打ち抜き工程S202、バックヨーク曲げ工程S3及び積層工程S4を有する。
図17及び
図18は、積層鉄心201を製造する場合の例示的な打ち抜き図である。
図17及び
図18において、二点鎖線は、第1バックヨーク部203aとなる部分と、第2バックヨーク部203bとなる部分の境界を示す。
【0081】
打ち抜き工程S202では、実施形態1と同様に、鋼板80の第1領域R1から第3領域R3を打ち抜いて、第1方向に延びるバックヨーク形成部83と、鋼板80を厚み方向から見て、バックヨーク形成部83から第2方向の一側に向かって延びる複数のティース部4とを形成する。
【0082】
本実施形態では、鉄心片形成部82の第1方向の長さは、積層鉄心201の外周側の長さよりも長い。すなわち、本実施形態で形成されたバックヨーク形成部83は、螺旋状に巻かれる。よって、バックヨーク形成部83の部分が積層方向に重なる。
【0083】
バックヨーク形成部83のスリット85は、積層鉄心201において積層方向に重なる部分同士で、異なる位置に形成される。すなわち、本実施形態では、打ち抜き工程S202では、各スリット85と、該スリット85に対して、積層鉄心201を積層方向から見た切れ目205の数、第1方向に離れたスリット85とを、異なる位置に形成する。
【0084】
例えば、積層方向から見た積層鉄心201の切れ目205の数が24であれば、打ち抜き工程S202では、
図17に示すように、第1方向に並ぶスリット85の形状を、24個ごとに変えてもよい。打ち抜き工程S202では、
図18に示すように、第1方向に並ぶスリット85の形状を、24個離れた位置で異ならせてもよい。
【0085】
(実施形態4)
次に、
図11、
図19及び
図20を参照して、本発明の例示的な実施形態4に係る積層鉄心301について説明する。本実施形態では、積層鉄心301は、所定の形状に打ち抜かれた帯状の2つの鉄心片302を、それぞれ厚み方向に見て円弧状に曲げつつ螺旋状に巻くスパイラル工法によって、形成されている。すなわち、本実施形態に係る積層鉄心301は、軸線に沿って螺旋状に延びる2つの鉄心片302a、302bによって構成されている。
【0086】
図19は、積層鉄心301の一部を分解して示す図である。2つの鉄心片302a、302bは、それぞれ、螺旋状に巻かれている。2つの鉄心片302のうち一方の鉄心片302aの積層方向の間に、他方の鉄心片302bが積層されている。
【0087】
鉄心片302aは、第1バックヨーク部303aと、複数のティース部4とを有する。第1バックヨーク部303aは、切れ目305aを有する。鉄心片302bは、第2バックヨーク部303bと、複数のティース部4とを有する。第2バックヨーク部303bは、切れ目305bを有する。
【0088】
本実施形態では、積層鉄心301において積層方向に隣り合うバックヨーク部303のうち一方のバックヨーク部は、鉄心片302aの第1バックヨーク部303aによって構成されている。他方のバックヨーク部は、鉄心片302bの第2バックヨーク部303bによって構成されている。
【0089】
本実施形態では、切れ目305は、実施形態1の切れ目5と同様の構成を有する。第1バックヨーク部303aにおける切れ目305aは、第2バックヨーク部303bにおける切れ目305bに対して、少なくとも一部が、バックヨーク部303を積層方向から見て重ならない位置に位置している。
【0090】
このように、本実施形態のバックヨーク部303は、軸線を中心として螺旋状に延びていて、積層方向に積層されている第1バックヨーク部303aと、軸線を中心として螺旋状に延びていて、積層方向に積層されている第1バックヨーク部303aの積層方向の間に積層される第2バックヨーク部303bと、を含む。
【0091】
第1バックヨーク部303aは、切れ目305aに対して周方向の一側に位置する周方向一側切離部35aと、切れ目305aに対して周方向の他側に位置して、周方向一側切離部35aと周方向に接触する周方向他側切離部36aと、を有する。第2バックヨーク部303bは、切れ目305bに対して周方向の一側に位置する周方向一側切離部35bと、切れ目305bに対して周方向の他側に位置して、周方向一側切離部35bと周方向に接触する周方向他側切離部36bと、を有する。
【0092】
第1バックヨーク部303aにおける周方向一側切離部35aは、周方向他側に突出する第1凸部を含む。第1バックヨーク部303aにおける周方向他側切離部36aは、前記第1凸部が位置付けられる第1凹部を含む。第2バックヨーク部303bにおける周方向他側切離部36bは、周方向一側に突出する第2凸部を含む。第2バックヨーク部303bにおける周方向一側切離部35bは、前記第2凸部が位置付けられる第2凹部を含む。
【0093】
第1バックヨーク部303aにおける前記第1凸部は、第2バックヨーク部303bにおける前記第2凸部に対して、バックヨーク部303を積層方向から見て重なる位置に位置している。第1バックヨーク部303aの前記第1凸部は、第2バックヨーク部303bの前記第2凸部に接着されている。
【0094】
一枚の螺旋状のバックヨーク部によって構成された積層鉄心において、積層方向に隣り合う切れ目の位置を異ならせるためには、1層ごとに、凸部の突出方向を切り替える必要がある。これに対して、上述の構成では、周方向の他側に突出する第1凸部を有する第1バックヨーク部303aと、周方向の一側に突出する第2凸部を有する第2バックヨーク部303bとが、積層方向に交互に積層されている。これにより、積層方向から見て、積層方向に隣り合うバックヨーク部303の一方と他方とで切れ目305の位置を容易に異ならせることができる。これにより、円弧状に曲げられた積層鉄心301の寸法精度が低下することを容易に防止することができる。
【0095】
(積層鉄心の製造方法)
次に、
図11及び
図20を参照して、積層鉄心301の例示的な製造方法について説明する。
図20に示すように、積層鉄心301の製造方法は、準備工程S301、打ち抜き工程S302、バックヨーク曲げ工程S303及び積層工程S304を有する。本実施形態では、打ち抜き工程S302は、第1打ち抜き工程S321と、第2打ち抜き工程S322とを含む。バックヨーク曲げ工程S303は、第1バックヨーク曲げ工程S331と第2バックヨーク曲げ工程S332とを含む。
【0096】
準備工程S301は、実施形態1の準備工程S1と同様である。したがって、準備工程S301の説明は、省略する。
【0097】
打ち抜き工程S302では、鋼板80を打ち抜いて、帯状の第1鉄心片形成部82aと、帯状の第2鉄心片形成部82bとを形成する。打ち抜き工程S302において形成される、第1鉄心片形成部82a及び第2鉄心片形成部82bは、
図11に示す実施形態1の第1鉄心片形成部82a及び第2鉄心片形成部82bと同様である。
【0098】
第1鉄心片形成部82aは、積層鉄心301における鉄心片302aとなる部分である。第2鉄心片形成部82bは、積層鉄心301における鉄心片302bとなる部分である。
【0099】
詳細には、第1打ち抜き工程S321では、鋼板80を打ち抜いて、第1のバックヨーク形成部83aと、第1の複数のティース部4と、第1のスリット85aと、を形成する。すなわち、第1打ち抜き工程S321では、中間部分が第1方向の他側に突出する第1のスリット85aが形成された第1鉄心片形成部82aを形成する。第1のスリット85aは、積層鉄心301の切れ目305aとなる部分である。
【0100】
第2打ち抜き工程S322は、鋼板80を打ち抜いて、第2のバックヨーク形成部83bと、第2の複数のティース部4と、第2のスリット85bと、を形成する。すなわち、第2打ち抜き工程S322では、中間部分が第1方向の一側に突出する第2のスリット85bが形成された第2鉄心片形成部82bを形成する。第2のスリット85bは、積層鉄心301の切れ目305bとなる部分である。
【0101】
第1バックヨーク曲げ工程S331は、第1のバックヨーク形成部83aを厚み方向から見て、第1のスリット85aの隙間を潰して第1のバックヨーク形成部83aを円弧状に曲げる。これにより、第1バックヨーク部303aが形成される。第2バックヨーク曲げ工程S332は、第2のバックヨーク形成部83bを厚み方向から見て、第2のスリット85bの隙間を潰して第2のバックヨーク形成部83bを円弧状に曲げる。これにより、第2バックヨーク部303bが形成される。
【0102】
積層工程S304では、第1バックヨーク曲げ工程S331によって円弧状に曲げられた第1バックヨーク部303aと、第2バックヨーク曲げ工程S332によって円弧状に曲げられた第2バックヨーク部303bとを交互に積層方向に重ねて接着する。すなわち、第1バックヨーク部303aにおける前記第1凸部と、第2バックヨーク部303bの前記第2凸部とを接着する。
【0103】
なお、第2打ち抜き工程S322は、第1打ち抜き工程S321の後に行ってもよいし、第1打ち抜き工程S321の前に行ってもよい。第2バックヨーク曲げ工程S332は、第1バックヨーク曲げ工程S331の後に行ってもよいし、第1バックヨーク曲げ工程S331の前に行ってもよい。
【0104】
すなわち、本実施形態に係る積層鉄心301の製造方法では、打ち抜き工程S302は、鋼板80を打ち抜いて、第1のバックヨーク形成部83と、第1の複数のティース部4と、第1のスリット85と、を形成する第1打ち抜き工程S321と、鋼板80を打ち抜いて、第2のバックヨーク形成部83と、第2の複数のティース部4と、第2のスリット85と、を形成する第2打ち抜き工程S322と、を含む。バックヨーク曲げ工程S303は、第1打ち抜き工程S321で形成された第1のバックヨーク形成部83を厚み方向から見て、第1のスリット85の隙間を潰して第1のバックヨーク形成部83を円弧状に曲げることにより、第1のバックヨーク部303を形成する第1バックヨーク曲げ工程S331と、第2打ち抜き工程S322で形成された第2のバックヨーク形成部83を厚み方向から見て、第2のスリット85の隙間を潰して第2のバックヨーク形成部83を円弧状に曲げることにより、第2のバックヨーク部303を形成する第2バックヨーク曲げ工程S332と、を含む。積層工程S304では、第1バックヨーク曲げ工程S331によって円弧状に曲げられた第1のバックヨーク部303と、第2バックヨーク曲げ工程S332によって円弧状に曲げられた第2のバックヨーク部303とを交互に積層方向に重ねて接着する。
【0105】
一枚の螺旋状のバックヨーク部203によって構成された積層鉄心201において、積層方向に隣り合う切れ目205の位置を異ならせるためには、1層ごとに、凸部の突出方向を切り替える必要がある。これに対して、上述の製造方法では、周方向の他側に突出する第1凸部を有する第1バックヨーク部303aと、周方向の一側に突出する第2凸部を有する第2バックヨーク部303bとが、積層方向に交互に積層されている。これにより、積層方向から見て、積層方向に隣り合うバックヨーク部303の一方と他方とで切れ目305の位置を容易に異ならせることができる。これにより、円弧状に曲げられた積層鉄心301の寸法精度が低下することを容易に防止することができる製造方法を提供することができる。
【0106】
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0107】
前記実施形態では、鉄心片2は、積層鉄心1の周方向に延びるバックヨーク部3と、バックヨーク部3から積層鉄心1の中心軸Pに向かって延びる複数のティース部4とを有する。しかしながら、鉄心片は、積層鉄心の周方向に延びるバックヨーク部と、バックヨーク部から積層鉄心の径方向外方に向かって延びる複数のティース部とを有する構成であってもよい。
【0108】
前記各実施形態では、切れ目5、205、305に対して周方向の一側に位置する周方向一側切離部35と、切れ目5、205、305に対して周方向の他側に位置する周方向他側切離部36とは、周方向に接触している。しかしながら、周方向一側切離部と、周方向他側切離部とは、所定の隙間を有して対向していてもよい。
【0109】
(構成例)
なお、本技術は以下のような構成をとることも可能である。
【0110】
(1)積層鉄心は、周方向に延びる板状のバックヨーク部と、前記バックヨーク部から径方向内方に突出する板状の複数のティース部とが、それぞれ厚み方向に積層されて軸線に沿って延びる筒状の積層鉄心である。前記バックヨーク部は、周方向に隣り合うティース部の間に、内周側の端面から径方向に延びる切れ目を有する。積層方向に隣り合うバックヨーク部の一方を第1バックヨーク部、他方を第2バックヨーク部とした場合、前記第1バックヨーク部における前記切れ目は、前記第2バックヨーク部における前記切れ目に対して、少なくとも一部が、前記バックヨーク部を積層方向から見て重ならない位置に位置する。前記第1バックヨーク部は、前記第2バックヨーク部と、少なくとも一部で接着されている。
【0111】
(2)(1)に記載の積層鉄心において、前記バックヨーク部は、前記切れ目に対して周方向の一側に位置する周方向一側切離部と、前記切れ目に対して周方向の他側に位置して、前記周方向一側切離部と周方向に接触する周方向他側切離部と、を有する。前記第1バックヨーク部における前記周方向一側切離部は、前記第2バックヨーク部における前記周方向他側切離部に対して、前記バックヨーク部を積層方向から見て重なる位置に位置している。前記第1バックヨーク部の前記周方向一側切離部は、前記第2バックヨーク部の前記周方向他側切離部に接着されている。
【0112】
(3)(2)に記載の積層鉄心において、前記第1バックヨーク部における前記周方向一側切離部は、周方向他側に突出する第1凸部を含む。前記第2バックヨーク部における前記周方向他側切離部は、周方向一側に突出する第2凸部を含む。前記第1バックヨーク部における前記第1凸部は、前記第2バックヨーク部における前記第2凸部に対して、前記バックヨーク部を積層方向から見て重なる位置に位置している。前記第1バックヨーク部の前記第1凸部は、前記第2バックヨーク部の前記第2凸部に接着されている。
【0113】
(4)(3)に記載の積層鉄心において、前記第1バックヨーク部における前記周方向他側切離部は、前記第1凸部が位置付けられる第1凹部を含む。前記第2バックヨーク部における前記周方向一側切離部は、前記第2凸部が位置付けられる第2凹部を含む。
【0114】
(5)(1)から(4)のいずれか一つに記載の積層鉄心において、前記バックヨーク部は、軸線を中心として螺旋状に延びていて、積層方向に積層されている。
【0115】
(6)(5)に記載の積層鉄心において、前記バックヨーク部は、軸線を中心として螺旋状に延びていて、積層方向に積層されている第1バックヨーク部と、軸線を中心として螺旋状に延びていて、積層方向に積層されている前記第1バックヨーク部の積層方向の間に積層される第2バックヨーク部と、を含む。前記第1バックヨーク部は、前記切れ目に対して周方向の一側に位置する周方向一側切離部と、前記切れ目に対して周方向の他側に位置して、前記周方向一側切離部と周方向に接触する周方向他側切離部と、を有する。前記第2バックヨーク部は、前記切れ目に対して周方向の一側に位置する周方向一側切離部と、前記切れ目に対して周方向の他側に位置して、前記周方向一側切離部と周方向に接触する周方向他側切離部と、を有する。前記第1バックヨーク部における前記周方向一側切離部は、周方向他側に突出する第1凸部を含み、前記第1バックヨーク部における前記周方向他側切離部は、前記第1凸部が位置付けられる第1凹部を含む。前記第2バックヨーク部における前記周方向他側切離部は、周方向一側に突出する第2凸部を含み、前記第2バックヨーク部における前記周方向一側切離部は、前記第2凸部が位置付けられる第2凹部を含む。前記第1バックヨーク部における前記第1凸部は、前記第2バックヨーク部における前記第2凸部に対して、前記バックヨーク部を積層方向から見て重なる位置に位置している。前記第1バックヨーク部の前記第1凸部は、前記第2バックヨーク部の前記第2凸部に接着されている。
【0116】
(7)(5)または(6)に記載の積層鉄心において、積層方向に隣り合うバックヨーク部のうち一方のバックヨーク部における前記切れ目の径方向内側の端部は、積層方向に隣り合うバックヨーク部のうち他方のバックヨーク部における前記切れ目の径方向内側の端部と前記積層方向から見て重なる位置に位置している。前記一方のバックヨーク部における前記切れ目の径方向外側の端部は、前記他方のバックヨーク部における前記切れ目の径方向外側の端部と前記積層方向から見て重なる位置に位置している。
【0117】
(8)(7)に記載の積層鉄心において、前記バックヨーク部は、前記バックヨーク部の外周側の端面のうち、前記切れ目の径方向外側の端部に対して径方向外方の位置に、内周側に凹む外周側凹部を有する。
【0118】
(9)積層鉄心の製造方法は、板状のバックヨーク部及び複数の板状のティース部がそれぞれ厚み方向に積層された積層鉄心の製造方法である。前記積層鉄心の製造方法は、鋼板を打ち抜いて、第1方向に延びるバックヨーク形成部と、前記鋼板を厚み方向から見て、前記バックヨーク形成部から前記第1方向と交差する第2方向の一側に向かって延びる前記複数のティース部と、前記バックヨーク形成部における前記第1方向に隣り合うティース部の間に、前記第2方向の他側に向かって延びるスリットと、を形成する打ち抜き工程と、前記打ち抜き工程で形成された前記バックヨーク形成部を厚み方向から見て、前記スリットの隙間を潰して前記バックヨーク形成部を円弧状に曲げることにより、前記バックヨーク部を形成するバックヨーク曲げ工程と、前記バックヨーク曲げ工程によって円弧状に曲げられた前記バックヨーク部を積層方向に重ねた状態で接着する積層工程と、を有する。前記打ち抜き工程では、前記スリットを、積層方向に隣り合う前記バックヨーク部の一方と他方とで異なる位置に形成する。
【0119】
(10)(9)に記載の積層鉄心の製造方法において、前記スリットは、前記第1方向の他側に向かって突出する第1凸部を含む第1のスリットと、前記第1方向の一側に向かって突出する第2凸部を含む第2のスリットと、を含む。前記打ち抜き工程では、積層方向に隣り合う前記バックヨーク部の一方に前記第1のスリットを形成し、積層方向に隣り合う前記バックヨーク部の他方に前記第2のスリットを形成する。前記バックヨーク曲げ工程によって円弧状に曲げられた前記バックヨーク部を積層方向に重ねた状態で、前記積層方向に隣り合う前記バックヨーク部の一方の前記第1のスリットの前記第1凸部と、前記積層方向に隣り合う前記バックヨーク部の他方の前記第2のスリットの前記第2凸部とを、接着する。
【0120】
(11)(10)に記載の積層鉄心の製造方法において、前記打ち抜き工程は、鋼板を打ち抜いて、第1の前記バックヨーク形成部と、第1の前記複数のティース部と、前記第1のスリットと、を形成する第1打ち抜き工程と、鋼板を打ち抜いて、第2の前記バックヨーク形成部と、第2の前記複数のティース部と、前記第2のスリットと、を形成する第2打ち抜き工程と、を含む。前記バックヨーク曲げ工程は、前記第1打ち抜き工程で形成された第1の前記バックヨーク形成部を厚み方向から見て、前記第1のスリットの隙間を潰して第1の前記バックヨーク形成部を円弧状に曲げることにより、第1の前記バックヨーク部を形成する第1バックヨーク曲げ工程と、前記第2打ち抜き工程で形成された第2の前記バックヨーク形成部を厚み方向から見て、前記第2のスリットの隙間を潰して第2の前記バックヨーク形成部を円弧状に曲げることにより、第2の前記バックヨーク部を形成する第2バックヨーク曲げ工程と、を含む。前記積層工程では、前記第1バックヨーク曲げ工程によって円弧状に曲げられた第1の前記バックヨーク部と、前記第2バックヨーク曲げ工程によって円弧状に曲げられた第2の前記バックヨーク部とを交互に積層方向に重ねて接着する。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明は、帯状の電磁鋼板を打ち抜いて、前記電磁鋼板の長手方向に直線状に延びるバックヨーク部と前記電磁鋼板の幅方向に延びる複数のティースとを形成する積層鉄心の製造方法に適用可能である。
【符号の説明】
【0122】
1、101、201、301 積層鉄心
2、2b、102、202、302、302a、302b 鉄心片
3、103、203、303 バックヨーク部
3a、203a、303a 第1バックヨーク部
3b、203b、303b 第2バックヨーク部
31、131 外周側の端面
32 内周側の端面
33 第1面
34 第2面
35、35a、35b 周方向一側切離部
36、36a、36b 周方向他側切離部
37 接着部
38 被接着部
5、5a、5b、205、205a、205b、305、305a、305b 切れ目
4 ティース部
51、51a、51b 径方向内側の端部
52、52a、52b 径方向外側の端部
53a、53b 中間部
106 外周側凹部
80 鋼板
82 鉄心片形成部
82a 第1鉄心片形成部
82b 第2鉄心片形成部
83、83a、83b バックヨーク形成部
85、85a、85b スリット
R1 第1領域
R2 第2領域
R3 第3領域